JP3104396B2 - 電子受容性物質の検知用樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

電子受容性物質の検知用樹脂組成物およびその成形体

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JP3104396B2
JP3104396B2 JP04124537A JP12453792A JP3104396B2 JP 3104396 B2 JP3104396 B2 JP 3104396B2 JP 04124537 A JP04124537 A JP 04124537A JP 12453792 A JP12453792 A JP 12453792A JP 3104396 B2 JP3104396 B2 JP 3104396B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子受容性物質の検知
材料に関する。さらに詳しくは、フェノール類、フェノ
ールカルボン酸類、アルコール類、カルボン酸類、シュ
ウ酸ジアルキルまたは3─アセト─6─メチル─2─ピ
ロノン等の電子受容性物質の存在と消失を、色調の変化
により視覚的に判別できるようにした電子受容性物質の
検知用樹脂組成物およびその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からフェノール、フェノールカルボ
ン酸、アルコール、カルボン酸等の電子受容性物質は、
防黴、抗菌、殺菌、洗浄、滑剤等の各種の用途に広く用
いられている。例えば、パラクロルメタキシレノール、
オルトフェニルフェノール、3−メチル−4−イソプロ
ピルフェノール等の電子受容性物質は防黴剤として使用
されているが、これらの物質の消失を検知する方法とし
ては、防黴剤の存在とは全く関係ない他の因子を利用し
て色調の変化により視覚的に判別できるようにしたタイ
ムインジケータ(例えば、特開昭57─168158号
公報、特開昭62─142564号公報、実開昭62─
180726号公報)を使用する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法は、電子受容性物質の消失とタイムインジケータの
変色期間が必ずしも一致しない、変色が使用条件に大き
く依存するため確実性に乏しい、製造方法が複雑であ
る、保存中の変色を防止するための密閉包装が必要であ
る等の問題を有している。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
問題点を解消すべく鋭意検討を重ねた結果、製造、保
存、使用等が極めて簡便で、電子受容性物質の存在と消
失を視覚的に直接的にしかも容易に判別することができ
る電子受容性物質の検知材料を見いだし本発明に至っ
た。すなわち、本発明における、電子受容性物質の検知
用樹脂組成物またはその成形体(以後、検知材料と称
す。)は、熱可塑性樹脂中に電子供与性発色性有機化合
物を消色状態で含有するものである。本発明に係わる電
子受容性物質の検知材料は、雰囲気中に電子受容性物質
が存在する場合、検知材料中に電子受容性物質が溶解、
拡散することにより電子供与性発色性有機化合物が発色
状態となり、逆に電子受容性物質の消失に伴い初期の消
色状態にもどるものであり、この際の変色作用を、電子
受容性物質の検知に利用することを特徴とするものであ
る。
【0005】本発明の電子受容性物質の検知材料は、加
圧型バンバリーや押出機などを用いた混練方法により、
熱可塑性樹脂と電子供与性発色性有機化合物とを溶融混
練することにより製造することができる。電子供与性発
色性有機化合物の配合量は、使用する熱可塑性樹脂によ
り、また所望の色調と有効期間を考慮して任意に変える
ことができるが、一般に熱可塑性樹脂100重量部に対
して、0.0001〜5重量部である。電子供与性発色
性有機化合物の配合量が、0.0001重量部未満では
変色が不明確であり、5重量部を越えると組性物の表面
へのブリードのため容易に色落ちが生じるので好ましく
ない。
【0006】本発明の電子受容性物質の検知材料の使用
形態はとくに限定されるものではなく、各種形状の射出
成形体、ネット、不織布、繊維、シート、フィルム等の
形状に加工して、あるいはフィルムや不織布で包装して
使用することができるが、溶融成形体の比表面積の値
が、10cm-1以上であるものが検知材料中への電子受
容性物質が溶解、拡散が速やかに生じるので好ましく、
上限は成形加工できる範囲迄である。 成形体の比表面
積の値が、10cm-1未満の場合、電子受容性物質の熱
可塑性樹脂中への溶解、拡散性が著しく大きい場合を除
き、一般的には一定の発色状態になるまでの時間が非常
に長くなる。
【0007】また、本発明の電子受容性物質の検知材料
は、電子受容性物質の熱可塑性樹脂中への溶解、拡散性
をコントロールするためあるいは電子供与性発色性有機
化合物のブリードを防ぐために、適宜多層押出成形、複
合紡糸、押出ラミネート成形等の通常の熱可塑性樹脂で
用いられる方法で加工して使用することができる。
【0008】本発明において、電子供与性発色性有機化
合物は、電子受容性物質の存在下での発色と、電子受容
性物質の消失あるいは電子供与性物質の存在による消色
が、室温で可逆的に起こる化合物であるものであれば特
に限定はなく、従来公知の各種の化合物、たとえば、ロ
ーダミンラクタム類、フルオラン類、トリフェニルメタ
ンフタリド類、フェノチアジン類、インドリルフタリド
類、スピロピラン類、ロイコオーラミン類等の化合物が
使用できる。
【0009】より具体的には、例えば、N-フェニルロー
ダミンラクタム、クリスタルバイオレットラクトン、マ
ラカイトグリーンラクトン、3,7-ビス(ジメチルアミ
ノ)-10-ベンゾイルフェノチアジン、N-3,3-トリメチル
インドリノベンゾスピロピラン、1,3-ジメチル-6- ジエ
チルアミノフルオラン、2-(2- クロロアニリノ)-6- ジ
ブチルアミノフルオラン、エチルロイコメチレンブル
ー、ローダミンB base 、などがあげられ、これらの電
子供与性発色性有機化合物は単独でも2種以上でも使用
できる。
【0010】本発明において検知することができる電子
受容性物質としては、電子供与性発色性有機化合物を発
色状態にする化合物であれば特に限定はなく、本発明の
検知材料は各種の目的に適宜用いることができる。電子
受容性物質を例示すれば、レゾルシン、クレゾール、パ
ラクロルメタキシレノール、オルトフェニルフェノー
ル、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、ナフト
ール等のフェノール類、サリチル酸等のフェノールカル
ボン酸類、メタノール、エタノール等のアルコール類、
ステアリン酸、ミリスチン酸等のカルボン酸類、シュウ
酸ジアルキル、3−アセト─6─メチル─2─ピロノン
等があげられる。特に、電子受容性物質が何らかの活性
を示す薬剤である場合、実際の薬剤活性の残効状態を視
覚的に知りうる薬効の直接的な検知材料となりうる。
【0011】本発明における熱可塑性樹脂は、電子供与
性発色性有機化合物の熱分解温度以下で熱加工でき、電
子供与性発色性有機化合物を消色状態で分散できるもの
であればよく、例えば、分岐低密度ポリエチレン、エチ
レンと炭素数4〜12のα─オレフィンとの共重合体で
ある線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エ
チレンおよび/またはブテンー1とプロピレンとの共重
合体、酢酸ビニルおよび/またはアクリル酸エステルと
エチレンとの共重合体、ポリプロピレン等のオレフィン
系熱可塑性樹脂、スチレン─ブタジエンゴム、エチレン
─プロピレン─ジエンゴム等の合成ゴム、塩化ビニル系
熱可塑性樹脂、ポリエステル、ナイロン等が挙げられ、
これらを単独であるいは2種以上で使用することができ
る。
【0012】本発明における熱可塑性樹脂は、電子供与
性発色性有機化合物を発色させてしまう添加剤、可塑
剤、触媒残査等の電子受容性を有する成分が含まれない
ものでなければならない。さらに本発明の目的を損なう
ことのない範囲内、すなわち、電子供与性発色性有機化
合物を発色させない範囲内で、防黴剤、防菌剤、除草
剤、植物成長調節剤、フェロモン、幼若ホルモン疑似物
質、殺虫剤、忌避剤、脱臭剤、芳香剤、医薬品、酸化防
止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、抗ブロッキング剤、充填
剤、蒸散調節剤、香料、色素、顔料などが適宜使用でき
る。例えば、黄色の顔料と赤色に発色する電子供与性発
色性有機化合物を用いた場合、使用前の黄色が電子受容
性物質の存在下で赤褐色に変化し、電子受容性物質の消
失に伴って黄色にもどる。
【0013】
【発明の効果】本発明の電子受容性物質の検知材料は、
製造、保存、使用等が極めて簡便で、電子受容性物質の
存在と消失を視覚的に直接的にしかも容易に判別するこ
とができ、電子受容性物質の検知材料として優れてい
る。
【0014】
【実施例】次に実施例をあげて本発明を説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 熱可塑性合成樹脂としてエチレン−メチルメタクリレー
ト共重合体(住友化学工業(株)製アクリフトWH202)
100重量部、電子供与性発色性有機化合物としてロー
ダミンB base(田岡化学工業(株)製)0.04重量
部を密閉式加圧ニーダー(森山製作所製)にてせん断発
熱を利用して溶融混練下後、押出機に供給し押し出しな
がらホットカットを行ないペレット化した。引き続き三
種三層インフレダイス(口径100mm)を装備した多層
インフレ装置を使用し、該ダイスの中間層には口径40
mmの押出機を通して上記のペレットを溶融ゾーン170
℃ダイス温度150℃の条件で9kg/hの吐出量で供給し
た。内層および外層にはいずれも低密度ポリエチレン
(住友化学工業(株)製スミカセン F208-O)を溶融ゾ
ーン180℃ダイス温度150℃の条件で3kg/hの吐出
量で供給した。各層に供給した樹脂は該ダイスの内部で
貼合し三層サンドイッチ構造(外層/中間層/内層)の
管状体をブローアップレシオ2.0、フロストライン距
離200mm、引取速度4.2m/分の条件で引き取り、
折径320mm、各層の厚みが外層0.02mm/中間層
0.06mm/内層0.02mmで構成される、全体厚み
0.1mmの三層フィルム形状である電子受容性物質の検
知材料を得た。この検知材料の比表面積は約200cm
-1であり、検知材料中でローダミンB base は消色状態
にあり、ローダミンB base を含まないフィルムと外観
上ほとんど変わらないものであった。電子受容性物質と
して、p─クレゾール3gを容積300cm3 、口径6
cmの広口瓶の底に入れ、直径6cmの半円状に切断し
た検知材料で広口瓶の口径面積の半分に蓋をした後、検
知材料の発色状態を目視により観察した。この検知材料
は電子受容性物質の存在中は赤紫色に変色し、電子受容
性物質の揮散による消失にともない消色し無色透明とな
った。
【0015】実施例2〜7 電子受容性物質の種類を(実施例2:メタノール;実施
例3:p−クロル−メタキシレノール;実施例4:o−
フェニルフェノール;実施例5:3−メチル−4−イソ
プロピルフェノール;実施例6:デヒドロ酢酸;実施例
7:シュウ酸ジアルキル)とした以外は実施例1と全く
同じ方法で、検知材料の発色状態を目視により観察し
た。いずれの電子受容性物質の場合も実施例1と同様
に、この検知材料は電子受容性物質の存在中は赤紫色に
変色し、電子受容性物質の揮散による消失にともない消
色し無色透明となった。
【0016】実施例8 実施例1における引取速度4.2m/ 分を9. 0m/ 分
に変更し、各層の厚みが外層0. 01mm/中間層0. 0
3mm/内層0. 01mm、全体厚み0. 05mmとした以外
は実施例1と同様にして三層フィルムを得た。この検知
材料を直径5cmの円状に切断し、容積300cm3
口径6cmの広口瓶の底に敷いた後、電子受容性物質と
して1−ナフトール10mgを投入し、検知材料の発色
状態を目視により観察した。電子受容性物質の投入後、
この検知材料は無色透明から赤紫色に変色した。
【0017】実施例9〜13 電子受容性物質の種類を(実施例9:ハイドロキノン;
実施例10:ピロガロール;実施例11:ビスフェノー
ルA;実施例12:ステアリン酸;実施例13:ピロカ
テコール)とした以外は実施例8と全く同じ方法で、検
知材料の発色状態を目視により観察した。いずれの場合
も電子受容性物質の投入後、この検知材料は無色透明か
ら赤紫色に変色した。
【0018】比較例1〜3 電子受容性物質に変えて(比較例1:アセトン;比較例
2:1,3,5−トリオキサン;比較例3:ヒノキチオ
ール)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法で、検知
材料の発色状態を目視により観察したが、いずれの場合
も検知材料の変色は観察されなかった。
【0019】比較例4〜6 電子受容性物質に変えて(比較例4:アセトン;比較例
5:1,3,5−トリオキサン;比較例6:ヒノキチオ
ール)を用いた以外は実施例8と全く同じ方法で、検知
材料の発色状態を目視により観察したが、いずれの場合
も検知材料の変色は観察されなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−60901(JP,A) 特開 昭63−350551(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/00 C08K 5/00 C08L 101/00 C09K 3/00 G01N 21/78 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂に電子供与性発色性有機化合
    物を消色状態で含有することを特徴とする電子受容性物
    質の検知用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の樹脂組成物を成形加工する
    ことを特徴とする検知用樹脂成形体。
  3. 【請求項3】熱可塑性樹脂100重量部に対して、電子
    供与性発色性有機化合物が、0.0001〜5重量部で
    ある請求項1または2記載の樹脂組成物または樹脂成形
    体。
  4. 【請求項4】樹脂成形体の比表面積の値が、10cm-1
    以上である請求項2記載の樹脂成形体。
  5. 【請求項5】熱可塑性樹脂が、オレフィン系熱可塑性樹
    脂、合成ゴム、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリエステ
    ル、ナイロン、またはこれらの2種以上の混合物である
    請求項1または2記載の樹脂組成物または樹脂成形体。
  6. 【請求項6】オレフィン系熱可塑性樹脂が、分岐低密度
    ポリエチレン、エチレンと炭素数4〜12のα─オレフ
    ィンとの共重合体である線状低密度ポリエチレン、高密
    度ポリエチレン、エチレンおよび/またはブテン─1と
    プロピレンとの共重合体、酢酸ビニルおよび/またはア
    クリル酸エステルとエチレンとの共重合体、ポリプロピ
    レンであり、合成ゴムが、スチレン─ブタジエンゴム、
    エチレン─プロピレン─ジエンゴムである請求項5記載
    の樹脂組成物または樹脂成形体。
  7. 【請求項7】電子供与性発色性有機化合物が、ローダミ
    ンラクタム類、フルオラン類、トリフェニルメタンフタ
    リド類、フェノチアジン類、インドリルフタリド類、ス
    ピロピラン類、ロイコオーラミン類、またはこれらの2
    種以上の混合物である請求項1または2記載の樹脂組成
    物または樹脂成形体。
  8. 【請求項8】電子受容性物質を請求項2記載の成形体を
    用いて検知する方法。
  9. 【請求項9】検知する電子受容性物質が、フェノール
    類、フェノールカルボン酸類、アルコール類、カルボン
    酸類、シュウ酸ジアルキルまたは3─アセト─6─メチ
    ル─2─ピロノンである請求項8記載の方法。
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