JP3034808B2 - 耐熱衝撃性セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents

耐熱衝撃性セラミックスおよびその製造方法

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JP3034808B2
JP3034808B2 JP8238844A JP23884496A JP3034808B2 JP 3034808 B2 JP3034808 B2 JP 3034808B2 JP 8238844 A JP8238844 A JP 8238844A JP 23884496 A JP23884496 A JP 23884496A JP 3034808 B2 JP3034808 B2 JP 3034808B2
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福三 水野
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有限会社水野技研
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、急加熱、急冷却な
どの急激な温度変化に対する耐久性を有する耐熱衝撃性
セラミックスおよびその製造方法に関するものであっ
て、特に、電子レンジやガスレンジの直火加熱に耐え、
かつ食品の冷凍保存などの耐熱食器または調理器として
利用される緻密な耐熱衝撃性セラミックスに関する。
【0002】
【従来の技術】このような急加熱、急冷却などの急激な
温度変化に対する耐久性を要求される耐熱食器または調
理器に用いられるセラミックスとして、熱膨張係数の低
いペタライト(Li2 O・Al2 3 ・8SiO2 )結
晶またはスポジューメン(Li2 O・Al2 3 ・4S
iO2 )結晶を主結晶成分とした、いわゆるリチアセラ
ミックスがある。また、同様に熱膨張係数の低いコージ
ライト(2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 )結晶を
主結晶成分とした、いわゆるコージライトセラミックス
がある。
【0003】上記リチアセラミックスは、一般にはペタ
ライト原料とカオリン原料を混合した素地を用い、カオ
リン原料は30〜60重量%の範囲で、コスト、成形性
を優先するときには増量し、熱膨張係数を低下させたい
ときは減量するなど調節される。熱膨張係数をさらに低
下させたい場合は、例えば15×10-7/℃程度以下に
したいときには、例えば炭酸リチウムと石英の混合仮焼
物を添加してカオリン分を熱膨張係数の低いペタライト
あるいはスポジューメンに変成させる方法が知られてい
るが、炭酸リチウムはペタライトよりもはるかに高価で
あり、仮焼操作や仮焼物の粉砕操作などに余分の手間が
かかり、コストが嵩むという大きな問題があった。
【0004】一方、コージライトセラミックスは、カオ
リン原料にタルク原料またはマグネサイト原料を混合し
た素地が用いられ、その原料コストは一般的に安価であ
るが、熱膨張係数がリチアセラミックスより大きく、ま
た色調が淡黄色で着色しやすく純白な焼成物が得られに
くいので、食器や調理器への応用においてリチアセラミ
ックスに劣る面があった。
【0005】このような従来のリチアセラミックスやコ
ージライトセラミックスに用いられる素地を十分に焼締
めて、例えば吸水率が8.0%以下になる緻密な焼結体
とするには、1340℃以上の高温焼成が必要になる。
ところが、このような高温度焼成が可能な焼成炉の場
合、炉の建設費や加熱燃料費が割高となる他、焼成棚炉
材、柱炉材、台板セッターなど窯道具も高価な材料を使
用しなければならず、運転経費が増大するという問題も
あった。
【0006】さらに、上記リチアセラミックスやコージ
ライトセラミックスの共通の欠点として、緻密な焼結体
が得られる焼成温度とガラス相の増大に伴い軟化変形を
生じ始める焼成温度との差(以下、適正な焼成温度幅と
称する)が20℃以下というように狭いので、大型の量
産用焼成炉を使用する場合に、炉内の雰囲気温度分布を
この狭い焼成温度幅の中に収めることは困難であるし、
また被焼成物全体を均質に焼成することも困難であるこ
とから、歩留りの低下を避けることができなかった。
【0007】この焼成温度が高く、その適正な温度幅が
狭いという問題に対して、従来のリチアセラミックスで
は緻密性を犠牲にして対処していた。すなわち、ペタラ
イトとカオリンを併用する素地ではカオリンの配合量を
40%以上とし、焼成温度は衛生陶器や建築タイルの焼
成温度である1150〜1250℃程度に止めて、吸水
率を10%以下にならないようにすれば、焼成変形や密
度のバラツキを抑えて量産が可能となる。
【0008】ところが、このような吸水率の大きなもの
は、耐水性、材質強度に劣るため、そのままでは実用が
難しい。そこで、焼成後に、または焼成と同時に表面に
釉薬を施して耐水性を補強し、さらに強度の不足は器物
の肉厚を大きくするなどして補う手段を採用した器物、
例えば「土鍋」と言われているようなものが実用化され
ている。しかし、使用中に釉薬のクラック部分から漏水
したり、透過水が加熱時に膨張して破損事故が生じるこ
ともあり、さらにポーラスで肉厚なため熱抵抗が大きく
加熱時の熱効率が極めて悪いものとなり、大きな熱容量
を利用した鍋料理のような特定の調理に用いられる程度
で、広く応用できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したようなリ
チアあるいはコージライトセラミックスなどが耐熱衝撃
性の食器や調理器として広く応用されるには、熱膨張係
数が20×10-7/℃以下であって吸水率が8%以下の
緻密な焼結体として、従来の焼成温度より低く、一般の
窯業製品と同程度の1250℃以下で焼成でき、さらに
可能ならば適正な焼成温度幅を30℃以上に拡大できる
ようにすることが望まれていた。
【0010】本発明は、上記の問題点を解決するために
なされたものであり、緻密で低熱膨張特性を有し耐熱衝
撃性に優れるとともに、従来より低い焼成温度で緻密に
焼成でき、かつ適正な焼成温度幅が広く、コストの安価
な耐熱衝撃性セラミックスおよびその製造方法を提供す
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の問題は、酸化物組
成でLi2 Oが0〜8.0重量%、MgOが0〜15重
量%であってそのLi2 OとMgOとを合量で3重量%
以上含み、Al2 3を15〜34重量%、SiO2
50〜80重量%、およびB2 3 を0.2〜5.0重
量%を含み、1250℃以下の温度で焼結した緻密な焼
結体であることを特徴とする耐熱衝撃性セラミックス、
により解決することができる。
【0012】この発明は、酸化物組成でB2 3 を0.
4〜4.0重量%を含む前記焼結体として好適に具体化
することができる。さらに、その他の成分についても、
酸化物組成でLi2 Oを1.5〜4.0重量%、MgO
を3.0〜12重量%、Al2 3 を20〜30重量
%、およびSiO2 を55〜75重量%を含む前記焼結
体として好適に具体化することができる。
【0013】さらに、上記の問題は次の製造方法により
解決することができる。硼酸と、水酸化マグネシウム、
マグネサイトおよび酸化マグネシウムのいずれか1種以
上との混合物を450℃〜980℃の温度で熱処理して
水に不溶性の反応組成物を生成させ、これを素地原料に
配合した後、その素地原料を成形1250℃以下の
温度で焼成して、酸化物組成でLi2 Oが0〜8.0重
量%、MgOが0.2〜15重量%であってそのLi2
OとMgOとを合量で3重量%以上含み、Al2 3
15〜34重量%、SiO2 を50〜80重量%、およ
びB2 3 を0.2〜5.0重量%を含む緻密な焼結体
を得ることを特徴とする耐熱衝撃性セラミックスの製造
方法。
【0014】この製造方法の発明は、硼酸と、水酸化マ
グネシウム、マグネサイトおよび酸化マグネシウムのい
ずれか1種以上との前記の熱処理により、B2 3 ・M
gO、B2 3 ・2MgO、およびB2 3 ・3MgO
の1種以上の水に不溶性の反応組成物を生成せしめる方
法として具体化することができる。
【0015】また、上記の問題は次の製造方法によって
も解決することができる。硼酸を3.0〜40重量%と
リチウムアルミノ珪酸塩を50重量%以上含む混合物を
500℃〜800℃の温度で熱処理して水に不溶性の反
応組成物を生成させ、これを素地原料に配合した後、そ
の素地原料を成形1250℃以下の温度で焼成し
て、酸化物組成でLi2 Oが0.2〜8.0重量%、M
gOが0〜15重量%であってそのLi2 OとMgOの
合量を3重量%以上含み、Al2 3を15〜30重量
%、SiO2 を50〜80重量%、およびB2 3
0.2〜5.0重量%を含む緻密な焼結体を得ることを
特徴とする耐熱衝撃性セラミックスの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の耐熱衝撃性セラミックス
の実施形態について説明すると、請求項1の本発明で
は、酸化物組成でLi2 Oが0〜8.0重量%、MgO
が0〜15重量%であって、かつLi2 OとMgOの合
量として3重量%以上含み、Al2 3を15〜34重
量%、SiO2 を50〜80重量%、およびB2 3
0.2〜5.0重量%を含み、1250℃以下の温度で
焼結したむ緻密な焼結体からなるものであり、酸化物成
分としてLi2 OとMgOのいずれか1種または2種と
Al2 3 、SiO2 およびB2 3 を必須の主成分と
するものである。これら酸化物の供給源である原料につ
いては特に限定されるものではないが、後記のように、
ペタライトのようなリチウム珪酸塩原料、粘土などのカ
オリン原料、あるいはタルクなどの天然原料がコスト面
から好ましい。またB2 3 成分は硼酸により供給され
るのが好適である。
【0017】また、この発明における耐熱衝撃性セラミ
ックスの結晶微構造では、低膨張性のリチウム珪酸塩結
晶であるペタライト結晶とスポジューメン結晶あるいは
MgOを含む低膨張性のコーディライト結晶の少なくと
も1種または2種以上を必須の主結晶相として含むとと
もに、これら結晶の粒界にはB2 3 成分を含むガラス
層が形成され、実質的に漏水のおそれのない程度に緻密
な組織に、吸水率として大きくとも8.0%まで、好ま
しくは3.0%以下に焼結されていることが重要な特徴
となっている。
【0018】このように本発明の耐熱衝撃性セラミック
スでは、主結晶相として低熱膨張性のペタライト結晶等
からなり、粒界のガラス層がB2 3 成分を含むので、
23 成分を含まない組成と比較して、後記実施例の
ように緻密な状態に焼成する温度を下げることができ、
さらに、このB2 3 は低熱膨張性の主結晶を高熱膨張
性の結晶に変化させることがなく、比較的低熱膨張性の
ガラス層を形成すると考えられるため、全体として低熱
膨張性を備えるとともに、併せて適正な焼成温度幅を比
較的大きくすることができるものと思われる。
【0019】B2 3 成分の含有量は、0.2重量%未
満では焼成温度の低減効果が少なく、0.2重量%以上
において10℃以上の低減効果が見られる。また、0.
4重量%以上においてその効果が顕著となるとともに、
適正な焼成温度幅を広く保持できる効果も認められ、3
0℃以上にまで広げることができる。しかし、その量が
4.5重量%を超えるようになると適正な焼成温度幅が
減少し、5.0重量%を超えると熱膨張係数が大きくな
り、本発明の目的に鑑み好ましくなくなる。
【0020】さらに、この発明において、酸化物組成と
して、Li2 Oを1.5〜4.0重量%、MgOを3.
0〜12重量%、Al2 3 を20〜30重量%、Si
2を55〜75重量%、およびB2 3 を0.2〜
5.0重量%含む、好ましくは0.4〜4.0重量%含
む緻密な焼結体を特に好ましい実施形態として示すこと
ができる。
【0021】この実施形態の組成範囲では、熱膨張係数
が15×10-7/℃以下であって、吸水率が8%以下の
緻密な焼結体が、1250℃以下の極めて低い焼成温度
で焼成可能となる顕著な利点が得られる。
【0022】また、本発明の耐熱衝撃性セラミックスの
酸化物組成において、Li2 OとMgOの双方と、Al
2 3 とSiO2 とをペタライトあるいはコージライト
組成の対応するように含有させれば、本発明者が先にな
した発明の特願平8−206066号明細書にて明らか
にしたように、ペタライトあるいはコージライトそのも
のを配合した場合より焼成温度を下げることができ、併
せて熱膨張係数をそのペタライトとコージライトの加重
平均に近似させることができる。
【0023】さらに、この組成にB2 3 成分を加える
ことにより焼成温度を低下させる効果が加わり、熱膨張
係数を低く抑えつつ、焼成温度を1250℃以下に下げ
ることもできるのである。特に、B2 3 成分を0.4
〜4.5重量%とすれば適正な焼成温度幅も広がり、従
来の焼成炉を利用した場合でも、部分的な温度のバラツ
キに基づく不良品の発生を少なく抑えながら、炉に対す
る負荷も軽くでき、耐熱衝撃性セラミックスの量産を行
うことが可能となる。
【0024】次に、本発明の他の発明である耐熱衝撃性
セラミックスの製造方法について詳細に説明する。先
ず、請求項4の本発明の製造方法では、酸化物組成でL
2 Oが0〜8.0重量%、MgOが0.2〜15重量
%であってそのLi2 OとMgOとを合量で3重量%以
上含み、Al2 3 を15〜34重量%、SiO2 を5
0〜80重量%、およびB2 3 を0.2〜5.0重量
%を含む緻密な焼結体を得る方法であって、硼酸と、水
酸化マグネシウム、マグネサイトおよび酸化マグネシウ
ムのいずれか1種以上との混合物を450℃〜980℃
の温度で熱処理して水に不溶性の反応組成物を生成さ
せ、これ素地原料に用い、成形後、1250℃以下の温
度で焼成するところを特徴としている
【0025】ここでB2 3 成分以外の酸化物を充当す
る素地原料については、Li2 Oは、リチウム珪酸塩原
料、例えばペタライト原料またはスポジューメン原料な
どから供給し、MgOは、MgO化合物原料、例えばタ
ルク、マグネサイトなどの他、MgO単味のもの、また
は水酸化マグネシウムなどから供給する。SiO2 また
はAl2 3 は、必要に応じて、SiO2 化合物原料、
例えば珪砂、石英などまたはカオリン、アルミナ、水酸
化アルミニウム等から供給する。
【0026】そして、この実施形態の要点は、B2 3
成分がB2 3 とMgOとの反応組成物の形で素地中に
供給されるところにある。安定な化合物である硼酸(H
3 BO3 )がB2 3 供給原料として用いられることは
知られているが、本発明では、硼酸と、水酸化マグネシ
ウム、マグネサイトおよび酸化マグネシウムのいずれか
一種以上との混合物を450℃〜980℃の温度、好ま
しくは600℃〜900℃の温度で熱処理することが重
要な要件となっている。
【0027】こうすることにより、硼酸を不溶性に変化
させることができ、硼酸の可溶性に基づく欠点、例え
ば、湿式粉砕後のフィルタプレス時にB2 3 成分が流
出したり、成形時に石膏型に損傷を与えたり、または焼
成時に素地に膨れ不良を生じたりする不具合を完全に防
止することができる。
【0028】さらに、本発明のこの実施形態の有利な点
は、熱処理により得られるB2 3とMgOの反応組成
物は、水に対して不溶性を示すとともに、本質的に粉体
であって他の原料とのボールミルによる粉砕、混合に当
たって予めの粉砕操作を必要としない点にある。前記の
熱処理時には溶融する場合もあるが、処理後は粉体に復
帰するか、あるいは塊状になっていても簡単にほぐすこ
とができる程度にしか固まらないので、予め事前に粉砕
することなく素地の原料として使用することができる。
【0029】以上説明した硼酸の熱処理にあたり、硼酸
と、水酸化マグネシウム、マグネサイトおよび酸化マグ
ネシウムのいずれか一種以上とを熱処理して、B2 3
・MgO、B2 3 ・2MgO、およびB2 3 ・3M
gOの一種以上を生成せしめる方法として具体化するこ
とができる。この場合、硼酸(H3 BO3 )2モルに対
して前記マグネシウム化合物を1モル以上の割合で混合
し、B2 3 の溶融温度以上でB2 3 ・MgOの溶融
温度以下で熱処理する。こうすることにより、水に不溶
性である反応組成物2 3 ・MgO、B2 3 ・2M
gO、またはB2 3 ・3MgOが形成されるのであ
る。
【0030】このような硼酸の熱処理に際して、上記の
マグネシウム化合物の他に生成するB2 3 とMgOと
の反応挙動を害さない程度に他種の原料を添加しても差
し支えない。例えば、カオリンを適量混合すると、乾燥
操作後あるいは熱処理後に適度な塊状になるので取扱い
が容易となり、かつ容易に粉状にすることもできるとい
う製造上好ましい利点が得られる。
【0031】さらに、請求項6の本発明の他の製造方法
について説明すると、酸化物組成でLi2 Oが0.2〜
8.0重量%、MgOが0〜15重量%であってそのL
2OとMgOとを合量で3重量%以上含み、Al2
3 を15〜30重量%、SiO2 を50〜80重量%、
およびB2 3 を0.2〜5.0重量%を含む緻密な焼
結体を得る製造法であって、硼酸を3.0〜40重量
%、リチウムアルミノ珪酸塩、例えばペタライトまたは
スポジューメンを60重量%以上含む混合物を500℃
〜800℃の温度で熱処理して得た焼結体である水に不
溶性の反応組成物を素地原料に配合した後、その素地原
料を成形し、1250℃以下の温度で焼成するところに
特徴がある。
【0032】この製造方法は、B2 3 成分に対してM
gO成分が少ない場合は勿論、そうでない場合にも応用
できる方法であり、先ず、硼酸に対して、ペタライトと
スポジューメンの1種以上を所定量混合し、B2 3
溶融温度以上、900℃以下で熱処理し、粉砕して、B
2 3 、Li2 O、SiO2 およびAl2 3 成分を含
むフリットを作成する。これをカオリン、タルク、石英
その他原料からなる素地原料に混合し、以後成形、焼成
などの工程は通常の方法に準ずればよい。
【0033】また、Li2 O成分の供給源としては、リ
チウム珪酸塩以外に炭酸リチウムが想定されるが、この
炭酸リチウムは、先ず原料コストが高価であるという問
題があるうえ、その融点、分解温度はそれぞれ726
℃、900℃以上であることから低温での反応が困難な
ことと、熱処理によって強固な塊状に形成され易く、粉
砕の手間がかかるのと不純物の混入が避けられず品質の
安定に問題が残るなどの不具合があるので好ましくな
い。
【0034】また、本発明のようにペタライトやスポジ
ューメンを使用すれば、上記炭酸リチウムの場合に較べ
て、原料コストが安価なうえに、硼酸とともに熱処理し
ても強固な塊状に形成されることなく、容易に粉砕でき
る程度のものとなり、かつB2 3 成分を不溶性な状態
で配合でき、Li2 O成分の本来の低い熱膨張特性が発
揮できる利点が得られる。
【0035】ここで、硼酸を3.0〜40重量%とし残
部をリチウム珪酸塩としたのは、前記熱処理温度で硼酸
を実質的に不溶性に変化させるに適当するからである。
また、上記の熱処理温度は、低すぎるとB2 3 の水溶
性が解消できず、また高すぎると強固に結合してしまい
粉砕が困難となるから、500〜800℃が適当であっ
た。
【0036】また、このような硼酸の熱処理に際して、
生成物の性状を害さない程度に他の原料を添加しても差
し支えない。例えば、、カオリンを5.0〜40重量%
添加すると、B2 3 とMgOの組合せの場合と同様に
取扱いが容易となり、かつ容易に粉状にすることもでき
るという製造上有利となる。
【0037】以上説明した本発明の耐熱衝撃性セラミッ
クスの製造方法では、それぞれ所定の酸化物組成を形成
するよう各種原料が配合されるとともに、B2 3 成分
を前記した熱処理により不溶性組成物として添加するこ
とにより、B2 3 成分を系外に溶出させることなく均
質に含有させることができ、本発明のセラミックスの構
成結晶として必須のペタライトやスポジューメンなどリ
チウム珪酸塩結晶、または、およびコージライト結晶の
生成と焼結の促進に好ましく作用するのである。すなわ
ち、適量のB2 3 成分が均質に配合されることによ
り、比較的低温からガラスが生成し、ペタライト、スポ
ジューメンあるいはコージライトなどの結晶の生成と焼
結を促す。そして、各々の結晶の融点よりもかなり低い
温度で焼結が進行するため、急激な焼結が抑制され、軟
化変形の程度も少なくなり、より広い範囲の温度幅での
焼成が可能となると思われる。
【0038】このようなB2 3 成分の配合量として
は、0.2重量%以上で明らかに焼成温度を低下させる
効果が見られ、0.4重量%以上となると適正な焼成温
度幅を拡大する効果が得られる。しかし、4.5重量%
を超えると適正な焼成温度幅はかえって減少するように
なり、さらに5.0重量%を超えると熱膨張係数も増大
するようになり、熱膨張係数20×10-7/℃以下に維
持できず耐熱衝撃性に優れたものが得られ難くなる。
【0039】
【実施例】次に、表1に示す試験結果に基づいて本発明
をさらに説明する。
【表1】 表1において、試験体Noに*印の付されたものは、比較
例を示し、その他は本発明の製造方法に係る原料配合割
合に基づくものである。また、中央欄の化学組成は、左
欄の原料配合割合から計算で求められる化学成分組成を
重量%で表示したものである。
【0040】ここで、使用原料は、ペタライト、カオリ
ン、石英、水酸化マグネシウムなど通常セラミックス原
料として入手できるものを用いた。これらを表の原料配
合割合に従い配合し、適量の水とともにボールミルで湿
式粉砕、混合した後、乾燥し適度な硬度の杯土とし、こ
れを真空混練して素地を調製した。この素地を乾燥後、
プレス成形機により10×10×60mmの細長柱体の
試験体に成形して焼成した。この焼成では、電気加熱試
験炉を用いて、1100℃までは200℃/hrの昇温
速度で加熱し、1100℃以上では昇温速度を120℃
/hrに下げて昇温し、所定の最高温度では2hr保持
した後、自然冷却する方法に従った。なお、ここで最高
温度は1080℃から10℃毎に設定した。
【0041】そして、焼結した試験体の吸水率が8.0
%以下に到達したときの前記設定温度をもって、表1中
の焼締温度とし、また、かくして得られた試験体につい
て、通常の熱膨張測定試験機により、常温から500℃
の範囲での熱膨張率を測定して表1中の線熱膨張係数を
求めた。さらに、試験体の表面に溶融ガラスが出現する
直前の設定温度を適正最高温度とし、先の吸水率が8.
0%以下に到達したときの設定温度との温度差℃をもっ
て、表1中の適正な焼成温度幅とした。
【0042】なお、原料中のF−1、F−2、およびF
−3の粉末原料は以下の方法により調製したものであ
る。先ず、F−1粉末は、硼酸46.6重量部、水酸化
マグネシウム38.1重量部およびカオリン15.3重
量部の計100重量部を秤量し、湿式で粉砕混合した
後、水を蒸発させ、粘度調整して混練し、乾燥してから
800℃で2時間、熱処理して得たものである。同時に
熱処理温度を600℃、700℃、900℃としたもの
を比較のため作成した。
【0043】これら各温度で処理して得たものは、手指
で押しつぶすだけで簡単に粉体になる程度のもので、ボ
ールミルの粉砕混合において粉末と同等に扱うことので
きるものであった。また、これらは水中に浸漬してもp
Hに特に変化が見られないなど、水に対して実質的に不
溶性を示し、B2 3 とMgOとは不溶性の物質を形成
したものと思われる。この事例では、硼酸と水酸化マグ
ネシウムの他にカオリンを添加、使用しているが、その
結果、混合時の密度がやや大きくなり、B2 3 とMg
Oの反応を阻害する要素もなく、また有害なガスなどの
発生もなく、適度な塊となるので作業上取扱が容易とな
る利点が得られた。
【0044】次に、F−2粉末は、硼酸23.7重量
部、ペタライト65.8重量部およびカオリン10.5
重量部の計100重量部を秤量し、湿式で粉砕混合した
後水を蒸発させ、粘度調整して混練し、乾燥してから7
00℃で2時間、熱処理して得たものである。同時に熱
処理温度を600℃、800℃としたものを比較のため
作成した。これら各温度で処理して得たものは、B2
3 とMgOの組合せのように、簡単に粉体になる程度の
ものではなく、素地原料と混合するに当たっては事前に
粉砕操作を必要とするものではあるが、水に対しては実
質的に不溶性を示した。
【0045】また、F−3粉末は、Li2 O成分を特に
多く配合するために用いる合成原料であり、4Li2
・Al2 3 ・4SiO2 の組成が得られるよう、炭酸
リチウム43.8重量部、カオリン38.4重量部およ
び石英17.8重量部の計100重量部を秤量し、湿式
で粉砕混合した後水を蒸発させ、粘度調整して混練し、
乾燥してから950℃で2時間、熱処理して得た組成物
を再度ボールミルで粉砕して得た。
【0046】上記の試験結果を示す表1によれば、先
ず、表中No1〜No6は、従来の一般的なもので、No1は
ペタライト組成に近似する組成であり、No2はペタライ
トとカオリンを混合したもので熱膨張特性がやや大き
く、No3はカオリンが多く熱膨張特性がかなり大きい。
No4はコージライト組成に近似する組成であり、ペタラ
イトと比較すると熱膨張特性がやや大きい。これらは、
いずれも焼締温度が1340℃〜1360℃とかなり高
く、また適正な焼成温度幅が狭いので、緻密な焼結体を
得るには燃料コストが嵩むうえ、量産規模の大型の焼成
炉では温度コントロールが難しく、高い歩留りが得られ
にくいという不具合が内在するのである。
【0047】表1中No5、6は、No1〜4組成の前記不
具合を改良した組成であるが、一般の衛生陶器や食器、
タイルなどの陶磁器製品の場合と比較すると、焼締温度
あるいは適正な焼成温度幅などからみて、量産規模の大
型の焼成炉での焼成にはかなりの困難が予想されるの
で、更なる改善が要請されるところである。
【0048】表1中No7〜27の試験体は、本発明の配
合割合のよるものであり、これらから以下のことが判明
した。 (1)B2 3 成分を含む本発明の組成では、B2 3
を含まない組成に比較して焼締温度の低下が認められ、
0.2%含有で効果が確認でき、0.4%含有で効果が
顕著になる。この本発明の組成では、全ての試験体を1
250℃以下の焼締温度で焼成することができた。
【0049】(2)B2 3 成分を0.4%以上含有す
ると、焼締温度の低下とともに、適正な焼成温度幅が広
がるのが認められる。B2 3 を含まない組成では、そ
の温度幅が10〜20℃と狭いので、大型の焼成炉では
製品に焼結の程度のバラツキが生じる不具合が避けられ
なかったが、B2 3 を0.4%含有すると、その温度
幅はほぼ30℃となり、歩留り向上に大きく寄与する。
さらに0.8%に達するとそれはほぼ40℃に広がるの
で、大型の焼成炉での量産に適するに至る。
【0050】(3)表1中No15〜17、22〜27の
組成のように、B2 3 を0.8%以上含み、Li2
とMgO成分の双方を適度に含む組成では、焼締温度が
1200℃以下であって、かつ比較的低熱膨張特性を保
持しているものが得られる。これは、Li2 OとMgO
成分の双方の存在によりペタライトとコージライトの結
晶が生成するとともに、粒界のガラスにB2 3 成分が
含まれるようになった相乗効果のためと思われる。
【0051】なお、前述の実施形態および実施例の説明
では、Li2 O、MgO、SiO2、Al2 3 、およ
びB2 3 以外の成分については触れなかったが、本発
明の趣旨の範囲内において、原料などから不可避的に混
入してくる他の酸化物成分等の不純物または混在物、あ
るいは意図して含有、添加する元素、成分などが共存す
る場合も本発明に含まれるのは言うまでもない。
【0052】
【発明の効果】本発明の耐熱衝撃性セラミックスによれ
ば、特定の成分組成、特にLi2 OとMgOの1種以上
含む組成にB2 3 成分を必須成分とすることにより、
従来の焼成温度より低い1250℃以下の焼締温度で、
かつ30℃以上の広い焼成温度幅でもって、吸水率が8
%以下の緻密な焼結体に焼成でき、熱膨張係数が20×
10-7/℃以下の耐熱衝撃性に優れたセラミックスを歩
留り良く提供できる。
【0053】また、その製造方法によれば、硼酸をMg
O化合物またはLi2 O化合物と反応させて得られる不
溶性の反応組成物をB2 3 成分供給源として配合する
ので、硼酸の可溶性に起因する不具合を解消するととも
に、前記と同様に低い焼締温度で、かつ広い焼成温度幅
でもって、緻密な焼結体に焼成でき、熱膨張係数の低い
耐熱衝撃性に優れたセラミックスを歩留り良く製造する
ことができる。よって本発明は従来の問題点を解消した
耐熱衝撃性セラミックスおよびその製造方法として、そ
の工業的価値が極めて大なるものがある。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化物組成でLi2 Oが0〜8.0重量
    %、MgOが0〜15重量%であってそのLi2 OとM
    gOとを合量で3重量%以上含み、Al2 3を15〜
    34重量%、SiO2 を50〜80重量%、およびB2
    3 を0.2〜5.0重量%を含み、1250℃以下の
    温度で焼結した緻密な焼結体であることを特徴とする耐
    熱衝撃性セラミックス。
  2. 【請求項2】 酸化物組成でB2 3 を0.4〜4.0
    重量%を含む請求項1記載の耐熱衝撃性セラミックス。
  3. 【請求項3】 酸化物組成でLi2 Oを1.5〜4.0
    重量%、MgOを3.0〜12重量%、Al2 3 を2
    0〜30重量%、およびSiO2 を55〜75重量%を
    含む請求項1または2記載の耐熱衝撃性セラミックス。
  4. 【請求項4】硼酸と、水酸化マグネシウム、マグネサイ
    トおよび酸化マグネシウムのいずれか1種以上との混合
    物を450℃〜980℃の温度で熱処理して水に不溶性
    の反応組成物を生成させ、これを素地原料に配合した
    後、その素地原料を成形1250℃以下の温度で
    成して、酸化物組成でLi2 Oが0〜8.0重量%、M
    gOが0.2〜15重量%であってそのLi2 OとMg
    Oとを合量で3重量%以上含み、Al2 3 を15〜3
    4重量%、SiO2 を50〜80重量%、およびB2
    3 を0.2〜5.0重量%を含む緻密な焼結体を得るこ
    とを特徴とする耐熱衝撃性セラミックスの製造方法。
  5. 【請求項5】前記の熱処理により、B2 3 ・MgO、
    2 3 ・2MgO、およびB2 3 ・3MgOの1種
    以上の水に不溶性の反応組成物を生成せしめる請求項4
    記載の耐熱衝撃性セラミックスの製造方法。
  6. 【請求項6】硼酸を3.0〜40重量%とリチウムアル
    ミノ珪酸塩を50重量%以上含む混合物を500℃〜8
    00℃の温度で熱処理して水に不溶性の反応組成物を生
    成させ、これを素地原料に配合した後、その素地原料を
    成形1250℃以下の温度で焼成して、酸化物組成
    でLi2 Oが0.2〜8.0重量%、MgOが0〜15
    重量%であってそのLi2 OとMgOの合量を3重量%
    以上含み、Al2 3 を15〜30重量%、SiO2
    50〜80重量%、およびB23 を0.2〜5.0重
    量%を含む緻密な焼結体を得ることを特徴とする耐熱衝
    撃性セラミックスの製造方法。
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