JP3118023U - 有棹弦楽器 - Google Patents

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Abstract

【課題】棹部を一方の手で握りながら押弦する距離が遠い第5弦、第6弦のような複数本の弦の最後側の弦を、一方の手を伸ばした姿勢において、その一方の手の指先が届かない頭部側の位置で押弦することが行い易くする。
【解決手段】一方の手で握りながら押弦する小指に近い第1弦側aを右に見て複数本の最後の弦側fを左に見て、複数本の最後の弦fの胴部側2から第1弦aの頭部側に向けて、棹部の表面を第1a弦の頭部側方向へ右下がりに所定角度θ傾斜させている。右下がりの所定角度θの傾斜は、右下がりに捻るように所定角度傾斜されていても良い。
【選択図】図2

Description

この考案は、クラシックギター、エレキギター、アコースティックギター又は、ロックギター等の押弦を行い易くする有棹弦楽器に関する。
従来、例えばギターは、胴部と棹部と頭部と、これらの間に張られる第1弦から順の複数本の弦と、棹部に所定間隔で配されるフレットと、更にはナットを備えている。ギターでもクラシックギターやエレキギター等は、弦の本数が通常6本であるが、有棹弦楽器にもマンドリンやウクレレ、更には三味線のように種々のものがあり、6本のものもあれば、これよりも多いものも少ないものも存在する。そして、棹部の表面は、水平に形成されており(傾斜角度のない平面に形成されており)、フレットは、棹部の表面の中心線に対して垂直に同じ高さで設けられていた。棹部の表面には、指板が配されものもあるが、指板は水平な面を有するものであり、棹部に貼り合わされている。
上記有棹弦楽器の演奏の仕方を、6本の弦のクラシックギターやエレキギターの例で説明すると、右利きの演奏者が演奏を行う際、左手で棹部を下方である第1弦側から上方である第6弦側へ握り左手指先で弦を押さえるが、同時に左手で棹部を握らなければならない。そして、左腕を伸ばした姿勢となる頭部側において弦を押弦する場合は、押弦が難しくなる。すなわち、左手指先が棹部の表面(以下、指板の表面を含めて使用する。)やフレット等に対して弦をしっかりと押さえ込むようにすることは、左腕を伸ばした姿勢となる頭部側に行けば行くほど難しくなる。特に、第5弦、第6弦のような複数本の弦の最後側(最上部側)を押弦する際の演奏においては、棹部を握っている左手から距離が近い第1弦、第2弦を押弦する際に比べて、棹部を握っている左手から距離が遠いために、弦に届きにくく、さらに左手指先に力が入りにくくなり、左手で棹部を握りながらの不安定な状態となり、押弦が難しくなる。
このような事情から、棹部の表面の中心線に対して、ナット及びフレットを第1弦の頭部側方向へ右上がりに傾斜させて設けた試みがなされている(特許文献1を参照)。特許文献1には、従来であれば棹部の表面(指板14)の中心線に対し垂直に設けてあるナット及びフレットを、通常演奏する際に、演奏者の左手指先が自然に向く方向である第6弦の胴部側(ギターの表面板11側)方向へ傾斜させている。すなわち棹部の表面(指板14)の中心線に対し、棹部の表面(指板14)を正面から見て右上がりにナット15及びフレット16を傾斜させて設けている。なお、この傾斜角度αは3〜15度が適当であるとされている。
上記特許文献1では、通常演奏する際に自然に左手指先が向く方向である第6弦の胴部側(ギターの表面板11側)方向から、従来であれば棹部の表面(指板14)の中心線に対し垂直に設けてあるナット及びフレット側へ無理に力を加えて、左手指先で弦を押さえるという不便さが解消でき、容易に演奏が出来るとされている。
実開昭51−160530
しかしながら、特許文献1記載の考案のように、従来であれば棹部の表面の中心線に対し垂直に設けてあるナットやフレットを、通常演奏する際に、演奏者の左手指先が自然に向く方向である第6弦の胴部側方向へ、すなわち棹部の表面中心線に対し、棹部の表面を正面から見て右上がりに傾斜させて設けた場合、この傾斜角度αは3〜15度が適当であるとされているように、その傾斜角度には10度以上もの差異を有する。通常演奏する際に自然に左手指先が向く方向は、演奏者によって各々異なるため、傾斜角度によってはかえってナット及びフレットに左手指先が届きにくくなる場合も予測され、その際押弦が難しくなる。仮に、指先が弦に届いたとしても、指板やフレットにしっかりと押さえ込むようにしなければならない場合もあるため、左手の人差し指等が第5弦や第6弦に届いたとしても、それだけでは十分に押弦できない場合もある。
第5弦、第6弦を押弦する際の演奏においては、棹部を握っている左手から距離が近い第1弦、第2弦を使用する際に比べて、棹部を握っている左手から距離が遠いために、左手指先に力が入りにくくなり押弦が難しくなる。さらに胴部側と比較しても頭部側の弦、ナット、フレット及び棹部の表面を押弦する際の演奏においては、左腕を伸ばした姿勢でなければ、押弦できないため、左腕を伸ばした姿勢であって、かつ左手で棹部を握りながらの不安定な状態となり、左手指先に力が入りにくくなり押弦が難しくなる。つまり、左手指先と、弦、ナット、フレット及び棹部の表面の距離が遠いほど、左手指先が弦、ナット、フレット及び棹部の表面に届きにくくなり、押弦が難しくなる。このため、特許文献1記載の考案も、頭部側に向かうほど、棹部を左手で固定しながら左腕を大きく伸ばしていく不安定な状態となり、左手指先に力が入りにくくなり押弦が難しくなると考えられる。
しかも、ナットやフレットは、弦の支点として弦を固定するためにあり、同時に弦が正常な振動をするうえで非常に重要な部分である。つまりナットやフレットで弦がどのように支えられているかで、音質、音程が決定される。このため、このナットやフレットを特許文献1記載の考案のように、弦と垂直ではなく傾斜角度を設けてナットやフレットを設置すると、音質、音程が変化してしまうという問題が生じてくるおそれがある。
そこで本考案の目的は、棹部を一方の手で握りながら押弦する距離が遠い第5弦、第6弦のような複数本の弦の最後側の弦を、一方の手を伸ばした姿勢において、その一方の手の指先が届かない頭部側の位置で押弦することが行い易く、しかも音質や音程には影響を与えない構造の有棹弦楽器を提供するものである。
上記問題点を解決するため、本考案請求項1に係る有棹弦楽器は、胴部と棹部と頭部と、これらの間に張られる第1弦から順の複数本の弦とを備え、棹部を一方の手で握りながら複数本の弦を他方の手の指先やピックで弾いて演奏する有棹弦楽器において、一方の手で握りながら押弦する小指に近い第1弦側を右に見て複数本の最後の弦側を左に見て、複数本の最後の弦の胴部側から第1弦の頭部側に向けて、棹部の表面を第1弦の頭部側方向へ右下がりに所定角度傾斜させていることを特徴とする。前記右下がりの所定角度の傾斜は、右下がりに捻るように所定角度傾斜されていても良い。
本考案によれば、右利きの演奏者の場合において、左手で棹部を握りながら押弦する際に、左腕が伸びた状態となるような場合でも、左手指先(中指や人差し指)と棹部の表面(指板の表面を含む。)の距離が右下がりに傾斜させた分だけ近くなるため、頭部側の弦を、意識せずに容易に押弦することが可能となる。特に、第5弦や第6弦のような最後側の弦であっても、左手指先(中指や人差し指等)により意識せずに容易に押弦することが可能となる。
本考案の請求項3に係る有棹弦楽器は、胴部と棹部と頭部と、これらの間に張られる第1弦から順の複数本の弦とを備え、棹部を一方の手で握りながら複数本の弦を他方の手の指先やピックで弾いて演奏する有棹弦楽器において、一方の手で握りながら押弦する小指に近い第1弦側を右に見て複数本の最後の弦側を左に見て、棹部の表面の胴部側から頭部側に向けて、棹部の表面を複数本の最後の弦の頭部側方向へ左下がりに所定角度傾斜させていることを特徴とする。前記左下がりの所定角度の傾斜は、左下がりに捻るように所定角度傾斜されていても良い。
本考案によれば、左利きの演奏者の場合において、左手で棹部を握りながら押弦する際に、右腕が伸びた状態となるような場合でも、右手指先(中指や人差し指)と棹部の表面(指板の表面を含む。)の距離が左下がりに傾斜させた分だけ近くなるため、頭部側の弦を、意識せずに容易に押弦することが可能となる。特に、第5弦や第6弦のような最後側の弦であっても、右手指先(中指や人差し指等)により意識せずに容易に押弦することが可能となる。
ここで、前記棹部に指板が取り付けられ、この指板に前記所定角度の傾斜が形成されていることにより、指板のみを上記傾斜のように加工して、これを棹部に貼り合せれば良くなり、棹部の表面を加工する必要はなくなる。
本考案に係る有棹弦楽器においては、複数本の最後の弦の胴部側から第1弦の頭部側に向けて、棹部の表面を第1弦の頭部側方向へ右下がりに所定角度傾斜させているか、又は、複数本の最後の弦の胴部側から第1弦の頭部側に向けて、棹部の表面を第1弦の頭部側方向へ左下がりに所定角度傾斜させていることにより、棹部を握りながら押圧する指(特に人差し指や中指)が棹部の表面や指板(更には、これらに設けられているナットやフレット等)の距離が近くなり、一方の手が伸びた状態で、かつ一方の手で棹部を握りながら押弦が行い易くなり、演奏者は、棹部の長手方向において徐々に緩やかな傾斜であるから、その傾斜を意識せずに演奏することが可能になる。また、棹部の長手方向において徐々に傾斜させた緩やかな傾斜であるから、フレットやナットと弦との距離や交差状態は変わるものではなく、音質や音程には影響を与えない構造の有棹弦楽器を提供するものことが可能になる。
以下、この考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態は、ギター(中でもクラシックギター或いはエレキギター)を本考案に適用した有棹弦楽器(演奏者が右利きの場合)であり、図1は、その全体構成を示す図であり、図2は、棹部4の表面の下り傾斜を説明する図であり、図3(a)はフレット5に対して平行に、つまり棹部の表面3中心線に対して垂直に、胴部2側棹部4をA線で切断した断面図で、図3(b)は図3(a)と同様に棹部4中程をB線で切断した断面図で、図3(c)はナット6側棹部4を図3(a)と同様にしてC線で切断した断面図である。このように、一方の手(左手)で握りながら押弦する小指に近い第1弦a側を右に見て複数本の最後の弦(第6弦f)側を左に見て、複数本の最後の弦(第6弦f)の胴部2側から第1弦aの頭部9側に向けて、棹部4の表面を第1弦aの頭部側9の方向へと右下がりに所定角度θを傾斜させているクラシックギター1である。傾斜角度θは、演奏者に上記傾斜角度を意識させることなく演奏をさせるため、緩やかな右下がりの所定角度が好ましく、例えば10度前後から20度前後の傾斜角度になっている。ただし、理論的には、数度の傾斜から45度前後の傾斜にすることも可能である。また、右下がりに捻るように所定角度θの傾斜が形成されていても良い。
さらに、詳しく説明すると、有棹弦楽器の演奏を行う際には、右利き演奏者であれば、左手で棹部4を下方である第1弦a側から握り左手指先を上方である第6弦f側に向けて弦を押さえることが通常であるが、図3(a)、図3(b)及び図3(c)に示すように、Ha>Hb>Hcとなり、棹部4の、つまり指板3の表面を第1弦a側を右に第6弦f側を左に見て、棹部の表面3を第6弦fの胴部側から第1弦aの頭部側へ向けて、指板3の表面を第1弦aのナット6側方向へ緩やかに右下がりに傾斜させている。すなわち、図2に示すように、胴部2側(或いはサドル7側)の第1弦aの位置をA´とし、第6弦fの位置をB´とし、他方、ナット6側の第1弦aの位置をC´とし、第6弦fの位置をD´とすると、従来のクラシックギターは、上記A´,B´,C´,D´の位置は同じ位置、つまり平面であるが、本実施の形態のクラシックギター1は、上記D´点が角度θ分だけ捻り下げるように徐々に傾斜させて、D″の位置に設けている。このように傾斜させると、見た目には、右下がりの所定角度θの傾斜は、右下がりに捻るように所定角度傾斜されているようになる。この傾斜は、棹部4の長手方向において徐々に傾斜させた緩やかな傾斜であるから、フレット5やナット6と弦a〜fとの距離や交差状態は変わるものではなく、音質や音程には影響を与えない構造になる。
ここで、本実施の形態では、棹部4の表面に指板3が貼り合わせられているが、指板3に上記のような下り傾斜を形成せずに、棹部4の表面に上記のような下り傾斜を形成しても良い。ただし、上記傾斜角度θを設けることは、精密な加工が必要になるが、本実施の形態では、指板3のみ加工すれば足り、そして棹部4に貼り合せれば良くなる。
また、ナット6とフレット5は、棹部4の表面の中心線に対して垂直に設けられている。ナット6は、弦a〜fの支点として弦を固定するとともに弦a〜fが正常な振動をするうえで非常に重要な部分である。つまり、ナット6で弦a〜fがどのように支えられているかで、音質、音程が決定される。よってナット6は棹部4の表面の中心線に対して垂直に設けている。同様に、フレット5においても、弦a〜fを押さえるとその押さえた位置とフレット5の位置によって音質、音程が決定される非常に重要な部分となるため垂直に設置している。また、フレット5は弦a〜fと接触するために、こすれて磨耗するので、ある程度年数が経つと交換する必要性がでてくる。その際においても、ナット6と同様に垂直に設置してあれば交換の作業が容易になるという利点も考慮でき、フレット5は垂直に設置している。
したがって、右利きの演奏者は、左手指先と指板3の距離が右下がりに傾斜させた分だけ近くなるため、従来、左手で棹部4を握りながらの不安定な状態における通常は届きにくかった、頭部9側の第5弦eや第6弦fのような複数本の最後の弦へ左手指先が容易に、力強く押弦可能となる。例えば、クラッシクギターやエレキギターにおいて、ネック(棹)の根元付近からナット6に向けて一気に左手の押弦をそのまま引き上げるようにするときも、手を伸ばした状態でのしっかりした押弦が困難になるようなことが防止できる(意識しなくとも)。このように傾斜角度θを持たせても、弦a〜fとナット6とは垂直に交差するとともに、棹部の表面3から弦a〜fまでの距離も一定であるから、特許文献1のように音質や音程に影響を与えることもない。
なお、演奏者が左利きである場合においては、右手で棹部4を固定し、右指先で弦、ナット6、フレット5及び棹部の表面3を押弦するため、上記で示した傾斜方向が当然逆となる(図3における傾斜が逆向きになる)。つまり、棹部の表面3の第1弦a側を右に第6弦f側を左に見て、第1弦aの胴部2側から第6弦fの頭部側9の方向へ、棹部の表面3を第6弦fのナット6側方向へ緩やかに左下がりに傾斜させて設けることにより、右指先と弦、ナット6、フレット5及び棹部の表面3の距離が近くなり、右腕が伸びた状態で、かつ右で棹部4を握りながらの不安定な状態においても、ナット6側の弦、ナット6、フレット5及び棹部の表面3が押さえ易くなり、例えば演奏初心者であっても、棹部4を握っている右から距離が遠い第5弦e、第6弦fを押弦する演奏であって、かつ、右腕を伸ばした姿勢でなければ、右指先が弦a〜f、ナット6、フレット5及び棹部の表面3に届かない押弦が容易に可能となる。
以上、本実施の形態の有棹弦楽器はギターを例に説明したが、本考案はこれに限定されるものではなく、棹部を有する管弦楽器であれば、マンドリン、ウクレレ、バイオリン等の弦楽器においても適用可能である。
本考案に係る有棹弦楽器をクラシックギターに適用した一実施の形態の図である。 上記実施の形態の棹部の表面の下り傾斜を説明する図である。 上記実施の形態の棹部の表面の下り傾斜を説明する断面図であり、(a)はA線で切断した断面図であり、(b)はB線で切断した図であり、(c)はC線で切断した図である。 従来のギターを示す全体図である。
符号の説明
1 有棹弦楽器(ギター)
2 胴部
3 棹部の表面(指板)
4 棹部
5 フレット
6 ナット
7 サドル
9 頭部
a 第1弦
b 第2弦
c 第3弦
d 第4弦
e 第5弦
f 第6弦
θ 所定角度傾斜の傾斜

Claims (6)

  1. 胴部と棹部と頭部と、これらの間に張られる第1弦から順の複数本の弦とを備え、棹部を一方の手で握りながら複数本の弦を他方の手の指先やピックで弾いて演奏する有棹弦楽器において、
    一方の手で握りながら押弦する小指に近い第1弦側を右に見て複数本の最後の弦側を左に見て、複数本の最後の弦の胴部側から第1弦の頭部側に向けて、棹部の表面を第1弦の頭部側方向へ右下がりに所定角度傾斜させていることを特徴とする有棹弦楽器。
  2. 前記右下がりの所定角度の傾斜は、右下がりに捻るように所定角度傾斜されていることを特徴とする請求項1記載の有棹弦楽器。
  3. 胴部と棹部と頭部と、これらの間に張られる第1弦から順の複数本の弦とを備え、棹部を一方の手で握りながら複数本の弦を他方の手の指先やピックで弾いて演奏する有棹弦楽器において、
    一方の手で握りながら押弦する小指に近い第1弦側を右に見て複数本の最後の弦側を左に見て、棹部の表面の胴部側から頭部側に向けて、棹部の表面を複数本の最後の弦の頭部側方向へ左下がりに所定角度傾斜させていることを特徴とする有棹弦楽器。
  4. 前記左下がりの所定角度の傾斜は、左下がりに捻るように所定角度傾斜されていることを特徴とする請求項3記載の有棹弦楽器。
  5. 前記棹部に指板が取り付けられ、この指板に前記所定角度の傾斜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の有棹弦楽器。
  6. 前記有棹弦楽器が6本の弦を有するクラシックギター、エレキギター、アコースティックギター又は、ロックギターであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の有棹弦楽器。
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