JP3044753B2 - 振動衝撃吸収フォーム - Google Patents

振動衝撃吸収フォーム

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は各種輸送機器,精密電子機器,音響機器,建
築,スポーツなどの分野において振動や衝撃を制御する
ことにより、動作反応速度や測定制度を向上させたり、
音質を改良させるあるいは快適性を増す目的で使用され
る振動衝撃エネルギー吸収性能のすぐれたポリ塩化ビニ
ル系発泡体に関するものである。
[従来の技術] 従来、振動エネルギー吸収材としてはブチルゴムが最
もよく使用されている。また、最近ではポリノルボルネ
ンや特殊なウレタン系エラストマーなどがより高性能で
あることが見い出され注目されている。これら振動エネ
ルギー吸収材の1次評価はその材料の粘弾性測定により
求められる貯蔵弾性率(E′)と損失係数(tanδ=損
失弾性率(E″)/貯蔵弾性率(E′))でなされる。
振動エネルギー吸収材として設計するためには損失係
数は大きければ大きいほど、また貯蔵弾性率は使用され
る形態によって最適値が存在する。これら2つの因子は
通常温度依存性が大きい。すなわち貯蔵弾性率は温度が
高くなるにつれて徐々に低下し、通常ガラス転移点を超
えた温度域から急激に低下する。また、損失係数はガラ
ス転移点を超えた温度域で最も高い値を示すがその前後
の温度域では低下する傾向が一般的である。
従って、従来よりこのような振動エネルギー吸収材に
求められる基準としては、まず材料が用いられる温度域
で高い損失係数を有することであった。一方、貯蔵弾性
率については無機、金属の充填材や軟化剤あるいはゴム
等を添加することによりかなりの幅でその値を調整する
ことができるため最適値に合わせることが可能であっ
た。それゆえ、ブチルゴムやポリノルボルネン,特殊ウ
レタン系エラストマー等は損失係数の値がそれぞれ最大
でtanδ=1.4,2.8,1.3という優れた値を示している。と
ころがこれらの素材は加工性,成形性に難があり使用範
囲が限られていた。
一方、ポリ塩化ビニル樹脂は5大汎用樹脂の1角とし
て長い歴史があり経済性はもとよりほとんどの成形加工
法が確立している。しかも非晶性樹脂であること、無機
・金属充填剤や軟化剤との複合化が容易であることなど
の長所を有している。
ポリ塩化ビニル単独の損失係数は90℃前後で約1.1の
ピーク値を有する。しかし、これに代表的な可塑剤であ
るDOPを樹脂100重量部に対して100重量部加えると損失
係数のピーク温度は約5℃となり、またピーク値も約0.
7程度に低下してしまう。この現象は、ポリ塩化ビニル
単独分子鎖の中に異種分子が混入した結果緩和時間の分
布が広がると理解されていた。ところが最近の我々の検
討の結果、ジシクロヘキシルフタレートに代表されるご
く限られた種類の可塑剤をポリ塩化ビニルに添加すると
損失係数のピーク温度が下がりしかも、ピーク値が1.6
程度にまで上昇することが見い出された。しかし、この
ジシクロヘキシルフタレートをポリ塩化ビニルに単独で
70wt%以上添加したり30wt%以下の添加量でもDOPなど
と混合するとブリードするという致命的欠点を有してい
た。また特に振動衝撃吸収材としては発泡体が多く用い
られているが、この分野ではポリ塩化ビニルペースト樹
脂が多く用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルペー
スト樹脂は通常液状可塑剤として混合してゾル状として
用いるが、ジシクロヘキシルフタレートは室温で固体で
あるため使用しにくいという欠点を有していた。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂の有する特徴を生かし
ながら、可塑剤のブリード現象がなく、優れた振動エネ
ルギー吸収性能を有する振動衝撃吸収フォームを提供す
ることを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明の要旨とするところは、骨格を形成する樹脂
が、ポリ塩化ビニル系樹脂と下記(i)の構造を有する
フタル酸エステル及び下記(ii)の構造を有するリン酸
エステルからなり、動的粘弾性測定装置にて昇温速度1
℃/min、周波数110Hzで測定した損失係数の最大値が1.0
以上を有する振動衝撃吸収フォームに関する。
R1,R2:単環式炭化水素 R2〜R5:芳香族単環式炭化水素 以下詳細について説明する。
本発明に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂とは塩化ビ
ニル単独重合体の他に酢酸ビニル,エチレンとの共重合
体、あるいはエチレン・酢酸ビニル共重合体やポリウレ
タンとのグラフト重合体また、ポリ塩化ビニルペースト
樹脂等一般にポリ塩化ビニル系樹脂として認識され得る
ものを示すが特にフォームを得るためには壁紙やクッシ
ョクフロアーとして用いられるポリ塩化ビニルペースト
樹脂が望ましい。
一般式i)の構造を有するフタル酸エステルとは、
R1,R2がC3〜C8の単環式炭化水素からなる化合物であ
る。R1,R2は同一でも異なっていてもよく、環上の水素
は他の置換基に置換されていてもよい。
具体的にはジシクロヘキシルフタレート(DCHP),ジ
メチルシクロヘキシルフタレート,ジフェニルフタレー
ト(DPP)等が挙げられ、好ましくは液状であるという
点からジメチルシクロヘキシルフタレートである。添加
量としては加工性,経済性の点からポリ塩化ビニル樹脂
100重量部に対して5重量部以上200重量部以下さらには
10重量部以上100重量部以下が望ましい。ポリ塩化ビニ
ル単独の場合周波数10Hzで動的粘弾性を測定すると約90
℃でtanδの最大値は1.1を示すものが、この範囲の添加
量に応じて温度約30℃〜80℃の範囲でtanδの最大値は
1.4から1.8程度を示す。この現象は緩和現象論の教える
ところでは材料内部の状態の均一化が進み緩和時間の分
布が狭まったと理解されるが、なぜこのような特定のフ
タル酸エステルが特異的に優れているのかは不明であ
る。
一般式(ii)の構造を有するリン酸エステルとして
は、R3〜R5がC6〜C9の芳香族単環式炭化水素からなる化
合物である。R3〜R5は同一または異なっていてもよく、
環上の水素は他の置換基に置換されていてもよい。
具体的にはトリクレジルホスフェート(TCP),トリ
キシレニルホスフェート(TXP)などが挙げられる。特
にトリキシレニルホスフェートは液状であり固体である
ジシクロヘキシルフタレートの欠点を補えるうえ単独で
ポリ塩化ビニル樹脂に添加した場合でもtanδの最大値
は約1.1程度を保持するという優れた特徴も兼ね備えて
いる。
リン酸エステルの添加量としては、加工性,経済性の
点からポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して5重量部
から200重量部さらには10重量部から100重量部が望まし
い。フタル酸エステルのブリード現象は、リン酸エステ
ルを5重量部以上加えることで顕著に抑制することがで
きる。
本組成物は、フタル酸エステルとリン酸エステルの配
合量を調整することでtanδが最大値を示す温度を室温
から80℃程度まで広範囲に設定することができ、その値
も1.2以上を保持することができるため振動エネルギー
吸収材料として極めて有用といえる。
発泡剤としてはアゾジカルボンアミド,アゾビスイソ
ブチロニトリル,4.4′オキシビスベンゼンスルホニルヒ
ドラジッドなどの有機系発泡剤をポリ塩化ビニル樹脂10
0重量部に対して0.3重量部以上20重量部以下が望まし
い。0.3重量部未満では、倍率が乏しく20重量部をこえ
ても意味はない。
また、リン酸エステルの効果によりフタル酸エステル
のブリード現象を抑制することができるうえ、ポリ塩化
ビニル樹脂のすぐれた特徴を維持している。従って本組
成物はポリ塩化ビニル樹脂が通常用いられるカレンダー
加工,圧縮成形,射出成形法等の加工方法により任意の
形状の成形品を得ることができる。特に、発泡体を得る
ためには、ポリ塩化ビニルペースト樹脂とこれら可塑剤
を混合し一端ゾル状としたものを基材の上にコートして
発泡炉にて発泡させて得ることができる。
また、本発明による樹脂組成物には通常のポリ塩化ビ
ニルに用いられる炭酸カルシウム,タルク,マイカ,グ
ラファイト等の充填材や三酸化アンチモンなどの難燃
剤、更には可塑剤等を添加することができる。さらに、
ポリ酢酸ビニルやエチレン−酢酸ビニル共重合体やアク
リロニトリル−ブタジエンゴム等ポリ塩化ビニル樹脂の
一般的改質によく用いられる高分子材料、あるいはクマ
ロン樹脂,キシレン樹脂など従来から振動エネルギー吸
収に効果があるとされている高分子材料とのブレンドも
可能である。
また、石油樹脂を添加することもtanδの向上に有効
である。
本発明に用いられる石油樹脂とはC5〜C9のオレフィン
を混合状態のまま重合して得られるものである。しか
し、石油樹脂の添加により損失係数の最大値は大きく向
上するがその効果の度合いは組成と分子量によってかな
り異なる。すなわち、石油樹脂としてはC9成分のインデ
ンとスチレンを50wt%以上含有するものが好ましく、さ
らにはインデンとスチレンとの比率はスチレンが半分以
上占めるほうが望ましい。またその数平均分子量が500
以上1500以下である方が好ましい。これらの範囲をはず
れると損失係数の値は低下する。
本発明による振動吸収材料は、自動車や産業機器など
の振動の激しい部位に直接貼りつけて振動を抑制した
り、精密機器の脚部に用いて床からの振動の伝播を防止
する目的で使用される。
また、木質板材の中間に積層させて木質床の防音性を
向上させることもできる。
[実施例] 以下、本発明を実施例をあげて説明する。
実施例1 エチレン・塩化ビニル共重合樹脂(リューロンE-220
0)[東ソー(株)社製]100重量部、TXP(トリキシレ
ニルホスフェート)[(株)大八化学工業所製]40重量
部、DCHP(ジシクロヘキシルフタレート)[大阪有機化
学(株)製]35重量部及び熱安定剤としてステアリン酸
バリウム2重量部、ステアリン酸亜鉛1重量部、発泡剤
としてアゾ系化合物(AC#R)[永和化成工業(株)
製]6.5重量部、発泡安定剤として(FL-21)[アデカ・
アーガス化学(株)社製]4重量部を混合しロール成形
機にてシート状とした。このロールシートをプレス成形
機にて厚さ1mmのフラットシートとし、動的粘弾性測定
装置(オリエンテック(株)製レオバイブロン)にて動
的粘弾性を評価した。さらにこのシートを200℃の雰囲
気にて発泡させ、厚さ5mmの発泡体を得て、衝撃吸収性
を評価した。
実施例2 塩化ビニル樹脂(リューロンペーストR-725)[東ソ
ー(株)社製]100重量部、TXP(トリキシレニルホスフ
ェート)[(株)大八化学工業所製]80重量部、DMCHP
(ジメチルシクロヘキシルフタレート)[ヘンケル白水
(株)製]40重量部、DOP(ジ−2−エチルヘキシルフ
タレート)[(株)花王社製]20重量部及び熱安定剤と
してAC-113[アデカ・アーガス化学(株)社製]2重量
部、難燃剤として三酸化アンチモン(アトックス−S)
[日本精鉱(株)社製]2重量部、発泡剤としてアゾ系
化合物(AC#R)[永和化成工業(株)製]6.5重量
部、発泡安定剤として(FL-21)[アデカ・アーガス化
学(株)社製]4重量部を混合し、ナイフコーターによ
り離型紙のうえに1mm厚みでコートし150℃1分間加熱し
ゲル化シートとし、実施例1と同一条件で動的粘弾性を
測定した。さらにこのシートを200℃の雰囲気にて発泡
させ、厚さ5mmの発泡体を得て、衝撃吸収性を評価し
た。
実施例3 実施例2の組成のうちTXP(トリキシレニルホスフェ
ート)[(株)大八化学工業所製]60重量部、DMCHP
(ジメチルシクロヘキシルフタレート)[ヘンケル白水
(株)製]20重量部、DOP(ジ−2−エチルヘキシルフ
タレート)[(株)花王社製]0重量部に変更し、実施
例1に従ってシートとフォームを作成し動的粘弾性およ
び衝撃吸収性を測定した。
比較例1 実施例2の組成のうちTXP(トリキシレニルホスフェ
ート)[(株)大八化学工業所製]0重量部、DMCHP
(ジシクロヘキシルフタレート)[大阪有機化学(株)
社製]0重量部にDOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレ
ート)[(株)花王社製]70重量部に変更し実施例1に
従ってシートとフォームを作製し動的粘弾性および衝撃
吸収性を測定した。
(損失係数の評価) 実施例1,2,3及び比較例1で得られたシートを動的粘
弾性測定装置(オリエンテック(株)社製レオバイブロ
ン)にて損失係数(tanδ)を測定した。測定条件は測
定周波数110Hz、昇温速度1℃/minにて行った。表1にt
anδの最大値とその時の温度を示す。
(発泡体の衝撃吸収性能測定) 厚さ30mmの鉄板上に厚さ3mmのコム板を敷き、その上
に前記実施例1,2,3及び比較例1で得られた発泡体を置
いた。同位置で鉄板の裏側には振動ピックアップ(Br
el&Kjr社製)を取り付け、力変換子(Brel&Kj
r社製)を取り付けた重量388.7gの鋼球を発泡体上300m
mの高さから落下させた。その時振動ピックアップと力
変換子で測定した衝撃加速度を電圧値として測定し第1
表に示した。
[発明の効果] 以上の説明から明らかな様に、特定のリン酸エステル
と特定のフタル酸エステルを添加した組成により得られ
たフォームは、表1に示すように骨格を形成した樹脂の
tanδが1.0以上と極めて大きくその結果として衝撃を伝
達する割合(振動ピックアップで検出される電圧値)衝
撃を柔らかく受けとめる性能(力変換子に検出される電
圧値)共に20%から60%の改善効果を得ている。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 27:06 (56)参考文献 特開 平1−274702(JP,A) 特開 昭59−137998(JP,A) 特開 昭63−294803(JP,A) 特開 昭62−34502(JP,A) 特公 昭46−2184(JP,B1) 特公 昭28−4342(JP,B1) 特公 昭28−4243(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 9/00 - 9/42

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】骨格を形成する樹脂が、ポリ塩化ビニル系
    樹脂100重量部に対して下記(i)の構造を有するフタ
    ル酸エステル5〜200重量部及び下記(ii)の構造を有
    するリン酸エステル5〜200重量部からなり、動的粘弾
    性測定装置にて昇温速度1℃/min、周波数110Hzで測定
    した損失係数の最大値が1.0以上を有する振動衝撃吸収
    フォーム。 R1,R2:単環式炭化水素 R3〜R5:芳香族単環式炭化水素
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