JP3081863U - 巻鉄心の構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】能率良く製造することができ、品質に優れた巻
鉄心を提供する。また、樹脂の使用による品質の低下を
防止し、製造作業環境の向上をはかると共に、リサイク
ルも行い易くする。 【解決手段】巻鉄心１を、環状に折曲された長さの異な
る複数の磁性鋼板２を外周方向に重ね合わせて形成し
た。そして、各磁性鋼板２の対向した端面２ａ，２ｂ
を、その積層方向にわたって所定寸法づつ均等にずら
し、接合部３を階段状にした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、リアクトルやフィルター、変圧器などの磁心として用いられる巻鉄 心の構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、この種の巻鉄心は、帯状の磁性鋼板を所定形状の巻軸に巻回して巻鉄心 を形成したあと、これを接着剤などの樹脂で固めてブロック化し、その後、これ を切断するという工程を経て、形成されていた。

【０００３】 そして、このように切断して形成された巻鉄心は、この切断部分からコイルを 挿入した後、切断部分に間隙を空けた状態、あるいはその間にポリエステルフィ ルムやガラス、ゴムなどのギャップ部材を介在させて、元のように組み付けられ ることにより、この切断部分を磁心の磁気飽和をし難くするように機能させてい た。

【０００４】 なお、上記の巻鉄心の製造工程において、材料となる帯状の磁性鋼板は、巻回 や切断などにより、種々の機械的なストレスを受け、これにより材料の磁性に、 むらやばらつきが生じるおそれがあった。そのため、これらの工程の間、あるい はこの工程の後、所定ガス雰囲気中で焼き鈍し、このストレスを解放するという 工程も必要であった。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上述した従来の巻鉄心は、その製造工程において、磁性鋼板を巻回して巻鉄心 を形成したあと、これを接着剤などの樹脂で固めてブロック化し、切断するとい う工程が必要であった。また、この製造過程において、磁性鋼板が種々の機械的 なストレスを受けるため、焼き鈍してこの機械的なストレスを解放するという作 業も必要であった。そのため、作業工程数が多く、また、焼き鈍したり、樹脂を 乾燥固化させるための時間も必要で、製造作業能率が極めて悪いという問題点が あった。

【０００６】 また、この巻鉄芯を製造するためには、まず、磁性鋼板を巻回するための芯金 を必要とし、その後、この巻回された巻鉄心を樹脂で固めたり、これを切断する ために、専用の治具を要するという問題点もあった。

【０００７】 さらにまた、この従来の巻鉄芯は、焼き鈍して機械的なストレスを解放するよ うにしているが、接着剤などの樹脂で、巻回された磁性鋼板を固めているため、 接着歪みによる悪影響が生じるおそれがあり、また、リサイクルへの対応も困難 であるという問題点があった。

【０００８】 本考案は、上記従来の巻鉄心が有していた問題点の解決を課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

上記の問題点を解決するために、本考案のうち、請求項１記載の考案は、巻鉄 心を、環状に折曲された長さの異なる複数の磁性鋼板を外周方向に重ね合わせて 形成し、かつ、各磁性鋼板の対向した端面を、その積層方向にわたって所定寸法 づつ均等にずらすことにより、接合部を階段状にした構造を特徴とする。

【００１０】 請求項２記載の考案は、巻鉄心を、環状に折曲された長さの異なる複数の磁性 鋼板を外周方向に重ね合わせて形成し、かつ、各磁性鋼板の対向した端面を、先 端が鋭角の山形に形成すると共に、その積層方向にわたって所定寸法づつ均等に ずらし、接合部がジグザグにかみ合うようにした構造を特徴とする。

【００１１】 請求項３記載の考案は、巻鉄心を、環状に折曲された長さの異なる複数の磁性 鋼板を外周方向に重ね合わせて形成し、かつ、各磁性鋼板の対向した端面を、そ の積層方向にわたって交互に所定寸法づつずらし、接合部において磁性鋼板の端 部が交互に入り込むようにした構造を特徴とする。

【００１２】 請求項４記載の考案は、上記請求項１から３記載の考案の構成において、異種 の磁性鋼板を組み合わせた構成を付加したことを特徴とする。

【００１３】

【考案の実施の形態】

以下、本考案を図示した実施の形態に基づき詳細に説明する。

【００１４】 図１は、本考案に係る巻鉄心１の正面図である。この巻鉄心１は、従来の巻鉄 心と同様に、所定幅の磁性鋼板２を外周方向に積層した構造を有しているが、こ こにおいて、本考案では、この磁性鋼板２は、従来のものように長尺のものを巻 回するのではなく、環状に折曲されたものを、外周方向に積み重ねることとして いる。つまり、巻鉄芯１は、環状に形成された複数の磁性鋼板２を、同心状に配 置することにより形成されている。したがって、内側に位置した磁性鋼板２は、 その外側に位置した磁性鋼板２よりも寸法が短く、このように、所定寸法づつ長 さが異なった複数の磁性鋼板２で巻鉄芯１が構成されている。なお、この寸法差 は、用いられる磁性鋼板２の厚さや、形成される巻鉄心１の形状に応じて相違す る。

【００１５】 そして、その組み立ては、環状に折曲された際に、内側に配置されるものの外 周の長さが、その外側に嵌められるものの内周の長さに等しくなるように、予め 寸法差を設けて準備された複数の磁性鋼板２を、それぞれ環状の相似形に屈曲し 、これを寸法の小さいものから順に、その外側に嵌め込むことによりなされる。

【００１６】 また、この時、本考案では、嵌め込まれる各磁性鋼板２の端部の合わせ目の位 置が、磁性鋼板２を重ね合わせた際に所定寸法づつ均等にずれるようにしている 。つまり、磁性鋼板２の長さが異なっても、その一端から折曲開始位置までの寸 法を等しいこととしている。

【００１７】 したがって、この磁性鋼板２を用いて形成された本考案の巻鉄心１には、その 一部に各磁性鋼板２の対向した端面２ａ，２ｂで、階段状の接合部３が形成され るものである。

【００１８】 以上のようにして、本考案の巻鉄心１が、製造される。

【００１９】 次に、この巻鉄心１への巻線の装着について述べる。

【００２０】 本考案の巻鉄心１は、上述したように、磁性鋼板２の積層された方向に、階段 状の接合部３が形成されているので、まずこの接合部３の部分を、図２に矢印で 示すように拡げ、次いで、巻鉄心１の脚１ａを図３に示すように、円筒形の巻線 ４（あるいは巻線用ボビン）の中心孔４ａに挿入する。そして、この接合部３の 部分を元の状態に戻せば、巻線４は、図４に示すように巻鉄心１の脚１ａに装着 される。

【００２１】 次に、このようにして巻鉄心１の脚１ａが挿入された巻線４の中心孔４ａの残 った間隙に、図５に示すように、上記と同様にして他の巻鉄心１の脚１ａを挿入 する。

【００２２】 以上のようにして、図６に示すように、本考案の巻鉄心１を用いた外鉄形のト ランスが完成する。

【００２３】 なお、上記は外鉄形のトランスを例示したが、本考案の巻鉄心１は、巻線４を 両側の脚１ａに挿入したり、あるいは、その両側にさらに同様に巻鉄心１を取り 付けるようにしても良く、また、トランスに限らず、フィルターや変圧器などの 磁心として用いても良い。なお、この場合、接合部３は、必ずしも図示したよう に、巻鉄心１の隅角部分に位置していなくても良い。

【００２４】 このように本考案の巻鉄心１では、接合部３が階段状に外側に向かって傾斜し ているので、巻線４の取り付けが極めて容易に行える。また、その製造も磁性鋼 板２を巻回後、切断するのではなく、予め必要な寸法と形状に形成された磁性鋼 板２を、外周方向に重ね合わせるだけなので、従来のように、接着剤などの樹脂 で巻鉄心を固める必要がなく、また切断時に巻鉄心を固定する治具も不要である 。さらに、製造時に磁性鋼板を巻回するための芯金も不要である。

【００２５】 また、このように樹脂を用いていないので、巻鉄心１の使用温度が、樹脂の連 続使用温度により制限されることもない。

【００２６】 さらに、上記のように樹脂で固めたり、その後、切断したりする工程が不要な ので、製造作業能率が良く、しかも製造過程において磁気特性に影響を及ぼす歪 みも生じ難い。したがって、巻鉄芯の製造後、歪みを逃がすために焼き鈍す必要 もない。

【００２７】 図７は、本考案の他の実施形態を示したものである。この場合は、巻鉄心１１ を構成する各磁性鋼板１２の対向した端面１２ａ，１２ｂを、先端が鋭角の山形 に形成することにより、接合部１３がジグザグにかみ合うようにしたものである 。なお、その製造工程は、巻回される磁性鋼板１２の端面加工が異なるだけで、 その他は、前記実施形態のものと何ら変わることはない。

【００２８】 そして、このように、巻鉄心１１を構成する磁性鋼板１２の対向した端面１２ ａ，１２ｂを、先端が尖った山形（あるいは鋸刃状）とすれば、接合部１３自体 が磁性鋼板１２の積層方向に対して斜めに位置していることと相まって、その対 向面積が大きくなり、機械的な接合強度が向上すると共に、一層の磁気性能の高 揚効果が得られることとなる。

【００２９】 図８は、本考案のさらに他の実施形態を示した要部拡大図である。この場合は 、巻鉄心を構成する各磁性鋼板２２の対向した端面２２ａ，２２ｂを、その積層 方向（図８において左右方向）にわたって交互に所定寸法づつずらし、その接合 部分において磁性鋼板２２の端部２２ｃ，２２ｄが交互に入り込むようにしたも のであり、このようにすることにより、励磁電流を低く抑える必要のある高性能 トランスやインバータ用に好適なものとなる。

【００３０】 なお、本考案の巻鉄心１は、長尺の磁性鋼板を巻回するのではなく、複数の磁 性鋼板２を嵌め込んで形成されているので、磁性鋼板２の材質が異なるものを組 み合わせて使用することもでき、このようにすれば、従来には見られない特性の 巻鉄芯を、必要に応じて提供することが可能となる。

【００３１】

【考案の効果】

以上説明したように本考案のうち、請求項１記載の考案は、巻鉄心の接合部を 、磁性鋼板の対向した端面が、その積層方向にわたって所定寸法づつ均等にずれ て形成された階段状のものとしたので、磁性鋼板の巻回後、切断する必要がなく 、したがって、切断作業に備えて磁性鋼板を樹脂で固める作業も不要になる。ま た、製造時の機械的なストレスを解放するための焼き鈍し作業も不要なので、効 率良く品質の高いものを製造することができる。また、樹脂による磁界への悪影 響や、使用温度の制限などの条件が排除されるので、この巻鉄心を用いたトラン スなどの製品の品質の向上がはかられる。さらに樹脂を用いていないので、製造 作業環境が良好に保たれると共に、この巻鉄心を用いた製品のリサイクルも容易 になるという多くの優れた効果を奏する。

【００３２】 また、請求項２記載の考案は、磁性鋼板の対向した端面を、先端が鋭角の山形 とすることにより、接合部がジグザグにかみ合うようにしたので、機械的な接合 強度が向上すると共に、接合部分の対向面積が大きくなり、上記請求項１記載の 考案の効果に加え、一層の磁化特性の向上がはかられるという効果がある。

【００３３】 請求項３記載の考案は、磁性鋼板の対向した端面を、その積層方向にわたって 交互に所定寸法づつずらし、接合部において磁性鋼板の端部が交互に入り込むよ うにしたので、機械的な接合強度が向上すると共に、励磁電流が低く抑えられる という効果がある。

【００３４】 請求項４記載の考案は、巻鉄心を構成した磁性鋼板を、特性が異なる種類のも のを組み合わせて使用することとしたので、上記請求項１から３に記載された考 案の効果に加え、必要に応じて必要な特性の巻鉄心を提供できるという効果があ る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る巻鉄心の一実施形態の正面図であ
る。

【図２】巻鉄心に巻線を装着する前の状態を示した説明
図である。

【図３】巻鉄心に巻線を装着する途中の状態を示した説
明図である。

【図４】巻鉄心に巻線を装着した状態の説明図である。

【図５】巻線に他方側の巻鉄心の脚を挿入状態を示した
説明図である。

【図６】本考案の巻鉄心を用いたトランスの例を示した
簡略正面図である。

【図７】本考案の他の実施形態を示した正面図である。

【図８】本考案のさらに他の実施形態の要部拡大図であ
る。

【符号の説明】

１，１１ 巻鉄心 ２，１２，２２ 磁性鋼板 ２ａ，２ｂ，１２ａ，１２ｂ，２２ａ，２２ｂ 磁性鋼
板の対向した端面 ２２ｃ，２２ｄ 磁性鋼板の端部 ３，１３ 接合部 ４ 巻線

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 環状に折曲された長さの異なる複数の磁
   性鋼板を外周方向に重ね合わせて形成され、各磁性鋼板
   の対向した端面が、その積層方向にわたって所定寸法づ
   つ均等にずれ、接合部が階段状になされたことを特徴と
   する巻鉄心の構造。
2. 【請求項２】 環状に折曲された長さの異なる複数の磁
   性鋼板を外周方向に重ね合わせて形成され、各磁性鋼板
   の対向した端面が、先端が鋭角の山形に形成されると共
   に、その積層方向にわたって所定寸法づつ均等にずれ、
   接合部がジグザグにかみ合うようになされたことを特徴
   とする巻鉄心の構造。
3. 【請求項３】 環状に折曲された長さの異なる複数の磁
   性鋼板を外周方向に重ね合わせて形成され、各磁性鋼板
   の対向した端面が、その積層方向にわたって交互に所定
   寸法づつずれ、接合部において磁性鋼板の端部が交互に
   入り込むようになされたことを特徴とする巻鉄心の構
   造。
4. 【請求項４】 異種の磁性鋼板が組み合わされたことを
   特徴とする請求項１から３のいずれかに記載の巻鉄心の
   構造。