JP3094563B2 - バルーンカテーテル - Google Patents

バルーンカテーテル

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JP3094563B2 JP03278701A JP27870191A JP3094563B2 JP 3094563 B2 JP3094563 B2 JP 3094563B2 JP 03278701 A JP03278701 A JP 03278701A JP 27870191 A JP27870191 A JP 27870191A JP 3094563 B2 JP3094563 B2 JP 3094563B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バルーンカテーテルに
関し、さらに詳しくは、特に大動脈内バルーンパンピン
グ用として好適な耐摩耗性に優れたバルーン部分を有す
るバルーンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】大動脈バルーンパンピング(intra
aortic balloon pumping;IA
BP)法は、心筋梗塞による心不全などの治療に臨床補
助効果が認められ、広く用いられている。IABP法で
は、カテーテル先端のバルーンを心電図に同期させて、
心室の収縮期にバルーンをしぼませ、拡張期にふくらま
せるように連動させる。これにより、拡張期に冠動脈血
流を増加させ、虚血を軽くして不全心臓を改善し、収縮
期には抵抗を下げて左心室の負担を軽くする。
【0003】IABP法に使用されるバルーンカテーテ
ルは、大腿動脈から挿入され、その先端は左鎖骨下動脈
分枝部直下の胸部下行大動脈に置かれる。バルーンカテ
ーテルの体外部分は、駆動装置に連結される。バルーン
の膨張・収縮は、ガス圧駆動で行われ、駆動ガスにはヘ
リウムまたは炭酸ガスが用いられる。バルーン部分の材
質としては、通常、ポリウレタン、ポリウレタンウレ
ア、ポリウレタンシリコーンブロック共重合体、フッ素
化ポリウレタン、フッ素化ポリウレタンウレア、ポリウ
レタンとポリジメチルシロキサンとのポリマーブレンド
など各種ポリウレタン系ポリマー材料からなるフィルム
(膜)が使用されている。
【0004】このようにIABP法は、心臓の拡張期お
よび収縮期の両期にわたり効果が認められることから、
補助循環法として優れた手段であるが、臨床適用範囲が
広がるにつれて、いくつかの副作用が報告されるように
なった。その一例としては、“Intraaortic
Balloon Rupture”Vol.34,A
merican Society Artificia
l InternalOrgans,1988,Ken
neth D.Stahl et al.の報告があ
る。副作用の中でも特に重篤なのは、バルーンの破壊
(破裂、損傷)であると報告されている。バルーン部分
が破壊すると、患者に対する補助循環作用が失われるだ
けではなく、駆動ガスであるヘリウムや炭酸ガスが患者
の血管中に流失し、栓塞などの重篤な副作用をもたら
す。
【0005】このような重大な事態を回避するための防
護策として、市販のIABP装置の殆どには、駆動ガス
の流出がある一定量以上になると警報を発する機能が組
み込まれている。しかし、駆動ガスはバルーンに漏れが
なくても拡散により血液中にごく少量づつ溶解し失われ
ていくことが知られており、警報機構もあまり鋭敏なガ
スの減量を検出しようとしても、拡散による減量とバル
ーンに故障が起きたための減量を区別することが困難で
あるため、バルーンの故障を初期の段階で検知すること
ができない。
【0006】一方、IABP法に使用するバルーンカテ
ーテルに関し、日本人の体格に適合した寸法形状とする
こと、および抗血栓性が高くかつ機械的強度に優れた材
質によりバルーン部分を形成することが提案されている
(特開昭63−206255号)。患者の血管形状等に
応じてバルーン部分の最大径部と長さを調節すること
は、補助循環作用およびバルーン部分の破壊防止の観点
から望ましいけれども、患者の血管形状は個人差による
ばらつきが大きいため、個々の患者の血管の正確な寸法
を測定し、それに合わせてバルーン部分を用意すること
は、患者に対する負担や医師の手間が大きく、準備も煩
雑となる。また、患者の安全を最大限考慮してバルーン
部分の容積を小さくし過ぎると、IABP法による補助
循環作用が低下する。さらに、従来のバルーン部分を構
成する材質では、バルーンの破壊に対する防止効果が充
分ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、バル
ーン部分の破壊防止効果が顕著に優れたバルーンカテー
テルを提供することにある。本発明者らは、IABP法
に使用されるバルーンカテーテルの破壊について研究を
行った結果、バルーンカテーテルを大動脈中で駆動する
際に、バルーン部分が血管中に存在する石灰化沈着物と
擦り合わされることにより外表面部分からの摩耗が進行
し、それがバルーン破壊の主原因となることを見出し
た。
【0008】すなわち、本発明者らは、臨床で使用され
破壊を起こしたIABP用バルーンカテーテルについ
て、ポリウレタン製のバルーン部分の表面および破壊部
分付近の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、バ
ルーンの膜厚が薄くなって破壊が生じたことが確認され
た。このようにバルーンの膜厚が薄くなる原因は、摩耗
によるものと考えることができる。具体的には、バルー
ンカテーテルの使用時において、バルーンが拡張・収縮
を繰り返す間に血管内壁の石灰化沈着物と擦り合わさ
れ、外表面部分から摩耗が進行すると推定できる。
【0009】このことを確認するために、図1および図
2に示す石こう製のロールを備えた摩耗装置を用い、バ
ルーンカテーテル駆動時と同様の圧力および張力条件下
でバルーンを形成するポリウレタンフィルムを該ロール
表面と擦り合わせた後、フィルム表面および断面を走査
型電子顕微鏡で観察した結果、臨床で破壊したバルーン
と同様の摩耗が生じていることを見出した。
【0010】このようにバルーンカテーテルのバルーン
部分の破壊は、血管内壁に沈着している石灰化部(ca
lcification)との摩擦による摩耗の結果で
あると推定され、破壊防止のためには、石灰化沈着物に
対する耐摩耗性に優れた材質からバルーンを形成するこ
とが必要である。すなわち、フィルムの摩耗は、それが
置かれた諸条件により複雑な現象をとるため、耐摩耗性
を改善するには、具体的な摩耗条件に応じた解決策が必
要となる。
【0011】そこで、耐摩耗性に優れたバルーン材料を
得るために、各種ポリウレタン系ポリマーフィルムにつ
いて該摩耗装置により摩耗試験を行ったところ、高分子
量のポリマーから形成され、かつ、初期モデュラスの高
いフィルムが顕著な耐摩耗性を示すことを見出した。
【0012】ところで、従来ポリウレタン系ポリマーか
らバルーン部分を形成するには、該ポリマー溶液中に型
を浸漬してその表面に製膜するディッピング法が主とし
て採用されているが、この方法では、有機溶剤に対する
ポリマーの溶解度が重要である。例えば、高分子量ある
いはゲル分の含有率の高いポリマーは、溶解度が低いた
めに成形加工性に劣る。
【0013】そこで、さらに研究を進めた結果、ポリウ
レタン系ポリマーを所定形状に製膜した後、架橋してゲ
ル分の含有率を40重量%以上とすることにより、成形
加工性を損なうことなく製膜でき、しかも架橋フィルム
は、架橋により高分子量であって、かつ、初期100%
モデュラスの高いものとなる。そして、架橋フィルムか
らなるバルーン部分は、顕著な耐摩耗性を示すため、臨
床において破壊し難いバルーンカテーテルを得ることが
できる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに
至ったものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、ポリウレタン系ポリマーを所定形状に製膜した後、
架橋してゲル分の含有率を40重量%以上とした架橋フ
ィルムからなるバルーン部分を有することを特徴とする
バルーンカテーテルが提供される。
【0015】以下、本発明について詳述する。本発明の
バルーンカテーテルにおいて、バルーン部分を形成する
ポリウレタン系ポリマーとしては、例えば、ポリウレタ
ン、ポリウレタンウレア、ポリウレタンシリコーンブロ
ック共重合体、フッ素化ポリウレタン、フッ素化ポリウ
レタンウレアなどバルーン用材料として知られている各
種ポリマーを挙げることができる。これらのポリマー
は、例えば、ポリウレタンとポリジメチルシロキサンと
のポリマーブレンドのように他のポリマーまたは同種ポ
リマーとのブレンド物であってもよい。
【0016】ポリウレタン(またはポリウレタンウレ
ア)としては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI)や水添MDI、ヘキサメチレ
ンジイソシアネートなどのジイソシアネートと1.4−
ブタンジオールやエチレングリコールなどの短鎖ジオー
ルからなるウレタンまたはウレア結合をハードセグメン
トとし、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリオ
キシプロピレングリコールなどのポリエーテル、エチレ
ンアジペートやブチレンアジペートなどのアジピン酸エ
ステル、ポリカプロラクトンやポリカーボネートなどの
脂肪族ポリエステル等をソフトセグメントとするポリウ
レタンが挙げられる。
【0017】したがって、ポリウレタンのハードセグメ
ントを構成するイソシアネート化合物としては、前記M
DIをはじめとする各種ポリイソシアネートが使用さ
れ、また、ソフトセグメントを構成するポリオール化合
物としては、ポリオキシテトラメチレングリコール(P
TMG)やポリオキシプロピレングリコール(PPG)
などのポリエーテル系ポリオール;エチレンアジペー
ト、ブチレンアジペートなどの縮合型ポリエステルポリ
オールやε−カプロラクトンの開環重合で得られるラク
トン系ポリエステルポリオールなどのポリエステル系ポ
リオール;ポリカーボネート系ポリオールなどが使用さ
れ、鎖延長剤としては1.4−ブタンジオールやエチレ
ングリコールなどの短鎖ジオールあるいはエチレンジア
ミンなどのジアミンが使用される。これらのポリウレタ
ンは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する。
【0018】パーフルオロアルキレン基などのフッ素含
有基を有するジイソシアネートを使用すると、含フッ素
ポリウレタンを得ることができる。また、ポリエーテル
系ポリウレタンとポリジメチルシロキサンポリマーとの
複合型ポリウレタン、あるいはMDI,PTMG,EO
−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体(EO=エ
チレンオキサイド)なども使用できる。
【0019】本発明で使用するポリウレタン系ポリマー
は、プレポリマー法やワンショット法、その他の方法に
より合成することができる。ポリウレタン系ポリマーの
架橋には、アロファネート架橋やビュレット架橋など種
々の架橋があり、通常は成形時に架橋するが、本発明に
おいては、ポリウレタン系ポリマーを所定形状に製膜し
た後、架橋する。
【0020】ポリウレタン系ポリマーを所定形状に製膜
した後架橋するには、例えば、分子鎖末端や分子鎖中に
活性なイソシアネート基が残存する不完全ポリウレタン
を用いる方法がある。不完全ポリウレタンは、ポリウレ
タンのハードセグメントを形成するジイソシアネートを
ポリオール化合物に対して化学量論的に過剰に仕込んで
重合することにより得ることができる。この不完全ポリ
ウレタンを用いて所定のバルーン形状に製膜した後、加
熱すると残存イソシアネート基によるアロファネート架
橋が生じる。架橋のための加熱処理は、通常、80〜1
50℃で、数10分から数時間加熱することにより行
う。
【0021】なお、ポリウレタンウレアやフッ素化ポリ
ウレタンなどの他のポリウレタン系ポリマーについても
同様に残存イソシアネート基を有する不完全ポリウレタ
ンを作成することができる。したがって、本発明におい
て不完全ポリウレタンとは、残存イソシアネート基を有
するこれら各種ポリウレタン系ポリマーを含むものとす
る。
【0022】他の架橋方法としては、単分子ポリイソシ
アネートを用いて架橋する方法が挙げられる。ポリウレ
タン系ポリマー成形品の架橋においては、例えば熱可塑
性ポリウレタンエラストマーにジイソシアネートなどの
ポリイソシアネートを添加して架橋する方法が知られて
いるが、本発明においては、ポリウレタン系ポリマーを
所定形状に製膜した後、ポリイソシアネートを含む溶媒
中に浸漬処理し、然る後、加熱して架橋する。
【0023】例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイ
ソシアネートを溶解したテトラヒドロフラン溶液に、所
定形状に製膜したフィルムを数秒から数10秒間浸漬
し、引き上げた後、80〜150℃で、数10分から数
時間加熱すると、アロファネート架橋および/またはビ
ューレット架橋が生じ、架橋フィルムを得ることができ
る。
【0024】本発明で使用するポリウレタン系ポリマー
の分子量は、特に限定されず、数平均分子量(Mn)が
50,000以上のポリマーを使用することができる
が、それ以下の低分子量ポリマーを使用することもでき
る。製膜工程における有機溶剤に対する溶解度の観点か
らは、分子量があまり高すぎないポリマーの方が好まし
い。なお、ポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲル・
パーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により
求めた値である。
【0025】これらのポリウレタン系ポリマーを用いて
バルーンを製造するには、各種製膜法が採用可能である
が、通常、ディッピング成形法が好ましい。ディッピン
グ成形法では、ポリマーを有機溶剤に溶解して溶液と
し、この溶液中に型を浸漬して製膜する。すなわち、ポ
リマー溶液中に型を浸漬させて型の表面にポリマー溶液
を塗布し、溶剤を蒸発させて型表面にポリマー被膜を形
成させる。浸漬と乾燥を繰り返すことにより所望の厚み
の膜(フィルム)を積層成形することができる。この成
形法により、所定形状、すなわち筒状で両端がテーパー
を持つ袋状構造のバルーンを形成する。溶剤としては、
例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、
ジメチルスルホキシドなどの各種有機溶剤を挙げること
ができる。
【0026】ディッピング法によりバルーンを製造する
場合、均一な厚みの膜を得るためには、ポリマー中のゲ
ル分はできるだけ少ないことが望ましい。ポリマー中に
ゲル分が多量に含まれると、膜が不均一な厚みを持つた
め、応力集中を生じて疲労破壊に至ったり、あるいは、
膜の表面に凹凸ができ、この凹凸が血液中での使用に際
して血栓の生成を促すこともある。このような観点か
ら、本発明で使用するポリウレタン系ポリマーは、ゲル
分の含有率が通常30重量%以下、好ましくは10重量
%以下、より好ましくは5重量%以下であることが望ま
しい。
【0027】本発明において、ポリマー中のゲル分の含
有率は、次の測定法により得られる値である。約5gの
ポリマーを正確に秤とり、これを400メッシュの金網
にのせ、静かに100mlのテトラヒドロフランまたは
ジメチルホルムアミド中に浸漬し、室温にて24時間放
置後、金網を静かに引き上げ、金網上に残った不溶解ゲ
ルを充分乾燥した後に計量し、元のポリマーの重量に対
する重量分率を算出する。
【0028】ポリウレタン系ポリマーを所定形状に製膜
した後架橋して得られる架橋フィルムは、ゲル分の含有
率が40重量%以上であることが必要である。ゲル分の
含有率が40重量%未満であると架橋の度合いが低く、
充分な耐摩耗性改善効果を得難い。架橋フィルムのゲル
分の含有率は、好ましくは45重量%以上である。な
お、本発明の架橋フィルムは、製膜した後に架橋してい
るため、ゲル分の含有率が高くても、円滑な表面を持っ
ている。
【0029】また、本発明のバルーン部分を形成する架
橋フィルムは、初期100%モデュラスが通常95kg
/cm2以上、好ましくは100kg/cm2以上、より
好ましくは110kg/cm2以上であることが望まし
い。初期100%モデュラスが95kg/cm2未満で
は、架橋処理を行なっても、耐摩耗性が不充分となり易
い。初期100%モデュラスの上限は、特に限定されな
いが、通常200kg/cm2以下である。
【0030】本発明において、初期100%モデュラス
は、JIS K−6301にしたがって測定した値であ
る。初期とは、応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用
い、JIS K−7113の引張弾性率の計算法にした
がって算出したものであることを意味する。
【0031】本発明のバルーンカテーテルにおけるバル
ーン部分の膜厚は、所望により適宜定めることができる
が、充分な機械的強度、耐摩耗性および駆動性を得るに
は、通常0.03〜1.00mm、好ましくは0.05
〜0.50mm、より好ましくは0.08〜0.20m
m程度とすることが望ましい。
【0032】
【実施例】以下、本発明について、実施例および比較例
を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施
例のみに限定されるものではない。
【0033】なお、物性の測定方法は、以下のとおりで
ある。 〈数平均分子量(Mn)〉GPC法により求めた。測定
条件は、以下のとおりである。 カラム: 昭和電工社製 A−80M 2台およびA−
802 1台を全て直列に接続した。 溶 媒: テトラヒドロフラン 流 速: 1.2ml/分 温 度: 40.0℃ 試料濃度:0.5重量% 注入量: 200μl 検出器: UV 250nm 分子量校正: 標準ポリエチレン データ処理: 日本分光社製 TRI ROTOR−V 〈初期100%モデュラス〉JIS K−6301にし
たがって測定した。
【0034】〈重量損失〉各ポリマーから作成したフィ
ルムについて、図1および図2に示す摩耗装置を用いて
摩耗試験後の重量損失を測定した。図1〜2中、石こう
ロール1は、石こうの塊を旋盤で削ってロール状に成形
した後、その表面を400番のサンドペーパーでこすっ
て滑らかに仕上げたものであり、直径D1.6または
0.8cm、長さ10cmのロールである。この石こう
ロールに試料フィルム2を図1〜2のように載せ、フィ
ルムの一方の端に重りをかけ、他端を固定する。
【0035】ここで、Wを重りの荷重(kg)、A(フ
ィルムの幅L×厚みt)をフィルムの断面積(c
2)、S(幅L×π/4×D)をロールとフィルムの
接触面積(cm2)とすると、フィルムにかかる張力T
および圧力Pは、次式により求めることができる。 T=W/A(kg/cm2) P=√2W/S(kg/cm2
【0036】そこで、張力T=7kg/cm2、圧力P
=0.2kg/cm2の条件となるように、回転速度2
1cm/secで、石こうロールをフイルムが切断する
まで回転させた。ここで、これらの張力および圧力の条
件は、実際のバルーンカテーテル駆動時におけるバルー
ン拡張末期にバルーンに働く力とほぼ同じに設定した。
摩耗試験の後、フィルムの摩耗減量を測定し、単位接触
面積および単位時間当たりの重量損失(mg/cm2
min)を算出した。
【0037】〈ゲル分の含有率〉約5gのポリマーを正
確に秤とり、これを400メッシュの金網にのせ、静か
に100mlのテトラヒドロフラン中に浸漬し、室温に
て24時間放置後、金網を静かに引き上げ、金網上に残
った不溶解ゲルを充分乾燥した後に計量し、元のポリマ
ーの重量に対する重量分率を算出した。
【0038】[合成実験例]以下の材料を用いて、各種
ポリウレタンを合成した。 ポリウレタンの材料 <ポリイソシアネート>4,4′−ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI) <ポリオール> ポリテトラメチレンエーテルグリコール(TMG) 重量平均分子量(Mw)= 650(保土ケ谷化学工業
社製) ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG) 重量平均分子量(Mw)= 250(独 バイエル社
製) ポリエチレンアジペート(AD) 重量平均分子量(Mw)= 500(独 バイエル社
製) <鎖延長剤>1,4−ブタンジオール
【0039】ポリウレタンの合成 〔合成例(1)〕攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導
入口を備え良く乾燥した反応器に、MDI(10g、4
0ミリモル)、各種ポリオール(20ミリモル)、およ
びジメチルスルホキシド(DMSO)100mlを導入
し、窒素ガス雰囲気下で、約100℃に急速に加熱し、
3時間反応させた。次いで、反応液を室温にまで冷却
し、1,4−ブタンジオールを20ミリモル添加し、1
時間攪拌した。
【0040】反応液を大量の水中に注ぎ、生成したポリ
マーを沈殿させた。水洗を数回繰り返した後、ワーリン
グ・ブレンダーで細断し、80℃のエアーオーブン中で
乾燥してポリウレタン(No.1)を得た。
【0041】〔合成例(2)〕MDIのモル比を10%
上げたこと以外は、合成例(1)と同様にして不完全ポ
リウレタン(No.2)を得た。
【0042】〔合成例(3)〕ポリオールとしてTM
G)とADを用いたこと以外は合成例(1)と同様にし
て不完全ポリウレタン(No.3)を合成した。
【0043】[実施例1]前記合成実験で得られた不完
全ポリウレタンNo.2およびNo.3をテトラヒドロ
フランに溶解し、得られた溶液中にバルーン形状の金型
を浸漬して、常法によりバルーンを製膜した。
【0044】かくして得られたバルーン(フィルム)に
ついて、物性を測定した。また、これらのフィルムを8
5℃にて1時間加熱して架橋したのち、得られた架橋フ
ィルムについて同様に物性を測定した。さらに、比較の
ため、市販品のIABPに用いられているポリウレタン
製バルーン、A社製およびM社製についても物性を測定
した。測定結果について一括して表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】表1から明らかなように、不完全ポリウレ
タンを用いて製膜した後、加熱架橋した本発明例の架橋
フィルム(実験番号2および4)は、優れた耐摩耗性を
示すことがわかる。なお、これらの架橋フィルムは、溶
剤に対する不溶解分が多いため、GPCによる数平均分
子量の測定はできなかった。
【0047】[実施例2]前記合成実験で得られたポリ
ウレタンNo.1を用いて実施例1と同様にしてバルー
ンを製膜した。また、得られたバルーン(フィルム)を
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートのテトラ
ヒドロフラン溶液(濃度4重量%)に、5秒間または3
0秒間浸漬した後、105℃で2時間加熱して架橋し
た。未架橋フィルムおよび架橋フィルムの物性について
表2に示す。
【0048】
【表2】 *1:MDIのTHF溶液中に5秒間浸漬した後、加熱
架橋したもの。 *2:MDIのTHF溶液中に30秒間浸漬した後、加
熱架橋したもの。
【0049】表2から明らかなように、架橋フィルム
(実験番号8および9)は優れた耐摩耗性を有している
ことがわかる。なお、これらの架橋フィルムは、溶剤に
対する不溶解分が多いため、GPCによる数平均分子量
の測定はできなかった。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、バルーン部分の破壊防
止効果が顕著に優れたバルーンカテーテルが提供され
る。本発明のバルーンカテーテルは、そのバルーン部分
が実際の駆動中に生じる血管中の石灰化沈着物と擦り合
わされることによる摩耗が抑制されるため、特に大動脈
バルーンパンピング用のバルーンカテーテルとして好適
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する摩耗装置およびその使用方法
を示す略図である。
【図2】図1の摩耗装置の断面略図である。
【符号の説明】
1 石こうロール 2 フィルム L フィルムの幅 t フィルムの厚み W 荷重 D ロールの直径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 29/00 A61M 25/00 410

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリウレタン系ポリマーを所定形状に製
    膜した後、架橋してゲル分の含有率を40重量%以上と
    した架橋フィルムからなるバルーン部分を有することを
    特徴とするバルーンカテーテル。
  2. 【請求項2】 架橋フィルムが、ポリウレタン系ポリマ
    ーとして残存イソシアネート基を含有する不完全ポリウ
    レタンを用い、所定形状に製膜した後、加熱架橋したも
    のである請求項1記載のバルーンカテーテル。
  3. 【請求項3】 架橋フィルムが、ポリウレタン系ポリマ
    ーを所定形状に製膜した後、ポリイソシアネートを含む
    溶媒中に浸漬処理し、然る後、加熱して架橋したもので
    ある請求項1記載のバルーンカテーテル。
  4. 【請求項4】 架橋フィルムの初期100%モデュラス
    が95kg/cm2以上である請求項1ないし3のいず
    れか1項記載のバルーンカテーテル。
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