JP3077280B2 - 着磁装置およびそれを用いた永久磁石の着磁方法 - Google Patents

着磁装置およびそれを用いた永久磁石の着磁方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主にスピーカに使用され
る磁気回路の中に組み込まれた永久磁石に着磁を行う着
磁装置およびそれを用いた永久磁石の着磁方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来の着磁装置およびそれを用いた永久
磁石の着磁方法について図面を用いて説明する。
【0003】図5は従来の永久磁石の着磁方法を説明す
る断面図であり、同図において11はリング状の永久磁
石、14は上記リング状の永久磁石11の内周部にはめ
込まれた鉄心A、15はリング状の永久磁石11の外周
部にはめ込まれた鉄心B、12はリング状にコイルを巻
回した巻線コイル、13は上記巻線コイル12を内部に
装着するリング状の溝部を形成した磁気ヨークを示す。
このように構成することによりリング状の永久磁石11
は鉄心A14,鉄心B15,巻線コイル12を内部に装
着した磁気ヨーク13とで閉磁路を構成し、この状態で
巻線コイル12に直流電流を流すことにより巻線コイル
12から発生する磁界が磁気ヨーク13の磁気モーメン
トを整列させて大きな磁界を発生し、閉磁路内を例えば
巻線コイル12の内側から外側へと磁束が流れ、リング
状の永久磁石11は内側から外側方向へと着磁されてラ
ジアル着磁が行われる。また上記直流電流を流す方向を
逆にすれば磁界は逆向きに発生してリング状の磁石11
は上述と逆の方向に着磁されるように構成されたもので
あった。
【0004】このように着磁されたリング状の磁石11
はセンターポールおよびヨークと組み合わされてスピー
カの磁気回路に用いることが提案されている。この磁気
回路は磁石の磁気利用効率を従来のものに比べて大幅に
改善することができ、磁石の重量を少なくできる画期的
なものとして注目されているものである。
【0005】さらに最近ではNd−Fe−B系磁石のラ
ジアル異方性磁石が開発されており、この磁石は保磁力
Icが約13KOe以上と大きく、十分な着磁をするた
めには一般的に着磁磁界は保磁力Icの約3倍が必要と
言われている。このため着磁磁界強度として約40KO
eという高磁界が必要となる。しかし、上述のNd−F
e−B系の焼結磁石については、保磁力発生機構がニュ
ークリエイションタイプであるため初回の着磁に限って
いえば、着磁磁界は保磁力Icとほぼ同等の大きさの磁
界強度でほぼ完全着磁ができ、98%の着磁でよければ
6KOeでも可能である。しかしながら十分な着磁をす
るためには少なくとも13KOe以上の大きな磁界が必
要となる。
【0006】上述のような大きな保磁力Icを持つ磁石
を着磁する場合には図5に示す着磁方法では不十分な場
合があり、その場合には巻線コイル12と磁気ヨーク1
3からなる着磁装置をもう一組用意し、リング状の磁石
11の上面に配置して電流が流れる方向を逆にして磁界
を逆に発生させ、上下の着磁装置から発生するそれぞれ
の磁界をリング状の磁石11の内側で衝突させてリング
状の磁石11の内側から外側へ発散するように流す方法
があり、このようにすれば一組の着磁装置で着磁する場
合に比べておおよそ2倍の強さの磁界を発生させること
ができ、この方式は反発式と呼ばれているものであっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の構成ではリング状の磁石11にラジアル方向の着磁を
行うためにはスピーカに組み込んだ状態では着磁を行う
ことができず、リング状の磁石11単体か、もしくはセ
ンターポールに結合した状態で着磁を行って後に磁気回
路に組み込んでスピーカを組立てなければならなかっ
た。
【0008】すなわち、これまでのスピーカの磁気回路
はバリウムフェライト磁石を用いた外磁型やアルニコ磁
石やサマリウムコバルト磁石を用いた内磁型であり、こ
れらは全て一軸異方性の磁石を用いたものであり、これ
らを用いたスピーカはスピーカとして組み立てから一方
向性の磁界で着磁を行えば良いものであった。
【0009】また、従来の着磁方法で着磁した場合にリ
ング状の磁石11を、またはリング状の磁石11と鉄心
14,15を着磁装置から取り外す場合に磁気回路的に
は閉磁路になっているために磁気的に強固に保持されて
おり大きな力で引き剥がさないと取り外すことができな
いという課題があり、図5の場合は横方向に力を加えて
スライドさせれば取り外すことができるが、周囲にそれ
だけのスペースの余裕がない場合には不可能となる。従
って着磁方法は着磁後に巻線コイル12を装着した磁気
ヨーク13から着磁されたリング状の磁石11を取り外
すことを考えておく必要があった。
【0010】さらに、このようにして着磁されたリング
状の磁石11を磁気回路内に組み込む際に、リング状の
磁石11からは磁界が発生しており強磁性体の粉末など
を吸い付け易くボイスコイルのはいる磁気ギャップに粉
末が入ることとなり不良の原因となりやすい。
【0011】また着磁されたリング状の磁石11は磁気
回路を構成する磁気ヨークに吸い付き易く、組み込むべ
き場所に設置することはなかなか難しく、このために複
雑な組み込み装置が必要となる。またリング状の磁石1
1を閉磁路から一旦取り外すために逆磁界が働き、磁石
の形状によっては減磁されるため磁気回路内に組み込ん
だ時に本来の磁気特性より低いところで使うことにな
り、磁石本来の磁気特性を十分に使うことができない場
合がでてくるなど多くの課題を有するものであった。
【0012】本発明は上記従来の課題を解決し、リング
状の磁石を磁気回路に組み込んだ状態でラジアル方向に
着磁を行い、さらに着磁後に容易に着磁装置を取り外す
ことが可能な着磁装置およびそれを用いた永久磁石の着
磁方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明による着磁装置およびそれを用いた永久磁石の
着磁方法は、リング状の磁石を上端外周部に結合したセ
ンターポールを上面を開放した有底形状のヨーク内部に
結合して磁気ギャップを形成した磁気回路の上面に、リ
ング状にコイルを巻回した巻線コイルを絶縁性の非磁性
材料に設けたリング状の溝部にはめ込んで固着した着磁
装置の巻線コイルが、上記磁気回路のリング状の磁石の
上面に近接するように配置し、着磁装置の巻線コイルに
電流を印加しリング状の磁石にラジアル方向の着磁を行
うようにしたものである。
【0014】
【作用】この構成によって磁気ヨークは非磁性材料であ
るため、着磁された磁石から発生する磁界で吸引される
ことがなく、容易に磁気回路から取り外すことができ
る。また磁気ヨークは絶縁性であるので、パルス着磁の
際に発生する磁界を抑える方向に働く渦電流が流れるこ
とがなく、巻線コイルから発生する磁界を有効に着磁に
使うことができる。
【0015】また磁気回路の中に組み込まれているリン
グ状の磁石の上面に着磁装置を配置してこの内部に固着
した巻線コイルに直流電流を流すことによりリング状の
磁石をラジアル方向に着磁することができ、着磁後には
巻線コイルを磁気回路から容易に取り外すことができ
る。
【0016】
【実施例】本発明による着磁装置およびそれを用いた永
久磁石の着磁方法について以下に図面を用いて説明す
る。
【0017】(実施例1)図2は本発明の実施例に用い
たスピーカ用の磁気回路の半断面図であり、同図におい
て1はリング状の磁石を示し、外径が25mm、内径が1
8mm、厚さが6mmである。4は磁気ギャップであり幅が
1mm、3はヨークであり外径が36mm、高さが18mm、
深さが14mmであった。2はセンターポールであり外径
が19mmで上端部は上記リング状の磁石1を結合するた
めに段付き形状にしている。また、上記リング状の磁石
1はNd−Fe−B系のラジアル配向の焼結磁石であ
り、その磁気特性はBrが11.5KG、Icが13K
Oe、(BH)MAXが31MG・Oeを示すロットから
取り出した磁石を用いた。
【0018】図1は上記図2に示すスピーカ用の磁気回
路とその着磁を行う着磁装置を示す半断面図であり、外
径36mm、高さ15mmの布入りのベークライトからなる
コイル支持体6の片面に内径14mm、外径30mm、深さ
10mmの溝を形成し、この溝の内部に1.5mmの被覆銅
線を18回巻線して形成した巻線コイル5をエポキシ樹
脂とともに埋め込んで硬化させてこのコイル支持体6に
固着して着磁装置を構成した。この着磁装置を図1に示
すように巻線コイル5の端面がリング状の磁石1に近接
するように配置した後、巻線コイル5に8KAのパルス
電流を流してリング状の磁石1をラジアル方向に着磁し
た。着磁装置を磁気回路から取り外した後、磁気ギャッ
プ4の中央部の磁界強度を測定したところ6900Gで
あった。この磁界強度の大きさはリング状の磁石1とセ
ンターポール2を接着したものを従来の方法で着磁して
ヨーク3に組み込んだ場合と比較して同等かそれ以上で
あった。
【0019】なお、本発明による着磁方法によって発生
する磁界はヨーク3の磁気モーメントをうまく使う方法
であり、ヨーク3の飽和磁化は約22KGであるので2
2KOe以上の磁界強度の場合にはヨーク3の内部も透
磁率が1になり、磁束にとってはヨーク3の外の空気中
も同じように通り易い状態になる。保磁力の大きなNd
−Fe−B磁石を着磁するためには初磁化の場合は6K
Oeの磁界強度でも可能であるが、再着磁を考えた場合
には約40KOeが必要であり、従ってヨーク3を飽和
させて使うことになるためにヨーク3の存在価値は磁気
的には小さいものである。
【0020】また、量産の中での着磁工程では、着磁に
要する時間はきわめて短く、最近ではコンデンサ着磁装
置を用いてパルス着磁する場合がほとんどである。パル
ス着磁の場合10数msecで数千Aの電流を流すことがで
き、ヨーク3がなく巻線コイル5のみで発生する磁界は
巻線コイル5の巻線にもよるが数万Oeにもなるもので
ある。
【0021】また、巻線コイル5は、絶縁被覆された銅
線を巻いた構造のものであるが、それだけではパルス状
の大電流を流したときに銅線が動き擦れあったりして絶
縁不良になったり、疲労破壊したりするため強固に固め
ておくことが必要である。これには例えばエポキシ系な
どの絶縁性の樹脂で各線の間の隙間を埋めて固めるのが
良い。またパルス状の大電流を流したときに銅線にかか
る力は大きく、巻線コイル5自体が変形するほどのもの
であるので、この力に耐えるだけの機械的強度のある材
料で補強しておく必要がある。従来は磁気ヨークがその
役目を果たしていたのであるが、本発明では鉄材の磁気
ヨークの代わりに絶縁性の非磁性材料を使う。たとえば
布やガラス繊維入りのベークライトなどが良い。絶縁性
の材料を使うことにより渦電流が流れず磁界の通りが良
くなるとともに発熱がなくなるという効果も同時に得る
ことができる。
【0022】(実施例2)図3は実施例1に示したスピ
ーカ用の磁気回路のリング状の磁石1を一度着磁して後
に脱磁機で消磁したものを再度着磁する方法を示したも
のであり、まず実施例1に示した方法により、本発明に
よる着磁装置を磁気回路の上面に配置して着磁を行っ
た。しかしながら、磁気ギャップ4の中央部の磁界強度
を測定したところ6600Gと低い値であった。これ
は、一度着磁したために今回は再着磁することになり、
前述のように第一回目の着磁とは異なり完全に着磁をす
るにはリング状の磁石1の保磁力Icの約3倍である約
40KOeという大きな着磁磁界が必要になるためと考
えられる。そこで図3に示すように本発明による着磁装
置をもう1組用いて磁気回路の下面に配置し、この二組
の着磁装置から発生する磁界がお互いにぶつかり合う方
向に発生するように二組の着磁装置の巻線コイル5なら
びに25を直列に接続して、パルス大電流を流して再着
磁を行った。この結果、磁気ギャップ4の中央部の磁界
強度は6800Gに向上した。
【0023】このように反発式を用いた着磁方式は磁気
ギャップ4の磁界強度が向上しているところから有効な
方法であることは確かめられたものの、本実施例におい
ては磁気回路の下面に配置した着磁装置が磁気回路の上
面側の着磁装置と同じ構成のものを使っており、まだ十
分な磁界を出すに至っておらず、磁気回路の下面に配置
した着磁装置の形状や巻線コイル25の巻数などの検討
により完全な着磁をすることは可能と考えられる。
【0024】(実施例3)図4はリング状の磁石1とセ
ンターポール2とヨーク23を結合して磁気ギャップ4
を形成したスピーカ用の磁気回路にフレーム7をスポッ
ト溶接で結合しエアーで溶接時に出た細かい鉄粉などを
吹き飛ばして取り除いた後に、本発明による着磁装置を
この磁気回路の上面に配置し、パルス状の大電流を巻線
コイル5に流してリング状の磁石1をラジアル方向に着
磁したものである。着磁後、巻線コイル5とその支持体
6を取り外して磁気ギャップ4の中央部の磁界強度を測
定したところ磁界強度は6950Gあり満足すべき値で
あった。
【0025】このようにフレーム7が磁気回路に結合さ
れることによって、磁気回路の上面の面積は狭くなり、
着磁後に着磁装置を左右に動かして取り外すことが従来
の着磁装置ではできなかったが、本発明の着磁装置は巻
線コイル5を装着した支持体6が非磁性体であるため
に、着磁されたリング状の磁石1から発生する強力な磁
界に吸収されることなく容易に取り外すことができる。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明の着磁装置は、巻線
コイルと絶縁性の非磁性体からなるコイル支持体より構
成されるため、着磁後において、着磁されたリング状の
磁石から発生する強力な磁界に吸引されることがなく、
容易に磁気回路から取り外すことができ、複雑な取り外
し装置を必要としない。
【0027】また、本発明の着磁方法はこの着磁装置を
用いて巻線コイルから発生する巻線コイル近傍の強力な
パルス磁界でリング状の磁石を磁気回路に組み込んだ状
態で着磁する方法であり、着磁装置の脱着が簡単でかつ
短時間で行えるものであり、量産工程において大きな効
果を発揮する方法である。
【0028】また、この着磁方法では不十分な場合、す
なわち、一度着磁したNd−Fe−B磁石を再着磁する
場合、また、Icがおおよそ20KOe以上というよう
な大きな磁石を着磁する場合などには、さらにもう一組
の着磁装置を磁気回路の下面に配置して、リング状の磁
石のラジアル方向に流れる磁界を増やすことによって、
十分に着磁することができる。
【0029】さらにスピーカの磁気回路としては、フレ
ームを磁気回路に取り付けてから着磁することができる
本発明の着磁方法は、フレームのスポット溶接時に発生
する細かい鉄粉を着磁前に除去することができ、不良の
原因を断つことができるなど多くの効果を得ることがで
きるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の着磁装置と着磁方法を示す半断面図
【図2】本発明の実施例に用いたスピーカ用の磁気回路
の半断面図
【図3】本発明の第2の実施例を示す半断面図
【図4】本発明の第3の実施例を示す断面図
【図5】従来のラジアル方向の着磁方法を示す断面図
【符号の説明】
1 リング状の磁石 2 センターポール 3 ヨーク 4 磁気ギャップ 5 巻線コイル 6 コイル支持体 7 フレーム 23 ヨーク 25 巻線コイル 26 コイル支持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 13/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リング状にコイルを巻回した巻線コイル
    と、前記巻線コイルの形状に合わせた溝部を有するコイ
    ル支持体とからなり、前記巻線コイルが前記溝部に埋設
    されて固定され、かつリング状巻線コイルの片方の端面
    が開放されて被着磁磁石に近接可能に構成され、前記コ
    イル支持体が絶縁性の非磁性材料からなることを特徴と
    する着磁装置。
  2. 【請求項2】リング状の磁石を上端外周部に結合したセ
    ンターポールを上面を開放した有底形状のヨーク内部に
    結合して上記リング状の磁石外周面とヨーク上端内周面
    との間に磁気ギャップを形成した磁気回路の上面に、請
    求項1記載の着磁装置の巻線コイルがこの磁気回路のリ
    ング状の磁石の上面に近接するように配置し、着磁装置
    の巻線コイルに電流を印加しリング状の磁石にラジアル
    方向の着磁を行う永久磁石の着磁方法。
  3. 【請求項3】リング状の磁石を上端外周部に結合したセ
    ンターポールを上面を開放した有底形状のヨーク内部に
    結合して上記リング状の磁石外周面とヨーク上端内周面
    との間に磁気ギャップを形成した磁気回路の上面に、請
    求項1記載の着磁装置の巻線コイルがこの磁気回路のリ
    ング状の磁石の上面に近接するように配置すると共に、
    この磁気回路の下面に請求項1記載の着磁装置を対称に
    配置し、これら二組の着磁装置の巻線コイルから発生す
    る磁界がお互いにぶつかり合うように直列に接続し電流
    を印加してリング状の磁石にラジアル方向の着磁を行う
    永久磁石の着磁方法。
  4. 【請求項4】リング状の磁石を上端外周部に結合したセ
    ンターポールを上面を開放した有底形状のヨーク内部に
    結合して上記リング状の磁石外周面とヨーク上端内周面
    との間に磁気ギャップを形成した磁気回路の上面にフレ
    ームを結合したスピーカの中間組立品の上記リング状の
    磁石にラジアル方向の着磁を行う請求項2または3記載
    の永久磁石の着磁方法。
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