JP3732975B2 - 渦巻形ガスケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温高圧の機器や配管の継手部に使用され、水、油、蒸気、ガス等の流体をシールする目的で、テープ状の金属製波形薄板(以下、フープ材と略記する)と膨張黒鉛等のテープ状の充填材(以下、フィラー材と略記する)を互いに重ね合わせた状態で複数回渦巻形に巻回してなる渦巻形ガスケットに係わり、特に、高温高圧で使用される本体内径600mm以上の大口径の渦巻形ガスケット(以下、大口径渦巻形ガスケットと略記する)に対して有用な構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
渦巻形ガスケットは、事前に断面が略V字形に成形されているテープ状の金属製薄板のフープ材とフィラー材を挟み、互いに重ね合わせて渦巻形に巻回してなる構成を有し、この構造を基本形と称している。そして、それ以外に締付圧力によるガスケット本体の内側への変形の防止やセンタリングを目的として、金属製補強リングをガスケット本体の内側や外側あるいは両方に設けた内輪付、外輪付、内外輪付などと称される種々のタイプが知られており、一般に高温高圧用ガスケットとして広く使用されている。
【0003】
フィラー材の種類としては、従来は石綿ペーパーを帯状にスリットした石綿テープが一般的であったが、石綿繊維は天然鉱物であり資源の枯渇が心配されることや石綿繊維が原因と推測されている健康障害が社会問題となって世界的に石綿の使用が制限される傾向となってきたため、現在は石綿以外の無機繊維を主材料としたノンアスベストペーパーをスリットしたものが使われるようになってきている。また、無酸化雰囲気での耐熱性が高く、シール性も優れていることから、フィラー材として柔軟性と弾力性を兼ね備えた膨張黒鉛テープも広く使用されている。
【0004】
このような渦巻形ガスケットは、各種産業用の配管フランジ、圧力容器、熱交換器などで広く使われており、サイズは10Aフランジで用いられる本体内径20mmくらいのものから、大型の圧力容器等で使われる本体内径4000mmくらいのものまで製造されているが、最近省エネルギーによる効率化のため電力および石油化学等で使用される熱交換器や反応器等が高圧化、大型化していることから、本体内径が600mm以上の大口径渦巻形ガスケットの需要が増加してきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような大口径渦巻形ガスケットは小口径の製品に比べて圧縮された時に変形しやすいことから圧縮強度が小さくなる傾向があり、歪みの大きな大口径のフランジに用いた時に、フランジの歪みにガスケットが追従できずに漏れが発生する場合がある。
【0006】
また、大口径渦巻形ガスケットは、図3〜図4に示すように、内輪2を巻型7に挟み込み、フープ材5とフィラー材6を押し駒8で押し付けながら成巻しているため、図5〜図6に示すように、内輪2を巻型7に固定している小口径の渦巻形ガスケットと比べると、フィラー材6が十分加圧されておらず、これも圧縮強度を低下させる要因になっている。そして、押し駒の加圧力を無理に上げると、成巻中にフープ材5が外れてばらけてしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたもので、ガスケット本体の内径が600mm以上の大口径でも高い圧縮強度を保持することで、シール性が良好となる渦巻形ガスケットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、断面を略V字形としたテープ状の金属製薄板のフープ材と膨張黒鉛製のフィラー材を密着させて渦巻形に巻回して構成し、内径が600mm以上の渦巻形ガスケットにおいて、フープ材とフィラー材を押し付けながら成巻することでフィラー材の密度を1.4〜2.0g/cm3としたことを要旨とする。
【0009】
請求項2の発明は、断面を略V字形としたテープ状の金属製薄板のフープ材と膨張黒鉛製のフィラー材を密着させて渦巻形に巻回して構成し、内径が600mm以上の渦巻形ガスケットにおいて、フープ材の厚さを0.25〜0.45mmとし、フープ材とフィラー材を押し付けながら成巻することでフィラー材の密度を1.4〜2.0g/cm3としたことを要旨とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の好ましい形態としては、図1〜図2に示すように、内径1200mm、外径1300mmの内輪2と、内径1350mm、外径1400mmの外輪4が付属する、テープ状の金属製薄板のフープ材5と膨張黒鉛テープで形成されているフィラー材6とを重ね合わせて渦巻形に巻回して構成するガスケット本体3の内径1300mm、外径1350mmの渦巻形ガスケット1において、フープ材5の厚さtが0.30mmとなり、フィラー材6を構成している膨張黒鉛テープの密度が1.7g/cm3となっている。
【0012】
ここで、フープ材5の厚さtを0.30mmとしたのは、通常の渦巻形ガスケットで用いられる0.20mmの厚さのフープ材5に比べて、ガスケットを圧縮した時に得られるフープ材5そのものの反発強度が大きくなることに加えて、成巻前に断面を略V字形に成形したフープ材5の形状保持性が優れるために、成巻時にフープ材5を前記押し駒8で強く押しながら巻回することも可能になることによって、圧縮強度を向上させることに役立っている。
【0013】
そして、フープ材5の厚さtが0.25mmよりも小さいと、ガスケット成巻時にフープ材5が外れてばらけやすくなるとともに圧縮強度が弱くなり、フープ材5の厚さtが0.45mmより大きいと、断面を略V字形に変形させる時の成形が困難になるとともに反発弾性が高くなり過ぎるためガスケット成巻時にフープ材5が外れてばらけやすくなるとともに、フープ材5とフィラー材6の密着性が悪くなり、圧縮強度は大きくてもシール性が低下してしまう。
【0014】
本発明者等は、上記のような実験によって得られた知見に基づき、フープ材5の厚さtを0.25mmから0.45mm、好ましくは0.30mmから0.35mmと規定したものである。
【0015】
またフィラー材6の膨張黒鉛の密度についても、大口径渦巻形ガスケットの場合は、1.4〜2.0g/cm3と通常のサイズの製品に比べて高くした。これは、密度が1.4g/cm3より小さいとガスケットを圧縮した時にフィラー材6が容易に変形するために圧縮強度が上がらず、シール性が低下する。また密度が2.0g/cm3より大きいとフィラー材6が硬くなりすぎ、逆に成巻時にフィラー材6がフープ材5の断面の略V字形にうまく成形できずにさけたり、フープ材5が外れてばらけやすくなったり、フープ材5とフィラー材6との密着性が悪くなり、シール性が低下することによる。
【0016】
なお、上記のような厚さの厚いフープ材5を用い、膨張黒鉛の密度が上がるように強い押し圧で成巻するためには、フープ材5の断面を略V字形に成形する時に、V字形の頂点がフープ材5の中央からずれないように精密なフォーミング装置を用いていることや、前記押し駒8の中心がガスケットの中心とずれないような工夫がされている成巻機を用いていることは言うまでもない。
【0017】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
実施例1は、図1〜図2に示した内径1300mm、外径1350mm、厚さ6.4mmの渦巻形ガスケットであり、内径1200mm、外径1300mm、厚さ4.0mmのSUS304製の内輪2と内径1350mm、外径1400mm、厚さ4.0mmのSUS304製の外輪4が付いた内外輪付タイプである。
【0019】
このガスケットの製造方法は、まず厚さ0.30mm、幅8.0mmのSUS316製テープ状薄板のフープ材5を略V字形に絞り加工した後、SUS316製の内輪2の外周部にスポット溶接し、図3に示すように、押し駒8で押しながらフープ材5だけ3周巻いた後、フィラー材6として厚さ0.25mm、幅9.5mm、密度1.0g/cm3の膨張黒鉛テープを挟み、互いに重ね合わせて25〜35周巻いて、最後にフープ材5のみ4周空巻し、巻始め同様にスポット溶接し、SUS316製の外輪4を装着して完成させる。このとき、押し駒8で押すことによりフィラー材6である膨張黒鉛テープの密度を1.7g/cm3に上げている。ただし、図1〜図2では、金属製薄板のフープ材5と膨張黒鉛テープで形成されているフィラー材6を重ね合わせて巻回してある部分の巻数は一部省略してある。
【0020】
実施例2
実施例2は、実施例1における押し駒8の押す力を調節することにより、フィラー材6である膨張黒鉛テープの密度を1.4g/cm3としたものである。
【0021】
実施例3
実施例3は、実施例1における押し駒8の押す力を調節することにより、フィラー材6である膨張黒鉛テープの密度を2.0g/cm3としたものである。
【0022】
実施例4
実施例4は、実施例1におけるフープ材5の厚さを0.20mmに変更したものである。
【0023】
比較例1
比較例1は、実施例1におけるフープ材5の厚さを0.20mmに変更し、また押し駒8の押す力を調節することによりフィラー材6である膨張黒鉛テープの密度を1.2g/cm3としたものである。
【0024】
実施例1〜4、比較例1の渦巻形ガスケットのシール試験の結果を下記表1に示す。ただし、試験は、図7に示すように、外径1600mmのフランジ9,10間に試料とした渦巻形ガスケット1を挟み、ガスケットを厚さ4.5mmまで圧縮した時の圧縮強度を測定し、その後窒素ガス20kgf/cm2Gを負荷してシール性を評価した。シール性は図7に示すようにフランジ外周部にゴムOリング11を設置し、試料からのガス漏れを捕集し、水槽12に導いて水上置換で漏洩量を測定して判定した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1〜4を比較例1と比較すると、実施例はいずれも圧縮強度が高く、シール性が著しく向上しており、特にフープ材厚さ0.30mm、膨張黒鉛テープの密度が1.7g/cm3以上の実施例1と実施例3は全く漏れが生じなかった。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、渦巻形ガスケットを構成するフィラー材の密度を1.4〜2.5g/cm3、フープ材の厚さを0.25mm〜0.45mmにすることで、大口径の渦巻形ガスケットのシール性向上に顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す渦巻形ガスケットの平面図である。
【図2】前記ガスケットのA−A線の拡大断面図である。
【図3】大口径の渦巻形ガスケットの製造方法を示す渦巻形ガスケットと巻型および押し駒の概略図である。
【図4】巻型および押し駒の平面図である。
【図5】従来の小口径の渦巻形ガスケットの製造方法を示す渦巻形ガスケットと巻型および押し駒の概略図である。
【図6】巻型および押し駒の一部切断平面図である。
【図7】渦巻形ガスケットのシール試験の試験装置の構成図である。
【符号の説明】
1 渦巻形ガスケット
2 内輪
3 ガスケット本体
4 外輪
5 金属製薄板のフープ材
6 フィラー材
7 巻型
8 押し駒
9 上部フランジ
10 下部フランジ
11 ゴムOリング
12 水槽
Claims (2)
- 断面を略V字形としたテープ状の金属製薄板のフープ材と膨張黒鉛製のフィラー材を密着させて渦巻形に巻回して構成し、内径が600mm以上の渦巻形ガスケットにおいて、フープ材とフィラー材を押し付けながら成巻することでフィラー材の密度を1.4〜2.0g/cm3としたことを特徴とする渦巻形ガスケット。
- 断面を略V字形としたテープ状の金属製薄板のフープ材と膨張黒鉛製のフィラー材を密着させて渦巻形に巻回して構成し、内径が600mm以上の渦巻形ガスケットにおいて、フープ材の厚さを0.25〜0.45mmとし、フープ材とフィラー材を押し付けながら成巻することでフィラー材の密度を1.4〜2.0g/cm3としたことを特徴とする渦巻形ガスケット。
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