JP3070894B2 - 薄膜形成方法 - Google Patents

薄膜形成方法

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JP3070894B2
JP3070894B2 JP5289276A JP28927693A JP3070894B2 JP 3070894 B2 JP3070894 B2 JP 3070894B2 JP 5289276 A JP5289276 A JP 5289276A JP 28927693 A JP28927693 A JP 28927693A JP 3070894 B2 JP3070894 B2 JP 3070894B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体基板等の試料面
に薄膜を形成するプラズマ励起化学気相成長(Plasma En
hanced CVD) 法を利用した薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、半導体基板等の試料面に薄膜
を形成するためには、反応容器内に導入した原料ガスに
高周波電力を印加してプラズマを発生させ、該原料ガス
を活性化させることにより化学反応を促進し、生成した
反応生成物を試料面に堆積させるプラズマ励起化学気相
成長(以下、PECVDという)法が、広く利用されて
いる。
【0003】特に、AlもしくはAl合金からなる配線
間の層間絶縁膜または配線保護膜(パッシベーション
膜)の形成に際しては、配線(Al)中のヒロック(hil
lock) 形成を阻止できるように、十分低い形成温度を用
いることが極めて好ましい。そこで、400℃程度の低
温で絶縁膜ないし保護膜を形成させることが可能なPE
CVDが今日まで広く用いられ、今後ますます利用され
る傾向にある。
【0004】このPECVDにおいては、例えば、半導
体基板の表面にSiO2 膜を堆積させるために、原料ガ
スとしてはSiH4 /N2 O系ガスやテトラエトキシシ
ラン(TEOS)/O2 系ガスが使用されて来た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、更なる大規模集
積回路(LSI)の高集積化の実現要求に伴い、PEC
VDのおいてもサブミクロン・スケールでの微細化形成
技術の開発が極めて重要になってきた。このような観点
から、本発明者は従来のPECVD法によって生成され
る薄膜形状を実験的検証を試みた。以下、本発明者によ
る実験結果について述べる。
【0006】図3(a)〜(f)は、PECVD装置の
反応容器内に設けられている対向電極間にテトラエトキ
シシラン(TEOS)/O2 系ガスを導入し13.56
MHz等の高周波電力を印加することによってプラズマ
を発生させ、反応生成物であるSiO2 薄膜を半導体基
板表面のSiO2 膜上およびその表面に形成されている
Al配線上に被覆した場合の実験結果(縦断面図)を示
す。図3は、顕微鏡写真をトレースして示したものであ
る。
【0007】この実験結果によれば、図3(a)〜
(c)のように配線間のスペースに余裕がある場合に
は、そのスペースにおけるSiO2 薄膜の被覆形状は順
テーパに近い良好な形状であるが、図3(d)〜(f)
のような配線の相互間隔が狭くなるパターンに対する薄
膜形成においては、サブミクロンルールによりその被覆
形状が逆テーパの傾向を示すようになり、配線間に溝の
ような隙間が形成され、これが更に進行すると隣接した
配線上のSiO2 薄膜同士が頭部で繋がり、空洞すなわ
ちボイドを形成するようになった。
【0008】並行に走る配線パターンにおいて直角ある
いは曲線となる場所の近傍においては、配線間距離が大
きくなるために薄膜同士が頭部で繋がらず、上記ボイド
は巣のような開口部を形成する傾向があった。したがっ
て、このボイド、隙間、開口部を、SOG(スピンオン
グラス)法により塗布される液状の平坦化材で完全に埋
め込むことは困難であり、しかもボイドに入り込んだ液
状の平坦化材にベーク、UVキュア、高真空キュア等の
キュアを加えて液体成分を完全に抜き取ることも困難で
あった。
【0009】また、TEOS/O3 系により平坦化する
場合においても同様な問題があった。
【0010】この残留した液状成分はSiO2 薄膜の耐
湿性を悪化させるばかりでなく、後に層間絶縁膜に形成
される多層配線間のコンタクトホール内の接触不良およ
びエレクトロマイグレーションによる配線の断線等の原
因にもなった。
【0011】更に、従来のPECVDを用いたSiO2
薄膜形成技術においては、SiH4/N2 O系を用いる
ことで、良好な膜特性を有する(耐湿性に優れる)Si
2薄膜を形成させることができるが、被覆形状が劣っ
ているためLSIの高集積化、微細化に伴いその適用が
困難になっている。
【0012】そこで、近年、良好な被覆形状が得られる
TEOS/O2 系によるSiO2 薄膜の形成が要請さ
れ、現在、SiH4 /N2 O系に代わり高集積化したL
SIに広く適用されている。しかしながら、TEOS/
2 系を用いたSiO2 薄膜はその膜中に多分な水分を
含んでおり、この水分は時として様々な不良の原因とな
るため、デバイスの信頼性低下をもたらすといった問題
点があった。
【0013】本発明は、このような従来のPECVD法
の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は更な
る高集積化、高信頼化に対応し得る薄膜形成方法を提供
することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、前述の
目的は、基板を収容する反応容器内において、有機シラ
ン系化合物と窒素化合物と酸素化合物とからなる混合ガ
スにより高い周波数の電力を印加してプラズマを発生さ
せるステップと、このプラズマ放電エネルギにより該混
合ガスを励起させて、反応生成物を基板上に堆積させる
ステップとからなる薄膜形成方法により達成される。
【0015】
【作用】本発明の薄膜形成方法によれば、反応容器内に
おいて、有機シラン系化合物と窒素化合物と酸素化合物
とからなる混合ガスに高い周波数の電力を印加してプラ
ズマを発生させ、このプラズマ放電エネルギにより混合
ガスを励起し、化学結合を分解し、原子または分子のラ
ジカルとして、これらの活性粒子に基づく反応生成物を
基板上に堆積させる。
【0016】本発明者の知見によれば、PECVD法に
より形成するSiO2 薄膜において、供給ガス系がSi
4 系の場合と比べて、有機シラン系化合物(TEOS
等)系の場合では、有機シラン系化合物がSiO結合を
もともと有しているため、その反応性に基づき、良好な
被覆形状が得られる。また、供給ガス系が有機シラン系
化合物/O2 系の場合と比べ、有機シラン系化合物/窒
素化合物/酸素化合物系の場合では、窒素化合物の効果
により、後の平坦化工程の際に有利な被覆形状が得られ
る。
【0017】従来技術において、多くの水素が含まれて
いる有機シラン系化合物を供給ガスとして単に用いた場
合には、更に薄膜形成温度が低温であると、形成された
SiO2 薄膜中にある程度の水素が取り込まれてしまう
ことは防止できなかった。
【0018】これに対して、本発明においては、有機シ
ラン系化合物と同時に窒素化合物と酸素化合物とを供給
するので、酸化剤としての酸素化合物の酸化反応と、窒
素化合物により抑制し窒化反応とを促進させることで、
水素はSiOH結合の形ではなく、SiNH結合の形で
SiO2 薄膜中に取り込むことが可能となる。
【0019】これにより、本発明においてはSiO2
膜中の水分が原因となる不良を削除することができ、且
つ、SiO2 薄膜中に窒素が取り込まれることにより
(LSIの保護膜としてSiN薄膜を適用した場合と同
様に)、不純物(水分、Na+イオン)の浸透を防ぐ特
性を有する機能をSiO2 薄膜にもたせることが可能と
なる。
【0020】よって、高集積化に伴い微細構造を有する
大規模集積回路(LSI)においても、良好な層間絶縁
膜あるいは保護膜が提供できると考えられる。
【0021】本発明の知見によれば、本発明においては
基板上に形成されるSiO2 薄膜中において、窒素原子
がケイ素のみと結合し、酸素とは直接結合しない{N
(SiO3 3 }なる分子構造が一部形成されると考え
られる。したがって、SiO2薄膜中の窒素含有量を増
加させることにより膜中の水分が低減され、より緻密な
膜質構造となり、その結果、膜の耐湿性が向上すると考
えられる。
【0022】また、本発明においては窒素化合物と酸素
化合物とを独立に供給できるので、形成されるSiO2
薄膜中における窒素含有量を、用途に応じて好適に変え
られる。したがって、SiO2 薄膜中の{N(Si
3 3 }なる分子構造を増加、減少させることができ
る。したがって、形成されたSiO2 薄膜に含まれる窒
素量が過度に増加することによりストレスが増大した
り、誘電率の増大によりデバイスのアクセス速度が低下
する場合には、窒素化合物および酸素化合物の供給量を
調整することにより容易にこれらを防止することができ
る。
【0023】以下に本発明を詳細に説明する。
【0024】本発明において「有機シラン系化合物」と
は、有機基を有するシラン化合物をいう。本発明におけ
る有機シラン系化合物としては、下記構造式(化1)を
有する化合物を用いることが好ましい。
【0025】 (R1 m Si(OR2 n ・・・(化1) 〔式中において、R1 はアルキル、アリール又はアルケ
ニル基を表わし、R2 はアルキル基を表わし、mおよび
nは、m+n=4の関係を有する自然数を表わす。〕よ
り具体的には、本発明においては、R1 はC1 〜C6
アルキル、アリール、又はアルケニル基であることが好
ましく、R2 はC1 〜C4 の低級アルキル基であること
が好ましい。
【0026】有機シラン系化合物は、Si(OC
2 5 4 、(C2 5 )Si(OC2 5 3 、C5
11Si(OC2 5 3 、CH2 CHSi(OC2
5 3 、C6 5 Si(OC2 5 3 、(CH3 2
Si(OC2 5 2 、Si(OCH3 4 、Si4
8 244 、Si4 4 164 、Si1 12
246 、Si2 6 181 、および(C2 5 2
iH2 から選ばれた少なくとも一種類のガスを含むこと
好ましく、これらの有機シラン系化合物中では、反応性
の点からTEOSが特に好ましく用いられる。
【0027】本発明において、この「窒素化合物」は、
N原子を含む化合物(単体のN2 を含む)であって、O
原子を含まないものをいう。
【0028】SiO2 薄膜中の窒素含有量の制御を容易
にする点からは、例えばN2 、NH3 等の窒素化合物を
添加することが好ましい。
【0029】本発明において、上記混合ガスを構成する
有機シラン系化合物の流量(相対比)を10とした場
合、窒素化合物の流量は10〜40程度(更には20〜
30程度)であることが好ましい。
【0030】本発明の方法により形成される薄膜(酸化
膜)中の窒素含有量は、該薄膜の耐湿性の点からは0.
1〜5重量%程度が好ましい。この耐湿性に加えて、薄
膜の段差被覆形状、成膜速度、面内均一性、膜ストレス
等の点をも考慮した場合、上記窒素含有量は、0.1〜
1重量%程度が好ましい。このような窒素含有量は、例
えば、X線光電子分光法(XPS)により測定すること
が可能である。
【0031】本発明の方法により形成される薄膜の厚さ
は、通常、0.1〜1.0μm程度(更には0.2〜
0.3μm程度)であることが好ましい。この膜厚が薄
い場合には、耐湿性の点から上記した窒素含有量は多い
方が好ましい。
【0032】本発明において、この「酸素化合物」は、
O原子を含む化合物(単体のO2 、O3 を含む)であっ
て、N原子を含まないものをいう。
【0033】この「酸素化合物」としてはO2 、O3
が好ましく用いられるが、反応性の点からはO2 が好ま
しい。
【0034】本発明において、上記混合ガスを構成する
窒素化合物の流量(相対比)を10とした場合、酸素化
合物の流量は0.1〜5.0程度(更には0.5〜1.
0程度)であることが好ましい。
【0035】本発明において、上記混合ガスを構成する
有機シラン系化合物の流量(相対比)を10とした場
合、酸素化合物の流量は1〜10程度(更には2〜4程
度)であることが好ましい。
【0036】本発明においては、上記有機シラン系化合
物を反応容器内に導入するために、必要に応じて、キャ
リアガスを使用してもよい。このキャリアガスとして
は、例えば、Ar、He等の不活性ガスを好ましく用い
ることができる。有機シラン系化合物の流量(相対比)
を10とした場合、キャリアガスの流量は5〜50程度
(更には10〜30程度)であることが好ましい。
【0037】混合ガスがこの窒素化合物を含む態様にお
いては、プラズマ放電の安定により膜厚の均一性を更に
向上させることが可能となる。
【0038】本発明においては、上記した以外の反応条
件としては、例えば、以下のような条件を好ましく使用
することができる。
【0039】 圧力: 2 [Torr]〜 10 [Tor
r] 高い周波数: 13.56 [MHz] 電力: 200 [W]〜 600 [W] 基板温度: 350 [℃]〜 450 [℃] 電極間距離: 100 [Mils]〜 400
[Mils] 混合ガスの総流量: 1000 [SCCM]〜 30
00 [SCCM] 本発明の薄膜形成方法に使用可能な反応装置について
は、基板を収容する反応容器と、少なくとも有機シラン
系化合物と窒素化合物と酸素化合物とを含む混合ガスを
この反応容器に導入可能な導入系と、この混合ガスに高
い周波数を印加する電極とを有する反応装置である限り
特に制限されないが、例えば、図1に模式断面図を示す
ようなPECVD装置が好ましく用いられる。
【0040】以下に、このPECVD装置の概略構成を
図1に基いて説明する。図1を参照して、外気から密封
された反応室1を実現するための反応容器2内に対向す
る電極3、4が収容されている。一方の電極4は、アー
ス電位に保持されるとともに、対向面に薄膜形成用の半
導体基板5が載置され、他方の電極3にはプラズマ発生
用の高い周波数の発振源8から出力された電力がインピ
ーダンスマッチング回路9を介して印加されるようにな
っている。また、電極3の上側から反応室1へ配管6を
介して反応ガスが導入されるとともに、反応容器2の排
気口から排気する構造となっている。また、電極4側に
は温度制御用のヒータ7が設けられている。
【0041】以下、実施例に基づき、本発明を更に具体
的に説明する。
【0042】
【実施例】実施例1 図1に示した構成のPECVD装置を用い、以下の条件
にて基板たるシリコンウェハ上にSiO2 薄膜を形成し
た。ここで、有機シランとしてはSi(OC
25 4 、すなわちテトラエトキシシラン(TEO
S)を使用し、窒素化合物としては、N2 を使用した。
【0043】 圧力 : 4[Torr] 高い周波数 : 13.56[MHz] 電力 : 560[W] 基板温度 : 390[℃] 電極間距離 : 180[Mils] テトラエトキシシラン(TEOS) : 500[mg
/min] N2 : 1380[SCCM] O2 : 100[SCCM] He(キャリアガス): 500[SCCM] この条件により得られたSiO2 薄膜の成長速度は約
0.5μm/minで、屈折率は約1.5であった。
【0044】ここで、半導体基板5は反応容器2内に載
置される前に、予めハロゲンランプにより390℃に加
熱しておくのが、SiO2 薄膜の成長特性の再現性を向
上させる点から好ましかった。
【0045】実施例2〜3 図1に示した構成のPECVD装置を用い、使用するガ
スに関する条件を以下の(表1)に示すようにした以外
は実施例1と同様にSiO2薄膜を形成した。他の条件
は実施例1に基づく。
【0046】上記条件により得られたSiO2 薄膜の成
長速度は約0.5μm/minで、屈折率は1.46〜
1.52であった。
【0047】ここで、半導体基板5は反応容器2内に載
置される前に、予めハロゲンランプにより400℃に加
熱しておくのが好ましかった。
【0048】(表1) 実施例 有機シラン 窒素化合物 酸素化合物 キャリアガス (mg/min) (SCCM) (SCCM) (SCCM) 2 TEOS( 500) N2(1500) O2( 100) Ar( 500) 3 TEOS( 500) N2(1500) O2( 100) He( 500)実施例4 実施例1の条件により形成されたSiO2薄膜中の窒素
含有量について赤外吸収スペクトルによって調べたとこ
ろ、波数3400cm-1付近に窒素(NH)関連のピー
クが見られ、膜中に窒素が含有されていることが確認さ
れた。
【0049】耐湿性に対してはSiO2 薄膜中の窒素含
有量の好ましい範囲は、0.1%以上5%以下であっ
た。被覆形状、成長速度、面内均一性、膜のストレス等
の他の特性をも考慮した場合、窒素含有量は1%以上2
%以下が好ましかった。
【0050】実施例5 実施例1の条件により形成されたSiO2薄膜の深さ方
向の元素組成および結合状態を、XPS(X-ray Photoel
ectron Spectroscopy)により調べた。これにより、窒素
は、Si34のような孤立したグレインを形成しておら
ず、SiO2薄膜中に原子オーダで均一に分散していて
ケイ素のみと結合し、酸素とは直接結合しない{N(S
iO33}なる分子構造にて存在することが判明した
(下記の構造式(化2)参照)。
【0051】
【化2】
【0052】実施例6 例えば、実施例2の薄膜形成条件にて、半導体基板表面
のSiO2膜上およびその表面に形成されたAl配線上
に、更に絶縁被覆のためのSiO2薄膜を形成した。形
成された薄膜の縦断面形状を図2(a)〜(f)に示
す。尚、同図は、縦断面形状の顕微鏡写真の輪郭部分を
トレースして示した断面図であり、縦横の長さは同図中
の単位スケール(0.5μm)にて示す通りである。
【0053】本実施例においては、図2(e)、(f)
のようにそれぞれのAl配線の幅および相対間隔がサブ
ミクロン範囲の場合にあっても、配線側壁部の薄膜化に
より、配線の頭部で繋がることはなかった。しかも、T
EOSのような有機シラン系ガスとN2 のような窒素化
合物とO2 のような酸素化合物とからなる混合ガスを用
いる本発明のPECVD法により形成されるSiO2
膜は、前述のように窒素を含有して膜中の水分を除去し
ているので耐湿性が向上しており、有機シラン系ガスと
2 との混合ガスより形成されるSiO2 薄膜に比べ
て、膜厚を薄くしても同等もしくはそれ以上の耐湿性が
得られた。したがって、サブミクロンルールでの設計上
において高集積度が要求されても、配線上に形成される
SiO2 薄膜の膜質が耐湿性に優れているので、SiO
2 薄膜を従来よりも薄膜としても要求を満たすことがで
き、隣接したAl配線頭部においてSiO2 薄膜が繋が
らないように設計することができた。すなわち、SiO
2 薄膜形成においてデバイス設計上の余裕(自由度)が
広くなった。
【0054】比較例1 実施例1で用いた混合ガス(TEOS/窒素化合物/酸
素化合物系)に代えて、以下のTEOS/O2 系の混合
ガスを用いた以外は、実施例1と同様にしてSiO2
膜を形成した。
【0055】TEOS: 500 SCCM O2 : 500 SCCM He : 500 SCCM このようにして形成したSiO2 薄膜(比較例1)と、
実施例1で形成したSiO2 薄膜とについて、赤外吸収
スペクトルを比較したところ、TEOS/O系の混合
ガスを用いたPECVD法により形成されたSiO
薄膜(比較例1)に比べて、実施例1の薄膜においては
水(OH)関連の吸収を表す波数3670cm-1付近の
ピークが低減していることが確認された。これにより、
実施例1により形成されたSiO2 薄膜には窒素が含有
された結果、水分が低減し、耐湿性が向上していること
が判明した。
【0056】実施例7 実施例1のTEOS/N2/O2系あるいはTEOS/O
2系により得られたSiO2薄膜のそれぞれについて、プ
レッシャクッカテスト(Pressure Cooker Test)を行い、
耐湿性について調べた。このプレッシャクッカテストに
おいては、例えば、平坦なSi基板にPSG(phospho-
silicate glass) を1μm形成し、この上にさらに評価
したいSiO2薄膜を形成した。このサンプルを圧力2
気圧、水蒸気雰囲気、雰囲気温度121℃の加湿した条
件下で所定時間放置した。
【0057】PSGは湿気を吸うとPSG中のP=O結
合がP−OH結合に変化する。この振る舞いは赤外吸収
スペクトルによって測定することができる。すなわち、
PSGが湿気を吸うことにより赤外吸収スペクトル上の
P=O結合の吸収ピークが減少し、P−OH結合の吸収
ピークが増大する。
【0058】このような現象を利用し、上記条件下に放
置する前のP=O結合の吸収スペクトル中のピークの高
さを100%とした(すなわち、耐湿性を100%とし
た)。この値を基準にP=O結合の吸収ピークを換算し
た。
【0059】この結果、SiO2 薄膜を0.2μm形成
した場合には、TEOS/N2 /O2 系ではプレッシャ
クッカテストを60時間行った後も98%と良好な耐湿
性が得られているのに対して、TEOS/O2 系ではこ
れを40時間行った後で耐湿性が85%に低下し、60
時間では78%まで低下してしまっている。
【0060】また、SiO2 薄膜を0.1μm形成した
場合には、TEOS/N2 /O2 系ではプレッシャクッ
カテストを60時間行った後に、89%までの低下であ
った。これに対しSiH4 /N2 O系では、上記テスト
を40時間を行った後ではTEOS/O2 系と同程度で
あったが40時間後では68%と低下していた。従来、
SiH4 /N2 O系により形成されたSiO2 薄膜は耐
湿性に優れるとされて来たが、本実施例のTEOS/N
2 /O2 系により形成された薄膜の耐湿性はこれより優
れていた。
【0061】これらの結果によれば、TEOS/N2
2 系は、TEOS/O2 系あるいはSiH4 /N2
系に比べて耐湿性において優れていることが判明した。
このTEOS/N2 /O2 系による薄膜は、実用上は少
なくとも0.2μmを形成することが好ましかった。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の薄膜形成
方法によれば、反応容器内において、有機シラン系化合
物と窒素化合物と酸素化合物とからなる混合ガスに高い
周波数の電力を印加してプラズマを発生させ、このプラ
ズマ放電エネルギにより混合ガスを励起させて反応生成
物を基板上に堆積させる。したがって、有機シラン系化
合物の反応性に基き形成されるSiO2 薄膜中において
窒素原子がケイ素のみと結合し、酸素とは直接結合しな
い{N(SiO3 3 }なる分子構造が少なくとも一部
に形成される。また、窒素化合物と酸素化合物とは互い
に独立に供給され得るので、膜中の窒素含有量を要求ど
おりに増加および減少させることができる。したがっ
て、SiO2 薄膜は、窒素を含有することにより発生す
る膜ストレスがクラック等の問題とならない範囲におい
て、膜中の水分が低減された緻密な組成を有するように
再現性よく形成され得る。さらに、緻密な組成のSiO
2 薄膜は、外部からの水分を遮断し透過させないので耐
湿性に優れた薄膜となり得、サブミクロンルールの配線
上に形成されるSiO2 薄膜としてボイドが発生しない
ように薄膜化しても、耐湿性を保持し得る。この結果、
高集積化、高信頼化する大規模集積回路(LSI)に対
応し得るSiO2 薄膜形成が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による薄膜形成方法を実施可能なPEC
VD装置の一態様の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例1において形成されたSiO2
薄膜の形状を示す縦断面図である。
【図3】従来例の薄膜形成方法により形成されたSiO
2 薄膜の形状を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…反応室、2…反応容器、3、4…対向電極、5…半
導体基板、6…配管、7…ヒータ、8…高い周波数の発
振源、9…インピーダンスマッチング回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 直之 千葉県成田市新泉14−3野毛平工業団地 内 アプライド マテリアルズ ジャパ ン株式会社内 (72)発明者 小林 直明 千葉県成田市新泉14−3野毛平工業団地 内 アプライド マテリアルズ ジャパ ン株式会社内 (72)発明者 浦田 一男 千葉県成田市新泉14−3野毛平工業団地 内 アプライド マテリアルズ ジャパ ン株式会社内 (72)発明者 佐藤 辰哉 千葉県成田市新泉14−3野毛平工業団地 内 アプライド マテリアルズ ジャパ ン株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−166372(JP,A) 特開 平4−341568(JP,A) 特開 平6−69197(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板を収容する反応容器内において、有
    機シラン系化合物と、ハロゲン原子及び酸素原子を有し
    ない窒素化合物と、窒素原子を含まない酸素化合物と、
    不活性キャリアガスとからなる混合ガスに高い周波数を
    有する電力を印加してプラズマを発生させるステップ
    と、 このプラズマ放電エネルギにより混合ガスを励起させて
    反応生成物を前記基板上に堆積させるステップとからな
    ることを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 【請求項2】 前記有機シラン系化合物は、Si(OC
    254、(C25)Si(OC253、C511Si
    (OC253、CH2CHSi(OC253、C65
    Si(OC253、(CH32Si(OC252、S
    i(OCH34、Si48244、Si44164
    Si112246、Si26181、および(C
    252SiH2から選ばれた少なくとも一種類のガスを
    含むことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
  3. 【請求項3】 前記窒素化合物は、N2およびNH3から
    選ばれた少なくとも一種類のガスを含むことを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の薄膜形成方法。
  4. 【請求項4】 前記酸素化合物は、O2およびO3から選
    ばれた少なくとも一種類のガスを含むことを特徴とする
    請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜形成方法。
  5. 【請求項5】 前記不活性キャリアガスは、Arおよび
    Heから選ばれた少なくとも一種類のガスを含むことを
    特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜形
    成方法。
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