JP3103730B2 - ナトリウム−硫黄電池および同電池用陽極容器の製造方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池および同電池用陽極容器の製造方法

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JP3103730B2 JP06229896A JP22989694A JP3103730B2 JP 3103730 B2 JP3103730 B2 JP 3103730B2 JP 06229896 A JP06229896 A JP 06229896A JP 22989694 A JP22989694 A JP 22989694A JP 3103730 B2 JP3103730 B2 JP 3103730B2
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sulfur battery
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電力負荷調整用、電気
自動車の電源用等の二次電池として利用されるナトリウ
ム−硫黄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のナトリウム−硫黄電池は、特開
平5−109433号公報および特開平6−16307
4号公報に示されているように、有底筒状の陽極容器
と、同陽極容器の内部に配設されたナトリウムイオンを
透過可能な有底筒状の固体電解質と、同固体電解質内に
収容された金属ナトリウムからなる陰極活物質と、前記
固体電解質と前記陽極容器間に収容された硫黄からなる
陽極活物質とを備えた構成となっている。当該形式のナ
トリウム−硫黄電池は300〜350℃に加熱された状
態で充放電の動作を行うもので、放電時には陰極室側の
ナトリウムと陽極室側の硫黄とがイオン化され、イオン
化されたナトリウムが固体電解質を透過して硫黄と反応
して多硫化ナトリウムを生成するとともに放電し、また
充電時にはこれとは逆の反応が生じて充電されるもので
ある。
【0003】しかして、当該ナトリウム−硫黄電池の一
形式として、陽極容器が金属にて形成されかつ固体電解
質がセラミックにて形成されているものがあり、当該形
式のナトリウム−硫黄電池においては、運転時に300
℃〜350℃の加熱状態に保持されるとともに運転停止
時に外気温度まで冷却される加熱および冷却が繰り返し
行われると、陽極容器と固体電解質との熱膨張および熱
収縮の相違と、放電時に生成される多硫化ナトリウムの
固体相−液体相間の変化とに起因して陽極容器が長手方
向へ漸次伸長され、陽極容器と固体電解質との端子間の
接続関係に悪影響を及ぼすとともに、固体電解質に大き
な応力が作用して同固体電解質を損傷させるおそれがあ
る。
【0004】また、当該ナトリウム−硫黄電池の他の一
形式として、陽極容器がアルミニウムまたはアルミニウ
ム合金からなる有底筒状の基体と同基体の内周面に形成
された耐腐食性の被覆層とからなり、かつ固体電解質が
セラミックにて形成されているものがある。当該形式の
ナトリウム−硫黄電池は、陽極容器を軽量かつ安価に構
成すべくその基体をアルミニウムまたはアルミニウム合
金にて形成しているものである。当該形式のナトリウム
−硫黄電池の陽極容器においては、下記に示す理由によ
り、アルミニウムまたはアルミニウム合金性の基体の内
周面に被覆層が形成されている。すなわち、ナトリウム
−硫黄電池においては、その放電時のナトリウムと硫黄
の反応により多硫化ナトリウムが生成されるが、多硫化
ナトリウムは金属に対する腐食性、特にアルミニウム、
アルミニウム合金に対する腐食性が高く、この多硫化ナ
トリウムがアルミニウム、アルミニウム合金に直接接触
すると陽極容器の内周面が腐食して損傷し、耐久性を低
下させるとともに、腐食が局部的で激しい場合には陽極
容器に亀裂、貫通孔が発生して多硫化ナトリウム、硫黄
等が外部へ漏洩するおそれがあること、陽極容器の腐食
が進行すると陽極活物質である硫黄が容器を構成する金
属の硫化のために消費され、陽極活物質として機能する
硫黄の量が減少し、これにともない電気容量が減少して
電池としての寿命が短縮されること等による。
【0005】当該形式のナトリウム−硫黄電池において
も、運転および運転停止時の加熱および冷却に起因して
陽極容器が長手方向へ漸次伸長され、陽極容器と固体電
解質との端子間の接続関係に悪影響を及ぼすとともに、
固体電解質に大きな応力が作用して同固体電解質を損傷
させるおそれがある。そのうえ、当該形式のナトリウム
−硫黄電池においては、陽極容器を構成している基体と
被覆層とでは熱膨張、熱収縮に大きな差があり、この差
に起因してこれら両者間に層間剥離が発生するととも
に、被覆層にクラックが発生するおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような問題に対処
すべく、上記した両公報に示されたナトリウム−硫黄電
池において、前者のナトリウム−硫黄電池にあっては、
陽極容器の筒部の上方側部に径方向へ屈曲して同筒部の
長手方向への伸縮が容易なくびれ部を設けるとともに、
陽極容器の外周に剛性容器を嵌合し、剛性容器により陽
極容器の熱膨張による長手方向の伸長量を所定量に規制
するとともに、陽極容器の熱膨張および熱収縮をくびれ
部の変形により吸収緩和しようとするものである。ま
た、後者のナトリウム−硫黄電池にあっては、陽極容器
の筒部に上下一対のくびれ部を形成して、これら両くび
れ部により陽極容器の熱膨張および熱収縮をくびれ部の
変形により吸収緩和しようとするものである。
【0007】しかしながら、陽極容器の筒部におけるく
びれ部は同筒部における直管部に比較して熱膨張および
熱収縮等にともなう変形が大きいことから、直管部の硬
さがくびれ部の硬さよりも低いとこの大きい熱変形に起
因して直管部が伸ばされ、これにともない被覆層にクラ
ックが発生するという問題がある。
【0008】本発明者は、当該ナトリウム−硫黄電池に
おいて陽極容器の筒部における直管部とくびれ部との硬
さに着目し、これら両部位の硬さを規定することにより
被覆層でのクラックの発生を抑制し得るという知見を得
て本発明を想到したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明はナトリウム−硫
黄電池、および当該ナトリウム−硫黄電池を構成する陽
極容器の製造方法に関するものであり、当該ナトリウム
−硫黄電池は、金属製の有底筒状の基体の内周面に同基
体より耐腐食性の高い金属からなる被覆層を有する陽極
容器と、同陽極容器の内部に配設されたナトリウムイオ
ンを透過可能な有底筒状のセラミック製の固体電解質
と、同固体電解質内に収容された金属ナトリウムからな
る陰極活物質と、前記固体電解質と前記陽極容器間に収
容された硫黄からなる陽極活物質とを備えるとともに、
前記陽極容器の筒部の長手方向の部位に径方向に屈曲す
る1または複数のくびれ部を備え、加熱状態において充
放電動作を行うナトリウム−硫黄電池において、前記陽
極容器の筒部におけるくびれ部の硬さを、同陽極容器の
筒部における直管部の硬さより低くしたことを特徴とす
るものである。
【0010】当該ナトリウム−硫黄電池においては、前
記陽極容器の筒部における直管部の硬さがビッカース硬
さ(Hv)で40以上であること、前記陽極容器の筒部
における直管部を構成する結晶の平均粒径が50μm以
下であり、かつ同筒部におけるくびれ部を構成する結晶
の平均粒径が50μm以上であることが好ましい。
【0011】また、本発明の陽極容器の製造方法は、当
該ナトリウム−硫黄電池を構成する陽極容器を製造する
方法であり、当該製造方法は、前記陽極容器の筒部にお
けるくびれ部を形成する際に同筒部における直管部での
低加工硬化の発生を規制する形成手段を採用することを
特徴とするものである。当該製造方法としては、陽極容
器を構成している基体の外周部を径方向に押圧するとと
もに、この押圧力基体の長手方向への伝達を規制する
加工方法が採られる。
【0012】
【発明の作用・効果】このように構成したナトリウム−
硫黄電池においては、陽極容器の筒部におけるくびれ部
の硬さが、同筒部における直管部の硬さより低くて、く
びれ部の形状と相乗して容易に変形するため、陽極容器
の長手方向の熱膨張および熱収縮を同くびれ部により十
分吸収して緩和することができて、陽極容器の伸縮に起
因する問題を十分に解消することができる。また、当該
ナトリウム−硫黄電池においては、くびれ部と直管部と
の硬さを規定しているため、被覆層でのクラックの発生
が抑制される。このため、陽極容器の耐腐食性が一段と
向上して、電気容量の低下を防止し得るとともに寿命の
向上を図ることができる。
【0013】この場合、陽極容器の筒部における直管部
の硬さがビッカース硬さ(Hv)で40以上であること
が好ましい。また、直管部を構成する結晶の平均粒径は
50μm以下であり、かつくびれ部を構成する結晶の平
均粒径は50μm以上であることが好ましい。直管部を
構成する結晶の平均粒径が50μmを越えると、陽極容
器としての機械的性質が低下するおそれがあり、逆にく
びれ部を構成する結晶の平均粒径が50μmを下回ると
くびれ部が硬くなって、変形に支障をきたすおそれがあ
る。
【0014】また、本発明の製造方法によれば、基体の
くびれ部を加工する際に直管部での低加工硬化の発生を
防止しているため、直管部を構成する結晶の平均粒径を
小さく保持することができて、直管部における機械的性
質の低下を防止することができる。直管部を構成する結
晶の平均粒径を50μm以下に保持することが好まし
い。
【0015】
【実施例】
(ナトリウム−硫黄電池)以下、本発明に係るナトリウ
ム−硫黄電池を図面に基づいて説明する。図1には本発
明の一実施例に係るナトリウム−硫黄電池の縦断面が示
されている。当該ナトリウム−硫黄電池は陽極容器10
aと、固体電解質10bを主要構成部材とし、かつ陰極
活物質10cと、陽極活物質10dを主要構成物質とし
ている。陽極容器10aは有底筒状の基体11と被覆層
12とからなり、また基体11はアルミニウムまたはア
ルミニウム合金にて形成されている有底筒体である。被
覆層12はクロム−鉄系合金の溶射層にて形成されてい
るもので、基体11の内周面に形成されている。しかし
て、当該ナトリウム−硫黄電池においては、陽極容器1
0aを構成する基体11の直管部11aの側部上方に断
面波形状のくびれ部11bが形成される。
【0016】固体電解質10bは有底筒体であってナト
リウムイオンの透過能を有するもので、ベータアルミナ
にて形成されている。固体電解質10bはアルファアル
ミナにて形成されている絶縁リング13に嵌着されてい
て、同絶縁リング13の下半分を陽極容器10aの上端
開口部に嵌着させた状態で陽極容器10a内に同心的に
配設されている。蓋体14aは陰極端子14bを備え、
絶縁リング13の上面に固着されて絶縁リング13を覆
蓋している。これにより、絶縁リング13および蓋体1
4aは陽極容器10aおよび固体電解質10bを密閉し
ていて、固体電解質10b内を陰極室に構成し、かつ陽
極容器10aと固体電解質10b間を陽極室に構成して
いる。なお、陽極容器10aを構成する基体11は図示
しない陽極端子を備えている。
【0017】当該ナトリウム−硫黄電池においては、陰
極室に陰極活物質10cが収容され、かつ陽極室に陽極
活物質10dが収容されている。陰極活物質10cは金
属ナトリウムからなり、金属繊維を介在させて陰極室に
収容されている。また、陽極活物質10dは硫黄からな
り、グラファイトフェルトを介在させた状態で陽極室に
収容されている。当該ナトリウム−硫黄電池において
は、同電池を300〜350℃に加熱すると約2.08
Vの開路電圧を示し、電池に外部負荷を接続すると電池
内では陰極活物質であるナトリウムがイオン化され、ナ
トリウムイオンは固体電解質10bを透過して陽極活物
質10dに達し、同活物質10dである硫黄と反応して
多硫化ナトリウムを生成させて放電する。また、当該ナ
トリウム−硫黄電池において、充電時には上記とは逆の
反応が起こって充電される。
【0018】しかして、当該ナトリウム−硫黄電池にお
いては、陽極容器10aを構成する基体11における直
管部11aとくびれ部11bとでは硬さを互いに異にし
ている。すなわち、直管部11aの硬さはビッカース硬
さ(Hv)で40以上となっており、くびれ部11bの
硬さは直管部11aの硬さより低く形成されている。ま
た、直管部11aを構成する結晶の平均粒径は50μm
以下に、かつくびれ部11bを構成する結晶の平均粒径
は50μm以上となっている。
【0019】かかる構成のナトリウム−硫黄電池におい
ては、陽極容器10aを構成する被覆層12が耐腐食性
の高いクロム−鉄系合金の溶射層にて形成されている。
このため、放電時に生成される多硫化ナトリウムに直接
接触する被覆層12は耐腐食性が極めて高く、従って陽
極容器10aは腐食による損傷が少ないとともに、陽極
活物質10dの無駄な消費が低減されて電気容量の低下
が極めて少ない。また、当該ナトリウム−硫黄電池にお
いて、運転および運転停止が繰り返し行われて陽極容器
10aが熱膨張および熱収縮する場合、陽極容器10a
の伸縮はくびれ部11bにより吸収されて緩和されると
ともに、基体11側の伸長量が被覆層12の作用により
所定量に規制される。
【0020】ところで、当該ナトリウム−硫黄電池にお
いては、陽極容器10aの基体11におけるくびれ部1
1bの硬さが、同基体11における直管部11aの硬
り低くて、くびれ部11bの形状と相乗して容易に変
形するため、陽極容器10aの長手方向の熱膨張および
熱収縮をくびれ部11bにより十分吸収して緩和するこ
とができて、陽極容器10aの伸縮に起因する問題を十
分に解消することができる。また、当該ナトリウム−硫
黄電池においては、くびれ部11bと直管部11aとの
硬さを規定しているため、被覆層12でのクラックの発
生が抑制される。このため、陽極容器10aの耐腐食性
が一段と向上して、電気容量の低下を防止し得るととも
に寿命の向上を図ることができる。この場合、陽極容器
10aの基体11における直管部11aを構成する結晶
の平均粒径は50μm以下であり、かつくびれ部11b
を構成する結晶の平均粒径は50μm以上であるため、
基体11としての機械的性質が十分保持され、またくび
れ部11bを構成する結晶の平均粒径が50μm以上で
あるため、くびれ部11bが硬くなって変形に支障をき
たすようなことはない。
【0021】当該ナトリウム−硫黄電池を構成する陽極
容器10aは図2に示す方法で製造することができる。
図2に示す製造装置は、左右一対の支持用治具21,2
2を備えるとともにくびれ加工用の加工治具23を備え
ている。両支持治具21,22は円柱状の支持部21
a,22aを有するが、左側の支持部21aは短尺にか
つ右側の支持部22aは長尺に形成されており、各支持
部21a,22aは基体11の各先端開口部から内孔内
に挿入され、両先端21b,22bを所定の間隔を保持
して互いに対向させる。この状態で、両支持用治具2
1,22を軸を中心に回転させると基体11が一体的に
回転し、加工用治具23を両支持部21a,22aの両
先端21b,22b間の隙間に対応する外周側の部位に
押圧する。
【0022】これにより、基体11における両支持部2
1a,22aの両先端21b,22b間に対応する部位
にくびれ部11bが形成される。この場合、基体11の
直管部11aには押圧力が伝達されず、直管部11aに
低加工硬化が発生することはない。これに対して、当該
製造方法と対比するために示された図3の従来法では、
下側支持治具24と、同治具24の外周に嵌合された基
体11の上端から嵌合させた加工用治具25とによりく
びれ加工を行うもので、加工用治具25の押圧作用によ
り、下側支持治具24の突起部24aの上端と加工用治
具25の内側突起部25aの下端との間にくびれ部11
bを形成するものである。従って、このような従来法で
は、基体11の長手方向に押圧力が伝達されて、基体1
1の直管部11aが2点鎖線で示すようにわずかに拡開
する状態となって低加工状態となる。このため、基体1
1の直管部11aで低加工硬化が発生し、直管部11a
の機械的性質が低下する。
【0023】(実験1)本実験では、図2に示す製造方
法で作製した長さ290mm、外径45mm、厚み1.
3mmのアルミニウム合金製の基体11と、その内周面
にクロムー鉄系合金(クロム含有量が75重量%)を溶
射して形成された被覆層12とからなる表1に示す各種
の陽極容器10aを用いて、図1に示すナトリウム−硫
黄電池を構成し、加熱、冷却を繰り返し行った場合の被
覆層12でのクラックの発生状態を測定するヒートサイ
クル試験を行った。ヒートサイクル試験では、ナトリウ
ム−硫黄電池を室温から4時間で385℃まで昇温し、
この温度を5時間保持した後4時間で室温まで降温する
行程を1サイクル(ヒートサイクル)としてこれを12
0回繰り返し行い、その後電池を解体して陽極容器10
aを取り出して、被覆層12でのクラックの発生状態を
X線透過法で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1を参照すると、陽極容器10aを構成
する基体11の直管部11aとくびれ部11bとの硬さ
の関係では、くびれ部11bの硬さが直管部11aの硬
さより低い場合(実験NO.1,NO.2)には被覆層
12でのクラックの発生は認められないのに対して、く
びれ部11bの硬さが直管部11aの硬さより高い場合
(実験NO.3,NO.4)には被覆層12でのクラッ
クの発生が認められる。また、基体11の直管部11a
を構成する結晶とくびれ部11bを構成する結晶との平
均粒径の関係では、直管部11aを構成する結晶の平均
粒径がくびれ部11bを構成する結晶の平均粒径より小
さい場合(実験NO.1,NO.2)には被覆層12で
のクラックの発生は認められないのに対して、直管部1
1aを構成する結晶の平均粒径がくびれ部11bを構成
する結晶の平均粒径より大きい場合(実験NO.3,N
O.4)には被覆層12でのクラックの発生が認められ
る。これらの結果からすれば、直管部11aの硬さはビ
ッカース硬さ(Hv)で40以上であることが好まし
く、また結晶の平均粒径については、直管部11aを構
成する結晶の平均粒径が50μm以下でくびれ部11b
を構成する結晶の平均粒径が50μm以上であることが
好ましい。図4(a),(b)には実験NO.2と実験
NO.4のナトリウム−硫黄電池における陽極容器10
aの内周面のクラックの発生状態を示している。同図に
おける符号12aは、被覆層12の表面で発生している
クラックを示している。
【0026】(実験2)本実験では、図2および図3に
示す各製造方法で作製した長さ290mm、外径45m
m、厚み1.3mmのアルミニウム合金製の基体11,
11Aと、その内周面にクロムー鉄系合金(クロム含有
量が75重量%)を溶射して形成された被覆層12とか
らなる、表2に示す各種の陽極容器10aを用いて、図
1に示すナトリウム−硫黄電池を構成し、実験1と同様
に加熱、冷却を繰り返し行った場合の被覆層12でのク
ラックの発生状態を測定するヒートサイクル試験を行っ
た。所定のヒートサイクル数毎に測定したクラックの発
生数を表2および図5のグラフに示す。
【0027】
【表2】
【0028】表2および図5のグラフを参照すると、基
体11,11Aにおけるくびれ部11bの硬さが同一で
ある場合でも、製造方法の相違に起因して直管部11a
の硬さが相違し、本発明の製造方法を採用して作製した
基体11の場合(実験NO.1,NO.2)には、直管
部11aには低加工硬化の発生はなくて硬さが高いのに
対して、従来の製造方法を採用して作製した基体11A
の場合(実験NO.3,NO.4)には、直管部11a
に低加工硬化が発生して硬さが低くなっているのが認め
られる。後者の場合には、被覆層12でのクラックの発
生が認められ、クラックの発生数はヒートサイクル数の
増加に対応して増加していることが明かである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るナトリウム−硫黄電池
の縦断面図である。
【図2】同ナトリウム−硫黄電池の陽極容器を構成する
基体の製造例を示す縦断面図である。
【図3】従来のナトリウム−硫黄電池の陽極容器を構成
する基体の製造例を示す縦断面図である。
【図4】陽極容器の被覆層でのクラックの発生状態を示
す同陽極容器の縦断面図である。
【図5】基体の製造方法と被覆層でのクラックの発生状
態との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10a…陽極容器、10b…固体電解質、10c…陰極
活物質、10d…陽極活物質、11…基体、11a…直
管部、11b…くびれ部、12…被覆層、12a…クラ
ック、21,22…支持用治具、23…加工用治具、2
4…下側支持具、25…加工用治具。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属製の有底筒状の基体の内周面に同基体
    より耐腐食性の高い金属からなる被覆層を有する陽極容
    器と、同陽極容器の内部に配設されたナトリウムイオン
    を透過可能な有底筒状のセラミック製の固体電解質と、
    同固体電解質内に収容された金属ナトリウムからなる陰
    極活物質と、前記固体電解質と前記陽極容器間に収容さ
    れた硫黄からなる陽極活物質とを備えるとともに、前記
    陽極容器の筒部の長手方向の部位に径方向に屈曲する1
    または複数のくびれ部を備え、加熱状態において充放電
    動作を行うナトリウム−硫黄電池において、前記陽極容
    器の筒部におけるくびれ部の硬さを、同陽極容器の筒部
    における直管部の硬さより低くしたことを特徴とするナ
    トリウム−硫黄電池。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池に
    おいて、前記陽極容器の筒部における直管部の硬さが、
    ビッカース硬さ(Hv)で40以上であることを特徴と
    するナトリウム−硫黄電池。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載のナトリウム−硫
    黄電池において、前記陽極容器の筒部における直管部を
    構成する結晶の平均粒径が50μm以下であり、かつ同
    筒部におけるくびれ部を構成する結晶の平均粒径が50
    μm以上であることを特徴とするナトリウム−硫黄電
    池。
  4. 【請求項4】請求項1,2または3に記載のナトリウム
    −硫黄電池を構成する陽極容器を製造する方法であり、
    前記陽極容器の筒部におけるくびれ部を形成する際に同
    筒部における直管部での低加工硬化の発生を規制する形
    成手段を採用することを特徴とするナトリウム−硫黄電
    池用陽極容器の製造方法。
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