JP3105645B2 - 圧電素子およびその製造方法 - Google Patents

圧電素子およびその製造方法

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JP3105645B2
JP3105645B2 JP15884492A JP15884492A JP3105645B2 JP 3105645 B2 JP3105645 B2 JP 3105645B2 JP 15884492 A JP15884492 A JP 15884492A JP 15884492 A JP15884492 A JP 15884492A JP 3105645 B2 JP3105645 B2 JP 3105645B2
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謙一 中村
和元 鈴木
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呉羽化学工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔シート状の電極を
有するポリマー系圧電素子に関する。
【0002】
【従来の技術】分極処理した弗化ビニリデン系樹脂(以
下、代表的にPVDFと称する)をはじめとするポリマ
ー圧電体は、セラミックス圧電体と比較して、(1)可
撓性が大きく、薄膜化、大面積化、長尺化が容易で任意
の形状、形態のものを作ることができる;(2)静水圧
圧電ひずみ定数dh は同等または、それ以下であるが、
誘電率εが小さいために、dh /εで定まる静水圧電圧
出力係数(gh 定数)は極めて大となり、従って感度特
性が優れる;(3)低密度、低弾性であるため、音響イ
ンピーダンス(音速×密度)が、水や生体の値に近く、
従って水や生体と素子との間での反射が少なく、効率の
よいエネルギー伝播が可能である等の特性を有する。こ
のような特性を生かして、ポリマー圧電体は、スピーカ
ー、マイクロホン、超音波探触子、ハイドロホン、震動
計、ひずみ計、血圧計、バイモルフファン等の、一般に
電気−機械(音響)変換素子あるいは焦電変換素子とし
て、広汎な用途への適用が提案され、あるいは実用化さ
れている。
【0003】分極処理されたフィルム状またはシート状
のポリマー圧電体(以下、包括的に、「ポリマー圧電体
フィルム」と称する。)を素子化するに際しては、通常
その両面に電極が設けられる。この際に、電極として
は、ポリマー圧電体の、配向−分極等により付与された
圧電特性をも含めた耐熱性が、100℃前後であること
を考慮して、一般に銅、アルミニウム等の蒸着電極ある
いは接着剤により貼付したこれら金属の箔電極が用いら
れている。また本発明者等により、亜鉛等の比較的融点
の低い金属を溶射して表面に層形成した溶射電極も提案
されている(平成3年特許願第356668号)。しか
しながら、これら電極には、以下に述べるようにそれぞ
れ問題点がある。
【0004】
【発明が解決すべき課題】まず蒸着電極は、一般に設け
られる電極の厚みが0.02〜0.1μm程度と薄いこ
とに加えて、ポリマー圧電体との接着強度が十分でな
く、電極へのリード線の半田付接続が非常に困難なこと
である。このため、蒸着電極を設けたポリマー圧電素子
については、電気信号入力のために複雑な電極端子構造
を採用する必要が生じる。
【0005】これに対し、金属箔電極は、一般に6〜1
00μm程度の厚さの金属箔を、ポリエステル系樹脂、
ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる5〜40μ
m程度の接着剤層を介して、ポリマー圧電体フィルムに
貼付され、半田付によるリード線接続の可能な電極とし
て形成される。しかし、この金属箔電極は、特にポリマ
ー圧電体フィルムの両面に設けた場合、ポリマー圧電素
子の可撓性という重要な長所を損なう欠点がある。ま
た、使用状態によっては、特に外気に触れる面では、接
着剤が劣化して、圧電素子としての耐久性が問題になる
ことがある。さらに、非圧電体である接着剤層の存在の
ため、場合によっては静水圧圧電ひずみ定数dh が低下
することもある。
【0006】一方、溶射電極は、ポリマー圧電体との密
着性、半田付けによるリード線接続性、得られる圧電素
子の可撓性のいずれにおいても好ましいものであるが、
ポリマー圧電体の耐熱性のため、容易に溶射形成できる
のは低融点の金属のみであり、用いられる電極材料が制
限されるという点が問題である。
【0007】上記従来の電極は、いずれもポリマー圧電
体の表面の全面に形成される。したがって、従来の圧電
素子では、電気的絶縁または実使用における周囲の環境
から電極を保護するなどの目的で、圧電体全体を被覆し
たり、密封されたケース内に収納するといったことが必
要であった。
【0008】本発明の主要な目的は、ポリマー圧電体の
優れた可撓性を本質的に損なうことのない、ポリマー圧
電体と一体に形成された電極構造を有する圧電素子を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述の目
的で研究した結果、多孔シート状の電極をポリマー圧電
体フィルムの表層に埋入して一体に形成した素子が、電
極の多孔構造にもかかわらず箔電極の接着固定により得
られた素子と同レベルの圧電特性を示し、電極剥離強度
に優れかつ可撓性の低下も比較的少ないことを見出して
本発明に到った。また、このような多孔シート状電極の
ポリマー圧電体フィルムの表層への埋入構造は、ポリマ
ー圧電体フィルムの表面を良溶媒で処理した後、多孔シ
ート状電極を圧着することにより効果的に形成されるこ
とも見出された。
【0010】すなわち、本発明の圧電素子は、ポリマー
圧電体に多孔シート状の電極が埋入されていることを特
徴とするものである。なお、メッシュ状電極は、前記多
孔シート状の電極の好ましい一実施態様である。
【0011】また、本発明の圧電素子の製造方法は、ポ
リマー圧電体フィルムまたはシートの表面を溶媒で処理
し、その後に該処理表面に多孔シート状の電極を積層し
て圧着することを特徴とするものである。
【0012】
【作用】本発明の圧電素子では、多孔シート状の電極を
用い、かつ電極をポリマー圧電体内部および/または表
層に埋入した構造が採用されている。そのため、ポリマ
ー圧電体材料の一部は電極の透孔にも侵入し、電極と圧
電体とが一体となった電極剥離強度に優れた圧電素子が
形成される。また、多孔シート状電極の優れた可撓性
は、素子化においても可撓性の低下の比較的少ない素子
を与える。
【0013】
【発明の具体的説明】本発明において、用いられるポリ
マー圧電体としては、比較的高い耐熱性を有するシアン
化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる
ほか、優れた圧電特性のフッ化ビニリデン系樹脂圧電体
が好ましく、なかでも圧電性発現に適したβ型結晶化の
ために一軸延伸の必要なフッ化ビニリデン(VDF)単
独重合体に比べて、通常の結晶条件化でβ型結晶化の可
能なVDF系共重合体(例えば優位量のVDFと劣位量
のフッ化ビニル(VF)トリフルオロエチレン(TrF
E)あるいはテトラフルオロエチレン(TFE)との共
重合体)が好ましく、更には優位量(特に70〜80モ
ル%)のVDFと劣位量(特に30〜20モル%)のT
rFEとの共重合体がもっとも好ましく用いられる。こ
れらポリマー圧電体材料は、溶融押出等により成膜後、
必要に応じて一軸延伸あるいは軟化温度以下での熱処
理、軟化温度以下での電界印加により分極処理に付され
て、ポリマー圧電体フィルムとされる。
【0014】図1は、本発明の圧電素子の好ましい一実
施例の平面図、図2は図1のII−II線に沿って取っ
た矢視方向の断面図である。図1および図2を参照し
て、この圧電素子10aは、上記したようなポリマー圧
電体フィルム1の両面の表層に、メッシュ状の多孔シー
ト状電極2を埋入し、且つその一部をリード線または端
子接続部3とした構造を有する。
【0015】本発明の多孔シート状電極は、例えば、
銅、ステンレススチール、アルミニウム、鋼、錫、亜
鉛、金、銀、チタン、白金等の金属材料の他に、炭素繊
維等の、適当な剛性を有する任意の導電性材料により構
成することができる。
【0016】メッシュ状多孔シート状電極2を構成する
ためには、図示のような平織りのほか、綾織り、畳綾織
り、平畳綾織り、綾畳織りなどの任意の織り方が採用で
きるが、その呼称が40メッシュ(例えば目開き350
μm、線径290μmの平織り金網)乃至1000メッ
シュ(例えば濾過粒度数約25μm、線径80(縦)/
55(横)μmで、縦方向は120メッシュの綾畳織り
金網)、特に60メッシュ(例えば目開き240μm、
線径180μmの平織り金網)乃至635メッシュ(例
えば目開き20μm、線径20μmの綾織り金網)のも
のが好ましく用いられる。したがって、メッシュ状多孔
シート状電極2の透孔(目開きまたは濾過粒度数)とし
ては20〜350μm、線径としては20〜300μm
の範囲が適当とされる。ステンレススチール、チタンな
どの高強度金属により金網として構成することが特に好
ましい。1000メッシュを超える金網では、透孔が小
さ過ぎて後述のように電極剥離強度が低下する傾向があ
り、逆に40メッシュ未満の金網の場合、圧電特性を表
わす主要なパラメータの一つである静水圧圧電ひずみ定
数dh が小さくなる。しかし、この場合でも、dh 定数
は小さくなるが、誘電率εも同じく低下するので後述の
ようにdh 定数と誘電率εとの比で表現される静水圧圧
電出力係数(gh 定数)は同程度のレベルに維持され
る。
【0017】図3は、本発明の圧電素子の他の好ましい
一実施例の平面図、図4は、図3のIV−IV線に沿っ
て取った矢視方向の断面図である。この圧電素子10b
は、ポリマー圧電体フィルム1の両面の表層に、多数の
透孔12aを設けた多孔板形状の多孔シート状電極12
を埋入した構造を有する。メッシュ状の多孔シート状電
極2の代わりに、透孔12aを設けた多孔板状電極12
を用いることを除いては、図1および図2に示す圧電素
子10aと本質的に同様な構造を有する。
【0018】多孔板状電極12とメッシュ状電極2と
は、同様な材料から構成することができる。また透孔1
2aの孔径および透孔間の距離は、メッシュ状電極2に
おける目開きおよび線径にそれぞれ準じて設定すること
ができる。但し、透孔間の距離の設定には、より自由な
選択が可能である。またメッシュ状多孔シート状電極2
の場合にも該当することではあるが、多孔板状電極12
(従って透孔12a)の開口率は、10〜70%、特に
20〜60%の範囲に設定することが好ましい。開口率
が10%未満では電極剥離強度が低下し、70%を超え
るとdh 定数が低下する。
【0019】本発明の多孔シート状電極の厚さ(平織り
または綾織りのメッシュ状電極2においては線径に対応
する。)は、10〜800μm、特に20〜300μ
m、の範囲とすることが好ましい。電極の厚さが10μ
m未満では得られる圧電素子の剛性が充分でなく、良溶
媒で膨潤処理されたポリマー圧電体フィルムに積層して
圧着する時、しわが発生し易い。また、逆に800μm
を超えると、適当な電極剥離強度を与えるのに充分な程
度に多孔シート状電極をポリマー圧電体フィルム1に埋
入させることが困難となる。
【0020】多孔シート状電極2、12のポリマー圧電
体フィルム積層への埋入は、アンカー効果が発現して必
要な電極剥離強度が得られるのに充分な程度になされる
べきであり、通常その厚さの30%以上、特に50%以
上が、ポリマー圧電体フィルム1の表層に埋入されるべ
きである。図5は、本発明の圧電素子の更に他の好まし
い実施例の平面図、図6はその側面図である。この圧電
素子10cは、ポリマー圧電体フィルム1の両面の表層
に、綾畳織りのメッシュ状電極22をその厚さの50%
まで埋入した構造を有する。このような部分埋入であっ
ても、多孔シート状電極の透孔に部分的に侵入したポリ
マー圧電体材料のアンカー効果により電極剥離強度は有
意に向上する。厚さの100%を埋入させた、すなわち
完全埋設状態とすることも可能であるが、この際、電極
はポリマー圧電体の樹脂で被覆される。その場合には、
表面の樹脂被覆層の一部を溶媒で軽く拭き取り電極を露
出させてから、素子へのリード線または端子の接続を行
なうとよい。また、本発明において「ポリマー圧電体フ
ィルムの表層」とは、表面から多孔シート状電極の厚さ
と同程度の深さまでの領域をいう。
【0021】ポリマー圧電体フィルム1は、50〜20
00μm程度、特に200〜1000μmの厚さを有す
ることが好ましい。フィルムの厚さが50μm未満で
は、多孔シート状電極の埋入が困難であり、フィルムの
変形、圧電特性のばらつきといった問題が発生する。ま
た、逆に2000μmを超えると、フィルムの可撓性が
損なわれ、更に分極に高電圧が必要となるため縁面放電
が発生し分極処理が極めて困難となる。本発明に従い、
多孔シート状電極をポリマー圧電体フィルムの表層に埋
入させると、素子の電極間距離が、ほぼ埋入の深さ分だ
け狭くなる。従って、ポリマー圧電体フィルム1の厚さ
は、使用する多孔シート状電極の厚さおよび埋入の深さ
を考慮し、上記範囲から選択することが好ましい。
【0022】上記において、図1〜図6を参照して、本
発明の圧電素子を、その好ましい三態様について説明し
た。しかしながら、本発明の範囲内で、上記態様を種々
変形可能である。例えば、多孔シート状電極2、12
は、ポリマー圧電体フィルム1の少なくとも一面に埋入
されていればよく、他の面の電極は、従来の蒸着電極、
金属箔電極あるいは溶射電極であってもよい。また多孔
シート状電極としては、前記例に示したようなメッシュ
状電極2あるいは透孔を設けた多孔板状電極12以外に
も、不織布、フェルト等の表裏面に連通した孔ないし空
隙を有し、溶媒により膨潤ないし溶解したあるいは熱溶
解したポリマー圧電体樹脂が含浸され得るシート状導電
体を用いることが可能である。
【0023】また圧電素子は、図2に対応して図7に示
すように多孔シート状電極2と同様な多孔シート状電極
32を中間電極として、それぞれの一面に埋入するよう
にして二枚のポリマー圧電体フィルム1で積層挾持した
全体として積層構造の圧電素子10dとして構成するこ
ともできる。このように、本発明の多孔シート状電極は
ポリマー圧電体の表層だけではなく、その内部にも埋入
され得る。この圧電素子10dにおいては、中間電極は
四辺の一方においてポリマー圧電体フィルム1から突出
して配置され、この突出部を以てリード線または端子接
続部3とされる。
【0024】次に、上述したような圧電素子を製造する
ための、本発明方法について説明する。まず、ポリマー
圧電体フィルム1の多孔シート状電極を埋入させるべき
表面を溶媒で処理する。この際の溶媒としては、ポリマ
ー圧電体フィルム1を構成するポリマー圧電体の良溶媒
が好適に用いられるが、ポリマー圧電体を溶解できなく
とも膨潤できる程度の溶媒能があれば充分である。この
ような溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケト
ン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、NNジメチ
ルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられ
る。溶媒処理のためには、ポリマー圧電体フィルムの表
面に溶媒を、塗布、スプレー、浸漬などの方法で適用
し、溶媒とフィルムとを、例えば常温〜90℃で2秒〜
1時間程度接触させておけばよい。これら温度、時間等
の処理条件は、ポリマー圧電体の組成、溶媒の種類、電
極の形状や厚さによっても異なり得る。後工程である圧
着工程における温度が高いほど電極剥離強度が増加する
ので、このような目的のためには、溶媒処理工程では溶
解力の弱い溶媒を用い、圧電体の耐熱温度範囲内で高い
温度で処理するのも好ましい。
【0025】次いでポリマー圧電体フィルム1の溶媒処
理済面に、多孔シート状電極を接触させ、両者を圧着さ
せる。多孔シート状電極のポリマー圧電体フィルム1と
の接触面には、ポリマー圧電体との接着性を向上させる
ような表面処理や、電極を保護する被覆などを予め施し
ておくのも好ましい。このような前処理の一例として
は、ポリマー圧電体と同質または相溶性の良い樹脂のコ
ーティングを例示し得る。
【0026】溶媒処理工程終了後、速やかに次の圧着工
程に移るのが良い。また、両工程の間でポリマー圧電体
フィルムの表面液を拭き取る、または落とすことも好ま
しい。
【0027】圧着工程における温度は、高温ほど電極剥
離強度が増加するのでこの点では好ましいが、一般に常
温以上で圧電体の耐熱温度の範囲内、実用上好ましくは
50〜90℃である。一方、圧着の圧力は、1kg/c
2 乃至ポリマー圧電体が塑性変形する700kg/c
2 程度まで、実用的には5kg/cm2 〜100kg
/cm2 とされるのが好ましい。また、圧着時間は10
秒〜1時間程度である。
【0028】図7に示すような、フィルム1に挟まれた
多孔シート状電極32を中間電極として有する圧電素子
を得る場合には、中間電極32の近傍でのボイドの発生
を抑えて良好な圧電特性と強い電極剥離強度を得るため
には、溶媒処理された圧電体の表層樹脂が電極の孔部に
流れ、かつ溶媒が抜けるような圧着条件および溶媒処理
条件を適宜決定する必要がある。特に、縦横いずれかの
寸法が小さい場合には、かかる条件を見出すことは容易
である。ローラーで圧着するのも好ましい方法の一つで
ある。
【0029】ポリマー圧電体フィルムの分極処理は、電
極形成後に行なうこともできるが、分極処理を行なった
圧電体フィルムに電極を形成する方法もより好ましく採
用できる。
【0030】また、本発明圧電素子を製造するための他
の方法として、多孔シート状電極を治具を用いて鋳型中
に保持しながら、そこに熱溶融した圧電体樹脂または溶
媒に溶かした圧電体樹脂を流し込んで鋳造する方法を採
用することも可能である。しかし、この場合にはポリマ
ー圧電体の分極処理は、電極形成後に行なわれる。
【0031】得られた圧電素子10a、10b、10d
においては、多孔シート状電極2、12または32の表
面被覆層を溶剤を用いて部分的に除去する等によりリー
ド線または端子接続部3を形成する。
【0032】このようにして得られた本発明の圧電素子
は、セラミック圧電素子にはない耐衝撃性、可撓性を維
持する一方で、従来のポリマー圧電素子に比べて向上し
た電極剥離強度を有する。従って、従来のポリマー圧電
素子と同様な用途への使用が可能であるほか、より大な
る応力がかかる条件下での使用に優れた適性を有する。
【0033】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
更に具体的に説明する。これら例で作成した圧電素子に
ついては、次の特性を評価した。
【0034】圧電特性:以下の方法で静水圧圧電ひずみ
定数(dh 定数)を測定して求めた。耐圧容器に入れた
シリコン油中に試料を浸漬し、容器に窒素ガス源から圧
力P(ニュートン(N)/m2 )を加えながら試料の電
荷量Q(クーロン(C))を測定する。そして、ゲージ
圧2kg/cm2 近辺での圧力上昇dPに対する電荷の
増加量dQを得、下式で計算した: dh =(dQ/dP)/A 単位は、C/Nである。ここで、Aは電極面積(m2
である。
【0035】一方、静水圧圧電出力係数(gh 定数)
は、ポリマー圧電体フィルムの誘電率εをYHP社製の
multi−frequency LCR meter
により求め、gh =dh /εの式から計算で求めた。単
位は、ボルト(V)×m/Nである。
【0036】可撓性:試料を間隔4cmの二支点で支
え、支点の中心で試料に5mm/分の速度で荷重Wを加
えて2mmたわませるのに要した1cm幅当たりの荷重
値を求め、たわみ荷重(g/cm)とした。
【0037】電極剥離強度:厚さ35μmの銅箔にエポ
キシ系接着剤(アラルダイトAW106(樹脂):HV
953U(硬化剤)=1:1、日本チバガイギー
(株))を塗布して、表面被覆樹脂層をアセトンで軽く
拭いて除去した圧電素子の電極形成面と張り合わせ、9
0℃、100kg重/cm2 の圧力で20分間プレスし
た。続いて、この張り合せ試料に対しJIS C−64
81に準拠して50mm/分の速度で90度剥離試験を
行なった。なお、この電極剥離強度は、電極にリード線
を半田接続する際にまたはその後の素子の取扱の際など
に半田周辺部で生じる電極の亀裂や剥がれなどの不都合
の度合い、即ち半田によるリード線接続性と良好な相関
を示すことが経験的に知られている。
【0038】なお、可撓性、電極剥離強度の試験では、
試験機として(株)東洋精機製作所製のSTROGRA
PH−R2を用いた。
【0039】実施例1 図1および図2に示す構造の圧電素子を以下のようにし
て形成した。
【0040】まず、VDF/TrFE(75/25モル
比)共重合体(呉羽化学工業(株)製)をダイス温度2
65℃でシート押出しし、125℃で13時間の熱処理
後、60V/μmの電界下、138℃での保持時間5
分、昇降時間を含めて全1時間の分極処理を行ない、厚
さ500μmのポリマー圧電体フィルム1を得た。この
フィルムの可撓性(たわみ荷重)は47g/cmであっ
た。
【0041】該ポリマー圧電体フィルムを30℃のアセ
トン中に30秒間浸漬後、その両面を500メッシュ
(綾織り、目開き26μm、線径25μm)のステンレ
ススチール(SUS316)製金網で挾持し、これら
を、温度90℃、圧力50kg/cm2 、時間2分の条
件で圧着して、図1の構造の圧電素子を得た。
【0042】実施例2 実施例1において、該500メッシュの金網を、VDF
/TrFE(75/25モル比)共重合体の7.5%濃
度THF溶液中に浸漬後、乾燥した樹脂被覆された金網
を用いる以外は、同様にして圧電素子を得た。
【0043】比較例1 実施例1で得たポリマー圧電体フィルムの両面に、粒度
#220のアルミナ系研磨剤を、空気圧力4.0kg/
cm2 、距離15cmの条件でサンドブラストして粗面
化したのち、SBR系接着剤(住友スリーエム(株)製
「4693スコッチ・グリップ」、溶剤1,2−ジクロ
ロエタン中に10〜20%濃度)を両面に塗布し、実施
例1の金網で挾持した後、予熱:90℃−4分間、加
圧:90℃−4分間−150kg/cm2 の条件で圧着
して圧電素子を得た。
【0044】比較例2 比較例1と同様にして粗面化ならびに接着剤を塗布した
ポリマー圧電体フィルムの両面に、厚さ35μmの銅箔
を貼付して圧電素子を得た。
【0045】比較例3 比較例1と同様にして粗面化したポリマー圧電体フィル
ムの両面に電気溶線式溶射機(加藤メタリコン(株)
製、DK式金属溶射機E型)を用い、エアー圧力5Kg
/cm2 、電圧15Vの条件で溶射を行ない厚さ約40
μmの亜鉛溶射電極を形成して、圧電素子を得た。
【0046】上記で得られた各種圧電素子について、上
記した特性評価を行なった結果を後記表1にまとめて記
す。
【0047】
【表1】
【0048】実施例3 圧着温度を、室温、50℃および70℃に変える以外
は、実施例1と同様にして圧電素子を得た。
【0049】得られた圧電素子についての、電極剥離強
度およびdh の測定値を実施例1についての結果とまと
めて、それぞれ図8および9、ならびに後記表3に示
す。
【0050】実施例4 金網として下表2に示すように40メッシュ〜800メ
ッシュの金網(実施例1で用いた500メッシュ金網も
併記する)を用い、圧着温度を50℃とする以外は、実
施例1と同様にして圧電素子を得た。
【0051】
【表2】 1)横線のメッシュ数である。縦線のメッシュ数は80
である; 2)濾過粒度数として示す; 3)横線の線径/縦線の線径。
【0052】得られた圧電素子についての、電極剥離強
度およびdh の測定値をまとめて、それぞれ図10およ
び11、ならびに下表3に示す。
【0053】
【表3】 1)メッシュ金網が硬過ぎて90゜剥離とならなかっ
た。
【0054】
【発明の効果】上記実施例、比較例の結果からも明らか
な通り、本発明によれば、ポリマー圧電体に多孔シート
状電極を埋入させることにより、従来のポリマー圧電素
子の可撓性等の利点を維持し、圧電特性の劣化を招くこ
となく、電極剥離強度で代表される機械的強度が著しく
改善された圧電素子ならびにその効果的な製造法が提供
される。従って、従来のポリマー圧電素子の用途にその
まま提供可能なだけでなく、より酷しい応力の印加され
るような使用条件下において優れた適性を有する圧電素
子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電素子の一実施例の平面図。
【図2】図1のII−II線に沿って取った断面図。
【図3】本発明の圧電素子の別の一実施例の平面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿って取った断面図。
【図5】本発明の圧電素子の更に別の一実施例の平面
図。
【図6】図5の側面図。
【図7】本発明の多層構成型とした圧電素子の実施例の
断面図。
【図8】本発明の圧電素子の電極剥離強度の圧着温度依
存性を示す実験データのグラフ。
【図9】本発明の圧電素子のdh 定数の圧着温度依存性
を示す実験データのグラフ。
【図10】本発明の圧電素子の電極剥離強度の金網目開
き依存性を示す実験データのグラフ。
【図11】本発明の圧電素子のdh 定数の金網目開き依
存性を示す実験データのグラフ。
【符号の説明】
1:ポリマー圧電体フィルム 2、22、32:メッシュ状多孔シート状電極 3:リード線または端子接続部 10a、10b、10c、10d:本発明の圧電素子 12:透孔を穿った多孔シート状電極 12a:透孔

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が
    埋入されていることを特徴とする圧電素子。
  2. 【請求項2】 前記多孔シート状電極がポリマー圧電体
    フィルムまたはシートの少なくとも一つの面において、
    その表層に埋入されている請求項1に記載の圧電素子。
  3. 【請求項3】 前記多孔シート状電極がメッシュ状電極
    である請求項1または2のいずれかに記載の圧電素子。
  4. 【請求項4】 ポリマー圧電体フィルムまたはシートの
    表面を溶媒で処理し、その後に該処理表面に多孔シート
    状の電極を積層して圧着することを特徴とする圧電素子
    の製造方法。
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