JP3093056B2 - ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子dnaを含有する形質転換体による有機酸の製造法 - Google Patents

ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子dnaを含有する形質転換体による有機酸の製造法

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JP3093056B2
JP3093056B2 JP04306663A JP30666392A JP3093056B2 JP 3093056 B2 JP3093056 B2 JP 3093056B2 JP 04306663 A JP04306663 A JP 04306663A JP 30666392 A JP30666392 A JP 30666392A JP 3093056 B2 JP3093056 B2 JP 3093056B2
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ニトリラーゼをコード
する遺伝子を組み込んだ組換え微生物を利用した有機酸
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より微生物を用いて、芳香族若しく
は脂肪族ニトリルを光学特異的若しくは非特異的に水和
又は加水分解し、各種のアミドやカルボン酸を工業的に
生産する方法に関する検討が多くなされている。例えば
特開昭63-222696号公報では、Pseudomonas属、Arthroba
cter属、Aspergillus属、Penicillium属、Cochliobolus
属、又はFusarium属に属する微生物を用いてα- ヒドロ
キシニトリルからα- ヒドロキシカルボン酸を製造する
方法が;特開平1−132392号公報では、Alcaligenes
の微生物により、アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル、クロトノニトリル、ベンゾニトリルを加水分解し、
相当するモノカルボン酸を生産する方法が; 特開平2-84
198号公報では、Alcaligenes属、Pseudomonas属、Rhodo
pseudomonas属、Corynebacterium属、Acinetobacter
属、Bacillus属、Mycobacterium属、Rhodococcus属、又
Candida属に属する微生物をラセミ体のα−置換ニト
リル、又はα−置換アミドに作用させて、光学活性を有
するα- 置換カルボン酸を製造する方法等が; さらに、
マンデロニトリル又は青酸とベンズアルデヒドに対して
ニトリル基を不斉加水分解する活性を有する微生物を作
用させ、原料のマンデロニトリル又は青酸とベンズアル
デヒドのほぼ全量を一方の光学活性マンデル酸に変換す
る方法が、特開平 2-69666号公報、特開平 4-99495号公
報、及び特開平 4-99496号公報に開示されている。
【0003】しかし、これらの微生物の多くが直ちに工
業的に利用可能なほどの加水分解、又は水和活性を有し
ているとは必ずしも言えず、当該微生物に由来する酵素
活性を工業利用が可能なレベルまでに上昇させるために
は、培養条件や活性誘導条件等についての煩雑で長時間
の検討が必要とされるという課題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明が解決す
べき課題は、ニトリラーゼの作用を基に各種のカルボン
酸を工業的に効率良く生産し得る微生物を用いた生産方
法の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題の
解決のために鋭意検討した結果、ニトリラーゼをコード
する遺伝子を組み込んだ組換え微生物を利用すること
で、上記の課題を解決し得ることを見出し本発明を完成
した。すなわち本発明は、図2で示されるアミノ酸配
列、又は塩基配列を有し、ニトリラーゼ活性を有するポ
リペプチドをコードする遺伝子DNA をベクターに組み込
んだ組み換え体DNA で形質転換された形質転換体を培地
に培養し、これにより得られるニトリラーゼの作用によ
り、一般式(1)
【0006】
【化3】
【0007】〔式中、R1置換又は無置換のフェニル基、
ナフチル基、インドール基、チオフェン基、ピリジル
基、若しくはシクロヘキセニル基を表し、R2は水素若し
くはヒドロキシル基を表す。〕 で示される化合物のニ
トリル基を加水分解し、一般式(2)
【0008】
【化4】
【0009】〔式中、R1は置換又は無置換のフェニル
基、ナフチル基、インドール基、チオフェン基、ピリジ
ル基、若しくはシクロヘキセニル基を表し、R2は水素若
しくはヒドロキシル基を表す。〕で示されるカルボン酸
と等モルのアンモニアに転換することを特徴とする有機
酸の製造法を提供するものである。以下、本発明につい
て詳細に説明する。
【0010】Alcaligenes faecalis JM3〔微工研菌寄
第13277 号、Mauger,J.et a l.,Arch.Microbiol.155,1
(1990),Nagasawa,T.,et al.,Eur.J.Biochem.194,765(19
90)〕等、新規なニトリラーゼであるアリルアセトニト
リラーゼ(Arylacetonitrilase)を保有しており、当該酵
素はアリルアセトニトリル(Arylacetonitrile)を特異的
に、相当するカルボン酸に加水分解する活性を有してい
ることが知られている。
【0011】本発明は、上記ニトリラーゼをコードする
遺伝子をクローン化した形質転換体の調製を企図して、
次いで当該形質転換体において発現されるニトリラーゼ
活性により、上記の加水分解反応の効率的な進行を実現
することを特徴とする方法である。 A.先ず、ニトリラーゼをコードする遺伝子のクローニ
ング及び形質転換体の調製について説明する。 (1) ニトリラーゼの精製と部分的アミノ酸配列の決定 精製の対象となるニトリラーゼは、Alcaligenes faecal
is JM3を培養して、細胞内より当該酵素を分離すること
により入手することができる。
【0012】なお、上記培養に用いる培養培地には誘導
剤を添加することがアリルアセトニトリラーゼを誘導す
る目的で必要である。かかる誘導剤としては、例えばイ
ソバレロニトリル、n-ブチロニトリル、2-シアノピリジ
ン等を挙げることができる。培養後の菌体からのニトリ
ラーゼの抽出・精製は、当該酵素の物理・化学的性質を
利用した各種の処理操作に従って行うことができる。具
体的には例えば、超音波処理等により菌体を破砕した後
に、硫安沈澱等の塩拆処理、限外ろ過、ゲルろ過クロマ
トグラフィー、液体クロマトグラフィー、遠心分離、電
気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、透析法等
を単独又は適宜組み合わせて採用することができる。
【0013】このようにして、抽出されたニトリラーゼ
の部分アミノ酸配列は、通常公知の方法、例えばエドマ
ン分解法等により決定することができる。また、市販の
プロテインシークエンサーを用いて決定することも可能
である。また、かかるアミノ酸配列の決定は得られたア
リルアセトニトリラーゼを蛋白加水分解酵素で処理する
ことにより、末端配列のみならず、中間部分のアミノ酸
配列をも決定することが可能である。 (2) ニトリラーゼ遺伝子を組み込んだ形質転換体の調製
及びニトリラーゼ遺伝子の制限酵素地図の作成 ニトリラーゼ遺伝子を組み込んだ形質転換体の調製をす
るために、ニトリラーゼ生産菌から全DNA を抽出し、ニ
トリラーゼ遺伝子のクローニングを行う。
【0014】全DNA の抽出は、エタノール沈澱法等の通
常公知の方法に従って行うことができる。さらにかかる
全DNA を通常公知の方法に従い、遺伝子ライブラリーを
調製する。すなわち、超音波や制限酵素等によって調製
したDNA 断片を、遺伝子ライブラリー調製用ベクターに
組み込み、当該ベクターを適当な宿主に導入して遺伝子
ライブラリーを調製する。
【0015】なお、上記の遺伝子ライブラリー調製用ベ
クターとしては、pBR322、pUC19 、pAT153、pMP9、pHC6
24、pKC7等のプラスミドベクター;λgt11( 東洋紡績社
製)、Charon4A(Amersham 社製) 等のファージベクター
等を例示することができる。また、宿主としては、上記
ベクターの性質に対応した宿主、例えばpBR322やpUC19
に対してはE.coli JM105株、E.coli JM109株等の大腸菌
を挙げることができる。
【0016】ベクターへのDNA の組み込み方法や宿主へ
のベクターの導入方法は、通常公知の方法に従って個別
的に行うことができる。この際に用いる制限酵素、合成
リンカー等は、市販品を用いることが可能であり、また
合成リンカーを個別的にDNAシンセサイザー等によって
調製することができる。このようにして調製した遺伝子
ライブラリーから、ニトリラーゼ遺伝子を含むクローン
を選択する。かかる選択方法としては、例えばコロニー
ハイブリダイゼーション法等の通常公知の方法に従って
行うことができる。また、かかるクローンの選択に用い
るプローブ等は、企図する選択方法に応じて通常公知の
方法によって調製することができる。
【0017】なお、上記(1) で決定した部分的アミノ酸
配列に対応する塩基配列のプライマーを調製して、事前
にニトリラーゼ遺伝子をPCR 法(Saiki,et al.,Science,
239,487 〜491(1988))によって増幅させて、所望のクロ
ーンを選択し得る確率を向上させることもできる。ニト
リラーゼ遺伝子の制限酵素地図の作成は、選択したクロ
ーンのDNA を抽出してこれに、種々の制限酵素を作用さ
せてその制限断片を電気泳動等に付してその鎖長を検討
することにより行うことができる。
【0018】調製したニトリラーゼ遺伝子の塩基配列の
決定は、M13 ファージを用いるジデオキシヌクレオチド
鎖終結法(Messing,J. &Vieira,J.,Gene,19,269-276(19
82)等によって行うことができる。本発明において用い
る形質転換体は、培養することによってニトリラーゼ遺
伝子を発現させることができる限り特に限定されるもの
ではない。発現用ベクターへのニトリラーゼをコードす
る遺伝子の組み込みに際しては、ニトリラーゼの構造遺
伝子の他に、ニトリラーゼを発現させるためのプロモー
ター等を当該構造遺伝子の上流に相当する部分への組み
込みを企図することができる。 B.次に、このようにして調製した形質転換体を用いた
アリルアセトニトリル基を有する物質の有機酸への加水
分解方法について説明する。
【0019】かかる加水分解方法は、以下に示す5 通り
の態様に分けることができる。 アリルアセトニトリルを培地成分として含む培地中
で、前記形質転換体を培養して、当該アリルアセトニト
リルを有機酸に加水分解する態様。 当該形質転換体を通常の培地中で培養後に集菌し、こ
の形質転換体にアリルアセトニトリルを接触させて、当
該アリルアセトニトリルを有機酸に加水分解する態様。 当該形質転換体を通常の培地中で培養後に集菌し、こ
の形質転換体を固定化して、当該固定化形質転換体にア
リルアセトニトリルを接触させて、当該アリルアセトニ
トリルを有機酸に加水分解する態様。 当該形質転換体を通常の培地中で培養後に、当該培養
物からニトリラーゼを分離して、このニトリラーゼにア
リルアセトニトリルを接触させることにより、当該アリ
ルアセトニトリルを有機酸に加水分解する態様。 当該形質転換体を通常の培地中に培養後に、当該培養
物からニトリラーゼを分離して、このニトリラーゼを固
定化して、当該固定化ニトリラーゼにアリルアセトニト
リルを接触させて、当該アリルアセトニトリルを有機酸
に加水分解する態様。
【0020】なお、本発明方法の加水分解の対象となる
アリルアセトニトリルとしては、例えば2-チオフェンア
セトニトリル、3-チオフェンアセトニトリル、3-インド
ールアセトニトリル、ベンジルシアニド、p-クロロベン
ジルシアニド、m-クロロベンジルシアニド、o-クロロベ
ンジルシアニド、p-トイルアセトニトリル、p-フルオロ
ベンジルシアニド、p-ブロモベンジルシアニド、p-アミ
ノベンジルシアニド、p-ニトロベンジルシアニド、2-ピ
リジンアセトニトリル、3-ピリジンアセトニトリル、1-
ナフチルアセトニトリル、1-シクロヘキセニルアセトニ
トリル、マンデロニトリル、又はイソバレロニトリル等
を挙げることができる。
【0021】上記態様において、形質転換体は通常の培
養条件で培養する。ここでいう通常の「培養条件」と
は、形質転換体の性質に応じた培地成分、培養温度、培
養時間、通気性等の条件のことを意味するものである
が、この際ニトリラーゼの誘導剤として、イソバレロニ
トリル、n-ブチロニトリル、2-シアノピリジン等の誘導
剤の添加が必要である。これらの誘導剤の添加量は、通
常は培地に対して0.01〜1%程度を添加するのが適当で
ある。
【0022】微生物の培養を行った培養物からのニトリ
ラーゼの抽出・精製は、当該酵素の物理・化学的性質を
利用した各種の処理操作に従って行うことができる。具
体的には、例えば培養液から集菌した菌体を超音波処理
等により破砕した後に、硫安沈澱等の塩拆処理、限外ろ
過、ゲルろ過クロマトグラフィー、液体クロマトグラフ
ィー、遠心分離、電気泳動、アフィニティークロマトグ
ラフィー、透析法等を単独若しくは適宜組み合わせて採
用することができる。
【0023】菌体及び酵素の固定化方法としては、通常
公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば
ポリアクリルアミド等のゲルを用いる包括法等を挙げる
ことができる。菌体、酵素並びにこれらの固定化物とア
リルアセトニトリルの接触方法は、有機酸への変換とい
う所期の効果を奏することができる限りにおいて特に限
定されず、懸濁法、カラム法、回分法、連続法等の方法
を適宜選択することができる。
【0024】得られた有機酸は、通常公知の方法で分離
・精製することができる。具体的には、濃縮、晶拆、有
機溶媒による抽出等の手段を挙げることができる。
【0025】
〔参考例〕
(1)ニトリラーゼの精製と部分的アミノ酸配列の決定Alcaligenes faecalis JM3株を培地( 酵母エキス0.2g、
ポリペプトン0.2g、グルタミン酸ナトリウム13g 、大豆
加水分解物FM(味の素)7.5g 、グルコース10g、FeSO4
7H2O 10mg 、MgSO4 ・7H2O 0.5g 、KH2PO4 2g 、L-ヒス
チジン1g、L-メチオニン1g、イソバレロニトリル1.5ml
/L 水道水 (pH7.7)) で28℃下で24時間培養後、集菌・
洗浄して、4.88g(乾燥菌体/L培養液) の菌体を得た。
当該菌体を30%(w/v) プロパンジオール、10mMジチオ
スライトールを含むリン酸緩衝液(pH7.0) 中で超音波破
砕して、これを遠心分離(15000×g,30分) に付して、得
られた上清を硫安分画(30 〜55%) 、フェニルセファロ
ースCL-4B 、オクチルセファロースCL-4B によりニトリ
ラーゼを均一になるまで精製した。なお、かかる精製方
法は、Jacques,M.等の方法(Eur.J.Biochem.,194,765(19
90))に従った。
【0026】当該精製酵素からのニトリラーゼのペプチ
ド断片の取得は、当該精製酵素を20%トリクロロ酢酸で
変性し、L-( トシルアミド-2- フェニル) エチルクロロ
メチルケトンで処理したトリプシンにより消化してペプ
チド断片とした後に、ODS(C1 8)カラムを用いた液体クロ
マトグラフィーにより当該ペプチド断片を分画・分取し
た。
【0027】ニトリラーゼのN-末端アミノ酸配列( 配列
番号1) と、上述の方法で得たペプチド断片のアミノ酸
配列( 配列番号2) は、アプライドバイオシステム社製
のプロテインシークエンサーを用いてエドマン分解法に
より決定した。 (2)ニトリラーゼをコードする遺伝子をスクリーニン
グするためのプローブの調製 N-末端アミノ酸配列( 配列番号1) のセンスストランド
に対応するオリゴヌクレオチドプライマー( 配列番号
3) とトリプシン処理で得られたペプチド断片のアミノ
酸配列( 配列番号2) のアンチセンスストランドに対応
するオリゴヌクレオチドプライマー( 配列番号4、配列
番号5、配列番号6、及び配列番号7) を各々合成し
た。
【0028】Alcaligenes faecalis JM3株をリゾチーム
処理、ペプチダーゼ(Achromobacter) 処理、及びプロテ
インナーゼK(メルク社製) 処理して、斉藤・三浦の方法
(Biochem.Biophys.Acta,72,619(1963)) で全DNA を調製
した。上記オリゴヌクレオチドプライマー( 各100pmol)
Alcaligenesis faecalis JM3株の全DNA 存在下にPCR
法(1熱サイクル;93 ℃・1分、55℃・2分、70℃・3分
×30回) で「“遺伝子増幅法" 藤永編(1990), 共立出
版」記載の方法に従って増幅反応を行い、560bp の画分
を得た。当該画分中のヌクレオチドをFeinberg,A.P.,等
の方法(Anal.Biochem.,132,6(1983))に従って放射性リ
ン酸を取り込ませ、放射性プローブを調製した。 (3)ニトリラーゼ遺伝子を含むDNA 断片の調製 前記(2)で調製したAlcaligenes faecalis JM3株の全
DNA を数種類の制限酵素で各々切断後、同じく(2)で
調製した放射性プローブを用い、サザンハイブリダイゼ
ーション法(Southern E.M.,J.Mol.Biol.,98,503(197
5)) の変法(40 %(v/v) ホルムアミド、5×SSC(1×S
SC =0.15M Nacl/15mMクエン酸ナトリウム) 、0.1 %
(w/v)SDS、42℃・12時間) に従って目的とする遺伝子
画分の位置を決定した。
【0029】その結果、制限酵素としてSphIを用いた
ときに、4KbDNA断片のみがプローブとの結合性を示すこ
とが判明したので、当該画分を分取した。 (4)DNA 断片のベクターへの挿入と形質転換体の調製 前記(3)で取得したプローブと結合性を示す4Kb 断片
を制限酵素SphIとアルカリフォスファターゼ処理したp
UC19 ベクターにT4DNA リガーゼを用いて双方をアニー
ルした。次に当該ベクターによりE.coli JM105株を「"M
olecular Cloning"second ed.,1989,ed.by J.Sambrook
et al.,Cold Spring Habor LaboratoryPress 」に記載
された方法に従い形質転換を行った。なお、当該形質転
換体はアンピシリン50μg/mlを含む、2×YT寒天培地
( 酵母エキス1g、ペプトン1.6g、NaCl0.5g、寒天1.5g/
100ml 蒸留水) 上で選択した。 (5)組み換え体DNA の選別 前記(3)で調製した放射性プローブを用いて、(4)
で調製した形質転換体の中から、Grunstein,M., 等の方
法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,72,3961(1975))に従い、
コロニーハイブリダイゼーションを行って当該プローブ
との結合性を示す陽性のコロニーを選択した。なお、こ
のハイブリダイゼーションの条件は、(3)に記載した
ハイブリダイゼーションと同一の条件で行った。
【0030】次に、得られた陽性のコロニーより、プラ
スミドをBirnboim,H.C等の方法(Nucleic Acids Res.,7,
1513(1979)) で分離し、これをpNJM20と命名した。 (6)制限酵素地図の作成 上記(5)で調製したpNJM20プラスミドに含まれる4Kbp
SphIDNA 断片の制限酵素地図を作製すると共に、前
記(2)で調製したプローブと結合性を示すDNA 断片の
特定を行った。
【0031】制限酵素MspI、Bgl II、StuI、Pma CI、
SmaI、Eco RV、Hinc II 、及びMluIの制限部位を図1
に示す。当該制限酵素地図のMspIとMluIの制限部位に
挟まれた1727bpのDNA 断片は、上記(2)で調製したプ
ローブとの結合性を示した。 (7)塩基配列の決定Msp IとMluIの制限部位に挟まれた1727bpのDNA 断片の
塩基配列を、Sequenase version2(United States Bioch
mical Corp. 製) を用いて、Sanger,F. 等の方法(Proc.
Natl.Acad.Sci.USA.,74,5463(1977)) に従い決定した。
なお、この際圧縮を最小限にする目的で、M13 を用いた
配列決定時にはdGTPの代わりにDeoxy-ITP 又は2'-Deoxy
-7-deaza GTPを用いた。
【0032】ここで決定した塩基配列を、図2に示す。
当該配列中には、開始コドンである(ATG) と終始コドン
である(TGA) に挟まれたオープンリーディングフレーム
が存在し、かかるオープンリーディングフレームにコー
ドされるアミノ酸は356 個(Mr.38908)であり、明らかに
前記(1)で決定された精製アリルアセトニトリラーゼ
の部分的アミノ酸配列を含むことが判明した。
【0033】また、開始コドンの6bp 上流には典型的な
シャインダルガノ(SD)配列が、さらに、上記終始コドン
の下流には、ヘアピン構造を呈すると考えられる配列が
存在することが明白になった。 (8)以下の実施例に用いた形質転換体の調製 上記(6)で得たMspIとMluIの制限部位に挟まれた17
27bpのDNA 断片をpUC19 に結合し、組み換え体DNA を調
製し、これをpNJM30と命名した。これを用いてそれぞ
れ、E.coli JM105株及びE.coli JM109株を形質転換し、
形質転換体E.coliJM105/pNJM30 及びE.coli JM109/pN
JM30 を調製した。そして、当該形質転換体は、工業技
術院微生物工業技術研究所にそれぞれ微工研菌寄第1327
8 号(FERMP-13278)、及び微工研菌寄第13279 号(FERM P
-13279)として寄託されている。〔実施例1〕形質転換
体を用いたニトリラーゼの発現とニトリル類のカルボン
酸への変換 (1)2-チオフェンアセトニトリルに対する反応と活性
発現条件 E.coli JM105/pNJM30 を2×YT培地で培養する際に、
その培養温度、培養時間、及びIPTG 1mMの添加時期を変
化させて、当該変化によるニトリラーゼ活性の発現に対
する影響を検討した。
【0034】各種条件下で培養した菌体は、10mMリン酸
カリウム緩衝液で洗浄後、活性測定に供した。活性測定
は、Jacques,M.等の方法(Eur.J.Biochem.,194,765(199
0))に従い、5mM 2-チオフェンアセトニトリルを基質と
して10%(w/v) メタノールの存在下、30℃、5〜30分
の反応より生成した2-チオフェン酢酸を液体クロマトグ
ラフィーで定量して行った。
【0035】その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】培養温度は37℃、培養時間は12時間で、ま
たIPTGの添加は、培養初期に行った方が菌体当たりの非
活性が高くなる傾向が見られた。 〔実施例2〕RS- マンデロニトリル又はベンズアルデヒ
ドと青酸に対する反応 E.coli JM109/pNJM30 をIPTG 1mM、アンピシリン20μg
/mlの存在下に、2×YT培地で37℃、15時間振盪培養し
た。集菌後、菌体を20mMリン酸カリウム緩衝液で洗浄
し、以下に示す2種類の反応条件で反応させた。
【0038】a) マンデロニトリルに対する反応性 RS−マンデロニトリルを基質として生成するマンデル酸
の生成速度及び光学純度を測定した。実験条件を以下に
示す。 反応液組成; 全量1ml、50mM リン酸カリウム緩衝液 p
H8.2、100mM 亜硫酸ナトリウム、菌体 OD630=0.12、20
mM マンデロニトリル 反応条件; マンデロニトリルを添加して反応を開始し、
30℃で20分インキュベート後、遠心除菌して反応を停止
した。
【0039】分析法; 生成マンデル酸量を液体クロマト
グラフィーで分析した。 定量分析条件; カラム :SHODEX ODS F511A キャリア :0.2M H3PO4: アセトニトリル=4:1 モニター :208nm 光学純度分析条件; カラム:MCIゲル キャリア:2mM CuSO4: アセトニトリル=4:1 モニター:208nm その結果、マンデル酸の生産活性は、1.6U/OD630/min
(1Uは1μmol マンデル酸が生産される活性) で、光学
純度はR(−) 体が91.2%eeであった。
【0040】b) ベンズアルデヒドと青酸に対する反応
性 RS- マンデロニトリルは、中性・塩基性の極性溶媒中で
ベンズアルデヒドと青酸の間で、解離・平衡状態(Valki
ria,O.,et al.,J.American Chemical Society,98,4201
(1976))をとる性質を有する。青酸とベンズアルデヒド
から、反応液内でマンデロニトリルが生成し、菌体の作
用によりマンデル酸に変換されることが予想されたた
め、青酸とベンズアルデヒドからのマンデル酸の生成の
有無、及び生成マンデル酸の光学純度を測定した。
【0041】反応液組成; 全量1ml、50mM リン酸カリ
ウム緩衝液 pH8.2、100mM 亜硫酸ナトリウム、菌体 OD
630=0.22、9.0mM ベンズアルデヒド、10mM 青酸 反応条件; 菌体を添加して反応を開始し、30℃で2時間
インキュベート後、遠心除菌し、反応を停止した。 分析法; 前記a)の条件に準ずる。
【0042】その結果、全てのベンズアルデヒドが消費
され、8.8mM のマンデル酸が生成した。また、光学純度
は90.5%eeであった。 〔実施例3〕種々のアリルアセトニトリルに対する反応
性 E.coli JM109/pNJM30 を以下に示す種々のアセトニト
リルと反応させ、対応するカルボン酸への変換活性の有
無を検討した。
【0043】用いたアリルアセトニトリル;3-チオフェ
ンアセトニトリル、3-インドールアセトニトリル、ベン
ジルシアニド、p-クロロベンジルシアニド、m-クロロベ
ンジルシアニド、o-クロロベンジルシアニド、p-トイル
アセトニトリル、p-フルオロベンジルシアニド、p-ブロ
モベンジルシアニド、p-アミノベンジルシアニド、p-ニ
トロベンジルシアニド、3-ピリジンアセトニトリル、1-
シクロヘキセニルアセトニトリル、1-シクロヘキセニル
アセトニトリル、1-ナフチルアセトニトリル、及び2-ピ
リジンアセトニトリル 反応液組成; 全量1ml、50mM リン酸カリウム緩衝液 p
H8.2、100mM 亜硫酸ナトリウム、菌体 OD630=0.22、10
%(w/v) メタノール、5mM アセトニトリル 反応条件; 菌体を添加して反応を開始した。30℃で3 時
間インキュベートを行った後、遠心除菌し反応を停止し
た。
【0044】分析法; 液体クロマトグラフィー使用 カラム: SHODEX ODS F511A キャリア: 10mM KH2PO4/H3PO4(pH 2.8)/アセトニト
リル=2:1 モニター: 230nm その結果、94%以上が対応する酸に変換されたニトリル
は、3-チオフェンアセトニトリル、3-インドールアセト
ニトリル、ベンジルシアニド、p-クロロベンジルシアニ
ド、m-クロロベンジルシアニド、o-クロロベンジルシア
ニド、p-トイルアセトニトリル、p-フルオロベンジルシ
アニド、p-ブロモベンジルシアニド、p-アミノベンジル
シアニド、p-ニトロベンジルシアニド、及び3-ピリジン
アセトニトリルであった。
【0045】また、10〜40%変換されたものは、1-シク
ロヘキセニルアセトニトリル、1-ナフチルアセトニトリ
ル、及び2-ピリジンアセトニトリルであった。
【0046】
【発明の効果】本発明により、ニトリラーゼの作用を基
に各種のアミドやカルボン酸を工業的に効率良く生産し
得る微生物を用いた生産方法が提供される。
【0047】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:8 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 起源 生物名:Alcaligenes faecalis 株名:JM3 配列の特徴:アリルアセトニトリラーゼのN 末端アミノ
酸配列 配列 Met Gln Thr Arg Lys Ile Val Arg 8 配列番号:2 配列の長さ:8 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 起源 生物名:Alcaligenes faecalis 株名:JM3 配列の特徴:アリルアセトニトリラーゼのトリプシン消
化ペプチド断片 配列 Gln His Glu Ala Ile His Ile Ala 8 配列番号:3 配列の長さ:23 配列の型: 核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成オリゴヌクレオチド 配列の特徴:配列番号1に示すアミノ酸配列に対応する
塩基配列 配列 ATGCARACSM GVAARATHGT VMG 23 配列番号:4 配列の長さ:32 配列の型: 核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成オリゴヌクレオチド 配列の特徴:配列番号2に示すアミノ酸配列に対応する
塩基配列 配列 GGGCATGCSG CDATRTGDAT SGCCTCRTGC TG 32 配列番号:5 配列の長さ:32 配列の型: 核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成オリゴヌクレオチド 配列の特徴:配列番号2に示すアミノ酸配列に対応する
塩基配列 配列 GGGCATGCSG CDATRTGDAT SGCCTCRTGT TG 32 配列番号:6 配列の長さ:32 配列の型: 核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成オリゴヌクレオチド 配列の特徴:配列番号2に示すアミノ酸配列に対応する
塩基配列 配列 GGGCATGCSG CDATRTGDAT SGCTTCRTGC TG 32 配列番号:7 配列の長さ:32 配列の型: 核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成オリゴヌクレオチド 配列の特徴:配列番号2に示すアミノ酸配列に対応する
塩基配列 配列 GGGCATGCSG CDATRTGDAT SGCTTCRTGT TG 32
【図面の簡単な説明】
【図1】 アリルアセトニトリラーゼ遺伝子の制限酵素
地図。
【図2】 アリルアセトニトリラーゼの全DNA 配列と当
該配列に対応するアミノ酸配列。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI //(C12N 9/78 C12R 1:05) (C12P 7/40 C12R 1:19) (C12P 7/42 C12R 1:19) (C12P 11/00 C12R 1:19) (72)発明者 小林 達彦 京都府京都市左京区浄土寺下馬場町97 (56)参考文献 特開 平3−251192(JP,A) Eur.J.Biochem.,Vo l.194,No.3(1990)p.765− 772 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 7/40 - 11/00 C12N 9/78 C12N 15/55 CA(STN) REGISTRY(STN) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 図2で示されるアミノ酸配列をコードす
    る塩基配列を有し、ニトリラーゼ活性を有するポリペプ
    チドをコードする遺伝子DNAをベクターに組み込んだ組
    み換え体DNAで形質転換された形質転換体を培地に培養
    し、これにより得られるニトリラーゼの作用により、一
    般式(1) 【化1】 〔式中、R1は置換又は無置換のフェニル基、ナフチル
    基、インドール基、チオフェン基、ピリジル基、若しく
    はシクロヘキセニル基を表し、R2は水素若しくはヒドロ
    キシル基を表す。〕で示される化合物のニトリル基を加
    水分解し、一般式(2) 【化2】 〔式中、R1は置換又は無置換のフェニル基、ナフチル
    基、インドール基、チオフェン基、ピリジル基、若しく
    はシクロヘキセニル基を表し、R2は水素若しくはヒドロ
    キシル基を表す。〕で示されるカルボン酸と等モルのア
    ンモニアに転換することを特徴とする有機酸の製造法。
  2. 【請求項2】 前記形質転換体の培養において、誘導剤
    を培養開始時に添加し、培養を37℃で行う請求項1記
    載の有機酸の製造法。
  3. 【請求項3】 図2で示されるアミノ酸配列をコードす
    る塩基配列を有し、ニトリラーゼ活性を有するポリペプ
    チドをコードする遺伝子DNAをベクターに組 み込んだ組
    み換え体DNAで形質転換された形質転換体を培地に培養
    し、これにより得られるニトリラーゼの作用により、ベ
    ンズアルデヒド及び青酸をマンデル酸に転換することを
    特徴とするマンデル酸の製造法。
  4. 【請求項4】 前記形質転換体の培養において、誘導剤
    を培養開始時に添加し、培養を37℃で行う請求項3記
    載のマンデル酸の製造法。
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Eur.J.Biochem.,Vol.194,No.3(1990)p.765−772

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