JP3064865B2 - 耐hic性の優れた高強度高靱性鋼の製造法 - Google Patents

耐hic性の優れた高強度高靱性鋼の製造法

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JP3064865B2
JP3064865B2 JP7128186A JP12818695A JP3064865B2 JP 3064865 B2 JP3064865 B2 JP 3064865B2 JP 7128186 A JP7128186 A JP 7128186A JP 12818695 A JP12818695 A JP 12818695A JP 3064865 B2 JP3064865 B2 JP 3064865B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐HIC 性の優れた高強
度高靱性鋼の製造方法、特に、API ×65規格以上の高い
母材強度を有しながら、HAZ 部全域にわたって優れた靱
性を確保し得る、例えば大径溶接鋼管用素材として有用
な高強度高靱性鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐HIC 性向上のためには鋼の高純度化、
介在物の形態制御加速冷却による組織改善などが行われ
てきた。
【0003】高強度 (API 規格×65以上、特に×70〜×
80以上) を有しながら、耐HIC 性を保つのは強度保証の
ために添加する合金元素 (特にMn) の影響で連続鋳造ス
ラブ中心部に硬化組織を生成させやすいことから困難で
ある。
【0004】従来にあっても、例えば特開平5−271766
号公報には、低C−低Mn−Nb−Ti系をベースにそれぞれ
0.5 %以下、0.3 %以下のCr、Moを複合添加した鋼にT
MCPを適用して高強度、高靱性でかつ耐HIC 性に優れ
る×80クラス鋼の製造方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来技術では、Nb、Moの複合添加は母材の強度、靱性向
上には有効であるが、HAZ 部の靱性を損なう可能性が強
い。
【0006】したがって、本発明の目的は、母材の強
度、靱性の向上が図られると同時に、HAZ 部の靱性も確
保できる耐HIC 性に優れた×80クラス鋼の製造法を提供
することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題解決のために種々検討を重ねた結果、高い母材強度を
有しながらHAZ 部全域にわたって優れた靱性を確保し得
るために微細なTi−Mn−Al酸化物の分散技術を適用する
ことに着目し、さらに検討をしたところ次のような知見
を得た。
【0008】(1) 中心偏析部の硬度上昇を招き、耐HIC
性を劣化させるとされるC、Mn、Pレベルを押さえなが
ら強度保証のためにNb、Moを複合添加する一方で、Nb、
Mo複合添加によって劣化するHAZ 部の靱性向上を図るべ
く、Ti−Mn−Al系酸化物を微細分散させ、これを粒内ア
シキュラーフェライトの核生成サイトとして活用するこ
とによってHAZ 部組織を微細化させ得る。
【0009】(2) 鋼中に酸化物を分散させて、組織を微
細化する技術は、サブマージドアーク溶接の溶接金属等
については一般的であるが、この方法を通常の鋼材に適
用しようとした場合、分散個数が遙に少なくなってしま
うため、所期の効果を十分に発揮させることは難しい。
【0010】この条件に対する解決方法には、2通りが
考えられる。一つは分散し易い酸化物種を鋼中に形成さ
せることであり、もう一つは、組織微細化能の大きな酸
化物を鋼中に形成させることである。
【0011】(3) 本発明者らは、酸化物組成の積極的な
抑制を念頭に置き、Al、Ti、Mnよりなる酸化物を鋼中に
形成させ、その場合の鋼の性能の調査を行った。
【0012】結果として、次の3点が明らかになった。
すなわち、 i)鋼中に分散した酸化物が、溶接熱影響部において粒内
フェライト析出核として機能するか否かは、分散する個
々の酸化物組成に強く依存する。 ii) 鋼中の酸化物が、Al酸化物、Ti酸化物、もしくはAl
−Ti酸化物である場合、HAZ部組織改善等の有用な効
果は殆ど得られない。
【0013】iii)フェライト核として有効な酸化物は、
図1(a) および図1(b) の領域A、B、二つの領域に当
てはまる組成を持つ酸化物であり、これら単独、および
複合体を形成する場合の何れでも、良好なフェライト/
アシキュラーフェライト核となる。
【0014】iv) 領域A、Bに相当する酸化物を、商業
生産に耐え得るほどに安定して形成させるためには、A
l、Mn、Ti以外の脱酸元素であるCおよびSiに対して、
その含有量に上限を設ける必要があり、C≦0.09%、Si
≦0.5 %としなければならない。ただし、Cについては
耐サワー性をも考慮している。
【0015】v)Ca、Zrを過剰に添加すると、領域A、B
に相当する酸化物は形成されなくなる。しかし、添加量
を制限し、かつ、Ti、Alの添加に先立って添加し、添加
後の溶鋼中の溶存酸素量を10ppm 以上確保するならば、
領域A、Bに相当する酸化物を鋼中に分散させることが
可能で、優れたHAZ 部靱性を得ることができる。
【0016】ここに、本発明は、上述のような知見を基
に完成されたもので、その要旨とするところは、重量%
で、C:0.04〜0.09%、Si:0〜0.5 %、Mn:1.00〜1.
40%、P≦0.010 、S≦0.003 、Nb:0.005 〜0.060
%、Mo:0.05〜0.50%、Ti :0.005 〜0.025 %、Al≦
0.02%、O:0.0010〜0.0070%、N:0.0005〜0.0100
%、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜1.5 %、Ni:0.05
〜1.5 %、Cr:0.05〜1.0 %、V:0.01〜0.1 %、Ca:
0.001 〜0.005 %、B:0.00005 〜0.0020%の1種また
は2種以上、残部はFeと不可避的不純物からなる鋼組成
を有し、かつ鋼材中に、大きさが0.2 〜20μmのAl−Ti
−Mn 3元系酸化物を主体とした酸化物が1mm2 あたり4
個以上分散し、この酸化物が下記〜式のうち式
を満足するか、または式を満足する鋼を、10
00〜1250℃の温度範囲に加熱した後、950 ℃以下の累積
圧下量を50%以上として780 〜900 ℃にて圧延を終了
し、760 ℃以上より冷却速度5〜50℃/secで、(i)350〜
600 ℃まで水冷、その後放冷するか、あるいは(ii) 350
℃以下まで水冷、その後600 ℃以下で焼戻し処理をする
ことを特徴とする耐HIC性の優れた高強度高靱性鋼の
製造法である。
【0017】 (Ti+Mn+Al) > (酸化物粒子を構成する全金属元素) ×0.70(mol比) ・・・ 以下、Ti+Mn+Al=100 とした場合のmol 比にて (Ti+Mn) ≧80.0 mol% ・・・ 50.0mol%≧Mn≧7.0 mol % ・・・ 20.0mol%≧Al ・・・ (Al+Mn) ≧40.0 mol% ・・・ 1.0≦ (Al/Mn)≦5.0 (in mol) ・・・ このように、本発明によれば、Al−Ti−Mnの3元系酸化
物について、組成を適正範囲に制御して鋼中に分散させ
ることにより、特に、HAZ部、つまり溶接熱影響部に
おいて優れた組織微細化効果を得、靱性を向上させるこ
とができ、他の母材成分ならびに製造条件によって良好
な母材の強度、靱性および耐サワー性を合わせ持つこと
ができる。
【0018】
【作用】次に、本発明において鋼組成および製造条件を
上述のように限定した理由についてその作用とともに説
明する。なお、本明細書において、特にことわりがない
限り、「%」は重量%を意味する。
【0019】すでに説明したように、本発明は、中心偏
析部の硬度上昇、耐HIC 性の劣化を招くとされている
C、Mn、Pの配合を抑制しながら、一方強度保証のため
にNb、Moを複合添加し、今度はそのNb、Mo複合添加によ
って劣化するHAZ 部靱性の改善を図るべく、Ti−Mn−Al
系酸化物を微細分散させ、これを粒内アシキュラーフェ
ライトの核生成サイトとして活用することによってHAZ
部組織を微細化させることに特徴を有する。
【0020】C:0.04〜0.09% Cは強度を確保する上で必要な元素である。C含有量が
0.04%未満であると、必要な強度が得られないので下限
は0.04%とした。一方、0.09%を超えると素材および溶
接継手部の靱性が劣化するので、上限は0.09%とした。
好ましくは、0.05〜0.08%である。
【0021】Si:0〜0.5 % Siは無添加でもよいが、鋼の溶製時に脱酸剤として作用
するとともに強度の向上に有効である。これらの効果を
得るために積極的に添加する場合、その下限は、0.05%
とするのが望ましい。一方、0.5 %を超えると島状マル
テンサイトの生成が促進されHAZ部靱性の劣化をもた
らすので、その上限は0.5 %とした。望ましいのは0.1
%以下である。
【0022】Mn:1.00〜1.40% Mnは脱酸剤として、または素材の強度と靱性を向上させ
るのに有効である。X65グレード以上の素材強度を確保
するには1.00%以上のMn含有量が必要である。一方、1.
40%を超えると中心偏析部の硬度上昇に伴って耐HIC
性の劣化が顕著となるので上限は1.40%とした。好まし
くは、1.10〜1.30%である。
【0023】Nb:0.005 〜0.060 % Nbは、微細な炭窒化物を形成し、強度を上昇させる効果
を有する。この効果を得るには0.005 %以上とする必要
がある。一方、0.060 %を超えると脆化の弊害の方が大
きくなるため、上限は0.060 %とした。好ましくは、0.
030 〜0.050 %である。
【0024】Mo:0.05〜0.50% Moは、焼入れ性の向上とオーステナイトの再結晶抑制の
効果を通して制御圧延効果を増大させることによって、
強度を上昇させるのに有効である。この効果は特にNbと
の複合添加により増大する。これらの効果を得るには、
0.05%以上が必要である。一方、0.50%を超えると靱性
の劣化をもたらすため、上限は0.50%とした。好ましく
は、0.15〜0.30%である。
【0025】Ti:0.005 〜0.025 % Tiは、微細な窒化物を形成することによってγ粒の粗大
化を防止し、靱性を向上させるのに有効である。さらに
分散酸化物に含有させてAl−Ti−Mn系酸化物の形成を助
ける。この効果を得るには0.005 %以上とする必要があ
る。一方、0.025 %を超えると炭化物の析出によって靱
性が低下するため、また、本発明にとって本質的なAl−
Ti−Mn系酸化物が形成しにくくなるため、さらにHAZ
部組織微細化能の小さいTi2O3 に近いTi酸化物の形成を
防止するため、その上限は0.025%とした。好ましく
は、0.005 〜0.015 %である。
【0026】Al:0.02%以下 Alは、過剰に含有させられた場合、Ti−Al−Mn系酸化物
の形成を阻害するため、過剰な添加は行ってはならな
い。そのため、0.02%を上限とする。好ましくは0.005
%以下である。
【0027】一方で、Alは分散酸化物の構成元素として
必須であるため、酸化物の構成金属元素として、微量な
がら必ず含有せしめなければならない。ただし、酸化物
分散個数はかなり少なくとも充分に効果を発揮するた
め、Al量の下限もかなり少なくとも問題はなく、計算上
では0.0001%以上となる。この値は、Alの分析限界を大
きく下回るため、本発明では下限は設定しない。
【0028】ところで、Mn、Ti、Alは脱酸力が強く、Al
を添加して溶存酸素濃度を充分に下げた後では、Ti、Mn
は酸化物中には含有されない。また、Tiを添加して充分
に溶存酸素を下げた後では、Mnは酸化物を形成せずAlも
酸化物中には含有させづらくなる。
【0029】このため、本発明においては、Mn、Ti、Al
がほぼ同時に最終脱酸に寄与することが必須であり、こ
れらの脱酸元素を添加した後、なおかつ10ppm 前後の溶
存酸素が確保されるように添加量条件を調節し、その後
に出鋼、凝固させなければならない。
【0030】なお、従来鋼においては、Alキルド鋼はAl
を添加して酸素をキルし、Ti脱酸鋼においてはTiを添加
して酸素をキルして製造されていたため、Al−Ti−Mnの
複合酸化物が形成される条件が満足されることはなかっ
た。
【0031】O:0.0010〜0.0070% 本発明では、鋼中に分散したAl−Mn酸化物、Ti−Mn酸化
物およびAl−Mn−Ti酸化物を含む複合酸化物を利用する
ため、すでに述べた理由から酸素には下限が必要であ
り、0.0010%以上は含有させることとした。
【0032】一方、酸素が0.0070%を超えて含有する場
合、Al、Ti等によって充分に酸素を固定しても、鋼の清
浄度劣化が著しくなるため、母材およびHAZ部とも、
実用的な靱性を得ることができなくなる。好ましくは、
0.0010〜0.0040%である。
【0033】N:0.0005〜0.0100% Nは多量に存在する場合、母材、HAZ 部共に靱性を悪化
させる。通常は、鋼にTiを添加してTiNの形で固定して
無害化しているが、Nが0.0100%を超えて鋼中に存在す
る場合は、HAZ 部において加熱時にTiNが鋼中に固溶し
て、HAZ 部の硬化を招き、靱性が劣悪化する。このた
め、Nは0.0100%を上限とする。
【0034】また、Nを0.0005%未満にまで低減するこ
とは、実際の生産の上では非常に難しく、経済性の観点
からこの値を本発明における下限値とする。なお、TiN
は、HAZ 部においてγ粒の成長を抑制し、HAZ 組織を微
細化するため、通常の溶接用鋼では、その分散量を確保
するために、Nはある程度含有させることが多い。
【0035】しかし、本発明のように大入熱熱溶接を行
う場合は、しばしばTiNは高温に曝されて溶失し、その
効力を失う。しかも、本発明では、アシキュラーフェラ
イト析出によってγ粒は実質的に微細化されるため、γ
粒の粗大化はあまり悪影響を与えず、TiN分散のメリッ
トは小さい。むしろ、高温延性を確保し、連続鋳造等の
製造を容易にするためには、N量は低くした方が好まし
く、0.0005%としても問題は生じない。
【0036】S:0.003 %以下 Sは不可避的不純物であり、多量に存在する場合、溶接
割れの原因となり、MnS等の割れの起点となり得る介在
物を形成する。またTi−Al−Mn系酸化物上へのMnSの複
合析出を、HAZ 部靱性確保に影響のない程度に止めるた
めにも0.003 %以下、望ましくは0.001 %以下とする。
【0037】P:0.010 %以下 Pは不可避的不純物であるが、中心偏析を助長するなど
耐HIC 性を劣化させるため、本発明においては0.010 %
を上限とする。望ましくは0.008 %以下とする。
【0038】Cu:0.05〜1.5 % Cuは強度上昇に有効な所望添加元素である。この効果を
得るには0.05%以上の含有量が必要である。一方、1.5
%を超えると溶接性を劣化させる。
【0039】Cr:0.05〜1.0 % Crは強度上昇に有効な所望添加元素である。この効果を
得るには0.05%以上の含有量が必要だある。一方、1.0
%を超えると溶接性を劣化させる。
【0040】Ni:0.05〜1.5 % Niは強度と靱性の向上に有効な所望添加元素である。こ
の効果を得るには0.05%以上の含有量が必要である。一
方、1.5 %を超えると経済性を損なう。
【0041】V:0.01〜0.1 % Vは必要により添加され、Nbと同様に炭窒化物を形成し
強度を上昇させる。しかし、Nbほどの効果はないため、
最低0.01%の含有量とする必要がある。一方、0.1 %を
超えると靱性を損なう。
【0042】Ca:0.001 〜0.005 % Caも強度と靱性の向上に有効な所望添加元素である。適
切なレベルであれば、耐HIC 性に有害なMnSの析出を防
止できるため下限を0.001 %とするが、一方過剰に含有
させるとTi−Al−Mn系酸化物等の酸化物を破壊するだけ
でなく硬質そのものの劣化をもたらすため上限を0.005
%とする。ただし、CaはMn、Ti、Alの脱酸元素の添加に
先立って添加する。
【0043】B:0.00005 〜0.0020% Bは、微量でもγ粒界の焼き入れ性を増し、母材強度を
高めるためには有効な所望添加元素であるが、HAZ 部で
は、靱性の低い硬化組織を形成するため、通常、HAZ 靱
性確保の観点からは好まれない。
【0044】しかしながら、本発明では、鋼中にTi−Al
−Mn系酸化物が分散しており、Bの有無に関わらず、ア
シキュラーフェライトの非常に有効な核生成サイトとし
て機能する。このため、Bの添加が容認され、添加量が
20ppm を越えなければ、HAZ靱性はたとえ劣化したとし
ても許容できるレベルに留まる。
【0045】また、Bは、γ粒界の焼き入れ性を選択的
に増し、本発明のように鋼中にTi−Al−Mn系酸化物が分
散している場合は、粒内析出のフェライト量を増して組
織を微細化するため、微量であればHAZ部靱性を確実
に改善する。
【0046】特に大入熱溶接を行う場合、HAZ部のγ
粒は粗大化するため、γ粒界への偏析性の高いBは、母
材や小入熱のHAZ部に比べて、遙に少ない量で効果を
発揮する。本発明者らの検討によれば、Ti/Nを2以上
にしておけば、含有量0.5 〜4ppm でもHAZ 靱性確保に
は劇的な効果が得られる。なお、この場合、鋼中にTi−
Al−Mn系酸化物が分散していなければ、HAZ 部靱性の改
善は全く望めない。また、この添加量では、母材の強度
上昇には殆ど寄与しないため、強度には実質的に影響を
与えずに、HAZ 部性能をコントロールする成分設計が可
能になる。
【0047】このように、大入熱溶接HAZ に対しては、
非常に少ない含有量で効果を発揮するため、B添加量に
比較的厳しい上限が課せられる用途においても使用する
ことが可能となり、HAZ部靱性確保に有用である。
【0048】以上のような理由により、本発明では、B
含有量は、HAZ 部靱性改善を主目的とする場合は、0.5
〜4ppm 、母材の強度確保を意図する場合は、4〜20pp
m の範囲とする。
【0049】本発明鋼は、実験室規模でも、実際の製造
プロセスの規模でも製造可能であるが、溶製に際して
は、Si、Mnによる予備脱酸後、予備脱酸に際して形成さ
れる微細な脱酸生成物の一部を溶鋼中に懸濁させ、なお
かつ溶存酸素を重量%にて0.002 %以上に調整する過程
が必要となる。続いて、Al濃度を重量%にて、0.0001%
以上0.005 %以下に調整し、しかる後に、Zr、Ti、Ca、
Mg、Hf、Y、および希土類元素を添加して、鋳造するこ
とが望ましい。また、実際の製造プロセスにおける鋳造
は、連続鋳造法によることが望ましい。これは、インゴ
ットによるよりは、生産効率が高く経済的であるだけで
なく、凝固時に冷却速度が大きく、酸化物を分散させ易
いあためである。条件式〜および、条件式
は、図1(a) 、(b) の領域AおよびBに相当する組成を
限定するためのものである。
【0050】図1(a) は不純物元素を除く、Al−Ti−Mn
について、Al+Ti+Mn=100 とするときのモル比にて、
HAZ組織微細化に有効な酸化物の組成を示す。図1
(b) は酸化物に混入する不純物 (金属) 元素量を4面体
の頂点に取って、本発明の組成範囲を表している。不純
物元素量は20mol%未満とする。
【0051】領域Aは、Galaxite (Al2MnO4)を含むAl−
Mn−Ti 3元素を主要な構成元素とする酸化物である。領
域Bは同じく3元素系酸化物で、よりTiの比率の多い領
域を含む。共通の物性として、絶縁体であるAl2O3 やTi
2O3 に比して、遙に高い電気伝導度を持つことが挙げら
れる。逆に、領域E、D、Cでは、酸化物の伝導度は低
く、このような、低伝導度領域は、本発明範囲には入ら
ない。
【0052】本発明者らは、経験的に、高伝導度組成の
酸化物はフェライトまたはアシキュラーフェライト核と
して有効であるという事実を得ており、本発明における
酸化物組成の限定範囲は、この事実を踏まえている。
【0053】領域Bに相当する組成を持つ酸化物は、単
独で分散している場合もあるが、領域Aに相当する酸化
物と複合粒子を形成している場合もある。このどちらの
場合も、酸化物粒子は良好なフェライト核またはアシキ
ュラーフェライト核として機能する。
【0054】領域Bの粒子、もしくは領域B、Aの複合
粒子に、領域E、Cに相当する粒子が付着している場合
があるが、この場合でも、核として機能する。ただし、
領域E、Cに相当する組成をもつ粒子だけでは、望まし
い効果を得ることはできない。
【0055】また、領域FおよびGの組成を持つ酸化物
を鋼中に形成させるためには、Mn添加量を過度に高める
と同時に、鋼中の全酸素量を高めなければならなくなる
ため、靱性が悪化し、特に厚鋼板等の用途に適用するこ
とは難しい。なお、領域Dに相当する組成の複合酸化物
は、理由は不明ながら鋼中に再現性良く形成させること
が難しかったため、本発明の範囲からは外した。
【0056】Mn、Ti、Alはこの順に脱酸力が強く、Alを
含有させた後では、TiやMnは酸化物を形成しない。その
ため、図1の領域A、Bに相当する複合酸化物を鋼中に
形成させるためには、最終脱酸後、Mn〜1%、Ti〜100p
pm、に制御し、なおかつ微量のAlを溶鋼に制御して供給
し、凝固させなければならない。この際、TiとAl量との
比に応じて、領域AとBの酸化物の形成量が変化する。
【0057】また、最終脱酸に至る途上の予備脱酸の段
階で、Al、Ca、Mg、Y、Zr、Hfといった強脱酸元素を添
加することは、添加後の溶鋼中の溶存酸素量が10ppm 以
上を確保する場合は、許容される。
【0058】領域Bの酸化物は、Alを含有しないものは
不安定で、安定して鋼中に分散させることが難しくなる
傾向がある。このため、0.5 mol%以上は含有しているこ
とが望ましい。しかし、組織微細化に対しては、Alの比
率が0.5 mol%未満の場合でも効果を発揮するため、領域
Bの本発明の範囲には、Al量の下限は設けない。
【0059】鋼材中の酸化物を構成する金属元素として
は、Al、Ti、Mnの他に、Ca、Mg、Y、Hf等がある。これ
らは、硫化物を形成してMnSの形成を抑制する点では望
ましいが、分散酸化物に混入する場合は、不純物と見な
される。このため、たとえAl、Ti、Mnの比率が式〜
を満足しても、Ca、Mg等の混入率が増した場合、望まし
い効果を得られなくなる場合がある。
【0060】本発明においては、不純物元素混入の影響
は、30mol%までしか確認していない。そのため、式の
如く、酸化物への不純物混入率は、30mol%を上限とし
た。
【0061】酸化物の分散個数は、酸素量および凝固時
の冷却速度で調整することが可能で、酸素量を増やせば
分散個数は増加し、酸素量を変更できない場合は、冷却
速度を大きくするほど分散個数は増える傾向にある。酸
素量は精錬条件の調整でコントロール可能である。一方
大型の鋼塊を鋳造する場合には、冷却速度を大きく取る
ことは難しくなり、分散個数は減少するが、4個/mm2
以上分散させられれば、充分なHAZ 部靱性を確保するこ
とができる。この分散個数は、連続鋳造設備によって鋳
造した場合には、容易に達成することができる。
【0062】本発明鋼は、実験室規模でも、実際の製造
プロセスの規模でも製造可能である。特に、実際の製造
プロセスにおける鋳造は、連続鋳造法によることが望ま
しい。これは、インゴットによるよりは、生産効率が高
く経済的であるだけでなく、凝固時の冷却速度が大き
く、酸化物を分散させ易いためである。
【0063】(2) 製造方法 次に本発明方法の工程と条件の限定理由を説明する。本
発明は、上述の素材鋼を、次の〜の工程と条件にし
たがって処理するものである。
【0064】1000〜1250℃に加熱して熱間圧延する。 950 ℃以下の累積圧下率を50%以上とする。 仕上温度780 〜900 ℃で圧延を完了する。 760 ℃以上から5〜50℃/秒の冷却速度で350 〜600
℃まで水冷、その後放冷する。 あるいは、350 ℃以下まで水冷し、その後600 ℃以下
で焼戻し処理を施す。
【0065】加熱温度:100 %γ (オーステナイト) 化
させ、Nbの固溶促進という観点から1000℃以上とする。
一方、1250℃を越えるとγ粒が粗大化して靱性の劣化を
招く。
【0066】未再結晶域圧下率:950 ℃以下 (未再結晶
域) の累積圧下率は母材靱性向上のために50%以上とす
る。好ましくは900 ℃以下の累積圧下率60%以上とす
る。
【0067】熱間圧延仕上温度:780 ℃未満ではα (フ
ェライト) が析出し、耐HIC 性が劣化する。一方、900
℃を超えると組織の微細化が十分とならない。好ましく
は780 〜850 ℃である。
【0068】冷却速度:上記の熱間圧延完了後、直ちに
または設備的に不可避の空冷を挟んで加速強制冷却を行
う。冷却速度が5℃/秒未満では加速冷却の効果が得ら
れない。一方、50℃/秒を超えると過度の焼入れ組織と
なり、靱性が劣化する。好ましくは冷却速度10〜35℃/
秒である。
【0069】冷却停止温度:600 ℃超では加速冷却によ
る強度上昇効果が不十分である。また、350 ℃未満では
著しい強度上昇があるものの靱性が劣化する。このた
め、水冷後に後述のテンパー処理を施さない場合には、
冷却停止温度を350 〜600 ℃とする。一方、著しい強度
上昇を目的とする場合には、低温変態生成物の形成を利
用するために350 ℃以下とする。
【0070】焼戻し処理温度:上記の350 ℃以下の冷却
で形成された低温変態生成物は靱性の劣化にもつながる
ため、焼戻し処理を施す。しかし、焼戻し温度が650 ℃
を超えると強度低下が著しくなる。
【0071】
【実施例】表1に示す組成の鋼を溶製してから、表2に
示す条件で熱間圧延、水冷、焼戻し冷間を行った。
【0072】得られた圧延材の機械的特性および溶接特
性を評価し、結果を表3にまとめて示す。図2(a) には
本発明例No.3の鋼中酸化物の分析結果を示す。同じく図
2(b) はNo.5、図2(c) はNo.8の結果をそれぞれ示す。
なお、これはEDX分析の結果である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【発明の効果】×65以上の高強度と母材〜HAZ 全域にわ
たって−40℃以下の仕様を満足できる高靱性を有し、か
つNACE液における耐HIC 性能に優れる鋼材を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) は、本発明のAl−Ti−Mnの比率を示
し、図1(b) は不純物元素許容配位を示す図である。
【図2】図2(a) 〜(c) は本発明の鋼中酸化物分析結果
をそれぞれ示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−293919(JP,A) 特開 平5−271766(JP,A) 特開 昭55−113861(JP,A) 特開 平2−8322(JP,A) 特開 平6−293937(JP,A) 川端、片岡、天野、工藤”耐サワーU OE鋼管の開発▲II▼ X65級鋼板に おけるHIC発生伝搬特性及ぼす治金因 子の検討”材料とプロセス Vol.2 No.6P.1785(1989) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/02 C22C 38/00 - 38/60 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.04〜0.09%、 Si:0〜0.5 %、 Mn:1.00〜1.
    40%、 P≦0.010 %、 S≦0.003 %、 Nb:0.005 〜
    0.060 %、 Mo:0.05〜0.50%、 Ti:0.005 〜0.025 %、 Al≦0.
    02%、 O:0.0010〜0.0070%、N:0.0005〜0.0100%、 残部はFeと不可避的不純物からなる鋼組成を有し、かつ
    鋼材中に、大きさが0.2 〜20μmのAl−Ti−Mn 3元系酸
    化物を主体とした酸化物が1mm2 あたり4個以上分散
    し、この酸化物が下記〜式のうち式を満足す
    るか、または式を満足する鋼を、1000〜1250℃
    の温度範囲に加熱した後、950 ℃以下の累積圧下量を50
    %以上として780 〜900 ℃にて圧延を終了し、760 ℃以
    上より冷却速度5〜50℃/secで、(i)350〜600 ℃まで水
    冷、その後放冷するか、あるいは(ii) 350℃以下まで水
    冷、その後600 ℃以下で焼戻し処理をすることを特徴と
    する耐HIC性の優れた高強度でHAZ部靱性に優れた
    鋼の製造法。 (Ti+Mn+Al) > (酸化物粒子を構成する全金属元素) ×0.70(mol比) ・・・ 以下、Ti+Mn+Al=100 とした場合のmol 比にて (Ti+Mn) ≧80.0 mol% ・・・ 50.0mol%≧Mn≧7.0 mol % ・・・ 20.0mol%≧Al ・・ (Al+Mn) ≧40.0 mol% ・・・ 1.0≦ (Al/Mn)≦5.0 (in mol) ・・・
  2. 【請求項2】 前記鋼組成が、重量%で、さらにCu:0.
    05〜1.5 %、Ni:0.05〜1.5 %、Cr:0.05〜1.0 %、
    V:0.01〜0.1 %、Ca:0.001 〜0.005 %、B:0.0000
    5 〜0.0020%の1種または2種以上を含有する請求項1
    記載の耐HIC性の優れた高強度でHAZ部靱性に優れ
    た鋼の製造法。
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