JP3041855B2 - 酸化ルテニウム系薄膜のエッチング方法 - Google Patents

酸化ルテニウム系薄膜のエッチング方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は各種電子機器に利用される酸化ルテニウム系
薄膜のエッチング方法に関するものである。
従来の技術 各種電子機器に於て酸化ルテニウム系抵抗体はハイブ
リッドIC,サーマルヘッド,チップ抵抗,抵抗ネットワ
ーク部品,センサー等に広く使われている。これらの酸
化ルテニウム系抵抗体は一般にRuO2を主成分とする無機
物の粉末をガラスフリット,樹脂,有機溶剤と混合し、
ペースト化したものを印刷焼成することによって作成さ
れる厚膜抵抗体である。
これらは印刷によって作成されるため、当然パターン
形成は可能であるが、パターン幅は100μm程度が限界
であり、精度良く微細なパターンを出すことは不可能で
ある。また、これらは無機バインダーを使った分散系の
厚膜であり、薄膜に比べ抵抗特性のバラツキが大きく、
放熱性や耐電力性が劣っているものであった。
一方、薄膜抵抗体は一般に真空装置を使って作成され
るため、パターン形成するためには薄膜抵抗体がエッチ
ングできることが必要である。厚膜と同様、印刷,焼成
により薄膜を得る方法はあるがパターンの精度や再現性
は厚膜と同程度のものしか得られない。エッチングには
大きく分けてウェットエッチングとドライエッチングが
ある。ウェットエッチングとは液槽中で化学薬品溶液に
よりエッチングする方法である。また、ドライエッチン
グとは中性ガス,気相のイオン,ラジカル等によりエッ
チングする方法で、そのうち気体をプラズマ化させてエ
ッチングする方法をプラズマエッチングと呼んでいる。
薄膜抵抗体は厚膜に比べ抵抗体としての特性は優れて
いるが、RuO2が酸に不溶であり適当なエッチャントも無
いため、酸化ルテニウム系薄膜抵抗体はウェットエッチ
ングによるパターンだしができないという欠点があっ
た。また、酸化ルテニウム系薄膜に関するドライエッチ
ングの報告例としてCF4によるプラズマエッチングが有
効であることが見いだされている。
発明が解決しようとする課題 しかし、RuO2薄膜は抵抗率が500μΩ・cm程度であ
り、薄膜抵抗体として使用するには添加物を加えて抵抗
値を増加させる必要がある。Zr,Al,Ca,Ba等を加えて抵
抗値を増加させた場合、Ruに対する組成比が10at%をこ
えるとエッチング速度が大きく減少してしまう。そのた
め、抵抗値を広範囲に制御し、なおかつ精度よくファイ
ンパターンを得ることは不可能であった。それゆえに本
発明の目的は広範囲に抵抗値を制御できる酸化ルテニウ
ム系薄膜及びそのパターンニング方法を提供し、特性に
優れた酸化ルテニウム系薄膜のファインパターンを作成
しようとするものである。
課題を解決するための手段 そして上記目的を達成するために、本発明はTi,Si,M
o,W,Ptより選ばれた1種類または複数種類の元素とRuと
Oからなる酸化ルテニウム系薄膜とすることにより抵抗
値を調整し、それを少なくとも構造中にFを持つガスを
用いてプラズマエッチングしてパターン形成する方法に
関するものである。
作用 上記組成およびエッチング方法を取ることにより、酸
化ルテニウム系薄膜の抵抗値を広範囲に制御し、そのフ
ァインパターンを作成することができる。
実施例 以下本発明の実施例について説明する。
即ち本発明はTi,Si,Mo,W,Ptより選ばれた1種類また
は複数種類の元素とRuとOからなる酸化ルテニウム系薄
膜とすることにより抵抗値を調整し、それを少なくとも
構造中にFを持つガスを用いてプラズマエッチングして
パターン形成することを特徴とする。
RuにTi,Si,Moのうち1種類を添加して2元系酸化物と
した場合のシート抵抗値と組成比の関係を下記表1に示
す。100Ω/□−300MΩ/□の抵抗値が得られており、
上記添加物により広範囲に抵抗値が制御できるというこ
とが言える。
プラズマエッチングには様々な構成の装置が使われて
いるが、本発明では第1図に示すように反応室11内に平
行平板型電極であるカソードとアノード12及び14を持
ち、カソード12上に被エッチング物13をおく構成を取る
リアクティブイオンエッチング装置(高周波電力周波数
13.56MHz)を用いている。リアクティブイオンエッチン
グは以下のような特徴を持つ。
イオンがカソード12上のイオンシースで加速される
ため物理的効果によるエッチングがおこる。
イオンが方向性を持つのでアンダーカットが少な
い。
反応性のガスを用いるので、不活性ガスを用いるス
パッタエッチングに比べマスクや基板に対する選択比が
大きい。
ドライエッチングのエッチング機構は基本的には物理
的反応,化学的反応,物理・化学複合反応の3つに分け
られる。リアクティブイオンエッチングの場合は物理・
化学複合反応によりエッチングがすすむ。
本発明はTi,Si,Mo,W,Ptより選ばれた1種類または複
数種類の元素とRuとOからなる酸化ルテニウム系薄膜が
CF4によりリアクティブイオンエッチングされることを
発見したことを基礎とする。
なお15は試料台、16は絶縁物、17は高周波電源、18は
ガス供給系、19は排気系である。
以下の条件で2元系酸化物薄膜、Ru−Ti−O(組成比
Ru50Ti50OXat%)、Ru−Si−O(組成比Ru50Si50OXat
%)、Ru−Mo−O(組成比Ru50Mo50OXat%)に対するエ
ッチング速度のCF4流量依存性を測定した結果を第2図
に示す。流量:10−40sccm、圧力:0.08torr、高周波電
力:250W、電極温度:20℃、電極間隔:70mm。CF4流量の増
加にともないエッチング速度が増加しており、ガス供給
律速になっていることを示している。反応室11内の圧力
は一定であり、単なるスパッタエッチングであるならば
ガス供給律速にはならないはずである。これは化学反応
により揮発性生成物ができているためと考えられ、単な
るスパッタ効果によるエッチングではなくリアクティブ
イオンエッチングが起こっていることを示している。次
にCF4とArのエッチング速度を流量10sccmで比較した結
果を第3図に示す。流量以外の条件は第2図の場合と同
じである。第3図のようにいずれもCF4を用いた場合の
方がエッチング速度が大きい。プラズマ中の生成種とし
ては、F,CF3 ,F-,CFX +(x=1−3)が存在する
(*は活性化をしめす)。この内スパッタリング効果に
寄与するのはCFX +(x=1−3)だけであり、CFX +(x
=1−3)のSiに対するスパッタ率についてはイオンエ
ネルギーの低い領域(1000eV以下)ではCあるいはCFX
の堆積の為Ar+よりスパッタ率が低くなることが報告さ
れている。本実施例によるエッチングのイオンのエネル
ギーは数100eVであるので、このことはC,F,CFX等の堆積
は起きず、表面では化学反応によりC,F,Ru,Ti,Si,Mo,O
に関する揮発性生成物ができていることを示していると
考えられる。Ruの揮発性生成物としてはRuCXFYOZ,RuCXF
Y,RuFX等が考えられるが、SiO2の場合などではCの含ま
れたSiの揮発性生成物は存在せず、CFXに含まれるCは
ほとんどがSiO2中のOと反応してCOXとなっていること
が確認されている。よって、これら酸化ルテニウム系薄
膜でも膜中のOとCFXが同様の反応を起こしていること
は充分考えられ、Ruの揮発性生成物はRuFXである可能性
が高い。既知のフッ化物の中では次にRuF5が融点85.6
℃,沸点227℃、RuF6が融点50.4℃とRuの化合物の中で
は比較的低く、気化しやすい物質である。同様にSi,Ti,
Moに関する揮発性生成物もフッ化物であると考えられ
る。特にSiはフッ素系のガスを用いたドライエッチング
の場合、揮発性生成物がSiF4(沸点−86.4℃)であるこ
とは質量分析等で確認されている。また、Ti,Moに関し
ても気化しやすいフッ化物TiF4(沸点136℃)、MoF
6(沸点35℃)が存在し、これらが揮発性生成物である
と考えられる。
第4図に組成によるエッチング速度の変化を示す。エ
ッチング条件は流量:40sccm、圧力:0.08torr、高周波電
力:250W、電極温度:20℃、電極間隔:70mm。添加物の組
成比が増えるにしたがってエッチング速度が増加してお
り、Ti,Mo,Siの順に増加の割合が大きい。これはフッ化
物の沸点の差を反映していると考えられ、同様の現象は
第3図にもみられる。エッチング速度は100−250Å/min
なので1000Å程度の膜厚であれば10min以内にエッチン
グでき、薄膜抵抗体に対しては充分実用になる速度であ
る。
同じ様にCF4を用いても第5図に示すようなバレル型
のプラズマエッチング装置では本発明による酸化ルテニ
ウム系薄膜はエッチングされなかった。バレル型の反応
室52の場合、被エッチング物51はグロー放電中におか
れ、接地とは実質的に切り放されており、被エッチング
物51の表面電位はその回りのグローの電位と10V程度の
差しかない。リアクティブイオンエッチングの場合イオ
ンシースの電位勾配は数100Vであるので、本発明による
酸化ルテニウム系薄膜は主に数100eV程度の運動エネル
ギーを持つCFX +(x=1−3)によりエッチングされる
と考えられる。このことは平行平板型のリアクティブイ
オンエッチング装置だけでなくイオンビーム型のプラズ
マエッチング装置でもCF4によるエッチングが可能であ
ることを示している。
また、リアクティブイオンエッチングではスパッタ効
果によるエッチングも起こるため酸化ルテニウムに添加
物を加えた場合でもそれが少量であればCF4プラズマだ
けでもエッチングされる。
なお、以上の実施例ではTi,Si,Moを添加物として用い
ているが、これら以外の揮発性を有するフッ化物を形成
する金属元素、W,Ptを用いても同様の効果を得ることが
できる。
以下具体的実施例について説明する。
(実施例1) 棚桂酸ガラス基板(コーニング社製7059)にRuO2/TiO
2焼結体をターゲットとしてRFスパッタにより500ÅのRu
−Ti−O薄膜(組成比Ru50Ti50OXat%)を形成し、その
上にポジレジスト(東京応化製OFPR)を塗布してフォト
リソプロセスによりパターン幅20μm、ピッチ5μmの
マスクを形成した。前記リアクティブイオンエッチング
装置によりCF4流量30sccm、圧力0.08torr、高周波電力2
50W、エッチング時間5minの条件でエッチングを行った
ところ、得られたパターン幅の精度は18±0.5μmであ
った。また同じ基板上にRu−Si−O薄膜(組成比Ru70Si
30OXat%),Ru−Mo−O薄膜(組成比Ru60Mo40OXat%),
Ru−Ti−Si−O薄膜(組成比Ru50Ti40Si10OXat%)を混
合物の焼結体ターゲットをもちいてRFスパッタにより50
0Å形成し、同様の方法でパターンニングを行ったとこ
ろ、得られたパターン幅の精度はどれも18.0±0.5μm
であった。リアクティブイオンエッチングは前述のよう
にアンダーカットが少ないという特徴があるため、この
様にファインパターンを精度良く得ることができ、本発
明のエッチング方法はハイブリッドIC,サーマルヘッ
ド,センサー等の酸化ルテニウム系薄膜抵抗体パターン
の微細化にきわめて有用であるということができる。
(実施例2) 第6図aに示すようにアルミナ基板61上にガラスグレ
ーズ層62を形成したいわゆるグレーズドアルミナ基板63
上に実施例1と同様の方法で500ÅのRu−Ti−O薄膜発
熱抵抗体(組成比Ru60Ti40OXat%)64を形成し、この上
にAuからなる配線用導体膜65を順次積層形成しポジレジ
スト(東京応化製OFPR)を全面に塗布し、ポジレジスト
膜66を形成した。次に、フォトリソプロセスによりポジ
レジストマスク67を形成し、配線用導体膜65をエッチン
グ除去して第6図bに示すような配線パターン68を得
た。薄膜発熱抵抗体64のシート抵抗値は1.09KΩ/□で
あった。サーマルヘッドに使われる薄膜抵抗体は駆動回
路の電流容量の関係から、1KΩ/□−3KΩ/□のシート
抵抗値が通常要求されるので、本発明による抵抗値を広
範囲に制御できる薄膜発熱抵抗体64は極めて有用であ
る。さらに、このポジレジストマスク67をマスクとして
CF4流量30sccm、圧力0.08torr、高周波電力250W、エッ
チング時間5minの条件で前記リアクティブイオンエッチ
ング装置によりエッチングを行い、その後ポジレジスト
マスク67を除去して第6図cのような薄膜発熱抵抗体の
パターン69を得た。ポジレジストマスク67に対するアン
ダーカットの量も0.5μm以下で殆ど無視できる程度で
あった。次に配線パターン68の不要部分をフォトリソプ
ロセスにより除去し、SiCによる耐摩耗保護膜を形成し
た。その構成を第7図に示す。71がアルミナ基板、72が
ガラスグレーズ層、73aおよび73bが配線用導体膜、74が
薄膜発熱抵抗体、75が耐摩耗保護膜。なお説明の都合上
耐摩耗膜75を一部形成していない図としている。薄膜発
熱抵抗体74は8本/mmの密度で並んでおり、その抵抗値
バラツキは±1パーセント以内であった。抵抗体膜74に
TiC/SiO2を使いウェットエッチングにより同様の構成を
もつ薄膜型サーマルヘッドを作成した場合抵抗値バラツ
キは±10パーセント以内であり酸化ルテニウム系薄膜抵
抗体をもちいて本発明によるパターンニング方法で作成
したサーマルヘッドの方が遙かに優れている。
また、両者をパルス幅1m sec、パルス周期10m secで
連続パルス印加を行い耐久性を比較してみた。6*104
回パルスを印加した際抵抗値変動10パーセントを与える
薄膜抵抗体の単位面積当りの電力(W/mm2)(→破断電
力)を比べると本発明のパターンニング方法により作成
したサーマルヘッドは70W/mm2、従来型は40W/mm2と大き
く向上した。また、Ru−Ti−O薄膜にかえてRu−Si−O
薄膜(組成比Ru90Si10OXat%,シート抵抗値720Ω/
□)を500Åグレーズドアルミナ基板上に形成し、同様
の方法でサーマルヘッドを作成したところ、抵抗値バラ
ツキは±1%以内、破断電力は68W/mm2とほぼ同様の性
能であった。これは本発明によるサーマルヘッドは酸化
物の抵抗体を使っているので耐酸化性等の環境安定性が
優れているためと考えられた。
この様に従来は作成不可能であった酸化ルテニウム系
薄膜抵抗体のファインパターンを本発明によるエッチン
グ方法により作成することで、従来より優れた特性を持
つサーマルヘッドを作成することができる。
本実施例においてはRFスパッタにより薄膜を形成して
いるが、反応性蒸着や有機金属の熱分解により形成され
た薄膜に対しても有効であることは言うまでもない。
発明の効果 本発明は従来知られていなかった酸化ルテニウム系薄
膜のエッチング方法に関するものであり、これにより酸
化ルテニウム系薄膜のファインパターンを精度良く得る
ことができ産業上の効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はリアクティブイオンエッチング装置の模式図、
第2図はエッチング速度のCF4流量依存性を示した図、
第3図はエッチング時間とエッチング量の関係とCF4とA
rについて比較した図、第4図は組成によるエッチング
速度の変化を示した図、第5図はバレル型プラズマエッ
チング装置の模式図、第6図はサーマルヘッドの薄膜発
熱抵抗体のパターンニング工程を示した模式図、第7図
は薄膜型サーマルヘッドの構成を示した斜視図である。 61……アルミナ基板、62……ガラスグレーズ層、63……
グレーズドアルミナ基板、64……薄膜発熱抵抗体、65…
…配線用導体膜、66……ポジレジスト膜、67……ポジレ
ジストマスク、68……配線パターン、69……薄膜発熱抵
抗体のパターン。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−198101(JP,A) 特開 昭63−278204(JP,A) 特開 昭63−164301(JP,A) 特開 昭53−9543(JP,A) 特開 昭59−155066(JP,A) 特許2679148(JP,B2) 特許2679201(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01C 7/00 B41J 2/335 C23F 4/00 H01C 17/06 H01L 21/3065

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ti,Si,Mo,W,Ptより選ばれた1種類または
    複数種類の元素とRuとOからなる酸化ルテニウム系薄膜
    を、少なくとも構造中にFを持つガスを用いて、リアク
    ティブイオンエッチングすることを特徴とする酸化ルテ
    ニウム系薄膜のエッチング方法。
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