JP3047450B2 - 鉛電池陽極板 - Google Patents

鉛電池陽極板

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JP3047450B2 JP2286219A JP28621990A JP3047450B2 JP 3047450 B2 JP3047450 B2 JP 3047450B2 JP 2286219 A JP2286219 A JP 2286219A JP 28621990 A JP28621990 A JP 28621990A JP 3047450 B2 JP3047450 B2 JP 3047450B2
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今吉 平沢
武 平川
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新神戸電機株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、鉛電池の陽極板に関するものである。
従来技術 鉛電池の未化成極板は、一般に、鉛あるいは鉛合金か
ら成る格子体に鉛ペースト(鉛粉を希硫酸で練ったも
の)を塗布した後、熟成、乾燥の各工程を経て作られ
る。このとき、陰極用鉛ペースト中には防縮剤としてリ
グニン、硫酸バリウムが添加される。リグニンは、陰極
の性能を長期間維持するための重要な添加剤であるが、
化成が入りにくくなるため、これらに加えてアセチレン
プラックなどのカーボンブラックも同時に添加されるの
が一般的である。これに対して、陽極用鉛ペースト中に
は活物質の脱落防止用の繊維以外、特に何も添加しない
ことが多い。
上記未化成極板は、一般に1日あるいは2日間かけ
て、十分な電気量を用いて化成される。ここで、原価低
減などを目的に短時間で化成しようとすると、陽極の化
成が不十分となり、活物質中に未化成の硫酸鉛が残留し
たり、陽極板の表面に硫酸鉛が白色状態で多量に残留し
たりする。特に、後者の現象は、著しい外観不良に発展
する。これらの現象を防止する手段として、従来、陽極
用鉛ペースト中へのアセチレンブラックなどのカーボン
ブラック、カーボンファイバー、あるいは鉛丹などの添
加が検討されている。また、特に表面に残留する硫酸鉛
を減少させるための手段として、特開昭58−197662号公
報に示されているように、未化成極板の表面に鉛丹ある
いは二酸化鉛等の鉛の過酸化物の薄層を形成することも
検討されている。前者の方法は、ペースト中に格子体以
外の電子伝導性のネットワークを形成し、化成効率を上
げてやろうというものである。ーボンブラックとカーボ
ンファイバーは、耐酸、耐酸化性の電子伝導性材料とし
て選定されたものであり、鉛丹は化成液である希硫酸と
の化学反応によって二酸化鉛を生成し、これがペースト
中に電子伝導性を与えることになる。例えば、カーボン
ファイバーの添加については、特公昭38−14425号公報
などに記載されている。また、後者の方法は、極板の表
面に電子伝導性を賦与し化成を表面からも進めることに
よって表面に残留する硫酸鉛の減少を狙ったものであ
る。この方法は、特公昭24−2769号公報、特公昭24−27
70号公報、特公昭24−2771号公報および特公昭61−3634
6号公報にも記載されている。
発明が解決しようとする課題 上述したように、これまで陽極の化成効率を向上させ
るために各種添加物およびこれらの添加方法が検討され
ているが、以下の大きな問題点があり実用化されていな
い。すなわち、ペースト中にカーボンブラックなどを添
加すると、化成は入りやすくなるが電池としての寿命性
能が低下する。また、極板の表面に鉛丹あるいは二酸化
鉛の薄層を設けるという方法は、化成中にこれらが剥離
しやすく期待される効果が得られない。
前者の理由は、カーボンブラックなどの添加物が陽極
活物質中に均一に分散することによって、活物質すなわ
ち二酸化鉛の結晶の結合力を弱め、充放電による結晶粒
子の脱落を促進してしまうためであると考えられる。ま
た、後者の理由は、鉛丹などから成る表面の薄層と内部
の各種物性の違から、化成中に大きな歪みが生じるため
であると考えられる。本発明は、上述した電池の寿命性
能の低下あるいは極板表面層の剥離を招くことなく、極
板、特に、陽極の化成効率の向上を図ろうというもので
ある。
課題を解決するための手段 本発明では、未化成の鉛電池陽極板の表面に、内部と
異なる鉛ペースト層を形成し、この鉛ペースト層が実質
的に硫酸鉛を含まない一酸化鉛とした。
作用 一般に、陽極用鉛ペーストは主成分である一酸化鉛と
10〜20wt・%の硫酸鉛から成っている。このように、鉛
粉すなわち一酸化鉛を希硫酸で練って10〜20wt・%の硫
酸鉛をペースト中に生成させる理由は、これによってペ
ースト中の水分量を増すことができ、未化成極板をより
多孔質にすることができると同時に、化成によってこの
硫酸鉛が二酸化鉛に酸化されるとき、そのモル体積の減
少からさらに多くの孔が形成されるためである。すなわ
ち、活物質の利用率の高い優れた陽極板が形成できるた
めである。しかし、その反面、硫酸鉛量を増すほど化成
効率は低下し、化成により多くの電気量が必要になる。
その理由は、硫酸鉛が多いほど、未化活物質と電解液で
ある希硫酸との反応量が少なくなり極板の内部まで早期
に硫酸が侵入するため、結果的に極板内に多量の硫酸鉛
が生成し、これの化成効率が低いためであると考えられ
る。また、例えば、デー・パブロブ(D.Pavlov)らが、
ジェー・エレクトロケミカル・ソサィェティ(J.Electr
ochem.Soc.)127,2014(1980)で述べているごとく、鉛
ペースト中の硫酸鉛量が多いと化成の進行状況も、極板
の表面より内部が優先的に化成されるようになる。その
ために、化成液である希硫酸との反応によって極板の表
面の硫酸鉛化が進行し、表面に硫酸鉛が白色状態で多量
に残留しやすくなる。
本発明は、未化成の鉛電池陽極板の表面に、内部と異
なる鉛ペースト層を形成し、この鉛ペースト層が硫酸鉛
を実質的に含まない(好ましくは0wt%)一酸化鉛とし
たことによって、以下のような作用が生じ、化成効率が
改善される。
(1) 硫酸鉛をほとんど含まない鉛ペーストは表面、
すなわち、化成液と接する面から、かつ、非常に効率良
く化成される性質を持っているので、これを従来の組成
の鉛ペーストから成る未化成極板の表面に塗布すること
によって、化成を内部および表面から進行させ、化成効
率を大幅に高めることができる。また、この表面に塗布
された層は、一酸化鉛としているため内部との馴染みも
良く、化成中、剥離によって期待される効果が得られな
いという従来の問題点が解消される。
(2) 上記鉛ペーストはその細孔体積が小さいので、
極板の表面からの化成液、すなわち、硫酸の拡散による
内部のペースト層の硫酸鉛化、これによる化成効率の低
下を防止する。
さらに、 (3) 化成した陽極は、その表面層にα−PbO2が多
く、かつ、この気孔率が小さいため充放電による表面の
泥状化が抑制され、これによるショートの発生が防止で
きる。したがって、長寿命の極板を得ることができる。
実施例 以下に、本発明の実施例を述べる。
第1図は、本発明によって作製した陽極用未化成極板
の断面を示したものである。1は鉛あるいは鉛合金から
成る格子体の断面を示したものである。2は未化活物質
である。これは鉛粉を希硫酸で練ることによって調製し
た鉛ペーストを格子体(1)に塗布した後、熟成、乾燥
したものである。組成は一酸化鉛85wt・%、硫酸鉛15wt
・%である。3は前記鉛ペーストを格子体(1)に塗布
した後、その表面に薄く塗布された鉛ペーストの層であ
る。この鉛ペーストは鉛粉を水で練ることによって調製
したものであり、その組成は硫酸鉛を全く含ます、一酸
化鉛100wt・%である。この鉛ペースト層(3)が厚い
ほど化成効率は向上するが、これの多孔度が低いため、
逆に、これが厚いほど陽極としての高率放電特性の低下
が見られるようになる。したがって、本実施例では、そ
の厚さを全体の10%とし、陽極としての高率放電特性の
低下が見られない範囲内とした。なお、この鉛ペースト
層(3)の厚さは、これによる化成効率の向上、寿命特
性への影響とこれが厚すぎる場合の陽極としての高率放
電特性の低下などの諸点を鑑み決定されるもので、電池
の設計思想により異なるものである。
第2図は、本発明による陽極用未化成極板の化成効率
を活物質中に未化成の状態で残留する硫酸鉛量によって
評価したものである。図中、記号Aが本発明による陽極
用未化成極板の活物質中に残留する硫酸鉛量の経時変化
を示したものである。記号B,C,Dで示した残留硫酸鉛量
の経時変化は、本発明との比較のためのものである。記
号Bは、本発明による鉛ペースト層(3)を塗布してな
い従来の陽極用未化成極板を用いた場合である。ただ
し、未化活物質の厚さは同じにした。記号C,Dで示した
残留硫酸鉛量の経時変化は、それぞれ未化活物質中にカ
ーボン(アセチレンブラック)、鉛丹を添加した場合で
ある。添加量は、鉛粉に対してそれぞれ1wt・%、15wt
・%である。なお、通電電流は、0.6C、電解液である希
硫酸の比重は1.06(20℃)、電解液の温度は40℃であ
る。
図から明らかなように、本発明による陽極用未化成極
板は、従来の陽極用未化成極板に較べ、残留硫酸鉛量が
早期に減少しており、化成効率が向上していることがわ
かる。また、本発明によるものは、未化活物質中にカー
ボンを1wt・%、鉛丹を15wt・%添加した場合とほぼ同
等の化成効率であることがわかる。なお、本発明による
極板の表面層の剥離は、全く認められなかった。
第3図は、本発明による陽極用未化成極板を用いた55
D23型電池の寿命特性を示したものである。記号B,C,Dで
示した寿命特性は、本発明との比較のために作製した同
じ55D23型電池のものである。記号Bで示した寿命特性
は、本発明による鉛ペースト層(3)を塗布していない
従来の陽極用未化成極板を用いた場合である。ただし、
未化活物質の厚さは同じにした。記号C,Dで示した寿命
特性は、それぞれ未化活物質中にカーボン(アセチレン
ブラック)、鉛丹を添加し、化成効率を向上させた陽極
用未化成極板を用いた場合である。添加量は、鉛粉に対
してそれぞれ1wt・%、15wt・%である。寿命特性は、J
ISに定める充放電サイクル試験によって評価した。
記号C,Dで示した寿命特性からも明らかなように、未
化活物質中にカーボン、鉛丹を添加することによって化
成効率を向上させた陽極用未化成極板は、充放電サイク
ル特性が低下する。しかし、本発明によって化成効率を
向上させた陽極用未化成極板は、記号Aで示される充放
電サイクル特性を示し、寿命特性の低下が見られないば
かりか、むしろ、これが向上していることがわかる。こ
の理由は、以下のごとくであると考えられる。すなわ
ち、本発明によって表面に塗布した鉛ペースト層(3)
は、多孔度が低いために、充放電を繰り返すことによる
活物質粒子間の結合力の低下、すなわち、活物質の泥状
化が起こりにくく、これによるショートの発生が防止さ
れるためであると考えられる。
発明の効果 以上述べたように、本発明によれば寿命特性を全く低
下させることなく陽極用未化成極板の化成効率を向上さ
せることができ、工業的価値大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による陽極未化成極板の断面図、 第2図は本発明による陽極用未化成極板を化成したとき
の活物質中の残留硫酸鉛量の経時変化を示した図、 第3図は本発明による陽極用未化成極板を用いた電池の
寿命特性を示した図である。 1:格子体、2:未化活物質、3:鉛ペースト層

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉛あるいは鉛合金から成る格子体に所定の
    組成の鉛ペーストを塗布して成る未化成の鉛電池陽極板
    において、表面に内部と異なる鉛ペースト層を形成し、
    この鉛ペースト層の組成は、実質的に硫酸鉛を含まない
    一酸化鉛であることを特徴とする鉛電池陽極板。
  2. 【請求項2】陽極板の活物質が表面層と内部層の2層か
    ら成り、その表面層のα−PbO2が内部層のそれより多
    く、かつ、表面層の気孔率が内部層のそれより小さいこ
    とを特徴とする請求項第1項に記載の鉛電池陽極板。
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