JP3096801U - コンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造 - Google Patents
コンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】簡単且つ安価な構成で、高い土圧に対抗し得ると共に大きな相対変位を容易に許容することのできるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造を提供する。
【解決手段】継目用伸縮耐圧遮水構造30は、コンクリート構造物10A,10Bの継目部位11の外周に土圧支持板31が継目部位11を跨ぐように配設されると共に、その外側を幅方向中央に複数回折畳まれた折り畳み重合部32Aが形成された遮水シート32が覆って両縁の固定部40でそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定され、その外側に外側保護マット33が設けられ、土圧支持板31と遮水シート32の間には内側保護マット34が介装され、遮水シート32の重合部32Aの間にも内挿保護マット35が介装されて構成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】継目用伸縮耐圧遮水構造30は、コンクリート構造物10A,10Bの継目部位11の外周に土圧支持板31が継目部位11を跨ぐように配設されると共に、その外側を幅方向中央に複数回折畳まれた折り畳み重合部32Aが形成された遮水シート32が覆って両縁の固定部40でそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定され、その外側に外側保護マット33が設けられ、土圧支持板31と遮水シート32の間には内側保護マット34が介装され、遮水シート32の重合部32Aの間にも内挿保護マット35が介装されて構成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、浄水施設の水路等の低深度に埋設されるコンクリート構造物の継目の外周を覆って土水の侵入を阻止しつつコンクリート構造物の相対変位を許容するコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば浄水施設の水路等の低深度に埋設されるコンクリート構造物の継目部位における継手構造として、図3に示すような止水板12′によって打ち継がれているものがある。
【0003】
ところが、このような止水板12′による継手では、地震等によるコンクリート構造物10A′,10B′の大きな相対変位には対応することができず、また、継目部位に外側から侵入した土石がコンクリート構造物10A′,10B′の接近変位を阻害するという問題があり、その対応策としてこのような止水板1を備える既設のコンクリート構造物10A′,10B′の継目部位11′に伸縮継手を後付けで取り付けることが行われている。
【0004】
既設のコンクリート構造物の継目部位に後付けで装着される伸縮継手としては、特許文献1及び2に開示のごときものがある。即ち、特許文献1に開示のものは、図4に斜視図を示すように管路状のコンクリート構造物10A′,10B′の外周に配設されるものであり、コンクリート構造物10A′,10B′の継目部位11′の外周を覆うようにゴム等の可撓性の素材によって形成された帯状の防砂部材13′が巻回配設されると共に、この防砂部材13′が一方の暗渠10A′の外周に固定されて構成されるものである。また、特許文献2に開示のものは、図5に継目部位11′の拡大断面図を示すようにコンクリート構造物10A′,10B′の内周に配設されるものであり、一部を折り畳んだ状態のシート状の可撓止水部材14′が継目部位11′を跨ぐように配置されてその両端部がそれぞれコンクリート構造物10A′,10B′に固定されると共に、その内側に高剛性の支持板15′が設けられて構成されているものである。
【0005】
尚、土中に埋設されるコンクリート構造物では、前述のごとく継目間に侵入した土石が相対変位を阻害する要因となると共に侵入した土砂や雨水が内側の伸縮継手を圧迫して損傷させる虞があるため、外周側の伸縮継手は必須である。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−320757号公報
【特許文献2】
特開平9−144148号公報
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のごとき従来構成の外周側の伸縮継手では、外部土圧に耐えた状態で地震時等における構造物間の大きな相対変位に追随するためには、高い強度が必要となるために大きく厚く重くなり、作業性が悪くコストも高くなるという問題があった。
【0008】
尚、コンクリート構造物の外周に配設される伸縮継手としては、上記の他に図6に示すように、中央内部に硬質ゴム16′が内挿された軟質ゴム17′によって両縁に上方に膨出した変形部18′を備える帯状に形成されると共に、継目部位11′を跨いで両端でそれぞれコンクリート構造物10A′,10B′に固定されて配設されるものもある。この構成の伸縮継手は高い土圧に対抗し得るものであるが、製作が面倒でコストが高いという問題がある。
【0009】
本考案は、上記問題にかんがみなされたものであって、簡単且つ安価な構成で、高い土圧に対抗し得ると共に大きな相対変位を容易に許容することのできるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本考案のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造は、摩擦係数の小さい合成樹脂等によって所定厚さの剛性を有する板状に形成され隣接するコンクリート構造物の継目部位の外周に当該継目部位を跨ぐように配設された土圧支持板部材と、熱融着ゴムシート等不透水性の柔軟な薄いシート状で一部が複数回折畳まれた状態で両縁がそれぞれ前記隣接するコンクリート構造物に固定されて前記土圧支持板部材の外側を覆って配設された遮水シート部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記土圧支持板部材と前記遮水シート部材の間及び前記遮水シートの折り畳み重合部の間に介装された内側保護マット部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記遮水シート部材の外側に当該遮水シート部材を覆って配設された外側保護マット部材と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、土圧支持板部材が土圧を支持して遮水シート部材及び土砂の継目間への侵入を阻止しつつコンクリート構造物の相対変位を許容すると共に、遮水シート部材が土水の継目間への流入を防ぐ。遮水シート部材はその折り畳み重合部が展開することでコンクリート構造物の離間変位を許容し、内側保護マット部材は外部土圧の作用に拘わらず遮水シート部材の移動空間を確保してその変位を容易とし、外側保護マット部材は遮水シート部材が土砂と直接の接触することによる破損を防ぐと共に土砂との間に遮水シート部材の移動空間を確保してその変位を容易とするように作用する。
【0012】
また、上記遮水シート部材の上記コンクリート構造物への固定部は、前記遮水シート部材と前記コンクリート部材との間にシールテープが介装されると共に、前記遮水シート部材の上側に配設された押圧固定板が締結固定部材によって前記コンクリート構造物に締着され、更に、前記押圧固定板の外隅角部がシリコン樹脂によってシールされて構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成により、遮水シート部材をその内側への浸水を阻止してコンクリート構造物に強固に装着できる。
【0014】
また、上記外面保護マットの外縁は、上記遮水シート部材の固定部を覆う位置まで延設されていることを特徴とする。
【0015】
これにより外面保護マットが固定部を保護する。
【0016】
【考案の実施の形態】
以下添付図面を参照して本考案の構成例について説明する。図1は本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造の一構成例を適用したコンクリート構造物としてのボックスカルバートの横断面図であり、図2はその継目部位を縦に分割した拡大断面図である。
【0017】
本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造は既設及び新設の構造物のいずれにも適用することが可能であるが、図は既設の構造物に適用した例である。図示コンクリート構造物10(10A,10B)の継目部位11は、当該コンクリート構造物10に打設された既存の止水板12によって結合されている。このようなコンクリート構造物10の継目部位11に対し、その内周面に後付け式可撓継手20が装着されると共に外周面に継目用伸縮耐圧遮水構造30が適用され、地震等によっても浸水や漏水を防いでコンクリート構造物10の大きな相対変位を許容すべく対策を施したものである。
【0018】
内周面の後付け式可撓継手20は、継目部位11の内面全周を巡って設けられて水密性を確保している。一方、外周面の継目用伸縮耐圧遮水構造30は、コンクリート構造物10の上部全域及び側部の少なくとも内部水位より下側までを覆うように配設されている。つまり、少なくとも内圧の作用しない部位を覆って配設されるものである。尚、勿論継目用伸縮耐圧遮水構造30を全周に適用しても良いものである。その設置作業は、コンクリート構造物10の上部を覆う覆土1を掘り起こして行われ、設置後は従前通りに埋め戻される。
【0019】
後付け式可撓継手20は、一部を折り畳んだ状態のシート状の可撓止水部材21が継目部位11を跨ぐように配置されてその両端部がそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定されると共に、その内側に高剛性の支持板22が設けられて構成されているものである。
【0020】
継目用伸縮耐圧遮水構造30は、継目部位11の外周に土圧支持板部材としての土圧支持板31が継目部位11を跨ぐように配設されると共に、その外側を遮水シート部材としての遮水シート32が覆って両縁の固定部40でそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定され、更に、その外側に外側保護マット部材として外側保護マット33が設けられて構成されている。また、土圧支持板31と遮水シート32の間には内側保護マット部材としての内側保護マット34が介装され、遮水シート32の後述する重合部32Aの間にも内側保護マット部材としての内挿保護マット35が介装されている。
【0021】
土圧支持板31は、摩擦係数が小さい素材で所定の剛性を有する所定厚さの板状に形成され、コンクリート構造物10A,10Bの継目部位11の外周に当該継目部位11を跨いで配設されている。その素材としては、例えば、ポリエチレン,硬質塩化ビニール樹脂又はアクリル樹脂等の合成樹脂が適し、厚さは3mm程度が好ましい。尚、その全体幅は、想定されるコンクリート構造物10A,10Bの変位量より大きくコンクリート構造物10A,10Bと重合するように設定される。
【0022】
遮水シート32は、不透水性の柔軟な薄いシート状で、その幅方向中央に複数回折畳まれた折り畳み重合部32Aが形成され、両縁がそれぞれ固定部40によってコンクリート構造物10A,10Bに固定されている。このような遮水シート32としては、例えば、厚さ1.5mmの熱融着ゴムシートが適する。
【0023】
ここで、熱融着ゴムシートとは、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)単独又はポリオレフィン系エラストマーにエチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)がブレンドされた素材によってシート状に形成されたものであり、耐候性,耐熱性,耐寒性及び電気絶縁性に優れると共に、熱融着接合が可能であって現場においても切り張りができるために作業性が格段に優れるものである。
【0024】
遮水シート32の折り畳み重合部32Aは、図示構成例ではS字状を呈するように二回折り畳まれて三重となっており、各層の間にそれぞれ内挿保護マット35が介装されている。
【0025】
固定部40は、コンクリート構造物10(10A,10B)に打ち込まれた金属拡張アンカーボルト41に、遮水シート32と所定幅且つ所定厚さの金属製の押圧固定板42が嵌め込まれ、これらが金属拡張アンカーボルト41に螺合した締結固定部材としてのナット43で締着されている。遮水シート32と当接するコンクリート構造物10の外面部位にはブチルゴムのシールテープ44が介装され、また、押圧固定板42の外隅部にはシリコン樹脂によるシールコーキング45が施され、当該固定部40を介した遮水シート32の内側への浸水を防ぐようになっている。
【0026】
外側保護マット33,内側保護マット34及び内挿保護マット35は、柔軟な素材によって圧縮変形可能な所定厚さに形成されている。例えば、厚さ10〜20mm程度のポリエステル不織布が適する。外側保護マット33は固定部40を完全に覆う幅に設定されており、内側保護マット34は土圧支持板31を余裕を持って覆い側縁が固定部40の近傍に達する幅となっている。また、内挿保護マット35は遮水シート32の重合部32Aと対応する幅に形成されている。
【0027】
上記のごとく構成された継目用伸縮耐圧遮水構造は、土圧支持板31が外部土圧を支持して遮水シート32を巻き込んでの土砂の継目部位11の間への侵入を阻止すると共に、遮水シート32が土水の継目部位11への流入を防ぐ。また、地震等によるコンクリート構造物10A,10Bの相対変位の際は、遮水シート32がその低摩擦係数で容易に摺動して、コンクリート構造物10A,10Bの相対変位を許容し、遮水シート32はその重合部32Aが展開することで破損することなくコンクリート構造物10A,10Bの大きな離間変位を許容する。内側保護マット34は外部土圧の作用に拘わらず遮水シート32の移動空間を確保してその変位を容易とし、外側保護マット33は遮水シート32や固定部40が土砂と直接接触することによる破損を防ぐと共に遮水シート32と土砂との間に移動空間を確保してその変位を容易とする。
【0028】
これにより、土砂や水の継目部11への侵入を防ぐことができるため、継目部11内に侵入した土石がコンクリート構造物10A,10Bの相対変位を阻害して破損を招来することもなくコンクリート構造物10A,10Bの大きな相対変位を可能とすると共に汚水の侵入を防ぐことができる。
【0029】
即ち、簡単且つ安価な構成で、高い土圧に対抗し得ると共に大きな相対変位を容易に許容することができるものである。
【0030】
【考案の効果】
以上述べたように、本考案に係るコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造によれば、摩擦係数の小さい合成樹脂等によって所定厚さの剛性を有する板状に形成され隣接するコンクリート構造物の継目部位の外周に当該継目部位を跨ぐように配設された土圧支持板部材と、熱融着ゴムシート等不透水性の柔軟な薄いシート状で一部が複数回折畳まれた状態で両縁がそれぞれ前記隣接するコンクリート構造物に固定されて前記土圧支持板部材の外側を覆って配設された遮水シート部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され土圧支持板部材と遮水シート部材の間及び遮水シートの折り畳み重合部の間に介装された内側保護マット部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され遮水シート部材の外側に当該遮水シート部材を覆って配設された外側保護マット部材と、を備えて構成されていることにより、土圧支持板部材が土圧を支持すると共に遮水シート部材が継目間へび土石の侵入や土水の流入を防ぎつつ遮水シート部材の展開によってコンクリート構造物の大きな相対変位を許容し、内側保護マット部材と外側保護マット部材が遮水シート部材の移動空間を確保してその円滑な移動を可能とする。つまり、簡単且つ安価な構成で、土水の侵入を防ぎつつコンクリート構造物の大きな相対変位を許容することができるものであり、既存のコンクリート構造物に容易に適用できるものである。
【0031】
また、上記遮水シート部材の上記コンクリート構造物への固定部は、遮水シート部材とコンクリート部材との間にシールテープが介装されると共に、遮水シート部材の上側に配設された押圧固定板が締結固定部材によってコンクリート構造物に締着され、更に、押圧固定板の外隅角部がシリコン樹脂によってシールされて構成されていることにより、遮水シート部材をコンクリート構造物に浸水を防いで強固に装着できるものである。
【0032】
また、上記外面保護マットの外縁は、上記遮水シート部材の固定部を覆う位置まで延設されていることにより、外面保護マットが固定部を保護し、土石による破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造の一構成例を適用したコンクリート構造物の横断面図である。
【図2】継目部位を縦に分割した拡大断面図である。
【図3】従来例の止水板を示すコンクリート構造物の継目部位の部分断面図である。
【図4】従来例としての外周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の外観斜視図である。
【図5】従来例としての内周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の継目部位の断面図である。
【図6】従来例としての外周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の継目部位の断面図である。
【符号の説明】
10(10A,10B) コンクリート構造物
11 継目部位
30 継目用伸縮耐圧遮水構造
31 土圧支持板(土圧支持板部材)
32 遮水シート(遮水シート部材)
33 外側保護マット(外側保護マット部材)
34 内側保護マット(内側保護マット部材)
35 内挿保護マット(内側保護マット部材)
40 固定部
42 押圧固定板
43 ナット(締結固定部材)
44 シールテープ
【考案の属する技術分野】
本考案は、浄水施設の水路等の低深度に埋設されるコンクリート構造物の継目の外周を覆って土水の侵入を阻止しつつコンクリート構造物の相対変位を許容するコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば浄水施設の水路等の低深度に埋設されるコンクリート構造物の継目部位における継手構造として、図3に示すような止水板12′によって打ち継がれているものがある。
【0003】
ところが、このような止水板12′による継手では、地震等によるコンクリート構造物10A′,10B′の大きな相対変位には対応することができず、また、継目部位に外側から侵入した土石がコンクリート構造物10A′,10B′の接近変位を阻害するという問題があり、その対応策としてこのような止水板1を備える既設のコンクリート構造物10A′,10B′の継目部位11′に伸縮継手を後付けで取り付けることが行われている。
【0004】
既設のコンクリート構造物の継目部位に後付けで装着される伸縮継手としては、特許文献1及び2に開示のごときものがある。即ち、特許文献1に開示のものは、図4に斜視図を示すように管路状のコンクリート構造物10A′,10B′の外周に配設されるものであり、コンクリート構造物10A′,10B′の継目部位11′の外周を覆うようにゴム等の可撓性の素材によって形成された帯状の防砂部材13′が巻回配設されると共に、この防砂部材13′が一方の暗渠10A′の外周に固定されて構成されるものである。また、特許文献2に開示のものは、図5に継目部位11′の拡大断面図を示すようにコンクリート構造物10A′,10B′の内周に配設されるものであり、一部を折り畳んだ状態のシート状の可撓止水部材14′が継目部位11′を跨ぐように配置されてその両端部がそれぞれコンクリート構造物10A′,10B′に固定されると共に、その内側に高剛性の支持板15′が設けられて構成されているものである。
【0005】
尚、土中に埋設されるコンクリート構造物では、前述のごとく継目間に侵入した土石が相対変位を阻害する要因となると共に侵入した土砂や雨水が内側の伸縮継手を圧迫して損傷させる虞があるため、外周側の伸縮継手は必須である。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−320757号公報
【特許文献2】
特開平9−144148号公報
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のごとき従来構成の外周側の伸縮継手では、外部土圧に耐えた状態で地震時等における構造物間の大きな相対変位に追随するためには、高い強度が必要となるために大きく厚く重くなり、作業性が悪くコストも高くなるという問題があった。
【0008】
尚、コンクリート構造物の外周に配設される伸縮継手としては、上記の他に図6に示すように、中央内部に硬質ゴム16′が内挿された軟質ゴム17′によって両縁に上方に膨出した変形部18′を備える帯状に形成されると共に、継目部位11′を跨いで両端でそれぞれコンクリート構造物10A′,10B′に固定されて配設されるものもある。この構成の伸縮継手は高い土圧に対抗し得るものであるが、製作が面倒でコストが高いという問題がある。
【0009】
本考案は、上記問題にかんがみなされたものであって、簡単且つ安価な構成で、高い土圧に対抗し得ると共に大きな相対変位を容易に許容することのできるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本考案のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造は、摩擦係数の小さい合成樹脂等によって所定厚さの剛性を有する板状に形成され隣接するコンクリート構造物の継目部位の外周に当該継目部位を跨ぐように配設された土圧支持板部材と、熱融着ゴムシート等不透水性の柔軟な薄いシート状で一部が複数回折畳まれた状態で両縁がそれぞれ前記隣接するコンクリート構造物に固定されて前記土圧支持板部材の外側を覆って配設された遮水シート部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記土圧支持板部材と前記遮水シート部材の間及び前記遮水シートの折り畳み重合部の間に介装された内側保護マット部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記遮水シート部材の外側に当該遮水シート部材を覆って配設された外側保護マット部材と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、土圧支持板部材が土圧を支持して遮水シート部材及び土砂の継目間への侵入を阻止しつつコンクリート構造物の相対変位を許容すると共に、遮水シート部材が土水の継目間への流入を防ぐ。遮水シート部材はその折り畳み重合部が展開することでコンクリート構造物の離間変位を許容し、内側保護マット部材は外部土圧の作用に拘わらず遮水シート部材の移動空間を確保してその変位を容易とし、外側保護マット部材は遮水シート部材が土砂と直接の接触することによる破損を防ぐと共に土砂との間に遮水シート部材の移動空間を確保してその変位を容易とするように作用する。
【0012】
また、上記遮水シート部材の上記コンクリート構造物への固定部は、前記遮水シート部材と前記コンクリート部材との間にシールテープが介装されると共に、前記遮水シート部材の上側に配設された押圧固定板が締結固定部材によって前記コンクリート構造物に締着され、更に、前記押圧固定板の外隅角部がシリコン樹脂によってシールされて構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成により、遮水シート部材をその内側への浸水を阻止してコンクリート構造物に強固に装着できる。
【0014】
また、上記外面保護マットの外縁は、上記遮水シート部材の固定部を覆う位置まで延設されていることを特徴とする。
【0015】
これにより外面保護マットが固定部を保護する。
【0016】
【考案の実施の形態】
以下添付図面を参照して本考案の構成例について説明する。図1は本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造の一構成例を適用したコンクリート構造物としてのボックスカルバートの横断面図であり、図2はその継目部位を縦に分割した拡大断面図である。
【0017】
本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造は既設及び新設の構造物のいずれにも適用することが可能であるが、図は既設の構造物に適用した例である。図示コンクリート構造物10(10A,10B)の継目部位11は、当該コンクリート構造物10に打設された既存の止水板12によって結合されている。このようなコンクリート構造物10の継目部位11に対し、その内周面に後付け式可撓継手20が装着されると共に外周面に継目用伸縮耐圧遮水構造30が適用され、地震等によっても浸水や漏水を防いでコンクリート構造物10の大きな相対変位を許容すべく対策を施したものである。
【0018】
内周面の後付け式可撓継手20は、継目部位11の内面全周を巡って設けられて水密性を確保している。一方、外周面の継目用伸縮耐圧遮水構造30は、コンクリート構造物10の上部全域及び側部の少なくとも内部水位より下側までを覆うように配設されている。つまり、少なくとも内圧の作用しない部位を覆って配設されるものである。尚、勿論継目用伸縮耐圧遮水構造30を全周に適用しても良いものである。その設置作業は、コンクリート構造物10の上部を覆う覆土1を掘り起こして行われ、設置後は従前通りに埋め戻される。
【0019】
後付け式可撓継手20は、一部を折り畳んだ状態のシート状の可撓止水部材21が継目部位11を跨ぐように配置されてその両端部がそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定されると共に、その内側に高剛性の支持板22が設けられて構成されているものである。
【0020】
継目用伸縮耐圧遮水構造30は、継目部位11の外周に土圧支持板部材としての土圧支持板31が継目部位11を跨ぐように配設されると共に、その外側を遮水シート部材としての遮水シート32が覆って両縁の固定部40でそれぞれコンクリート構造物10A,10Bに固定され、更に、その外側に外側保護マット部材として外側保護マット33が設けられて構成されている。また、土圧支持板31と遮水シート32の間には内側保護マット部材としての内側保護マット34が介装され、遮水シート32の後述する重合部32Aの間にも内側保護マット部材としての内挿保護マット35が介装されている。
【0021】
土圧支持板31は、摩擦係数が小さい素材で所定の剛性を有する所定厚さの板状に形成され、コンクリート構造物10A,10Bの継目部位11の外周に当該継目部位11を跨いで配設されている。その素材としては、例えば、ポリエチレン,硬質塩化ビニール樹脂又はアクリル樹脂等の合成樹脂が適し、厚さは3mm程度が好ましい。尚、その全体幅は、想定されるコンクリート構造物10A,10Bの変位量より大きくコンクリート構造物10A,10Bと重合するように設定される。
【0022】
遮水シート32は、不透水性の柔軟な薄いシート状で、その幅方向中央に複数回折畳まれた折り畳み重合部32Aが形成され、両縁がそれぞれ固定部40によってコンクリート構造物10A,10Bに固定されている。このような遮水シート32としては、例えば、厚さ1.5mmの熱融着ゴムシートが適する。
【0023】
ここで、熱融着ゴムシートとは、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)単独又はポリオレフィン系エラストマーにエチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)がブレンドされた素材によってシート状に形成されたものであり、耐候性,耐熱性,耐寒性及び電気絶縁性に優れると共に、熱融着接合が可能であって現場においても切り張りができるために作業性が格段に優れるものである。
【0024】
遮水シート32の折り畳み重合部32Aは、図示構成例ではS字状を呈するように二回折り畳まれて三重となっており、各層の間にそれぞれ内挿保護マット35が介装されている。
【0025】
固定部40は、コンクリート構造物10(10A,10B)に打ち込まれた金属拡張アンカーボルト41に、遮水シート32と所定幅且つ所定厚さの金属製の押圧固定板42が嵌め込まれ、これらが金属拡張アンカーボルト41に螺合した締結固定部材としてのナット43で締着されている。遮水シート32と当接するコンクリート構造物10の外面部位にはブチルゴムのシールテープ44が介装され、また、押圧固定板42の外隅部にはシリコン樹脂によるシールコーキング45が施され、当該固定部40を介した遮水シート32の内側への浸水を防ぐようになっている。
【0026】
外側保護マット33,内側保護マット34及び内挿保護マット35は、柔軟な素材によって圧縮変形可能な所定厚さに形成されている。例えば、厚さ10〜20mm程度のポリエステル不織布が適する。外側保護マット33は固定部40を完全に覆う幅に設定されており、内側保護マット34は土圧支持板31を余裕を持って覆い側縁が固定部40の近傍に達する幅となっている。また、内挿保護マット35は遮水シート32の重合部32Aと対応する幅に形成されている。
【0027】
上記のごとく構成された継目用伸縮耐圧遮水構造は、土圧支持板31が外部土圧を支持して遮水シート32を巻き込んでの土砂の継目部位11の間への侵入を阻止すると共に、遮水シート32が土水の継目部位11への流入を防ぐ。また、地震等によるコンクリート構造物10A,10Bの相対変位の際は、遮水シート32がその低摩擦係数で容易に摺動して、コンクリート構造物10A,10Bの相対変位を許容し、遮水シート32はその重合部32Aが展開することで破損することなくコンクリート構造物10A,10Bの大きな離間変位を許容する。内側保護マット34は外部土圧の作用に拘わらず遮水シート32の移動空間を確保してその変位を容易とし、外側保護マット33は遮水シート32や固定部40が土砂と直接接触することによる破損を防ぐと共に遮水シート32と土砂との間に移動空間を確保してその変位を容易とする。
【0028】
これにより、土砂や水の継目部11への侵入を防ぐことができるため、継目部11内に侵入した土石がコンクリート構造物10A,10Bの相対変位を阻害して破損を招来することもなくコンクリート構造物10A,10Bの大きな相対変位を可能とすると共に汚水の侵入を防ぐことができる。
【0029】
即ち、簡単且つ安価な構成で、高い土圧に対抗し得ると共に大きな相対変位を容易に許容することができるものである。
【0030】
【考案の効果】
以上述べたように、本考案に係るコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造によれば、摩擦係数の小さい合成樹脂等によって所定厚さの剛性を有する板状に形成され隣接するコンクリート構造物の継目部位の外周に当該継目部位を跨ぐように配設された土圧支持板部材と、熱融着ゴムシート等不透水性の柔軟な薄いシート状で一部が複数回折畳まれた状態で両縁がそれぞれ前記隣接するコンクリート構造物に固定されて前記土圧支持板部材の外側を覆って配設された遮水シート部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され土圧支持板部材と遮水シート部材の間及び遮水シートの折り畳み重合部の間に介装された内側保護マット部材と、ポリエステル不織布等柔軟な素材によって所定厚さに形成され遮水シート部材の外側に当該遮水シート部材を覆って配設された外側保護マット部材と、を備えて構成されていることにより、土圧支持板部材が土圧を支持すると共に遮水シート部材が継目間へび土石の侵入や土水の流入を防ぎつつ遮水シート部材の展開によってコンクリート構造物の大きな相対変位を許容し、内側保護マット部材と外側保護マット部材が遮水シート部材の移動空間を確保してその円滑な移動を可能とする。つまり、簡単且つ安価な構成で、土水の侵入を防ぎつつコンクリート構造物の大きな相対変位を許容することができるものであり、既存のコンクリート構造物に容易に適用できるものである。
【0031】
また、上記遮水シート部材の上記コンクリート構造物への固定部は、遮水シート部材とコンクリート部材との間にシールテープが介装されると共に、遮水シート部材の上側に配設された押圧固定板が締結固定部材によってコンクリート構造物に締着され、更に、押圧固定板の外隅角部がシリコン樹脂によってシールされて構成されていることにより、遮水シート部材をコンクリート構造物に浸水を防いで強固に装着できるものである。
【0032】
また、上記外面保護マットの外縁は、上記遮水シート部材の固定部を覆う位置まで延設されていることにより、外面保護マットが固定部を保護し、土石による破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案にかかるコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造の一構成例を適用したコンクリート構造物の横断面図である。
【図2】継目部位を縦に分割した拡大断面図である。
【図3】従来例の止水板を示すコンクリート構造物の継目部位の部分断面図である。
【図4】従来例としての外周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の外観斜視図である。
【図5】従来例としての内周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の継目部位の断面図である。
【図6】従来例としての外周側の伸縮継手を設けたコンクリート構造物の継目部位の断面図である。
【符号の説明】
10(10A,10B) コンクリート構造物
11 継目部位
30 継目用伸縮耐圧遮水構造
31 土圧支持板(土圧支持板部材)
32 遮水シート(遮水シート部材)
33 外側保護マット(外側保護マット部材)
34 内側保護マット(内側保護マット部材)
35 内挿保護マット(内側保護マット部材)
40 固定部
42 押圧固定板
43 ナット(締結固定部材)
44 シールテープ
Claims (7)
- 摩擦係数の小さい素材によって所定厚さの剛性を有する板状に形成され隣接するコンクリート構造物の継目部位の外周に当該継目部位を跨ぐように配設された土圧支持板部材と、
不透水性の柔軟な薄いシート状で一部が複数回折畳まれた状態で両縁がそれぞれ前記隣接するコンクリート構造物に固定されて前記土圧支持板部材の外側を覆って配設された遮水シート部材と、
柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記土圧支持板部材と前記遮水シート部材の間及び前記遮水シートの折り畳み重合部の間に介装された内側保護マット部材と、
柔軟な素材によって所定厚さに形成され前記遮水シート部材の外側に当該遮水シート部材を覆って配設された外側保護マット部材と、を備えて構成されていることを特徴とするコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。 - 上記遮水シート部材の上記コンクリート構造物への固定部は、前記遮水シート部材と前記コンクリート部材との間にシールテープが介装されると共に、前記遮水シート部材の上側に配設された押圧固定板が締結固定部材によって前記コンクリート構造物に締着され、更に、前記押圧固定板の外隅角部がシリコン樹脂によってシールされて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
- 上記外面保護マット部材の外縁は、上記遮水シート部材の固定部を覆う位置まで延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
- 上記土圧支持板部材は、合成樹脂板によって形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
- 上記遮水シート部材は、熱融着ゴムシートであることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
- 上記内側保護マット部材は、ポリエステル不織布によって形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
- 上記外側保護マット部材は、ポリエステル不織布によって形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載のコンクリート構造物の継目用伸縮耐圧遮水構造。
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JP2007009410A (ja) * | 2005-06-28 | 2007-01-18 | Shibata Ind Co Ltd | 止水シート及び止水構造体 |
JP2012241448A (ja) * | 2011-05-20 | 2012-12-10 | Hayakawa Rubber Co Ltd | シール材及び目地シール構造 |
JP2016519730A (ja) * | 2013-04-09 | 2016-07-07 | カルピ、テック、ベスローテン、フェンノートシャップCarpi Tech B.V. | 水圧を受ける構造物の継ぎ目を覆って防水するための方法及びデバイス |
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003001702U patent/JP3096801U/ja not_active Expired - Fee Related
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