JP3053277B2 - ポリビニルアルコール系繊維の延伸法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維の延伸法

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JP3053277B2
JP3053277B2 JP3313584A JP31358491A JP3053277B2 JP 3053277 B2 JP3053277 B2 JP 3053277B2 JP 3313584 A JP3313584 A JP 3313584A JP 31358491 A JP31358491 A JP 31358491A JP 3053277 B2 JP3053277 B2 JP 3053277B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリマーの分解劣化が
少ないポリビニルアルコール系(以下PVAと略記す
る)繊維をコンパクトな延伸設備により延伸し、安価な
PVA繊維を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】PVA繊維は、ポリアミド繊維、ポリエ
ステル繊維などの汎用合成繊維に比べて強度弾性率が高
く、その主用途である産業資材用繊維としてはもちろん
最近ではアスベスト代替のセメント補強材、ゴム補強材
あるいはプラスチック補強材などに利用されつつある。
【0003】ポリエステル繊維の最終延伸法は、熱水延
伸、ホットピン、ホットプレート、ホットローラーなど
繊維への熱の与え方としては最も伝熱性の大きい熱伝導
型の延伸機を利用しており、通常ネッキング延伸が行な
われている。このため糸速は500m/分以上と極めて
大きいにもかかわらず延伸設備はコンパクトである。
【0004】一方PVA繊維の最終延伸法は、熱オイル
中、ウッドメタル中、加熱チューブ、熱風炉などが試み
られてきたが、工業的には熱風炉が主体で、一部加熱チ
ューブが使用されている。
【0005】近年、高分子量ポリエチレンのゲル紡糸超
延伸の考え方を高強力PVA繊維の製造法に応用した提
案が多くなされている。例えば特開昭59−10071
0号では分子量50万以上の高分子量PVAをグリセリ
ンに溶解し、冷却ゲル化後メタノールで糸中のグリセリ
ンを抽出し、メタノールを乾燥し、得られたキセロファ
イバーを窒素雰囲気の252〜261℃の熱管中に少な
くとも1分以上滞留させて乾熱延伸を施こし、強度17
g/d以上の高強度PVA繊維を得ている。しかし熱管
中の滞留時間が40秒以下では、高分子量PVAを使用
しても15g/d以下しか得られていない。また特開昭
61−252313号によれば、ジメチルスルホキシド
(以下DMSOと略記する)系紡糸原液をメタノール中
へ乾湿式紡糸し、最終的な延伸方法として空気(或いは
好ましくは窒素)雰囲気の220℃以上の加熱チューブ
を用いることにより、繊維の内外層における複屈折率差
を有しない乃至繊維の表層よりも繊維の中心部の屈折率
が大である繊維構造を有するPVA系繊維が得られ、ま
た融断し難い繊維が得られているが、該明細書の比較例
に記載されているように、熱板(ホットプレート)を用
いる延伸法では引張強度及び結節強度が低いものしか得
られていない。
【0006】以上のように、従来のPVA繊維の最終延
伸は伝熱性のよくない熱輻射型の加熱チューブや熱管あ
るいは熱対流型の熱風炉を用いて行なわれている。特
に、従来一般的に用いるられている重合度2000近辺
より高重合度のPVAを有機溶媒に溶解して得た紡糸原
液を凝固性有機溶媒に紡糸して高強力PVA繊維を得よ
うとする場合、伝熱性が特にわるい加熱チューブや熱管
が使われているので、工業的規模で実施しようとすると
伝熱性不良のため加熱滞留時間を長く必要とし、このた
め延伸設備が長大となり、従って高価となる。さらにP
VAが分解し着色し易くなって繊維劣化を起こす問題を
有している。
【0007】以上のような状況に鑑み、本発明者らの一
部は、延伸原糸の予備延伸倍率、第1段と第2段延伸の
各々の温度と倍率及び合計の滞留時間と全延伸倍率を限
定した熱伝導型の加熱手段を用いた多段延伸について、
先に出願したが、該出願では捲取速度がせいぜい70m
/minまでであった。その後さらに高速化をはかるべ
く検討したところ、捲取速度が80m/minを越える
と、延伸性がわるく、毛羽が発生し易いことを認めた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、P
VA繊維の最終乾熱延伸法に関して、伝熱性がよく、捲
取速度を80m/min以上としても毛羽が出ず、滞留
時間が短かく、よって延伸設備のコンパクト化が可能
で、しかもPVAの分解劣化の少ない繊維の製造が可能
な熱伝熱タイプの乾熱延伸を如何にしたら適用可能とな
るかを追求したものである。
【0009】
【課題を解決する手段】 本発明者らは上記課題を追及
し、湿式あるいは乾湿式紡糸後湿延伸を施し、膠着のな
い、しなやかなフィラメント束とし、さらに繊維対繊維
の静摩擦係数(以後F/Fμsと略記)を小さくした延
伸原糸を用いて延伸中の繊維同志の滑りをよくし、かつ
特定条件の2段延伸とすることにより、捲取速度(以後
TUと略記)が80m/min以上としても、毛羽の発生
なしに延伸しうることを見出し本発明に至った。すなわ
ち本発明は、「ポリビニルアルコールを溶媒に溶解して
得た紡糸原液を、ポリビニルアルコールに対して凝固作
用もしくはゲル化作用を有する有機溶媒系もしくは水系
の固化浴に湿式もしくは乾湿式紡糸し、湿延伸し、乾燥
して得られた原糸を乾熱延伸するに際して、 (1)原糸は2.5〜6倍の湿延伸が施されているこ
と、 (2)原糸は繊維対繊維の静摩擦係数が0.27以下で
あること、 (3)原糸を熱伝動型の加熱手段を用いて加熱するこ
と、 (4)温度130〜220℃で1.2〜4.00倍の第
1段熱延伸を行ない、次いで温度230〜265℃で
1.2〜4倍の第2段乾熱延伸を行うこと、を特徴とす
るポリビニルアルコール系繊維の延伸法。」である。
【0010】本発明に用いるPVAの重合度に特別な限
定はないが、30℃の水溶液で粘度法により求めた平均
重合度が1500以上であると、得られる繊維の強度が
大きくなるので好ましい。平均重合度が3500以上で
あるとさらに好ましく、7000以上であると欠陥部と
なり易い分子鎖末端が少なく、結晶間を連結するタイ分
子が多くなり高強度となり易いので最も好ましい。なお
重合度が高い程乾熱延伸でのポリマーの分解(重合度低
下)が起こり易くなるので、本発明の効果が大きくな
る。本発明に用いるPVAのケン化度に特別な限定はな
いが、98モル%以上が好ましく、99モル%以上であ
るとさらに好ましく、99.8モル%以上であると特に
耐熱水性に優れるのでもっとも好ましい。本発明に用い
るPVAの分岐度に特別な限定はないが、分岐度の低い
直鎖状のものがより結晶化し易く高強力となり易いので
好ましい。また本発明に用いるPVAは他のビニル基を
有するモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブチレ
ン、イタコン酸、ビニルピロリドンなどのモノマーを1
0モル%以下の比率で共重合したPVA系ポリマーてあ
ってもよい。またPVA系ポリマーに対して混和性を有
する他種ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリ
アクリル酸などが少量(10%以下)ブレンドされてい
てもよい。
【0011】本発明の延伸原糸を得る紡糸法としては、
水を主体とする溶媒にPVAを溶解した原液を凝固作用
あるいはゲル化作用を有するアルカリ及び/または脱水
性塩類水溶液などの固化浴に湿式あるいは乾湿式紡糸す
る方法、DMSO、ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、グリセリン、
エチレングリコールなどの有機溶媒あるいはこれら有機
溶媒同志またはこれら有機溶媒と水との混合溶媒にPV
Aを溶解した原液を凝固作用あるいはゲル作用を有する
メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒ある
いは原液溶媒と凝固性有機溶媒との混合溶媒などの固化
浴に湿式あるいは乾湿式紡糸する方法などがあり、いず
れの方法も採用することができる。ただ有機溶媒系原液
を原液溶媒と凝固性有機溶媒を含む混合溶媒系に湿式あ
るいは乾湿式紡糸した繊維は他の紡糸法に比べて加熱時
PVAの分解が起こり易い傾向にあり、本発明の如く熱
延伸時の滞留時間が短かい延伸法を適用するとその効果
が大きいのでより好ましい態様である。また熱伝導型延
伸機での繊維としては、延伸用フィラメント束として必
要な性状はしなやかさが重要であり、熱風炉でのフィラ
メント束がむしろばらけないことが必要であるのに対し
て逆方向である。
【0012】膠着のないしなやかなフィラメント束とす
るために、湿式あるいは乾湿式紡糸後、溶媒あるいは固
化浴溶媒などを含有した状態で2.5〜6倍の湿延伸を
施こす。湿延伸が2.5倍未満では乾燥時膠着気味とな
り、しなやかなフィラメント束を得ることができない。
6倍を越えると毛羽が出易い。湿延伸倍率が3.0〜
5.5倍だとより好ましく、3.5〜5倍だとさらに好
ましい。
【0013】このようにして得た延伸用原糸の摩擦係数
を小さくすることが本発明のポイントである。本発明で
は伝熱性の高い熱伝導型の延伸を採用し、具体的にはホ
ットプレート、ホットピンやホットローラーなどで延伸
するので、繊維がプレート或いはローラーなどの上で摩
擦抵抗を受ける。従って摩擦係数が小さいことが好まし
い。特に糸速が高い程重要となる。当初、繊維とプレー
トなどの金属との動摩擦係数が小さいことが重要で、繊
維対金属の静摩擦係数や繊維対繊維の動摩擦係数や静摩
擦係数は重要でないと考えていたが、種々検討の結果、
繊維対金属の動摩擦係数より繊維対繊維の静摩擦係数の
小さいこと、すなわちF/Fμsが0.270以下であ
ることが極めて重要であることがわかった。何故F/F
μsが重要であるかの理由は不明であるが、マルチフィ
ラメントは延伸中シングルフィラメント相互で摩擦し合
い、シングルフィラメント同志の相対速度は小さいので
静的状態に近いと考えると、繊維対繊維の静摩擦係数が
小さいことが重要であると推定される。F/Fμsが
0.250以下であるとより好ましく、0.220以下
であるとさらに好ましい。
【0014】延伸用原糸のμsを小さくする手法に特別
な限定はないが、一般的にはμsを低下させるのに有効
な界面活性剤を原液に添加したり、紡糸工程で付与する
ことにより達成しうる。界面活性剤としては、長鎖アル
キルリン酸のアミン中和物、長鎖カルボン酸のグリセリ
ンエステル、ジメチルシリコーン、アミノ変成シリコー
ンなどがあげられる。界面活性剤の添加或いは付与量は
界面活性剤の種類によっても異なるが、ポリマーに対し
0.005〜2%である。界面活性剤を紡糸工程で付与
する場合、ディップーニップ方式、タッチローラー方
式、ギアポンプ方式などがあり、特に限定はないが、デ
ィップーニップ方式は単糸間の付着斑が少なく、ギアポ
ンプ方式はフィラメントヤーンでの付着量制御性に優れ
ている。
【0015】本発明においては上記の如く得られた延伸
原糸を熱伝導型の延伸機を用いて乾熱延伸を施こす。本
発明にいう熱伝導型の延伸機とは、ホットプレート、ホ
ットピン、ホットローラーなど繊維と直接接触させて繊
維を熱伝導により昇温させる加熱手段を有し、入りロー
ラーの速度と出ローラーの速度の比により延伸する設備
である。加熱チューブや熱管の気体中を通過させる間に
輻射により繊維を昇温する輻射型や熱風を積極的に循環
し繊維に熱風を吹きつけて対流により昇温する対流型な
どに比べて熱伝導型は伝熱性が格段に大きい特徴を有し
ている。
【0016】本発明においては乾熱延伸を少なくとも2
段で行なわなければ、膠着や毛羽のない高強度の繊維を
得ることはできない。第1段の乾熱延伸は加熱体(ホッ
トプレート、ホットローラー、ホットピン)の温度を1
30〜220℃とし、第1段乾熱延伸倍率を1.2〜
4.0倍としなければならない。第1段の延伸温度が1
30℃より低温では延伸性が低く、たとえ延伸できとし
ても配向結晶化効果が小さく、第2段乾熱延伸において
高温となった際に融着が防止でない。第1段延伸温度が
220℃より高いと原糸の配向結晶化が十分でないため
膠着する。第1段乾熱延伸温度が160〜210℃であ
るとさらに好ましい。第1段の延伸倍率は、原糸段階で
の湿延伸倍率によって異なるが、第1段延伸倍率が1.
2倍未満では配向結晶化が十分でなく、次の第2段延伸
に耐える構造とすることが出来ない。4.0倍を越える
延伸を行なうと過延伸となり、第2段延伸を円滑に行な
うとが出来ない。また第1段延伸自体を多段に分けて延
伸すると好ましい場合が多い。例えばプレート温度を1
60℃と190℃とすることにより、第1段延伸を2段
に分けて延伸すると好ましい。以上の如く第1段延伸
は、より完全な配向結晶化を目指して高温で行なう第2
段乾熱延伸を円滑に行なうための予備延伸的工程であ
り、PVAの熱伝導型延伸には必須であることを見い出
した。
【0017】第1段延伸に続いて第2段延伸を施す。第
2段の延伸はホットプレート、ホットローラーなどの加
熱体の温度を230〜265℃とし、延伸倍率を1.2
〜4倍とする。230℃より低温であると最終延伸とし
て必要な配向結晶化が十分でなく、強度、耐水性の優れ
たものとすることが出来ない。265℃より高温である
と結晶が融解し繊維が膠着する。またPVAが分解劣化
する。より好ましい第2段延伸温度はPVAの重合度に
よって異なるが230〜255℃である。高重合度程高
温に設定するとよい。第2段延伸倍率が1.2倍より低
いと得られる繊維の配向結晶化が十分でなく強度耐熱水
性が劣る。第2段延伸倍率が4倍より高いと毛羽が出
る。第2段延伸自体を多段に分けてすることもできる。
例えばプレート温度を230℃と235℃によることに
より、第2段延伸を、2段に分けて延伸すると好ましい
場合がある。またプレート延伸の場合、第1段延伸と第
2段延伸の中間に駆動ローラーを設けて第1段延伸倍率
と第2段延伸倍率を各々の所定値に制御することも出来
る。一方、中間に駆動ローラーを全く設けず、入りロー
ラーと出ローラーのみとし、220℃より低温の領域を
第1段延伸部とし、230℃より高温の領域を第2段延
伸部とし、各々の温度と接触長さを制御することにより
連続的に延伸する態様もある。後者の場合、各領域で張
力が同じとなるように延伸倍率が設定される。各領域の
延伸倍率は糸速を実測するかあるいは繊維デニールの細
化カーブの実測により求めることが出来る。各領域入の
延伸倍率を所定値に設定し易い点では中間ローラーを用
いる方がよいが、中間ローラーで冷却されない点や中間
ローラーへの捲付きの可能性なしの点では中間ローラー
の方が優れている。また多段プレート延伸の場合、各プ
レートに繊維を完全に接触させるためにプレート間にフ
リーのガイドローラーを設けることが出来る。
【0018】原糸段階での湿延伸倍率、第1段延伸倍
率、第2段延伸倍率の全てを掛け合わせた全延伸倍率
(以下TDと略記する)が性能に大きな影響を有してお
り、少なくとも12倍とすると好ましい場合が多い。T
Dが12倍より低いと最終の延伸糸としての配向結晶化
が不十分であり、強度、耐熱水性が不十分となる。TD
が15倍以上であるとさらに好ましく、18倍以上であ
ると最も好ましい。
【0019】本発明においては、第1段延伸と第2段延
伸の滞留時間の合計を10秒以下、さらに殆どの場合5
秒以下となしうることも大きな特徴である。これは従来
の加熱チューブ、熱管、熱風炉では滞留時間を少なくと
も30秒以上を必要とし、しかもさらに長くすることに
よってより高性能となるのに対して、際立った相違であ
る。
【0020】本発明に用いるホットピン、ホットプレー
ト、ホットローラーなどの加熱体は繊維と接触しても損
傷を与えず、接触表面を所定の温度に制御出来るものな
ら限定はないが、伝熱性の大きい金属製が好ましい。加
熱体の表面形状は特に限定はないが、鏡面または梨地仕
上げが好ましい。第1段延伸領域の加熱体はホットピ
ン、ホットプレート、ホットローラーが好ましい。第2
段延伸領域の加熱体はホットプレート、ホットローラー
が好ましい。なおホットプレートの場合、適当な温度勾
配をつけることにより1基のプレートで第1段、第2段
の加熱体を構成することもできる。この加熱体の大きさ
(繊維との接触長)は、延伸条件により異なるが0.5
〜10m程度である。なお延伸後、必要に応じて熱固定
あるいは熱収縮を施こしてもよい。熱伝導型の延伸が常
用されているポリエステル繊維では、ある点でネッキン
グ延伸が起こり、ネッキング延伸以降ではさらに延伸す
る必要がなく、また高温にして延伸しようとしても延伸
困難であるのに対して、PVA繊維では温度に応じて多
段延伸が可能で、かつ多段延伸が必須であることを見出
し、ポリマーの種類により延伸挙動が大きく異なること
を認めた。
【0021】以上の如く、本発明は、熱伝導型の延伸機
を用いてPVA繊維を延伸するにあたり、所定の倍率の
湿延伸を行ない、膠着がなく、しなやかなフィラメント
束とし、繊維対繊維の静摩擦係数が所定値以下の滑りの
よい延伸用原糸を用い、かつ特定条件下2段延伸するこ
とにより、TU80m/min以上の高速でも毛羽がな
く、熱劣化のない、熱風延伸に遜色のない強度の高い繊
維を熱風延伸より大幅に短い滞留時間で製造することを
実現したものである。
【0022】本発明にいう繊維対繊維静摩擦係数は、J
IS L−1015に準拠して測定したものである。す
なわちJIS L−1015(化学繊維ステープル試験
方法)の摩擦係数測定法において、ステープルをハンド
カードして円筒に捲き付けた円筒スライバの代わりに、
図1の如き両ツバ針付ボビンに、図2の如く試料フィラ
メントを平行に鼓状に巻き付けた鼓状フィラメントを用
いた。
【0023】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】実施例1: 粘度平均重合度3300、ケ
ン化度99.9モル%のPVAを12重量%となるよう
にDMSOに添加し、80℃にて窒素雰囲気下で溶解し
た。得られた紡糸原液を孔数50ホールのノズルより、
3℃のメタノール/DMSO=7/3(重量比)からな
る固化浴に湿式紡糸し、40℃のメタノール/DMSO
=94/6の湿延伸浴により4.5倍の湿延伸を行な
い、メタノール浴でDMSOを完全に抽出し、付着メタ
ノールを空気で吹き飛ばし、ジメチルシリコンの1%ヘ
キサン溶液をローラータッチ方式で接触させた後、90
℃の熱風で乾燥した。得られた延伸原糸は、ヤーンデニ
ールが750デニールであり、膠着なく、しなやかであ
り、F/Fμsは0.240であった。
【0025】この延伸原糸を130℃の熱ローラーで予
熱乾燥後、150℃、190℃、235℃のホットプレ
ート上を接触走行させて乾熱延伸を施こした。入速は2
3m/min、TUは100m/minで、TDは1
9.5倍であった。190℃のプレート通過直後のデニ
ールの実測より、150℃及び190℃プレートでの合
計の第1段乾熱延伸倍率は2.41倍であり、235℃
プレートの乾熱延伸倍率は1.8倍であった。また全滞
留時間は4秒であった。延伸調子は良好で毛羽は殆ど見
られず、得られた繊維の単繊維強度は18.3g/d
と、重合度2400のPVAとしては高強度であり、T
U15m/min、滞留40秒の熱風延伸と同等の性能
を示した。
【0026】比較例1: ジメチルシリコンのヘキサン
溶液を接触させない以外は実施例1と同様にして延伸原
糸を得た。得られた延伸原糸のF/Fμsは0.29で
あった。この延伸原糸を実施例1と同様の条件で延伸し
たが、TD19.5倍では毛羽が多く発生し、正常な延
伸を行なうことができなかった。
【0027】なおTUを40m/minとするとTD1
9.5倍の延伸が可能であり、単糸強度は18.2g/
dであり、実施例1と同じであった。
【0028】比較例2: 湿延伸倍率を2.4倍とする
以外は実施例1と同様に紡糸、抽出、油剤付与、乾燥し
た。得られた延伸原糸は膠着気味で硬かった。これを実
施例1と同様に3段プレート延伸を行なったところ、T
Dが16倍でも毛羽が多発し正常な延伸はできなかっ
た。
【0029】実施例2: 粘度平均重合度が1700、
ケン化度99.9モル%のPVAを17%となるようD
MSOに添加し、80℃にて窒素雰囲気下で溶解した。
得られた紡糸原液を孔数40ホールのノズルより、10
mmの空気層を通して、5℃のメタノール/DMSO=
6/4よりなる固化浴に乾湿式紡糸し、40℃のメタノ
ール/DMSO=94/6の湿延伸浴により4.0倍の
湿延伸を行ない、メタノール浴でDMSOを完全抽出
し、付着メタノールを搾液ローラーで除去し、アミノ変
性シリコンの0.2%ヘキサン溶液をローラータッチ方
式で接触させた後90℃の熱風で乾燥した。得られた延
伸原糸はヤーンデニールが600drで、膠着なくしな
やかであり、F/Fμsは0.191と低かった。
【0030】この延伸原糸を150℃、180℃、20
0℃、235℃のホットプレート上を接触させ熱伝導型
の乾熱延伸を行なった。入速は24m/min、TUは
120m/minで、TDは20倍であった。150
℃、180℃、200℃の3基のプレートによる合計の
第1段プレート延伸倍率は1.9倍であり、237℃プ
レートによる第2段延伸倍率は2.6倍であり、全滞留
時間は約2秒であった。延伸調子は良好で毛羽は殆どな
く、得られた単繊維強度は15.6g/dであり、TU
15m/min、滞留25秒の熱風延伸で得られた最高
単繊維強度は15.8g/dとほぼ同じであった。
【0031】比較例3: 実施例2と同じ原糸を用いて
237℃のホットプレートのみに接触させて、入速24
m/minで導糸しようとしたが、ホットプレート上で
溶断して導糸不能であった。
【0032】比較例4: 実施例2と同じ原糸を用い、
最終プレートの温度を218℃とする以外は実施例2と
同様にプレート延伸を行なった。TD20倍で断糸し
た。TD14倍の単繊維強度は10g/dと低いもので
あった。
【0033】比較例5: 第3プレートと第4プレート
の間に中間駆動ローラーを設け、このローラー速度を2
8m/minとし、第1〜第3プレートの第1段延伸を
1.17倍とする以外は実施例2と同様に延伸しようと
したが、第4プレート上で溶断した。
【0034】実施例3: 実施例2と同じ原糸を用い
て、160℃、190℃、205℃、238℃のホット
プレート上を接触させ、TU180m/minで乾熱延
伸を行なった。入速を37m/minまで下げてTD1
9.5倍でも殆ど毛羽はなく順調に延伸出来た。第3プ
レート後の糸速を実測し、第1〜第3プレート間の延伸
倍率が2.1倍で、第4プレートでの延伸倍率が2.3
倍であった。また、全滞留時間は1秒台であり、得られ
た延伸糸の単繊維強度は15.1g/dであった。
【0035】実施例4: 粘度平均重合度8500、ケ
ン化度99.8モル%のPVAを6重量%となるようD
MSOに添加し、90℃にて窒素雰囲気下で溶解した。
得られた紡糸原液を孔数100ホールのノズルより2℃
のメタノール/DMSO=65/35よりなる凝固浴に
湿式紡糸し、40℃のメタノール/DMSO=92/8
の浴により4.2倍の湿延伸を行ない、メタノール浴で
DMSOを完全に抽出し、アミノシリコンの0.1%ヘ
キサン溶液をローラータッチ方式で接触させた後90℃
の熱風で乾燥した。得られた延伸原糸はヤーンデニール
が1130drであり、膠着なくしなやかでF/Fμs
は0.15であった。
【0036】この延伸原糸を170℃、210℃、23
8℃、249℃のホットプレート上を接触走行させて乾
熱延伸を行なった。入速は19.9m/min、TUは
90m/minで、TD19.0倍であった。210℃
プレート通過直後のデニールの実測より170℃と21
0℃プレートでの合計の乾熱延伸倍率は2.32倍であ
った。また238℃と249℃ホットプレートによる第
2段乾熱延伸は1.95倍であり、全滞留時間は4秒で
あった。延伸調子は良好で毛羽はなく、得られた繊維の
単繊維強度は22.1g/dと熱風延伸方式と遜色のな
い値であった。
【0037】
【発明の効果】以上の如く本発明は、熱伝導型の延伸機
を用いて湿式あるいは乾湿式紡糸したPVA繊維を延伸
するにあたり、湿延伸倍率を所定範囲とし、繊維対繊維
の静摩擦係数が所定値以下の滑りのよい延伸原糸を用
い、かつ特定条件下において2段延伸することにより、
TU80m/min以上の高速(例えば150m/mi
n)でも毛羽なしで熱風延伸に遜色のない強度を有する
PVA繊維を、熱風延伸より大幅に短かい滞留時間で製
造することを可能としたものである。これによりコンパ
クトな設備費の安価な熱伝導型延伸機を用いて高速で延
伸することが可能となった。得られた繊維は、従来の熱
風延伸方式に比べ、熱劣化が少なく、白色が良好で、安
価に製造しうるので、自動車タイヤやブレーキホースな
どのゴム資材やアスベスト代替のセメント補強材などの
分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において原糸の摩擦係数の測定に用いた
両側ツバ部に針1が付いたボビンの側面および断面の説
明図。
【図2】図1のボビンに測定用サンプル2を巻き付けた
鼓状フィラメントの外観図。
【符号の説明】
1…針 2…サンプルフィラメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北村 隆範 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 審査官 真々田 忠博 (56)参考文献 特開 昭64−77616(JP,A) 特開 昭64−85310(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコールを溶媒に溶解して
    得た紡糸原液を、ポリビニルアルコールに対して凝固作
    用もしくはゲル化作用を有する有機溶媒系もしくは水系
    の固化浴に湿式もしくは乾湿式紡糸し、湿延伸し、乾燥
    して得られた原糸を乾熱延伸するに際して、(1)原糸
    は2.5〜6倍の湿延伸が施されていること、(2)原
    糸は繊維対繊維の静摩擦係数が0.27以下であるこ
    と、(3)原糸を熱伝動型の加熱手段を用いて加熱する
    こと、(4) 温度を130〜220℃で1.2〜4.
    00倍の第1段熱延伸を行ない、次いで温度230〜2
    65℃で1.2〜4倍の第2段乾熱延伸を行うこと、を
    特徴とするポリビニルアルコール系繊維の延伸法。
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