JP3082040B1 - アルミニウム材の高能率光沢度向上方法 - Google Patents

アルミニウム材の高能率光沢度向上方法

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Abstract

【要約】 【課題】 アルミナを用いた電解砥粒研磨により、アル
ミニウム材の光沢度を簡便かつ高能率的に向上させる方
法を提供する。 【解決手段】 アルミナからなる微細な研磨遊離砥粒を
用い、0.5〜10wt%の希薄な電解液中において、
アルミニウム材の表面に発泡ポリウレタン等の粘弾性体
からなる研磨部材を接触回転させながら、5〜11mA
/cm の低電流密度の電解電流を流して、電解砥粒
研磨し、その表面の光沢度を向上させる。 【効果】 この方法では、研磨砥粒として安価なアルミ
ナを用い、粗さの改善とは程遠い僅かな電解作用を利用
して、廃液による環境汚染の問題を回避しながらアルミ
ニウム材の光沢度を高能率的に向上させることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム材の
光沢度を高能率的に向上させる光沢度向上方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムは実用材では最も軽く、銀
と同程度の高い反射率をもつ金属である。自然のままで
は空気中で容易に酸化して灰白色の酸化皮膜に覆われる
が、鏡面あるいは高度光沢仕上げされた板は、アルミニ
ウム本来の明るい金属光沢を有し、金属鏡や装飾用建材
として多用されている。このアルミニウム材は、従来、
電解研磨によって表面仕上げを行うのが通例であるが、
高濃度の電解液を使用するため、その電解液の廃棄処理
に環境汚染の問題があって、その電解研磨の利用が困難
になってきている。また、バフ等による機械的な研磨仕
上げは、アルミニウムが軟質材料のため、同様の用途で
使用されるステンレス鋼よりも遥かに難しく、熟練者が
必要になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、このよう
なアルミニウム材を簡便に鏡面仕上げする研磨方法を確
立すべく、各種研磨実験を繰り返した結果、砥粒研磨に
希薄な電解液による僅かな電解を複合する方法で、その
目的を達成できることを見出し、さらに具体的には、光
沢度に及ぼす電解液濃度や電流密度などの影響をも含め
て、アルミナによる砥粒研磨と適正な電解液濃度及び電
流密度での電解の複合により、表面粗さの改善とは直接
的な関係なしに、無電解の場合よりも光沢度が大幅に向
上する特性を持つことを見出した。この方法では、安価
なアルミナを研磨砥粒として使用することができ、しか
もその加工はきわめて高能率的であり、また、使用する
電解液も極めて希薄なものであるため、電解液の廃棄処
理による環境汚染の問題も容易に解消することができ
る。
【0004】本発明は、かかる知見に基づくものであ
り、その技術的課題は、基本的には、研磨砥粒として安
価なアルミナを用い、環境汚染の問題を回避しながらア
ルミニウム材の光沢度を高能率的に向上させる方法を提
供することにある。本発明のさらに具体的な技術的課題
は、上記知見に基づいて、電解砥粒研磨を行いながら
も、粗さの改善には程遠い僅かな電解作用により、光沢
度を大きく改善できるようにしたアルミニウム材の光沢
度向上方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明のアルミニウム材の光沢度向上方法は、アルミ
ナからなる微細な研磨砥粒を用い、0.5〜10wt%
の希薄な硝酸ナトリウム水溶液中において、アルミニウ
ム材の表面に粘弾性体からなる研磨部材を接触回転させ
ながら、5〜11mA/cm の低電流密度の電解電
流を流して、電解砥粒研磨し、その表面の光沢度を向上
させることを特徴とするものである。上記方法において
は、研磨部材として発泡ポリウレタンからなる研磨材を
用い、電解電流を流すための電極工具の表面にそれを固
定してアルミニウム材に接触回転させながら電解砥粒研
磨し、また、その電解砥粒研磨に用いる研磨砥粒として
はアルミナの遊離砥粒を用いるのが有効である。
【0006】本発明によれば、研磨砥粒として安価なア
ルミナを用い、しかも粗さの改善とは程遠い僅かな電解
作用を利用した方法により、環境汚染の問題を回避しな
がらアルミニウム材の光沢度を高能率的に向上させるこ
とができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いてさらに具体的に説明する。上記アルミニウム材の光
沢度向上方法においては、アルミナからなる微細な研磨
砥粒を含む希薄な電解液中において、アルミニウム材の
表面に発泡ポリウレタン等の粘弾性体からなる研磨部材
を接触回転させながら電解砥粒研磨するが、そこで用い
る遊離砥粒のアルミナは、電解作用とのバランスから平
均粒径が0.7μm程度(#9000相当)が適当であ
って、後述する工具の1パスにおける除去量が20〜3
0nm程度であることが望ましい。なお、上記遊離砥粒
に代えて、それと同等の切込みを与える固定砥粒を用い
ることもでき、この場合には、上記遊離砥粒よりも十分
に微細な砥粒を、ポリエステル等の粘弾性材料からなる
基材上に固定したラッピングフィルムやラッピングシー
ト等に保持させて用いるのが望ましい。
【0008】電解液としての硝酸ナトリウム水溶液の濃
度は、0.5wt%の範囲を越えるものを用いることが
できるが、後述する実施例からもわかるように、0.5
〜10wt%程度の希薄なものが適している。なお、電
解液濃度が上記範囲の下限よりも低下すると、所要の電
流密度を得るための電圧の設定が困難になり、また、濃
度を必要以上に高めることは、廃液の処理という観点か
ら望ましくない。
【0009】上記方法において、研磨部材としては、発
泡ポリウレタン等の粘弾性体が適しているが、一般的に
鏡面研磨等に利用されている他の粘弾性体を用いること
もできる。この研磨部材は、図1によって後述するよう
に、電解電流を流すための電極工具の表面にそれを固定
して、加工対象のアルミニウム材の表面に接触回転させ
ながら電解砥粒研磨するが、その際に上記電極工具とア
ルミニウム材との間に流す電解電流は、5〜11mA/
cm 、より好ましくは8〜10mA/cm の低電
流密度のものであり、これにより、粗さの改善とは程遠
い僅かな電解作用を利用して、表面の光沢度を向上させ
ることができる。
【0010】この電流密度は、他の加工条件との関連に
おいて適切に選択されるべきものである。良好な光沢度
が得られる電流密度の上限及び下限は、砥粒研磨による
機械的除去量に依存するものと考えられ、例えば、研磨
部材の押付け圧を高めたり、工具の回転数を高めたりし
た場合には、良好な光沢度が得られる電流密度の上限が
高くなる。研磨部材の押付け圧も、他の研磨条件との関
連において適切に設定されるが、一般的には、4〜15
kPa程度が採用される。なお、以下の実施例を含む実
験の過程において、電圧の直接的な影響は認められてい
ない。
【0011】以上に述べたような方法によって、アルミ
ニウム板を極低電流密度で電解砥粒研磨すると、無電解
の場合よりも光沢度を大幅に向上させることができ、そ
の場合に、研磨による表面粗さの改善が光沢度向上に及
ぼす影響は僅かであり、光沢度の向上は表面物性の変化
によるものと考えられる。
【0012】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこ
の実施例によって限定的に解釈されるべきではない。供
試材としては、JIS規格A1050P−H18の純ア
ルミニウム板で、150mm角、0.5mm厚のものを
使用した。電解砥粒研磨装置は、XYテーブル送り機構
を備えるもので、電極工具としては、図1に示すよう
に、ワークに対向して回転する外径110mm、内径7
0mmの銅電極1に、15mm厚の発泡ポリウレタン研
磨部材2を取付板3を介してねじ止めしたものを使用し
た。この装置における銅電極1は、研磨部材2の取付面
に多数の開口4を有し、供給管5を通して自然落下で供
給される電解液を上記開口4からワークの表面に供給す
るようにしている。また、電解電流は、電源の陰極に接
続された接触子6を介して銅電極1に供給するようにし
ている。
【0013】この電極工具は、回転数を400rpm、
押付け圧を8kPaとした。工具の動きは、図2に示す
ように、X方向に往復動させる間に、Y方向へ約4mm
ずつピックフィードを与え、X方向への移動に際し、工
具がワークに接触し始めてから完全に抜けるまでを1パ
スとした。工具のX方向送り速度は、8.4mm/sで
ある。なお、以下に示す実施例では、原則として2パス
ごとに研磨を停止して、光沢度、表面粗さ、質量等の測
定を行った。供給管5を通して供給した電解液は、平均
粒径が0.7μm程度(#9000相当)のアルミナ
(α−Al)の遊離砥粒を1wt%入れた硝
酸ナトリウム水溶液である。
【0014】加工に伴う供試材表面の除去量は、加工前
後の質量を最小読取り量0.1mgのメトラー電子天秤
で測定して求めた。また、光沢度は、日本電色工業株式
会社製デジタル光沢度計PG−3D(60°タイプ)、
表面粗さは、株式会社小坂研究所製の非接触粗さ測定装
置ET−30HK(レーザー光触針式)を用いて測定し
た。
【0015】以下に示す実験の結果から、一般的には、
硝酸ナトリウムの濃度を1wt%程度の低濃度とするこ
とができるが、この濃度は通常の電解砥粒研磨での20
wt%と比較して、桁違いに薄いものである。この電解
液の電導度は、加工開始後にAlイオンなどの付加によ
りそれが上昇するため、加工中に手動で電圧を変えて電
流値をほぼ一定に制御した。なお、以下に説明する実施
例の場合を含めて、電流値は、工具の全面がアルミニウ
ム板上にあるときの値である。
【0016】以下に、実験例の結果を示す。まず、図3
は、電解液の濃度と8または10パス目に得られた最高
光沢度の関係を示し、図4は、同濃度と除去速度との関
係を示している。更に、図5のA〜Cには、電解液濃度
を0.5wt%から10wt%まで変えた場合の最高光
沢度とパス回数との関係を示している。また、図6〜図
9の各A,Bには、電解液濃度を、それぞれ、0.5,
1,2及び5wt%にした場合の、各種電解電流値にお
ける光沢度とパス回数との関係、及び除去速度と電流密
度との関係を示している。
【0017】これらの結果から、電解液濃度は0.5w
t%を越える範囲のものを用いることができるが、必要
以上に濃度を高める必要はなく、一般的には、1〜2w
t%で十分である。図7のAは、1wt%電解液におけ
る光沢度向上特性を示しているが、同図中の電流値0.
5A(8.8mA/cm )、10パスで、光沢度7
79が得られており、これがここに示す実験例での最適
条件である。なお、同図において、電流値0.1A,
0.2Aについては、除去速度のデータを得るため、1
0パス連続加工のみを行った結果を示している。
【0018】また、本発明者は、先に、アルミニウム材
の光沢度向上のために、研磨砥粒としてジルコニアを用
い、0.03wt%程度の希薄な電解液中において、
0.1mA/cm のオーダーの電解電流を流して加
工する方法を提案しているが、図6〜図9の各Bに示す
除去速度と電流密度の関係から、上記既提案のジルコニ
アを用いる場合と比較して、除去速度は約20倍になっ
ており、アルミナ砥粒による機械的除去量と電解溶出量
の比は、1:2程度であると試算される。
【0019】図10は、レーザー光触針法により測定し
た三次元表面粗さの時間変化を示すものである。カット
オフ値は0.8mm、X方向の測定長さは4mm、測定
ピッチはX,Y方向とも0.3μm、Y方向ライン数は
10本である。三次元表面粗さSRmax,SRz,S
Raは、通常の二次元表面粗さRmax,Rz,Ra
(1ライン)を10ラインに拡張した値である。
【0020】除去量の観点でみると、ジルコニアを用い
た既提案の方法における40パスでの約40nmに相当
するのは2パスである。この時点でのSRaは30nm
であり、20nmに達するのは4パス以降である。上記
0.03wt%の希薄電解液では、電解がほとんど除去
速度に寄与しないのに対し、1wt%電解液では除去速
度の約70%を電解溶出に依存している。除去機構を考
えると、砥粒による機械的除去の方が電解溶出よりも凸
部選択特性がよい。したがって、同一除去量の時点を比
較すると、希薄液による加工の方が表面粗さ改善が進行
していることになる。しかしながら、上記アルミナを用
いる本発明の方法によれば、極めて高能率的に光沢度を
向上させることができる。
【0021】
【発明の効果】以上に詳述した本発明のアルミニウム材
の光沢度向上方法によれば、安価なアルミナを用いて、
アルミニウム材の光沢度を簡便かつ高能率的に向上させ
ることができ、特に、電解砥粒研磨を行いながらも、粗
さの改善には程遠い僅かな電解作用により光沢度を改善
することができ、電解液の廃棄処理による環境汚染の問
題も解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において用いた電解砥粒研磨装
置の断面図である。
【図2】本発明の実施例における工具の動きについての
説明図である。
【図3】電解液の濃度と得られた最高光沢度の関係を示
すグラフである。
【図4】電解液の濃度と除去速度との関係を示す実験結
果のグラフである。
【図5】A〜Cは、電解液濃度を変えた場合の最高光沢
度とパス回数との関係を示す実験結果のグラフである。
【図6】A及びBは、電解液濃度を0.5wt%にした
場合の、各種電解電流値における光沢度とパス回数との
関係、及び除去速度と電流密度との関係を示すグラフで
ある。
【図7】A及びBは、電解液濃度を1wt%にした場合
の、各種電解電流値における光沢度とパス回数との関
係、及び除去速度と電流密度との関係を示すグラフであ
る。
【図8】A及びBは、電解液濃度を2wt%にした場合
の、各種電解電流値における光沢度とパス回数との関
係、及び除去速度と電流密度との関係を示すグラフであ
る。
【図9】A及びBは、電解液濃度を5wt%にした場合
の、各種電解電流値における光沢度とパス回数との関
係、及び除去速度と電流密度との関係を示すグラフであ
る。
【図10】三次元表面粗さの時間変化を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25F 3/20 B24B 37/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナからなる微細な研磨砥粒を用い、
    0.5〜10wt%の希薄な硝酸ナトリウム水溶液中に
    おいて、アルミニウム材の表面に粘弾性体からなる研磨
    部材を接触回転させながら、5〜11mA/cm
    低電流密度の電解電流を流して、電解砥粒研磨し、その
    表面の光沢度を向上させることを特徴とするアルミニウ
    ム材の高能率光沢度向上方法。
  2. 【請求項2】研磨部材として発泡ポリウレタンからなる
    研磨材を用い、電解電流を流すための電極工具の表面に
    それを固定してアルミニウム材に接触回転させながら、
    電解砥粒研磨することを特徴とする請求項1に記載のア
    ルミニウム材の高能率光沢度向上方法。
  3. 【請求項3】研磨砥粒として遊離砥粒を用いることを特
    徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム材の高
    能率光沢度向上方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009041657A1 (ja) 2007-09-28 2009-04-02 Fujifilm Corporation 太陽電池用基板および太陽電池
WO2009041659A1 (ja) 2007-09-28 2009-04-02 Fujifilm Corporation 太陽電池

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009041657A1 (ja) 2007-09-28 2009-04-02 Fujifilm Corporation 太陽電池用基板および太陽電池
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