JP3073180B2 - Nb合金への耐酸化表面コーティング - Google Patents

Nb合金への耐酸化表面コーティング

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JP3073180B2 JP09207846A JP20784697A JP3073180B2 JP 3073180 B2 JP3073180 B2 JP 3073180B2 JP 09207846 A JP09207846 A JP 09207846A JP 20784697 A JP20784697 A JP 20784697A JP 3073180 B2 JP3073180 B2 JP 3073180B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超高温耐熱材料とし
て有望なNb合金の耐酸化表面コーティングに関するも
ので、発電用ガスタービン及び航空機用エンジンの燃焼
器、タービン、あるいは、宇宙往還機、ロケットのエン
ジン部材、機体部材に適用しうるものである。
【0002】
【従来の技術】近年、発電用ガスタービン及び航空機用
エンジンの性能向上、あるいは宇宙往還機の実現等を目
的とした、超高温耐熱材料の開発が強く要望されてい
る。このような背景のもとで、高温強度が高く信頼性に
優れた耐熱合金の開発が進んでいる。例えば、高融点金
属であるNbをベースにしたNb合金あるいはNb3
l金属間化合物は、現有の耐熱合金であるNi基超合金
をはるかに凌ぐ高温強度を有することから有望視されて
おり、特開平6−122935号公報には、W,Taを
添加元素とし1600℃での圧縮強度が向上したNb−
Al基金属間化合物が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、無酸
化雰囲気における強度を保証するものであり、高温酸化
現象について考慮されていない。Nb3Al金属間化合
物やNb合金では高温酸化が著しく、大気中において少
なくとも800℃以上での使用は不可能である。Nb3
Alは大気中で900℃以上で激しく酸化し、1500
℃以上では生成Nb酸化物が溶融して、もとの形状すら
保持することができなくなる。金属間化合物相を含まな
いbcc単相のNb合金でも同様である。従って、Nb
3Al金属間化合物やNb合金を実用耐熱部材として適
用するためには、耐酸化表面処理が不可欠である。
【0004】本発明の目的は、Nbを主成分とする合金
への有効な耐酸化表面コーティングを提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】Nbを主成分とする合金
とは、Nb中に主として高温強度向上のためMo,W,
Ta,Zr,C等の元素を添加したbcc相を主構成相
とする合金や、NbにAlを添加しA15型の金属間化
合物を析出させた、あるいはA15相が主構成相となる
ようなNb−Al系合金を意味する。後者のNb−Al
系合金は、高温強度向上を目的にMo,W,Ta等が添
加されている場合もあり、特にMoはA15相を維持し
たままNbに100%置換することができるため、Mo
含有量が原子%で45%までのA15型合金も、該Nb
−Al系合金の範疇に含む。
【0006】上記の目的を達成するために、本発明で
は、Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コーティング
において、純度95%以上のIrよりなる第1層の表面
に、AuまたはPdよりなる第2層を備えたものであ
る。
【0007】また、本発明では、Nbを主成分とする合
金の耐酸化表面コーティングにおいて、純度95%以上
のIrよりなる第1層の表面に、AuまたはPdよりな
る第2層を備え、さらに該第2層の表面に純度95%以
上のIrよりなる第3層を備えたものである。
【0008】更に、Nbを主成分とする合金の耐酸化表
面コーティングにおいて、純度95%以上のIrよりな
る第1層の表面に、AuまたはPdよりなる第2層を備
え、さらに該第2層の表面にAl23,SiO2,Zr
2のうち少なくとも1種以上の物質よりなる第3層を
備えたものである。
【0009】本発明では高温耐酸化被覆層のうち酸素を
遮断する層として、Irを用いる。このIrは貴金属の
一種であり、融点が2400℃以上と高い。高温耐食性
及び高温耐酸化性が優れており、1500℃を超える超
高温においてもほとんど酸化、腐食が進行せず安定に存
在しうることから、超高温におけるNb合金の酸素遮断
層としてIrを用いる。酸素遮断層としてAl23、ま
たはAl23−SiO2を使用した場合、900℃程度
の温度に加熱した時点で、熱応力によって皮膜にクラッ
クが発生する。酸素がそのクラックを通って基材のNb
合金に到達すると、Nbが酸化し体積膨張が生じる。そ
のことによってAl23皮膜がさらに破壊され、酸化が
加速される。
【0010】最適な成膜方法により得られたIr表面被
覆層は、前記Al23皮膜がもつ高温でのクラック発生
による酸素侵入という問題を全く生じない。Irは面心
立方構造をもつ金属元素であるので、Al23のような
脆性材料ではない。従って、熱応力が発生してもクラッ
クは生じにくいので、Ir皮膜そのものの物質内を拡散
していく以外に酸素が基材に侵入することはない。前述
したように、Irは高温においても酸素を拡散しにくい
ため、良好な耐酸化性が得られるものである。
【0011】一方で、このIr表面被覆層は、1100
℃以上の高温に長時間曝すと、粒成長を起こす。その結
果約μm程度に成長した粒の境界に直径μm程度のピン
ホールが発生し、そこから酸素が基材に到達してしまう
問題が生じる。一旦基材が酸化されると、前述したよう
にNbの酸化で基材表面に体積膨張が生じるため、Ir
表面被覆層が破壊され、酸化が加速される。
【0012】そこで、本発明では、Ir表面被覆層に発
生したピンホールをその場で封止するために、Auまた
はPdよりなる第2層をIr表面被覆層の表面に備え
る。Auは融点が1063℃であり、Ir表面被覆層で
粒成長によるピンホールが発生する温度域では液体状態
となるため、Ir表面被覆層のピンホールに易動度の高
い高温液体状態で進入し、封止効果を発揮する。Auは
液体状態でも酸化されないうえ、酸素もほとんど透過し
ないことから、Ir表面被覆層のピンホールを通じて酸
素が基材に達することがなく、基材の耐酸化性を向上さ
せることができる。
【0013】AuとIrは互いに固溶しにくい元素であ
り、例えばIr中にAuは最大で2at,%、逆にAu
中にIrは最大で0.1at,%しか固溶しない。ま
た、Ir−Al二元系では、平衡状態で金属間化合物相
を形成せず、互いの固溶限を越えた組成域では液相線温
度まで2相共存状態である。従って、Ir層上にAu層
を設けるという本発明の構成において、Irが溶融する
2400℃以上の温度までは、AuはIr中にほとんど
溶け込むことなく液相状態で安定に存在しうるものであ
る。ここで、Ir表面被覆層のピンホール封止を担う第
2層の物質に、Irと反応性の高い物質を用いると、安
定に液相状態を保つことができず、易動度が不足しピン
ホールを封止することができないばかりか、Ir表面被
覆層中に第2層の物質が拡散し、Irそのものの耐酸化
性を劣化させるおそれがある。
【0014】Auの代わりにPdを第2層として用いる
場合も、同様の効果が得られる。PdはIrと同じ貴金
属元素の一つであり、それ自身高い耐酸化性を有する。
また、IrとPdは高温では全率固溶型の元素ではある
が、1482℃以下の温度では2相分離をすることから
分かるように、反応性はそれほど高くない。Pdの融点
が1552℃であることから、1552℃以上の高温で
使用する場合に第2相のPdが液体状態になり、Ir層
のピンホールを封止する効果を発揮する。
【0015】Auは融点が1063℃であるため、例え
ば1500℃以上の高温に曝されるとかなり大きい速度
で蒸発してしまう。そこで、液相状態になったAuの高
温での蒸発を防止するために、Auの第2層の上にさら
に層を設けることが有効となる。もう一つの本発明で
は、この蒸発防止の第3層にIrか、高温酸化雰囲気で
安定なAl23,SiO2,ZrO2のうち少なくとも1
種以上の物質よりなる酸化物を用いる。これら第3層に
用いる物質は、いずれも本発明の対象とする高温酸化雰
囲気で安定であり、それ自身高い耐酸化性を示す。従っ
て、第2層のAuが液体状態にある場合も、安定な状態
で存在し、Auが蒸発するのを防止する。
【0016】第3層にAl23,SiO2,ZrO2等の
酸化物を用いた場合、酸化物に亀裂が発生してAu蒸発
防止効果が部分的に失われても、Auで封止されたIr
表面被覆層上のピンホールが、第3層の酸化物皮膜の亀
裂によって雰囲気に曝される確率は極めて低い。従っ
て、第3層にAl23,SiO2,ZrO2等の酸化物を
用いたとしても、全体としてのAu蒸発防止効果は十分
に発揮される。Auとこれら酸化物は高温においてもほ
とんど反応しないために、それぞれの層が独立に機能す
ると言う点において極めて有効である。同様に、Au層
の蒸発防止のための第3層にIrを用いることは、上記
の酸化物を第3層に用いた場合と同様、高い耐酸化性、
Auとの低反応性から有効である。
【0017】また、ピンホールを封止したAu以外が全
て蒸発してしまうような極めて長時間の酸化において
も、第1層のIrと第3層のIrが接するだけであり、
反応物によるIrの耐酸化性劣化等の問題は全く生じな
い。その場合は、見掛け上Ir粗大粒間のいくつかのピ
ンホール中にAuが存在する以外は、全てIrにより構
成された表面被覆層となり、高い耐酸化性を示すことに
なる。第2層にAuの代わりにPdを用いる場合にも、
第3層として上記蒸発防止層を設けることは同様の理由
から有効である。その場合も第3層の物質して、Ir、
及びAl23,SiO2,ZrO2等の酸化物が有効であ
ることは言うまでもない。
【0018】本発明では、Irの表面被覆層と基材の間
に、例えばTa,Re,W等の高融点金属からなる中間
層を挿入する場合もある。1700℃を越える高温域で
は、IrとNbは互いに拡散しやすい性質を持ち、17
00℃以上で長時間保持するとIr層はNb合金の中に
拡散して消失してしまう。このようにIrが消失してし
まえば、高温酸化雰囲気においてNb合金の耐酸化性は
確保されず、激しく酸化してしまう。IrがNb合金中
に拡散するのを防ぐために、Nb合金とIr層の間にT
a,Re,Wの3種類の高融点金属のいずれかからなる
拡散防止層を設ければ、Irが剥離したり拡散により消
失したりすることなく、本来の酸素遮断効果を十分に発
揮することが可能となる。
【0019】これら拡散防止層に用いるTa,Re,W
自身には雰囲気中の酸素を遮断する効果が無いので、I
r層とAuのピンホール封止層の組合せで酸素遮断効果
を持たせる。拡散防止層に用いる物質に要求される特性
として、第一に融点が使用温度以上であること、第ニに
使用温度でのIrとNb合金の拡散を防止できること、
そして第三にNb合金との密着性がよく、Ir層の密着
性も損なわないことが挙げられる。Ta,Re,Wはこ
れらの条件をいずれも満たしており、拡散防止層の物質
として適当である。
【0020】拡散防止層、Ir層という多層構造では、
前記第三の条件である基材との境界部を含めた各々の層
境界での皮膜の密着性が特に重要である。拡散防止層と
Ir層の密着性が悪いと、耐熱部材の使用温度に至るま
での過程でIr皮膜が一部剥離する。前述した通り、T
a,Re,W自身には雰囲気中の酸素を遮断する効果が
無いので、剥離した部分から酸素アタックを受けて、生
成した酸化物の体積膨張によって皮膜全体が破壊する。
この皮膜の破壊によって基材の耐酸化性は完全に失われ
てしまう。
【0021】本発明のTa,Re,W上へのIr皮膜の
密着性は、Irの成膜プロセスによらずいずれも良好で
あり、成膜直後から高温酸化雰囲気に至るまでIr皮膜
の剥離の問題は生じない。特にTaがIr層の密着性の
観点から最も有効である。Al23,SiO2,ZrO2
等の高融点酸化物は、拡散防止層としての前記第一及び
第ニの条件を満たすが、Irとの密着性が悪く第三の条
件を満たさないため不適である。酸化物層の上部のIr
層は成膜直後に既に一部剥離してしまい、更に1000
℃を越えると熱膨張差による酸化物層に亀裂が発生する
ことにより酸化物層とNb合金との密着性も著しく低下
する。前記Irの酸素遮断層の成分は、Irが重量で純
度95%以上で常時酸素遮断の効果が得られるものであ
る。
【0022】一方、AuあるいはPdの第2層は、重量
比で80%以上あることが望ましいが、使用温度で液体
状態になり、Ir層のピンホール封止効果を発揮する状
態であれば特に純度を規定するものでは無い。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により具体
的に説明する。
【0024】(実施例1)本発明による耐酸化表面コー
ティングの一例の断面模式図を図1に示す。この耐熱部
材の製造方法を以下に説明する。基材101(Nb3
l基金属間化合物)となるNbを主成分とする合金に
は、真空スカル溶解により鋳造したNb−19at,%
Al−40at,%Mo組成のインゴットを放電加工に
より、10×10×2mmの寸法に切り出し、表面をエ
ミリー紙で#1000まで研磨したものを用いた。ここ
で用いた合金はほぼ同量のNbとMoを含むが、その結
晶構造はNb3Alと同じA15型である。この基材
を、有機溶剤で超音波洗浄したのち、高周波スパッタ成
膜装置に移してセットした。
【0025】本装置には、予め純度99.9%以上のI
rターゲットを装着しておく。チャンバー内を1×10
−6Torrまで真空引きしたのち、純度99.99%
以上のArガスをチャンバー内に導入して圧力を1×1
0−3Torrに調整して、プラズマを発生させ、Ir
のコーティングを実施した。プラズマ出力を300kW
とし、150分間成膜処理を行って約20μmのIr膜
の第1層107を基材101上に形成する。
【0026】本発明のIrの表面被覆層102は第1層
107と第2層105とより成り、第1層107のIr
層は上述したようなスパッタ法で成膜することが望まし
い。スパッタ法では、緻密な皮膜が形成できるため、酸
素を遮断する効果が高く望ましい酸素遮断層が形成でき
る。高融点のIrを成膜する方法としては、他に電子ビ
ーム蒸着法や該方法とイオン照射を組合せたダイナミッ
クミキシング法(又はイオンビームアシステッドデポジ
ション法)があるが、これらの手法では皮膜の緻密性が
悪く、Ir粒間の空壁から酸素がNb合金に侵入してし
まい、酸素遮断の効果は減少する。
【0027】スパッタ法には、高周波スパッタ法、イオ
ンビームスパッタ法等があるが、特に前者の方法が、成
膜速度の点で有利である。前記Irの酸素遮断層の膜厚
は5μm以上100μm以下が望ましい。膜厚が5μm
以下ではIr自身の酸化による蒸発、或いは拡散防止層
との拡散等により酸素遮断層が消失、変質してしまい十
分な高温耐酸化の効果が得られない。膜厚が100μm
以上の場合は、剥離、クラック等の問題が生じ易くなり
不適である。
【0028】その後、基材101を真空蒸着装置に移
し、純度99.9%以上のAuを加熱溶解して蒸発さ
せ、基材表面に約20μmのAu膜である第2層105
を第1層107上に形成した。Au層としての第2層1
05は、高温の液体状態で機能を発揮するので、成膜時
の緻密性に注意する必要がない。従って、第2層の成膜
方法は、前記方法に限定する必要はない。
【0029】(実施例2)本発明による別の耐酸化表面
コーティングの断面模式図を図2に示す。実施例1で得
られた第1層107のIr膜に、Au膜の第3層105
を備えた基材101を、更に真空成膜装置にセットし、
第3層105上にIr膜の第3層107´としてIrを
イオンビームスパッタ法で約1μm成膜した。この第3
層107´のIrは、高温酸化雰囲気における第2層1
05であるAu膜の蒸発を防止する役割を担うので、膜
厚はそれほど必要ない。むしろ緻密性が必要になるた
め、本実施例では成膜速度は小さいがより緻密な成膜が
可能なイオンビームスパッタ法を用いた。ただし、他の
成膜手法で形成しても、Au蒸発防止効果が発現できれ
ば、何も問題を生じるものではない。
【0030】(実施例3)本発明による他の耐酸化表面
コーティングの断面模式図を図3に示す。実施例1で得
られた第1層107にIr、第2層105にAuを備え
た基材を、真空成膜装置にセットし、第2層105上に
第3層108としてAl23を成膜した。第3層108
の成膜方法は以下の通りである。圧力1〜5×10−5
Torrの条件でAl23を電子ビームで溶解し、成膜
速度5nm/sで蒸着した。また、皮膜の密着性を高め
るために蒸着と同時に酸素イオンをイオン源から打ち出
し基材に照射した。酸素イオンの照射条件は、加速電圧
30kV、イオン電流0.5μAである。
【0031】このような方法で16.7分間蒸着し、A
uの蒸発防止層として約5μmのAl23皮膜を得た。
電子ビーム蒸着とイオン照射を併用して密着性の高い皮
膜を得る成膜方法は、ダイナミックミキシングデポジシ
ョンあるいはイオンビームアシステッドデポジション
(IBAD)と呼ばれており、前述したように高密着性
Al23皮膜製造に有効な手法である。
【0032】この第3層108にAl23のかわりにS
iO2,ZrO2或いはAl23,SiO2,ZrO2のう
ちから選ばれた混合酸化物をいても、同様な効果が得ら
れる。また、これら酸化物の第3層を他の成膜手法で形
成しても、Au蒸発防止効果が発現できれば、何も問題
を生じるものではない。
【0033】(実施例4)本発明の耐酸化表面コーティ
ングの別の例の断面模式図を図4に示す。基材として、
実施例1と同じものを用いた。この基材101を電子ビ
ーム蒸着源とイオン源を備えた成膜装置にセットし、5
×10−6Torrまで真空引きした。その後、基材1
01を温度300℃に保持し、Reを電子ビームで溶解
し、基材101上にRe層を成膜速度2nm/sで蒸着
した。蒸着原料として、純度99.9%以上の純Reを
用いた。成膜中の真空度は1〜5×10−5Torrで
ある。このような方法で16.7分間蒸着し、Re層を
拡散防止層111として約2μmのRe皮膜を得た。
【0034】このRe皮膜を有する基材を、前記成膜装
置から取り出し、高周波スパッタ成膜装置に移してセッ
トした後、実施例2と同じ方法で拡散防止層111上に
酸素防止層としての約20μmのIr層、ピンホール封
止用Au層、Ir蒸発防止層を順次成膜して耐酸化表面
コーティングを完成させた。
【0035】(実施例5)本発明による耐酸化表面コー
ティングの耐酸化性効果を検証するための酸化試験を実
施した。用いた基材の模式図を図5に示す。円柱状の穴
を開けたIr製の基体110の中にNb3Al基金属間
化合物115であるNb−19at,%Al−40a
t,%Moを埋め込み、IrとNb3Al系金属間化合
物115との境界部を接着させる目的で真空中1600
℃以上の温度で熱処理した後、表面をエミリー紙で#1
000まで研磨して作製した。Nb−19at,%Al
−40at,%MoはNb−rich,Nb3AlのN
bに対して、ほぼ同量のMoを置換し、高温強度を高め
た合金である。本基材の使用により、Nb合金が露出し
た面のみのコーティングで耐酸化試験が可能となる。
【0036】酸化試験は、大気中に所定の温度で保持し
た試験機の中に、試験片を挿入し、重量変化量を測定す
ることで実施した。図5で示したような基材を用いた場
合は、測定結果として得られる重量変化量はコーティン
グした上面以外のIrの面の変化量も含むため、次式に
よって上面の中のNb3Alの領域のみの酸化重量変化
を見積もった。
【0037】
【数1】 △wN=(W−△wIr・AIr)/AN…(数1) △wN :Nb3Alの単位面積当りの重量変化量(k
g/m2)、 W :測定により得られた重量変化量(kg)、 △wIr :Irの単位面積当りの重量変化量(kg/
2)、 AIr :試験片中の露出されたIrの表面積
(m2)、 AN :試験片中のNb3Alの表面積(m2) ここで、AIr、ANは試験片形状から計算でき、AI
rは4.0×10−7m2(ただし、コーティングしな
い場合は4.9×10−7m2)、ANは7.07×1
0−6m2となる。また、△wIrはあらかじめ実験よ
り求めることができ、例えば1500℃では1時間後で
−2.21×10−2kg/m2であった。
【0038】図6は、図5に示した基材に実施例1で示
した方法で表面被覆層102を形成した試験片を、17
00℃で大気中保持した時の重量変化曲線を示した特性
図である。比較のために表面被覆層をもたない試験片、
Reの拡散防止層111を備えたIrの表面被覆層10
2を有する試験片の結果も示した。コーティングの無い
試験片では、保持開始直後から急激に重量が増加する
が、その後重量減少に転じる。この重量減少は、主にM
oの酸化物が蒸発することによる。
【0039】一方、Reの拡散防止層111を備えたI
rの表面被覆層102を有する試験片では、酸化による
重量変化が大幅に抑制されているものの、保持時間とと
もに除々に重量が増加していく。これは、1700℃に
おいてIr表面被覆層中にピンホールが発生して、そこ
から酸化が進行していることが原因と考えられる。これ
に対して、本発明による表面被覆層を備えた試験片は、
保持中の重量変化がほとんどなく、Au層のピンホール
封止効果によって良好な耐酸化性を示す。
【0040】図7は、図6と同様の試験を1800℃大
気中で実施した時の各試験片の重量変化曲線を示した特
性図である。本発明による表面被覆層102は、実施例
2に記載した方法で形成した。コーティングの無い試験
片は図6に示した1700℃の場合と同様な挙動を示し
た。またIrの表面被覆層を有する試験片では、酸化に
よる重量変化が大幅に抑制されているものの、保持時間
とともに除々に重量が増加していく。これは、1700
℃の場合と同様Ir表面被覆層中にピンホールが発生し
て、そこから酸化が進行していることが原因と考えられ
る。これに対して、本発明による表面被覆層102を備
えた試験片は、保持中の重量変化がほとんどなく、Au
層のピンホール封止効果及び最表面のIr層によるAu
蒸発防止効果によって良好な耐酸化性を示すことが明か
になった。
【0041】このように、本発明による耐酸化表面コー
ティングにより、Nb合金の高温耐酸化性を大幅に向上
させることが出来る。
【0042】(実施例6)本発明による別の耐酸化表面
コーティングの断面模式図を図8に示す。実施例1と同
じ基材101を用いて、また、同じ方法でIr表面被覆
層である第1層107のIr層を設ける。その後、Ir
層を電子ビーム蒸着源を備えた成膜装置にセットし、5
×10−6Torrまで真空引きし、Pdを電子ビーム
で溶解し、成膜速度2nm/sで約5μm蒸着したPd
層113をIr層の第1層107に設けた。このように
して得られた耐酸化表面コーティングは、Pdの融点1
552℃以上でPd層113がIr層である第1層10
7のピンホールを封止するため、該温度以上での使用に
効果を発揮するが、一旦1552℃以上に昇温すれば、
封止は完了するので、その後の使用温度は該温度以上に
限定されるものではない。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、1100℃以上の温度
でも優れた耐酸化性を示すNb合金耐熱部材を供給する
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による耐酸化表面コーティングの断面模
式図。
【図2】本発明による耐酸化表面コーティングの断面模
式図。
【図3】本発明による耐酸化表面コーティングの断面模
式図。
【図4】本発明による耐酸化表面コーティングの断面模
式図。
【図5】(a)、(b)は耐酸化性評価用基材の説明
図。
【図6】大気中1700℃での酸化試験結果を示す特性
図。
【図7】大気中1800℃での酸化試験結果を示す特性
図。
【図8】本発明による耐酸化表面コーティングの断面模
式図。
【符号の説明】
101…基材、102…表面被覆層、105…第2層、
107…第1層、107´…第3層、108…第3層、
110…基体、111…拡散防止層、113…Pd層、
115…Nb3Al基金属間化合物。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−104069(JP,A) 特開 平10−140333(JP,A) 産業科学技術研究開発超耐環境性先進 材料シンポジウム講演集 6藤原 外2 名(1995)p.197−205 日本機械学会通常総会講演会講演論文 集 73[2]尾花 外2名(1996)p. 215−216 腐食防食シンポジウム 101藤原 外 1名(1994)p.48−57 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Auよりなる第2層を備えたことを特徴
    とする耐酸化表面コーティング。
  2. 【請求項2】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Auよりなる第2層を備え、さらに該第
    2層の表面に純度95%以上のIrよりなる第3層を備
    えたことを特徴とする耐酸化表面コーティング。
  3. 【請求項3】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Auよりなる第2層を備え、さらに該第
    2層の表面にAl23,SiO2,ZrO2のうち少なく
    とも1種以上の物質よりなる第3層を備えたことを特徴
    とする耐酸化表面コーティング。
  4. 【請求項4】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Pdよりなる第2層を備えたことを特徴
    とする耐酸化表面コーティング。
  5. 【請求項5】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Pdよりなる第2層を備え、さらに該第
    2層の表面に純度95%以上のIrよりなる第3層を備
    えたことを特徴とする耐酸化表面コーティング。
  6. 【請求項6】 Nbを主成分とする合金の耐酸化表面コ
    ーティングにおいて、純度95%以上のIrよりなる第
    1層の表面に、Pdよりなる第2層を備え、さらに該第
    2層の表面にAl23,SiO2,ZrO2のうち少なく
    とも1種以上の物質よりなる第3層を備えたことを特徴
    とする耐酸化表面コーティング。
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