JP3086879B2 - 新規高分子物質apk−78、その生産方法、微生物産生凝集剤及び排水凝集方法 - Google Patents
新規高分子物質apk−78、その生産方法、微生物産生凝集剤及び排水凝集方法Info
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Description
PK−78(以下単にAPK−78という)、その生産
方法、微生物産生凝集剤及び排水凝集方法に関し、更に
詳しくは、油水分離能及び凝集活性を有するAPK−7
8であり、それらの特性から、APK−78は、油環境
汚染における油除去処理に用いる油水分離剤、活性汚泥
方法における排水凝集処理に使用する微生物産生凝集剤
として有用である。
(Alcaligenes latas)、アルカリゲネス・キュピダス
(Alcaligenes cupidus)、ロドコッカス・エリスロポ
リス(Rhodococcus erythropolis)等の微生物が、凝集
活性を有する物質を生産することが知られていた。そし
て、それらの培養液は、活性汚泥方法における排水凝集
処理に用いる微生物産生凝集剤として使用されてきた
が、それらの物質は微生物産生凝集剤としても活性が低
いものであった。又、それらの生産性も決して高いもの
ではなかった。ましてや、油水分離能について試された
ことはなかった。 これらの問題を改善する方法とし
て、複数の微生物が共存して生育する複合微生物により
生産される凝集活性物質APR−3が興味がもたれてい
た(Biochi.Biotech.Biochem.、58巻、1589〜1594頁、1
994年)。しかしながら、排水処理のコスト低減化のた
めに、より高活性を有する物質の出現が要望されてい
た。
の問題に鑑み、人と環境に優しく安全であり、且つより
高活性を有する油水分離能及び凝集活性を有する新規高
分子物質及び簡便且つ効率のよいその大量生産方法を提
供することにある。
達成のために鋭意努力した結果、特定の複合微生物が、
従来知られていない高分子物質を培地中に著量生産する
こと、そして、当該高分子物質はより優れた油水分離能
及び凝集活性を有すること等の知見を得た。本発明は、
この知見に基づいて完成された。
することを特徴とするAPK−78を提供する。 (1)油水分離能を有する。 (2)凝集活性を有する。 (3)アミノ糖(エルソン・モーガン法):検出されな
い。 (4)ウロン酸(カルバゾール・硫酸法):検出されな
い。 (5)蛋白質(ニンヒドリン法):検出されない。 (6)元素分析:窒素N、リンP及び硫黄Sは痕跡。 (7)構成する糖及び有機酸の組成(モル比):ガラク
トース1、グルコース8.2、コハク酸2.1±0.
4、ピルビン酸1.2。 (8)分子量:2×106以上。 (9)粘度(ビスメトロン回転粘度計、SS−2ロータ
ー、25℃、回転数30rpm、溶媒は純水、Na型A
PK−78の0.5重量%濃度溶液):250cp。 (10)溶媒溶解性:水に可溶、アルカリに易溶、メタ
ノール、エタノール及びアセトンに不溶。 (11)IRスペクトル吸収帯(cm-1):2,700
〜3,700、1,730、1,600、1,400、
1,160。 (12)図1に記載の1HNMRのスペクトルを有す
る。
バクテリウム・テュメファシエンス(Agrobacterium tu
mefaciens)KYM−8(FERM P−16806)
を提供する。
有するセルロモナス・セルランスKYM−7株(FER
M P−11358)又はアグロバクテリウム・テュメ
ファシエンスKYM−8株(FERM P−1680
6)を固体培地又は液体培地に培養することより、当該
培地中に前記1)記載のAPK−78を生産させ、当該
物質を採取することを特徴とするAPK−78の生産方
法を提供する。
有するセルロモナス・セルランスKYM−7株(FER
M P−11358)又はアグロバクテリウム・テュメ
ファシエンスKYM−8株(FERM P−1680
6)をサイアミン又はその誘導体を含有する培地に培養
することより、当該培地中に前記3)記載のAPK−7
8の生産方法を提供する。
有するセルロモナス・セルランスKYM−7株(FER
M P−11358)及びアグロバクテリウム・テュメ
ファシエンスKYM−8株(FERM P−1680
6)を、少なくとも含む複合微生物を複合的培養若しく
は複合培養する前記3)又は4)に記載のAPK−78
の生産方法を提供する。
4)、又は5)に記載のAPK−78を主成分として含
有してなることを特徴とする微生物産生凝集剤を提供す
る。
種以上を含有する前記6)に記載の微生物産生凝集剤を
提供する。
載の微生物産生凝集剤を懸濁物含有排水に接触せしめる
ことを特徴とする排水凝集処理方法を提供する。
水凝集処理方法において、前記6)、又は7)に記載の
微生物産生凝集剤を処理系に存在させ、活性汚泥と処理
水との分離領域において、活性汚泥のバルキングを防止
することを特徴とする排水凝集処理方法を提供する。
のpHを、7〜9に保持する前記8)、又は9)に記載
の排水凝集処理方法を提供する。
を発生しやすい排水である前記8)、9)、又は10)
に記載の排水凝集処理方法を提供する。
発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明はこれらの
実施形態により何ら限定されるものではない。先ず、本
発明の実施形態の1つであり、且つ特徴を表す本発明の
完成過程を述べる。
の生産を目的として、活性汚泥及び土壌から、凝集活性
物質を生産する微生物をスクリーニングして来た。その
際、フタル酸資化性及びスライム形成性を有する微生物
を指標として、微生物コロニーを選択した。その結果、
目的のコロニーを多数得た。その中の一つについて詳し
く検討した結果、8菌株から構成されていることが分か
った。その8菌株を各々KYM−1〜KYM−8と命名
し、その性質を調べた。その結果を表1〜表4に示し
た。そして、KYM−3、KYM−4、KYM−5、及
びKYM−7については既に報告した(Biochi.Biotec
h.Biochem.、58巻、1589〜1594頁、1994年)。又、KY
M−3、KYM−4、KYM−5、及びKYM−7から
なる群の少なくとも1菌株を含む複合微生物を培養する
と、APR−3と命名した凝集活性物質が生産されるこ
とを同時に報告した。
M−4、KYM−5、KYM−7の菌株の同定を再検討
し、残りのKYM−1、KYM−2、KYM−6、KY
M−8についても同定を行った。
rDNAの塩基配列の相同性から、微生物を発生系統
的に同定・分類する方法が行なわれている(日本微生物
生態学会報(Bulletin of Japanese Society of Microb
ial Ecology)、10巻、119〜136ページ、19
95年、同報、10巻、31〜42ページ、1995
年)。上記の菌株を、表1〜4のデーターを参考にしな
がら、これらの方法で解析し、その結果を表5に記載し
た。
た。尚、上記の16S rDNA解析法によると、サル
モネラ属と大腸菌属に属する微生物は、同一属の微生物
と見做されている。その故に本発明の微生物は、サルモ
ネラ属又は大腸菌属のどちらの属に属する微生物でもよ
い。
ス、 KYM−4は、コマモナス・テストステロニィー KYM−5は、サルモネラsp. KYM−6は、オーレオバクテリウムsp.、 KYM−7は、セルロモナス・セルランス又はセルロモ
ナス・カルタエ、 KYM−8は、アグロバクテリウム・テュメファシエン
ス(Agrobacterium tumefaciens)又はアグロバクテリ
ウム・リゾゲネス に属する微生物である。
株、 KYM−4株は、コマモナス・テストステロニィーと同
種か極めて近い種に属する菌株、 KYM−5株は、サルモネラ又は大腸菌のグループに属
する菌株(本発明においては簡便化のためサルモネラ属
という。)、 KYM−6株は、オーレオバクテリウムsp.に属する
菌株、 KYM−7株は、セルロモナス・セルランスに属する菌
株、 KYM−8株は、アグロバクテリウム・テュメファシエ
ンスに属する菌株、 であると判断した。
れ、KYM−1はFERM P−11333、KYM−
2はFERM P−11334、KYM−3はFERM
P−11335、KYM−4はFERM P−113
36、KYM−5はFERMP−11337、KYM−
6はFERM P−11357、KYM−7はFERM
P−11358、KYM−8はFERM P−168
06の番号が付されている。尚、KYM−8株の諸性質
を示す微生物は現在知られていないので、新規微生物で
ある。それ故、本発明の一実施形態である。
について詳しく再検討した。その結果、既に報告した前
記のAPR−3の糖、有機酸の組成にも誤りがあるこ
と、又、少なくともKYM−8株を、好ましくは、少な
くともKYM−8株とKYM−7株からなる複合微生物
を培養すると、APR−3とは全く異なる凝集活性物質
APK−78を生産することを知見した。本発明はかか
る知見に基づいて完成されたものである。
APK−78である。 (1)油水分離能を有する。 (2)凝集活性を有する。 (3)アミノ糖(エルソン・モーガン法):検出されな
い。 (4)ウロン酸(カルバゾール・硫酸法):検出されな
い。 (5)蛋白質(ニンヒドリン法):検出されない。 (6)元素分析:窒素N、リンP及び硫黄Sは痕跡。 (7)構成する糖及び有機酸の組成(モル比):ガラク
トース1、グルコース8.2、コハク酸2.1±0.
4、ピルビン酸1.2。 (8)分子量:2×106以上。 (9)粘度(ビスメトロン回転粘度計、SS−2ロータ
ー、25℃、回転数30rpm、溶媒は純水、Na型A
PK−78の0.5重量%濃度溶液):250cp。 (10)溶媒溶解性:水に可溶、アルカリに易溶、メタ
ノール、エタノール及びアセトンに不溶。 (11)IRスペクトル吸収帯(cm-1):2,700
〜3,700、1,730、1,600、1,400、
1,160。 (12)図1に1HNMRのスペクトルを示す。
子物質であるが、前記のAPR−3の特性と比較すると
次の特性において大きく相違する。よってAPK−78
はAPR−3とは明確に異なる物質である。 a)糖及び有機酸組成(モル比) APR−3:ガラクトース1、グルコース5.6±0.
1、フコース0.7、コハク酸0.6±0.1、ピルビ
ン酸2.5±0.1。 APK−78:ガラクトース1、グルコース8.2、コ
ハク酸(2.1±0.4)、ピルビン酸1.2。
−2ローター、25℃、回転数30rpm、溶媒は純
水、H型APR−3又はNa型APK−78の0.5重
量%濃度溶液) APR−3:100cp。 APK−78:250cp(APR−3の値の2.5
倍)。このような特性を有する高分子物質は現在まで知
られていないので、は新規物質である。
水(海水も含む。)を油相と水相とに分離する能力のこ
とをいう。該油水分離能は次のようにして測定される。 A)油水分離能の活性測定法 サラダ油10gとノニオン系界面活性剤Tween80
(和光純薬社製:ソルビタンモノオレアートのエチレン
オキシド縮合物)0.5gをビーカー中で2〜3分間超
音波処理してサラダ油を乳化させる。この中に撹拌しな
がら海水を加えて全量を2リットルとし、これを油懸濁
水の原水とする。この場合、海水の代わりに蒸留水を用
いても構わない。
移し、pHを10に調整する。この原水0.8リットル
を加圧浮上装置(宮本制作所製MS9000)に供給す
る。更にサンプル液20mlを添加して、室温で内容物
を十分に撹拌した後、加圧水を0.3リットル添加す
る。10〜20分間静置後、水相のCODを重クロム酸
カリウム法で測定する。活性はそのCOD値で示され
る。そして、油水分離能は次式により計算される。 油水分離能=((A−B)/A)×100(%)、但
し、A:処理前のCOD値、B:処理後のCOD値)。
物を凝集させ、上澄液を作る活性をいう。本発明におい
てその活性は、懸濁物質の代表例としてカオリンを用
い、カオリン懸濁液中のカオリン懸濁物を凝集させ、上
澄液を作る活性を次のようにして測定した。
を100ml容メスシリンダーに分取し、これに10重
量%CaCl2・2H2O水溶液10ml添加した。これ
にサンプル液0.125mlを加え、pHを8.0に調
整した。そのシリンダーを室温でゆっくり撹拌し、5分
間静置した。そして、上澄液の濁度をOD550nmに
て測定した。カオリン凝集活性は次式によって計算され
る。 カオリン凝集活性=(1/C)−(1/D) C:サンプル液についてのOD550nm値 D:水(ブランク液)についてのOD550nm値
を純水12mlで希釈し、菌体を遠心分離(28,00
0G及び30min)で除去し、2倍容のエタノールを
添加し、繊維状の沈殿物(APK−78)を析出させ
た。当該沈殿物を遠心分離で採取し、シリカゲル入りの
デシケーターの中で、一晩減圧乾燥した。乾燥物を蒸溜
水10mlに溶解し、次に、これに2%cetylpyridium
chloride(CPC)溶液5mlを撹拌しながら添加し、
数時間静置し、APK−78とCPCの複合体の沈殿物
を形成させた。当該複合体の沈殿物を遠心分離により集
め、0.5モルの食塩水に溶解した。これに2倍容のエ
タノールを添加し、繊維状の沈殿物を得た。当該沈殿物
をエタノール及びアセトンで各々5回洗浄した後、上記
のようにして減圧乾燥した。当該乾燥物は純度検定で9
8%以上のAPK−78であった。それで、当該乾燥物
の重量を秤量することによりAPK−78の定量を行っ
た。
グロバクテリウム・テュメファシエンス(Agrobacteriu
m tumefaciens)KYM−8株(FERM P−168
06)である。前記したように、KYM−8株のような
特質を有する微生物は現在まで未知である。
産能を有する微生物を、固体若しくは液体の栄養培地に
培養してAPK−78を培地中に生産させ、それを採取
するAPK−78の生産方法である。APK−78の生
産能を有する微生物であれば、細菌、カビ等のどのよう
な微生物でも使用できる。本発明においては、特にフタ
ル酸を資化できる特性とスライム形成性を目安にスクリ
ーニングして得られたが、スクリーニング方法等に何ら
限定されるものではない。
て細菌類の微生物を挙げることができる。細菌の中で
も、好適なものとして、例えば、ブルセラ属、ステノト
ロフォモナス属、アシネトバクター属、コマモナス属、
サルモネラ属、オーレオバクテリウム属、セルロモナス
属、アグロバクテリウム属に属する細菌を挙げることが
できる。
属に属する細菌、好ましくはアグロバクテリウム・テュ
メファシエンス若しくはそれに極めて近い種、より好ま
しくはアグロバクテリウム・テュメファシエンス(Agro
bacterium tumefaciens)KYM−8(FERM P−
16806)を挙げることができる。本発明のAPK−
78の生産性をより向上させるには、少なくともアグロ
バクテリウム属に属する細菌からなる複合微生物を使用
することである。
に属する細菌からなる複合微生物について詳しく述べ
る。即ち、好ましい実施形態として、アグロバクテリウ
ム属に属する細菌及びセルロモナス属に属する細菌の二
種からなり、それらが共存して生育する複合微生物でA
PK−78の生産性を有するものである。この複合微生
物の中でも好ましい微生物はセルロモナス属に属する何
れかの細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の細
菌と、アグロバクテリウム・テュメファシエンス若しく
はそれに極めて近い種から選ばれる細菌の組み合わせ、
又、アグロバクテリウム属に属する何れかの細菌からな
る群から選ばれる少なくとも1種の細菌と、セルロモナ
ス・セルランス若しくはそれに極めて近い細菌の組み合
わせの複合微生物を挙げることができる。
生物は、セルロモナス属に属する何れかの細菌からなる
群から選ばれるKYM−7を始めとする少なくとも1種
の細菌と、アグロバクテリウム・テュメファシエンスK
YM−8の組み合わせ、又、アグロバクテリウム属に属
する何れかの細菌からなる群から選ばれるKYM−8を
始めとする少なくとも1種の細菌と、セルロモナス・セ
ルランスKYM−7の組み合わせの複合微生物を挙げる
ことができる。特に好適な実施形態は少なくともKYM
−7とKYM−8とからなる複合微生物を挙げることで
きる。
K−78の生産性を阻害しな限り、公知又は未知の如何
なる微生物が上記の複合微生物に共存していてもよい。
例えば、ブルセラ属、ステノトロフォモナス属、アシネ
トバクター属、コマモナス属、サルモネラ属、及びオー
レオバクテリウム属に属する細菌からなる群から選ばれ
る少なくとも一種の細菌を含むものを挙げることができ
る。
テノトロフォモナスsp.に属する細菌、アシネトバク
ターsp.属に属する細菌、コマモナス・テストステロ
ニィーと同種か極めて近い種に属する細菌、サルモネラ
属に属する細菌、オーレオバクテリウムsp.に属する
細菌を挙げることができる。
げるならば、次の如くである。 (a)KYM−8、KYM−7 (b)KYM−8、KYM−7、KYM−1 (c)KYM−8、KYM−7、KYM−5 (d)KYM−8、KYM−7、KYM−5、KYM−
4 (e)KYM−8、KYM−7、KYM−5、KYM−
4、KYM−1 (f)KYM−8、KYM−7、KYM−6、KYM−
5、KYM−4、KYM−3、KYM−2、KYM−1
−1株〜KYM−8株の細菌は、単独の状態又は上記の
いずれの組合せの複合状態で、寒天培地上でスライムを
形成するフロック状態になる。そして、フロック状態の
まま、植え継ぐことも、保存することもできる。又、便
利に種培養菌として用いることもできる。それで、上記
の組合せの微生物をここでは、(a)、(b)、
(c)、(d)、(e)、(f)は各々、R−4菌、R
−5菌、R−6菌、R−7菌、R−8菌、R−9菌と略
称する。
成する。しかし、このスライム形成は本発明を何ら限定
するものではない。尚、これらの組合せの菌株を用いて
培養を行なう場合は、寒天培地上でスライムを形成さ
せ、スライム形成微生物を種菌として用いると便利であ
る。
する培地は、本発明の微生物の栄養培地であればどのよ
うなものでもよく、特に制限されない。そして、通常の
公知の方法に従って調製することができる。例えば、そ
の組成は、炭素源として、デンプン、廃糖蜜、デキスト
リン、サッカロース、マルトース、マンニット、グルコ
ース及びフラクトース等、窒素源として、硫安、塩安、
尿素、肉エキス、ペプトン及び酵母エキス等、無機塩類
として、リン酸塩、マグネシウム塩、食塩、鉄塩及びマ
ンガン塩等、ビタミン源類として、酵母エキス、コーン
ステープリカー及び廃糖蜜等が適当量含有していればよ
い。
サイアミン又はその誘導体又はそれらを含有するもの挙
げることができる。このサイアミン又はその誘導体が培
養中に培地に存在していると、APK−78を生産する
複合微生物におけるAPK−78の生産性が向上維持さ
れる。特に種培養において、種培地にサイアミン又はそ
の誘導体が存在していると、APK−78の生産性が向
上する。又、連続培養においても、その培地にサイアミ
ン又はその誘導体が存在していると、APK−78の生
産性が向上維持される。又、APK−78生産性を有す
る微生物を培地に植え継ぎ保存するには、サイアミン又
はその誘導体を含有する培地に生育させることが好適で
ある。上記のサイアミン又はその誘導体の濃度はサイア
ミンとして2〜2000μg/l、好ましくは5〜10
00μg/l、より好ましくは5〜500μg/lであ
る。
トは好ましいものとして挙げることができ、培地中に占
める量として0.01〜30重量%、好ましくは0.1
〜20重量%で使用する。pHは5〜9位の範囲に調整
すればよい。固体培地又は液体培地の種類は問われな
い。尚、農産物廃棄物、食品産業廃棄物、発酵廃液及び
残渣類、都市ゴミ類等も炭素源、有機窒素源及びビタミ
ン類等として使用することができる。培養は、振盪、通
気撹拌等の操作で、20〜40℃で2〜15日間行なえ
ばよい。そして回分或いは連続等の培養方法が採用でき
る。前培養なしの方法或いは前培養ありの方法等、どち
らも採用できる。
−78は、アセトン、エタノール等の有機溶媒を用いる
沈殿法、ゲル濾過法、ゲルクロマトグラフィー法、イオ
ンクロマトグラフィー法、膜濃縮法、膜濾過法、cetylp
yridium chloride(CPC)等の塩基性物質とAPK−
78との複合体形成による沈殿物法等を適当に組み合わ
せることにより、培養液中から採取することができる。
かすか、乾燥するかして、又、適当な付加剤又は添加剤
等を添加して、環境汚染の油除去処理等において使用す
る油水分離剤及び排水処理において使用する微生物産生
凝集剤として使用することができる。又、本発明の微生
物の培養物をそのまま油水分離剤及び微生物産生凝集剤
とすることもできる。本発明において、培養物とは培養
物の他に培養処理物をも含むものとする。例えば、培養
液自体、それの乾燥物、濃縮物、培養液から菌体を除い
た上澄液、菌体自体及びそれらの乾燥物及び濃縮物等で
ある。カルシウム、鉄、アルミニウム等のカチオン性無
機塩を1種以上含有してなる微生物産生凝集剤は、凝集
活性が向上するので好ましい添加剤の一つである。本発
明の微生物産生凝集剤は、活性汚泥方法における活性汚
泥と処理水との分離領域において、活性汚泥のバルキン
グを効率よく防止することが出来る。又、分離領域のp
Hを、7〜9に保持することが好適である。又、被処理
排水が糸状菌を発生しやすい排水であるは、特に効果を
発揮することが出来る。
具体的に説明する。尚、文中「%」とあるのは特に断り
の無い限り重量基準である。 実施例1:本発明で使用する混合菌であるR−4菌の培
養 本発明で使用する菌の種培養及び本培養に用いる培地の
組成(%): デンプン=1% K2HPO4=0.5% KH2PO4=0.2% MgSO4・7H2O=0.02% (NH4)2SO4=0.05% ビーフエキス(Difco社)=0.05% サイアミン塩酸塩=0.01% 蒸溜水=残り% pH 7.0(3N KOHで調整) 殺菌条件:121℃(達温)及び15〜20分間
日間培養した。当該菌の1白金耳を液体培地80ml
(500ml容振盪フラスコ)に添加し、30℃で2日
間培養し種培養を調製した。尚、ロータリーシェイカー
を用いて当該フラスコを振盪した。当該培養液(60m
l)を5リットル容ジャーファメンター(培地3リット
ル)に添加し、30℃で3Nリットル/minの通気量
で、7日間撹拌(200〜400r.p.m.)しなが
ら培養した。生育度(OD310nmにおける濁度にて
測定)、油水分離能及びカオリン凝集活性ともに3日間
で最高値に達した後、若干減少傾向を示した。培養液の
粘度は最後まで増加した。生育度14.5(660nm
における濁度測定)、カオリン凝集活性235、粘度
1,300(cp)なる培養液を得た。尚、粘度はビス
メトロン回転粘度計を用い、SS−2ローター使用し、
25℃及び回転数30rpmの条件で測定した。
リットルを純水12リットルで希釈し、菌体を遠心分離
(28,000G及び30min)で除去し、その後、
膜濃縮機を使用して2リットルまで濃縮した。当該濃縮
液に2倍容のエタノールを添加し、繊維状の沈殿物(A
PK−78)を析出させた。当該沈殿物を遠心分離で採
取し、シリカゲル入りのデシケーターの中で、一晩減圧
乾燥した。5.5gの粗APK−78を得た(対デンプ
ン収率=31.33%)。
100mlに溶解した。次に、これに2%cetylpyridiu
m chloride(CPC)溶液50mlを撹拌しながら添加
し、数時間静置し、APK−78とCPCの複合体の沈
殿物を形成させた。当該複合体の沈殿物を遠心分離によ
り集め、0.5モルの食塩水に溶解した。これに2倍容
のエタノールを添加し、繊維状の沈殿物を得た。当該沈
殿物をエタノール及びアセトンで各々5回洗浄した後、
上記のようにして減圧乾燥した。純度検定で98%以上
のAPK−78(360mg)のを得た(対デンプン収
率、22.6%)。このことから、R−4菌の培養液に
は約2.3mg/mlのAPK−78が生産されている
ことが分かる。
た。上記の如くして精製されたAPK−78を、0.5
NのNaOH水溶液で加水分解し、脱アセチル化した。
得られた脱アセチル化APK−78について、酢酸セル
ロース膜を支持体として電気泳動を行った。その結果、
当該APK−78は陽極側に移動し、単一のスポットを
与えた。よって当該APK−78は純粋なものと判断し
た。
糖は検出されなかった。 2.ウロン酸 カルバゾル・硫酸法により検出を試みたが、検出されな
かった。 3.蛋白質 ニンヒドリン法により検出を試みたが、検出されなかっ
た。 4.元素分析 窒素N、痕跡、リンP、痕跡、硫黄、痕跡。
00℃で9時間加水分解した。加水分解後、減圧乾固し
た。それを純水に溶解し、分析した。定性分析:当該加
水分解物について、次の条件で薄層クロマトグラフィー
を行った。その結果、グルコース及びガラクトースのみ
が検出された。条件:プレート=シリカゲル60(0.
5M NaHPO4)、展開相=イソプロピルアルコー
ル:アセトン:0.1M乳酸(2:2:1 重量比)。
析を行った。その結果、APK−78は、ガラクトース
1モルに対してグルコース8.2モルの割合で構成され
ていることが判明した。 条件:装置=島津(Shimadzu)LC−9A、検出器=島
津分光光度計RF−534、カラム=TSK−gel
Sugar AXG 15cm×4.6mmI.D.
(東ソ)。
について、薄層クロマトグラフィーによる定性及び同定
分析を次の条件で行なった。その結果コハク酸とピルビ
ン酸が検出された。
4、展開相=ブタノール:ギ酸:水(4:1.5:1
重量比)又はアミルアルコール:0.25Mアンモニア
(2:1 重量比)。
装置=島津LC−7A、検出器=島津紫外分光光度計S
PD−6A、カラム=Excelpak CHA-E11 30cm×
7.8mmI.D.(HP)、カラム温度=40℃、移
動相=0.01M硫酸、移動速度=0.5ml/mi
n、検出波長=210nm.その結果、コハク酸とピル
ビン酸が、構成糖であるガラクトース1モルに対して各
々2.1±0.4モル及び1.2モル含まれていること
が分かった。
W75Fゲルカラムを使用するゲルクロマトグラフィー
でAPK−78の分子量を求めた(図2参照)。ブルー
デキストランよりも先にAPK−78のピークが出現す
るので、分子量は2×106以上であると判断された。
0cm-1及び1,160cm-1にカルボキシルエステル
結合の吸収、そして1,600cm-1及び1,400c
m-1にイオン化カルボキシル基の吸収を示した。
不溶であった。 10.粘度特性 ビスメトロン回転粘度計で、SS−2 ローターを使用
し、25℃及び回転数2〜60rpmの条件で測定し
た。対照物質として下記の比較例1で調製したAPR−
3を用いた。両物質はNa型(塩)にして測定した。濃
度は0.5%溶液とした。その結果を図3に示した。ど
ちらもシュードプラスチック流動特性を示した。APK
−78はAPR−3よりも約2.5倍高粘度であった。
9.8MHz、溶媒=D2O、濃度=4.75mg/
0.65ml、基準=アセトン(δCH3=2.22p
pm)、温度=30℃、50℃、観測幅=6kHz、デ
ータ点=64K、パルス幅=45°、パルス繰返し時間
=7sec、積算回数=32。
z、溶媒=D2O、濃度=108.6mg/2.5m
l、基準=ジオキサン(δ=67ppm)、ジオキサン
/D2O溶液を測定し、基準にした。温度=70℃(1
08.6mg/2.5ml溶液)、観測幅=20kH
z、データ点=32K、パルス幅=45°、パルス繰返
し時間=2sec、積算回数=54600。 e)DEPT(下記以外13CNMRと同条件) DEPT角=135℃、パルス繰返し時間=2.5se
c、積算回数=8000。
た。これらのスペクトルを解析して、次の結果を得た。 (a)グルコース及びガラクトースの1位はβ型であ
る。 (b)グルコースの結合様式はβ1−3、β1−3、β
1−4、β1−6の全てが存在する。 (c)ピルビン酸は図13のように構造で結合してい
る。 (d)芳香族化合物は含まれていない。 以上の特性を有する高分子物質は、現在まで発見されて
いないので、新規物質と認定した。
からなる複合微生物R−3菌(Biochi.Biot
ech.Biochem.、58巻、1589〜159
4頁、1994年)を実施例1と同様に培養して、培養
液3リットルから純度98%以上のAPR−3を5.1
3g得た。APK−78の収率と比較すると30%少な
かった。
び有機酸の組成(モル比)を調べた結果、次の如くであ
った。 ガラクトース=1.0、グルコース=5.6±0.1、
フコース=0.7、コハク酸=0.6±0.1、ピルビ
ン酸=2.5±0.1。APK−78とは大幅に異なる
モル比であり、APK−78には存在しなかったフコー
スが存在していた。
−3の粉末について、海水を用いて各々の溶液(50m
g/1ml海水)を調製し、その内の20mlを使用し
て、各々について上記の油水分離能測定法により油水分
離能を測定し、下記表6の通りの結果を得た。
離能を有することは明らかである。又、APR−3のも
のより高活性を有する。尚、本実施例は海水を用いた例
であるが、通常の水道水を用いても同様な結果が得られ
た。
例1と同様に培養し、その培養の経時変化を調べた。そ
の結果を図14に示した。図14から分かるように培養
3日間でカオリン凝集活性は最高値に達した。尚、活性
は培養液の上澄液について測定した。APK−78生産
能を有しないが、微生物産生凝集剤を生産することが知
られているロードコッカス・エリスロポレスKR−25
6−2(FERM P−3923)を対照菌株として採
用し、R−5菌と同様の条件で培養した結果を図15に
示した(比較例1参照)。図14及び図15から分かる
ように、R−5菌は格段に活性が高い培養液を生産する
ことが分かる。尚、生育度は660nmにおける濁度測
定によった。又、図15においてはロードコッカス・エ
リスロポレスKR−256−2がAPK−78を生産し
ないので、APK−78の生産量に替えて粘度測定値を
もって凝集活性物質の生産量を表示した。
ERM P−3923)を、実施例1と同様な条件で培
養して得た培養液の上澄液について、膜濃縮により25
倍の濃縮を行い、APK−78溶液(50mg/1ml
海水)の調製条件と同様なものにした。実施例4と同様
の条件で油水分離能を測定し、下記表7の結果を得た。
わせてなる複合微生物R−4〜R−9及びKYM−1〜
KYM−8の単独菌を用いて、実施例1と同条件で培養
した。そして、図16に示すような結果を得た。
トアガー(nutrient agar)(Difco)の斜面培地に5代
植え継いで、APK−78の生産性を比較した。APK
−78の生産性は、実施例1と同様の条件で培養して、
培養液中のAPK−78を定量することにより行った。
その結果、添加した培地に植え継いだものは、APK−
78を1600mg/l生産していたが、無添加培地に
植え継いだものは、200mg/lしか生産されていな
かった。
で、活性の高い油水分離能及びカオリン凝集活性を有す
る新規物質である。そして、高活性の油水分離剤及び微
生物産生凝集剤として使用できる。それ故に、環境汚染
の油水分離処理において、又、排水処理において、それ
らの処理を効率よく達成することができる。本発明のA
PK−78生産能を有する微生物、特にAPK−78生
産能を有する微生物を、少なくとも1種を含む複合微生
物を培養することにより、簡便且つ効率よくAPK−7
8を大量生産することが可能となった。
ン。
し、5〜32ppmの範囲の拡大図。
し、55〜90ppmの範囲の拡大図。
し、10〜45ppmの範囲の拡大図。
し、172〜186ppm及び96〜110ppmの範
囲の拡大図。
し、55〜90ppmの範囲の拡大図。
し、10〜45ppmの範囲の拡大図。
し、96〜110ppmの範囲の拡大図。
56−2(FERM P−3923)菌株の培養の経時
変化。
各単独菌、及びAPK−78生産能を有する複合微生物
であるR−4〜R−9菌のAPK−78生産性比較。
Claims (11)
- 【請求項1】 以下の特性を有することを特徴とする新
規高分子物質APK−78。 (1)油水分離能を有する。 (2)凝集活性を有する。 (3)アミノ糖(エルソン・モーガン法):検出されな
い。 (4)ウロン酸(カルバゾール・硫酸法):検出されな
い。 (5)蛋白質(ニンヒドリン法):検出されない。 (6)元素分析:窒素N、リンP及び硫黄Sは痕跡。 (7)構成する糖及び有機酸の組成(モル比):ガラク
トース1、グルコース8.2、コハク酸2.1±0.
4、ピルビン酸1.2。 (8)分子量:2×106以上。 (9)粘度(ビスメトロン回転粘度計、SS−2ロータ
ー、25℃、回転数30rpm、溶媒は純水、Na型A
PK−78の0.5重量%濃度溶液):250cp。 (10)溶媒溶解性:水に可溶、アルカリに易溶、メタ
ノール、エタノール及びアセトンに不溶。 (11)IRスペクトル吸収帯(cm-1):2,700
〜3,700、1,730、1,600、1,400、
1,160。 (12)図1に記載の1HNMRのスペクトルを有す
る。 - 【請求項2】 新規微生物菌株アグロバクテリウム・テ
ュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)KY
M−8(FERM P−16806)。 - 【請求項3】 APK−78生産能を有するセルロモナ
ス・セルランスKYM−7株(FERM P−1135
8)又はアグロバクテリウム・テュメファシエンスKY
M−8株(FERM P−16806)を固体培地又は
液体培地に培養することより、当該培地中に請求項1に
記載のAPK−78を生産させ、当該物質を採取するこ
とを特徴とするAPK−78の生産方法。 - 【請求項4】 APK−78生産能を有するセルロモナ
ス・セルランスKYM−7株(FERM P−1135
8)又はアグロバクテリウム・テュメファシエンスKY
M−8株(FERM P−16806)をサイアミン又
はその誘導体を含有する培地に培養する請求項3に記載
のAPK−78の生産方法。 - 【請求項5】 APK−78生産能を有するセルロモナ
ス・セルランスKYM−7株(FERM P−1135
8)及びアグロバクテリウム・テュメファシエンスKY
M−8株(FERM P−16806)を、少なくとも
含む複合微生物を培養する請求項3又は4に記載のAP
K−78の生産方法。 - 【請求項6】 請求項1、3、4、又は5に記載のAP
K−78を主成分として含有してなることを特徴とする
微生物産生凝集剤。 - 【請求項7】 カチオン性無機塩を一種以上を含有する
請求項6に記載の微生物産生凝集剤。 - 【請求項8】 請求項6又は7に記載の微生物産生凝集
剤を懸濁物含有排水に接触せしめることを特徴とする排
水凝集処理方法。 - 【請求項9】 活性汚泥方法による排水凝集処理方法に
おいて、請求項6又は7に記載の微生物産生凝集剤を処
理系に存在させ、活性汚泥と処理水との分離領域におい
て、活性汚泥のバルキングを防止することを特徴とする
排水凝集処理方法。 - 【請求項10】 活性汚泥の分離領域のpHを、7〜9
に保持する請求項8又は9に記載の排水凝集処理方法。 - 【請求項11】 被処理排水が糸状菌を発生しやすい排
水である請求項8、9、又は10に記載の排水凝集処理
方法。
Priority Applications (1)
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JP11160378A JP3086879B2 (ja) | 1998-06-09 | 1999-06-08 | 新規高分子物質apk−78、その生産方法、微生物産生凝集剤及び排水凝集方法 |
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JP10-160062 | 1998-06-18 | ||
JP17176498 | 1998-06-18 | ||
JP10-171764 | 1998-06-18 | ||
JP11160378A JP3086879B2 (ja) | 1998-06-09 | 1999-06-08 | 新規高分子物質apk−78、その生産方法、微生物産生凝集剤及び排水凝集方法 |
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-
1999
- 1999-06-08 JP JP11160378A patent/JP3086879B2/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
日本農芸化学会誌,Vol.73,臨時増刊号,1999年度大会講演要旨集,P.276(Mar.1999) |
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