JP3040888B2 - オレフィンオキサイドの製造方法 - Google Patents

オレフィンオキサイドの製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オレフィンオキサイ
ド、特には、α−オレフィンのエポキシドの製造方法に
関する。α−オレフィンオキサイドは、各種界面活性剤
原料、ポリマー改質剤等の用途を持ち、工業的に極めて
重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】オレフィン類を有機過酸によって相当す
るエポキシドに変える事は、かなり以前から知られてい
る。有機過酸としては、古くは、過安息香酸や、過フタ
ール酸等が使用されていたが、これらの方法で工業的に
オレフィンオキサイドを得るには、これらの過酸を合成
する工程が必要であり、かつ、これらの母体酸を回収す
るには、多大な経費が必要とされた。
【0003】また、D.Swernらは、過酢酸の酢酸
溶液を用い、α−オレフィンオキサイドの合成を行って
いるが、(J.Am.Chem.Soc.68,150
4,(1964))この場合には、過酢酸溶液を調整す
るために、高濃度(90%)の過酸化水素を必要とする
ことや、反応系が均一となるため、反応後多量の水を加
え、エポキシドを抽出する必要があること等、工業的に
実施するには、大きな問題があった。これらの問題を解
決するために、近年においては、鉱酸等の触媒酸の存在
下、過酸化水素と酢酸とで、反応中に、その場で過酢酸
を発生させながらエポキシ化する、いわゆる “in-sit
u 法” がエポキシ化の主流となって採用されている。
【0004】このin-situ 法は、酢酸等のカルボン酸の
使用量が原料オレフィンに対して、50モル%程度の小
量で十分反応させる事が出来る点や、簡易な装置で対応
出来る点等、様々な利点を持ち、工業的に極めて意義の
あるプロセスである。in-situ 法は、植物油のような二
置換二重結合を対象とする場合に広く適用される方法で
あるが、α−オレフィンの場合には一置換オレフィンで
あるので、反応性が悪く、種々の問題を持っている。
(例えば、Swern,D.,”Organic Pe
roxides”Vol.1(1970)Wiley−
Interscienceにおいて、アルキル置換基が
1つのオレフィン(α−オレフィン)は、アルキル置換
基2個を有するオレフィンに比較し、およそ22.5分
の1の反応性しか持っていない事が述べられている。ま
た、in-situ 法の欠点として、エポキシ環の開裂反応に
よる副反応が起こりやすい事があり、これを防ぐため
に、反応時には、有機溶剤を使用するのが一般的であ
る。
【0005】例えば、特開昭57−145866号公報
では、ベンゼンを使用しており、ドイツ特許15680
16号公報では、ベンゼンあるいはトルエンを使用して
いる。また、特開昭51−36448号公報において
は、クロロホルム等の塩素系溶剤を使用することを提唱
している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ベンゼ
ンは、労働安全衛生法で定める特定化学物質であり、そ
の毒性上、取扱には、特別な注意が必要である。トルエ
ンも毒性を有し、また静電気を帯びやすく、トルエンに
よる火災事故例は、数多く報告されている。特に過酸化
水素酸化反応においては、反応によって発生する熱量も
多く、かつ酸素ガスが発生する系であるため、火災危険
性は高い。
【0007】また、塩素系溶剤は、それ自体有毒であ
り、火災の際には、ホスゲン、塩化水素等の毒性ガスを
発生する危険性があり、また近年においては、オゾン層
破壊の原因として地球環境問題上の汚染物質の中に挙げ
られるようになっている。従来、生産性を重視する立場
から、これら危険性のある有機溶剤が使用されることが
一般的であるが、近年は、労働環境の質的向上や本質的
安全性が追求されている。
【0008】また、用途によっては、溶剤の微量残渣が
製品の品質上大きな問題となる事があり、この面からも
有機溶剤を全く使用しないエポキシ化方法が望まれてい
る。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、有機
溶剤の使用なしに、in-situ 法エポキシ化反応を選択的
に起こす方法を見出すことにある。さらに、反応の選択
性は、反応終了後の洗浄時の、油相と水相の分離性に大
きく係わっており、選択性の悪い反応終了物は、洗浄時
にエマルジョン化を起こし、工程上致命的な欠点を持つ
ことが多い。言い換えれば、いかに反応が収率的にうま
く行ったとしても、反応終了後の洗浄時の分離が良好で
なければ、プロセスとしては完成しているとは言えない
のである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特に無溶
媒条件下において、酸触媒の他に、中性塩を添加してお
くと、副反応が抑えられ、反応の選択性を向上させるこ
とが出来る事を見出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、分子内に炭素原子を
6〜30個有するα−オレフィン類をエポキシ化する
際、酢酸、鉱酸の存在下、過酸化水素を添加し、反応系
の中で過酢酸を生成せしめながらエポキシ化反応をおこ
なわせる方法(in−situ法)において、中性塩
を、水相を形成する成分(過酸化水素、酢酸、鉱酸、
水、塩)中の組成比率として、2〜30重量%の範囲で
添加し、かつ水相のpHが0〜1の範囲を維持する事を
特徴とするα−オレフィンのエポキシ化方法である。上
記の如く、本発明は、有機溶剤を使用せずに、オレフィ
ンのエポキシ化を行うものであるが、必要がある場合
は、適当な溶媒を使用することは、全く支障ない。
【0011】本発明の対象とするオレフィンは、C6
30の直鎖の末端に二重結合を有するα−オレフィンで
ある。本発明の方法で用いる酸触媒は、in-situ 法で一
般的に使用されるものが適用されるが、特には、硫酸が
良い。
【0012】カルボン酸としては、酢酸を使用する。過
酸化水素としては、25〜75%濃度のものが使用可能
であるが、特には、50〜70%のものを使用するのが
良い。
【0013】本発明で用いる中性塩としては、硫酸ナト
リウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナト
リウム、塩化ナトリウム等の無機塩類が有効であるが、
特には、硫酸ナトリウムが良い。
【0014】また、これらの酸成分、塩基成分を、アル
カリ体やフリーの酸の形で反応直前に加え、反応系の中
で、塩形成させ使用する事も可能である。
【0015】塩類の使用量は、まず、触媒酸(硫酸等)
に対する当量比として、0.5〜4.5,さらには、1.
8〜2.2当量が良い。
【0016】さらに、水相を形成する成分中の組成比率
として、中性塩が2〜30重量%を占める事が必要であ
り、特には15重量%以上が良く、中性塩が、水相中で
飽和となっている事が望ましい。
【0017】中性塩の添加により、水相中のpHを0〜
1の範囲に保つ事が必要である。pHが0以下の場合に
は、副反応が多くなり、選択性が悪くなる。また、pH
が1以上であると、反応速度が遅く極めて効率が悪くな
る。
【0018】反応温度は、50〜90℃が良く、特に
は、60〜80℃の範囲が良い。
【0019】
【作用】in-situ 法において、鉱酸等の強酸の役目は、
過酸化水素とカルボン酸とによる過酸の生成の促進にあ
る。従って、単に反応を促進するという立場からのみ考
えた場合には、強酸の酸性度が強いほど有利であるとい
うことになる。しかしながら、この強酸触媒は、同時に
エポキシ環の開裂反応や重合反応の触媒としても働く。
故に、この相反する要求をいかに満足していくかに、反
応の選択性が掛かってくるわけである。
【0020】本発明においては、水相中のpHを0〜1
の範囲に保つ事が重要であり、中性塩を用いず、通常の
in-situ 法条件下では、pHは0以下である。本発明に
おける塩類の添加は、過酸形成の触媒性能の低下をあま
り起こさせないで、かつ、副反応を抑制する様な酸性度
を与える働きを持つものと推定される。さらに、本発明
においては、中性塩の濃度を2重量%以上に高める事に
より、水相中のオレフィンオキサイド濃度を低下せし
め、もって水相中の副反応を抑制し、結果として全体の
副反応を抑制する事を可能にしている。
【0021】
【発明の効果】本発明の方法に従えば、無溶媒条件下
で、選択率良くエポキシ化反応を進めることが出来る。
また、反応終了後の洗浄工程において、有機溶剤の使用
無しでも油相と水相の分離状態は良好であることも、本
発明の大きな利点である。これによって、製造工程にお
ける、有機溶剤に起因する火災危険性及び人体への有害
性は、本質的に解決されることになる。また、製品中
の、有機溶剤からもたらされるコンタミネーションは、
皆無であり、品質面でも優れた製品を生産することが可
能となる。このように、本発明の持つ工業的意義は大き
い。以下に、本発明の実施例を示す。
【0022】
【実施例】
実施例1〜7 撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた500容の反
応フラスコ中に、1.0モルのα−オレフィン、酢酸3
0.g(0.5モル)、25%硫酸7.84g(正味1.9
6g)、及び60%過酸化水素68.03g(1.2モ
ル)を仕込み、70℃、300rpmの条件下で反応さ
せた。12hr後、反応混合物を油相と水相に分離し、
油相の一部を取り、ガスクロマトグラフィーで分析し、
生成物の濃度を調べ、残存率、収率等を計算した。
【0023】得られた結果を以下の表1に示す。なお表
中のジオールとは、エポキシドに水が付加して生成する
アルカン−1,2−ジオールであり、その他の副生物の
生成率は、100−(オレフィン残存率+エポキシド収
率+ジオール生成率)で計算している。また、エポキシ
化選択率は、エポキシド収率/(100−オレフィン残
存率)×100で計算した。また、反応開始直後の水相
のpH(20℃)を測定し、その結果を表中に記載し
た。さらに、反応後、水で2回、0.5%のNaOH水
で一回、さらに水で2回洗浄(それぞれ200mlを使
用。)し、その時の油相と水相の分離状態を観測し、表
中に記載した。
【0024】実施例8〜15 硫酸として、50%硫酸14.80g(正味7.4g)を
使用した他は実施例1〜7と同様にして反応させ、分析
した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0025】比較例1〜9 塩類の種類、鉱酸の種類等を変化させた他は実施例1〜
7と同様にして反応させ、分析した。得られた結果を以
下の表2に示す。
【0026】比較例10 1−オクテン 1.0モルを実施例1と同様に反応させ
た。ただし、酢酸の代わりに、23gの98%ギ酸
(0.5モル)を使用し、硫酸酸は使用せず、硫酸ナト
リウム(無水)12g(0.084モル)及びギ酸ナト
リウム7.6g(0.11モル)を添加して反応させた。
また、反応温度は、40℃である。
【0027】
【表1】
【表2】
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−320150(JP,A) 特開 平5−247193(JP,A) 特開 昭64−31774(JP,A) 特開 昭62−230778(JP,A) 特開 昭55−110681(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 301/16 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内に炭素原子を6〜30個有するα
    −オレフィン類をエポキシ化する際、酢酸、および鉱酸
    の存在下、過酸化水素を添加して、反応系の中で過酢酸
    を生成せしめながらエポキシ化反応を行わせる方法(i
    n−situ法)において、中性塩を、水相を形成する
    成分(過酸化水素、酢酸、鉱酸、水、および塩)中の組
    成比率として、2〜30重量%の範囲で添加し、かつ水
    相のpHを0〜1の範囲を維持する事を特徴とするα−
    オレフィンオキサイドの製造方法。
  2. 【請求項2】 中性塩が、硫酸ナトリウム、硫酸カリウ
    ム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、あるいは塩
    化ナトリウム等の無機塩類である請求項1記載の方法。
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