JP3044810B2 - 鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、鍵盤フレームに上下
に揺動自在に装着された複数の鍵の横振れを防止する鍵
盤電子楽器の鍵ガイド装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の鍵盤電子楽器の鍵ガイド
装置としては、鍵盤フレーム側に立設した板金の鍵ガイ
ドに、柔軟で摺動性良好な熱可塑性エラストマをアウト
サート成形するか、このようなエラストマで成形したキ
ャップを嵌着すると共に、ＡＳ樹脂等の成形品からなる
鍵側に上記鍵ガイドの被ガイド部を一体に形成したもの
が多用されているが、鍵盤フレーム側の鍵ガイドと鍵を
共に硬質のＡＢＳ樹脂により成形し、鍵ガイドとその被
ガイド部との間に潤滑用のグリスを介在させるようにし
たものも知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置にあって、鍵盤
フレームに設けた鍵ガイドにエラストマをアウトサート
成形したものは、鍵ガイドの成形に際して板金のプレス
工程とエラストマの成形工程とを必要とするので、工程
数が増えて生産性を損なうという問題点があり、鍵ガイ
ドにエラストマで成形したキャップを嵌着したものは、
両者の寸法誤差が集積して鍵ガイドと被ガイド部とのク
リアランスを大きくとらなければならず、鍵の横振れが
大きくなるという問題点がある。また、鍵ガイドと被ガ
イド部との間にグリスを介在させたものは、グリスが少
なくなると摺接音が大きくなり、グリスが完全になくな
ると鍵の揺動も円滑でなくなるという問題点がある。

【０００４】この発明は上記の点に鑑みてなされたもの
であり、生産性良好で長期に亘って鍵の横振れや摺接音
を生じない鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置を提供すること
を目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を
達成するため、複数の鍵ガイドを立設した鍵盤フレーム
と、このフレームに揺動自在に装着され前記鍵ガイドに
それぞれ対応する被ガイド部を備えた鍵とからなる鍵盤
電子楽器の鍵ガイド装置において、上記鍵及び鍵ガイド
をそれぞれ耐衝撃性樹脂材により成形すると共に、上記
被ガイド部の鍵ガイドに摺接する面に、柔軟で摺動性良
好な熱可塑性エラストマ被膜を２色成形法により形成し
たものである。

【０００６】

【作用】この発明による鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置は
上記のように構成したので、その被ガイド部は２色成形
機を用いることにより鍵成形時に一工程で成形加工する
ことができて生産性はきわめて良好である。また被ガイ
ド部の寸法はエラストマ被膜の成形でのみ決定されるの
で嵌合精度を出し易く、被ガイド部の鍵ガイドとの摺接
面には摺動性良好なエラストマ被膜が形成されているの
でグリスがなくなっても、あるいは最初からグリスを介
在させなくても鍵の揺動を長期に亘って円滑に保つこと
が可能になる。

【０００７】

【実施例】以下、この発明の実指例を図面に基づいて具
体的に説明する。

【０００８】図３はこの発明を実施した鍵盤電子楽器の
鍵盤部全体の構成を示す断面図、図２はその鍵ガイド部
のみを示す一部斜視図である。

【０００９】例えばＡＳ樹脂やＡＢＳ樹脂等のようにや
や弾性を有する耐衝撃性樹脂で成形した鍵１は、後端部
を止ねじ２により鍵盤フレーム３に肉薄部１ａを支点と
して上下に揺動自在に取着され、鍵１の前端部には下限
ストッパ１ｂが、その後方にはＬ字状の上限ストッパ１
ｃが、さらにその後方にはアクチュエータ１ｄがそれぞ
れ下方へ突出して一体に形成してあり、下限ストッパ１
ｂには後述の鍵ガイド５に対応して被ガイド部４が設け
てある。

【００１０】一方、鍵盤フレーム３の前部には、下限ス
トッパ１ｂの被ガイド部４に摺動自在に緩嵌する板状の
鍵ガイド５をＡＢＳ等の耐衝撃性樹脂により成形して立
設し、これに隣接して鍵盤フレーム３上にフェルト製の
下限係止部材６を設けて鍵１の下降限を規制している。
また、鍵盤フレーム３の下面にゴム製の上限係止部材７
を設けて上限ストッパ１ｃの上昇限を規制すると共に、
鍵盤フレーム３の上面にアクチュエータ１ｄに対向して
周知のドーム状の常開のキースイッチ８を設けて押鍵時
にこのスイッチが開閉されて楽音を発生させるようにし
ている。

【００１１】鍵ガイド５が摺動自在に緩嵌する被ガイド
部４は、図１にこの発明の一実施例の要部断面を示すよ
うに、その内面に弾性に富む熱可塑性のエラストマ被膜
９が鍵１の成形時に２色成形法により同時に成形してあ
る。このエラストマ被膜９は例えば塩化ビニル系やオレ
フィン系等の柔散で摺動性良好なものを用いる。

【００１２】この実施例は上記のような構成からなり、
鍵ガイド５と被ガイド部４との間には若干のグリースを
介在させて両者の摺動性を一層向上させるようにするの
が好ましいが、このグリスがなくなって鍵ガイド５の側
面がエラストマ被膜９に直接摺接しても摺接音が発生す
ることはなく、鍵１の揺動が円滑さを欠くおそれもな
い。

【００１３】また、鍵ガイド５と被ガイド部４との嵌合
精度はエラストマ被膜９の厚さだけで決定されるので寸
法管理が容易であり、鍵１の横振れを最小限に抑えるこ
とができると共に、エラストマ被膜９は２色成形により
鍵１の成形時に一工程で成形加工することができるの
で、生産性はきわめて良好である。

【００１４】なお、上記実施例ではこの発明を白鍵の鍵
ガイド装置に実施した場合について説明したが黒鍵の場
合にも全く同様に実施し得ることはいうまでもない。

【００１５】

【発明の効果】以上述べたように、この発明による鍵盤
電子楽器の鍵ガイド装置は、鍵盤フレーム側に立設した
鍵ガイドに対応する鍵側の被ガイド部の鍵ガイドに摺接
する面に、エラストマ被膜を２色成形するようにしたの
で、鍵成形時にエラストマ被膜を一工程で同時に成形加
工することができて生産性を大幅に向上させることが可
能になる。

【００１６】また、鍵ガイドとその被ガイド部とはいず
れも成形品であってその寸法のばらつきはほとんどな
く、両者の嵌合精度はエラストマ被膜の厚さのみによっ
て決定されるので、寸法管理は容易で鍵の横振れを最小
限に抑えることができる。

【００１７】さらに、被ガイド部の鍵ガイド摺接面には
摺動性の良好なエラストマ被膜が形成されているので、
鍵ガイドとの間に介在するグリスがなくなっても、ある
いは最初からグリスを使用しないでも、鍵の揺動に円滑
さを欠くことはなく、耳障りな摺接音が発生するおそれ
もない。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す要部断面図である。

【図２】その一実施例の要部斜視図である。

【図３】この発明を実施した鍵盤電子楽器の鍵盤部全体
の構成を示す断面図である。

【符号の説明】

１…鍵、３…鍵盤フレーム、４…被ガイド部、５…鍵ガ
イド、９…エラストマ被膜

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G10B 3/12 G10B 3/14 G10C 3/12 G10H 1/34

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の鍵ガイドを立設した鍵盤フレーム
   と、この鍵盤フレームに揺動自在に装着され前記鍵ガイ
   ドにそれぞれ対応する被ガイド部を備えた鍵とからなる
   鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置において、前記鍵及び前記
   鍵ガイドをそれぞれ耐衝撃性樹脂材により成形すると共
   に、前記被鍵ガイドに摺接する面に、柔軟で摺動性良好
   な熱可塑性エラストマ被膜を２色成形法により形成した
   ことを特徴とする鍵盤電子楽器の鍵ガイド装置。