JP3089432B2 - 炭素電極ならびにそれを用いるhf含有溶融塩の電解方法及び装置 - Google Patents
炭素電極ならびにそれを用いるhf含有溶融塩の電解方法及び装置Info
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Description
用いるHF含有溶融塩の電解方法及び電解装置に関す
る。更に詳しくは、機械的強度に優れているのみならず
化学的に安定で、HFを同伴するフッ素雰囲気に曝露さ
れるHF含有溶融塩電解において、割れの1つの原因であ
ると新しく知見された層間化合物生成が起き難く、電解
操作を安定な状態で行なわしめ、しかも純度の高い製品
を製造するのに有用な炭素電極に関する。本発明はま
た、上記の炭素電極を陽極として用いることを特徴とす
るHF含有溶融塩の電解方法及び装置に関する。
F含有溶融塩の電解方法の代表的な例としてフッ素の電
解製造が挙げられる。フッ素の製造法としては、現在、
約90℃のフッ化カリウムとフッ化水素の混合溶融塩中で
電気分解を行なう中温法が一般に採用されている。
れが広く用いられる理由は、融点付近でHFの蒸気圧が低
く、しかも浴中のHF濃度の変動によっても浴の融点が変
化しにくいことにある。電解槽の陽極としては、金属は
陽極溶解によって使用できないため専ら炭素が電極材と
して用いられている。陰極としては、研究レベルでは、
鉄、スチール、ニッケル、モネル等が用いられるが、工
業的には、入手容易性と経済性から鉄が使用され、通
常、電流密度7〜13A/dm2、浴電圧8.5〜15Vで電解が行な
われる。
電極反応は次のように表わされる。
極には次のような困難な問題が伴うことが知られてい
る。
子部は通常銅製のボルトとナットにより炭素電極の一端
を接合固定しているが、電解中にこの部分で炭素電極の
大きな破壊が起こる。
度が少なく、電解中に、上記の陽極への通電用端子部へ
の固定部分以外の場所でも局部的な崩壊や緩徐な部分的
剥落が発生し、微細な炭素粉を生じ(ここにおいて、
「緩徐な部分的剥落」とは炭素電極が表面よりの炭素粒
子の脱落の形で徐々に損壊していくことを意味する)、
これがフッ素と容易に反応してCF4となり、製品として
のフッ素中に混入する。
素陽極の反応により、表面エネルギーが極めて低いフッ
化グラファイトが生成する。炭素陽極上のフッ化グラフ
ァイトが生成した部分では浴との濡れが悪くなり電気化
学的に不活性となる。電極の有効面積はフッ化グラファ
イトによる電極表面の被覆率の増大によって減少し、真
の電流密度は増大する。これがフッ素電解における陽極
過電圧の主要な原因であり、フッ化グラファイトによる
被覆率が20%を越えると電圧の急上昇が観察され通電不
能となる。この現象は陽極効果と呼ばれ、HF含有溶融塩
の工業的電解法において大きな問題となっている。
については、本発明者らはすでに炭素ブロックの気孔中
にフッ化リチウムを含む金属フッ化物を効果的に含浸す
ることにより抑制し得ることに成功している(特開平2
−47297号)。
(即ち炭素電極の固定部分での大きな破壊及び局部的崩
壊と緩徐な部分的剥落)は未だ解決されておらず、HF含
有溶融塩の実際の電解操業において致命的なことであ
る。従って、長時間に亘って安定したHF含有溶融塩の電
解を可能にし、又高純度の製品を得るために、これらの
破壊及び崩壊と剥落の危険の無い炭素電極の開発が切に
望まれていた。
般に、石油コークス、ピッチコークスを粉砕して骨材と
し、これに結合材としてコールタールピッチや合成樹脂
を加えて混捏、成形、焼成して得られる多孔性炭素ブロ
ックよりなるものである。この際用いられる骨材コーク
スは黒鉛結晶子が多少ともある方向に整列した領域を持
っており、これが、熱処理温度が高くなると共に成長、
発達する。
表される機械的強度の不足が炭素電極の局所的な破壊と
緩徐な部分的剥落をもたらすほかに、電解時の炭素電極
の上記した黒鉛構造領域の化学的挙動が、HF含有溶融塩
の電解操業の際に、電解浴の上部に離れて位置する陽極
への通電用端子部に接合固定された炭素電極部分の破壊
につながることを知見した。
したF2雰囲気中に曝されると、(3)式に示される反応
によって層間化合物が生じ、層間化合物の生成に伴っ
て、配列している黒鉛層間が押し拡げられ、層間隔が大
きくなる結果炭素材が著しく膨張して破壊に至ることを
見出した。
る炭素電極の大きな破壊の問題、及び電解中の炭素電極
の局部的な破壊もしくは崩壊と緩徐な部分的剥落を無く
すために、鋭意研究の結果、特定レベル以上の曲げ強度
を有し、且つ、特定条件下での電位走査によって求めら
れた単掃引ボルタモグラムにおいて特定レベル以上の電
位にピークを示すという2つの要件を満たす炭素電極が
従来の炭素電極に付随する上記の問題を解決でき、HF
含有溶融塩の電解の安定な操業及び高純度製品の製造に
陽極として有利に使用できることを意外にも知見し、本
発明に到達したものである。
溶融塩の電解に陽極として用いた際に、電解装置におけ
る陽極への通電用端子部との接合部分における破壊の危
険及び局所的な破壊と緩徐な部分的剥落の危険のない炭
素電極を提供することである。
操業が可能で高純度製品を得ることのできる、上記の炭
素電極を陽極として用いるHF含有溶融塩の電解方法を
提供することである。
電極を陽極として用いることによって、陽極としての炭
素電極を交換する必要なく長時間の電解を可能にするH
F含有溶融塩の電解装置を提供することである。
徴、諸利益は添付の図面と以下の詳細な説明及び前記の
特許請求の範囲から明らかとなろう。
ックよりなり、曲げ強度が50MPa以上であり、且
つ、25℃濃硫酸中における電位走査速度5mV/se
cの電位走査により求めた単掃引ボルタモグラムにおい
て最大の電流密度を有するピークを硫酸第一水銀を基準
電極として1.2V以上の電位に示す炭素電極が提供さ
れる。
る。炭素材における黒鉛結晶の成長は、炭素粒子を超え
て、また黒鉛結晶子の配向した領域を囲む非晶質部分を
超えては起こり難い。それ故、骨材コークスを数ミクロ
ンないしは数十ミクロンにまで微粉砕し、これに比較的
多量のピッチバインダーを加えて炭素材を作れば、組織
中の黒鉛結晶子の配向を抑制することができること、及
び、細かいモザイク組織のコークスを骨材に使用する
か、または、数ミクロンの粒径のメソフェーズマイクロ
ビーズのような微粒子原料を使用することで黒鉛結晶の
成長を制限することができ、黒鉛結晶の成長が制限され
た炭素ブロックは、上記(3)式で示した層間化合物の
生成反応は起こり難いことを知見した。もちろん、炭素
ブロックを生成するための焼成のための熱処理温度は、
黒鉛結晶の成長を促さないように可及的に低い温度で行
なわれることが望ましい。
の難易性は、濃硫酸中において求めた単掃引ボルタモグ
ラム(linear sweep voltammog
ram)において、該炭素ブロックが最大の電流密度を
有するピークを示す電位(基準電極としては硫酸第一水
銀電極を使用する)より判断することができる。尚、上
記のピークは、炭素と硫酸との第1ステージ層間化合物
生成反応に対応する。
反応は次の(4)式により示される。
る際には黒鉛層間は押し拡げられねばならず、単掃引ボ
ルタモグラムを求めるための電位走査を行なっている間
に層間侵入物質として濃硫酸が黒鉛層間に拡散する。黒
鉛結晶子の発達が悪いと上記の黒鉛層間の拡大と層間侵
入物質の拡散という過程に対する活性化エネルギーが大
きくなり、黒鉛層間化合物を生成するための電位が黒鉛
結晶子の良く発達したものに比して貴になる。即ち、単
掃引ボルタモグラムにおいて最大の電流密度を有するピ
ーク(該ピークは炭素と硫酸との第1ステージ層間化合
物生成に対応する)の表われる電位が貴なほど、その炭
素電極は層間化合物を作り難い。
中における電位走査速度5mV/secでの電位走査に
より求めた単掃引ボルタモグラムにおいて、最大の電流
密度を有するピークを硫酸第一水銀を基準電極として
1.2V以上の電位に示すことが必須である(炭素電極
が該ピークを示す電位をこれより屡々「ピーク電位」と
略記する)。上記のように、このピークは炭素と硫酸と
の第1ステージ層間化合物の生成に対応する。第1ステ
ージ層間化合物の生成の確認は、該ピークに達した時点
で電位走査を止め、炭素電極をX線回折にて調べること
により行なうことができる。このピーク電位が1.2V
以上である要件を満足することによりはじめて、電解操
業中に層間化合物の生成による膨張に起因する炭素電極
の比較的大きな破壊〔即ち、前記(イ)の問題〕を無く
すことができる。ピーク電位は好ましくは1.3V以上
である。
の機械的強度の不足による局部的な破壊もしくは崩壊及
び緩徐な部分的剥落は、電解浴中に微小な炭素片や炭素
粉を浮遊させることになり、これが活性であると共に大
きい表面積を持つため容易にF2ガスと反応してガス状の
CF4を生成し、所望製品、例えばF2中に混入することに
なる。これを防止するには炭素電極を構成する炭素材が
機械的に高強度のものであることが必要である。従っ
て、本発明の炭素電極は50MPa以上の曲げ強度を有する
ことが必須である。本発明の炭素電極の曲げ強度は、好
ましくは55MPa以上、さらに好ましくは80MPa
以上である。
得るためには、例えば、微粉状骨材コークスにほぼ等重
量又はそれ以上のピッチバインダーを加え結合の役割を
分担するバインダーコークスの量を増大させるようにす
るか、又は微小モザイク組織のコークスや生コークスの
ように熱処理段階で大きい収縮を示す骨材を用い炭素材
の緻密化をはかるか、あるいは変質ピッチやメソフェー
ズマイクロビーズのような骨材と結合材が一体的に構成
された一元系材料を用いることにより達成することがで
きる。
を加熱してメソフェーズ小球体が生成する過程でそのサ
イズが10μm以下のものがモザイク様に等方性マトリッ
クス中に一様に分散しているものをいう。このような構
造をもつ炭素材を加熱するとモザイク部分は大きく収縮
して高密度材料が得られる。
メソフェーズ小球体を分離して得られるいわゆるメソフ
ェーズマイクロビーズはそのままで一元系材料として本
発明の炭素電極の原料として有利に用いることができ
る。
と空気中では非黒鉛化炭素材、窒素ガス中では易黒鉛化
炭素材の前駆体が得られ、これらを変質ピッチと言い、
やはり、一元系材料として本発明の炭素電極の製造に用
いることができるものである。
が3〜20μmの微粉状の仮焼した骨材コークス100重量部
にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバイ
ンダー約80〜130重量部を配合した2元系材料、又は変
質ピッチやメソフェーズマイクロビーズのような1元系
材料を熱処理して得られる炭素材をブロック状に切出す
などの方法により製造することができる。熱処理温度
は、望まれる機械的強度及び電解中の層間化合物の生成
防止の目的からも、通常1000℃〜1500℃、好ましくは10
00℃〜1200℃である。このようにして得られた炭素ブロ
ックは多孔性であるが、従来の炭素電極に較べて緻密な
構造を有している。すなわち、気孔率は約2%から約1
0%で、気孔の平均口径は非常に小さく、例えば、約1
μm程度である。
は、その曲げ強度を以って表示することができる。本発
明の炭素電極の曲げ強度は、JIS R7222の方法に従って
支点間距離40〜80mm3点曲げテスト(サンプルを2つの
支点で支持し、支点間の中央で下向きに荷重する)で測
定した時50MPa以上を示すことが必須である。曲げ強度
は、好ましくは55MPa以上、さらに好ましくは80
MPa以上である。このような曲げ強度を有する炭素電
極をHF含有溶融塩電解(例えば、フッ素製造のためのK
F−2HFなどのKF−HF系溶融塩の電解)の陽極に
用いるとき、CF4の発生を痕跡程度に抑えることができ
る。
50MPa以上の曲げ強度を示し、かつ、25℃濃硫酸
中における電位走査速度5mV/secでの電位走査に
より求めた単掃引ボルタモグラムにおいて最大の電流密
度を有するピークを硫酸第一水銀を基準電極として1.
2V以上の電位に示すという2つの条件を満足すること
が必須の要件である。この2つの条件の両者を満足する
ことによってはじめて、HF含有溶融塩の電解におい
て、陽極への通電用端子部との接合部における大きな割
れの発生及び局所的な破壊乃至崩壊と緩徐な部分的剥落
の発生の両方を著しく減少させることができ、安定な電
解操業と高純度製品の製造を可能にするのであり、この
2要件の1つでも満足しなければ本発明の目的を達成す
ることはできない。
陽極効果抑制のため、炭素電極はさらに多孔性炭素ブロ
ックの気孔に含入された少なくとも1種の金属フッ化物
を有する。好適な金属フッ化物としては、LiF、Na
F、CsF、AlF3、MgF2、CaF2、NiF2など
を挙げることができる。これらの金属フッ化物は高温高
圧の条件下で、炭素ブロックの気孔中に単独でも導入す
ることができる。しかし、炭素ブロックの気孔への導入
を容易且つ効果的に行なう観点から、金属フッ化物の導
入は複数種の金属フッ化物の混合物の形で行なうのが好
ましい。その理由は、溶融した金属フッ化物混合物の表
面張力は、溶融した個々の金属フッ化物の表面張力より
も小さいからである。金属フッ化物の特に好ましい組合
せとして、AlF3とNaFの組合せ及びLiFとNa
Fの組合せを挙げることができる。モル比は特に限定さ
れないが、一般に、AlF3/NaF系で約3/1から
約3/2、また、LiF/NaF系で約0.5/1から
約2/1がそれぞれ好ましい。NaFを他の金属フッ化
物と組み合わせて用いるのが好ましいのは、NaFはフ
ッ化第二鉄(これは電解装置の鉄製器具からの鉄の溶出
によって生成し、電解浴に粘性を与えるため好ましくな
い)と容易に反応して錯体(NaFFeF3)を形成して
沈殿させることにより第二鉄イオンの望ましくない影響
を除去できるからである。
化物を含浸させると、金属フッ化物は炭素ブロックの微
細な気孔中に含入される。少なくとも1種の金属フッ化
物を含浸させた炭素ブロックは曲げ強度が大幅に向上す
ることを、意外にも知見した。
は混合物)を充填させる方法は、炭素ブロックの気孔中
への充填率が少なくとも30%、好ましくは少なくとも50
%、更に好ましくは65%以上になるように充填することが
できれば特に限定されない。
の融点以上に加熱し、溶融状態で炭素ブロックと接触共
存させ、接触共存系に所定の圧力をかけて気孔中に溶融
金属フッ化物(又は混合物)を導入したのち、所定の温
度、通常は室温にまで炭素ブロックを冷却するなどの方
法によれば、金属フッ化物(又は混合物)を炭素ブロッ
クの気孔中に容易に含浸圧入させることができる。この
際、接触共存系にかける圧力を制御することにより、炭
素ブロックの気孔中の金属フッ化物(又は混合物)の充
填率を調節することができる。
ば、AlF3−NaF系金属フッ化物混合物をAlF3/
NaFのモル比が3:1となるように調製する。この混
合物をルツボの中で、例えば、970〜1050℃に加
熱して充分溶融させた後、その中に炭素ブロックを入れ
(炭素ブロックは金属フッ化物混合物を加熱溶融する前
にルツボに入れておいてもよい)、炭素材の押圧手段を
用いて混合溶融体中に浸漬するようにして固定する。こ
のルツボを圧力容器に入れる。つぎに該容器内部を窒素
ガス又はアルゴンガスで置換した後、約5〜10℃/minの
割合で約1000℃まで昇温し、次に該容器を10〜5
0mmHgまで減圧する。この減圧操作は炭素ブロック
の中の気孔より空気を除去して含浸圧入操作を容易にす
ると共に該材料の酸化を防止するものである。つぎに、
このようにして溶融した金属フッ化物混合物と炭素ブロ
ックとが接触共存した状態で、該容器内に不活性ガス、
例えば窒素またはアルゴンを導入して、内圧を50から10
0kg/cm2で約30分〜約2時間保持する。この後、該炭素ブ
ロックを圧力容器から取り出し、大気中にて自然放冷す
れば、AlF3−NaF系の金属フッ化物混合物が気孔
中に含入された炭素ブロックよりなる、好ましい態様の
本発明の炭素電極を得ることができる。
は、炭素ブロック中の気孔の量を100%とするとき、その
気孔が金属フッ化物(又は混合物)で充填されている割
合(%)を意味し、母材の炭素ブロックのかさ比重をA、真
比重をA’、気孔率をPとし、又、金属フッ化物(又は混
合物)充填電極の比重をBとすると、式B=A+XP
A’により求められる。気孔率は水銀ポロシメーターに
より測定することができる。
F含有溶融塩の電解を安定に行なうことができる。
塩よりなる電解浴を、上記の炭素電極を陽極として電解
することを特徴とするHF含有溶融塩の電解方法にあっ
て、該HF含有溶融塩がKF−HF系、CsF−HF
系、NOF−HF系、KF−NH4F−HF系又はNH4
F−HF系である電解方法が提供される。
がKF−HF系(好ましくはKF−2HF塩)、CsF
−HF系又はNOF−HF系(好ましくはNOF−3H
F塩)である場合、得られる電解製品はフッ素であり、
HF含有溶融塩がKF−NH4F−HF系又はNH4F−
HF系である場合、得られる電解製品は三フッ化窒素で
ある。本発明の方法によれば、HF含有溶融塩の電解を
安定に行なうことができるのみならず、所望の電解製品
を高純度で得ることができる。
極と陰極を包含するHF含有溶融塩の電解装置にあっ
て、該陽極が上記の炭素電極であることを特徴とする電
解装置が提供される。本発明の電解方法及び電解装置に
おける陰極の材料は、水素過電圧が低く且つフッ化物を
作り難いものであれば特に限定されないが、入手容易性
及び経済性の観点から、工業的には鉄製陰極が用いられ
る。
参照しつつ後で更に詳しく説明する。
以下の実験を行なった。一例として、325メッシュ(Tyle
r)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対し
て90重量部のコールタールピッチを加え、約150〜250
℃、好ましくは約180〜220℃における加熱下で長時間混
捏すると共に揮発分を調整し、冷却後再度粉砕し〔100
メッシュ(Tyler)以下〕てから成形し、1000℃で焼成し
て炭素ブロックを作った〔サンプル(I)〕。
上記と同じ骨材コークスに骨材コークス100重量部に対
して50重量部のコールタールピッチを混合し、それ以外
は上記と同じ手法で混捏、粉砕、成形を行ない、その後
2800℃で熱処理を行なって炭素ブロックを得た〔サンプ
ル(II)〕。
たが、サンプル(II)は46MPaであった。
25℃にて電位走査速度5mV/secで単掃引ボルタ
ムメトリーを行なった。どちらの場合も、陰極には白金
板、基準電極には濃硫酸中に浸漬させた硫酸第一水銀電
極を用いた。
れた結果(即ち、単掃引ボルタモグラム)をそれぞれ図
1及び図2に示した。図1より分かるように1000℃焼成
材〔サンプル(I)〕では第1ステージ層間化合物生成
ピーク(A)(ピーク電位)が1.4Vに観察された。又図2
より分かるようにバインダー量が少なく且つ2800℃で熱
処理した材料〔サンプル(II)〕では第1ステージ層
間化合物生成ピーク(B)(ピーク電位)が0.9Vに観察さ
れた。
1.5Vの間で50回電位走査を続けても材料の破壊は見られ
なかったが、サンプル(II)(従来技術)では第1回
目の走査において1.05Vの時点(C)で炭素材の端から膨れ
あがり、濃硫酸液に浸漬されている部分が大きく膨張し
てしまって電極が破壊した。
として用いて、フッ素製造のための電解浴中で定電流法
により電解を行ない電極の性能評価を行なった。即ち、
電解浴にはKF・2HF浴を用いて陽極には調製した炭素材(2
50×70×15mm)、陰極には鉄板(160×100mm、2枚)を用
いた。電解中、浴は90℃に保ち、無水フッ酸を適宜浴に
吹き込み浴組成をKF・2HFの一定値に保った。
浴の充分な脱水を行なうことと、陽極への通電用端子部
のアッセンブリーを工夫してF2やHFまたは浴の該端子部
分への侵入を防止することが重要である。浴中に水があ
ると炭素と水の放電生成物である酸素が反応して酸化グ
ラファイトを生ずる。酸化グラファイトは不安定な物質
で電極で生じたフッ素原子と容易に反応し安定なフッ化
グラファイトとなる。このためわずかな水(500ppm位で
も)が浴中に存在しても、通電するとフッ化グラファイ
トを生じやすくなり、これの被覆率の増加にしたがって
電気化学的に不活性な部位が増加して真の電流密度が上
昇し、その結果として陽極過電圧が増大する。これらの
反応を(5)および(6)式に示す。
ッケル電極を用い低電流密度で電解してフッ素を発生さ
せ、次の(7)式の反応により水を系外に取り除いた。 2F2+H2O→OF2↑+2HF (7)
部の金属と炭素電極の接触部分に可撓性黒鉛シートを挾
み込み接触抵抗を低下させると同時に浴またはF2やHFの
この部分への侵入を防いだ。
解操業を行なった。
した、曲げ強度が46MPaであり且つ前記条件下で求めた
単掃引ボルタモグラムにおけるピーク電位が0.9Vである
材料)を陽極とし7A/dm2で定電流電解したところ、1
4日間でKH・2FH浴に浸漬されている部分およびブスバー
と炭素電極が接触している部分で破壊した。電解中、生
成フッ素ガスに含まれるCF4をガスクロマトグラフィー
法および赤外吸収スペクトル法にて測定したところ、常
時500ppm以上であった。
調製した、曲げ強度が57MPaであり且つ前記条件下で求
めた単掃引ボルタモグラムにおけるピーク電位が1.4Vで
ある材料)を陽極とし7A/dm2で定電流電解したと
ころ、70日間電極の破壊はなかった。また、フッ素ガス
中のCF4も平均20ppmと極めて低かった。
耐性が著しく高くて安定な電解操業を可能にすると同時
に、CF4の混入の無い高純度フッ素を目的としたフッ素
の電解製造用電極として極めて有用なものである。
度が50MPa以上であり且つ前記条件下で求めた単掃引ボ
ルタモグラムにおいてピーク電位が1.2V以上であるとい
う2つの条件の両者を満足する炭素材を陽極として用い
てKF・2HF電解浴中にてフッ素を電解製造するとフッ素中
へのCF4の混入量を抑制でき、しかも電極が割れや破壊
をおこすことなく長時間電解を行なうことができる。従
って、本発明の炭素電極は、HF含有溶融塩の電解にお
いて大きな利点を有している。
示すような電解装置に適用できる。図3は本発明の電解
装置の一態様の内部を示す概略断面図であり、図4は図
3のIV−IV線に沿った概略断面図である。図3及び
図4において、1は本発明の陽極、2は陰極で例えば鉄
を用いる。またF2とH2の混合を防止するために軟鋼又は
軟鋼にモネルメタルを被覆したスカート(3)が設けら
れている。4はF2出口、5はH2出口、6(図3)はHF供
給口、7は温水ジャケットで電解槽を80〜90℃に保つた
めに用いる。また、8(図4)は陽極への通電用端子部
に挾み込んだ可撓性黒鉛シートで、浴やF2、HFのこの部
分への侵入を防止すると共に応力緩和用パッキンとして
の機能および接触抵抗の増大防止の機能も発揮される。
9は電解時のHF含有溶融塩電解浴の液面を示す。
にも有利に適用でき、この場合、HF含有溶融塩はKF−
NH4F−HF系電解浴やNH4F−HF系電解浴である。NF3
はドライエッチングガス、光ファイバー処理用ガス、プ
ラズマ発生用反応室およびCVD用反応室の洗浄用ガスな
どとして使用されている。
系電解浴中の場合にはNi電極が用いられている。この理
由は、一般の炭素材を用いると、電解操業中の炭素電極
の局部的破壊乃至崩壊や緩徐な部分的剥落のために生じ
た炭素粒子がフッ素と反応してCF4がNF3中に混入し、両
者の沸点の差が約1℃と極めて小さいため分離が極めて
困難となる欠点があるからである。ところがNi電極を用
いる従来の方法では、NF3発生に対する電流効率が50%程
度と極めて悪いという欠点がある。
破壊はもとより、炭素粒子を生じる局部的破壊や緩徐な
部分的剥落が発生しないためCF4発生の危険が無い。
従って、本発明の炭素電極を用いると高純度のNF3が
高電流効率で得られるという大きな利点がある。NH3
製造用の電解浴としては、KF−NH4F−HF系溶融
塩やNH4F−HF系溶融塩を有利に用いることができ
る。特にKF−NH4F−HF系電解浴を用いると、電流効率は
70%以上となる。NH4F−HF系電解浴の場合、含浸処
理を施した炭素電極の使用が好ましい。
械的強度に優れているのみならず化学的に安定で、HF
含有溶融塩電解において、大きな破壊の1つの原因であ
ると新しく知見された層間化合物生成が起き難い。本発
明の炭素電極はHF含有溶融塩の電解操作を安定な状態
で行なわしめ、しかも純度の高い製品を製造するのに有
用である。
細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものでは
ない。
ロンのモザイク組織のコークスを325メッシュ(Tyler)以
下に粉砕して骨材とし、骨材コークス100重量部に対し
てコールタールピッチを90重量部の割合でバインダーと
して添加し、180〜220℃の加熱下で混捏し、混合物を10
0メッシュ(Tyler)以下に粉砕して成形粉とした。成形粉
は金型で800kg/cm2の成形圧で125×250×75mmの直方体
に成形し、これを2℃/hrでの昇温速度で1000℃に焼成し
て炭素材料を得た(実施例1)。
量を50重量部に変えた以外は実施例1と同様にして得た
炭素材料をさらに2800℃に熱処理して黒鉛化し、黒鉛化
材料を得た(比較例1)。
の試料10枚を切り出した。これを支点間距離40mmで3点
曲げ試験(2つの支点上で試料を支持し、支点間の中央
で下向きに荷重する)に供したところ、その平均曲げ強
度は次の通りであった。 実施例1 57MPa 比較例1 46MPa
0×1mmの試料を切り出し、これを陽極とし、Pt板
を陰極、硫酸第一水銀を基準電極として、25℃の18
M濃硫酸中で5mV/secの電位走査速度で電位走査
して単掃引ボルタモグラムを求めた。
に示した。電流密度が最大となり第1ステージの層間化
合物生成に対応するピーク電位は1.4Vに観察され、電位
走査を0〜1.5Vの範囲で50回繰り返しても電極の崩壊
は見られなかった。
は図2に示した様に、電流密度が最大となり第1ステー
ジの層間化合物の生成に対応するピーク電位は0.9Vに観
察され、しかも第1回の電位走査の1.05Vの時点で電極
が崩壊した。
×15mmの試料を切り出し、これを陽極として50Aスケー
ルの電解槽にて陰極には鉄を用い、電解浴温度90℃、浴
組成KF・2HFに厳密に保ちながら7A/dm2で定電流電解を行
なった。
用の端子との接合部分で破壊した。また生成フッ素ガス
中に含まれるCF4濃度を測定したところ平均して500ppm
以上であった(比較例2)。
割れることなく、またCF4含有量も常時20ppm以下に保た
れた(実施例2)。
mの試料を切り出し、これを陽極として50Aスケールの電
解槽にて陰極には鉄を用い、電解浴温度120〜150℃で、
浴組成KF・2HF+NH4Fの電解浴を用いて5A/dm2の定電流電
解を行なった。
用いる方法に較べて極めて高かった。また、生成NF3中
のCF4の量は500ppm以下で、これは電解効率の悪さ故に
ニッケル電極による電解法の代りに従来一般に用いられ
ている化学法(CF4:一般に1000ppm以上)に較べて極めて
純度の高いNF3が得られたことを意味している。
ロンのモザイク組織の仮焼コークス(仮焼温度:120
0〜1300℃)を325メッシュ(Tyler)以下に粉砕して
骨材とし、骨材コークス100重量部に対してコールター
ルピッチを90重量部の割合でバインダーとして添加し、
180〜220℃の加熱下で混捏し、混合物を100メッシュ(Ty
ler)以下に粉砕して成形粉とした。成形粉は金型で800k
g/cm2の成形圧で125×250×75mmの直方体に成形し、こ
れを2℃/hrでの昇温速度で1000℃に焼成して炭素材料を
得た。
切り出した。これを実施例1と同様にして3点曲げ試験
に供したところ、その平均曲げ強度は次の通りであっ
た。 実施例4 100MPa
試料を切り出し、これを陽極とし、Pt板を陰極、硫酸
第一水銀を基準電極として、25℃の18M濃硫酸中で
5mV/secの電位走査速度で電位走査して単掃引ボ
ルタモグラムを求めた。その結果、電流密度が最大とな
り第1ステージの層間化合物生成に対応するピーク電位
は1.4Vに観察され、電位走査を0〜1.5Vの範囲
で50回繰り返しても電極の破壊は見られなかった。
出し、これを陽極として50Aスケールの電解槽にて陰極
には鉄を用い、電解浴温度90℃、浴組成KF・2HFに厳密に
保ちながら7A/dm2で定電流電解を行なった。その結果、
この電極は3ヶ月以上割れることなく、またCF4含有量
も常時10ppm以下に保たれた。
出した。これらの試料の気孔率は7〜8%で気孔の平均
口径は1μm以下であった。これらの試料をそれぞれに
つき以下の金属フッ化物系を用いて含浸処理を行なっ
た:LiF、LiF+NaF(モル比1:1)、CsF
+NaF(モル比1:1)、AlF3+NaF(モル比
3:1)、MgF2、CaF2、NiF2+NaF(モル
比2:1)。含浸処理は、金属フッ化物(又は混合物)
をその溶融温度に加熱してから試料を溶融金属フッ化物
(又は混合物)と加圧下で接触共存させ、気孔中に導入
することにより行なった。
り、細孔中に上記の金属フッ化物(又は混合物)が完全
に含浸されている(充填率:100%)ことが判明し
た。また曲げ強度も103MPaと、含浸による強度劣
化が生じることなくむしろ曲げ強度が上昇した。
電極を陽極として50Aスケールの電解槽にて陰極には
鉄を用い、電解浴温度90℃、浴組成KF−2HFに厳
密に保ちながら電流密度7A/dm2で定電流電解を行
なった。その結果、本電極は未含浸電極より0.5〜1
V浴電圧が低く、3ヶ月以上にわたって電解が安定的に
継続した。また、生成フッ素中のCF4含有量も常時1
0ppm以下に保たれた。
げ強度が50MPa以上であって濃硫酸中での電位走査
法により求めたボルタモグラムの第1ステージ層間化合
物生成に対応する電流ピークの現われる電位が1.2V
(硫酸第一水銀電極基準)以上であるとの2条件を満足
する本発明の炭素電極は、電解中に破壊も崩壊も剥落も
起こさず、そのため、長期間にわたって安定に電解操業
することができるのみならず、所望の製品、例えばフッ
素ガス中へのCF4の混入量も極めて低く、HF含有溶
融塩電解用の電極として極めて有用なものである。
5℃濃硫酸中における電位走査速度5mV/secの電
位走査により求めた単掃引ボルタモグラムを示した図で
ある。
における電位走査速度5mV/secの電位走査により
求めた単掃引ボルタモグラムを示した図である。
面図である。
る。
Claims (4)
- 【請求項1】 多孔性炭素ブロックよりなり、曲げ強度
が50MPa以上であり、且つ、25℃濃硫酸中におけ
る電位走査速度5mV/secの電位走査により求めた
単掃引ボルタモグラムにおいて最大の電流密度を有する
ピークを硫酸第一水銀を基準電極として1.2V以上の
電位に示す炭素電極。 - 【請求項2】 該炭素ブロックが、LiF、NaF、C
sF、AlF3、MgF2、CaF2、NiF2から選ばれ
た少なくとも1種の金属フッ化物を気孔中に有すること
を特徴とする請求項1記載の炭素電極。 - 【請求項3】 HF含有溶融塩よりなる電解浴を、請求項
1又は2記載の炭素電極を陽極として電解することを特
徴とするHF含有溶融塩の電解方法にあって、該HF含
有溶融塩がKF−HF系、CsF−HF系、NOF−H
F系、KF−NH4F−HF系又はNH4F−HF系であ
る電解方法。 - 【請求項4】 電解槽及び陽極と陰極を包含するHF含
有溶融塩の電解装置にあって、該陽極が請求項1又は2
記載の炭素電極であることを特徴とする電解装置。
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