JP3054890B2 - 低粘性流体用ラジアルピストンポンプ - Google Patents

低粘性流体用ラジアルピストンポンプ

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JP3054890B2
JP3054890B2 JP3344043A JP34404391A JP3054890B2 JP 3054890 B2 JP3054890 B2 JP 3054890B2 JP 3344043 A JP3344043 A JP 3344043A JP 34404391 A JP34404391 A JP 34404391A JP 3054890 B2 JP3054890 B2 JP 3054890B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低粘性流体用ラジアルピ
ストンポンプにかかるもので、とくにピストンの倒れを
防止して、低粘性の流体たとえばガソリンやアルコール
等の燃料を高圧圧送するために好適な低粘性流体用ラジ
アルピストンポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、車両等の内燃機関の排出ガス
による公害問題や資源枯渇問題への対策として、燃焼効
率を改善することが要望されている。ガソリンを使用す
る場合には高圧化により噴霧の微粒化を促進することが
効果的である。また、ガソリンに代わってアルコールな
いしこれに類するもの(以下単にアルコールと称す)の
使用が検討されている。このアルコールは寒冷始動性に
劣るため、やはり高圧化による微粒化が必要である。
【0003】こうした微粒化を実現するためには、通常
の燃料ポンプの吐出圧力3〜4Kgf/平方センチメー
トルに代えて、吐出圧力70〜100Kgf/平方セン
チメートルという高圧性能を発揮することができる燃料
ポンプが必要である。この燃料ポンプの一形式として、
能力および効率の面からラジアルピストンポンプが考え
られる。たとえば特開昭60−216081号などがあ
る。しかしながら、従来のラジアルピストンポンプは、
特開昭64ー367号によるもののように、油圧ポンプ
としてすなわち高粘性オイル(粘度が30cst以上)
の圧送手段として使用されるが一般的であった。つまり
高粘性のオイル用として用いる場合には性能的に問題は
ないが、アルコールはその粘度が約0.5cst程度と
非常に低粘性である。
【0004】かかる特性の低粘性燃料を高圧吐出させよ
うとした場合には、ポンプ構造として、シリンダブロッ
クが回転する回転式から、シリンダブロックを固定した
ままピストンのみが往復動する固定シリンダ式に変更し
ただけでは、ポンプ性能を維持することができない。す
なわちたとえば、駆動軸の軸受けに封入したグリースが
低粘性の燃料により洗浄、希釈される問題や、ピストン
とバレルとの間ないしは偏心カムとピストンの先端部と
の間で、かじりや焼き付きが生ずる問題を解消すること
ができない。つまり、従来のラジアルピストンポンプで
は低粘性燃料を円滑に安定して高圧圧送することができ
ないという問題がある。
【0005】本出願人はこうした諸問題を解決するため
に、すなわちガソリンやアルコールなどで代表される低
粘度の燃料を、軸受け部分を損なわず、またピストン摺
動部にかじりや焼き付きを起こさせることなく、70K
gf/平方センチメートル以上の高圧においてもポンプ
作用を安定的に実行することができる実用的なラジアル
ピストンポンプとして、特開平3ー175158号によ
る低粘性燃料油用ラジアルピストンポンプを開発した。
【0006】この低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ
1について図9ないし図12にもとづき以下説明する。
図9は低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ1の全体断
面図、図10は分解斜視図、図11は図9のXIーXI
線断面図であって、低粘性燃料用ラジアルピストンポン
プ1はハウジング2と、固定シリンダ3と、カバー4
と、吸入側のガスケット5および吸入側のリーフバルブ
6と、吐出側のガスケット7および吐出側のリーフバル
ブ8と、ポンプシャフト9とを有する。それぞれのハウ
ジング2、固定シリンダ3、カバー4、吸入側のガスケ
ット5、吸入側のリーフバルブ6、吐出側のガスケット
7、吐出側のリーフバルブ8は、位置決めピン10によ
り位置決めした状態でスタッドボルト11により一体に
これらを固定する。
【0007】ポンプシャフト9は、こうして一体化され
た内孔部分に回転可能これを挿入するもので、ハウジン
グ2に設けたラジアル軸受け12、カバー4に設けたス
ラスト軸受け13およびラジアル軸受け14によりこれ
を軸受けして、外部のエンジン(図示せず)の駆動によ
り駆動プーリ15を介して回転駆動する。このポンプシ
ャフト9の固定シリンダ3内に位置する部位には偏心カ
ム16を形成してある。
【0008】ハウジング2には、ラジアル軸受け12の
左右に第1のオイルシール17および第2のオイルシー
ル18を設けることによりラジアル軸受け12の封入グ
リースが洗浄性のある低粘性燃料で希釈されることを防
止している。ハウジング2には燃料の吸入ポート部材1
9を取り付け、この吸入ポート部材19に連通してその
内部に、後述のするシリンダ穴23ないしはキャップ状
のピストン24の数(たとえば図11に図示のように5
個)と同数の吸入通路20および放射状の環状室入口2
1、ならびに中央内空部22を形成する。なお環状室入
口21は、後述する環状室33に低粘性燃料を導入し、
上記複数のシリンダ穴23にこれを供給するとともに潤
滑を行わせるための導入通路である。
【0009】固定シリンダ3は、複数本(たとえば5
本)のシリンダ穴23を等角度間隔に放射状に有し、こ
のシリンダ穴23内部に往復動可能にキャップ状のピス
トン24を収容している。ピストン24は、シリンダ穴
23にねじ込み固定したプラグ25との間に設けたスプ
リング26によりこれを求心方向に付勢する。ピストン
24の頭部がポンプシャフト9の偏心カム16に当接摺
動しその作用を受けて往復運動することにより低粘性燃
料の吸入吐出というポンプ作用を行うものである。この
ピストン24と偏心カム16との摺動部を固定シリンダ
3のほぼ中央部に位置させている。
【0010】固定シリンダ3内には、シリンダ穴23の
左右にこれに連通して吸入側通路27および吐出側通路
28をそれぞれ形成する。吸入側通路27および吐出側
通路28は、ピストン24とプラグ25との間に形成し
た加圧室29(図11)にこれらを連通させる。
【0011】前記吸入側のリーフバルブ6には舌片状ス
プリングからなる吸入バルブ30(図10)を形成し、
固定シリンダ3内に配置したほぼ矩形状のストッパ31
によりその可動範囲を制御し、ピストン24の往復運動
に応じて、この吸入バルブ30および吸入側通路27か
ら選択的に燃料を吸入可能としている。
【0012】なお固定シリンダ3の中央内空部32は、
ハウジング2の中央内空部22とともに吸入潤滑用の環
状室33を構成する。
【0013】カバー4は、固定シリンダ3の吐出側通路
28に連通する吐出通路34を有し、吐出通路34が環
状の集合溝35(図10)を介して吐出ポート部材36
に連通している。
【0014】吐出側のリーフバルブ8には舌片状スプリ
ングからなる吐出バルブ37(図10)を形成し、カバ
ー4内に配置したほぼ矩形状のストッパ38によりその
可動範囲を制御し、ピストン24の往復運動に応じて、
吐出側通路28およびこの吐出バルブ37から選択的に
燃料を吐出可能としている。
【0015】カバー4には第3のオイルシール39を設
けることにより、ラジアル軸受け14の封入グリースが
低粘性燃料で希釈されることを防止するとともに、この
第3のオイルシール39と前記第2のオイルシール18
とによって、ポンプシャフト9の部分において環状室3
3を外部から遮断可能としている。
【0016】さらに図12に示すようにカバー4には、
吐出通路34および吐出ポート部材36に連通してリリ
ーフ弁40を設けるとともに、その開弁位置に環状室3
3に連通する戻し孔41を形成することにより、低粘性
燃料が異常高圧になったときには環状室33に低粘性燃
料を戻すようになっている。
【0017】かくして、燃料タンク42の低粘性燃料
は、フィードポンプ43(図9)により吸入ポート部材
19に供給され、ポンプシャフト9の回転駆動により偏
心カム16に摺動して往復動するピストン24のポンプ
作用によって、所定のインジェクター44に高圧圧送さ
れる。
【0018】すなわち、ピストン24が求心方向に向か
う吸入工程において、吸入バルブ30が開弁するととも
に吐出バルブ37は閉弁し、吸入ポート部材19から吸
入通路20を介して吸入バルブ30から吸入側通路27
に至り、加圧室29内に吸入される。またピストン24
が遠心方向に向かう吐出工程においては、吸入バルブ3
0が閉弁するとともに吐出バルブ37は開弁し、加圧室
29から吐出側通路28を経て吐出バルブ37、吐出通
路34、吐出ポート部材36からインジェクター44に
高圧圧送される。
【0019】環状室入口21から環状室33内に至った
低粘性燃料は、環状室33の内部が第2のオイルシール
18および第3のオイルシール39によりポンプシャフ
ト9の部分において外部から遮断されているので、その
内部に充満することができる。したがって、ピストン2
4と偏心カム16との間、およびシリンダ穴23とピス
トン24との間を潤滑することができる。つまり、低粘
性燃料自体を固定シリンダ3内部の環状室33にも導い
てピストン24や偏心カム16の潤滑油として用いるこ
とを可能としている。
【0020】しかしながら、ピストン24の頭部が断面
弧状であるため、偏心カム16との摺接部が点状とな
る。したがって、とくに高圧高速回転の場合には、この
摺接部の面圧が高くなる結果、吐出圧が高くなるにとも
なってこの摺接部分の摩耗も問題が発生する。
【0021】こうした問題を解消するために、特開平2
ー16370号などのように、偏心カムとピストンとの
間に正多角形状のリングを設けるとともに、ピストンの
頭部を平坦とすることにより、吐出圧が一定であれば、
ピストンの頭部と上記リングとの間の面圧を低下可能と
したものがある。
【0022】図13ないし図16にもとづきこうした構
成についてその要部を概説する。ただし以下の説明にお
いて、図9ないし図12と同様の部分には同一符号を付
しその詳述はこれを省略する。図13は、このラジアル
ピストンポンプにおける前記固定シリンダ3の中央内空
部32ないし環状室33部分の要部縦断面図である。た
だし簡略化のため、中央内空部32に連通して放射状に
形成した5個のシリンダ穴23のうちそのひとつのみを
図示してある。図13は燃料の吸入開始時の状態を、図
14は吸入中の状態を、図15は燃料の圧縮開始時の状
態を、図16は圧縮中の状態を順次それぞれ示し、各図
は偏心カム16が角度90度ずつ回転した状態を示して
いる。なお図17は偏心カム16の回転にともなうその
回転角度に対するピストン51へのモーメント、偏心カ
ム16の中心ECのピストン51の中心軸線PCからの
偏心量、およびピストン51に作用する圧力をそれぞれ
示すグラフである。
【0023】図13ないし図16に示すように、前記偏
心カム16の外周に外形が正五角形状のリング50を設
ける。偏心カム16はリング50の内壁面を摺接回転可
能である。さらにシリンダ穴23内には、リング50の
外面に摺接可能に、ピストン24に相当する、ただしそ
の頭部を平坦としたピストン51を収容する。
【0024】こうした構成においては、リング50の平
坦な外側面とピストン51の平坦な頭部とが面接触する
こととなるので、高速回転する場合であっても、吐出圧
が一定の場合には、その面圧を低下可能である。
【0025】しかしながら、ポンプシャフト9の回転に
ともなってリング50ないしは偏心カム16が揺動運動
を行っていることになる。この揺動運動に起因して発生
するモーメントによりピストン51がその中心軸からわ
ずかに倒れた状態で往復動するという問題が発生する。
【0026】各図において、ポンプシャフト9の中心を
CCとする。このポンプシャフト9の中心CCは、固定
シリンダ3および中央内空部32の中心と一致する。偏
心カム16の中心をECとする。この偏心カム16の中
心ECはリング50の中心と一致する。ピストン51の
中心軸線をPCとする。
【0027】しかして、従来のラジアルピストンポンプ
においては、このピストン51の中心軸線PCがポンプ
シャフト9の中心CCを通過している。
【0028】まず図13に示すように、燃料の吸入を開
始するときには、ポンプシャフト9の回転により偏心カ
ム16がポンプシャフト9の中心CCを回転中心とし
て、図示の状態からたとえば反時計方向に回転する。こ
の回転半径はポンプシャフト9の中心CCと偏心カム1
6の中心ECとの間隔、つまり偏心間隔Eである。
【0029】この偏心カム16の回転にともなってリン
グ50は、自らは回転することなく、回転する偏心カム
16に案内されて中央内空部32の内壁に沿って偏心間
隔Eを偏心半径とする円軌道に沿って変位する。
【0030】ついで図14に示した状態では、偏心カム
16の中心ECがポンプシャフト9の中心CCから偏心
間隔Eだけ左方に変位した状態となる。
【0031】図14からさらに90度回転して図15に
示す180度回転した状態では、偏心カム16の中心E
Cはポンプシャフト9の中心CCから偏心間隔Eだけ下
方で、ピストン51の中心軸線PC上の位置にある。こ
こまでの変位においてピストン51は、スプリング26
に付勢されて偏心カム16およびリング50に追随して
下降することにより燃料を吸入する。
【0032】図17に示すように、ピストン51にかか
るモーメントおよび圧力はゼロである。
【0033】しかしながら、図15に示す圧縮開始か
ら、図16の圧縮中、および図13の圧縮終了つまり吸
入開始に至るまでの過程においては、ピストン51を倒
すようなモーメントが発生する。
【0034】すなわち、スプリング26の付勢力に抗し
てリング50がピストン51を上方に押し上げようとす
るときに、偏心カム16ないしリング50の中心ECと
ピストン51の中心軸線PCとの間には所定量のずれが
あるために、とくに図16に示すように、スプリング2
6がピストン51を下方に押す力FSと、偏心カム16
ないしリング50がピストン51を押し上げようとする
力FEとによりモーメントが発生し、このモーメントに
よりピストン51を図16中左側に倒すような力が作用
する。
【0035】したがって、ピストン51がシリンダ穴2
3内で倒れることによりシリンダ穴23との摺動部、と
くにA部およびB部のクリアランスが少なくなりこの部
分に燃料が通らず、この間のオイルフィルムを切ってし
まうため、燃料による潤滑作用を期待することができな
い。
【0036】つまりメタル接触に近い状態となるため
に、シリンダ穴23とピストン51との間などの摺動部
に低粘性燃料の劣化物が付着する、あるいは焼き付きが
発生するなど、ピストン51の動きの障害の原因となる
という問題がある。
【0037】こうした問題は図9ないし図12に示した
ラジアルピストンポンプ1における円弧状の頭部を有す
るピストン24の場合にも発生するものである。
【0038】なお、上述のような圧縮開始から終了まで
におけるモーメントの発生と同時に、偏心カム16の全
回転中において、リング50とピストン51との間の摩
擦力によりピストン51の頭部がリング50の左右往復
運動方向に引きずられるという問題もある。
【0039】すなわち、図16に示した偏心カム16の
回転角度が270度から、図13の回転角度0度を通っ
て、図14の回転角度90度までの回転範囲において
は、正五角形状のリング50が図中左方向に移動するこ
ととなるので、該リング50の上面に接しているピスト
ン51の頭部が同じく左方向に引きずられる。
【0040】また、図14の回転角度90度から、図1
5の回転角度180度を通って、図16の回転角度27
0度までの回転範囲においては、リング50が図中右方
向に移動することとなるので、ピストン51の頭部が同
じく右方向に引きずられることになる。
【0041】したがって、たとえば図15ないし図16
の圧縮工程で説明すれば、偏心カム16の反時計方向の
回転にもとづくリング50の図中右方向への移動によ
り、回転角度180度から270度までの間では、ピス
トン51の頭部が同じく右方向に引きずられる。この結
果、上述のモーメントに加えてピストン51をさらに左
側に倒すように作用する。
【0042】ただし、図16から図13への回転範囲に
おいては、リング50が左方向に移動するので、ピスト
ン51の倒れをわずかに修正するような方向に力が作用
することになる。もちろん、この摩擦による力によりピ
ストン51の倒れが完全に防止されるわけではない。
【0043】なお、モーメントが発生しない吸入工程時
(図13、図14)において、上述の摩擦力は、図13
から図14の回転範囲ではピストン51を図中右方向に
倒す力の原因となり、図14から図15の回転範囲では
ピストン51を図中左方向に倒す力の原因となる。
【0044】ただし、こうした摩擦力によるピストン5
1への作用は上述の圧縮工程で発生するモーメントによ
るものより小さくわずかなものであり、低粘性燃料用ラ
ジアルピストンポンプにおいては、圧縮工程でのモーメ
ントによる問題を解決することがより重要である。
【0045】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
諸問題にかんがみなされたもので、低粘性流体用ラジア
ルピストンポンプにおいて、偏心カムないしリングの可
動にもとづいてピストン部分に発生するモーメントをで
きるだけ少なくすることにより、ピストンの円滑な往復
運動を保証し、ピストンとシリンダ穴との間の摺動部の
カーボン付着や焼き付きを防止可能とした低粘性流体用
ラジアルピストンポンプを提供することを課題とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、往復
動するピストンの中心軸線をポンプシャフトの中心から
あらかじめずらしておくことにより、偏心カムの変位に
ともなって発生するモーメントを減少させることができ
ることに着目し、低粘性の流体の吸入側通路および吐出
側通路を形成した固定シリンダと、この固定シリンダに
放射状に形成した複数のシリンダ穴内に往復動可能にそ
れぞれ配設した複数本のピストンと、これらのピストン
を往復動させるポンプシャフトの偏心カムとを有し、上
記ピストンのその中心軸に沿った往復動により上記低粘
性の流体を上記吸入側通路および吐出側通路からそれぞ
れ吸入吐出する低粘性流体用ラジアルピストンポンプで
あって、上記ピストンの上記中心軸を上記ポンプシャフ
トの中心から、該ポンプシャフトの回転方向とは逆方向
にずらして、上記ピストンの上記中心軸が上記ポンプシ
ャフトの中心を通過しないようにしたことを特徴とする
低粘性流体用ラジアルピストンポンプである。
【0047】
【作用】本発明による低粘性流体用ラジアルピストンポ
ンプにおいては、往復動するピストンの中心軸線をポン
プシャフトないしは固定シリンダの中心から、偏心カム
の回転方向とは逆方向にあらかじめずらしてあるため、
流体の圧縮工程において、偏心カムの変位にともなって
発生するモーメントを減少させることができるので、ピ
ストンがシリンダ穴内でその中心軸線から倒れる程度を
極力小さくすることが可能となり、ピストン部分の流体
による潤滑作用を保証し、焼き付きや流体の劣化物の堆
積を防止することができる。
【0048】
【実施例】つぎに、本発明の一実施例による低粘性燃料
用ラジアルピストンポンプ60のとくにリング50部分
を図示して図1ないし図8にもとづき説明する。図1は
燃料の吸入開始時の状態を、図2は吸入中の状態を、図
3は燃料の圧縮開始時の状態を、図4は圧縮中の状態を
それぞれ示す。なお図5は、偏心カム16の回転にとも
なうその回転角度に対するピストン51へのモーメン
ト、偏心カム16の中心ECのピストン51の中心軸線
PCからの偏心量、およびピストン51に作用する圧力
をそれぞれ示すグラフである。
【0049】低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ60
において、図13ないし図16に示した構成と異なる点
は、ピストン51の中心軸線PCが固定シリンダ3内の
ポンプシャフト9の中心CCを通過しないようにシリン
ダ穴23の位置を中心CCから偏心カム16の回転方向
とは逆方向に(図中右方向に)、あらかじめずれ間隔H
だけずらせて設定形成したことである。
【0050】具体的には、図1に示すピストンの上死点
つまり吸入開始の状態であっても、図13に示した従来
の低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ1における状態
とは異なり、ピストン51の中心軸線PCはポンプシャ
フト9の中心CCから右方向にずれた位置にある。な
お、上記ずれ間隔H(オフセット量)はポンプに応じて
任意にこれを決定するものとする。
【0051】こうした構成において、ポンプシャフト9
の回転により偏心カム16がポンプシャフト9の中心C
Cを回転中心として、図示の状態から反時計方向に回転
する。
【0052】図5に示すように、図1から図3に示す燃
料の吸入から圧縮開始まで状態ではピストン51は、ス
プリング26に付勢されて偏心カム16およびリング5
0に追随して下降することにより燃料を吸入するだけで
あるので、モーメントおよび圧力については図13から
図15までの状態と同様である。
【0053】なお、偏心カム16の中心ECのピストン
51の中心軸線PCからの偏心量については、偏心カム
16の中心ECがポンプシャフト9の中心CCから偏心
間隔Eだけ左方に変位した状態(図2)において最大
(E+H)となる。
【0054】また、ピストン51が下降する燃料吸入時
には、スプリング26の付勢力でピストン51が偏心カ
ム16ないしリング50を押し、偏心カム16の回転を
抑止しようとするモーメントの作用があるが、しかし、
スプリング26の付勢力は燃料の力に対してはわずかで
あり、不具合を起こすような要因にはならない。
【0055】図5に示すように、図3(ピストン51の
下死点)に示す圧縮開始からモーメントが発生し始め、
図4の圧縮中、および図1の圧縮終了つまり吸入開始に
至るまでの過程においてモーメントは低く抑えられてい
る。
【0056】つまり図4に示す270度回転の状態の時
に、ピストン51への圧力は最大となるが、ポンプシャ
フト9の中心CCとピストン51の中心軸線PCとが一
致するので、スプリング26がピストン51を下方に押
す力FSの作用方向と、偏心カム16ないしリング50
がピストン51を押し上げようとする力FEの作用方向
とは互いに反対方向であるため、このときにモーメント
はゼロとなる。
【0057】この270度の状態(図4)から360度
の吸入開始状態(図1)に至るまでに、再びモーメント
が発生することとなるが、モーメントの腕が従来の場合
より短いので、その値は低く抑えられる。
【0058】要するに図示の例では、ピストン51の中
心軸線PCとポンプシャフト9の中心CCとをあらかじ
め所定量だけずらせておくことにより、スプリング26
の付勢力に抗してリング50がピストン51を上方に押
し上げようとする高負荷時の状態、すなわちピストン5
1に対して圧力がいちばん大きく作用して吐出圧がかか
る回転角度270度の状態のときに、ピストン51の中
心軸線PCと偏心カム16の中心ECとが互いに近づく
か、あるいは交わるようにすることにより、力の方向を
交差させ、これら偏心カム16ないしリング50の力点
と作用点とのずれをできるだけ少なくすることにより、
モーメントが発生しないようにすることができる。
【0059】したがってピストン51の倒れを防止した
状態でピストン51をシリンダ穴23内でその中心軸線
PCに沿って往復動可能とすることが可能となり、シリ
ンダ穴23との間のオイルフィルムを切断することな
く、摺動部のクリアランスを一定として潤滑作用を保証
することができる。
【0060】つぎに、ピストン51と偏心カム16ない
しはリング50との接点におけるモーメントについて計
算する。図6は上述の構成を図式化した説明図であって
(ただし明確化のため誇張して図示してある)、発生す
るモーメントをM、偏心カム16の中心ECとポンプシ
ャフト9の中心CCとの間の偏心間隔(偏心量)をE、
ピストン51の中心軸線PCとポンプシャフト9の中心
CCとの間のずれ間隔をH、偏心カム16の中心ECと
接点Pとの間の一般的な変位距離をD、回転角をθ(ピ
ストンの下死点において0、上死点においてπ)、偏心
カム16あるいはリング50によりピストン51に作用
する力をFとすると、図7に示すような各式が成り立
つ。
【0061】すなわち、モーメントMは式(1)のよう
に表される。変位距離Dは式(2)のように表される。
【0062】ピストン51の変位は、−Ecosθと表
され、θ=0の下死点においては−E、θ=πの上死点
においては+Eとなる。
【0063】ピストン51の上昇速度は、Eωsinθ
と表される。ただし、ωは角速度を示す。
【0064】ピストン51に作用する圧力はこの上昇速
度に比例するものと仮定すると、ピストン51回転中の
軸方向圧力をTとすれば、このTは式(3)と表され
る。したがって、Tは式(4)と計算される。
【0065】θ=αのところでモーメントの方向が逆転
するため、Tは式(6)と表される。
【0066】したがって、Tを最小にするHを求める
と、式(7)のような計算から、H/Eが式(8)の値
をとるとき、dT/dH=0となり、Tを最小にするこ
とができる。
【0067】こうした計算結果を表にしたものを図8に
示す。この表から明らかなように、H=0、つまり従来
のようにピストン51の中心軸線PCとポンプシャフト
の中心CCとの間にずれがない場合には、軸方向圧力T
=π/2E(約1・57E)である。この値を100%
とすると、ずれ間隔Hを表のように設定した場合には、
軸方向圧力Tはそれぞれ22%および27%であり、式
(8)の場合がいちばんTが最小になることを示してい
る。
【0068】かくして、ピストン51とシリンダ穴23
との間の摺動部の焼き付きやカーボンの付着をなくすこ
とができる。
【0069】さらに、偏心カム16の中つまり偏心カム
16とポンプシャフト9との間に取り付けたプレートベ
アリングは他の部品に比較して軟質であるが、従来のよ
うに発生した力の方向のずれがせん断力となり摩耗や破
損も起こったが、上述のようにモーメントの発生を抑え
た結果、その摩耗を抑えることができる。
【0070】また従来からの低粘性燃料用ラジアルピス
トンポンプ1の形状をほとんど変更することなく、シリ
ンダ穴23の形成位置を変更するだけでよいので、製造
上も有利である。
【0071】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ピストン
が往復動するシリンダ穴と中央内空部との間の相対位置
をずらすことにより、ピストンの中心軸線とポンプシャ
フトの中心とを互いにずらせて、モーメントの発生を抑
制したので、ピストンの倒れを防止し、その摺動部への
カーボン付着や焼き付きを的確に防止することができ
る。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による低粘性燃料用ラジアル
ピストンポンプ60における固定シリンダ3の中央内空
部32ないし環状室33部分の要部縦断面図であり、燃
料の吸入開始時の状態を示す図である。
【図2】同、燃料の吸入中の状態を示す要部縦断面図で
ある。
【図3】同、燃料の圧縮開始時の状態を示す要部縦断面
図である。
【図4】同、燃料の圧縮中の状態を示す要部縦断面図で
ある。
【図5】同、偏心カム16の回転にともなうその回転角
度に対するピストン51へのモーメント、偏心カム16
の中心ECのピストン51の中心軸線PCからの偏心
量、およびピストン51に作用する圧力をそれぞれ示す
グラフである。
【図6】同、図1から図4の構成を図式化した説明図で
ある。
【図7】同、ピストン51と偏心カム16ないしはリン
グ50との接点におけるモーメントを計算する際の各式
を示す図である。
【図8】同、ずれ間隔Hに対するピストン51回転中の
軸方向圧力を示す表である。
【図9】従来の低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ1
の全体断面図である。
【図10】同、低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ1
の分解斜視図である。
【図11】同、図9のXIーXI線断面図である。
【図12】同、リリーフ弁40部分の縦断面図である。
【図13】従来のラジアルピストンポンプにおける固定
シリンダ3の中央内空部32ないし環状室33部分の要
部縦断面図であって、燃料の吸入開始時の状態を示す図
である。
【図14】同、燃料の吸入中の状態を示す要部縦断面図
である。
【図15】同、燃料の圧縮開始時の状態を示す要部縦断
面図である。
【図16】同、燃料の圧縮中の状態を示す要部縦断面図
である。
【図17】同、偏心カム16の回転にともなうその回転
角度に対するピストン51へのモーメント、偏心カム1
6の中心ECのピストン51の中心軸線PCからの偏心
量、およびピストン51に作用する圧力をそれぞれ示す
グラフである。
【符号の説明】
1 低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ 2 ハウジング 3 固定シリンダ 4 カバー 5 吸入側のガスケット 6 吸入側のリーフバルブ 7 吐出側のガスケット 8 吐出側のリーフバルブ 9 ポンプシャフト 10 位置決めピン 11 スタッドボルト 12 ラジアル軸受け 13 スラスト軸受け 14 ラジアル軸受け 15 駆動プーリ 16 偏心カム 17 第1のオイルシール 18 第2のオイルシール 19 吸入ポート部材 20 吸入通路 21 放射状の環状室入口 22 中央内空部 23 シリンダ穴 24 キャップ状のピストン 25 プラグ 26 スプリング 27 吸入側通路 28 吐出側通路 29 加圧室 30 吸入バルブ 31 ほぼ矩形状のストッパ 32 中央内空部 33 吸入潤滑用の環状室 34 吐出通路 35 集合溝 36 吐出ポート部材 37 吐出バルブ 38 ほぼ矩形状のストッパ 39 第3のオイルシール 40 リリーフ弁 41 戻し孔 42 燃料タンク 43 フィードポンプ 44 インジェクター 50 正五角形状のリング 51 ピストン 60 低粘性燃料用ラジアルピストンポンプ CC ポンプシャフト9の中心(固定シリンダ3および
中央内空部32の中心) EC 偏心カム16の中心(リング50の中心) PC ピストン51の中心軸線 E ポンプシャフト9の中心CCと偏心カム16の中
心ECとの間隔(偏心間隔) H ピストン51の中心軸線PCとポンプシャフト9
の中心CCとの間のずれ間隔(オフセット量) FS スプリング26がピストン51を下方に押す力 FE 偏心カム16ないしリング50がピストン51を
押し上げようとする力 D 偏心カム16の中心ECと接点Pとの間の一般的な
変位距離 F 偏心カム16あるいはリング50によりピストン5
1に作用する力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F04B 1/04 F04B 1/047 F04B 1/053 F04B 9/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低粘性の流体の吸入側通路および吐出
    側通路を形成した固定シリンダと、 この固定シリンダに放射状に形成した複数のシリンダ穴
    内に往復動可能にそれぞれ配設した複数本のピストン
    と、 これらのピストンを往復動させるポンプシャフトの偏心
    カムと この偏心カムの外周に設けて該偏心カムがその内壁面を
    摺接回転可能とするとともにその外側面が前記ピストン
    と摺接してこれを往復動可能とするリングと、 を有し、前記ポンプシャフトおよび前記偏心カムの回転にともな
    うこのリングを介した 前記ピストンのその中心軸に沿っ
    た往復動により前記低粘性の流体を前記吸入側通路およ
    び吐出側通路からそれぞれ吸入吐出する低粘性流体用ラ
    ジアルピストンポンプであって、前記ポンプシャフトの中心から前記ピストンの往復動方
    向に沿って延ばした線に対して、 前記ピストンの前記中
    心軸を、前記リングおよび前記ピストンの摺接部と前記
    ポンプシャフトの中心との間における該ポンプシャフト
    の回転方向とは逆方向にずらしたことを特徴とする低粘
    性流体用ラジアルピストンポンプ。
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DE102005014015B4 (de) * 2005-03-26 2007-04-05 Audi Ag Kolbenpumpe für ein insbesondere hydraulisches Drucksystem eines Kraftfahrzeugs

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