JP3068058B2 - 油脂性菓子のテンパリング状態検出方法及び油脂性菓子の製造法 - Google Patents
油脂性菓子のテンパリング状態検出方法及び油脂性菓子の製造法Info
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Description
とにより、油脂性菓子のテンパリング状態を迅速に検出
する方法、及びこのような検出方法を利用する油脂性菓
子の製造法に関する。
程において、油脂中に少量の安定型(V型)の結晶をつ
くることを目的として温調処理をする、テンパリングと
呼ばれる、最終製品の品質に多大な影響を及ぼす非常に
重要な工程がある。このテンパリング操作が不適切だ
と、油脂の安定結晶の生成、成長の不均一及び粗大結晶
の発生等による、製品の光沢不足やファットブルーム等
の欠陥が生じる。
により異なるが、通常、テンパリング装置を用いて、4
5〜50℃で融解している油脂を、一旦28〜29℃ま
で冷却した後、30〜32℃に昇温することにより行わ
れる。(The ManufacturingConfectioner, 9, p.85-88,
1997,J.Food Sci.,62(4)1,1997)
おけるテンパリング状態の管理は、作業者が、経験や勘
によりテンパリング状態を判断して、その結果に従って
作業者がテンパリング装置を制御するといった方法や、
あるいはテンパーメータを用いて、テンパリング状態を
テンパーインデックスとして測定し、その結果に従って
作業者がテンパリング装置を制御するといった方法によ
り行われている。
脂(以下、「油脂融液」という)が冷却される過程で、
油脂中の結晶状態により異なった温度変化を示すため、
逆にその温度変化のパターンを測定することで、油脂中
の結晶状態を知ることができることを利用した装置であ
る。具体的には、温度変化を測定して、例えば図6に示
すようなクーリングカーブを求める。更に、このカーブ
を数的処理して得られる曲線を、図7に示すような1〜
9の9本のインデックス直線と比較し、その油脂のテン
パーインデックスを求め、テンパリング状態の善し悪し
を判断する。例えばテンパーインデックスが1〜3の場
合はアンダーテンパーといって、テンパリングが不十分
の状態を表し、4〜6の場合はグッドテンパーといっ
て、テンパリングが良好な状態を表し、7〜9の場合は
オーバーテンパーといって、過剰なテンパリングのため
粘度が上昇した状態を表す。
の、作業者の経験や勘に頼るといったテンパリング状態
の管理方法では、作業者がいくら熟練しているといって
も、やはり確実性や迅速性に欠けるという問題があっ
た。
テンパーインデックスを測定するためには、装置の測定
原理から油脂融液を液体から固体へと変化させなけらば
ならず、測定に時間がかかるという問題があった。
するには、X線解析による回折パターンや、DSC分析
による吸熱ピークを調べなくてはならず、オフラインで
の詳細な分析を必要とするため、非常に時間がかかり、
更には、オンラインでの迅速な測定は困難であり、省力
化が図れないという問題があった。
グ状態を確実にかつ迅速に検出することができるテンパ
リング状態検出方法と、テンパリング状態を検出しその
結果に基づいて温度制御ができるようにした油脂性菓子
の製造方法とを提供することにある。
め、本発明の第1は、油脂性菓子の融液又は固化物に近
赤外線を照射し、その反射及び/又は透過スペクトルを
測定することを特徴とする油脂性菓子のテンパリング状
態検出方法を提供するものである。
おいて、油脂性菓子生地の融液又は固化物に近赤外線を
照射し、その反射及び/又は透過スペクトルを測定し、
この測定データに基づいてテンパリングマシン、分注
機、及びクーラーの温度制御を行うことを特徴とする油
脂性菓子の製造法を提供するものである。
る測定は、照射する被測定物の状態を選ばないので、従
来のように液体から固体へと変化させる時間が不要とな
り、近赤外線を照射してからテンパリング状態を検出す
るまでの時間が、著しく短縮され、異常発生時において
も、迅速な対応が可能となる。
の検出を、従来のように作業者の経験や勘に頼らない
で、近赤外線照射による測定データに基づいて行い、そ
の結果に従ってテンパリングマシン、分注機、及びクー
ラーの温度制御を行うことにより、品質のバラツキがな
い均質な製品を製造することができる。
固化物に、1100〜2500nmの波長を持つ近赤外
線を照射して、その反射スペクトル、透過スペクトル、
あるいは透過反射スペクトルを測定することにより、油
脂性菓子のテンパリング状態を検出する方法である。
半固体、粉体、液体等のいずれの場合でも扱うことが可
能であり、本発明においても、油脂性菓子の生地の状
態、あるいは生地を固化させて得られる油脂性菓子の状
態、といったいずれの状態においても、照射、測定する
ことができる。しかも、照射による試料の組織破壊が起
こらないため、製品としての価値を損ねることがない。
は、チョコレート生地、カラーチョコレート生地、コー
ティング用油脂性クリーム生地、ナッツクリーム生地等
といった、油脂に糖を混合し、クリーム状、あるいはペ
ースト状に練り上げたものをいう。また、油脂性菓子と
は、上記した生地にテンパリング、モールディング、ク
ーリングなどの操作を施して製造される菓子をいう。
法について、図1、2を用いて説明する。図1は、本発
明において使用できる近赤外線の透過方式による吸光度
測定装置全体の一実施例を示す概略図である。
照射する測定装置本体10と、測定装置本体10で得ら
れるスペクトルを解析するコンピュータ18とからな
る。測定装置本体10のケーシング11内には、光源1
2と暗室13が設けられており、その間に、被測定物で
ある油脂性菓子(又は、油脂性菓子生地)Aをセットし
て、光源12から近赤外線を、油脂性菓子(又は、油脂
性菓子生地)Aに照射する。照射された近赤外線は、油
脂性菓子(又は、油脂性菓子生地)Aを透過し、この透
過光は、集光レンズ14で集められ、その後、スリット
15を通し、回折格子16で分光反射させ、ラインセン
サ17上に焦点を結ばせ、分光スペクトルデータ(11
00〜2500nmの吸光度)が計測される。次いで、
計測された分光スペクトルデータは、ラインセンサ17
と接続されたコンピュータ18に送られて演算処理さ
れ、その結果から、油脂性菓子(又は、油脂性菓子生
地)Aのテンパリング状態を検出することができる。
線の反射方式による吸光度測定装置の照射部と受光部の
一実施例を示す概略断面図であり、20は暗室、21は
被測定物支持部材、22は同軸グラスファイバーであ
る。
い光源と接続された投光側23と、その外側部が、図示
しないコンピュータと接続された受光側24とから構成
される同軸グラスファイバー22が挿着されている。被
測定物である油脂性菓子(又は、油脂性菓子生地)A
は、同軸グラスファイバー22の上端面に、被測定物支
持部材21により支持された状態でセットされ、投光部
23から近赤外線を照射する。照射された近赤外線は、
油脂性菓子(又は、油脂性菓子生地)Aの表面及び内部
で反射し、その表面反射光及び拡散反射光は受光側24
に入り、分光スペクトルデータ(1100〜2500n
m吸光度)が計測される。ここで得られたデータは、受
光側24と接続されたコンピュータに送られ演算処理さ
れ、その結果、油脂性菓子(又は、油脂性菓子生地)A
のテンパリング状態を検出することができる。
nmの波長の近赤外線を発生できるものであれば、特に
限定されず、例えばハロゲンランプなどを使用すること
ができる。また、スペクトルの測定は、1100〜25
00nmの全部又は一部の波長域で連続的に行ってもよ
く、あるいは、上記波長域にある、いくつかの特定波長
についてスポット的に選択して行ってもよい。例えば1
100〜2500nmの範囲で、好ましくは0〜350
nm毎、より好ましくは8〜250nm毎にスペクトル
を測定する方法が好ましく採用される。この場合、35
0nmを超える波長毎のスペクトルの測定では、測定に
要する時間は短縮されるものの、相関係数が低下し標準
誤差が増加することにより、回帰式の精度が下がるため
好ましくない。
タを、後述する実施例と同様な解析法で処理して得られ
た、検量線作成用試料と検量線評価用試料における相関
係数及び標準誤差を調査した結果を表1に示す。このよ
うに、波長間隔を短くするほど相関係数は高くなる。
ンピュータによる演算処理とは、予めテンパーメータに
より得られた値と、近赤外線の吸光度あるいは反射率と
を回帰分析法、特にPLS回帰分析法により解析するこ
とであり、より詳しくは、測定により得られたスペクト
ルと、テンパーメータにより得られた値との相関回帰方
程式(以下、「回帰式」という)をコンピュータで計算
させ、得られた回帰式を記憶させておく。また、重回帰
分析法や主成分回帰分析法等のPLS回帰分析法以外の
多変量解析法も用いることもできる。このような回帰式
の作成に際しては、測定したスペクトルの値そのものを
利用する場合や、そのスペクトルの1次微分、2次微
分、スムージング等のスペクトルの前処理と呼ばれるス
ペクトルを変換することにより得られる値を利用する場
合があり、どちらの場合によれば高精度の回帰式が得ら
れるかは、実際に処理を行い解析されて判断される。本
発明では、スペクトルそのものの値を用いた方が高精度
の回帰式が得られるので好ましい。
せておけば、後は未知のサンプルでも、そのスペクトル
を本発明の方法で測定するだけで、テンパリング状態が
簡便に精度よく予測、測定できる。なお、スペクトルの
分析や回帰式の決定は、例えば、Unscrambler6.11 (CA
MO社製)というソフトウェアーを使用することができ
る。
なく測定を行うことができるため、テンパリング、モー
ルディング、クーリングなどの、油脂性菓子製造の工程
中においてオンラインでの測定が可能となり、迅速で正
確な品質管理が可能となる。以下、このオンラインでの
測定を採用した油脂性菓子の製造法について、図3を用
いて説明する。
実施形態を説明する概略図であり、テンパリング、モー
ルディング、クーリングの各工程で使用されるテンパリ
ング装置31と、分注機32と、クーラー33とがそれ
ぞれ、近赤外分光計30に接続されており、この分光計
30により各工程で得られる試料に近赤外線を照射し
て、そのスペクトルを検出する。検出されたデータは、
コンピュータ34に送られて、そこで演算処理され、試
料の状態がリアルタイムで求められる。更に得られた結
果は、各温度制御装置31a、32aや冷却制御装置3
3aに送られて、その結果に基づいてテンパリング装置
31、分注機32、クーラー33の各機械の制御が行わ
れる。
可能となることにより、何か異常が発生した場合でも、
その時点での迅速な対応がとれるようになる。
下の2つの方法でテンパリングを行った。第1の方法
は、単純冷却とシーディングによる処理であり、ステン
レスボールに生地を入れ、50℃に融解して、ゴムべら
で撹拌しながら自然放冷により31℃付近まで冷却し、
精製カカオ脂(不二製油株式会社製)を、チョコレート
融液100重量部に対して、0〜2.0重量部の割合で
添加し、再び撹拌した。第2の方法は、冷却−昇温式の
温調処理であり、50℃に融解した生地を25℃付近に
まで撹拌しながら冷水で冷却し、再び30℃付近まで温
水で昇温した。
行い、合計23条件のサンプルを作成した。なお、1条
件に対して3つのサンプルを作成したので、サンプル数
の合計は69個である。
に、TEMPERMETER E2(sollich 社製)を用いてテンパー
インデックスを測定した。開始温度を28℃とし、一定
の条件下で冷却し、得られた冷却曲線からテンパリング
の程度が測定された。
冷却し固化したサンプルを、直ちにディスポーザブルサ
ンプルカップに移し、近赤外分光計「InfraAlyzer500」
(商品名、BRAN+LUEBBE社製)を用いて、拡散反射モー
ドで測定した。スキャン範囲は、1100〜2500n
mで4nm毎にデータの取り込みを行った。なお、デー
タの取り込み及び前処理は、IDASソフトウェアー(BRAN
+LUEBBE社製)を用い、Unscrambler6.11 (CAMO社製)
によりデータの解析を行った。
ンパーインデックスを予測するための検量線が得られ
た。その結果、検量線作成用サンプルにおいて、テンパ
ーメータによるテンパーインデックスと近赤外線分析に
よって推定された値との相関係数(R)=0.9439
で、標準誤差(SEC)=0.54であり、評価用サン
プルにおいては、R=0.9154で、標準誤差(SE
P)=0.66であった。この結果を図4に示す。
レートについても、同様な解析法で処理した結果、検量
線作成用サンプルにおいて、R=0.886、SEC=
0.712であり、評価用サンプルにおいては、R=
0.818、SEP=0.824であった。この結果を
図5に示す。
ング状態検出法によれば、近赤外線照射による測定は、
照射する被測定物の状態は選ばないので、従来のように
液体から固体へと変化させる時間が不要となり、測定し
てテンパリングの状態を検出するまでの時間を著しく短
縮することができる。
ば、テンパリング状態の検出を、近赤外線照射による測
定データに基づいてテンパリングマシン、分注機、及び
クーラーの温度制御を行うことにより、品質のバラツキ
がない均質な製品を製造することができる。
による吸光度測定装置全体の一実施例を示す概略図
による吸光度測定装置の照射部と受光部の一実施例を示
す概略断面図
明する概略図
パーインデックスを予測するための検量線
パーインデックスを予測するための検量線
ブ
Claims (4)
- 【請求項1】 油脂性菓子の融液又は固化物に近赤外線
を照射し、その反射及び/又は透過スペクトルを測定す
ることを特徴とする油脂性菓子のテンパリング状態検出
方法。 - 【請求項2】 前記油脂性菓子が、ココアバターを含有
するものである請求項1記載の油脂性菓子のテンパリン
グ状態検出方法。 - 【請求項3】 前記スペクトルを多変量解析法で解析す
る請求項1又は2記載の油脂性菓子のテンパリング状態
検出方法。 - 【請求項4】 油脂性菓子の製造工程において、油脂性
菓子生地の融液又は固化物に近赤外線を照射し、その反
射及び/又は透過スペクトルを測定し、この測定データ
に基づいてテンパリングマシン、分注機、及びクーラー
の温度制御を行うことを特徴とする油脂性菓子の製造
法。
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JP20365698A JP3068058B2 (ja) | 1998-07-17 | 1998-07-17 | 油脂性菓子のテンパリング状態検出方法及び油脂性菓子の製造法 |
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-
1998
- 1998-07-17 JP JP20365698A patent/JP3068058B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (3)
Title |
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Food Eng.Int.23[2](1998)p.51−55 |
Food Manufacture 72[7](1997)p.31−34 |
中西喜次著「チョコレート・ココア製造の理論と実際」株式会社光琳書院(昭和40年1月7日)p.260−269 |
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Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000032916A (ja) | 2000-02-02 |
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