JP3083703B2 - 高Crフェライト系耐熱鋼用潜弧溶接方法 - Google Patents

高Crフェライト系耐熱鋼用潜弧溶接方法

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JP3083703B2
JP3083703B2 JP06072884A JP7288494A JP3083703B2 JP 3083703 B2 JP3083703 B2 JP 3083703B2 JP 06072884 A JP06072884 A JP 06072884A JP 7288494 A JP7288494 A JP 7288494A JP 3083703 B2 JP3083703 B2 JP 3083703B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高い靱性を有する高強度
耐熱鋼の溶接材料に関するものであり、さらに詳しくは
高温におけるクリープ特性、靱性、耐割れ性に優れた溶
接金属を与える潜弧溶接方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】高温高能率型のエネルギープラント用鋼
材として、クリープ強度が極めて優れかつオーステナイ
ト系ステンレス鋼に見られるような応力腐食割れの心配
が少ないフェライト系耐熱鋼の要望が強く、この種の材
料が使用され始めている。フェライト系耐熱鋼用に開発
されている溶接材料として、例えば特開昭60−257
991号公報に開示されている9Cr−Mo系鋼用溶接
ワイヤの如く溶接ワイヤ中のC、Si、Mn、Cr、M
o、Ni量を限定し、さらにNb、Vの1種または2種
を添加して(Nb+V)で0.3%以下とする溶接ワイ
ヤが提案されている。
【0003】また、特開平2−280993号公報では
8〜12Cr系溶接材料の如くC、Si、Mn、Cr、
Ni、Mo、W、V、Nb、Al、N添加量を限定し、
Cr当量:13%以下とする溶接材料が提案されてい
る。しかしながらこれらの従来技術は大幅にクリープ強
度を向上しようとするものではなく、組織的にはマルテ
ンサイト相中にδフェライトを晶出することがあり、こ
の晶出したδフェライトは基地中マルテンサイトより著
しく軟らかい相であり、このような軟らかい第二相が硬
い基地中に分散する場合、全体の衝撃特性は著しく低下
する。潜弧溶接のように大入熱で溶接する場合は特にδ
フェライトを生成しやすく、そのために溶接金属の靱性
を低下させるという欠点を有している。本発明者らはこ
れらの欠点の改善方法を特願平4−95379号で提案
しているが、これらの溶接材料には靱性を維持しつつさ
らにクリープ強度向上の要望があり、特に長時間側にお
けるクリープ強度の劣化の改善が必要であり、さらにこ
れらの溶接材料を使用した溶接構造物の使用環境がさら
に高温度化する傾向があるため、これら高温に耐え得る
クリープ特性を有した溶接材料の開発が必要となってい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第一の目的は
大入熱で溶接する潜弧溶接において、得られる溶接金属
のマルテンサイト中に晶出するδフェライトの生成を抑
制することで溶接金属の靱性を改善し、さらに長時間側
のクリープ破断強度を向上しようとするものであり、さ
らに本発明の第二の目的は従来(550〜600℃)よ
りさらに高温度域(600〜650℃)でのクリープ破
断強度も向上しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、第一の発明はワイヤは重量比で、
C:0.03〜0.12%、Si:0.3%以下、M
n:0.3〜1.5%、Cr:8〜13%、Nb:0.
01〜0.15%、V:0.03〜0.40%、N:
0.01〜0.08%、B:0.0010〜0.005
0%を含有し、フラックスは重量比で、CaF2 :10
〜30%、CaOまたはMgOの少なくとも一方:10
〜40%、Al23 :10〜40%、SiO2 :5〜
25%を含有し、さらにワイヤ、フラックスの少なくと
も一方に、各成分元素をMとしたとき下記(1)式によ
り重量比で、Mo:0.3〜1.6%、W:0.5〜
3.5%、Ni:0.05〜1.2%、CuまたはCo
の少なくとも一方:1.0〜5.0%を含有し、ワイヤ
およびフラックスの残部はFeおよび不可避的不純物で
あり、さらに下記(1)式によるMo、W、Ni、C
u、Co量の間に重量比で、(Mo+W)/(Ni+C
u+Co)≦1.8なる関係が成立するようにワイヤと
フラックスを組み合わせ潜弧溶接することを特徴とする
高Crフェライト系耐熱鋼用潜弧溶接方法である。 M=ワイヤ中のM+0.7×フラックス中のM・・・・・(1)
【0006】また第二の発明はワイヤは重量比で、C:
0.03〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:
0.3〜1.5%、Cr:8〜13%、Nb:0.01
〜0.15%、V:0.03〜0.40%、Ni:0.
05%未満、N:0.01〜0.08%を含有し、必要
に応じてB:0.0010〜0.0050%を含有し、
フラックスは重量比で、CaF2 :10〜30%、Ca
OまたはMgOの少なくとも一方:10〜40%、Al
23 :10〜40%、SiO2 :5〜25%を含有
し、さらにワイヤ、フラックスの少なくとも一方に、各
成分元素をMとしたとき上記(1)式により重量比で、
Mo:0.3〜1.6%、W:0.5〜3.5%、Cu
またはCoの少なくとも一方:1.0〜5.0%を含有
し、ワイヤおよびフラックスの残部はFeおよび不可避
的不純物であり、さらに上記(1)式によるMo、W、
Cu、Co量の間に重量比で、(Mo+W)/(Cu+
Co)≦1.8なる関係が成立するようにワイヤとフラ
ックスを組み合わせ潜弧溶接することを特徴とする高C
rフェライト系耐熱鋼用潜弧溶接方法である。
【0007】また前記各発明において、ワイヤ、フラッ
クスの少なくとも一方にMo、W、Niおよび、Cuも
しくはCoの少なくとも一方を含有する範囲は、ワイ
ヤ、フラックスそれぞれにおいて0.05〜12%であ
ることも特徴とする。
【0008】
【作用】本発明の第一の発明の最大の特徴は溶接ワイヤ
またはフラックス中にCuまたはCoの少なくとも一方
を添加し、かつMo、W、Ni、Cu、Co量との間に
(Mo+W)/(Ni+Cu+Co)が1.8以下にな
るように限定共存させ、溶接して得られる溶接金属のδ
フェライトの生成を抑制し、靱性を格段に高め、ワイヤ
にBを適量添加することによりクリープ破断強度を向上
させたところにある。Bはフラックスからの添加も有効
であるが、微量配合となるため偏析が発生しワイヤから
の添加に比べ効果が不安定である。そのためBの添加を
ワイヤからのみに限定した。
【0009】また、第二の発明の最大の特徴は溶接ワイ
ヤまたはフラックス中に靱性改善に有効とされるNiの
代わりにCuまたはCoの少なくとも一方を添加して溶
接金属の靱性を確保しつつクリープ強度を改善したこと
にある。Niは靱性を改善するために有効な元素である
ことは周知のことであるが、その反面で高温における長
時間側のクリープ強度を低下させることが最近の研究で
明らかになってきている。本発明者等は数々の研究実験
を行なった結果、CuおよびCoがNiとは異なり、ク
リープ特性を劣化させることなく、Ni同様にδフェラ
イトの生成を抑制し靱性を改善する元素であることを見
いだした。すなわちNiの代わりにCuまたはCoの少
なくとも一方を添加し、かつMo、W、Cu、Co量と
の間に(Mo+W)/(Cu+Co)が1.8以下にな
るように限定共存させることにより、溶接して得られる
溶接金属のδフェライトの生成を抑制し、靱性を確保し
つつクリープ破断強度を向上させうるという知見を得
た。以下に本発明の各成分の限定理由についてまず、ワ
イヤから述べる。
【0010】C:0.03〜0.12% Cは焼き入れ性と強度確保のため0.03%以上必要で
あるが、0.12%を超えると耐割れ性が劣化する。従
ってCを0.03〜0.12%に制限する。
【0011】Si:0.3%以下 Siは脱酸剤として添加するものであるが、また耐酸化
性を向上させる元素でもある。しかし0.3%を超える
と靱性が劣化する。従ってSiを0.3%以下に制限す
る。
【0012】Mn:0.3〜1.5% Mnは脱酸のためのみでなく、強度保持上も必要な成分
である。0.3%未満では効果がなく1.5%を超える
と靱性が劣化する。従ってMnを0.3〜1.5%に制
限する。
【0013】Cr:8〜13% Crは耐酸化性と焼き入れ性を確保する上で非常に重要
な元素であり最低8%必要である。13%を超えると耐
割れ性を損なうと同時にδフェライトを晶出させ靱性の
劣化が著しくなる。従ってCrを8〜13%に制限す
る。
【0014】Nb:0.01〜0.15% NbはVと同様に炭窒化物として析出して強度を確保す
るほか、結晶粒を微細化して靱性を与える元素としても
重要である。0.01%未満ではその効果がなく、0.
15%を超えるとその効果は飽和してしまうだけでなく
靱性及び溶接性の低下も招く。従ってNbを0.01〜
0.15%に制限する。
【0015】V:0.03〜0.40% Vは炭窒化物として析出させて強度の確保に効果があ
る。0.03%未満では効果がなく、0.40%を超え
るとかえって強度低下を生じる。従ってVを0.03〜
0.40%に制限する。
【0016】Ni:0.05%未満 Niは靱性の改善に有効である反面、高温での長時間側
のクリープ強度を劣化させる傾向があり、0.05%を
超えると特にその影響が顕著になる。従って第二の発明
ではNiを0.05%未満に制限する。
【0017】N:0.01〜0.08% Nは基地中に固溶しても、また窒化物として析出しても
著しいクリープ抵抗として寄与する。0.01%未満で
はその効果がなく、0.08%を超えると窒化物が多量
に析出して逆に靱性が劣化し、ブローホールが発生す
る。従ってNを0.01〜0.08%に制限する。
【0018】B:0.0010〜0.0050% Bは溶接金属の高温での引張強度およびクリープ強度を
向上させ、特に長時間側におけるクリープ強度を維持し
劣化を防ぐのに有効である。0.0010%未満ではそ
の効果が少なく、0.0050%を超えると溶接金属の
耐割れ性が著しく劣化する。従ってBを0.0010〜
0.0050%に制限する。
【0019】次にフラックス成分の限定理由について述
べる。
【0020】CaF2 :10〜30% CaF2 はスラグの塩基度を上げ、溶接金属中のOを著
しく低減し靱性を良好にする効果がある。またスラグの
溶融点を低下させ溶け込みを浅くしスラグの剥離性を良
好にするとともにビード形状、外観を良好にする。10
%未満ではその効果がなく、30%を超えるとスラグの
流動性が過大となりビード形状、外観が劣化する。従っ
てCaF2 を10〜30%に制限する。
【0021】CaOまたはMgOの少なくとも一方:1
0〜40% CaOおよびMgOはいずれも強塩基性成分でCaF2
と共に溶接金属中のO低減に有効である。またCaO、
MgOは耐火性の大きい成分であり、融点の低いCaF
2 を含有するフラックスの溶融特性を調整し、ビード形
状を整えるのに有効である。10%未満ではその効果が
なく、40%を超えるとフラックスが溶け難くビード表
面が平滑さを失い、またアンダーカット等の溶接欠陥が
発生する。従ってCaOまたはMgOの少なくとも一方
における合計量で10〜40%に制限する。
【0022】Al23 :10〜40% Al23 は融点が高く、スラグの流動性を調整し、ビ
ード形状を整えるのに有効である。この効果は特に多層
盛溶接に用いる時に重要であり、ビードどうしのなじみ
が良好となりスラグ巻き込み、アンダーカット等の欠陥
の発生を防止する。10%未満では効果がなく、40%
を超えるとスラグ巻き込みや、アンダーカットが生じや
すくなる。従ってAl23 を10〜40%に制限す
る。
【0023】SiO2 :5〜25% SiO2 はスラグの粘性を調整し、ビード外観を改善す
るのに有効であるが、5%未満では効果がなく、25%
を超えると粘性が大きくなるためスラグ巻き込みが発生
する。従ってSiO2 を5〜25%に制限する。
【0024】原料は単独物質と共に上記成分を含有する
化合物、鉱石あるいは溶融形フラックス等で添加するこ
とができる。例えば用いる原料として、CaF2 は蛍
石、溶融形フラックス等、CaOは炭酸石灰、溶融形フ
ラックス等、MgOはマグネシアクリンカー、溶融型フ
ラックス等、Al23 はアルミナ、溶融形フラックス
等である。また、必須成分のほかに酸化消耗する成分を
調整するために金属粉、合金粉等や脱酸剤等を配合する
ことができる。
【0025】更にワイヤとフラックスの組み合わせで添
加する成分の限定理由について述べる。ここで以下に述
べる各成分元素はこれをMとしたとき、下記(1)式に
よる分量とする。これは同じ分量添加されていてもワイ
ヤ中の場合とフラックス中の場合では溶接金属への歩留
りが異なり、フラックス中の場合はワイヤ中の場合の7
0%程度になるからである。 M=ワイヤ中のM+0.7×フラックス中のM・・・・(1)
【0026】Mo:0.3〜1.6% Moは固溶体強化により、高温強度を顕著に高める元素
であり使用温度、圧力を上昇させる目的で添加する。W
との共存において、高温強度、特に高温長時間側でのク
リープ破断強度の向上に効果がある。0.3%未満では
その効果がなく1.6%を超えるとδフェライトを晶出
させるため靱性が劣化する。従ってMoを0.3〜1.
6%に制限する。
【0027】W:0.5〜3.5% Wはフェライト系溶接金属のクリープ強度に寄与する固
溶体強化元素として最も優れた元素である。特に高温長
時間側でのクリープ破断強度向上の効果は極めて大き
い。0.5%未満ではMoとの共存において効果は発揮
できず3.5%を超えるとδフェライトを晶出させ溶接
金属の靱性が低下する。従ってWを0.5〜3.5%に
制限する。
【0028】Ni:0.05〜1.2% Niはフェライトの生成を抑制し、使用中の脆化軽減に
有効な元素であり、高温で長時間使用される本発明溶接
材料のような用途に対しては必須の元素である。0.0
5%未満ではその効果はなく1.2%を超えると高温ク
リープ特性を劣化させる。従ってNiを0.05〜1.
2%に制限する。
【0029】CuまたはCoの少なくとも一方:1.0
〜5.0% CuおよびCoはNiと同様にMo、W添加によって生
じるδフェライト晶出という問題点を相殺する重要な元
素であり、最低1.0%以上を必要とする。しかし5.
0%を超えるとAc1点を下げ、高温焼戻しが不可能とな
り組織の安定化処理ができなくなる。従ってCuおよび
Coの一方または両方を1.0〜5.0%に制限する。
【0030】(Mo+W)/(Ni+Cu+Co)≦
1.8 (Mo+W)/(Ni+Cu+Co)は本合金系におい
て高温強度と靱性とのバランスをとる上で非常に重要で
ある。MoおよびWは溶接金属の高温強度の向上に有効
な元素であるが、δフェライトを晶出させ靱性を劣化さ
せる。Ni、CuおよびCoはフェライトの生成を抑制
し、靱性を改善する元素である。これらの元素の共存効
果において溶接金属の高温強度と良好な靱性が得られ
る。(Mo+W)/(Ni+Cu+Co)が1.8を超
えるとδフェライトが晶出し靱性が劣化する。従って第
一の発明においては(Mo+W)/(Ni+Cu+C
o)≦1.8に制限する。
【0031】(Mo+W)/(Cu+Co)≦1.8 (Mo+W)/(Cu+Co)は本合金系において高温
強度と靱性とのバランスをとる上で非常に重要である。
MoおよびWは溶接金属の高温強度の向上に有効な元素
であるが、δフェライトを晶出させ靱性を劣化させる。
CuおよびCoはフェライトの生成を抑制し、靱性を改
善する元素である。これらの元素の共存効果において溶
接金属の高温強度と良好な靱性が得られる。(Mo+
W)/(Cu+Co)が1.8を超えるとδフェライト
が晶出し靱性が劣化する。従って、第二の発明において
は(Mo+W)/(Cu+Co)≦1.8に制限する。
【0032】さらにワイヤ、フラックスの少なくとも一
方にMo、W、Niおよび、CuもしくはCoの少なく
とも一方を含有する範囲は0.05〜12%にするのが
望ましい。0.05未満では溶接金属の成分が偏析し、
品質が安定しない。また12%を超えるとワイヤの場合
は鍛造性が、フラックスの場合は造粒性が劣化して生産
性が悪くなる。従ってワイヤ、フラックスの少なくとも
一方にMo、W、Niおよび、CuもしくはCoの少な
くとも一方を含有する範囲をワイヤ、フラックスそれぞ
れにおいて0.05〜12%に制限する。
【0033】
【実施例】
実施例1 以下に本発明溶接方法の効果を実施例により説明する。
実験に供したワイヤは真空溶解炉にて溶解し、鍛造、圧
延および線引きを行って4.0mm径に作製した。ワイ
ヤの組成を表1に示すが、W1〜W6は本発明に用いた
ワイヤ、W7〜W12は比較例に用いたワイヤである。
【0034】
【表1】
【0035】実験に供したボンドフラックスは通常のフ
ラックス原料として用いられる鉱石粉、複合化合物等を
混合、攪拌後、水ガラスを用いて造粒し、400℃で約
2時間焼成して作成した。フラックスの組成を表2に示
すが、F1〜F5は本発明用に用いたフラックス、F6
〜F10は比較例に用いたものである。
【0036】
【表2】
【0037】表1のワイヤと表2のフラックスとを組み
合わせ、表3に示す供試母材を用い、図1に示すような
開先(1は被溶接材、2は裏当材で、厚さ:25mm、
開先角度:30°、ルートギャップ:15mm)を形成
して表4に示す溶接条件で潜弧溶接を実施した。得られ
た溶接金属を740℃、4時間の後熱処理をした後、6
00℃、20kgf/mm2 の応力でクリープ破断試験
および試験温度0℃での2mmVノッチ衝撃試験を行っ
た。表6、表7にワイヤとフラックスとの組み合わせ
を、表8にその確性試験結果を示す。溶接作業性試験に
ついては各パスの溶接後に判定を行った。溶接割れ試験
については表3に示すB−1の鋼板に図2に示す開先を
形成し表5に示す溶接条件で1パスの潜弧溶接を実施し
た後、カラーチェックにより割れの有無を判定した。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】本発明例のNo.1〜No.15は優れた
溶接作業性、溶接金属が得られたが比較例のNo.16
はワイヤ中のC、Cr、N、B不足、ワイヤとフラック
スの組み合わせによるMo、W、CuおよびCoの一方
または両方の不足およびNi過多である。またNo.1
7はワイヤ中のC、Cr、N、B不足、ワイヤとフラッ
クスの組み合わせによるNi過多およびCuおよびCo
の一方または両方の不足である。No.18はワイヤ中
のSi、N、B過多およびNb不足、ワイヤとフラック
スの組み合わせによるMo不足およびW過多、(Mo+
W)/(Ni+Cu+Co)が1.8を超えている。
【0045】No.19はワイヤ中のC、Si、Cr過
多で、ワイヤとフラックスの組み合わせによるNi、C
uおよびCoの一方または両方の不足、(Mo+W)/
(Ni+Cu+Co)が1.8を超えている。またN
o.20はワイヤ中のMn、V不足、(Mo+W)/
(Ni+Cu+Co)が1.8を超えている。No.2
1はワイヤ中のNb、N過多およびB不足、ワイヤとフ
ラックスの組み合わせによるW不足およびNi過多であ
る。
【0046】No.22はワイヤ中のMn、V、B過
多、ワイヤとフラックスの組み合わせによるMo過多で
ある。またNo.23、No.24はフラックス中のC
aF2過多およびAl23 不足、No.25はフラッ
クス中のCaOおよびMgOの一方または両方が過多お
よびSiO2 不足、ワイヤとフラックスの組み合わせに
よるMo過多である。No.26はフラックス中のCa
2 不足、SiO2 過多、ワイヤとフラックスの組み合
わせによるMo、W過多、(Mo+W)/(Ni+Cu
+Co)が1.8を超えている。
【0047】No.27はフラックス中のCaOおよび
MgOの一方または両方が不足およびAl23 過多、
ワイヤとフラックスの組み合わせによるMo、Cuおよ
びCoの一方または両方の過多である。またNo.28
はフラックス中のCaF2 過多およびCaOおよびMg
Oの一方または両方が不足、ワイヤとフラックスの組み
合わせによるCuおよびCoの一方または両方が過多で
ある。No.29はワイヤ中のC、Cr、N、B不足、
フラックス中のCaF2 過多およびAl23不足、ワ
イヤとフラックスの組み合わせによるMo、Cuおよび
Coの一方または両方の不足およびNiの過多である。
【0048】No.30はワイヤ中のNb、N過多およ
びB不足、フラックス中のCaF2過多およびCaOお
よびMgOの一方または両方が不足、ワイヤとフラック
スの組み合わせによるW不足およびCuおよびCoの一
方または両方の過多である。またNo.31はワイヤ中
のMn、V、B過多、フラックス中のCaF2 不足およ
びSiO2 過多、ワイヤとフラックスの組み合わせによ
るMo過多、(Mo+W)/(Ni+Cu+Co)が
1.8を超えている。これら比較例は上述の個々の理由
により溶接作業性不良、機械的性質の劣化、割れやブロ
ーホールの発生等の問題点が認められた。
【0049】実施例2 実験に供したワイヤは実施例1と同じ方法で製造した。
ワイヤの組成を表9に示すが、W1′〜W7′は本発明
に用いたワイヤ、W8′〜W13′は比較例に用いたワ
イヤである。
【0050】
【表9】
【0051】実験に供したボンドフラックスは実施例1
と同じ方法で作製した。フラックスの組成を表10で示
すが、F1′〜F7′は本発明に用いたフラックス、F
8′〜F12′は比較例に用いたものである。
【0052】
【表10】
【0053】表9のワイヤと表10のフラックスとを組
み合わせ、実施例1で使用したのと同じ表3に示す供試
母材を用い、図1に示すような開先を形成してやはり実
施例1と同じ表4に示す溶接条件で潜弧溶接を実施し
た。得られた溶接金属を740℃、4時間の後熱処理を
した後、630℃で14および20kgf/mm2 の応
力でクリープ破断試験および試験温度0℃での2mmV
ノッチ衝撃試験を行なった。表11、表12にワイヤと
フラックスとの組み合わせを、表13にその確性試験結
果を示す。溶接作業性試験については各パスの溶接後に
判定を行なった。
【0054】
【表11】
【0055】
【表12】
【0056】
【表13】
【0057】本発明例のNo.1′〜No.14′は優
れた溶接作業性、溶接金属が得られたが比較例のNo.
15′はワイヤ中のC、Cr、N不足、ワイヤとフラッ
クスの組み合わせによるMo、W不足、CuおよびCo
の一方または両方の過多である。またNo.16′はワ
イヤ中のC、Cr、N不足、ワイヤとフラックスの組み
合わせによるCuおよびCoの一方または両方の過多で
ある。No.17′はワイヤ中のSi、N過多およびN
b不足、ワイヤとフラックスの組み合わせによるMo不
足およびW過多、(Mo+W)/(Cu+Co)が1.
8を超えている。
【0058】No.18′はワイヤ中のC、Si、Cr
過多で、ワイヤとフラックスの組み合わせによるCuお
よびCoの一方または両方の不足、(Mo+W)/(C
u+Co)が1.8を超えている。またNo.19′は
ワイヤ中のMn、V不足、(Mo+W)/(Cu+C
o)が1.8を超えている。No.20′はワイヤ中の
Nb、N過多、ワイヤとフラックスの組み合わせによる
W不足、CuおよびCoの一方または両方の過多であ
る。
【0059】No.21′はワイヤ中のMn、V、Bの
過多、ワイヤとフラックスの組み合わせによるMoの過
多である。またNo.22′はフラックス中のCaF2
過多およびAl23 不足である。No.23′はワイ
ヤとフラックスの組み合わせによるMo過多、フラック
ス中のCaOおよびMgOの一方または両方の過多およ
びSiO2 不足である。No.24′はフラックス中の
CaF2 過多およびAl23 不足である。
【0060】No.25′はワイヤとフラックスの組み
合わせによるMo、CuおよびCoの一方または両方の
過多、フラックス中のCaOおよびMgOの一方または
両方の不足およびAl23 が過多である。またNo.
26′はワイヤとフラックスの組み合わせによるMo、
Wの過多、(Mo+W)/(Cu+Co)が1.8を超
えており、フラックス中のCaF2 不足、SiO2 が過
多である。No.27′は(Mo+W)/(Cu+C
o)が1.8を超えている。
【0061】No.28′はワイヤとフラックスの組み
合わせによるCuおよびCoの一方または両方の過多お
よびフラックス中のCaF2 過多、CaOおよびMgO
の一方または両方の不足である。またNo.29′はワ
イヤとフラックスの組み合わせによるW不足がである。
No.30′はワイヤ中のC、Cr、N不足、ワイヤと
フラックスの組み合わせによるMo不足、フラックス中
のCaF2 過多およびAl23 の不足である。
【0062】No.31′はワイヤ中のNb、N過多、
ワイヤとフラックスの組み合わせによるW不足、Cuお
よびCoの一方または両方の過多、フラックス中のCa
2過多およびCaOおよびMgOの一方または両方の
不足である。またNo.32′はワイヤ中のMn、V、
B過多、ワイヤとフラックスの組み合わせによるMo過
多、(Mo+W)/(Cu+Co)が1.8を超えてお
り、フラックス中のCaF2 不足およびSiO2 が過多
である。これら比較例は上述の個々の理由により溶接作
業性不良、機械的性質の劣化およびブローホールの発生
等の問題点が認められた。
【0063】
【発明の効果】本発明溶接材料は従来の9〜12%Cr
鋼用溶接材料と比較して、高温でのクリープ強度を著し
く高めたものであり、靱性および溶接性などの特性にも
優れている。実施例1の表6ないし表8および実施例2
の表11ないし表13に示したように溶接材料の組み合
わせが本発明の要件を満たすものは、本発明の要件を満
たさないもの(比較例)と比べて高温クリープ特性だけ
でなく、靱性および溶接性に優れていることは明らかで
ある。各種発電ボイラ、化学圧力容器などに使用される
9〜12%Cr系鋼を溶接する場合に本発明に係わる溶
接材料を使用することにより、溶接継手の信頼性を大幅
に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に用いた溶接部の開先形状を示す断面図
【図2】実施例に用いた溶接部の開先形状を示す断面図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−76789(JP,A) 特開 昭62−252695(JP,A) 特開 昭55−110758(JP,A) 特開 昭62−224493(JP,A) 特開 昭57−202981(JP,A) 特開 昭55−30354(JP,A) 特開 平3−264615(JP,A) 特開 昭50−33920(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/18 B23K 35/30 B23K 35/362

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワイヤは重量比で、 C :0.03〜0.12% Si:0.3%以下 Mn:0.3〜1.5% Cr:8〜13% Nb:0.01〜0.15% V :0.03〜0.40% N :0.01〜0.08% B :0.0010〜0.0050% を含有し、フラックスは重量比で、 CaF2 :10〜30% CaOまたはMgOの少なくとも一方:10〜40% Al23 :10〜40% SiO2 :5〜25% を含有し、さらにワイヤ、フラックスの少なくとも一方
    に、各成分元素をMとしたとき下記(1)式により重量
    比で、 Mo:0.3〜1.6% W :0.5〜3.5% Ni:0.05〜1.2% CuまたはCoの少なくとも一方:1.0〜5.0% を含有し、ワイヤおよびフラックスの残部はFeおよび
    不可避的不純物であり、さらに下記(1)式によるM
    o、W、Ni、Cu、Co量の間に重量比で、 (Mo+W)/(Ni+Cu+Co)≦1.8 なる関係が成立するようにワイヤとフラックスを組み合
    わせ潜弧溶接することを特徴とする高Crフェライト系
    耐熱鋼用潜弧溶接方法。 M=ワイヤ中のM+0.7×フラックス中のM・・・・・(1)
  2. 【請求項2】 ワイヤは重量比で、 C :0.03〜0.12% Si:0.3%以下 Mn:0.3〜1.5% Cr:8〜13% Nb:0.01〜0.15% V :0.03〜0.40% Ni:0.05%未満 N :0.01〜0.08% を含有し、フラックスは重量比で、 CaF2 :10〜30% CaOまたはMgOの少なくとも一方:10〜40% Al23 :10〜40% SiO2 :5〜25% を含有し、さらにワイヤ、フラックスの少なくとも一方
    に、各成分元素をMとしたとき下記(1)式により重量
    比で、 Mo:0.3〜1.6% W :0.5〜3.5% CuまたはCoの少なくとも一方:1.0〜5.0% を含有し、ワイヤおよびフラックスの残部はFeおよび
    不可避的不純物であり、さらに下記(1)式によるM
    o、W、Cu、Co量の間に重量比で、 (Mo+W)/(Cu+Co)≦1.8 なる関係が成立するようにワイヤとフラックスを組み合
    わせ潜弧溶接することを特徴とする高Crフェライト系
    耐熱鋼用潜弧溶接方法。 M=ワイヤ中のM+0.7×フラックス中のM・・・・・(1)
  3. 【請求項3】 ワイヤは重量比で、 B :0.0010〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項2記載の高Crフェ
    ライト系耐熱鋼用潜弧溶接方法。
  4. 【請求項4】 ワイヤ、フラックスの少なくとも一方に
    Mo、W、Niおよび、CuもしくはCoの少なくとも
    一方を含有する範囲は、ワイヤ、フラックスそれぞれに
    おいて0.05〜12%であることを特徴とする請求項
    1、2または3に記載の高Crフェライト系耐熱鋼用潜
    弧溶接方法。
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