JP3118761B2 - サワー種の調製方法及びサワー種用乳酸菌の栄養培地 - Google Patents

サワー種の調製方法及びサワー種用乳酸菌の栄養培地

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JP3118761B2 JP04088221A JP8822192A JP3118761B2 JP 3118761 B2 JP3118761 B2 JP 3118761B2 JP 04088221 A JP04088221 A JP 04088221A JP 8822192 A JP8822192 A JP 8822192A JP 3118761 B2 JP3118761 B2 JP 3118761B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製パン用サワー種の調
製方法およびサワー種用乳酸菌の培養のためのサワー種
用乳酸菌の栄養培地に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パンの品質風味改良手段に多大な
関心が寄せられ、そのための一手段としてサワー種の応
用が考えられている。伝統的なサワー種製パン法では、
小麦粉等の穀粉を用いた培地を用いてそれぞれの気候風
土の中で自然に着生した乳酸菌や酵母等を濃密に増殖さ
せ、これをパンの発酵種として利用してきた。このサワ
ー種の継承は通常、サワー種の一部をもとにしてさらに
小麦粉等の穀粉および水を加え、新たに発酵させるとい
う植え継ぎ操作によっておこなわれる。
【0003】これらのサワー種の中で、微生物学的分析
に基づいて特定の乳酸菌を純粋培養し、これを種おこし
に用いるサワー種の製造例が知られている(例えば、特
公昭57−39734号公報掲載)。また、一部の伝統
的サワー種に乾燥・凍結乾燥等の処理をほどこし保存、
流通を可能にすることがおこなわれ、ベーカリーはこれ
を利用してサワーブレッドの製造ができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、伝統的
なサワー種は、各々の特定の地域でのみ安定した継承が
可能であり、これを異なった地域で植え継いでいくとそ
のサワー種の本来の活性が失われるということが知られ
ている。これは、それぞれのサワー種の発酵において主
要な役割を担っている微生物とは別の、雑菌の侵襲を受
けるためで、気候風土が異なるとその環境における微生
物相が異なることによる。
【0005】また、乳酸菌を純粋培養し、これを種おこ
しに用いることによって最初に調製するサワー種の安定
性は向上させることができるが、植え継ぎを繰り返して
いくと、やはり同様の原因でサワー種の性質が最初とは
異なってくる問題が生じ易い。そこで、植え継ぎによっ
ても容易に活性が変化しない安定したサワー種の継承方
法が望まれていた。
【0006】一方、サワー種用乳酸菌を純粋培養する場
合、菌種によって特別な栄養培地を用意しなければなら
ない等の煩雑さがある。また、例えばサワー種用乳酸菌
として用いられるラクトバチルス・サンフランシスコの
栄養培地には数種が知られているが各々欠点を有してい
る。SDB培地(例えば、特公昭58−58070号公
報掲載)ではFYE(新鮮酵母エキス)が必要であるが
この調製作業には手間がかかり、しかもFYEの原料と
して使用する生イーストの種類によっても乳酸菌の増殖
量に相違が生じることがある。また、FYEの代替えと
してL−システインを使用する栄養培地(例えば、特公
昭62−31907号公報掲載)では菌種によりその増
殖効果に差があることが指摘されている(例えば、特開
平3−172171号公報掲載)。さらに、MYP培地
でラクトバチルス・サンフランシスコを培養した例が公
表されているが(例えば、特公平3−58695号公報
掲載)、増殖量が充分でなく、菌体の大量培養を目的に
するには好適でない。そこで、培地調製が容易で良好な
増殖量がえられる栄養培地が望まれていた。
【0007】本発明は上記の点に鑑みて為されたもの
で、植え継ぎによっても容易に活性が変化しない安定し
たサワー種の調整方法を提供するとともに、培地調製が
容易で良好な増殖量がえられる栄養培地を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るため、本発明のサワー種の調製方法は、サワー種用乳
酸菌を小麦粉等の穀粉培地に接種してサワー種を調製す
る際に、酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種また
はこれらの両者を穀粉培地に対して初発の酢酸含有量と
して0.15〜0.40重量%になるように添加してな
るものである。
【0009】また、小麦粉等の穀粉培地に酢酸および酢
酸ナトリウムのいずれか1種またはこれらの両者を穀粉
培地に対して酢酸含有量として0.15〜0.40重量
%になるように添加し、サワ−種用乳酸菌を接種してサ
ワー種の種おこしをし、このサワー種の一部を用いて植
え継ぎし培養を繰り返して継代する際に、植え継ぎ毎
に、酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこ
れらの両者を初発の穀粉培地に対して酢酸含有量として
0.15〜0.40重量%になるように添加してなるも
のである。
【0010】酢酸または酢酸ナトリウムを穀粉培地に添
加するときには、サワー種の種おこし及び植え継ぎによ
る継代培養のいずれにおいても、初発の穀粉培地の全体
(小麦粉、水、食塩等、酢酸及び酢酸ナトリウムを含ん
だ重量)を基準にして0.15〜0.40重量%を添加
する。継代培養のときには、前のサワー種の一部を含め
た継代培地の全体(酢酸及び酢酸ナトリウムを含んだ重
量)を基準にしての数値である。
【0011】更に、本発明の栄養培地は、サワー種に接
種するためのサワー種用乳酸菌を純粋培養する際に用い
るサワー種用乳酸菌の栄養培地において、培地の重量あ
たり乾燥酵母エキスを1〜2重量%、マンガンを5pp
m〜100ppm、ならびに酢酸および酢酸ナトリウム
のいずれか1種またはこれらの両者を酢酸含有量として
0.05〜0.40重量%の、少なくとも3成分を含有
する構成としている。
【0012】即ち、本発明はサワー種の調製において、
酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれら
の両者を、サワー種の調製時もしくは継代培養時にあら
かじめ穀粉培地に含有させておくことにより、サワー種
の植え継ぎ時の品質安定化を図るものであり、また、こ
れに使用するサワー種用乳酸菌の純粋培養において、酢
酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれらの
両者をその他の必須栄養素と組み合わせ用いる栄養培地
を用いることによって良好な増殖を得るものである。
【0013】
【作用】このような構成からなる本発明のサワー種の調
製方法及びサワー種用乳酸菌の栄養培地によれば、調製
時あるいは植え継ぎ時に酢酸および酢酸ナトリウムのい
ずれか1種またはこれらの両者を穀粉培地に対し酢酸と
して0.15〜0.40重量%の含有量になるように添
加し、初発pHを5付近に調整することによって、サ
ワー種用乳酸菌の生育活性向上、雑菌汚染の防止、
サワー種のpH緩衝性向上、の3つの効果を意図的に同
時に引き出し、これによって安定したサワー種の調製と
継代培養の方法を与えるものである。また、そのサワー
種に用いるサワー種用乳酸菌の純粋培養の栄養培地をも
与えるものである。以下にその詳細について述べる。
【0014】 (1)サワー種を構成する乳酸菌の活性向上 酢酸ナトリウムによってその生育を刺激されるラクトバ
チルス乳酸菌が数多く存在することは古くから知られて
いる(Guirard,Snell andWilli
ams:Arch.Biochem.9,p361,1
946)(Man,Rogosa and Sharp
e:J.appl.Bact.23(1),p130,
1960)。本発明者らは各種のサワー種用乳酸菌を収
集し鋭意検討した結果、サワー種を発酵せしめ良好なサ
ワーブレッドの製造にもちいることができるサワー種用
乳酸菌がすべて酢酸の存在によって生育促進することを
見いだした。有効な酢酸濃度は菌種や栄養培地の組成に
よっても異なるが、栄養培地中に酢酸含有量としておお
むね0.05〜0.40重量%の範囲にある時に良好な
結果が得られ、実際にサワー種用乳酸菌の純粋培養をお
こなう際にこのいずれかの濃度の酢酸を栄養培地に含有
させることによって生育促進効果を確認することができ
る。またサワー種へ上記濃度になるように酢酸の添加を
おこなうと、サワー種中においてもサワー種用乳酸菌の
生育を促進することができる。本発明によるところのサ
ワー種への酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種ま
たはこれらの両者の添加は、まず第1に以上の知見にも
とづく理由によるものである。
【0015】当該菌を培養する際には純粋培養において
もサワー種の中で培養する場合においてもその生育や発
酵の開始時に適切なpHになっていることが必要であ
る。初発pHを調整するために酢酸または酢酸ナトリウ
ムのいずれを用いてもまた両者を併用してもかまわな
い。例えばサワー種の調製をおこなう場合、酢酸として
の含有量が0.4%を越えない範囲の濃度になるよう
に、かつ初発pHが5付近になるように酢酸と酢酸ナト
リウムを組み合わせて添加することによりサワー種用乳
酸菌への生育刺激効果を得ることができる。
【0016】(2)雑菌の抑制 次に酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこ
れらの両者をサワー種に添加する第2の利点として雑菌
の抑制が挙げられる。酢酸は抗菌力が強く古来から食品
の保存料として使用されてきた。一般にサワー種は初発
pH4.5〜5.0付近から発酵がおこなわれるが、酢
酸はpKa=4.56(25℃)の解離定数をもつた
め、サワー種に酢酸を含有させておくと発酵にともなう
pH低下にしたがってその非解離型分子の比率が増加し
抗菌力も増大する。
【0017】酢酸のサワー種への添加はサワー種発酵を
おこなう乳酸菌の活性を阻害しない範囲でなさなくては
ならない。本発明により少なくともサワー種の雑菌抑制
効果が期待でき、かつサワー種用乳酸菌が高い生育活性
を保持できる酢酸含有濃度は0.15〜0.40重量%
であることが判明した。例えば具体的には、酢酸をサワ
ー種全量に対し0.3重量%の濃度なるように添加し、
また酢酸の一部または全部を酢酸ナトリウムに置き換
え、さらに必要に応じて水酸化ナトリウム等で発酵初発
pHを5付近に微調整することによって、酢酸無添加区
よりも雑菌汚染に対する抵抗力を大幅に向上させること
ができる。
【0018】(3)pH緩衝性の改善 酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれら
の両者をサワー種に添加する第3の利点としてサワー種
のpH緩衝性を改善することができる。pH緩衝性の改
善は特に水に対して小麦粉使用量の比率が小さい液種で
サワー種を製造しようとする場合に効果的である。液種
の場合、スポンジ種等と比べてpH緩衝性が低いため
に、サワー種の発酵過程で乳酸菌の生育限界pH(3.
8〜4.0)に早く到達しすぎ、発酵による代謝産物の
蓄積が不十分なまま発酵終了することになる。これはパ
ンの風味不足やひいてはサワー種の性能が不安定になる
主原因ともなる。(1)(2)の効果をも合わせ持つサ
ワー液種用pH緩衝剤として酢酸および酢酸ナトリウム
の使用は良好な結果を与える。使用例として、例えば水
75%小麦粉25%を含む合計100%のサワー液種に
対し酢酸ナトリウムを酢酸として約0.15〜0.2重
量%含有させることにより、スポンジ種とほぼ同等のp
H緩衝性が得られる。
【0019】
【実施例】以下、添付図面に基づいて本発明の実施例に
ついて詳細に説明する。
【0020】(実施例1)サワー種用乳酸菌ラクトバチ
ルス・サンフランシスコ:Lactobacillus
sanfrancisco ATCC27651株お
よびATCC27653株を用い酢酸ナトリウムを栄養
培地に添加して純粋培養における生育促進効果を確認し
た。まず公知のSDB液体培地(FYEすなわち新鮮酵
母エキスを固形分として0.5%含有、特公昭58−5
8070号)で各菌体を継代培養しておき、対数増殖期
末期に遠心分離により集菌、洗浄して滅菌蒸留水に再懸
濁した。これらの乳酸菌懸濁液を2×106 cells
/mlになるように、図1に示すように、各栄養培地に
接種して27℃で静置培養し、経時的にその生育量を測
定した。生育量は乳酸菌を接種しないそれぞれの培地を
対照(基準)として600nmのOD(Optical
Density)を測定する一般的方法によりおこな
った。ATCC27651株の結果を図2に示す。
【0021】図2に示すように、基本培地、試験培地
a、試験培地bのいずれよりも試験培地cでのラクトバ
チルス・サンフランシスコATCC27651の生育が
速く、また酢酸ナトリウムの生育促進効果が確認され
た。ATCC27653株を用いた場合にも同様の結果
となる。
【0022】また、酢酸ナトリウム無添加の上記試験培
地bに酢酸を0.05〜0.70重量%の範囲で添加し
初発pH5.6として上記それぞれの菌株への生育促進
効果を試験したところ、酢酸を0.05〜0.40重量
%濃度になるように添加したときに、対照とする試験培
地b以上の生育が認められた。なお酢酸のかわりに酢酸
ナトリウムを酢酸として同濃度になるように添加し培地
初発pH5.6に調整しても同じ結果となる。
【0023】(実施例2)実施例1から誘導される付帯
事項として、ラクトバチルス・サンフランシスコの培養
においては新鮮酵母エキスがその必須成分であるとされ
てきたが、新鮮酵母エキスの代わりに市販乾燥酵母エキ
スを用いかつ硫酸マンガンと酢酸ナトリウムを併用する
ことによって新鮮酵母エキスを用いた場合と同等かそれ
以上の生育を与えることができることが判明した。実施
例1の試験培地cを改良して試験培地dとし、実施例1
と同様の菌株と方法で、図3に示すように、その他の栄
養培地(SDB培地、システイン添加区、MYP培地)
と生育の比較を行った。ATCC27651での結果を
図4に示す。
【0024】図4に示すように、試験培地dにおいてラ
クトバチルス・サンフランシスコは最も早く良好な生育
を示した。酢酸ナトリウムの代わりにシステインを添加
した栄養培地ではその生育速度において試験培地dにお
よばなかった。MYP培地は特に酵母エキス量が不足気
味のため菌体を多量に増殖させる為の培地としては適さ
ない。ATCC27653を用いた場合にもほぼ同様の
結果となる。
【0025】(実施例3)ラクトバチルス・サンフラン
シスコが純粋培養の栄養培地中の酢酸または酢酸ナトリ
ウムの存在によって生育促進することを確認したうえ
で、次に、この培養菌体を使用してサワー種の調製をお
こなった。菌株はラクトバチルス・サンフランシスコ:
Lactobacillus sanfrancisc
o ATCC27651株とこれと共生しサワー種の発
酵をおこなうことができる酵母キャンディダ・ミレリ:
Candida milleri ATCC60590
を使用した。ラクトバチルス・サンフランシスコを実施
例2の試験培地dに107 cells/mlとなるよう
に接種して27℃で14〜16時間振盪または攪拌培養
した。酵母キャンディダ・ミレリはYPG培地(グルコ
ース2%、ペプトン2%、酵母エキス1%を含む)10
0mlにつき一白金耳接種し、27℃,18〜24時間
振盪培養した。これらを遠心分離により集菌、洗浄後、
図5に示す処方に従い、小麦粉培地に接種した。本発明
の試験区には酢酸ナトリウムと酢酸の添加量が酢酸とし
て合計0.15%を越えるように添加した。これをサワ
ー種Iとして、小麦粉が沈降しないように攪拌を続けな
がら27℃で8時間発酵させ、次に、12℃の恒温室に
16時間保管して合計24時間経過後、図6に示す処方
に従い、植え継ぎをおこなった。これをサワー種IIと
して以下同様に発酵・保存・植え継ぎの繰り返しをおこ
なった。このとき、試験区では、植え継ぎごとに酢酸ナ
トリウムを酢酸含有量として0.15重量%以上となる
ように添加している。
【0026】この過程においてサワー種を継代する毎
に、発酵・保存を終了後の植え継ぎ直前のサワー種から
サンプリングをおこない、酵母菌数をYM平板培地で乳
酸菌数をSDB(FYE固形分0.5%含有)平板培地
を用いてサワー種1グラムあたり103 cells以上
あらわれるものについてコロニーから菌数を計測し、ま
たサワー種を8000rpmで10分間遠心分離しこの
上清を0.45ミクロンの除タンパクフィルターでろ過
した後、高速液体クロマトグラフィーによって成分分析
をおこなった。結果を図7及び図8に示す。
【0027】図7から、サワー種の継代培養の過程でサ
ワー種の植え継ぎ保存後のいずれの段階においても、本
発明の試験区のラクトバチルス・サンフランシスコの菌
数は常に対照区の3〜5倍に増加しており、また、対照
区ではサワー種IV以降で雑菌Aが増殖して、それとと
もにサワー臭も消失して不快な小麦粉臭が強くなったの
に対し、試験区では雑菌汚染がみられなかった。本試験
で使用した菌株ラクトバチルス・サンフランシスコはS
DB平板培地上で白く隆起状のコロニーを形成するが、
雑菌Aは同培地で透明感のあるやや偏平なコロニーを形
成しさらに酵母用YM平板培地でも生育して酵母キャン
ディダ・ミレリよりもかなり小さいコロニーをつくるた
め容易に区別できる。雑菌Aは小麦粉の水懸濁物をpH
5付近の弱酸性下で長時間発酵させると小麦粉の製造元
に関係なくしばしば増殖がみられる乳酸菌で、本発明者
らはこれを分離同定の結果、植物界に分布しシュークロ
ースからデキストランを産生するラクトバチルス・コン
ヒューサス:Lactobacillus confu
susと判定している。これはサワー種を特に液種で製
造しようとする場合に植え継ぎ時のサワー種の主要な変
質原因になっているが、酢酸ナトリウムの添加使用によ
りこの菌の増殖を抑制することができる。
【0028】また、図8は、本発明の試験区のサワー種
で対照区のサワー種よりも発酵代謝産物の蓄積量が向上
していることをしめすものである。試験区ではpH緩衝
性が改善されていることによって、サワー種用乳酸菌の
発酵代謝にも好ましい影響を与えている。
【0029】(実施例4)実施例3の乳酸菌数計測用S
DB平板培地から雑菌Aを分離し、純粋培養によって酢
酸に対する生育の応答を確認した。実施例1の試験培地
bを基本培地として酢酸を段階的に添加し、6N−HC
1またはNaOHにて初発pHを5.0に調整し実施例
1と同じ方法で生育を測定した。酢酸無添加区の24時
間後の生育量を基準にして、これに対する生育量の比率
を図9に示す。サワー種用乳酸菌ラクトバチルス・サン
フランシスコATCC27651株は0.05〜0.4
0%の酢酸添加により生育が向上し、サワー種に侵入し
て増殖する雑菌Aの生育は酢酸0.15%以上で遅れ
た。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のサワー種
の調製方法によれば、サワー種の調製時あるいは植え継
ぎ時に、酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種また
はこれらの両者をサワー種に対し酢酸として0.15〜
0.40重量%の含有量になるように添加するので、サ
ワー種用乳酸菌の生育活性の向上を図ることができると
ともに、雑菌汚染の防止を図ることができ、更に、サワ
ー種のpH緩衝性の向上を図ることができる。また、サ
ワー種用乳酸菌の栄養培地によれば、酢酸および酢酸ナ
トリウムのいずれか1種またはこれらの両者をその他の
必須栄養素と組み合わせ用いる栄養培地を用いることに
よって良好な増殖を得ることができる。そのため、サワ
ー種の継代培養が安定化するので、サワー種を植え継ぎ
ながら使用することによって従来よりも低コストで即応
性のあるサワー種製パンができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る試験培地の構成を示す
図である。
【図2】ラクトバチルス・サンフランシスコの生育量を
経時的に示すグラフであり、酢酸ナトリウム添加による
生育促進効果を示す。
【図3】本発明の実施例2に係る試験培地の構成を示す
図である。
【図4】ラクトバチルス・サンフランシスコの生育量を
経時的に示すグラフであり、各種培地での比較を示す。
【図5】本発明の実施例3に係る試験用サワー種組成を
示す図である。
【図6】本発明の実施例3に係る試験用サワー種組成を
示す図である。
【図7】サワー種中の生菌数の変化を示す図である。
【図8】サワー種中の成分の変化を示す図である。
【図9】ラクトバチルス・サンフランシスコと雑菌Aの
24時間後の生育量を示すグラフであり、初発pH5.
0で酢酸濃度を変えたものを示す。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−74536(JP,A) 特開 昭51−73153(JP,A) 特公 平3−58695(JP,B2) 特公 昭58−58070(JP,B2) 特公 昭57−39734(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/38 A21D 8/04 C12N 1/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 小麦粉等の穀粉培地に酢酸および酢酸ナ
    トリウムのいずれか1種またはこれらの両者を穀粉培地
    に対して酢酸含有量として0.15〜0.40重量%に
    なるように添加し、サワー種用乳酸菌を接種してサワー
    種を調製し、このサワー種の一部を用いて植え継ぎし培
    養を繰り返して継代する際に、植え継ぎ毎に、酢酸およ
    び酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれらの両者を
    穀粉培地に対して初発の酢酸含有量として0.15〜
    0.40重量%になるように添加してなるサワー種の調
    製方法。
  2. 【請求項2】 サワー種に接種するためのサワー種用乳
    酸菌を純粋培養する際に用いるサワー種用乳酸菌の栄養
    培地において、培地の重量あたり乾燥酵母エキスを1〜
    2重量%、マンガンを5ppm〜100ppm、ならび
    に酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれ
    らの両者を酢酸含有量として0.05〜0.40重量%
    の、少なくとも3成分を含有するサワー種用乳酸菌の栄
    養培地。
  3. 【請求項3】 サワー種に接種するためのサワー種用乳
    酸菌を純粋培養する際に用いるサワー種用乳酸菌の栄養
    培地として、培地の重量あたり乾燥酵母エキスを1〜2
    重量%、マンガンを5ppm〜100ppm、ならびに
    酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれら
    の両者を酢酸含有量として0.05〜0.40重量%
    の、少なくとも3成分を含有するサワー種用乳酸菌の栄
    養培地を用い、次に、当該栄養培地で培養されたサワー
    種用乳酸菌を小麦粉等の穀粉培地に接種してサワー種を
    調製する際に、酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1
    種またはこれらの両者を穀粉培地に対して初発の酢酸含
    有量として0.15〜0.40重量%になるように添加
    してなるサワー種の調製方法。
  4. 【請求項4】 サワー種に接種するためのサワー種用乳
    酸菌を純粋培養する際に用いるサワー種用乳酸菌の栄養
    培地として、培地の重量あたり乾燥酵母エキスを1〜2
    重量%、マンガンを5ppm〜100ppm、ならびに
    酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれら
    の両者を酢酸含有量として0.05〜0.40重量%
    の、少なくとも3成分を含有するサワー種用乳酸菌の栄
    養培地を用い、次に、当該栄養培地で培養されたサワー
    種用乳酸菌を小麦粉等の穀粉培地に接種してサワー種を
    調製する際に、酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1
    種またはこれらの両者を穀粉培地に対して初発の酢酸含
    有量として0.15〜0.40重量%になるように添加
    して調製し、その後、このサワー種の一部を用いて植え
    継ぎし培養を繰り返して継代する際に、植え継ぎ毎に、
    酢酸および酢酸ナトリウムのいずれか1種またはこれら
    の両者を穀粉培地に対して初発の酢酸含有量として0.
    15〜0.40重量%になるように添加してなるサワー
    種の調製方法。
JP04088221A 1992-03-13 1992-03-13 サワー種の調製方法及びサワー種用乳酸菌の栄養培地 Expired - Lifetime JP3118761B2 (ja)

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