JP3070043B2 - アルカリ可溶性α化澱粉、その製造方法及び澱粉接着剤 - Google Patents

アルカリ可溶性α化澱粉、その製造方法及び澱粉接着剤

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、澱粉接着剤を製造する
ために使用するアルカリ可溶性α化澱粉、その製造方
法、及び該アルカリ可溶性α化澱粉の含む澱粉接着剤に
関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、一般に段ボールの製造に使用される
澱粉接着剤は、ステインホール方式と呼ばれる製糊方法
で製造され、キャリア部と呼ばれるアルカリ糊化した澱
粉糊液と、メイン部と呼ばれる未糊化澱粉の懸濁液との
混合物からなっている。この接着剤はメイン部とキャリ
ヤ部を別々に調製するため、2段階の操作が必要な繁雑
な方法であり、そのうえ品質が安定した接着剤を得るこ
とが困難であるという欠点があった。このような繁雑な
操作をなくし、品質が安定した澱粉接着剤を得るため、
α化澱粉をステインホール方式でいうキャリア部澱粉と
して用い、このα化澱粉と未糊化澱粉とを同時に使用し
て一工程で澱粉接着剤を製造する方法が開発された(例
えば、特公昭50−34576号公報及び特公昭52−
39619号公報)。このα化澱粉は冷水で容易に膨潤
溶解し、粘度を発現する澱粉である。しかし、α化澱粉
の溶解速度が速や過ぎるとα化澱粉全体が完全に分散溶
解する前に、一部のα化澱粉が膨潤溶解して、分散溶解
せずに残っているα化澱粉を包み込んでしまう、いわゆ
る「ママコ」といわれる状態を作り、いったんママコが
生じると、これらの再溶解をすることは非常に難しく、
α化澱粉の均一な溶解は困難となる。したがって、α化
澱粉を使用した場合に、α化澱粉及び他の成分が分散溶
解する前に、一部のα化澱粉が膨潤溶解し、これらを包
み込みママコを形成して接着剤の物性を大幅に悪くする
という問題があった。
【0003】このママコの形成を防止するために、二軸
型エクストルーダを使用し、糊化した澱粉を十分にセン
断することによって得られたα化澱粉を含む段ボール用
接着剤組成物が開発された(特開平3−17175号公
報)。しかし、この組成物に含まれるα化澱粉は、澱粉
分子が切断されているため、その接着剤は接着力が低い
という欠点があった。また、α化が不十分な澱粉を使用
するとママコの発生は少ないが、このような澱粉には、
常温の水(10〜40℃) 及びアルカリ溶液に溶け難い結晶
状態のアミロペクチンが含まれており、このため、α化
が不完全な澱粉と未糊化澱粉の配合物を、水酸化ナトリ
ウム等とともに水に加えても、このα化澱粉が溶解膨張
せず、粘度が出ないため、未糊化澱粉を維持できず澱粉
接着剤が不安定になるという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の問題
点を解決し、ママコの発生が少なく、かつ強い接着力が
得られるα化澱粉及びこのα化澱粉を使用した澱粉接着
剤を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らが前記の課題を
解決するために検討を行った結果、澱粉を完全にα化し
た後、常圧下、0 〜 100℃で放置するとアミロースが再
結晶し、かつこのアミロースがアルカリ溶液に溶けやす
いことを見出し、これを応用して、所定の処理を行うこ
とにより、再結晶したアミロースとα化したアミロペク
チンを含むα化澱粉を得ることができ、かつこのα化澱
粉を常温の水に分散した場合、再結晶したアミロースは
溶解せず、α化したアミロペクチンだけが溶解するの
で、通常の攪拌でα化澱粉が分散しママコの発生はな
く、次いで添加したアルカリ物質が溶けるに従って、ア
ミロースが溶けてα化するので、澱粉接着剤中に十分な
量のα化澱粉が存在し、安定した澱粉接着剤が得られる
こと、及びこのアルカリ可溶性α化澱粉は分子が切断さ
れていないので、強い接着力を有するという知見を得
た。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものであ
る。したがって、本発明は、20℃において、pH 6以下の
場合、水に対する溶解度が60重量%以下であり、pH12以
上の場合、水に対する溶解度が90重量%以上であるアル
カリ可溶性α化澱粉を提供する。
【0006】また、本発明は、前記アルカリ可溶性α化
澱粉の製造方法であって、(1) pH 4〜9 で、澱粉濃度10
〜50重量%の澱粉−水スラリーを、圧力3 〜20kg/cm2
温度 100〜210 ℃で 3〜 120分間、熱処理し、(2) 常圧
下、温度0 〜 100℃で、2 〜 120分間、放置してアミロ
ースを再結晶させ、(3) その後、該澱粉−水スラリーを
乾燥する、アルカリ可溶性α化澱粉の製造方法を提供す
る。
【0007】また、さらに本発明は、前記アルカリ可溶
性α化澱粉と未糊化澱粉とを、重量比 1:2〜1:20で配合
した澱粉20〜50重量%を含むことを特徴とする澱粉接着
剤、並びにこの配合した澱粉100重量部に対し、水酸
化アルカリ 1.0〜3.0 重量部及び/又はホウ砂0.5 〜2.
0 重量部を含む澱粉接着剤を提供するものである。本発
明のα化澱粉を製造するために使用する原料澱粉は、従
来のスタインホール方式で使用されていたものと同じ澱
粉である。例えば、とうもろこし、小麦、米、馬鈴薯、
甘薯、タピオカ及びサゴ等の澱粉又はこれらの酸化物、
陽性化物、エーテル化物、エステル化物等を挙げること
ができる。
【0008】また本発明で使用する未糊化澱粉は、水及
び稀薄なアルカリ液で粘度変化を起さないような普通の
澱粉、化工澱粉であればどのようなものでも良い。例え
ば、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤で処理した酸化
澱粉、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのエ
ーテル化剤で処理したヒドロキシアルキル澱粉、カチオ
ン澱粉、すなわち水及び稀薄アルカリ液で粘度変化を起
さない未糊化澱粉であれば特に限定されない。
【0009】本発明のアルカリ可溶性α化澱粉の製造は
次のように行う。まず、原料澱粉を水に加えて攪拌し、
pH 4〜9 、澱粉濃度10〜50重量%の澱粉−水スラリーを
調製する。pHを 4〜9 に調整するのは、熱処理時に澱粉
分子が過剰に切断されるのを防止するためである。過剰
に切断されると、接着力の低下が起こる。なお、このpH
の調整は、水洗浄及び水酸化アルカリ等の薬剤を使用し
て行う。さらに、澱粉濃度を10重量%以上とするのは、
多量の水を加熱することはエネルギーのロスとなるため
であり、澱粉濃度を50重量%以下にするのは、これ以上
の濃度にすると処理中に流動性が悪くなりスラリー内の
温度分布が不均一になるからである。
【0010】この澱粉−水スラリーを圧力3 〜20kg/c
m2、温度 100〜210 ℃で 3〜120 分間、熱処理する。こ
の場合、温度が100 ℃よりも低いと澱粉のα化が不十分
となり、温度が210 ℃よりも高いと澱粉分子の切断が多
くなり接着強度が低くなる。続いて、熱処理した澱粉−
水スラリーを、常圧下、温度0 〜 100℃で、2 〜 120分
間、放置してアミロースを再結晶させ、処理した澱粉−
水スラリーを乾燥する。この乾燥は、従来から使用され
ている噴霧乾燥、ドラム乾燥等の手段により行うことが
できる。なお、得られたアルカリ可溶性α化澱粉は、粒
径20〜50μm に調整して使用するのが好ましい。
【0011】さらに本発明の澱粉接着剤は、前記アルカ
リ可溶性α化澱粉と未糊化澱粉とを、重量比 1:2〜1:20
で配合した澱粉20〜50重量%及び必要に応じて従来から
使用されている各種添加剤を加えて製造する。アルカリ
可溶性α化澱粉と未糊化澱粉とを、重量比 1:2〜1:20で
配合するのは、重量比が1:20よりも大きいと粘度低下、
スラリーの安定性悪化、流動性悪化などが起こるためで
あり、重量比を1:2 よりも小さくするのは、接着力の低
下がおこり、またコストも高くなるためである。また、
前記配合した澱粉の割合を20重量%以上とするのは接着
剤が薄いと紙に多量の水分を与えて、シワを発生させる
からであり、50重量%以下とするのは接着剤の安定性及
び未糊化澱粉の糊化水分を確保するために水分が必要だ
からである。
【0012】なお、添加剤として水酸化ナトリウム、水
酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、及び/又はホウ砂
を加えるのが好ましい。一般に、前記アルカリ可溶性α
化澱粉と未糊化澱粉とを澱粉100重量部に対し、水酸
化ナトリウム 1.0〜2.5 重量部及び/又はホウ砂0.5 〜
2.0 重量部を加えるのが好ましい。また、本発明で水酸
化アルカリを使用するのは、接着時の熱で未糊化澱粉を
を容易に溶解させるためである。水酸化アルカリを添加
しない場合、その糊化温度が80℃以上になり未糊化澱粉
の溶解に時間がかかるのに対し、水酸化ナトリウムを添
加すると糊化温度が40〜60℃と低くなり、その結果、未
糊化澱粉が容易に溶解し、接着剤の初期接着性が良くな
る。さらに、本発明でホウ砂を使用するのは、接着剤の
粘度に影響を与えることなく、接着力を強化することが
でき、また、初期接着力が高まり、張り合わせ速度が上
がるからである。本発明の澱粉接着剤は、水にこれらの
成分を同時に、又は任意の順序で、所定量加えることに
より、容易に製造することができる。
【0013】
【発明の効果】澱粉接着剤を製造する際、ママコの発生
が少なく、かつ強い接着力が得られるα化澱粉を得るこ
とができ、このα化澱粉は一工程で製造する澱粉接着剤
のキャリア部及び紙用塗料のバインダーとして優れたも
のであった。また、このα化澱粉を使用して、容易に澱
粉接着剤を得ることができ、得られた澱粉接着剤は接着
力が強く、かつダンボール紙に歪み等を生じさせないも
のであった。
【0014】
【実施例】実施例により、本発明をさらに詳しく説明す
る。なお、特に明示しない限り部は重量部を意味する。
【例1】未糊化のコーンスターチ35部と水65部とを
混合して得たpH 5.2の澱粉−水スラリーを、180℃に
加熱した、直径12.7mm、長さ3760mmの反応管内
を、吐出圧11kgf/cm2 、送り量100ml/分で通過さ
せ、4.8分間かけて処理した。この澱粉−水スラリーを
常圧に戻し、60℃で30分間放置して、アミロースを再結
晶させた後、スプレードライヤー(大川原加工機OC−
16型)により200℃の熱風で乾燥すると同時に粉末
化した。 o粉末化後の粒子径 30〜59μm o水分 3〜 6重量%
【0015】
【例2】未糊化のコーンスターチ40部と水60部とを
混合して、pH 5.2の澱粉−水スラリーを、調製し、18
0℃に加熱した、直径12.7mm、長さ3760mmの反応
管内を、吐出圧11kgf/cm2 、送り量100ml/分で通
過させ、4.8分間かけて処理した。この澱粉−水スラリ
ーを常圧に戻し、50℃でアミロースを再結晶させた。こ
の澱粉−水スラリーをドラムドライヤー(ドラム温度1
20℃)で乾燥し、粉末化した。 粉末化後の粒子径 30〜 100μm 水分 8重量%
【0016】
【実施例1】(段ボール用澱粉接着剤の製造) 水61.5部に耐水化剤(王子ナショナル社、ボンレッツ
ー30)2.3部とホウ砂0.5部を添加し溶解した後、未
糊化澱粉24.8部と例1で得たアルカリ可溶性α化澱粉
8.2 部を添加し、澱粉−水スラリーを調製した。次に、
濃度15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を5部添加
し、未溶解のアミロース結晶を溶解して段ボール用高温
反耐水性接着剤を製造した。 上記接着剤の特性 o澱粉濃度 : 33重量% oB型粘度 : 200cps oフォートワップ粘度 : 20秒 opH : 12.20 o接着力の強さ*1) ドライ*2) : 38kgf ウェット*3) : 4.5kgf *1):JIS Z0402 原紙:SK280 ×SHA180×SK280(Aフル
ート) 接着剤塗布量 10g/m2 *2):20℃、65% RH 24時間調湿 *3):20℃の水に60分間浸漬した後の接着力の強さ
【比較例1】完全にα化された澱粉として、澱粉試薬
(水溶性澱粉;米山薬品工業)を使用した。
【比較例2】澱粉を使用して濃度50重量%の澱粉−水
スラリーを調製し、90℃で3分間処理した後、乾燥
し、α化が不完全な澱粉を製造した。
【0017】
【表1】 水分散性及びアルカリ可溶性 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― α 化 処 理 澱 粉 未糊化澱粉 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 澱粉 例1の 例2の 比較例1の澱粉 比較例2の澱粉 未糊化コー 澱粉 澱粉 α化の完全な澱粉 α化が不完全な ンスターチ (水溶性澱粉) 澱粉 (豊年コーン スターチ) 水分散性*1) 〇 〇 × 〇 〇 溶解度 *2) 65% 60% 90%以上 30% 2%以下アルカリ 溶解性*3) 〇 〇 〇 × × 溶解度 *4) 95% 95% 95%以上 60% 2%以下 以上 以上 *1) 〇:ママコの発生なし ×:ママコの発生あり 測定条件:液温:30℃,攪拌回転機:300RPM *2) 20℃における水(pH 6)に対する溶解度(重量%) *3) pHを12.10 にした場合 〇:沈澱物なし ×:沈澱物有り 測定条件:液温:30℃,pH:12.10 *4) 20℃における水酸化ナトリウム水溶液 (pH 12)対する溶解度(重量%)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 20℃において、pH6以下の場合、水
    に対する溶解度が70重量%以下であり、pH12以上
    の場合、水に対する溶解度が90重量%以上であるアル
    カリ可溶性α化澱粉と未糊化澱粉とを、重量比1:2〜
    1:20で配合した澱粉を20〜50重量%含むことを
    特徴とする澱粉接着剤。
  2. 【請求項2】 前記アルカリ可溶性α化澱粉と未糊化澱
    粉とを配合した澱粉100重量部に対し、水酸化アルカ
    リ1.0〜3.0重量部及び/又はホウ砂0.5〜2.
    0重量部含む請求項1記載の澱粉接着剤。
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