JP3108016B2 - 周波数オフセット補償装置 - Google Patents

周波数オフセット補償装置

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JP3108016B2
JP3108016B2 JP08171647A JP17164796A JP3108016B2 JP 3108016 B2 JP3108016 B2 JP 3108016B2 JP 08171647 A JP08171647 A JP 08171647A JP 17164796 A JP17164796 A JP 17164796A JP 3108016 B2 JP3108016 B2 JP 3108016B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディジタル移動通
信のTDMAデータ受信装置に利用する周波数オフセッ
ト補償装置に関し、特に、低消費電力化を実現したもの
である。
【0002】
【従来の技術】TDMA方式のディジタル移動通信にお
けるデータ受信装置は、時分割された自局宛の信号(バ
ースト)を受信し、検波してデータを復号するが、この
とき、送信側が変調に用いた搬送波周波数と受信側が復
調に用いる発振周波数との間に周波数誤差(オフセッ
ト)があると、正しい復号ができない。そこで、データ
受信装置は、周波数オフセット補償装置を具備し、この
周波数オフセットを補償している。
【0003】従来の周波数オフセット補償装置は、受信
する信号が、例えばTDMAのπ/4シフトQPSK変
調波信号である場合、図6に示すように、波形整形され
たベースバンドの波形データのシンボル識別時点におけ
る同相成分X(nT)が印加される入力端子61と、波形
整形されたベースバンドの波形データのシンボル識別時
点における直交成分Y(nT)が印加される入力端子62
と、入力端子61、62に印加された波形データX(n
T)、Y(nT)を取り込み、受信したπ/4シフトQ
PSK変調波信号の変調位相差の余弦と正弦とをそれぞ
れ同相成分I(nT)、直交成分Q(nT)として持つ
信号S(nT)を出力するベースバンド遅延検波回路63
と、ベースバンド遅延検波回路63の出力信号S(nT)
と後述する判定回路68の出力信号D(nT)とから位相
誤差を推定して位相補償値を1シンボルごとにデータ更
新して出力する位相誤差推定回路64と、位相誤差推定回
路64から供給される位相補償値を用いてベースバンド遅
延検波回路63の出力信号S(nT)に含まれる周波数オ
フセットに起因した位相誤差を補償する位相補償回路67
と、位相補償回路67の出力を4値判定する判定回路68
と、判定回路68の出力を2進のシリアルデータに変換す
るデコーダ69と、デコーダ69の出力を受信データとして
出力する受信データ出力端子70とを備えている。
【0004】位相誤差推定回路64は、ベースバンド遅延
検波回路63の出力信号S(nT)の共役複素信号S*(n
T)(*は共役複素数を表す)と判定回路68の出力信号
D(nT)との複素相関値を算出する相関演算回路65
と、この複素相関値のNシンボルの移動平均値とベース
バンド遅延検波回路63の出力信号S(nT)の複素乗算結
果の移動平均値とから位相補償値Ψ*を算出し、これを
1シンボルごとに更新して出力する移動平均回路66とを
具備している。この位相補償値Ψ*は、位相誤差推定値
Ψの共役複素数である。
【0005】この装置の動作について説明する。シンボ
ル識別時点nT(n:正整数、T:シンボル周期)にお
いて、入力端子61には、波形整形されたベースバンドの
波形データの同相成分X(nT)が、また、入力端子62に
は、波形整形されたベースバンドの波形データの直交成
分Y(nT)が印加され、それぞれベースバンド遅延検波
回路63に供給される。ベースバンド遅延検波回路63は、
波形データX(nT)、Y(nT)に対して、1シンボル間
の位相差を求める遅延検波を行ない、π/4シフトQP
SK変調波信号の変調位相差の余弦と正弦とを、それぞ
れ同相成分I(nT)、直交成分Q(nT)として出力す
る。
【0006】ここで、ベースバンド遅延検波回路63の出
力を、同相成分を実数部、直交成分を虚数部に持つ複素
信号S(nT)で表現すると(数1)のようになる。
【0007】 S(nT)=I(nT)+jQ(nT) (数1) 同様に位相誤差推定回路64の出力、及び、判定回路68の
出力の複素表現をそれぞれ、Ψ*((n-1)T)、D(nT)
とする。
【0008】そこで、周波数オフセットに起因する位相
誤差の推定値Ψ(nT)を次のように選ぶ。即ち、ベース
バンド遅延検波回路63の出力S(nT)に、位相誤差推定
回路64の出力である位相誤差の推定値Ψ((n-1)T)の共
役複素数Ψ*((n-1)T)を用いて、位相補償回路67で位
相補償を行なった結果S(nT)・Ψ*((n-1)T)と、判
定回路68で位相補償回路67の出力に対して4値判定を行
なった結果D(nT)との誤差ε(n)=D(nT)−S
(nT)・Ψ*((n-1)T)の2乗平均が最小になるように
選ぶ。位相誤差の推定値をこのように選んだとき、位相
誤差の推定値の共役複素数、即ち、位相補償値Ψ*(n
T)は、位相補償回路64で(数2)に示す相関演算を行
なうことにより、位相誤差推定回路64の出力として得ら
れる。
【0009】 Ψ*(nT)=E[S*(nT)・D(nT)]/E[|S(nT)|2] (数2) 但し、E[・]は平均操作であり、ここではLシンボル
(L:正整数)の移動平均を求める操作が行なわれれ
る。
【0010】位相誤差推定回路64の相関演算回路65は、
1シンボルごとに(数2)に示したS*(nT)・D
(nT)の相関演算を行なう。また、移動平均回路66
は、相関演算回路65の出力の移動平均演算と、ベースバ
ンド遅延検波回路63の出力信号S(nT)とその共役複
素信号S*(nT)との複素乗算結果|S(nT)|2
移動平均演算と、それらの演算結果を用いた(数2)の
演算とを行ない、Ψ*(nT)を出力する。
【0011】位相補償回路67は、こうして得られた位相
補償値Ψ*(nT)を用いて、1シンボル後のシンボル識
別時点(n+1)TのデータS((n+1)T)に対し、周
波数オフセットに起因した位相誤差の補償を行ない、判
定回路68は、位相誤差の補償されたデータの4値判定を
行なう。判定回路68の出力は、デコーダ69で2進のシリ
アルデータに変換され、出力端子70から受信データとし
て出力される。
【0012】このように、従来の周波数オフセット補償
装置は、(数2)に示した演算を1シンボルごとに実行
し、位相誤差の補償値を1シンボルごとに更新してい
る。そのため、高精度な位相誤差の補償を行なうことが
できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の周波数
オフセット補償装置は、初期引き込み時、バースト受信
時に関わらず、常に1シンボルごとに複雑な移動平均演
算を行なっているため、消費電力が大きくなるという問
題点を有している。
【0014】本発明は、こうした従来の問題点を解決す
るものであり、高精度な周波数オフセット補償機能を維
持しながら、消費電力の低減が可能な周波数オフセット
補償装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の周波数
オフセット補償装置では、周波数オフセットに起因する
位相誤差の推定を行なう初期収束特性の優れた第1の位
相誤差推定手段と、第1の位相誤差推定手段と比較して
初期収束特性は劣るが、消費電力の少ない第2の位相誤
差推定手段とを設け、初期引き込み時には、第1の位相
誤差推定手段を動作させ、バースト受信時には、第2の
位相誤差推定手段を動作させるように構成している。
【0016】そのため、周波数オフセットに起因する位
相誤差の高精度な補償機能を維持しながら、消費電力の
低減を図ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、周波数オフセットに起因した位相誤差を推定して位
相補償値を出力する位相誤差推定手段と、この位相誤差
補償値を用いてベースバンドの受信データの位相誤差を
補償する位相補償手段と、位相補償手段から出力される
データによって受信データを判定する判定手段とを備え
る周波数オフセット補償装置において、位相誤差推定手
段が、受信データの共役複素データと判定手段の出力デ
ータとの相関値及び受信データの複素乗算値のそれぞれ
に対する平均演算を1シンボルごとに行ない、位相誤差
補償値を1シンボルごとに算出する第1平均演算手段を
備える第1の位相誤差推定手段と、受信データの共役複
素データと判定手段の出力データとの相関値及び受信デ
ータの複素乗算値のそれぞれをNシンボルに渡って累積
加算し、累積加算値をNシンボルごとに出力するNシン
ボル間加算手段と、Nシンボル間加算手段から出力され
る累積加算値の平均演算を行ない、位相誤差補償値をN
シンボルごとに算出する第2平均演算手段とを備える第
2の位相誤差推定手段と、初期引き込み時に第1の位相
誤差推定手段を動作させ、バースト受信時に第2の位相
誤差推定手段を動作させる切り替え手段とを具備するよ
うに構成したものであり、初期引き込み時における位相
誤差の補償を、第1の位相誤差推定手段を用いて迅速且
つ高精度に行ない、バースト受信時における位相誤差の
補償を、第2の位相誤差推定手段を用いて少ない消費電
力で行なう。
【0018】請求項2に記載の発明は、この装置におい
て、第1平均演算手段が、1シンボルごとに、前記相関
値及び複素乗算値のLシンボルの移動平均値を演算し、
位相誤差補償値を1シンボルごとに更新するように構成
したものであり、初期引き込み時に、周波数オフセット
に起因する位相誤差を迅速且つ高精度に補償することが
できる。
【0019】請求項3に記載の発明は、この装置におい
て、第1平均演算手段が、1シンボルごとに、適応アル
ゴリズムを用いて前記相関値及び複素乗算値の平均演算
を行ない、位相誤差補償値を1シンボルごとに更新する
ように構成したものであり、初期引き込み時に、適切な
位相誤差補償値を算出することができる。
【0020】請求項4に記載の発明は、この装置におい
て、第2平均演算手段が、Nシンボルごとに、前記累積
加算値のM×Nシンボル間の移動平均演算を行ない、位
相誤差補償値をNシンボルごとに更新するように構成し
たものであり、バースト受信時に、周波数オフセットに
起因する位相誤差を、多くの消費電力を使わずに、高精
度に補償することができる。
【0021】請求項5に記載の発明は、この装置におい
て、第2平均演算手段が、Nシンボルごとに、適応アル
ゴリズムを用いて前記累積加算値の平均演算を行ない、
位相誤差補償値をNシンボルごとに更新するように構成
したものであり、バースト受信時に、適切な位相誤差補
償値を算出することができる。
【0022】以下、本発明の実施の形態について、図面
を用いて説明する。
【0023】(第1の実施の形態)第1の実施形態の周
波数オフセット補償装置は、受信する信号が、例えばT
DMAのπ/4シフトQPSK変調波信号の場合で説明
すると、図1に示すように、波形整形されたベースバン
ドの波形データのシンボル識別時点における同相成分X
(nT)が印加される入力端子1と、波形整形されたベ
ースバンドの波形データのシンボル識別時点における直
交成分Y(nT)が印加される入力端子2と、入力端子
1、2に印加された波形データX(nT)、Y(nT)
を取り込み、受信したπ/4シフトQPSK変調波信号
の変調位相差の余弦と正弦とをそれぞれ同相成分I(n
T)、直交成分Q(nT)として持つ信号S(nT)を
出力するベースバンド遅延検波回路3と、位相補償値Ψ
1*(nT)を1シンボルごとにデータ更新して出力す
る第1の位相誤差推定回路4と、位相補償値Ψ2*をN
シンボルごとにデータ更新して出力する第2の位相誤差
推定回路5と、初期引き込み時は第1の位相誤差推定回
路4の出力を選択し、バースト受信時は第2の位相誤差
推定回路5の出力を選択するスイッチ6と、第1及び第
2の位相誤差推定回路4、5とスイッチ6との制御を行
なう制御回路7と、スイッチ6から供給される位相補償
値Ψ*を用いてベースバンド遅延検波回路3の出力信号
S(nT)に含まれる周波数オフセットに起因した位相
誤差を補償する位相補償回路8と、位相補償回路8の出
力を4値判定する判定回路9と、判定回路9の出力を2
進のシリアルデータに変換するデコーダ10と、デコーダ
10の出力を受信データとして出力する受信データ出力端
子11とを備えている。
【0024】また、第1の位相誤差推定回路4は、図2
(a)に示すように、ベースバンド遅延検波回路3の出
力信号S(nT)の共役複素信号S*(nT)と判定回路
9の出力信号D(nT)との複素相関値S*(nT)・D(n
T)を算出する相関演算回路21と、相関演算回路21から
出力された相関値S*(nT)・D(nT)、及び、ベースバ
ンド遅延検波回路3の出力信号S(nT)とその共役複素
信号S*(nT)との複素乗算結果|S(nT)|2のそれぞ
れに対して、1シンボルごとにLシンボルの移動平均演
算を行ない、1シンボルごとに、相関値S*(nT)・D
(nT)の平均値Z(n)、及び、|S(nT)|2の平均値R
(n)から位相誤差の補償値Ψ1*を更新する移動平均回路
22とを具備している。
【0025】また、第2の位相誤差推定回路5は、図2
(b)に示すように、ベースバンド遅延検波回路3の出
力信号S(nT)の共役複素信号S*(nT)と判定回路9
の出力信号D(nT)との複素相関値S*(nT)・D(nT)
を算出する相関演算回路23と、相関演算回路23から出力
される相関値S*(nT)・D(nT)、及び、ベースバンド
遅延検波回路3の出力信号S(nT)とその共役複素信号
S*(nT)との複素乗算結果|S(nT)|2 のそれぞれ
を、Nシンボル間累積するNシンボル間加算回路24と、
Nシンボル間加算回路24の出力に対してNシンボルごと
にM×Nシンボルの移動平均演算を行ない、Nシンボル
ごとに、相関値S*(nT)・D(nT)の平均値Z(m)、及
び|S(nT)|2 の平均値R(m)から位相誤差の補償値
Ψ2*を更新する移動平均回路25とを具備している。
【0026】次に、この装置の動作について説明する。
【0027】まず、初期引き込み時の動作について説明
する。シンボル識別時点nT(n:正整数、T:シンボ
ル周期)において、入力端子1には波形整形されたベー
スバンドの波形データの同相成分X(nT)が、また、
入力端子2には波形整形されたベースバンドの波形デー
タの直交成分Y(nT)が印加され、それぞれベースバ
ンド遅延検波回路3に供給される。ベースバンド遅延検
波回路3は、波形データX(nT)、Y(nT)に対して遅
延検波を行ない、π/4シフトQPSK変調波信号の変
調位相差の余弦と正弦とを、それぞれ同相成分I(n
T)、直交成分Q(nT)として出力する。このベースバ
ンド遅延検波回路3の出力信号S(nT)を(数3)のよ
うに表す。
【0028】 S(nT)=I(nT)+jQ(nT) (数3) 初期引き込み時においては、制御回路7からの制御信号
で、第1の位相誤差推定回路4が動作し、第2の位相誤
差推定回路5が停止する。また、スイッチ6は第1の位
相誤差推定回路4の出力を選択して位相補償回路8に出
力する。
【0029】このときの第1の位相誤差推定回路4の出
力、スイッチ6の出力、及び、判定回路9の出力を、そ
れぞれ複素表現により、Ψ1*((n−1)T)、Ψ*((n−
1)T)、D(nT)で表す。この場合、Ψ*((n−1)T)
=Ψ1*((n−1)T)となる。
【0030】ここで、周波数オフセットに起因する位相
誤差の推定値Ψ(nT)を、従来例で説明したように、位
相補償回路8の出力S(nT)・Ψ*((n−1)T)と、判
定回路9の判定結果D(nT)との誤差ε(n)=D(n
T)−S(nT)・Ψ*((n−1)T)の2乗平均が最小に
なるように選ぶと、この位相誤差の推定値の共役複素
数、即ち、位相補償値Ψ*(nT)は、第1の位相誤差推
定回路4において(数4)に示す相関演算を行なったと
きの出力として得られる。
【0031】 Ψ*(nT)=E[S*(nT)・D(nT)]/E[|S(nT)|2] (数4) 但し、E[・]は平均操作であり、ここではLシンボル
(L:正整数)の移動平均を求める操作が行なわれれ
る。
【0032】第1の位相誤差推定回路4の相関演算回路
21は、(数4)のS*(nT)・D(nT)の相関演算を1
シンボルごとに行なう。また、移動平均回路22は、相関
演算回路21の出力の移動平均演算と、ベースバンド遅延
検波回路3の出力信号S(nT)の複素乗算結果|S(n
T)|2 の移動平均演算と、それらの演算結果を用いて
(数4)の演算とを行ない、Ψ*(nT)を出力する。
【0033】こうして得られた位相補償値Ψ*(nT)
が、スイッチ6を介して、位相補償回路8に出力され、
位相補償回路8は、この位相補償値Ψ*(nT)を用い
て、1シンボル後のシンボル識別時点(n+1)Tにおけ
るベースバンド遅延検波回路3の出力信号S((n+1)
T)の周波数オフセットに起因した位相誤差を補償す
る。
【0034】位相誤差の補償された出力信号は、判定回
路9において4値判定され、判定回路9の出力はデコー
ダ10で2進のシリアルデータに変換され、出力端子11か
ら受信データとして出力される。
【0035】次に、バースト受信時の動作について説明
する。シンボル識別時点nT(n:正整数、T:シンボ
ル周期、N×m≦nT<N×(m+1)、m:正整数、
N:平均シンボル数)において、入力端子1には波形整
形されたベースバンドの波形データの同相成分X(nT)
が、また、入力端子2には波形整形されたベースバンド
の波形データの直交成分Y(nT)が印加され、ベースバ
ンド遅延検波回路3は、それらを取り込んで遅延検波を
行ない、(数3)のS(nT)を出力する。
【0036】また、バースト受信時には、制御回路7か
らの制御信号で、第1の位相差推定回路4が停止し、第
2の位相誤差推定回路5が動作し、スイッチ6は第2の
位相誤差推定回路5の出力を選択して位相補償回路8に
出力する。
【0037】このときの第2の位相誤差推定回路5の出
力、スイッチ6の出力、及び、判定回路9の出力を、そ
れぞれ複素表現により、Ψ2*(m−1)、Ψ*(m−1)、
D(nT)で表す。この場合、Ψ*(m−1)=Ψ2*(m−
1)となる。
【0038】ここで、周波数オフセットに起因する位相
誤差の推定値Ψ(m)を、位相補償回路8の出力S(nT)
・Ψ*(m−1)と判定回路9の判定結果D(nT)との誤
差ε(n)=D(nT)−S(nT)・Ψ*(m−1)の2乗平
均が最小になるように選ぶと、この位相誤差の推定値の
共役複素数、即ち、位相補償値Ψ*(m)は、第2の位相
誤差推定回路5において(数5)に示す相関演算を行な
ったときの出力として得られる。
【0039】 Ψ*(m)=E[ΣS*(kT)・D(kT)]/E[Σ|S(kT)|2] =Z(m)/R(m) (数5) 但し、 AZ(m)=ΣS*(kT)・D(kT) AR(m)=Σ|S(kT)|2 Z(m)=E[ΣS*(kT)・D(kT)]=E[AZ(m)] R(m)=E[Σ|S(kT)|2]=E[AR(m)] (各Σはk=1からNまで加算) なお、E[・]は平均操作であり、M×Nシンボル
(M、N:正整数)の移動平均を求める操作が行なわれ
る。
【0040】第2の位相誤差推定回路5の相関演算回路
23は、(数5)のS*(nT)・D(nT)の相関演算を毎
シンボル行ない、この相関演算結果をNシンボル間加算
回路24に供給する。Nシンボル間加算回路24は、相関演
算回路23の出力をNシンボルに渡って加算して(数5)
のAZ(m)を算出するとともに、ベースバンド遅延検波
回路3の出力信号S(nT)の複素乗算結果|S(nT)|2
をNシンボルに渡って加算して(数5)のAR(m)を算
出する。そして、得られたAZ(m)及びAR(m)をNシ
ンボルに1回の割りで、移動平均回路25に出力する。
【0041】移動平均回路25は、Nシンボル間加算回路
24からNシンボルに1回の割りで出力されるAZ(m)、
AR(m)を用いて、(数5)に示した移動平均演算を行
ない、位相誤差の補償値Ψ*(m)をNシンボルに1回出
力する。
【0042】このように、第2の位相誤差推定回路5か
ら出力される位相補償値Ψ*(m)は、Nシンボル間に渡
って一定であり、位相補償回路8は、シンボル識別時点
nT(N×m≦nT<N×(m+1))において、位相
補償値Ψ*(m−1)を用いて、ベースバンド遅延検波回
路3の出力信号の周波数オフセットに起因した位相誤差
を補償する。第2の位相誤差推定回路5は、この位相補
償が行なわれる間、次のNシンボル間の位相補償を行な
うための位相補償値Ψ*(m)を計算する。
【0043】判定回路9は、位相補償回路8で周波数オ
フセットに起因した位相誤差が補償された信号出力の4
値判定を行ない、判定回路9の出力は、デコーダ10で2
進のシリアルデータに変換され、出力端子11から出力さ
れる。
【0044】この第2の位相誤差推定回路5は、シンボ
ルごとの移動平均演算を必要としないために、演算に要
する消費電力が少なくて済む。
【0045】このように第1の実施形態の周波数オフセ
ット補償装置は、初期引き込み時には、初期収束特性の
優れた第1の位相誤差推定回路を用いて位相誤差の補償
を行ない、バースト受信時には、消費電力の少ない第2
の位相誤差推定回路を用いて位相誤差の補償を行なう。
そのため、この装置では、消費電力が少なく、且つ、高
精度な周波数オフセット補償を行なうことができる。
【0046】(第2の実施の形態)第2の実施形態の周
波数オフセット補償装置は、Nシンボルごとに位相補償
値Ψ*(m)を更新する第2の位相誤差推定回路におい
て、適応アルゴリズムに従う平均演算を行なうように構
成している。
【0047】この周波数オフセット補償装置は、図1の
第1の位相誤差推定回路4及び第2の位相誤差推定回路
5として、それぞれ図3(a)に示す第1の位相誤差推
定回路と、図3(b)に示す第2の位相誤差推定回路5
とを備えている。この図3(a)の第1の位相誤差推定
回路は、第1の実施形態における第1の位相誤差推定回
路(図2(a))と同じである。また、図3(b)の第
2の位相誤差推定回路は、第1の実施形態(図2
(b))と同じ相関演算回路33及びNシンボル間加算回
路34と、適応アルゴリズムに従って平均演算を行なう適
応演算回路35とを具備している。
【0048】この周波数オフセット補償装置では、初期
引き込み時に、第1の位相誤差推定回路が、第1の実施
形態で説明した動作を行ない、周波数オフセットを補償
する。 バースト受信時には、制御回路7からの制御信
号で第2の位相誤差推定回路5が動作する。
【0049】このとき、第2の位相誤差推定回路5は、
シンボル識別時点nT(n:正整数、T:シンボル周
期、N×m≦nT<N×(m+1)、m:正整数、N:
平均シンボル数)において、(数6)に示す相関演算を
行なうことにより、位相誤差の推定値の共役複素数、即
ち位相補償値Ψ*(m)を出力する。
【0050】 Ψ*(m)=Σ'λm-i・{ΣS*(kT)・D(kT)}/Σ'λm-i・{Σ|S(kT)|2} =Z(m)/R(m) (数6) 但し、 AZ(m)=ΣS*(kT)・D(kT) AR(m)=Σ|S(kT)|2 Z(m)=Σ'λm-i・{ΣS*(kT)・D(kT)}=Σ'λm-i・AZ
(m) R(m)=Σ'λm-i・{Σ|S(kT)|2}=Σ'λm-i・AR(m) (Σ’はi=1からmまで加算、Σはk=1からNまで
加算) ここで、λは忘却係数であり、0≦λ≦1の範囲内で値
を定める。
【0051】第2の位相誤差推定回路5の相関演算回路
33は、(数6)のS*(nT)・D(nT)の相関演算を毎シ
ンボル行ない、この相関演算結果をNシンボル間加算回
路34に供給する。Nシンボル間加算回路34は、相関演算
回路34の出力をNシンボルに渡って加算して(数6)の
AZ(m)を算出するとともに、ベースバンド遅延検波回
路3の出力信号S(nT)の複素乗算結果|S(nT)|2
Nシンボルに渡って加算して(数6)のAR(m)を算出
する。そして、得られたAZ(m)及びAR(m)をNシン
ボルに1回の割りで、適応演算回路35に出力する。
【0052】適応演算回路35は、Nシンボル間加算回路
34からNシンボルに1回の割りで出力されるAZ(m)、
AR(m)を用いて、(数6)に示した適応アルゴリズム
を用いた平均演算を行ない、位相誤差の補償値Ψ*(m)
をNシンボルに1回出力する。この演算では、Nシンボ
ル間加算回路34から出力されるAZ(m)、AR(m)に対
して、忘却係数λにより、適切な重み付けがされる。そ
のため、平均演算時点に近いデータを、より重視する形
で平均演算が行なわれる。その他の動作は、第1の実施
形態と同じである。
【0053】このように第2の実施形態の周波数オフセ
ット補償装置は、バースト受信時に、消費電力の少ない
第2の位相誤差推定回路を用いて位相誤差の補償を行な
うため、消費電力が少なくて済む。また、このとき、適
応アルゴリズムに従って平均演算を行なっているため、
位相誤差の補償値を高精度に求めることができ、優れた
精度の周波数オフセット補償を行なうことができる。
【0054】(第3の実施の形態)第3の実施形態の周
波数オフセット補償装置は、1シンボルごとに位相補償
値Ψ*(nT)を更新する第1の位相誤差推定回路におい
て、適応アルゴリズムに従う平均演算を行なうように構
成している。
【0055】この周波数オフセット補償装置は、図1の
第1の位相誤差推定回路4及び第2の位相誤差推定回路
5として、それぞれ図4(a)に示す第1の位相誤差推
定回路と、図4(b)に示す第2の位相誤差推定回路5
とを備えている。この図4(b)の第2の位相誤差推定
回路は、第1の実施形態における第2の位相誤差推定回
路(図2(b))と同じである。また、図4(a)の第
1の位相誤差推定回路は、第1の実施形態(図2
(a))と同じ相関演算回路41と、適応アルゴリズムに
従って平均演算を行なう適応演算回路42とを具備してい
る。
【0056】この周波数オフセット補償装置では、初期
引き込み時に、制御回路7からの制御信号で第1の位相
誤差推定回路4が動作する。このとき第1の位相誤差推
定回路は、シンボル識別時点nT(n:正整数、T:シ
ンボル周期)において、(数7)に示す相関演算を行な
うことにより、位相誤差の推定値の共役複素数、即ち位
相補償値Ψ*(nT)を出力する。
【0057】 Ψ*(nT)=Σλn-k・S*(kT)・D(kT)/Σλn-k・|S(kT)|2 (Σはk=1からnまで加算) (数7) ここで、λは忘却係数であり、0<λ≦1の範囲内で値
を定める。
【0058】第1の位相誤差推定回路4の相関演算回路
41は、(数7)のS*(nT)・D(nT)の相関演算を1
シンボルごとに行なう。また、適応演算回路42は、相関
演算回路41の出力と、ベースバンド遅延検波回路3の出
力信号S(nT)とを用いて、(数7)に示す適応アルゴ
リズムによる演算を行ない、1シンボルごとにΨ*(n
T)を更新する。その他の動作は第1の実施形態と同じ
である。
【0059】このように第3の実施形態の周波数オフセ
ット補償装置では、初期引き込み時に、第1の位相誤差
推定回路により、適応アルゴリズムに従って高精度に且
つ迅速に初期収束が行なわれる。また、バースト受信時
には、第2の位相誤差推定回路により、消費電力の低い
位相誤差の補償動作が実行される。
【0060】(第4の実施の形態)第4の実施形態の周
波数オフセット補償装置は、第1の位相誤差推定回路及
び第2の位相誤差推定回路において、適応アルゴリズム
に従う平均演算を行なうように構成している。
【0061】この周波数オフセット補償装置は、図1の
第1の位相誤差推定回路4及び第2の位相誤差推定回路
5として、それぞれ図5(a)に示す第1の位相誤差推
定回路と、図5(b)に示す第2の位相誤差推定回路5
とを備えている。この図5(a)の第1の位相誤差推定
回路は、第3の実施形態における第1の位相誤差推定回
路(図4(a))と同じであり、また、図5(b)の第
2の位相誤差推定回路は、第2の実施形態における第2
の位相誤差推定回路(図3(b))と同じである。
【0062】そのため、この装置では、初期引き込み時
に、第3の実施形態で説明した第1の位相誤差推定回路
4による周波数オフセット補償動作が行なわれ、また、
バースト受信時に、第2の実施形態で説明した第2の位
相誤差推定回路5による周波数オフセット補償動作が行
なわれる。
【0063】この第4の実施形態の装置は、第2の実施
形態及び第3の実施形態で説明した効果を併せて奏す
る。
【0064】なお、以上の実施形態では、受信信号がT
DMAのπ/4シフトQPSK変調波信号である場合に
ついて説明したが、本発明の周波数オフセット補償装置
は、勿論、他の受信信号を対象として周波数オフセット
の補償を実施することも可能である。
【0065】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の周波数オフセット補償装置は、初期収束特性の優れた
第1の位相誤差推定回路と、第1の位相誤差推定回路と
比較して初期収束特性は劣るが、消費電力の少ない第2
の位相誤差推定回路とを用いて、初期引き込み時には第
1の位相誤差推定回路を動作させ、バースト受信時には
第2の位相誤差推定回路を動作させている。そのため、
高精度の補償を実現しながら、消費電力の低減を図るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の各実施形態における周波数オフセット
補償装置の全体構成を示すブロック図、
【図2】(a)第1実施形態における第1の位相誤差推
定回路のブロック図、(b)第1実施形態における第2
の位相誤差推定回路のブロック図、
【図3】(a)第2実施形態における第1の位相誤差推
定回路のブロック図、(b)第2実施形態における第2
の位相誤差推定回路のブロック図、
【図4】(a)第3実施形態における第1の位相誤差推
定回路のブロック図、(b)第3実施形態における第2
の位相誤差推定回路のブロック図、
【図5】(a)第4実施形態における第1の位相誤差推
定回路のブロック図、(b)第4実施形態における第2
の位相誤差推定回路のブロック図、
【図6】従来の周波数オフセット補償装置の構成を示す
ブロック図である。
【符号の説明】
1、2、61、62 入力端子 3、63 ベースバンド遅延検波回路 4 第1の位相誤差推定回路 5 第2の位相誤差推定回路 6 スイッチ 7 制御回路 8、67 位相補償回路 9、68 判定回路 10、69 デコーダ 11、70 出力端子 21、23、31、33、41、43、51、53、65 相関演算回路 22、25、32、45、66 移動平均回路 24、34、44、54 Nシンボル間加算回路 35、42、52、55 適応演算回路 64 位相誤差推定回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04L 27/00 - 27/38

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周波数オフセットに起因した位相誤差を
    推定して位相補償値を出力する位相誤差推定手段と、前
    記位相誤差補償値を用いてベースバンドの受信データの
    位相誤差を補償する位相補償手段と、前記位相補償手段
    から出力されるデータによって受信データを判定する判
    定手段とを備える周波数オフセット補償装置において、 前記位相誤差推定手段が、 受信データの共役複素データと判定手段の出力データと
    の相関値及び受信データの複素乗算値のそれぞれに対す
    る平均演算を1シンボルごとに行ない、前記位相誤差補
    償値を1シンボルごとに算出する第1平均演算手段を備
    える第1の位相誤差推定手段と、 受信データの共役複素データと判定手段の出力データと
    の相関値及び受信データの複素乗算値のそれぞれをNシ
    ンボルに渡って累積加算し、累積加算値をNシンボルご
    とに出力するNシンボル間加算手段と、前記Nシンボル
    間加算手段から出力される累積加算値の平均演算を行な
    い、前記位相誤差補償値をNシンボルごとに算出する第
    2平均演算手段とを備える第2の位相誤差推定手段と、 初期引き込み時に前記第1の位相誤差推定手段を動作さ
    せ、バースト受信時に前記第2の位相誤差推定手段を動
    作させる切り替え手段とを具備することを特徴とする周
    波数オフセット補償装置。
  2. 【請求項2】 前記第1平均演算手段が、1シンボルご
    とに、前記相関値及び複素乗算値のLシンボルの移動平
    均値を演算し、前記位相誤差補償値を1シンボルごとに
    更新することを特徴とする請求項1に記載の周波数オフ
    セット補償装置。
  3. 【請求項3】 前記第1平均演算手段が、1シンボルご
    とに、適応アルゴリズムを用いて前記相関値及び複素乗
    算値の平均演算を行ない、前記位相誤差補償値を1シン
    ボルごとに更新することを特徴とする請求項1に記載の
    周波数オフセット補償装置。
  4. 【請求項4】 前記第2平均演算手段が、Nシンボルご
    とに、前記累積加算値のM×Nシンボル間の移動平均演
    算を行ない、前記位相誤差補償値をNシンボルごとに更
    新することを特徴とする請求項1乃至3に記載の周波数
    オフセット補償装置。
  5. 【請求項5】 前記第2平均演算手段が、Nシンボルご
    とに、適応アルゴリズムを用いて前記累積加算値の平均
    演算を行ない、前記位相誤差補償値をNシンボルごとに
    更新することを特徴とする請求項1乃至3に記載の周波
    数オフセット補償装置。
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