JP3092014U - 工業用ブラシ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 直線穴や湾曲する小径の交差穴、長穴、
及び、外周面に発生するバリを効率良く除去する工業用
ブラシを提供する。 【解決手段】 一本のブラシで異なるコーナー角度や穴
径に対応できるようブラシ毛材を直線、波付け線、渦巻
状、放射逆円錐状に加工し、毛材の一方端を金属製、あ
るいは樹脂製の取り付け金具に単数本、もしくは、複数
本を１本ずつ一列に整然と金具内径に添って挿入し、ブ
ラシ毛材の拡縮作用が高まるように固着されたブラシ構
造において、そのブラシ毛材に部分的、あるいは全面に
ダイヤモンド砥粒のような高硬度砥粒を被着させてブラ
シには無い研削性・耐熱性・耐薬品性に優れた砥粒の特
性が係合するようブラシ形成してバリ取り効果・磨き効
果をより向上させたものである。

Description

【考案の詳細な説明】 【０００１】 【考案の属する技術分野】 本考案は、一般鋼材から非鉄金属素材に至るまで、鋳造成形時の成形バリや機 械加工後に発生する交差穴部のバリ、及び外周面のエッヂバリを除去しながら表 面仕上げを行う工業用ブラシに関するものである。 【０００２】 【従来の技術】 成形加工後や機械加工後のバリ取りの表面処理手段として、切刃表面にダイヤ モンド粒子等を被覆した刃物ツールを専用機・ロボットに取り付け削り取るケー スや研削メディアの中に加工部品を投入して攪拌除去するバレル処理と毛材の衝 撃作用を利用してバリの除去や表面処理を行うブラシ処理に大別される。 【０００３】 ブラシ処理に関する従来の技術としては、汎用的なホィール型ブラシ・椀型ブ ラシ・底型ブラシや芯線を撚って毛材を固定した捻りブラシ特公昭５２−１０８ ６６２や毛材先端部にダイヤモンド砥粒を付けた特公昭６０−９４２７０がある 。 【０００４】 特殊な処理方法例としては、粘土状の研磨材を加工部品内へ圧力を利用しなが ら押し込み、流動させる事で穴内部のバリを除去する工法や電解液中に陽極、陰 極を設け電圧をかける事によって突起バリ部に電流を集中させて突起部を溶解・ 除去する電解バリ取り工法もある。 【０００５】 【考案が解決しようとする課題】 バリ取りツールと称する工具は、処理目的に応じて各種選択出来る。大径穴内 部の交差穴等の処理であれば、一般的な軸付き小径ホィール型ブラシや芯線を撚 って構成する捻りブラシ特公昭５２−１０８６６２又は、バリ取りツール特開昭 ６０−２２８０７５等が選択できる。 【０００６】 特開昭６０−２２８０７５は、毛材剛性が高い異形の金属線を折り返し固定し た構造の為、たわみの頂点部位でのリーマ効果は大きいが、その他の部位におい ては効果が薄れる問題がある。また、処理箇所が止まり穴の場合には、工具の先 端が邪魔をして目的の穴箇所まで届かない問題がある。 【０００７】 特公昭５２−１０８６６２は、砥粒入りナイロン毛材を芯線で撚って形成され た捻りブラシである。特公昭６０−９４２７０は、ブラシ毛材にダイヤモンド砥 粒を付けた一般的な軸付き小径ホィールである。両ブラシとも穴径よりも１ｍｍ 〜２ｍｍ大きめのサイズでブラシを製作し、穴内部へブラシを強力に挿入しなが ら回転させてバリを掻き取り除去するものである。 ブラシが磨耗し穴径よりもブラシ径が小さくなると掻き取り作用が無くなる為、 バリ取り効果が薄れ使用できなくなる問題がある。 また、ブラシ外径が小径になる程、寿命が短く研削性も低下する構造上の欠点 を有している。 【０００８】 穴内部のバリ取り手段の一つにリーマ工法がある。 内径の面粗さを向上させながら大きいバリを除去するにはリーマ工法も有効な処 理方法であるが、リーマの挿入によって立ち上がっていたバリが交差穴内へ倒さ れ、逆に押込まれる形になりバリが完全に除去できずにシャープエッヂに仕上が る。その為、後工程にブラシ処理が追加されて工程が逆に増加する問題がある。 これらリーマ工法は、直線穴内のみに有効でＳ字形状や湾曲した穴内の処理は 全く対応出来ない問題点を抱えている。 【０００９】 湾曲した穴内やパイプ内面の処理方法としては、煙突ブラシや複数のホィール 型ブラシを連結したブラシが用いられる。 煙突ブラシは、ブラシ毛材を数本の芯線で撚って形成した捻りブラシである構造 上、毛材密度が不足し研削性が低い欠点を抱えている。 ホィール型ブラシをフレキシブルシャフトに連結させて使用した場合、研削性 は向上するが重量が重くなる欠点を有している。 【００１０】 外周面に発生した成形バリの除去方法としては、切刃表面にダイヤモンドをコ ーティング・蒸着・電着した面取りツールが広く認知されているが、特殊鋼材を 使用し刃物に加工してある構造上、弾力性が無く折れ易い特性を持っている。 刃物ツールを高精度なロボットやマシニングに取り付け加工した場合、弾力性 の無い固形の切刃形状ゆえに、複雑な凹凸部分を処理した場合に、微細バリが逆 に発生する問題や使用箇所がワークの外周部に制約されて刃物径よりも狭いコー ナー部には切刃が当たらない欠点がある。また、穴内部の加工を行う場合には、 穴径毎に専用ツールを保有しなければならない課題がある。 【００１１】 特殊な処理方法例として、粘土状の研磨材を部品内部へ圧力を利用して押込み ながら流動させる事で、穴内部のバリを除去する工法や電解液中に陽極、陰極を 設け電圧をかけながら突起部分に電流を集中させて突起部を溶解・除去する電解 バリ取り工法もある。いずれの工法も処理時間を要し、後工程に洗浄が必要な問 題点と必要以外の箇所が磨かれてしまう工法上の欠点に加え凸部分の溶解度合い をコントロールするのが難しい三重の問題を抱えている。 【００１２】 【課題を解決する為の手段】 一般的に工業用ブラシは、毛材を放射円型状・放射椀型状・底磨型状の形状に 植毛形成し、回転機構を有する専用機械・卓上ボール盤等の主軸部分に装着され て、回転時の衝撃作用であるハンマー効果と毛材剛性によって機械加工バリ・成 形バリの除去や粗し・磨き等の表面処理に用いられている。本考案は、市場要求 が最も多い、小径穴・交差穴・湾曲穴・外周部に発生したバリを短時間に効率良 く除去する手段として、ロープ状毛材及び一本の毛材形状が、直線形状、渦巻形 状、あるいは波形形状をしている毛材の一方端に部分的あるいは全面にダイヤモ ンド砥粒のような高硬度砥粒を被着させた毛材を金属製、あるいは樹脂製の取り 付け金具の内径に添って単数本、もしくは複数本を一列に一本ずつ整然と挿入し 中空き状態で固着形成されたブラシを提供するものである。 本考案のブラシは、特公昭６０−９４２７０のようにワイヤー集合体である底 型ブラシとは異なり、一列に一本ずつ整然と挿入された中空きがために、ブラシ 毛材の拡縮作用が働き、長期間の使用を経ても初期形状が維持できる従来の底型 ブラシには無い特徴がある。また、拡縮作用により一種類のブラシで小径の穴か ら湾曲した異形穴まで複数の穴径と狭いコーナー部を処理できる幅広い用途を有 するブラシを提供するものである。 【００１３】 【考案の実施の形態】 処理ツールとして要望されている点は、一定の押し付け力で一定の切込み量を 維持しながら複雑な形状に微細に追従できる、市販の刃物ツールとは違う新しい バリ取り工具の開発要求が多い。 また、部品の外周面には大小様々な成形バリや湯口が点在している為、剛性と 研削性に加え相反する柔軟性が要求されものである。これらの要求を網羅できる のがブラシであり、捻れに強い毛材・形状・毛材剛性・植毛配列並びに用途別に 毛先の広がり角度を考慮した、新しい発想のブラシを形成する必要がある。 【００１４】 本考案は、ブラシが持つ弾力作用と外径拡縮特性に着目し、ブラシには無いダ イヤモンド砥粒のような高硬度砥粒を被着し研削性・耐熱性・耐薬品性を係合さ せて、外周部及び、湾曲した穴や交差穴内部で回動させながらバリ発生部分で的 確に摺動する作用を増強させた毛材を金属製、あるいは樹脂製の取り付け金具の 内径に添って単数本、もしくは複数本を一列に一本ずつ整然と挿入し中空き状態 で固着形成したバリ取り効果・研磨効果の高い工業用ブラシである。 【００１５】 被着手段としては、蒸着・コーティング等もあるが結合強度・耐寿命の観点か ら電着工法が好ましい。更に砥粒が成長し続ける電着工法の優れた特性を活用し て、ブラシ先端部に毛材とは異なる太さや異形状に砥粒を被着させてハンマー効 果をより増大させる事ができる。 【００１６】 ブラシは、ロープ状毛材及び一本の毛材形状が、直線形状、渦巻形状、波形形 状をしている毛材の一方端に、部分的、あるいは全面にダイヤモンド砥粒のよう な高硬度砥粒を被着させ、先端部のみ折り曲げて放射逆円錐状のブラシに植毛形 成する事もできる。 【００１７】 毛先の広がり角度は、ブラシの毛材線径・形状に合わせて０度〜３０度に設定 する必要があるが、大小様々なバリが発生する成形バリを除去する場合には、太 い線径か捻れ強度の高い平線を毛材に選択し、５度〜１０度前後の毛先広がり角 度でブラシを形成する事が望ましい。 【００１８】 図１は、ブラシ毛材に砥粒を均一に被着させてメッキ層で強固に固着した断面 図である。 被着形状は、毛材形状に合わせて球状・異形状と形状を問わず被着する事がで き、被着部位も部分的、あるいは全体と任意に選択できる。また、被着の成長特 性を活用し砥粒だけで異形状に被着することもできる。 図１ａ〜ｂは、毛材形状と部分的に被着させた場合の実施参考例である。 【００１９】 図２は、ブラシ毛材複数本を一列に一本ずつ全植え配列で植毛し、中空き状態 でブラシを形成した全体図である。その他、植毛配列はピッチ植えなど用途別に 選択する事ができる。 図２ａは、ブラシ毛材に長短の差を設け、間隔を空けて植毛形成した実施参考例 である。 【００２０】 図３は、ブラシ毛材の固着方法例の正面図である。 プレスカシメ工法によって固着されたブラシであるが、その他の実施例として接 着材を用いて固着する事ができる。何れの固着方法を選択しても問題無いが、外 周バリ・面取り目的に使用する場合には、プレスカシメ式の方が好ましく、小径 の穴内部のバリ取り目的に使用する場合には、接着工法が好ましい。 【００２１】 図４は、放射逆円錐状に植毛形成したブラシの実施例であり、図４ａ〜４ｃは 、ブラシ毛材を渦巻状に加工しブラシを固着、形成した実施参考例である。渦巻 形状は、右巻き・左巻き・両巻き・部分巻き・巻き径違い等の渦巻加工が選択で き、渦巻部分には、ダイヤモンド砥粒のような高硬度砥粒を部分的・全面的に被 着する事ができる。 図４ｄは、渦巻状に加工した毛材に部分的に砥粒を被着させて毛材の巻き径と 砥粒被着部の径に外径差を設けた実施参考例である。 【考案の効果】 【００２２】 小径の交差穴部に発生したバリを除去するには、図２のブラシが有効である。 それは、図７のバリ取り効果図に示すように、毛材先端に被着されたダイヤモン ド砥粒のような高硬度砥粒が外径拡縮作用により穴内部でバリと激しく衝突・接 触する事から、交差穴部に発生したバリを綺麗に除去する事ができるからである 。 【００２３】 穴径が小さくて特に処理が難しいφ３．５ｍｍ以下の小径の交差穴に対応でき る技術として電解研磨工法が上げられる。しかしながら、電解研磨工法の間題点 は、必要以外の場所まで溶解する点や洗浄・廃液処理の問題を抱えていた。新た な処理技術を模索していたユーザーに本考案のブラシを提供し量産テストを実施 した結果、バリ取り効果が確認されて、電解研磨工法からブラシ処理工法に工程 を変更した実績が得られている。 【００２４】 毛材線径φ０．８ｍｍ、毛丈３０ｍｍ、毛先外径φ４ｍｍのブラシを形成し、 社内テストにおいて毛先外径が変化する条件を確認した所、２０，０００ｒｐｍ の回転数を与えても大きな外径変化が見られないのに対し、毛丈が６０ｍｍの場 合、８，０００ｒｐｍの回転数でブラシ外径がφ８０ｍｍまで広がるテスト結果 が得られている。 【００２５】 ＃３２０ダイヤモンド砥粒を被着した図２のブラシを用い、材質的にねばいＳ ＣＭ−４１５材の部品に発生した交差穴部のバリを５，０００個処理した後にブ ラシの表面状態を電子顕微鏡によって確認した結果、砥粒の脱粒や先端が磨耗し た兆候も無い事から、寿命効果としても耐久性に優れたブラシ評価が得られてい る。 【００２６】 図４のように放射逆円錐状に植毛形成したブラシは、特開昭６０−２２８０７ ５とは異なり、毛材両側が固着されない構造から穴内部への挿入・取出しが容易 で弾力性と高反発力を有している為、低回転で回動させてもバリ発生部で的確に 摺動し良好なバリ取り効果・研磨効果を得る事ができる。 【００２７】 内径を処理する別工法としてリーマ工法もある。リーマ工法の場合には、スト レート穴しか処理できない不便さと穴径に合わせて複数のリーマを在庫保有しな ければならない問題点がある。作業時には、処理する穴径に合わせ、その都度、 リーマを交換する必要があるのに対し本考案のブラシは、任意の広がり径が得ら れるようにロープ状毛材及び一本の毛材形状が、直線形状、渦巻形状、あるいは 波形形状のものであって、毛材の一方端を金属製、あるいは樹脂製の取り付け金 具の内径に添って単数本、もしくは、複数本を一列に一本ずつ整然と挿入し固着 した構造ゆえに対象となる穴径が変わってもブラシを交換する必要が無いので作 業効率が向上する。 【００２８】 渦巻状に加工したブラシ毛材に、高硬度砥粒を被着させてブラシ形成されたブ ラシは、図５のような湾曲・Ｓ字状の穴壁面に添って容易に挿入でき、渦巻方向 と逆方向にブラシを回転させる事で巻き径が微小ながら径大に変化し穴内壁に密 着しながら摺動する動きが得られる。この為、穴内壁の面粗さが向上し、バリ取 り効果とリーマ作用が同時に得られた。 【００２９】 図４ｄに示す様に、渦巻状に加工された毛材にダイヤモンド砥粒のような高硬 度砥粒を部分的に被着させる事により、毛材の巻き径と砥粒被着部との径に外径 差ができる為、交差穴内部へ砥粒が入り込み易くなり、倒れていたバリが掻き出 され、よりバリ取り効果が高くなる効果が得られた。 【００３０】 図６、図６ａは複雑で凹凸のある外周面を刃物で処理した場合と本考案のブラ シを用いて処理した場合の違いを現した図である。 刃物の場合、コーナー角度の大きさに合わせた最小径のツールサイズを選択し ないと処理出来ないコーナー部分が発生する。また、バリ取りや面取り作業を実 施した場合、外周処理面は鋭角に削られ微細バリが発生する。本発明のブラシで 処理した面は、ブラシ毛材１本１本が独立した動作でフレキシブルに動き複雑な 凹凸形状に添ってなぞりながらバリを叩き落とすかのように処理する為、滑らか な仕上がり面が得られる。 【００３１】 外周面に発生したバリを除去するブラシの毛先広がり角度は、ブラシの毛材線 径・形状に合わせて０度〜３０度に設定する必要があるが、大小様々なバリが発 生する成形バリを除去する場合には、太い線径か捻れ強度の高い平線を毛材に選 択し、５度〜１０度前後の毛先広がり角度でブラシを形成する事が望ましい。 人間の感触的な作業性を確認する為、上記ブラシをエアーツールに取り付け手 作業によるバリ取りを行った所、複雑な外周面に対しても安定した押し付け力で 追従する事ができ、バリに引っかかっても毛材が緩衝材となって緩和してくれる 作用がある為、弾き飛ばされる事もなく安全にバリ取り作業が行えた。また、ロ ボットに取り付けて同様の実験を行った結果、過負荷防止機構が働かない程度の 低衝撃・低負荷である事が確認され仕上がり面も手作業より均一に仕上がる結果 が得られた。

【図面の簡単な説明】 【図１】 本考案のブラシ毛材断面図 【図１ａ】 砥粒を部分被着した単線外観図 【図１ｂ】 異形状に部分被着した単線外観図 【図２】 一列配置植毛のブラシ外観図 【図２ａ】 植毛ピッチ例（３本措き） 【図３】 代表的なブラシ固着方法図 【図４】 放射逆円錐型ブラシ形成図 【図４ａ】 渦巻状ブラシ形成図 【図４ｂ】 渦巻参考例１（両巻き） 【図４ｃ】 渦巻参考例２（巻き径違い） 【図４ｄ】 渦巻参考例３（部分被着） 【図５】 湾曲穴挿入断面図 【図６】 外周バリ取り参考図 【図６ａ】 処理面比較拡大図（刃物／ブラシ処理） 【図７】 交差穴バリ取り効果図

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】ロープ状毛材及び一本の毛材形状が、直線
   形状、渦巻形状、あるいは波形形状のものであって、毛
   材の一方端を金属製、あるいは樹脂製の取り付け金具の
   内径に添って単数本、もしくは、複数本を一列に一本ず
   つ整然と挿入し固着されたブラシにおいて、その毛材の
   部分的、あるいは全面にダイヤモンド砥粒のような高硬
   度砥粒を被着させた事を特徴とした工業用回転ブラシ。