JP3101805B2 - 膨張黒鉛製シール素材およびその製造方法 - Google Patents
膨張黒鉛製シール素材およびその製造方法Info
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Description
ン、ガスケット、Vリングおよびバルブシートなどの各
種高温用シール材、さらに、ベアリングのような摺動
材、あるいは高温真空炉用の断熱材などに使用される膨
張黒鉛製シール素材およびその製造方法に関するもので
ある。
弗化エチレン樹脂(テフロン)などで構成されていた
が、最近では、耐熱性などの点で優れた膨張黒鉛を用い
たものが多く開発されている。
鉛結晶1aが積層状態となっている厚さH0 の酸処理黒
鉛1Aを加熱して膨張処理することにより、図11に示
すように、上記積層方向(矢印a方向)に拡開されて黒
鉛結晶1aの各間にすきまGを有する厚さH(5mm〜1
0mm程度)の蛇腹状の構造体1からなる。
黒鉛を使用して、例えばガスケット用シートなどのシー
ト状の膨張黒鉛製シール素材を製造する場合は、図12
に示すように、加熱により膨張され厚いマット状とされ
た表層部、内層部ともに均一組成の膨張黒鉛マット状体
200を図示省略したベルトコンベアなどを介して上下
一対の加圧ロール201,201に供給しかつ通過させ
ることにより、膨張黒鉛結晶1aを加圧して互いに一体
化してシート状の膨張黒鉛製シール素材202を製造す
る。この製造時において、上記マット状体200の表裏
の表層部に存在している低密度で蛇腹状の膨張黒鉛1
(図11参照)は、上記一対の加圧ロール201,20
1の通過時に強い圧縮力と剪断力を受けるために、図1
3に示すように、面積が大きく、かつ厚さt1の小さい
薄葉状の圧縮体203に形態変化する一方、上記マット
状体200の内層部に存在する蛇腹状の膨張黒鉛1が一
対の加圧ロール201,201の通過時に受ける圧縮力
および剪断力は上記表層部のものより小さいために、図
14に示すように、表層部における上記薄葉状圧縮体2
03に比して面積が小さく、かつ厚みt2が大きい圧縮
体204に形態変化する。
のシート状の膨張黒鉛製シール素材202の一部を階段
状に切除して示す斜視図であり、その表層部には図13
に示すような薄葉状の圧縮体203がその長手方向をシ
ート長手方向に対して直交する方向に沿わせて規則性の
ある状態で高密度に高配向されている一方、内層部には
図14に示すような厚みの大きい圧縮体204が規則性
なくランダムに配置されている。
従来の膨張黒鉛製シール素材は、もともと機械的強度が
低い上に、基材が膨張黒鉛を加圧しただけのものであっ
て、可撓性が小さくて、少数回の繰り返し曲げを受ける
だけて破断しやすい。また、その表層部には薄葉状の圧
縮体203が高密度で高配向されているので、小さい曲
率半径で曲げたとき、表層部の薄葉状圧縮体203にひ
び割れや部分剥離などシール性を低下する現象を発生し
やすく、巻き付けや折り畳み等の曲げを伴う加工が非常
に困難であり、したがって、この膨張黒鉛製シール素材
によるシール材などの加工品の適用範囲が狭くなるばか
りでなく、加工手段にも制約があって、加工品の生産性
向上には自ずと制限を受けるという問題があった。
ので、簡単な手段によって可撓性を著しく改善して、加
工品の適用範囲の拡大を図ることができるとともに、加
工品の生産性向上も達成することができる膨張黒鉛製シ
ール素材およびその製造方法を提供することを目的とし
ている。
め、請求項1の発明に係る膨張黒鉛製シール素材は、膨
張させた黒鉛粒子を加圧して互いに一体化してなる膨張
黒鉛基材の表層部を(好ましくは表裏双方の表層部でか
つ全域を)、その露出する表面のX線回折による回折ピ
ーク値が26.53°〜26.45°の範囲にあるよう
にしたことを特徴とするものであり、これにより、可撓
性を改善して折り曲げ可能回数の増大が図れるととも
に、表層部に高配向されている面積が大きく、かつ厚さ
の小さい薄葉状圧縮体の全てもしくは大部分が除かれて
いるので、巻き付けや折り畳みなどの曲げを伴う加工時
における表層部のひび割れや部分剥離などの発生を防い
で、小さな曲率半径の加工品であっても、シール性に優
れた加工品に製作することが可能である。つまり、該シ
ール素材による加工品の適用範囲の拡大が図れるととも
に、加工手段の制約も少なくなって、加工品の生産性の
向上も図れる。
10%未満で、好ましくは1〜6%表層部を除去するこ
とで簡単に上記回折ピーク値に設定することができ、し
かも、大きな材料ロスにつながらない。
しては、請求項3〜5に記載のように、シート状、プレ
ス成形品、あるいは糸状体のいずれを採用してもよく、
シート状の場合は、これを適当な大きさに切断すること
で様々な用途に応じることができ、また、プレス成形品
の場合は、リング状のパッキンや軸受を簡単に作成する
ことができ、さらに糸状体の場合は、パッキンなどとし
て実装する際の寸法調整が容易である。
材の製造方法は、膨張させた黒鉛粒子を加圧して互いに
一体化して膨張黒鉛基材を形成した後、この基材におけ
る表層部(好ましくは表裏双方の表層部)の全域を、マ
イクロブラスト加工、レーザー加工およびスパッタリン
グ加工のうちの少なくとも一種の加工手段により、その
露出する表面のX線回折による回折ピーク値が26.5
3°〜26.45°の範囲にあるように除去処理するこ
とを特徴とするものであり、このような製造方法によれ
ば、上記した表層部の除去処理を能率良く行えるととも
に、その除去量の微妙な調整も可能で品質の向上を図る
ことができる。
7に記載のように、膨張黒鉛基材における表層部の除去
処理手段として、粒子径50〜100μmのクルミ粉を
ブラスト用粒子として使用するブラスト加工とする場合
は、ブラスト加工時に粒子の一部が除去後の表面に残留
したとしても、その粒子が柔らかいクルミ粒子であるか
ら、使用態様において、相手側ステムなどを傷つけるお
それがない。
スト加工に限定されるものでないが、このブラスト加工
を採用するには、以下の条件を満足させるとよい。即
ち、膨張黒鉛は、商業的に生産されているもので、幅方
向(図11の矢印b方向)の寸法は1mm以下であり、こ
の点から上記ブラスト加工に使用する粒子としては、粒
子径が1mm以下のものが好適である。また、ブラスト加
工時の粒子としては、粒子径が50〜100μmのクル
ミ粉が最適であるが、それ以外にも、SiC粉、ガラス
ビーズ、鉄粉、プラスチックビーズなどを挙げることが
できる。
にしたがって説明する。図1は本発明に係るシート状の
膨張黒鉛製シール素材の一部を階段状に切除して示す斜
視図であり、同図において、11は膨張黒鉛基材で、該
基材11は、図10に示すように酸処理された黒鉛1A
を図11のように膨張処理した後、図12に示すよう
に、その膨張され厚いマット状とされた膨張黒鉛マット
状体200をベルトコンベア(図示省略)などを介して
一対の加圧ロール201,201に供給しかつ通過させ
ることにより、膨張黒鉛粒子1を加圧して互いに一体化
させたものである。
表裏の表層部の全域に、例えば粒径が50〜100μm
のクルミ粉などのブラスト用粒子によるマイクロブラス
ト加工を施して、その表層部の全域を、該膨張黒鉛基材
11の厚さの10%未満、好ましくは1〜6%で、か
つ、その露出する表面11a,11bのX線回折による
回折ピーク値(2θ角度)が26.53°〜26.45
°の範囲にあるように除去処理し、これによって、表層
部を内層部とほぼ同様な組成、つまり、ほぼ同じ大きさ
で、図14に示すような厚みの大きい圧縮体204がラ
ンダムに配置された構成としている。
シール素材においては、その膨張黒鉛基材11の表層部
および内層部がともに厚みの大きい圧縮体204がラン
ダム配向されたほぼ均質な組成となっていることから、
可撓性が改善され繰り返し曲げを受けても破断すること
がないとともに、曲げを伴う加工時において表層部にひ
び割れや部分剥離などを発生することがなく、小さな曲
率半径の加工品であっても、強度およびシール性に優れ
た加工品に製作することが可能である。
黒鉛製シール素材と表層部が全く除去されていない従来
品とについて、本発明者が実施した各種の試験およびそ
の結果を以下に説明する。
試体は、厚さ0.38mm、密度1.0g/cm3 のシ
ート状膨張黒鉛基材11の表裏の表層部全域にブラスト
加工を施して該膨張黒鉛基材11の表層部を厚みにおい
て5%除去(このときのX線回折による回折ピーク値
は、26.48°である)してなるシート状膨張黒鉛製
シール素材を幅20mm、長さ100mmのテープ状に
切断したもの、また従来品に相当する供試体は、厚さ、
密度が上記と同一のシート状膨張黒鉛基材の表裏の表層
部を全く除去していないシート状膨張黒鉛製シール素材
を上記と同一の幅および長さのテープ状に切断したもの
で、このような各テープ状供試体を、図2に示すよう
に、一対の固定治具21,21により挟持固定した上、
左右交互に90°づつ繰り返し折り曲げて破断するまで
の回数を3回(X1,X2,X3)測定した。その結果
は表1に示す通りであった。
供試体は、厚さ0.2mm、密度1.0g/cm3 のシ
ート状膨張黒鉛基材11の表裏の表層部全域にブラスト
加工を施して該膨張黒鉛基材11の表層部を厚みにおい
て2%除去(このときのX線回折による回折ピーク値
は、26.48°である)してなるシート状膨張黒鉛製
シール素材を適当幅のテープ状に切断したもの、また従
来品に相当する供試体は、厚さ、密度が上記と同一のシ
ート状膨張黒鉛基材の表裏の表層部を全く除去していな
いシート状膨張黒鉛製シール素材を上記と同一幅のテー
プ状に切断したもので、このような各テープ状供試体
を、図3に示すように、各種半径の丸棒22に対して、
180°巻き付けた時点で、その外表面にひび割れや部
分剥離を発生しない半径、つまり、巻き付け可能半径
(mm)を3回(X1,X2,X3)測定した。その結
果は表2に示す通りであった。
る供試体は、上記可撓性試験に使用したシート状膨張黒
鉛製シール素材を幅15mmのテープ状に切断し、この
テープ状シール素材をうず巻き状に巻き重ねた後、金型
を用いて、内径24mm、外径37mm、高さ6.5m
mのリング状にダイモールド成形したパッキン(図9参
照)、また従来品に相当する供試体は、上記可撓性試験
に使用したシート状膨張黒鉛製シール素材を幅15mm
のテープ状に切断し、このテープ状シール素材を本発明
品に相当する供試体と同様な仕様のリングに成形したパ
ッキンで、このような各リング状成形パッキンを53k
gf/cm2 のヘリウムガス圧力条件下に置いた場合の
締付圧と漏洩量との関係を測定した。その結果は図4に
示す通りであった。
膨張黒鉛基材11の厚さの10%未満、好ましくは1〜
6%で、かつ、その露出する表面11a,11bのX線
回折による回折ピーク値が26.53°〜26.45°
の範囲にあるように表層部を除去処理してなる製品は、
従来品に比べて可撓性に優れ、90°折り曲げ可能回数
を300倍以上に改善できるとともに、曲げ可能な曲率
半径の下限を(1/3)以下とすることができ、さら
に、低い締付圧でのシール性に優れていることが分か
る。
の適用例を列記する。 適用例1:これは、図5に示すように、炭素繊維などの
紡績糸12の外周部に、上記のごとく表裏の表層部が所
定の減量率で除去処理されたシート状膨張黒鉛製シール
素材を細幅に切断してなるテープ状の膨張黒鉛基材11
Aを螺旋状に巻き付けて紐状シール材13を形成したも
のである。
記のごとく表裏の表層部が所定の減量率で除去処理され
たシート状膨張黒鉛製シール素材を細幅に切断してなる
テープ状の膨張黒鉛基材11Aまたはその複数枚を積層
するとともに、その積層体の外周にSUS304で直径
が0.1mmなどの細径の金属線材14による編み補強
体15を被せて外補強形編み糸状シール材16を形成し
たものである。
記のごとく表裏の表層部が所定の減量率で除去処理され
たシート状膨張黒鉛製シール素材を適当幅に切断してな
る膨張黒鉛基材11Bをその幅方向で折り畳むととも
に、その折り畳み体の外周にSUS304で直径が0.
1mmなどの細径の金属線材14による編み補強体15
を被せて外補強形編み糸状シール材17を形成したもの
である。
記のごとく表裏の表層部が所定の減量率で除去処理され
たシート状膨張黒鉛製シール素材を適当幅に切断してな
る膨張黒鉛基材11Bをその幅方向でほぼZ字状に折り
畳み、かつ、その表面に長手方向に沿ったコルゲート加
工を施すとともに、その折り畳み体の内部にコットンな
どの補強線18を挿通させて内補強形編み糸状シール材
19を形成したものである。
記のごとく表裏の表層部が所定の減量率で除去処理され
たシート状膨張黒鉛製シール素材を適当幅に切断してな
る膨張黒鉛基材11をブラスト加工により除去処理され
た後の表層部11aが内外周面となるようにリング状に
ダイモールド成形してリング状成形パッキン20を形成
したものであり、このまま軸受などに使用可能である。
として行われている膨張黒鉛シートの少なくとも片面に
接着剤を介してフィルム、金属箔および糸状体を接着し
たもの、2枚の膨張黒鉛シートの間にフィルム、金属箔
および糸状体を接着し複合化したものにも適用可能であ
る。
よれば、膨張黒鉛基材の表層部を、その露出する表面の
X線回折による回折ピーク値が26.53°〜26.4
5°の範囲にあるようにしたことにより、可撓性を著し
く改善して折り曲げ可能回数を顕著に増大することがで
きるとともに、表層部に高配向されている厚さの小さい
薄葉状圧縮体の全てもしくは大部分が除かれているの
で、巻き付けや折り畳みなどの曲げを伴う加工時に表層
部にひび割れや部分剥離などを発生することを防いで、
曲率半径の小さい加工品であっても、シール性の低下を
招くことなく、シール性に優れた加工品を容易に製作す
ることができる。つまり、該シール素材による加工品の
適用範囲の拡大を図ることができるとともに、加工手段
の制約も少なく、高速加工手段の採用により加工品の生
産性の向上も図ることができるといった効果を奏する。
料ロスを可及的に少なくしながら、可撓性に優れたシー
ル素材を得ることができる。
の形態をシート状とすることにより、任意の大きさ、形
状に切断して各種のシール材の加工に容易に利用するこ
とができる。
態をプレス成形品とすることにより、リング状パッキン
や軸受などの作製が簡易となる。
形態を糸状体とすることにより、耐摺動性などに優れた
パッキン材料を容易に得ることができる上、実装時の寸
法調整なども容易に行なえる。
張黒鉛基材の表層部の除去手段として、マイクロブラス
ト加工、レーザー加工およびスパッタリング加工の少な
くとも一種を使用するので、上記した表層部の除去処理
を能率良く行えるとともに、その除去量の微調整も可能
で、品質の向上を図ることができる。
ば、膨張黒鉛基材における表層部をマイクロブラスト加
工により除去処理するときのブラスト用粒子として、粒
子径が50〜100μmで、柔らかいクルミ粉を使用す
ることにより、ブラスト加工時に粒子の一部が除去後の
表面に残留したとしても、使用態様において、その残留
粒子によって相手側ステムなどを傷つけるおそれがな
い。したがって、プラスト加工後に残留粒子を取り除く
面倒な作業が不要で、表層部の除去処理を能率よく行う
ことができる。
一部を階段状に切除して示す斜視図である。
を示す斜視図である。
視図である。
視図である。
視図である。
部破断面斜視図である。
拡大斜視図である。
を概略的に示す要部の斜視図である。
圧縮体を示す拡大斜視図である。
を示す拡大斜視図である。
を階段状に切除して示す斜視図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 膨張させた黒鉛粒子を加圧して互いに一
体化してなる膨張黒鉛基材の表層部を、その露出する表
面のX線回折による回折ピーク値が26.53°〜2
6.45°の範囲にあるようにしたことを特徴とする膨
張黒鉛製シール素材。 - 【請求項2】 上記膨張黒鉛基材の厚さの10%未満
で、好ましくは1〜6%表層部を除去することで上記回
折ピーク値に設定されている請求項1に記載の膨張黒鉛
製シール素材。 - 【請求項3】 その形態がシート状である請求項1また
は2に記載の膨張黒鉛製シール素材。 - 【請求項4】 その形態がプレス成形品である請求項1
または2に記載の膨張黒鉛製シール素材。 - 【請求項5】 その形態が糸状体である請求項1または
2に記載の膨張黒鉛製シール素材。 - 【請求項6】 膨張させた黒鉛粒子を加圧して互いに一
体化して膨張黒鉛基材を形成した後、この基材における
表層部の全域を、マイクロブラスト加工、レーザー加工
およびスパッタリング加工のうちの少なくとも一種の加
工手段により、その露出する表面のX線回折による回折
ピーク値が26.53°〜26.45°の範囲にあるよ
うに除去処理することを特徴とする膨張黒鉛製シール素
材の製造方法。 - 【請求項7】 上記膨張黒鉛基材における表層部の除去
処理手段が、粒子径50〜100μmのクルミ粉をブラ
スト用粒子として使用するブラスト加工である請求項6
に記載の膨張黒鉛製シール素材の製造方法。
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- 1996-07-05 JP JP08176581A patent/JP3101805B2/ja not_active Expired - Fee Related
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