JP3061499B2 - エレベータの主索取外し用補助装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エレベータの主索交換
時や主索切詰め時に、主索を弛めて取り外すために用い
られるエレベータの主索取外し用補助装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】エレベータの主索が正規の寸法よりも伸
びてしまった場合、従来、例えば特開昭６３−２７７１
８７号公報に記載されているような手法で主索の交換や
切詰めを行っていた。すなわち、まず乗かごおよび釣合
おもりを同等の高さ位置に停止させ、両者をそれぞれチ
ェーンブロック等の吊り具を介してガイドレールに固定
した後、吊り具を操作して乗かごまたは釣合おもりを吊
り上げることにより既設の主索を弛め、この状態で該主
索を取り外して、その長さを切り詰めたり新設の主索に
交換したりしていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たようにチェーンブロック等の大がかりな吊り具を用い
て乗かごおよび釣合おもりの双方を吊り上げるために
は、煩雑かつ長時間の作業が要求されるという不具合が
あった。

【０００４】したがって本発明の目的は、大がかりな装
置を用いることなく簡単に主索の交換や切詰めが行える
エレベータの主索取外し用補助装置を提供することにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、第１のナットと該ナットの下方に位置す
る第２のナットとを螺着せしめてシンブルロッドの下端
部に着脱可能に連結される延長ロッドと、該シンブルロ
ッドが装着されている乗かごの枠や釣合おもりの枠等の
枠体と上記第１のナットとの間に配置されて該枠体と該
ナットとの間隔を広げるための油圧ジャッキと、この油
圧ジャッキと上記第２のナットとの間に介設される雇部
材とを備える構成とした。

【０００６】

【作用】上述した構成要素を備えた主索取外し用補助装
置は、油圧ジャッキのプランジャを駆動させ、第１のナ
ットを介して延長ロッドを枠体に対し下方へ移動させた
後、その移動量分だけ第２のナットの螺着位置を上方へ
ずらして雇部材を油圧ジャッキのシリンダに当接させ、
次いでプランジャを元に戻して、該プランジャと当接す
る位置まで第１のナットの螺着位置を上方へずらすとい
う作業を繰り返すことにより、延長ロッドを連結したシ
ンブルロッドを該枠体に対し下方へ所定量移動させるこ
とができるので、該シンブルロッドに一端部が支持され
ている主索のみに荷重をかけて残余の主索を弛めること
ができ、よってこれら残余の主索を取り外して長さの切
詰めや新設主索への交換を行うことができる。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１ないし図１０
に基づいて説明する。ここで、図１は実施例たる主索取
外し用補助装置を釣合おもりの枠に取り付けた状態を示
す正面図、図２は図１に示す主索取外し用補助装置の斜
視図、図３ないし図５はこの主索取外し用補助装置の動
作を説明するためのもので、図３は油圧ジャッキのプラ
ンジャを下方へ突出させた動作状態を示す斜視図、図４
は第２のナットの螺着位置を上方へずらして雇部材を油
圧ジャッキのシリンダに当接させた動作状態を示す斜視
図、図５は第１のナットの螺着位置を油圧ジャッキのプ
ランジャと当接する位置まで上方へずらした動作状態を
示す斜視図、図６はこの主索取外し用補助装置の動作に
より２本の既設主索に弛みを生じさせた状態を示す正面
図、図７は弛めた既設主索を新設主索に交換した状態を
示す正面図、図８はこの主索取外し用補助装置の油圧ジ
ャッキの内部構成を示す斜視図、図９はロープ式エレベ
ータの昇降路内の様子を示す概略図、図１０は油圧式エ
レベータの昇降路内の様子を示す概略図である。

【０００８】ロープ式エレベータは、図９に示すよう
に、昇降路１内を昇降する乗かご２と釣合おもり３とが
複数本（例えば３本）の主索４によって連結されてい
て、各主索４は機械室５内の巻上機６に巻き掛けられて
いる。すなわち、各主索４の一端に固設されるソケット
７は、乗かご２側のシンブルロッド８の上端部に取り付
けられ、ばね部材８ａを介して乗かご２の枠２ａに支持
されており、同様に、各主索４の他端に固設されるソケ
ット９は、釣合おもり３側のシンブルロッド１０の上端
部に取り付けられ、ばね部材１０ａを介して釣合おもり
３の枠３ａに支持されている。

【０００９】かかるロープ式エレベータの既設主索４の
交換に際して、実施例たる主索取外し用補助装置を釣合
おもり３の枠３ａに取り付けた場合について説明する。

【００１０】この補助装置は、図１に示すように、全長
にわたってねじ溝が形成されて釣合おもり３側のシンブ
ルロッド１０の下端部に長ナット１２を介して着脱可能
に連結される延長ロッド１１と、この延長ロッド１１に
上下にずらして螺着した第１のナット１８ａおよび第２
のナット１８ｂと、シンブルロッド１０が装着されてい
る枠３ａと上記第１のナット１８ａとの間に筒体１９を
搭載して配置されて該枠体３ａと該ナット１８ａとの間
隔を広げるための油圧ジャッキ１３と、この油圧ジャッ
キ１３と上記第２のナット１８ｂとの間に介設される筒
状の雇部材１７とによって概略構成されており、油圧ジ
ャッキ１３にはホース２０を介して圧油を送り込むため
の油圧発生源２１が接続されている。

【００１１】上記油圧ジャッキ１３は、図８に示すよう
に、シリンダ１４とプランジャ１５とを有する市販の小
型のもので、プランジャ１５には延長ロッド１１を挿通
させるための貫通孔１６が設けられている。そして、こ
の油圧ジャッキ１３のプランジャ１５と当接するように
第１のナット１８ａが延長ロッド１１に螺着させてある
とともに、油圧ジャッキ１３のシリンダ１４に当接する
雇部材１７を支持できるように第２のナット１８ｂが延
長ロッド１１に螺着させてある。

【００１２】次に、主索４を交換する際の手順について
説明する。

【００１３】まず、図９に示すように乗かご２と釣合お
もり３とを昇降路１内の同等の高さ位置に移動させ、運
転不能とした後、釣合おもり３側のシンブルロッド１０
のうちの１つ（実施例では図１中の左端のシンブルロッ
ド）に長ナット１２を螺合させ、この長ナット１２に延
長ロッド１１を螺合させることにより、該シンブルロッ
ド１０の下端部に延長ロッド１１を着脱可能に連結す
る。次いで、このシンブルロッド１０に装着されている
ばね部材１０ａおよび上記延長ロッド１１の周囲に下方
から筒体１９を外装させ、さらに油圧ジャッキ１３のプ
ランジャ１５の貫通孔１６に延長ロッド１１を挿通した
後、第１のナット１８ａを延長ロッド１１に螺合させて
いってプランジャ１５に圧接させることにより、釣合お
もり３の枠３ａと第１のナット１８ａとの間に筒体１９
および油圧ジャッキ１３の積層体を挟持する。この後、
筒状の雇部材１７を下方から延長ロッド１１に外装さ
せ、さらに第２のナット１８ｂを延長ロッド１１に螺合
させていって雇部材１７の底面に圧接させることによ
り、油圧ジャッキ１３のシリンダ１４と第２のナット１
８ｂとの間に雇部材１７を挟持する。

【００１４】こうして主索取外し用補助装置の取付が完
了したなら、油圧発生源２１を作動させ、ホース２０を
介して油圧ジャッキ１３へ圧油を送り込み、プランジャ
１５を下方へ突出させる。これにより、プランジャ１５
に当接している第１のナット１８ａが図３に示すように
下方へ駆動され、枠３ａと該ナット１８ａとの間隔が広
がるので、該ナット１８ａを螺着させている延長ロッド
１１を介して、図１中の左端のシンブルロッド１０が下
方へ駆動される。次いで、雇部材１７を持ち上げなが
ら、この雇部材１７が油圧ジャッキ１３のシリンダ１４
に当接するまで、つまりプランジャ１５の上記突出量分
だけ、第２のナット１８ｂを回してその螺着位置を上方
へずらし、図４の状態にする。しかる後、油圧ジャッキ
１３から圧油を抜いてプランジャ１５を初期位置まで後
退（上昇）させ、その移動量分だけ第１のナット１８ａ
を回していくことにより、図５に示すように該ナット１
８ａの螺着位置をプランジャ１５に当接する位置まで上
方へずらす。その結果、図１中の左端の主索４は、同図
よりも枠３ａに近付いた状態で該枠３ａに支持されるこ
とになり、上述した一連の作業を繰り返すことによっ
て、すなわちプランジャ１５を下方へ突出させた後に雇
部材１７および第２のナット１８ｂを上方へずらして固
定し、さらにプランジャ１５を後退させた後に第１のナ
ット１８ａを上方へずらして固定するという作業を繰り
返すことによって、延長ロッド１１を連結したシンブル
ロッド１０を枠３ａに対し下方へ所定量移動させること
ができる。したがって、図６に示すように、このシンブ
ルロッド１０に一端が支持されている図中左端の主索４
のみに荷重をかけて、図中右端および中央に垂下されて
いる残り２本の主索４の張力を除去することができる。
なお、図６において、図中左端の主索４の張力は、長ナ
ット１２、延長ロッド１１、第１のナット１８ａ、油圧
ジャッキ１３、筒体１９等の補助装置を介してシンブル
ロッド１０を支持している枠３ａが受けている。

【００１５】さて、このように３本のうちの２本の主索
４を弛めたなら、これら２本の既設主索４をそれぞれ乗
かご２側および釣合おもり３側のシンブルロッド８，１
０から外して機械室５へ引き上げた後、新たに２本の主
索４ａを機械室５から吊り下ろし、その両端をソケット
７，９を介してシンブルロッド８，１０に取り付けるこ
とにより、図７に示す状態となる。この後、油圧ジャッ
キ１３内の圧油を油圧発生源２１へ戻してプランジャ１
５を後退させると、図７中の左端の既設主索４が枠３ａ
に対し上方へ所定量移動するのに伴い、２本の新設主索
４ａに張力が加わるので、既設主索４の張力が除去され
る。したがって、この状態で延長ロッド１１から順次第
２のナット１８ｂ、雇部材１７、第１のナット１８ａ、
油圧ジャッキ１３、筒体１９を取り外し、さらにシンブ
ルロッド１０から長ナット１２および延長ロッド１１を
取り外した後に、残った既設主索４をこのシンブルロッ
ド１０から外して新設の主索に交換することができる。
なお、図７の状態でプランジャ１５を後退させただけで
は既設主索４の張力が除去されないときには、いずれか
一方の新設主索４ａのシンブルロッド１０に上記補助装
置を取り付けて動作させればよい。

【００１６】このように本実施例は、従来のようにチェ
ーンブロック等の大がかりな吊り具を用いて乗かご２お
よび釣合おもり３を吊り上げる必要がなく、延長ロッド
１１や油圧ジャッキ１３等を組み合わせてなる補助装置
をシンブルロッド１０に取り付ければ既設主索４の張力
を簡単に除去することができ、また、雇部材１７を用い
ることでプランジャ１５のストロークが小さい小型軽量
の油圧ジャッキ１３が使用できるようになっていて、そ
の取扱い性が良好なため、主索交換作業を容易に行うこ
とができて作業時間の大幅な短縮が可能となっている。

【００１７】なお、上記実施例では主索取外し用補助装
置を釣合おもり３側のシンブルロッド１０に取り付ける
場合について説明したが、この補助装置を乗かご２側の
シンブルロッド８に取り付けて主索４の交換を行うこと
もできる。

【００１８】また、この補助装置は、主索交換に先立っ
てその張力を除去するために用いているので、主索交換
時だけでなく、主索切詰め時にも適用できることは言う
までもない。

【００１９】さらにまた、この補助装置は、図１０に示
す如き油圧式エレベータにもそのまま適用できる。すな
わち、油圧式エレベータは、昇降用油圧ジャッキ２２の
プランジャ２３の先端に設けたプーリ２４に主索４が巻
き掛けてあって、この主索４の一端をジャッキ固定枠２
２ａにて支持し、かつ他端を乗かご２の枠２ａにて支持
する構造になっているが、枠２ａに対する主索４の取付
構造はロープ式エレベータと同様なので、上記補助装置
を乗かご２側のシンブルロッドに取り付けて主索４の交
換や切詰めを行うことができる。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によるエレ
ベータの主索取外し用補助装置は、延長ロッドや小型軽
量の油圧ジャッキ等を組み合わせてなり、取扱い性が良
好であるとともに、主索の張力が簡単に除去できるの
で、主索交換作業や主索切詰め作業を容易に行うことが
でき、その作業時間が大幅に短縮できるという優れた効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例たる主索取外し用補助装置を釣合おもり
の枠に取り付けた状態を示す正面図である。

【図２】図１に示す主索取外し用補助装置の斜視図であ
る。

【図３】油圧ジャッキのプランジャを下方へ突出させた
動作状態を示す斜視図である。

【図４】第２のナットの螺着位置を上方へずらして雇部
材を油圧ジャッキのシリンダに当接させた動作状態を示
す斜視図である。

【図５】第１のナットの螺着位置を油圧ジャッキのプラ
ンジャと当接する位置まで上方へずらした動作状態を示
す斜視図である。

【図６】この主索取外し用補助装置の動作により２本の
既設主索に弛みを生じさせた状態を示す正面図である。

【図７】弛めた既設主索を新設主索に交換した状態を示
す正面図である。

【図８】この主索取外し用補助装置の油圧ジャッキの内
部構成を示す斜視図である。

【図９】ロープ式エレベータの昇降路内の様子を示す概
略図である。

【図１０】油圧式エレベータの昇降路内の様子を示す概
略図である。

【符号の説明】

２ 乗かご ３ 釣合おもり ２ａ，３ａ 枠（枠体） ４ 既設主索 ７，９ ソケット ８，１０ シンブルロッド １１ 延長ロッド １３ 油圧ジャッキ １５ プランジャ １７ 雇部材 １８ａ 第１のナット １８ｂ 第２のナット １９ 筒体

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数本の主索の端部がそれぞれシンブル
   ロッドを介して乗かごの枠や釣合おもりの枠等の枠体に
   支持されているエレベータの主索取外し用補助装置にお
   いて、第１のナットと該ナットの下方に位置する第２の
   ナットとを螺着せしめて上記シンブルロッドの下端部に
   着脱可能に連結される延長ロッドと、該シンブルロッド
   が装着されている上記枠体と上記第１のナットとの間に
   配置されて該枠体と該ナットとの間隔を広げるための油
   圧ジャッキと、この油圧ジャッキと上記第２のナットと
   の間に介設される雇部材とを備えたことを特徴とするエ
   レベータの主索取外し用補助装置。