JP3040708B2 - ソーダ石灰系ガラスの製造方法 - Google Patents

ソーダ石灰系ガラスの製造方法

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    • C03C3/083Glass compositions containing silica with 40% to 90% silica, by weight containing aluminium oxide or an iron compound
    • C03C3/085Glass compositions containing silica with 40% to 90% silica, by weight containing aluminium oxide or an iron compound containing an oxide of a divalent metal
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ソーダ石灰系ガラ
スの製造方法に関し、特にガラス原料を溶融する際に硫
化ニッケル(NiS)がガラス素地中に生成するのを効
果的に抑制し、高品質のガラス製品を得ることが可能な
ソーダ石灰系ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から行われているソ−ダ石灰系ガラ
スの製造方法では、ガラス原料を溶融窯で1500℃近
い高温で溶融する過程で、溶融窯内部に使用されている
ステンレス中のニッケル(Ni)成分やガラス原料中に
不純物として存在するニッケル(Ni)を含む金属粒子
(例えばステンレス粒子)が溶融ガラス中に混入し、ニ
ッケル(Ni)成分とガラス原料として使用される芒硝
(Na2SO4)中の硫黄(S)成分が反応して、溶融成
形されたガラス製品中に硫化ニッケル(NiS)の微小
な異物として存在することがある。硫化ニッケル(Ni
S)の異物の存在頻度はガラス製品の10数tに1個程
度と非常に低く、また球状を呈しており粒径が0.3m
m以下と非常に小さいため、製造ライン上での検出は非
常に難しい。
【0003】ところで、ソ−ダ石灰系ガラスの素板は、
加工して建材用ガラスまたは自動車用の強化ガラスとす
るために、軟化点近くまで加熱した後に急冷してガラス
板の表面層に圧縮応力を発生させている。
【0004】強化工程で製造され常温に戻された強化ガ
ラス中に硫化ニッケル(NiS)が溶融欠点として含ま
れる場合には、約350℃以上で安定なα相が不安定な
相として存在する。前記α相は常温では安定に存在でき
ないため、時間の経過とともに常温で安定なβ相に相転
移する。この相転移によって硫化ニッケル(NiS)は
体積が膨張し、その結果、硫化ニッケル(NiS)が含
まれているガラス板はクラック(破損)を生じる。強化
ガラスはガラス板の厚み方向の内部約2/3の部分に引
張応力層が存在するため、引張応力層におけるNiS−
α相のβ相への相転移によりクラック(破損)が急速に
進展してガラス板の自然破損に至る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような強化ガラス
の自然破損を防止するために、強化工程で製造され常温
に戻された強化ガラスを再び焼成炉(ソーク炉)の中に
挿入して、300℃以下の温度に加熱し一定時間保持す
ることによって、強化ガラス中に硫化ニッケル(Ni
S)が含まれている場合には、硫化ニッケル(NiS)
を不安定なα相(約350℃以上で安定なα相)から約
300℃以下で安定なβ相に相転移させて体積膨張を生
じさせ、強化ガラスを強制的に破損させることによっ
て、硫化ニッケル(NiS)の異物を含む不良品を除去
する方法が知られている(ソーク処理という)。しかし
ながら、このような熱処理を中心とした工程作業を行う
ことは、昇温に多くの時間と熱エネルギーを費やすため
製造コストのアップに繋がり、また納期短縮や生産性向
上の大きな障害となっている。
【0006】従って、本発明の目的は、上記問題点を解
消し、ガラス原料の溶融時に硫化ニッケル(NiS)が
生成されるのを効果的に抑制することができるソーダ石
灰系ガラスの製造方法を提供するところにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕 この目的を達成するための本発明のソーダ石灰系ガラス
の製造方法の特徴手段は、ガラス原料中に含有されるニ
ッケル(Ni)系化合物及び/または前記ガラス原料の
溶融過程で混入するニッケル(Ni)系化合物に起因し
て溶融成形されたガラス中に生成される硫化ニッケル
(NiS)を、前記ガラス原料に硝酸亜鉛(Zn(NO
3 2 ・6H 2 O)、硫酸亜鉛(ZnSO 4 またはZnSO
4 ・7H 2 O)、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛を微量添
加させることにより抑制することを特徴とするソーダ石
灰系ガラスの製造方法である。
【0008】本発明において、前記ハロゲン化亜鉛とし
てはフッ化亜鉛(ZnF2・4H2O)、臭化亜鉛(Zn
Br2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、ヨウ化亜鉛(ZnI
2)を、また前記有機亜鉛としては安息香酸亜鉛(Zn
(C65CO22)、酢酸亜鉛(Zn(CH3CO22
・2H2O)または燐酸亜鉛(Zn3(PO42・4H2
O)を挙げることができる。
【0009】また、ガラス原料の総重量に占める前記硝
酸亜鉛(Zn(NO32・6H2O)の重量百分率は
0.01〜0.15%の範囲であることが好ましく、ま
た前記ガラス原料の総重量に占める前記硫酸亜鉛(Zn
SO4またはZNSO4・7H2O)の重量百分率は0.
01〜0.15%の範囲であることが好ましい。
【0010】なお、本発明においてニッケル(Ni)系
化合物は、溶融窯内部に使用されているステンレス中の
ニッケル(Ni)成分やガラス原料中に不純物として存
在するニッケル(Ni)を含む金属粒子(例えばステン
レス粒子)等を含むものである。
【0011】また、本発明においては着色成分として微
量の酸化第二鉄(Fe23)及び/または微量のセレン
(Se)がガラス原料中に添加されていてもよい。本発
明により製造されたソ−ダ石灰系ガラスの用途として
は、板ガラス以外にもビンガラスや電球用ガラス等その
利用範囲は広く、要するにソ−ダ石灰系ガラスであれば
全ての用途が対象となる。なお、一般的なソ−ダ石灰系
ガラスのガラス組成範囲は以下の通りである。 成分 濃度(重量%) SiO2 71〜73 Al23 1.5〜1.8 Fe23 0.02〜0.05 MgO 4.0〜4.5 CaO 8.0〜10.0 Na2O 13〜14 K2O 0.5〜1.5 SO3 0.1〜0.5
【0012】〔作用〕 前記のように、ソ−ダ石灰系ガラス中に存在する硫化ニ
ッケル(NiS)の異物は、ガラス原料中に混入したニ
ッケル(Ni)を含む金属粒子や溶解窯に使用されてい
るステンレス中のニッケル(Ni)成分がガラス原料と
して使用される芒硝(Na2SO4)中の硫黄(S)成分
と高温状態のガラス化反応の過程で生成されるが、本発
明のソ−ダ石灰系ガラスの製造方法の特徴手段によれ
ば、予めガラス原料中に硝酸亜鉛(Zn(NO 3 2 ・6
2 O)、硫酸亜鉛(ZnSO 4 またはZnSO 4 ・7H 2
O)、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛を微量添加させて
おき、このガラス原料を溶融させるものであるから、溶
融時における前記ニッケル(Ni)と硫黄(S)の反応
による硫化ニッケル(NiS)の生成の低減または完全
消滅に十分な効果を得ることが可能である。
【0013】すなわち、ガラス原料中に硝酸亜鉛(Zn
(NO32・6H2O)を微量添加させた場合には、ガ
ラス化反応での溶融雰囲気の酸化還元の状態を酸化状態
にすることができ、硫化物は硫酸塩となるため硫化ニッ
ケル(NiS)の生成を抑制することができる。
【0014】また、ガラス原料中に硫酸亜鉛(ZnSO
4またはZnSO4・7H2O)を微量添加させた場合に
は、ガラス原料の溶融時に酸化作用によって硫酸塩の形
成が促進されるため、一旦形成された硫化ニッケル(N
iS)が硫酸ニッケル(NiSO4)の硫化塩となり、
さらにそれらの分解が促進されて、結果として硫化ニッ
ケル(NiS)の生成を大幅に抑制することができる。
【0015】実使用のフロート式溶解窯での硫化ニッケ
ル(NiS)の異物の存在頻度は、ガラス製品10数t
あたり1個程度であり、ガラス製品中のニッケル(N
i)成分の含有量も10ppm以下と非常に少ない。従
って、ガラス原料中に添加させる硝酸亜鉛(Zn(NO
32・6H2O)、硫酸亜鉛(ZnSO4またはZnSO
4・7H2O)、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛の量は微
量で十分であり、硫化ニッケル(NiS)の生成の低減
または完全消滅に十分な効果を得ることが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて説明する。
【0017】実使用のフロート式溶融窯において、ガラ
ス原料の溶融時にニッケル(Ni)系の金属が硫黄
(S)と反応して硫化ニッケル(NiS)が生成される
場合を想定した再現実験を行った。
【0018】まず、表1に示す各原料を混合して200
gのガラス原料を調整した。さらに、この調整されたガ
ラス原料を7セット準備した。次いで、前記各ガラス原
料中にニッケル(Ni)金属の粉末(粒径149μm)
を、表2に示すようにガラス原料の総重量に占める重量
百分率(添加割合)が0.00875〜0.07%の範
囲で各々添加させ、7種類のニッケル(Ni)金属粉末
入りのガラス原料を調整した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】ニッケル(Ni)金属の粉末を添加させた
前記各ガラス原料をアルミナ製坩堝(容量250cc)
に入れ、このアルミナ製坩堝を600℃で30分間予備
加熱した後に、1370℃に保持した電気炉内に挿入し
て10分間で1400℃まで昇温した。さらに、この温
度で2.2時間保持した後に電気炉内から取り出し、キ
ャストしたものを試料ガラス1〜7とした。表2は、各
試料ガラスにおける硫化ニッケル(NiS)の個数
(個)、最大径(μm)、ガラス重量(g)、前記ガラ
ス重量あたりの硫化ニッケル(NiS)の個数(個)を
示したものである。前記硫化ニッケル(NiS)の個数
の測定は実体顕微鏡を用いて行った。測定の結果、硫化
ニッケル(NiS)の個数は添加されたニッケル(N
i)金属の粉末の濃度に依存していることがわかった
(表2参照)。
【0022】次に、これら各試料ガラスについて、硝
亜鉛(Zn(NO32・6H2)及び硫酸亜鉛(Zn
SO4・7H2O)の粉末を各々添加させた場合の硫化ニ
ッケル(NiS)の生成量の変化を調べた。
【0023】まず、前記硫化ニッケル(NiS)が生成
された試料ガラス1〜7の各ガラス原料と同配合のガラ
ス原料を新たに準備し、これらの各ガラス原料中に硝酸
亜鉛(Zn(NO32・6H2O)の粉末を、表3に示
すようにガラス原料の総重量に占める重量百分率(添加
割合)が0.01〜0.15%の範囲で各々添加させ、
8種類のニッケル(Ni)金属粉末並びに硝酸亜鉛(Z
n(NO32・6H2O)含有の各ガラス原料を調整し
た。
【0024】そして、前記の場合と同様にして各ガラス
原料をアルミナ製坩堝に入れ、このアルミナ製坩堝を電
気炉内に挿入して昇温保持した。そして、電気炉内から
取り出し、キャストしたものを試料ガラス8〜15とし
た。表3は、各試料ガラスにおけるニッケル(Ni)の
含有割合及び添加量、硝酸亜鉛(Zn(NO32・6H
2O)の添加割合、硫化ニッケル(NiS)の個数、最
大径、ガラス重量、前記ガラス重量あたりの硫化ニッケ
ル(NiS)の個数を示したものである。
【0025】表3から明らかなように、ガラス原料中に
硝酸亜鉛(Zn(NO32・6H2O)を微量添加する
ことにより、ガラス製品中の硫化ニッケル(NiS)の
生成の抑制に大きな効果があることがわかる。
【0026】
【表3】
【0027】次に、前記硫化ニッケル(NiS)が生成
された試料ガラス1〜7の各ガラス原料と同配合のガラ
ス原料を新たに準備し、これらの各ガラス原料中に硫酸
亜鉛(ZnSO4・7H2O)の粉末を、表に示すよう
にガラス原料の総重量に占める重量百分率(添加割合)
が0.01〜0.15%の範囲で各々添加させ、4種類
のニッケル(Ni)金属粉末並びに硫酸亜鉛(ZnSO
4・7H2O)含有の各ガラス原料を調整した。
【0028】そして、前記の場合と同様にして各ガラス
原料をアルミナ製坩堝に入れ、このアルミナ製坩堝を電
気炉内に挿入して昇温保持した。そして、電気炉内から
取り出し、キャストしたものを試料ガラス16〜20
した。表は、各試料ガラスにおけるニッケル(Ni)
の含有割合及び添加量、硫酸亜鉛(ZnSO4・7H
2O)の添加割合、硫化ニッケル(NiS)の個数、最
大径、ガラス重量、前記ガラス重量あたりの硫化ニッケ
ル(NiS)の個数を示したものである。
【0029】表から明らかなように、ガラス原料中に
硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)を微量添加した場合
も、ガラス製品中の硫化ニッケル(NiS)の生成の抑
制に大きな効果があることがわかる。
【0030】
【表4】
【0031】なお、各試料ガラスにハロゲン化亜鉛およ
び有機亜鉛の粉末を各々添加させた 場合の硫化ニッケル
(NiS)の生成量の変化について説明はしないが、前
述のとおり、硝酸亜鉛(Zn(NO 3 2 ・6H 2 O)お
よび硫酸亜鉛(ZnSO 4 ・7H 2 O)の粉末を各々添加
させた場合と同様に、ガラス製品中の硫化ニッケル(N
iS)の生成の抑制に大きな効果を有するものである。
【0032】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば
ガラス原料中に硝酸亜鉛(Zn(NO 3 2 ・6H
2 O)、硫酸亜鉛(ZnSO 4 またはZnSO 4 ・7H
2 O)、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛を微量添加させ
ているため、溶融ガラス中のニッケル成分と硫黄成分が
反応して硫化ニッケルの生成の低減または完全消滅に十
分な効果を得ることが可能であり、ひいてはガラス製品
中の硫化ニッケルの量を大幅に減少せしめることが可能
である。
【0033】また、硝酸亜鉛(Zn(NO 3 2 ・6H 2
O)、硫酸亜鉛(ZnSO 4 またはZnSO 4 ・7H
2 O)、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛の微量添加は、
可視光透過率や紫外線透過率を殆ど変化させることがな
いのみならず、着色性や粘性あるいは膨張等のガラスの
諸物性値を変化させることなく、従来通りの品質を保つ
ことができるので、実用上のメリットは大きい。
【0034】また、本発明によって硫化ニッケルを殆ど
含まないガラス製品を製造することが可能となり、強化
ガラスの製造工程においてもソ−ク処理が不要となるた
め、製造コストの低減を図ることが可能である。
【0033】さらに、従来と同様の工程を経てソ−ダ石
灰系ガラスの製造を行うことができるから、従来の製造
設備をそのまま使用でき、設備の大幅な変更や増設等を
必要とせず、板ガラスとしての品質向上、及び設備の可
動コストの低減をも図ることが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 比田井 忠和 大阪府大阪市中央区道修町3丁目5番11 号 日本板硝子株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−257937(JP,A) 特開 昭51−7006(JP,A) 特開 昭49−118711(JP,A) 特開 昭60−215546(JP,A) 特開 平6−1633(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 1/00 - 14/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス原料中に含有されるニッケル系化
    合物及び/または前記ガラス原料の溶融過程で混入する
    ニッケル系化合物に起因して溶融成形されたガラス中に
    生成される硫化ニッケルを、前記ガラス原料中に硝酸亜
    鉛、硫酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛または有機亜鉛を微量添
    加させることにより抑制することを特徴とするソーダ石
    灰系ガラスの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ガラス原料の総重量に占める前記硝
    酸亜鉛のZn(NO32・6H2Oとしての重量百分率
    が0.01〜0.15%の範囲である請求項に記載の
    ソーダ石灰系ガラスの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記ガラス原料の総重量に占める前記硫
    酸亜鉛のZnSO4としての重量百分率が0.01〜
    0.15%の範囲である請求項に記載のソーダ石灰系
    ガラスの製造方法。
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