JP3098709U - ファスナー取り付け部 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウエットスーツのファスナー取り付け部を、より耐久性があり、経年劣化で剥離しない構成にする。
【解決手段】ジャージ生地(4)のファスナー取り付け部(1)に熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写した縁部を形成して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着して、ファスナー(5)を取り付けた。
【選択図】 図1
【解決手段】ジャージ生地(4)のファスナー取り付け部(1)に熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写した縁部を形成して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着して、ファスナー(5)を取り付けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、スポーツウェアや特殊スポーツウェアなどに使用されるジャージを用いた製品に取り付けるファスナーの取り付け部に関するものである。
【0002】
特に本考案はウエットスーツに取り付けるファスナーの、その取り付け部に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
スポーツウェアなどに使用されるジャージ、例えば、マリンスポーツに使用されるダイビング用ウエットスーツには、ウエットスーツ生地と指称されるネオプレンスポンジゴムの表裏にジャージを貼り付けたものが使用されている。
ジャージを貼り付けた実用上の意味は、ネオプレンスポンジゴムの保護を目的とし、又着用に際してスポンジ素材そのままでは皮膚との間の摩擦係数が大きすぎて着用しにくいということがあげられる。
【0004】
ジャージを貼り付けることによってネオプレンスポンジゴムそのものと比較して確かにある一定の強度や耐摩耗性は確保できる。
ところがウエットスーツを着用して行うダイビング等は、非常に激しい動きが伴うスポーツであるということと、膝や肘などの局所的にかかる大きな負荷に対応しなければならないことを考慮すると、部位によっては耐久性を高める必要性があった。そのような課題から本件考案者は、熱可塑性素材を大きな負荷のかかる部位のジャージ上に熱可塑性ウレタンシートを更に重ねて溶着した強化ジャージ(特許第2626938号)を開発している。
【0005】
さて、ウエットスーツの着脱に際して、ファスナーを利用する場合、従来のジャージを貼り付けたネオプレンスポンジゴムのジャージ表面に直接ファスナーテープが取り付けられる。
ファスナー取り付け部には、強力な引っ張り力が作用するものであり、その接合強度を十分にかつ過不足なく設定するために様々な手法が案出されている。
【0006】
ジャージは、伸縮性や滑面性など特有の性質があり、ウエットスーツとしてのかなりはげしい使用に対しても有効な素材であり、そして、前記したように強化ジャージは局所的な弱い部分をサポートし、本来ネオプレンスポンジゴムのもつ軽快さをそこなうことなくその弱点を補うものとしてきわめて有用である。
【0007】
一方、ファスナーやファスナー取り付け部についても、耐久性や、スライド性、防水性が求められている。
従来は、ジャージ面にファスナーを取り付けるには、縫製するか接着剤にて貼り合わせるか又は高周波接着するものが主に採用されている。
【0008】
ところが、ウエットスーツにおけるファスナー取り付け部に対する考察は少し不十分で、前記従来の取り付け手法では接着剤の劣化により剥離が生じたり、万一ファスナーやファスナー取り付け部が破損した場合は、より完全に修理するためにむしろファスナー部全体を交換することで対応していた。
【0009】
本考案は、できる限り破損しないファスナー取り付け部を開発するものである。そしてできる限り修理が可能な形態のファスナー取り付け部を提案する。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
ファスナー取り付け部は、デザインやファッション性が重要視されるウエットスーツにおいては、かなり重要な加工部分である。
特にウエットスーツのファスナー部は着用者にとってとても目に付くところであり、ファスナーの高級感による満足を得られるところでもある。
前記従来の縫製では防水性を高くしてファスナーを加工するには縫製面に防水シールを貼って水漏れを防ぐ加工等を施さねばならず、また見栄えにも配慮しなければならず、縫製後の後処理も大切である。
又ゴムノリなどの接着剤や高周波溶着による取り付けは、接着剤の余剰分の除去や海水中で使用されるものであるので経年劣化による耐久性が課題である。
【0011】
因みに、接着剤によっては健康に影響を及ぼすものもありえることが報告されており、ウエットスーツ作成時の作業環境や、着用時においても素肌と直に触れるウエットスーツにおいて、より配慮研究することが要望されている。
【0012】
本考案は上記のような例に鑑み、特にウエットスーツにおけるファスナー取り付け部の新規な構成を課題とするものである。
本件出願人及び考案者は、これまでファスナー取り付け部に熱可塑性材を用いたものを知見していないが、強化ジャージの開発に伴ってファスナー取り付け部に熱可塑性材を適用することに着眼して開発したものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本考案は、前記のようにファスナー取り付け部の改良に係り、ジャージ生地を貼り付けたネオプレンスポンジゴムのファスナー取り付け個所に、熱可塑性ウレタンシートを熱転写して強化ジャージ部分となる縁部を形成して、その熱転写した熱可塑性ウレタンシートにファスナーテープを置き、さらにその上に熱可塑性ウレタンシート置いて挟み込み一体的に溶着したことを特徴とするファスナー取り付け部である。
【0014】
表皮にジャージ生地を貼り付けたネオプレンスポンジゴムのファスナー取り付け個所に、上下に熱可塑性ウレタンシートで挟んだファスナーテープが加熱圧着された構成になる。
【0015】
ファスナーテープの外表部及びファスナーの務歯の両側には防水ゴムを取り付けて、防水性を高めた構成も提案する。
又、ファスナー部分を被覆するようにネオプレンスポンジゴムからなる防水当て布を、ファスナー取り付け部の左右の縁及び下端に溶着して、防水性をたかめた構成も提案する。
本考案のファスナー取り付け部は、特にウエットスーツに適用するとその効果も優れたものとなる。
【0016】
【考案の実施の形態】
本考案に係るファスナー取り付け部(1)は、上記のような発想に基づくが、以下そのファスナー取り付け部(1)の実施の一形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、ウエットスーツ(10)のファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
図2は、異なる実施形態であり、防水ゴム(54)を備えた務歯(52)を設けたファスナー取り付け部(1)部分を示すもので,スライダー(53)が見えて開いた状態を上方から視た平面図である。
図3は、図1の実施形態を用いて、さらに、防水ゴム(54)を備えたファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
図4は、図1の実施形態のファスナー取り付け部(1)に、防水あて布(6)を備えたファスナー部分を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。図5は、図5は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)に防水あて布(6)を備えたものの正面図である。一部に部分拡大図を示している。
図において、(2)は熱可塑性ウレタンシート、(3)はネオプレンスポンジゴム、(4)はジャージ生地、(5)はファスナー、(51)はファスナーテープである。
【0018】
実施態様は、ジャージ生地(4)のファスナーテープの取り付け部として熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写した縁部を形成して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着する構成である。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(分子構造中にウレタン基[ーNHCOOー]を有するゴム状弾性体)をカレンダー成形或はインフレーション成形して熱可塑性ウレタンシート(2)を作成している。
熱可塑性ウレタン素材を薄肉フィルムの帯状シートに作成し、ジャージ生地(4)張りに50℃〜200℃の温度で加熱しながら加圧接着して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートで50℃〜200℃の温度で加熱溶着してファスナーテープ(51)の取り付けをするものである。
【0020】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは分子構造が線状構造で、柔軟で加工性がよく、平坦な面の形成や、凹凸状等の形状が任意に出来る。
ファスナー取り付け部(1)に熱可塑性材を適用することにより、修繕加工や二次立体加工(接着後の凹凸面成型やロゴの立体成型)などもできるようになった。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン系のシートは、ひっかき耐摩耗性、耐候性、ゴム弾性、柔軟性に優れた特性があり、また再生加工がしやすい特性があるので、修理や修繕も容易である。
【0022】
実際の制作例としては、ウエットスーツ生地であるジャージ生地(4)張り、熱可塑性ウレタンシート(2)を載せて、次いで平滑なテフロン(登録商標)シートを載せて、170℃で熱プレスする。
ジャージ(4)との接触面では熱可塑性ウレタンシート(2)は程良く溶融し、ジャージ繊維に浸透して入り込み一体的に結合する。
熱可塑性ウレタンシート(2)とジャージ(4)とは相互に液体が染み込むように浸透しあい結合している。
熱可塑性ウレタンシート(2)の周囲縁は特に強く加圧して肉厚を薄くし境界がない程度になだらかに成形している。
熱可塑性ウレタンシート(2)は、厚さは適宜でよいが、0,2mm以上が好ましい。
【0023】
熱可塑性ウレタンシート(2)は、帯状や波帯状など、様々な形状に切断が容易であるので、美しいラインのある帯や、場合によっては文字やロゴの形状にしたり、立体的なロゴ表示などにもできる。
さらに加えて、熱可塑性ウレタンシート(2)は透明素材でも作成できるので、透明カバーとして構成すると下地の模様が透けてみえるとか、その模様や文字が変色劣化しないという用い方もある。
【0024】
このようにまず表皮にジャージ生地(4)を貼り付けたネオプレンスポンジ(3)のファスナー取り付け個所に、熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写して強化ジャージ部分として形成する。
次に、その熱転写した熱可塑性ウレタンシート(2)にファスナーテープ(51)の所定縁部を熱可塑性ウレタンシート(2)によって挟み込み更に平滑なテフロン(登録商標)シートを載せて、170℃で熱プレスする。
ファスナーテープ(51)は、上下から熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着されている。よってファスナー(5)はしっかりと取り付けられる。
【0025】
取り付け方法は、上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んだファスナーテープ(51)を加熱圧着してファスナーテープ(51)を全部一緒に溶着する方法や、素材を順次溶着して行く方法があるが、いずれでも差し支えない。
【0026】
ウエットスーツ(10)などの防水性が要求されるウエアでは、前記ファスナーテープ(51)の外表部及び務歯(52)には防水ゴム(54)が取り付けられものを用いるのが好ましい。
外表部及び務歯(52)に備えられる防水ゴム(54)は、左右のファスナーが噛み合うと防水ゴム(54)の端面同士がしっかりと当接して、水密に閉じることができる。
しかもそのファスナーテープ(51)は上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んで溶着しているので、防水性が極めて高いファスナー部分となっており防水性のあるウエットスーツ(10)が提供できる。
【0027】
図4及び図5の防水当て布(6)は、ファスナー取り付け部(1)の左右の縁及び下端を夫々被覆溶着した熱可塑性ウレタンシート(2)に溶着して連結するように連結したもので、ファスナー部位を防水して体側に収納されるものである。防水当て布(6)は、左右に開くファスナーを連結するものであるので、ファスナーを全開しても襟首がたれ落ちることがない利点もある。
【0028】
ファスナー取り付け部(1)は、ファスナーの開閉に支障のない構成であることが必要であり、又、運動を妨げない柔軟性が要求されているが、前記のような構成の本考案のファスナー取り付け部(1)では、硬化する様な接着剤や縫製糸を用いることなく、強度を増加させるともに、柔軟性も維持できかつ防水性にも優れたものとなっている。
【0029】
【考案の効果】
本考案のファスナー取り付け部は、次のような技術的効果がある。
(1)ファスナーの取り付けは、加熱圧着だけの作業であるので製造コストを削減することが出来る。
(2)本考案のファスナー取り付け部は、ウエットスーツの内側に取り付けるものであるが、脱いだときにもファッション性を損なわず、非常にすっきりとしたデザインにすることができる。見えない部分ではあるが、高品質感を持たせることができる。
(3)平坦で柔軟な形態でファスナー取り付け部の強度を増すことができた。引っ掻きによる摩擦破損や劣化による剥離がほぼなくなった。
(4)効率よく加熱圧着の取り付け作業を行うことが出来、製作者の負担を軽減できる。
(5)万一損傷しても、熱可塑性ポリウレタン系のシートであるので、加熱修復や第二のシート溶着など完全修理が容易にできる。さらに二次立体加工(接着後の凹凸面成型で、背中への当接面を着用者の体系に合わせて適切に設計できる)などもできる。
(6)ファスナーテープの外表部及び務歯の両側には防水ゴムを取り付けたファスナーや、ファスナー部分を被覆する防水当て布をファスナー取り付け部の左右の縁及び下端に溶着したものは、防水性を十分に高めることが出来る。
【0030】
以上のように、本考案に係るファスナー取り付け部は、ファスナー取り付け個所に熱可塑性素材を用いるという発想に基づき、ファスナーテープをしっかりと水密に接着してファスナーを取り付けるもので、ウエットスーツのファスナー部としてきわめて実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)の一実施形態を示すもので,ウエットスーツ(10)に取り付けて開いた状態を上方から視た平面図である。
【図2】図2は、異なる実施形態であり、防水ゴム(54)を備えた務歯(52)を設けたファスナー取り付け部(1)部分を示すもので,スライダー(53)が見えて開いた状態を上方から視た平面図である。
【図3】図3は、図2と同じ実施形態であり、防水ゴム(54)を備えたファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
【図4】図4は、図1の実施形態のファスナー取り付け部(1)に、防水あて布(6)を備えたもののファスナー部分を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
【図5】図5は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)に防水あて布(6)を備えたものの正面図である。一部に部分拡大図を示している。
【符号の説明】
1 ファスナー取り付け部
10 ウエットスーツ
2 熱可塑性ウレタンシート
3 ネオプレンスポンジゴム
4 ジャージ生地
5 ファスナー
51 ファスナーテープ
52 務歯
53 スライダー
54 防水ゴム
6 防水当て布
【考案の属する技術分野】
本考案は、スポーツウェアや特殊スポーツウェアなどに使用されるジャージを用いた製品に取り付けるファスナーの取り付け部に関するものである。
【0002】
特に本考案はウエットスーツに取り付けるファスナーの、その取り付け部に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
スポーツウェアなどに使用されるジャージ、例えば、マリンスポーツに使用されるダイビング用ウエットスーツには、ウエットスーツ生地と指称されるネオプレンスポンジゴムの表裏にジャージを貼り付けたものが使用されている。
ジャージを貼り付けた実用上の意味は、ネオプレンスポンジゴムの保護を目的とし、又着用に際してスポンジ素材そのままでは皮膚との間の摩擦係数が大きすぎて着用しにくいということがあげられる。
【0004】
ジャージを貼り付けることによってネオプレンスポンジゴムそのものと比較して確かにある一定の強度や耐摩耗性は確保できる。
ところがウエットスーツを着用して行うダイビング等は、非常に激しい動きが伴うスポーツであるということと、膝や肘などの局所的にかかる大きな負荷に対応しなければならないことを考慮すると、部位によっては耐久性を高める必要性があった。そのような課題から本件考案者は、熱可塑性素材を大きな負荷のかかる部位のジャージ上に熱可塑性ウレタンシートを更に重ねて溶着した強化ジャージ(特許第2626938号)を開発している。
【0005】
さて、ウエットスーツの着脱に際して、ファスナーを利用する場合、従来のジャージを貼り付けたネオプレンスポンジゴムのジャージ表面に直接ファスナーテープが取り付けられる。
ファスナー取り付け部には、強力な引っ張り力が作用するものであり、その接合強度を十分にかつ過不足なく設定するために様々な手法が案出されている。
【0006】
ジャージは、伸縮性や滑面性など特有の性質があり、ウエットスーツとしてのかなりはげしい使用に対しても有効な素材であり、そして、前記したように強化ジャージは局所的な弱い部分をサポートし、本来ネオプレンスポンジゴムのもつ軽快さをそこなうことなくその弱点を補うものとしてきわめて有用である。
【0007】
一方、ファスナーやファスナー取り付け部についても、耐久性や、スライド性、防水性が求められている。
従来は、ジャージ面にファスナーを取り付けるには、縫製するか接着剤にて貼り合わせるか又は高周波接着するものが主に採用されている。
【0008】
ところが、ウエットスーツにおけるファスナー取り付け部に対する考察は少し不十分で、前記従来の取り付け手法では接着剤の劣化により剥離が生じたり、万一ファスナーやファスナー取り付け部が破損した場合は、より完全に修理するためにむしろファスナー部全体を交換することで対応していた。
【0009】
本考案は、できる限り破損しないファスナー取り付け部を開発するものである。そしてできる限り修理が可能な形態のファスナー取り付け部を提案する。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
ファスナー取り付け部は、デザインやファッション性が重要視されるウエットスーツにおいては、かなり重要な加工部分である。
特にウエットスーツのファスナー部は着用者にとってとても目に付くところであり、ファスナーの高級感による満足を得られるところでもある。
前記従来の縫製では防水性を高くしてファスナーを加工するには縫製面に防水シールを貼って水漏れを防ぐ加工等を施さねばならず、また見栄えにも配慮しなければならず、縫製後の後処理も大切である。
又ゴムノリなどの接着剤や高周波溶着による取り付けは、接着剤の余剰分の除去や海水中で使用されるものであるので経年劣化による耐久性が課題である。
【0011】
因みに、接着剤によっては健康に影響を及ぼすものもありえることが報告されており、ウエットスーツ作成時の作業環境や、着用時においても素肌と直に触れるウエットスーツにおいて、より配慮研究することが要望されている。
【0012】
本考案は上記のような例に鑑み、特にウエットスーツにおけるファスナー取り付け部の新規な構成を課題とするものである。
本件出願人及び考案者は、これまでファスナー取り付け部に熱可塑性材を用いたものを知見していないが、強化ジャージの開発に伴ってファスナー取り付け部に熱可塑性材を適用することに着眼して開発したものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本考案は、前記のようにファスナー取り付け部の改良に係り、ジャージ生地を貼り付けたネオプレンスポンジゴムのファスナー取り付け個所に、熱可塑性ウレタンシートを熱転写して強化ジャージ部分となる縁部を形成して、その熱転写した熱可塑性ウレタンシートにファスナーテープを置き、さらにその上に熱可塑性ウレタンシート置いて挟み込み一体的に溶着したことを特徴とするファスナー取り付け部である。
【0014】
表皮にジャージ生地を貼り付けたネオプレンスポンジゴムのファスナー取り付け個所に、上下に熱可塑性ウレタンシートで挟んだファスナーテープが加熱圧着された構成になる。
【0015】
ファスナーテープの外表部及びファスナーの務歯の両側には防水ゴムを取り付けて、防水性を高めた構成も提案する。
又、ファスナー部分を被覆するようにネオプレンスポンジゴムからなる防水当て布を、ファスナー取り付け部の左右の縁及び下端に溶着して、防水性をたかめた構成も提案する。
本考案のファスナー取り付け部は、特にウエットスーツに適用するとその効果も優れたものとなる。
【0016】
【考案の実施の形態】
本考案に係るファスナー取り付け部(1)は、上記のような発想に基づくが、以下そのファスナー取り付け部(1)の実施の一形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、ウエットスーツ(10)のファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
図2は、異なる実施形態であり、防水ゴム(54)を備えた務歯(52)を設けたファスナー取り付け部(1)部分を示すもので,スライダー(53)が見えて開いた状態を上方から視た平面図である。
図3は、図1の実施形態を用いて、さらに、防水ゴム(54)を備えたファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
図4は、図1の実施形態のファスナー取り付け部(1)に、防水あて布(6)を備えたファスナー部分を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。図5は、図5は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)に防水あて布(6)を備えたものの正面図である。一部に部分拡大図を示している。
図において、(2)は熱可塑性ウレタンシート、(3)はネオプレンスポンジゴム、(4)はジャージ生地、(5)はファスナー、(51)はファスナーテープである。
【0018】
実施態様は、ジャージ生地(4)のファスナーテープの取り付け部として熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写した縁部を形成して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートである熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着する構成である。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(分子構造中にウレタン基[ーNHCOOー]を有するゴム状弾性体)をカレンダー成形或はインフレーション成形して熱可塑性ウレタンシート(2)を作成している。
熱可塑性ウレタン素材を薄肉フィルムの帯状シートに作成し、ジャージ生地(4)張りに50℃〜200℃の温度で加熱しながら加圧接着して、そこにファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ポリウレタン系の帯状シートで50℃〜200℃の温度で加熱溶着してファスナーテープ(51)の取り付けをするものである。
【0020】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは分子構造が線状構造で、柔軟で加工性がよく、平坦な面の形成や、凹凸状等の形状が任意に出来る。
ファスナー取り付け部(1)に熱可塑性材を適用することにより、修繕加工や二次立体加工(接着後の凹凸面成型やロゴの立体成型)などもできるようになった。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン系のシートは、ひっかき耐摩耗性、耐候性、ゴム弾性、柔軟性に優れた特性があり、また再生加工がしやすい特性があるので、修理や修繕も容易である。
【0022】
実際の制作例としては、ウエットスーツ生地であるジャージ生地(4)張り、熱可塑性ウレタンシート(2)を載せて、次いで平滑なテフロン(登録商標)シートを載せて、170℃で熱プレスする。
ジャージ(4)との接触面では熱可塑性ウレタンシート(2)は程良く溶融し、ジャージ繊維に浸透して入り込み一体的に結合する。
熱可塑性ウレタンシート(2)とジャージ(4)とは相互に液体が染み込むように浸透しあい結合している。
熱可塑性ウレタンシート(2)の周囲縁は特に強く加圧して肉厚を薄くし境界がない程度になだらかに成形している。
熱可塑性ウレタンシート(2)は、厚さは適宜でよいが、0,2mm以上が好ましい。
【0023】
熱可塑性ウレタンシート(2)は、帯状や波帯状など、様々な形状に切断が容易であるので、美しいラインのある帯や、場合によっては文字やロゴの形状にしたり、立体的なロゴ表示などにもできる。
さらに加えて、熱可塑性ウレタンシート(2)は透明素材でも作成できるので、透明カバーとして構成すると下地の模様が透けてみえるとか、その模様や文字が変色劣化しないという用い方もある。
【0024】
このようにまず表皮にジャージ生地(4)を貼り付けたネオプレンスポンジ(3)のファスナー取り付け個所に、熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写して強化ジャージ部分として形成する。
次に、その熱転写した熱可塑性ウレタンシート(2)にファスナーテープ(51)の所定縁部を熱可塑性ウレタンシート(2)によって挟み込み更に平滑なテフロン(登録商標)シートを載せて、170℃で熱プレスする。
ファスナーテープ(51)は、上下から熱可塑性ウレタンシート(2)で溶着されている。よってファスナー(5)はしっかりと取り付けられる。
【0025】
取り付け方法は、上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んだファスナーテープ(51)を加熱圧着してファスナーテープ(51)を全部一緒に溶着する方法や、素材を順次溶着して行く方法があるが、いずれでも差し支えない。
【0026】
ウエットスーツ(10)などの防水性が要求されるウエアでは、前記ファスナーテープ(51)の外表部及び務歯(52)には防水ゴム(54)が取り付けられものを用いるのが好ましい。
外表部及び務歯(52)に備えられる防水ゴム(54)は、左右のファスナーが噛み合うと防水ゴム(54)の端面同士がしっかりと当接して、水密に閉じることができる。
しかもそのファスナーテープ(51)は上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んで溶着しているので、防水性が極めて高いファスナー部分となっており防水性のあるウエットスーツ(10)が提供できる。
【0027】
図4及び図5の防水当て布(6)は、ファスナー取り付け部(1)の左右の縁及び下端を夫々被覆溶着した熱可塑性ウレタンシート(2)に溶着して連結するように連結したもので、ファスナー部位を防水して体側に収納されるものである。防水当て布(6)は、左右に開くファスナーを連結するものであるので、ファスナーを全開しても襟首がたれ落ちることがない利点もある。
【0028】
ファスナー取り付け部(1)は、ファスナーの開閉に支障のない構成であることが必要であり、又、運動を妨げない柔軟性が要求されているが、前記のような構成の本考案のファスナー取り付け部(1)では、硬化する様な接着剤や縫製糸を用いることなく、強度を増加させるともに、柔軟性も維持できかつ防水性にも優れたものとなっている。
【0029】
【考案の効果】
本考案のファスナー取り付け部は、次のような技術的効果がある。
(1)ファスナーの取り付けは、加熱圧着だけの作業であるので製造コストを削減することが出来る。
(2)本考案のファスナー取り付け部は、ウエットスーツの内側に取り付けるものであるが、脱いだときにもファッション性を損なわず、非常にすっきりとしたデザインにすることができる。見えない部分ではあるが、高品質感を持たせることができる。
(3)平坦で柔軟な形態でファスナー取り付け部の強度を増すことができた。引っ掻きによる摩擦破損や劣化による剥離がほぼなくなった。
(4)効率よく加熱圧着の取り付け作業を行うことが出来、製作者の負担を軽減できる。
(5)万一損傷しても、熱可塑性ポリウレタン系のシートであるので、加熱修復や第二のシート溶着など完全修理が容易にできる。さらに二次立体加工(接着後の凹凸面成型で、背中への当接面を着用者の体系に合わせて適切に設計できる)などもできる。
(6)ファスナーテープの外表部及び務歯の両側には防水ゴムを取り付けたファスナーや、ファスナー部分を被覆する防水当て布をファスナー取り付け部の左右の縁及び下端に溶着したものは、防水性を十分に高めることが出来る。
【0030】
以上のように、本考案に係るファスナー取り付け部は、ファスナー取り付け個所に熱可塑性素材を用いるという発想に基づき、ファスナーテープをしっかりと水密に接着してファスナーを取り付けるもので、ウエットスーツのファスナー部としてきわめて実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)の一実施形態を示すもので,ウエットスーツ(10)に取り付けて開いた状態を上方から視た平面図である。
【図2】図2は、異なる実施形態であり、防水ゴム(54)を備えた務歯(52)を設けたファスナー取り付け部(1)部分を示すもので,スライダー(53)が見えて開いた状態を上方から視た平面図である。
【図3】図3は、図2と同じ実施形態であり、防水ゴム(54)を備えたファスナー取り付け部(1)を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
【図4】図4は、図1の実施形態のファスナー取り付け部(1)に、防水あて布(6)を備えたもののファスナー部分を示すもので,開いた状態を上方から視た平面図である。
【図5】図5は、本考案に係るファスナー取り付け部(1)に防水あて布(6)を備えたものの正面図である。一部に部分拡大図を示している。
【符号の説明】
1 ファスナー取り付け部
10 ウエットスーツ
2 熱可塑性ウレタンシート
3 ネオプレンスポンジゴム
4 ジャージ生地
5 ファスナー
51 ファスナーテープ
52 務歯
53 スライダー
54 防水ゴム
6 防水当て布
Claims (5)
- 表皮にジャージ生地(4)を貼り付けたネオプレンスポンジゴム(3)のファスナー取り付け個所に、熱可塑性ウレタンシート(2)を熱転写した縁部を形成して、その熱転写した熱可塑性ウレタンシート(2)にファスナーテープ(51)を置きさらに熱可塑性ウレタンシート(2)によって挟み込み溶着したことを特徴とするファスナー取り付け部。
- 表皮にジャージ生地(4)を貼り付けたネオプレンスポンジゴム(3)のファスナー取り付け個所に、上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んだファスナーテープ(51)を加熱圧着してファスナーテープ(51)を溶着したことを特徴とするファスナー取り付け部。
- 前記ファスナーテープ(51)の外表部及び務歯(52)には防水ゴム(54)が取り付けられ、そのファスナーテープ(51)を上下に熱可塑性ウレタンシート(2)で挟んで溶着したことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のファスナー取り付け部。
- 表皮にジャージ生地(4)が貼り付けられたネオプレンスポンジゴム(3)からなる防水当て布(6)を、ファスナー取り付け部(1)の左右の縁及び下端を夫々被覆溶着した熱可塑性ウレタンシート(2)に溶着して連結するようにして、ファスナー部位を防水したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3のいずれかに記載のファスナー取り付け部。
- ウエットスーツ(10)のファスナーにおいて、取り付け部が前記請求項1〜請求項4のいずれかであるファスナー取り付け部。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003003679U JP3098709U (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | ファスナー取り付け部 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003003679U JP3098709U (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | ファスナー取り付け部 |
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JP3098709U true JP3098709U (ja) | 2004-03-11 |
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JP (1) | JP3098709U (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7045118B1 (ja) * | 2021-10-25 | 2022-03-31 | 勇毅 後藤 | スキューバダイビング用のウェットスーツ及びスキューバダイビング用のウェットスーツの製造方法 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003003679U patent/JP3098709U/ja not_active Expired - Lifetime
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JP7045118B1 (ja) * | 2021-10-25 | 2022-03-31 | 勇毅 後藤 | スキューバダイビング用のウェットスーツ及びスキューバダイビング用のウェットスーツの製造方法 |
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