JP3111583U - サドルカバー - Google Patents

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Abstract

【課題】荷重の分散性に優れ、衣服の摩耗などを軽減するサドルカバーを提供する。
【解決手段】サドルカバー1は、立体編物20からなる基材層10と、通気性を有する合成樹脂膜からなり、基材層10の表面に積層される表面層50とを備えた合成皮革から形成されている。皮革調を呈する表面層50によって立体編物20が被覆されており、立体編物が直接衣服に接触する構成ではないため、乗車時における臀部のズレ等による衣服の摩耗を低減できると共に、雨天時においては表面層の雨滴を拭いやすいという利点を有する。また、立体編物20は、グランド編地の伸び及び連結糸の倒れ等により、1点集中荷重では柔らかなバネ特性が作用するため、速やかに外力を吸収、分散できると共に、面接触で荷重が付加された際には線形性の高いバネ特性が作用するため、人体の支持機能が高い。
【選択図】図3

Description

本考案は、自転車、オートバイなどの二輪車用のサドルカバーに関する。
特許文献1及び2には、立体編物を利用したサドルカバーが開示されている。立体編物を用いることにより、薄型でありながらクッション性に優れると共に、通気性が高いため蒸れ感を低減できるという利点を有している。
特開2001−138971号公報 実用新案登録第3053249号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示されたものは、立体編物のみからなる構造であるため、乗車時における臀部のズレにより、衣服が摩耗しやすい。また、雨天時においては、立体編物を構成する糸の隙間に水分が浸入するため、乾燥するのを待たずに表面を拭いただけで着座する場合には、衣服が濡れやすい。さらに、立体編物のみで構成した場合には、高級感の点で劣る。
本考案は上記の点に着目してなされたもので、立体編物を基材層とした合成皮革を利用することにより、立体編物の利点を生かしつつ、衣服の摩耗や雨天時における衣服の濡れなどを軽減できると共に、本革に近い高級感を奏することができるサドルカバーを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、請求項1記載の本考案では、二輪車のサドルを被覆するために用いられ、少なくともサドル上面を被覆する被覆部と、該被覆部をサドル上面に固定する固定手段とを備えたサドルカバーであって、
前記被覆部が、基材層と、該基材層の表面に積層された表面層とを備えてなる合成皮革を用いてなり、
前記基材層が、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造に形成された立体編物から構成され、
前記表面層が、通気性を有する合成樹脂膜から形成されていることを特徴とする請求項1記載のサドルカバーを提供する。
請求項2記載の本考案では、前記合成皮革の表面層は、透過水蒸気量が70g/m hr以上であることを特徴とする請求項1記載のサドルカバーを提供する。
請求項3記載の本考案では、前記合成皮革の基材層は、前記立体編物の裏面に、さらに、保湿性を備えた通気性のウレタン層が積層されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のサドルカバーを提供する。
請求項4記載の本考案では、前記ウレタン層は、通気度が50〜200cc/cm・secの範囲であることを特徴とする請求項3記載のサドルカバーを提供する。
請求項5記載の本考案では、前記表面層と接合する立体編物の接合面は、粘性減衰係数が5〜20Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が1〜3Nの範囲であるか、又は、粘性減衰係数が20〜100Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が3〜15Nの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のサドルカバーを提供する。
請求項6記載の本考案では、前記立体編物のグランド編地を形成するグランド糸の太さが、55〜168デシテックスの範囲であり、連結糸の太さが、170〜300デシテックスの範囲であることを特徴とする請求項5記載のサドルカバーを提供する。
請求項7記載の本考案では、前記表面層と接合する該立体編物の接合面が、起毛処理されていることを特徴とする請求項5又は6記載のサドルカバーを提供する。
本考案のサドルカバーは、立体編物からなる基材層と、通気性を有する合成樹脂膜からなり、基材層の表面に積層される表面層とを備えた合成皮革から形成されている。このため、表面層を形成する合成樹脂膜によって立体編物の有する高い通気性が損なわれることがない。また、皮革調を呈する表面層によって立体編物が被覆されており、立体編物が直接衣服に接触する構成ではないため、乗車時における臀部のズレ等による衣服の摩耗を低減できると共に、雨天時においては表面層の雨滴を拭いやすいという利点を有する。
また、立体編物は、グランド編地の伸び及び連結糸の倒れ等により、1点集中荷重では柔らかなバネ特性が作用するため、速やかに外力を吸収、分散できると共に、面接触で荷重が付加された際には線形性の高いバネ特性が作用するため、人体の支持機能が高い。従来の合成皮革は、本革よりも折れや摩耗に弱いという弱点を有するが、基材層として立体編物を用いることにより、本革に近い柔らかなクッション機能を備えさせることができるという利点も有する。
また、立体編物は引っ張り方向だけでなく圧縮方向にもバネ特性や粘性特性が作用すると共に、合成皮革を構成する表面層の厚みは極めて薄い。このため、立体編物における表面層との接合面の触感が、そのまま薄い表面層を介して表皮材自体の触感として現れやすい。逆に言えば、立体編物における表面層との接合面の触感を本革に近い触感に設定すれば、表面層を介しての触感も本革に近似することになる。従って、立体編物における表面層との接合面における触感を決定する粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を所定の範囲とすることにより、より人に好まれる本革に近似した合成皮革となり、サドルカバーとして適する。
以下、図面に示した本考案の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。図1は、本考案の一の実施形態に係るサドルカバー1を示す側面図であり、図2は底面図である。これらの図に示したように、本実施形態のサドルカバー1は、自転車やオートバイなどの二輪車のサドルの上面を被覆する被覆部2と、サドルの上面を被覆した後、被覆部2の下縁を絞ってサドルに固定する固定手段としての固定用紐部材3とを備えて構成される。
本実施形態において被覆部2は、合成皮革から構成される。この合成皮革は、図3に示したように、基材層10と、その表面に積層され、皮革調の風合いを出す表面層50との積層体から構成される。基材層10は、立体編物20とウレタン層30との積層体からなり、該立体編物20の裏面(下面)にウレタン層30の表面(上面)が接している。立体編物20は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地21,22と、該一対のグランド編地21,22間を往復して両者を結合する多数の連結糸23とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
一方のグランド編地21は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地22は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸23は、一方のグランド編地21と他方のグランド編地22とが所定の間隔を保持するように、この一対のグランド編地21,22間に編み込んだもので、立体編物20に所定の剛性を付与する。グランド編地21,22を形成するグランド糸の太さは、立体編地20に必要な腰の強さを具備させることができると共に、編成作業が困難にならない範囲のものが選択される。
但し、本実施形態では、立体編物20に表面層50が積層されるため、少なくとも該表面層50が積層される立体編物20の接合面(上面)側に位置するグランド編地21は、合成樹脂膜からなる表面層50を積層した際に、該表面層50にグランド編地21の編地組織の模様ないしは凹凸が見えるなどの悪影響を及ぼさないようにする必要がある。従って、立体編物20の一方のグランド編地21は、表面層50との接合面が、できるだけ細かな生地密度になっていることが好ましい。
具体的には、立体編物20の一方のグランド編地21における表面層50との接合面は、粘性減衰係数が5〜20Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が1〜3Nの範囲であるか、又は、粘性減衰係数が20〜100Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が3〜15Nの範囲であることが好ましい(図7(a)において「最適」で示した範囲」。粘性減衰係数及びクーロン摩擦力がかかる範囲になっている場合には、本革に近似した触感となり、薄い表面層50を介しての触感も本革に近似する。また、生地密度が細かくなることから、薄い表面層50を介しての外観も本革に近似することになる。立体編物20における表面層50との接合面において上記した特性を得るためには、グランド糸及び連結糸としてできるだけ細い糸を選択する手段がある。具体的には、グランド糸の太さとしては55〜168デシテックス、連結糸の太さとしては170〜300デシテックスの範囲から選択することが好ましい。但し、グランド糸や連結糸の太さが上記した範囲内であっても、あるいは上記した範囲よりも太い場合であっても、上記所定の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の範囲に収まらない場合には、接合面を起毛させることにより、生地密度を実質的に高密度にし、上記範囲の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を得られるように設定することができる。なお、起毛手段は限定されるものではなく、針布やサンドペーパなどを用いて起毛させることができる。
ここで、上記した粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の範囲は、複数種類の本革について、粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を測定し、各本革に手指で触ったときの好適感(好き、又は、嫌い)、柔らかさを評価し、両者の相関を調べた結果に基づくものである。
粘性減衰係数を測定するに当たっては、測定対象物である各本革を平坦な測定板上に置き、該本革上に手が自然に置かれた状態に極めて近い状態で、すなわち、本革鉛直方向に対しては自由度があるように支持した1kgの負荷質量を本革表面に沿って0.03〜0.06m/sで往復運動させ、その際の荷重の変化をロードセルで測定した。そして、次のようにデータ処理した。
まず、負荷質量に作用する力Fは、速度の関数で表されると考える。力Fは、ロードセルに作用する荷重に等しいとする。横軸を負荷変位X、縦軸を負荷質量に作用する減衰力Fとするリサージュ図形を図6(a)に示したように作成する。次に、速度V=ΔX/Δtを計算し、横軸を負荷質量変位X、縦軸をVとするリサージュ図形を図6(b)に示したように作成する。図6(b)に示すF1、F2、V1,V2を読み取る。ここで、減衰力F1(X),F2(X)は、減衰係数C、クーロン摩擦力Fcを用いて次の式で表すことができると仮定する。
F1(X)=CV1+Fc・・・・(1)
F2(X)=CV2−Fc・・・・(2)
上記式(1)と(2)の引き算を行い、次のように変形する。
C=[F1(X)−F2(X)−2Fc]/(X1−X2)・・・・(3)
ΔF=CΔV+2Fc ・・・・(4)
式(3)より減衰係数を求める。また、式(4)より縦軸を減衰力、横軸を速度とするグラフを作成する。傾きが減衰係数で切片の1/2がクーロン摩擦力Fcとなる。
式(3)、(4)を用いて測定した各本革のクーロン摩擦力Fc(N)及び粘性減衰係数C(Ns/m)は次のとおりであった。
本革タイプ クーロン摩擦力Fc(N) 粘性減衰係数C(Ns/m)
茶1 8.324533782 65.0685926
茶2 2.23399982 27.21141851
青 8.320680589 20.6270551
バロン 3.534694874 16.54502064
ネイビーブルー 3.345642061 -1.288703059
肌色 2.116373436 11.34227099
黒1 2.849930834 28.47915117
黒2 2.682115963 4.168718135
黒3 1.848418019 17.92211998
23名の被験者により好適感(心理量)、柔らかさ(心理量)を上記各本革について評価したところ、好適感は柔らかさと高い相関があり、そしてこの柔らかさで高い評価が示された本革の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を調べると、上記した粘性減衰係数5〜20Ns/mの範囲及びクーロン摩擦力1〜3Nの範囲という組み合わせと、粘性減衰係数20〜100Ns/mの範囲及びクーロン摩擦力3〜15Nの範囲という組み合わせにおいて、柔らかさという心理量と高い相関が認められた。上記の本革タイプの中では、「茶2」、「バロン」、「ネイビーブルー」、「黒1」、「黒2」の5タイプが適切な範囲からはずれることになる。以上のことから、立体編物20の接合面の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を上記の範囲に設定することにより、好適感レベルの高い本革とほぼ同等の触感を得ることができる。なお、「柔らかさ」については、人の評価バラツキが懸念されたため、クラスター分析により人の分布状況を確認したところ、5グループに分かれたが、その内訳が、Aグループ:15名、Bグループ:3名、Cグループ:3名、Dグループ:1名、Eグループ:1名であり、大きなバラツキのないレベルであることが確認できた。
グランド糸又は連結糸の素材としては、上記したように、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられるが、これらの素材は単独で用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂類、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン樹脂類、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)あるいはこれらの樹脂を2種類以上混合した樹脂である。なお、ポリエステル系樹脂はリサイクル性に優れており好適である。また、グランド糸又は連結糸の糸形状は限定されるものではなく、丸断面糸でも異形断面糸等でもよい。
連結糸23は、表層と裏層のグランド編地21,22中にループ状の編み目を形成してもよく、挿入組織で表層と裏層のグランド編地に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸23が表層と裏層の編地21,22を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編地20の形態安定性を向上させる上で好ましい。
なお、立体編物20は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができる。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等がある。寸法安定性のよい立体編物を得る上で、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。
上記した条件を満たす立体編物20の具体例としては次の立体編物がある。
(1)製品番号T21502(旭化成せんい株式会社製)
表側のグランド編地21のグランド糸:
材料:ポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
太さ:167デシテックス/48フィラメント
連結糸23:
材料:ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
太さ:280デシテックス
一方、グランド糸、連結糸の太さが上記範囲外であるが、接合面を起毛させることにより、所定の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の得られるものとしては次の立体編物がある。
(2)製品番号T24004A−3S(以下、「T24004A」(旭化成せんい株式会社製)
表側のグランド編地21のグランド糸:
材料:ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
太さ:500デシテックス/144フィラメント
連結糸23:
材料:ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
太さ:390デシテックス
また、上記(1)の製品番号T21502及び(2)の製品番号T24004Aの粘性減衰係数及びクーロン摩擦力を測定したところ、次表のとおりであった。
試料 測定方向 クーロン摩擦力Fc(N) 粘性減衰係数C(Ns/m)
T21502(1) ロール方向 2.736826521 23.33231611
T21502(2) 直角方向 2.490458392 9.949691485
T24004A(1) ロール方向 2.381075874 11.76378238
T24004A(2) 直角方向 2.048227787 -3.33748056
T24004A(3) 直角方向 1.968455191 9.778626064(起毛処理)
なお、表中、「ロール方向」は、立体編物の原反の巻き取り方向であり、「直角方向」はそれに直交する方向である。また、T24004A(3)は、ロール方向に沿って起毛処理したものである。
図7(a)は、上記の結果をプロットしたものであり、図7(b)は上記結果から作成した最小二乗近似による1次関数グラフである。これらの図から、製品番号T21502は、ロール方向、直角方向とも図7(a)の「最適」範囲に含まれるため、そのまま使用できる。これに対し、T24004Aの場合には、未処理状態では、直角方向の値(T24004A(2)の値)が「最適」範囲からはずれて「適」範囲になるため、そのままでは使用できない。しかしながら、これを起毛処理した場合には、直角方向の値(T24004A(3)の値)が、「最適」範囲に収まり、本実施形態の立体編物20として用いることが可能となる。なお、図7(a)において、「最適」は粘性減衰係数及びクーロン摩擦力が上記した2つの好ましい範囲に収まり、本実施形態の立体編物20として使用できる範囲を示し、「適」は、そのままでは使用できないが、起毛処理することにより、「最適」範囲に移行する可能性のある粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の範囲であり、「不適」は、起毛処理しても「最適」範囲に移行する可能性がほとんどない粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の範囲である。
ウレタン層30は、通気性、保湿性を備えるスラブウレタンフォームが用いられる。好ましいスラブウレタンフォームは、通気度が50〜200cc/cm・secの範囲である。厚さは、かかる機能を有する限り、制限されるものではないが、5〜20mmであることが好ましい。基材層10としては、立体編物20のみから構成することもできるが、ウレタン層30を有することにより、着座時における人体が接触している付近の環境を、乗物用シートで適当とされる55%の保湿度を保つことができるため好ましい。また、ウレタン層30は、立体編物20の裏面に接着剤を介して接合される。
表面層50は、合成皮革の表面層として従来用いられている合成樹脂膜であれば何であってもよいが、例えば、離型紙上にポリウレタンを塗布して加熱乾燥して得られるポリウレタン膜を用いることができる。ポリウレタン膜を形成するポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変成物等が挙げられるが、中でも、ポリカーボネート系ポリウレタンが好適である。表面層50を構成するポリウレタン膜の厚みは、乾燥厚で10〜100μm程度が好ましい。表面層50を構成するポリウレタン膜は、離型紙が貼着された面と反対面に接着剤が塗布されて加熱乾燥され、かかる接着剤を塗布した面を立体編物20の接合面に重なるようにして熱圧着される。接着剤としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変成物等が挙げられ、中でもポリエーテル系ポリウレタンが好ましい。また、接着剤の厚みは50〜100μm程度が適当である。
表面層50を構成するポリウレタン膜は、通気性があることが好ましく、さらには、透過水蒸気量が70g/m hr以上であることがより好ましい。そのため、上記したポリウレタン膜は、スキン層をなくすように、コールドキュアでは除圧発泡による成型金型で発泡したり、ホットキュアによる連泡の発泡組織を持つものが好ましい。
本実施形態によれば、サドルカバー1の被覆部2を構成する合成皮革が、基材層10として立体編物20を備えたものから構成されている。従って、立体編物20特有のバネ特性が機能し、例えば、手指や骨の突出部などによる1点集中荷重がかかった際には、柔らかなバネ作用により、表面層50に生じるしわは小じわになり、本革調の外観、質感を呈する。その一方で、立体編物20特有の広い面積で荷重がかかった際には、線形性の高いバネ特性が作用し、面剛性が高まるため、着座時において高い支持感が発揮される。また、人体による加重と抜重が繰り返されることにより、立体編物20を構成する連結糸の倒れ、ないしは座屈特性、及びそれらに伴う連結糸の復元力が作用し、立体編物の空間内の空気の移動を効果的に促し、通気性を備えた表面層50やウレタン層30を通じて高い換気機能を発揮することができる。
(試験例)
厚さ10mm、通気度100cc/cm・secのスラブウレタンフォームに、上記した製品番号T21502(旭化成せんい株式会社製)の立体編物(厚さ11mm)を接着剤を用いて固着して一体化して基材層を得た。一方、離型紙上に乾燥厚30μmとなるようにポリカーボネート系ポリウレタンを塗布して加熱乾燥し、表面層を得て、該表面層の片面にポリエーテル系ポリウレタンの接着剤を乾燥厚で50μmとなるように塗布して加熱乾燥した。
接着剤を塗布した表面層を、立体編物の接合面に積層して熱圧着し、所定時間放置後離型紙を剥離し、試験例の合成皮革を得た。
得られた合成皮革を、平らな測定面上に載置し、直径30mm、直径98mmの加圧板により、それぞれ、50mm/minの速度で100Nまで加圧し、試験例の合成皮革の荷重−たわみ特性を測定した。結果を図4〜図5に示す。なお、直径30mmの加圧板は、人の突出している骨の部分の大きさにほぼ相当し、直径98mmの加圧板は、体重60kg(日本人成人の平均体重)の人が二輪車のサドルに着座した際の体圧分布において、各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力がかかる大きさにほぼ相当する。
図4から、直径30mmの加圧板により加圧した際には、変位量約3mmまでの間、極めて低いバネ特性を示している。これは、立体編物の連結糸の倒れ、グランド編地の伸びによるものであり、さらに、変位量約11mmまでの間も変位量約3mmまでと比較すると多少高くなるが、低いバネ特性を示している。変位量約11mmを過ぎた時点から急激にバネ特性が高くなるが、これは、表面層の特性が出ているものと考えられる。従って、骨の突出している部分や手指等により押圧された際には、この柔らかなバネ特性により荷重を吸収し、表面層に折れなどを生じさせることなく、小じわがよるような外観変化を付与することができる。
直径98mmの加圧板により加圧した際には、図5に示したように、変位量約3mmまでの間は低いバネ特性で推移しているが、その後は急激に線形性が高くなっている。また、変位量約3mmまでの間では、加重工程と抜重工程とでヒステリシスロスが生じている。ヒステリシスロスが生じているのは、スラブウレタンフォームの影響であり、これにより、直径98mmといった所定の面積で荷重がかかった際の着座時における初期フィーリングを柔らかな感じにする作用がある。変位量約3〜6mmにおいて線形性が高くなっているのは、立体編物の特性によるものであり、これにより、人体を支持する際の強い支持感が得られる。
以上のことから、本考案の合成皮革からなるサドルカバーは、立体編物により小さな加圧面積では小じわを生じさせるようなバネ特性が機能し、表面層の外観変化が、より本革に近似した形態になる一方で、大きな加圧面積では、荷重の支持性が高い。
なお、上記実施形態では、被覆部2をサドル上面に固定するための固定手段として固定用紐部材3を用いているが、これに代えて、ゴムひも等を用いてもよいことはもちろんである。
図1は、本考案の一の実施形態に係るサドルカバーを示す側面図である。 図2は、上記実施形態に係るサドルカバーの底面図である。 図3は、上記実施形態に係るサドルカバーに用いた合成皮革の構造を説明するための断面図である。 図4は、試験例の合成皮革を直径30mmの加圧板で押圧した際の荷重−たわみ特性を示す図である。 図5は、試験例の合成皮革を直径98mmの加圧板で押圧した際の荷重−たわみ特性を示す図である。 図6(a),(b)は、粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の求め方を説明するための図である。 図7(a),(b)は、本考案の実施形態に係る合成皮革の粘性減衰係数及びクーロン摩擦力の適切な範囲を説明するための図である。
符号の説明
1 サドルカバー
2 被覆部
10 基材層
20 立体編物
30 ウレタン層
50 表面層

Claims (7)

  1. 二輪車のサドルを被覆するために用いられ、少なくともサドル上面を被覆する被覆部と、該被覆部をサドル上面に固定する固定手段とを備えたサドルカバーであって、
    前記被覆部が、基材層と、該基材層の表面に積層された表面層とを備えてなる合成皮革を用いてなり、
    前記基材層が、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造に形成された立体編物から構成され、
    前記表面層が、通気性を有する合成樹脂膜から形成されていることを特徴とする請求項1記載のサドルカバー。
  2. 前記合成皮革の表面層は、透過水蒸気量が70g/m hr以上であることを特徴とする請求項1記載のサドルカバー。
  3. 前記合成皮革の基材層は、前記立体編物の裏面に、さらに、保湿性を備えた通気性のウレタン層が積層されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のサドルカバー。
  4. 前記ウレタン層は、通気度が50〜200cc/cm・secの範囲であることを特徴とする請求項3記載のサドルカバー。
  5. 前記表面層と接合する立体編物の接合面は、粘性減衰係数が5〜20Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が1〜3Nの範囲であるか、又は、粘性減衰係数が20〜100Ns/mの範囲であり、かつ、クーロン摩擦力が3〜15Nの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のサドルカバー。
  6. 前記立体編物のグランド編地を形成するグランド糸の太さが、55〜168デシテックスの範囲であり、連結糸の太さが、170〜300デシテックスの範囲であることを特徴とする請求項5記載のサドルカバー。
  7. 前記表面層と接合する該立体編物の接合面が、起毛処理されていることを特徴とする請求項5又は6記載のサドルカバー。
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