JP3107969B2 - クランク室過給式エンジンのシール装置 - Google Patents

クランク室過給式エンジンのシール装置

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JP3107969B2 JP06111543A JP11154394A JP3107969B2 JP 3107969 B2 JP3107969 B2 JP 3107969B2 JP 06111543 A JP06111543 A JP 06111543A JP 11154394 A JP11154394 A JP 11154394A JP 3107969 B2 JP3107969 B2 JP 3107969B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クランク室内の容積変
化を利用して過給するようにしたクランク室過給式エン
ジンのシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のクランク室過給式エンジンとし
て、従来、ピストンを可動子とし、かつクランク室を圧
縮室とした容積型過給機が知られている。これは上記ピ
ストンが上昇するときのクランク室内の負圧を利用して
空気を吸入し、ピストンが下降するときにクランク室内
の空気を圧縮して燃焼室に過給するようにしたものであ
る。
【0003】しかしながら上記従来のピストンの昇降を
利用した過給式エンジンでは、クランク室内容積に無駄
があり、また空気の熱膨張により充填効率が悪化し易
く、十分なエンジン出力が得られないという問題があ
る。
【0004】そこで本件出願人は、クランク室,クラン
クウェブ及びピストンで囲まれたコンロッド収容室をコ
ンロッドにより吸入室と圧縮室とに区分けし、上記コン
ロッドの揺動により吸入した空気を圧縮して燃焼室に過
給するようにしたクランク室過給式エンジンを提案した
(特開平6−93869号公報参照)。これによれば、
クランク軸が1回転する毎に略コンロッドにより掃かれ
る容積分だけ空気を燃焼室に圧送することができるの
で、上記従来構造に比べて過給圧を大きくすることがで
き、それだけエンジン出力を向上できる。
【0005】ところで上記過給式エンジンにおいて過給
圧を上げるには、コンロッド,クランクウェブとクラン
クケースとの間から空気が漏れるのをできるだけ抑える
必要がある。そのためにはシール面を長くして摺動面積
を増やすことが考えられが、このようにするとロス馬力
が増加し、エンジン性能や燃費に悪影響を与えるという
問題が生じる。従って、クランクケース内周面との隙間
をできるだけ小さくして漏れ面積を低減し、摺動面積を
増やさないにすることが必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記隙間を小
さく設定すると、それだけ寸法公差が厳しくなり加工コ
ストが上昇するという問題が生じる。またエンジン運転
中のクランクウェブやコンロッドは熱膨張や応力により
変形するので、この点からも隙間管理には限界がある。
【0007】一方、上記隙間をできるだけ詰めた状態で
過給する場合、この隙間を通過する空気中に異物が混入
したりすると焼き付きが生じ易く、エンジン不調を起こ
すおそれがある。このような異物は吸入空気に含まれる
だけでなく、エンジン部品が欠けたもの,オイルや燃料
が熱変成したもの,あるいはガスケット類の切れ端等も
比較的混入し易く、この点での対応が要請されている。
【0008】本発明は、上記実情に鑑みてなされたもの
で、加工コストの上昇を抑制しながらシール性を向上し
て過給圧を上昇できるとともに、異物の混入による焼き
付きを回避できるクランク室過給式エンジンのシール装
置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、クラ
ンク室,クランクウェブ及びピストンで囲まれたコンロ
ッド収容室をコンロッド及び該コンロッドが連結された
クランクウェブにより吸入室と圧縮室とに区分けし、該
吸入室に吸入通路を接続するとともに、上記圧縮室の吐
出口を燃焼室に連通接続したクランク室過給式エンジン
のシール装置において、上記クランクウェブを円盤状に
形成し、該クランクウェブの外周面に凸条からなる円環
状のシール部を形成し、上記クランクケースの内周面に
ウェブシール部とコンロッドシール部とからなるシール
材を配設し、上記クランクウェブのシール部を上記シー
ル材のウェブシール部に摺接させるとともに、上記コン
ロッドの大端部の外周面を上記シール材のコンロッドシ
ール部に摺接させたことを特徴としている。
【0010】請求項2の発明は、請求項1において、上
記コンロッドの少なくとも上記コンロッドシール部との
摺接面を樹脂製としたことを特徴としている。
【0011】
【作用】請求項1の発明に係るクランク室過給式エンジ
ンのシール装置によれば、クランクウェブに凸条の、つ
まり幅の狭いシール部を形成し、これをクランクケース
側のシール材のウェブシール部に摺接させたので、シー
ル性を確保しながら摺動抵抗を小さくでき、ロス馬力に
よるエンジン出力,燃費への悪影響を回避できる。ま
た、幅の狭いシール部によりシールするようにしたので
上述の幅広の摺接面全体に渡ってその隙間を管理する場
合に比べて加工が容易であり、加工コストの上昇を抑制
でき、また熱の放散が容易なことから熱膨張自体が小さ
く、熱変形にも比較的容易に対応できる。さらにまた、
異物が侵入した場合にもシール部が凸条であることから
焼き付きが生じ難い。
【0012】また、コンロッドの大端部の外周面をクラ
ンクケースに配設されたシール材のコンロッドシール部
に摺接させたので、シール性をさらに向上できる。
【0013】請求項2の発明では、コンロッドのシール
材との摺接面を樹脂製としたので、この摺接面間に異物
が混入しても、該異物は樹脂部内に埋め込まれることか
らコンロッドとクランクケースとが焼き付くことはな
く、エンジン不調の問題を回避できる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1ないし図6は、請求項1,2の発明に係る一実
施例によるクランク室過給式4サイクルエンジンのシー
ル装置を説明するための図であり、図1は本実施例エン
ジンの断面側面図、図2,図3はそれぞれ図1のII-II
線断面図,III-III線断面図、図4はコンロッド小端部の
拡大図、図5,図6はそれぞれ上記実施例エンジンのシ
ール材部分を示す断面拡大図である。本実施例では、4
サイクル単気筒エンジンに適用した場合を例にとって説
明する。
【0015】図において、1は本実施例の横置き4サイ
クル単気筒エンジンであり、該エンジン1のクランクケ
ース2の合面には空冷式のシリンダブロック3が接続さ
れており、該シリンダブロック3の合面にはシリンダヘ
ッド4が接続されている。このシリンダヘッド4の合面
のシリンダボア3aに対向する部分には燃焼室を構成す
る燃焼凹部4aが凹設されており、該凹部4a内には図
示しない点火プラグが挿入されている。
【0016】上記シリンダヘッド4の燃焼凹部4aには
吸気ポート5,排気ポート6がそれぞれ開口しており、
該吸気ポート5はシリンダヘッド4の上壁側に、排気ポ
ート6は下壁側にそれぞれ導出されている。また吸気ポ
ート5の燃焼室開口には吸気バルブ7が、排気ポート6
の燃焼室開口には排気バルブ8がそれぞれ各開口を開閉
自在に配置されており、この吸気バルブ7,排気バルブ
8はバルブスプリング9により閉方向に付勢されてい
る。
【0017】上記シリンダヘッド4には各バルブ7,8
を開閉駆動する動弁機構としてのカム軸10が紙面と直
角方向に向けて配置されている。このカム軸10の一端
は図示しないスプロケット及びチエーン10a(図3参
照)を介して後述のクランク軸20に結合された駆動ス
プロケット13(図2参照)に連結されている。上記カ
ム軸10の上, 下側にはこれと平行に延びる一対のロッ
カシャフト11,11が配置されており、該各シャフト
11にはロッカアーム12が揺動自在に装着されてい
る。このロッカアーム12の一端部はカム軸10のカム
ノーズに当接しており、他端部はバルブ7,8の上端に
当接している。
【0018】上記シリンダブロック3のシリンダボア3
a内にはピストン16が摺動自在に挿入配置されてい
る。このピストン16を境として燃焼室の反対側のシリ
ンダボア3a及びクランクケース2によりクランク室2
3が形成される。このピストン16にはコンロッド17
の小端部17aがピストンピン18,軸受19を介して
連結されており、該コンロッド17の大端部17bはク
ランク軸20のクランクピン21に軸受リング22a及
びニードルローラベアリング22bを介して連結されて
いる。また上記クランクピン21の上記軸受リング22
aの左右端面との摺接面はわずかに軸方向に突出してい
る。これによりコンロッド17の側面17cと後述する
クランクウェブ24の内面24b,及びウェブシール部
90cとの間には0.1 〜0.5mm 程度の隙間があいてお
り、その結果摺動抵抗が低減している。
【0019】上記クランク軸20はクランク室23の内
上記クランクケース2のクランクケース室23a内に収
容されており、これは円板状に形成された一対のクラン
クウェブ24同士を上記クランクピン21で連結し、該
クランクウェブ24にジャーナル部25を一体形成した
構造となっており、このジャーナル部25はジャーナル
軸受26を介してクランクケース2に支持されている。
また上記ジャーナル部25はクランクケース2の外方に
突出しており、一方の突出部には発電機28が装着され
ている。なお、27はオイルシールである。
【0020】上記クランクケース2のクランク軸20と
直交する左右内側壁2aと、シリンダブロック3のクラ
ンクケース2への嵌合部3bの図示上下に形成された切
欠き3cとは面一になっており、これらの左右内側壁2
a及び切欠き3cには上記コンロッド17の左右側面1
7cが微小な隙間を持って摺接しており、また該クラン
クケース2のクランク軸を囲むように形成された円弧状
内周壁2bには上記コンロッド17の大端部17bの外
周面がきわめて微小な隙間を持って摺接している。また
クランクケース2の上記左右内側壁2aには上記各クラ
ンクウェブ24が収容配置される円形凹部2cが凹設さ
れており、該凹部2cとクランクウェブ24との間には
僅かな隙間が設けられている。そしてクランクウェブ2
4のコンロッド側側壁24aとコンロッド17の左右側
面17cとも微小な隙間を持って摺接している。
【0021】また上記ピストン16のスカート部には三
角形状の凹部16aが凹設されており、この凹部16a
のスカート外周との対向部は切欠き16bとなってい
る。上記凹部16a内に上記コンロッド17の小端部1
7aが挿入配置されている。上記凹部16aの内周面に
は上記コンロッド17の小端部17aの外周面が、また
凹部16aの左右側面16cには上記左右側面17cが
それぞれ微小な隙間を持って摺接している。
【0022】上述の構成により上記クランク室23,ク
ランクウェブ24及びピストン16で囲まれた部分がコ
ンロッド収容室となっており、このコンロッド収容室
は、ピストン16が上死点付近に位置する場合を除くク
ランク角度において該コンロッド17は上下の内、少な
くとも一方のクランクケース2の左右内側壁2aあるい
はシリンダブロック3の切欠き3cに嵌り合うこととな
り、該コンロッド17によって吸入室Aと圧縮室Bとに
区分けされている。また、ピストン16が下死点に位置
する時コンロッド17と上記両左右内側壁2a,2aと
の嵌合はないが、ピストン16のスカート端部がシリン
ダボア3aの端部とほとんど一致するのでコンロッド1
7による吸入室Aと圧縮室Bとの区分けは維持される。
このようにして上記ピストン16が上死点に位置する状
態からクランク軸20が時計方向に回転するに伴い、図
1に示すように、コンロッド17が図示一点鎖線位置,
二点鎖線位置,さらに実線位置に移動することにより吸
入室Aの容積が増加して空気が吸入されるとともに圧縮
室Bの容積が減少し前行程で吸入された空気が圧縮され
る容積型過給機が構成されている。なお、係る構造は上
述の特開平6−93869号公報に詳細に記載されてい
る。
【0023】そして図5及び図6に示すように、上記ク
ランクケース2の左右円形凹部2c2cの周縁部にはそ
れぞれ切り欠き部2d,2dが形成されており、また上
記円弧状内周壁2bには上記両切り欠き部2dに続く凹
部2eが形成されている。この凹部2e,切り欠き部2
d内にはテフロン(登録商標)からなる樹脂製シール材
90が挿着されており、該シール材90はこれに一体形
成された突起部90aを上記クランクケース2に嵌合さ
せることにより固定されている。ここで、上記シール材
90は、上記凹部2eに位置するコンロッドシール部9
0bと上記切り欠き部2d内に位置するウェブシール部
90cとから構成されている。図5に示すように上記コ
ンロッドシール部90bはコンロッド17の大端外周部
の摺接範囲に対応した半円状をなしており、またウェブ
シール部90cは円形をなしている。なお、本実施例の
クランクケース2は左右分割式であることから、図示右
側のウェブシール部90cは残りの部分から分割されて
いる。
【0024】上記シール材90のウェブシール部90c
には上記クランクウェブ24の外周面に一体に突出形成
された突条でかつ円環状のシール部24aが摺接してお
り、また上記シール材90のコンロッドシール部90b
にはコンロッド17の大端部17bの外周面が摺接して
いる。
【0025】上記クランクケース2の下面には上記吸入
室Aに連通し、かつ下方に開口する吸入通路35が一体
形成されており、この吸入通路35の底面開口にはこれ
を閉塞するカバー36が装着されている。そして上記吸
入通路35の図1手前側の壁面には吸入口35aがクラ
ンク軸方向に指向するように形成されており、この吸入
口35aには吸入管37の下流端が接続されている。該
吸入管37はエンジンの側方を通って外方に延びてお
り、上流端には図示しないエアクリーナが接続されてい
る。
【0026】また上記クランクケース2の上面には上方
に開口する吸気通路38が一体形成されており、該吸気
通路38には該通路38と圧縮室Bとを仕切る隔壁39
が一体形成されている。この隔壁39の内面に上記コン
ロッド17の外周面が摺接するようになっている。上記
隔壁39には吸気通路35と圧縮室Bとを連通する吐出
口40が形成されている。なお、本実施例エンジン1は
図1に示すようにシリンダボア軸を水平に向けて車両に
搭載されることから、上記吐出口40は上下方向上側
に、また上記吸入口35aは上下方向下側に位置してい
ることとなる。
【0027】上記隔壁39の吐出口40部分の外面には
リード弁42が開閉自在に配設されており、このリード
弁42はチタンを主成分とした軽合金材料から構成され
た弁板41aと、該リード弁42のリフト側に配設さ
れ、上記弁板41aの開度を規制するストッパ41bと
で構成されており、該ストッパ41b及び弁板41aの
一端部は上記隔壁39にボルト43で共締め固定されて
いる。上記ストッパ41bは弁板41aと同じ大きさに
形成されており、該ストッパ41bの弁板当接面にはゴ
ム等からなる弾性材41cが焼き付けにより固着されて
いる。これにより上記弁板41aへの衝撃力が緩和され
ており、寿命の延長が図られている。
【0028】上記吸気通路38には蓄圧室Cを構成する
吸気タンク45が接続されている。この吸気タンク45
の側壁には吸気管46が接続されており、この吸気管4
6は上記シリンダヘッド4の吸気ポート5に接続されて
いる。また上記吸気管46の途中には気化器47が介設
されており、該気化器47にはポンプ48を介して燃料
タンク49が接続されている。この気化器47を吸気管
46の吸気タンク45より下流側に配置することによっ
て加減速の応答性が改善されている。
【0029】また、上記吸気管46の上流端開口46a
は吸気タンク45の内壁と面一となっており、これによ
り上記吸気管46の吸気タンク45内への突出量は0に
設定されている。この吸気管46の突出量を0としたこ
とにより、吸気バルブ7を開いたときの圧力低下が直ち
にリード弁42に達し、それだけリード弁42の開時間
が長くなり、よって過給量の増大が図れる。
【0030】上記吸気タンク45と吸入管37とはバイ
パス通路50を介して連通されている。このバイパス通
路50はバイパス弁51により開閉自在となっている。
このバイパス弁51は弁体51aをダイヤフラム室52
内の負圧により開位置に移動させる構造のもので、上記
ダイヤフラム室52は上記吸気管46の下流端(気化器
47より下流側)に負圧通路53を介して連通されてい
る。上記バイパス弁51は、例えばスロットル開度が小
さいときに吸気負圧が大きくなると該負圧によりバイパ
ス通路50を開いて吸気タンク45内の圧力を下げるも
のである。
【0031】60は潤滑装置であり、これは第1潤滑シ
ステム61と、これとは独立して設けられた第2潤滑シ
ステム62とから構成されている。上記第1潤滑システ
ム61は、4サイクル用オイルが充填された第1貯留タ
ンク63に供給ポンプ64を介在させてオイル供給管6
5を接続し、該供給管65の供給口65aをシリンダヘ
ッド4の動弁機構を構成するカム軸10部分に接続して
構成されている。またこのカム軸10部分を潤滑したオ
イルは上記チェーン10aが収容されたチェーン室10
b内に戻り、ここでチェーン10a,駆動スプロケット
13,不図示の被駆動スプロケット及び図2で左側のジ
ャーナル軸受26(シールリング付き)を各々潤滑し、
この後回収管66を通って上記第1貯留タンク63に回
収されるようになっている。
【0032】上記第2潤滑システム62は、2サイクル
用オイルが充填された第2貯留タンク70に主供給管7
1,圧送ポンプ72を接続し、該ポンプ72に第1,第
2副供給管73,74を接続し、該第1副供給管73を
シリンダブロック3のピストン摺動部に接続するととも
に、第2副供給管74をクランク室23のジャーナル軸
受部に接続して構成されている。
【0033】上記圧送ポンプ72は、図示していない
が、電磁式オートルーブポンプのソレノイドを改良した
もので、プランジャのプッシュロッドにアーマチュアを
固着し、該アーマチュアをソレノイドで吸引する方式の
もので、これにより該ポンプ72からの吐出圧力が増大
し、過給圧に打ち勝ってオイルを供給できるようになっ
ている。
【0034】上記第1副供給管73のオイル吐出口73
aはクランク軸20と直交方向にシリンダブロック3の
ライナ部を貫通しており、下死点に位置するピストン1
6の第2ピストンリングよりクランク室側に位置してい
る。また上記ピストン16の第2ピストンリングよりク
ランク室側の外面にはクランク軸方向に2つのオイル溜
め用凹部75,76が平行に切り欠いて形成されてい
る。この凹部75は、ピストン16の移動により吐出口
73aに一致した時に吐出口73aから供給されて溜ま
ったオイルにより、また凹部76は下記する様にして上
記吐出口73aから供給されて溜まったオイルにより、
それぞれ上記吐出口73aがピストン16で塞がれた時
点での潤滑を行ない、その結果、この吐出口73aがピ
ストン16で塞がれることによって生じる潤滑上のトラ
ブルを防止している。
【0035】また上記コンロッド17の小端部17aの
外周面にはこれの周方向に延びるオイルガイド溝81が
形成されており、上記ピストン16にはこのガイド溝8
1と上記下側凹部76とを連通する連通孔77が形成さ
れている。また上記小端部17aの上記連通孔77と反
対側にはピストンピン18,軸受19に連通する連通孔
78が形成されている。これにより上記吐出口73aと
下記するオイル回収孔80から供給される上記ガイド溝
81内のオイルの一部が上記連通孔78から軸受19に
供給され、残りの一部が上記連通孔77から小端部17
aとピストン16との摺動面に供給され、さらに上記凹
部76に供給されるようになっている。
【0036】上記吸気通路38の底部と隔壁39とのコ
ーナ部は吸気タンク45内全体で見て最も低所に位置し
ており、該コーナ部には上記蓄圧室Cとクランク室23
とを連通する小径のオイル回収孔80が形成されてい
る。この回収孔80は蓄圧室C内の空気の漏れ量が過給
に支障を及ぼさない程度の大きさに設定されている。上
記回収孔80は吸気通路38の底部に溜まったオイルを
ピストン16摺動面等に供給するためのもので、その一
部は上記ガイド溝81を通って両連通孔77及び78か
らピストン16,コンロッド小端部17a,ピストンピ
ン18の摺動面及びピストンシリンダボア摺動面に供給
される。
【0037】上記第2副供給管74のオイル吐出口74
aはクランクケース2を貫通して図2における右側のジ
ャーナル軸受26に達している。そしてこの右側のジャ
ーナル軸受26に供給されたオイルは、クランクケース
2の各内周壁2a,2b及び円形凹部2cとクランク軸
20との隙間,及び各摺動面に供給される。
【0038】また、上記クランクケース2の吸入通路3
5を閉塞するカバー36には該通路35内に開口する回
収通路83が形成されている。該回収通路83には回収
管84が接続されており、この回収管84は上記第2貯
留タンク70に接続されている。これにより上記第1,
第2副供給管73,74から供給されたオイルは各摺動
面を潤滑した後、クランクケース2の吸入室Aから吸入
通路35内のカバー36上面に戻り、ここから回収され
る。本実施例では、上記エンジン1を横置きとし、過給
圧の高い圧縮室Bを上に向けて配置するとともに、空気
をクランクケース2の下方から吸入する構成を採用して
いる。従って、重力と過給圧との相互作用によって潤滑
オイルはクランクケース2の最下部、つまり上記カバー
36の上面に集まることとなり、そのためオイルの回収
が確実となり、再使用が可能となったものである。
【0039】次に本実施例の作用効果について説明す
る。本実施例エンジン1は、クランク軸20が1回転す
る毎にコンロッド17の大端部17bの外周面がクラン
クケース2の円弧部内周壁2bに近接した後、最も上方
まで揺動する期間中コンロッド17により掃かれる容積
分の空気が吸気タンク45内に圧送されて蓄えられるこ
ととなる。そしてエンジン1の吸入行程で吸気バルブ7
が開くと上記クランク軸20の1回転分の圧送空気の2
倍の空気が燃焼室内に過給されることとなる。
【0040】本実施例によれば、クランクケース2の
左,右の円形凹部2cの周縁部,及び内周壁2bに樹脂
シール材90のウェブシール部90c,コンロッドシー
ル部90bを配設し、該ウェブシール部90cにクラン
クウェブ24の凸条のシール部24aを摺接させるとと
もに、コンロッドシール部90bにコンロッド17の大
端部17bの外周面を摺接させたので、該コンロッド1
7,クランクウェブ24とクランクケース2とのシール
性を確保でき、それだけ空気漏れを低減して過給圧力を
上昇させることができる。
【0041】クランクウェブ24に幅の狭い凸条からな
るシール部24aを形成するとともに、これに摺接する
樹脂製の上記シール材90を配設したので、摺接面の摺
動抵抗を小さくでき、ロス馬力の増加によるエンジン出
力,燃費への悪影響を回避できる。また、従来の幅広の
摺動面の全幅に渡って隙間を管理する場合に比べて加工
が容易であり、加工コストの上昇を抑制できる。
【0042】さらにまた、上記シール面間に異物が侵入
しても、該異物は上記シール材90内に埋め込まれるこ
とからシール面間が焼き付くことはなく、エンジン不調
の問題を回避できる。
【0043】図7は、上記実施例のシール材部分の変形
例によるシール装置を示す例であり、図中、図6と同一
符号は同一又は相当部分を示す。
【0044】本実施例では、クランクケース2の左右円
形凹部2c,2cの周縁部に形成された切り欠き部2
d,2dに鋳鉄からなる環状の鋳込みリング91を嵌装
固定し、内周壁2bには上記実施例と同じ構造材質のコ
ンロッドシール部90bを配設している。なお、91b
は鋳込みリング91をクランクケースに固定するための
凸起である。またクランクウェブ24の外周面には円環
状のリング溝24bが凹設されており、該リング溝内2
4b内にはクロムメッキが施されたシールリング93が
嵌装されている。このシールリング93は通常のピスト
ンリングと同じ構造のもので、自己弾性力により上記リ
ング91の内周面に常時押圧した状態で摺接している。
【0045】本実施例では、コンロッド17,クランク
ウェブ24とクランクケース2とのシール性を確保で
き、それだけ過給圧力を上昇でき、上記実施例と同様の
効果が得られる。
【0046】図8は、請求項3の発明の一実施例を説明
するための図であり、図中、図6,図7と同一符号は同
一又は相当部分を示す。
【0047】本実施例は、コンロッド17´を樹脂製と
した例であり、これは軸受リング22aに溝部22cを
形成し、この軸受リング22aを型内に配置した状態で
コンロッド17´を射出成形することにより大端部外周
に樹脂部95を形成したものである。また本実施例では
クランクケース2の切り欠き部2d,及び内周壁2bに
は鋳鉄製のシール材96が嵌装固定されている。このシ
ール材96は、上記樹脂部95が摺接するコンロッドシ
ール部96bと、上記クランクウェブ24に摺接するウ
ェブシール部96cとから構成されており、このウェブ
シール部96cにはクランクウェブ24の外周面に摺接
する凸条でかつ円環状のシール部96aが形成されてい
る。なお、図示右側のウェブシール部96cは他の部分
から分割されている。
【0048】本実施例によれば、コンロッド17´の大
端部を樹脂モールドして樹脂部95を形成したので、該
樹脂部95によりシール性を確保できるとともに、侵入
した異物を埋め込むことができ、焼き付きによるエンジ
ン不調を防止できる。
【0049】なお、上記実施例では、4サイクル単気筒
エンジンに適用した場合を例にとって説明したが、本発
明は4サイクル多気筒エンジン,及び2サイクルエンジ
ンにも適用できる。この2サイクルエンジンに適用する
場合は、圧縮室の吐出口を掃気通路に連通することとな
る。
【0050】
【発明の効果】以上のように請求項1の発明に係るクラ
ンク室過給式エンジンのシール装置によれば、クランク
ウェブに凸条のシール部を形成し、これをシール材のウ
ェブシール部に摺接させたので、寸法管理によるコスト
を抑制しながら空気漏れを低減して過給圧を上昇できる
効果があり、また異物の混入によるエンジン不調の問題
を回避できる効果がある。
【0051】また、コンロッドの大端部の外周面を上記
シール材のコンロッドシール部に摺接させたのでシール
性をさらに向上できる効果がある。
【0052】請求項2の発明では、コンロッドのシール
材との摺接面を樹脂製としたので、該樹脂部に異物が埋
め込まれることからコンロッドとクランクケースとの焼
き付きをより確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1,2の発明の一実施例によるクランク
室過給式4サイクルエンジンを説明するための断面側面
図である。
【図2】上記実施例エンジンのクランク軸部分を示す断
面背面図(図1のII-II 線断面図) である。
【図3】上記実施例エンジンのピストン部分を示す断面
正面図( 図1のIII-III 線断面図) である。
【図4】上記実施例エンジンのコンロッド小端部の拡大
図である。
【図5】上記実施例エンジンのシール材部分を示す断面
拡大図である。
【図6】上記実施例エンジンのシール材部分を示す断面
拡大図である。
【図7】上記実施例のシール材部分の変形例を示す断面
拡大図である。
【図8】請求項3の発明の一実施例によるシール材部分
を示す断面拡大図である。
【符号の説明】
1 クランク室過給式4サイクルエ
ンジン 2 クランクケース 2a,2b,2c クランクケース内周壁 3a シリンダボア 16 ピストン 17 コンロッド 23 クランク室 24 クランクウェブ 24a,96a シール部 40 吐出口 90,91,96 シール材 93 シールリング(シール部) A 吸入室 B 圧縮室 C 蓄圧室

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランク室,クランクウェブ及びピスト
    ンで囲まれたコンロッド収容室をコンロッド及び該コン
    ロッドが連結されたクランクウェブにより吸入室と圧縮
    室とに区分けし、該吸入室に吸入通路を接続するととも
    に、上記圧縮室の吐出口を燃焼室に連通接続したクラン
    ク室過給式エンジンのシール装置において、上記クラン
    クウェブ円盤状に形成し、該クランクウェブの外周面
    に凸条からなる円環状のシール部を形成し、上記クラン
    クケースの内周面にウェブシール部とコンロッドシール
    部とからなるシール材を配設し、上記クランクウェブの
    シール部を上記シール材のウェブシール部に摺接させる
    とともに、上記コンロッドの大端部の外周面を上記シー
    ル材のコンロッドシール部に摺接させたことを特徴とす
    るクランク室過給式エンジンのシール装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、上記コンロッドの少
    なくとも上記コンロッドシール部との摺接面を樹脂製と
    したことを特徴とするクランク室過給式エンジンのシー
    ル装置。
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