JPH1045466A - 磁器焼結体 - Google Patents

磁器焼結体

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JPH1045466A
JPH1045466A JP20050296A JP20050296A JPH1045466A JP H1045466 A JPH1045466 A JP H1045466A JP 20050296 A JP20050296 A JP 20050296A JP 20050296 A JP20050296 A JP 20050296A JP H1045466 A JPH1045466 A JP H1045466A
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JP
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porcelain
feldspar
sintering aid
raw material
light transmittance
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JP20050296A
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English (en)
Inventor
Yoichiro Yoshihara
洋一郎 芳原
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KAGOSHIMA PREF GOV FINE CERAMI
KAGOSHIMA PREF GOV FINE CERAMIC SEIHIN KAIHATSU KYOKAI
Kyocera Corp
Original Assignee
KAGOSHIMA PREF GOV FINE CERAMI
KAGOSHIMA PREF GOV FINE CERAMIC SEIHIN KAIHATSU KYOKAI
Kyocera Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 明るいアイボリーないしは黄色〜クリーム系
の色調を呈する透光度の大きい磁器が得られない。 【解決手段】 主原料としての合成フォルステライト粉
末と、焼結助剤としての長石、及び焼成によってCa
O、BaO、SrO、ZnO、La2 3 となる化合物
のうちの少なくとも一種を4〜35重量%含有してなる
磁器原料を焼成した磁器焼結体であって、主構成相がフ
ォルステライト(2MgO・SiO2 )結晶で、残部が
主として長石を含む焼結助剤由来のガラスから成り、厚
さ1mmにおける可視光線の透過率が36%以上の磁器
焼結体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアイボリー(象牙
色)ないしは黄色〜クリーム系の色調で、透光感に優れ
た磁器焼結体に関する。本発明の磁器焼結体は工芸、装
飾用部材をはじめ、食器、調理具、また照明具や表示装
置の部材として使用される。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】古来よ
り、焼きものと呼ばれるものの中で、磁器は不純物の少
ない原料を厳選、あるいは精製して用いることで、土器
や陶器に比べて明るい色調と透光感を持ち、これによっ
て高い価値を有している。
【0003】従来より、透光感に優れた磁器と評価され
ているものに骨灰磁器がある。骨灰磁器は不純物を含む
ことの少ない若い牛の骨を焼成して得た骨灰を主原料に
した磁器であるが、良質な骨灰は高価であるので、特公
昭46−28404や特公昭55−29956では骨灰
と化学組成が似ていて不純物の少ないゼラチン精製の副
産物から得た骨燐(第2燐酸石灰=CaHPO4 ・2H
2 O)を原料に用いた骨灰磁器が提案されている。ま
た、特開平2−164764では骨灰磁器に比し安価な
灰長石を主構成鉱物とした磁器が提案されている。さら
に特開平2−293373では燐酸アルミニウムを多用
した高強度磁器が提案されている。これらはいずれも透
光感に優れた磁器を提供しようとするものである。
【0004】磁器は白色であることが一つの好ましい条
件のようになっているが、食卓用の器物や工芸品用にお
いては温もりを感じさせるアイボリー(象牙色)ないし
はクリーム系の色調を持った磁器も好まれる。
【0005】アイボリー系の色調を持つ磁器を作るに
は、磁器の素地自体を着色する場合と、表面の釉薬だけ
を着色する場合とがあるが、素地自体による発色である
ほうが色むらが出なくてよい。
【0006】素地自体がアイボリー系の色調を持つ磁器
は、例えば酸化鉄(Fe2 3 )を比較的多く含む原料
を用いるか、精製された原料に顔料として酸化鉄2〜3
重量%と酸化チタン(TiO2 )2〜3重量%を加えた
杯土を用いる。また、原料に発色剤として酸化ジルコニ
ウム(ZrO2 )5重量%を添加し、そのうえで焼結を
促すために長石を5重量%増して杯土にする例もある。
いずれも酸化雰囲気で焼結させてアイボリー磁器にな
る。
【0007】しかしながら、従来のアイボリー磁器で
は、精製すべき原料に黄褐〜赤褐色系の不純物を残した
杯土を用いるか、精製した原料に顔料や発色剤を添加し
た杯土を用いるのであるから、着色によって透光感が損
なわれるという問題がある。
【0008】このような問題を解決するためにアイボリ
ー磁器による器物の素地を薄く作って光透過率を向上さ
せて透光感を表現することも考えられるが、素地の厚み
を減じると器物の強度も低下するので、特に食器などの
ような日用品に適用するには問題がある。
【0009】現在市販されている中から透光感に優れた
磁器製品について調べたところ、白い磁器の皿の釉薬層
を含んだ厚み3.5〜3.7mmの部分数力所につい
て、照度計で光の透過率を測定し厚さ1mmにおける光
の透過率、透光度δを算出したところ平均値は36.4
%であった。又、白色素地にアイボリーの釉薬をかけた
アイボリー磁器製の皿について、釉薬層を含んだ厚み
3.2〜3.5mmの部分数力所について同様に光の透
過率を測定し透光度δを算出したところ平均値は33.
8%であった。
【0010】一方、近年になって透光性を持つファイン
セラミックが多種製作されるようになった。なかでも透
光性アルミナは原料の入手も容易で透光度が70%に達
するセラミックを作ることが出来る。又、アルミナセラ
ミックは例えば特開昭63−239154にあるように
各種の金属酸化物を少量添加すればアイボリー(象牙
色)のみならず様々の美しい色調に発色させることが出
来、強度も優れているので、近年は電気・電子用部材の
みならず人工宝石として時計や装飾品等にも用いられて
いる。
【0011】しかし、透光性を持つファインセラミック
は、いずれも高価な高純度原料を用い、焼成には真空高
温炉や水素雰囲気炉や熱間静水圧プレスといった従来の
陶磁器の製造では使われていない特殊な炉や装置を用い
て焼結させることによって透光性を発現するのであっ
て、これ等によって食器や工芸品等のように比較的大き
な部材を作れば製造に要する価格は並外れて高価にな
り、用途が著しく限られてしまうという問題がある。
【0012】上記事情に鑑み、本発明者はアイボリー
(象牙色)系の色調で、透光感に優れた磁器焼結体を通
常の陶磁器を作るのに用いる炉や装置によって製作する
べく、広く特殊磁器ないしはニューセラミックと呼ばれ
る磁器について調査をし、それらの磁器を構成する鉱物
について検討を行なった結果、フォルステライト(2M
gO・SiO2 )に着目した。
【0013】鉱物としてのフォルステライトは19世紀
に溶岩中に発見され、融点が1900℃と高く耐火性に
優れているところから以来、製鉄製鋼用の炉材(耐火物
セラミック)として用いられている。
【0014】フォルステライトは天然の材料又は試薬を
組成がほぼフォルステライト(2MgO・SiO2)にな
るように調合した粉末を1200〜1400℃の高温で
焼成すれば容易に合成できる。この時に鉱物の合成を促
進する鉱化剤や磁器化を促進する焼結助剤が配合されて
いれば一層確実に合成されるフォルステライトを焼結さ
せた磁器はマイクロ波領域において優れた性能を有する
ことから1947年にアメリカで電子管外囲器用セラミ
ックとして実用化され、以来、高周波絶縁物、ガラスや
金属との封着部品、薄膜抵抗やIC基板、ICパッケー
ジなどに利用されている。
【0015】電子部品用に生産されているフォルステラ
イト磁器はセラミックの中で比較的安価に製造されてい
て色調は暗いアイボリー(象牙色)ないしは黄土色を呈
している。この原料として「合成フォルステライト」粉
末が市販されている。
【0016】フォルステライト磁器の組成や製造方法に
ついては今までに多くの研究がなされてきた。その多く
は例えば特開平5−262562や特開平5−3456
22のように絶縁性を高め高周波誘電体損失をより小さ
くするなど、電気特性の向上を目指す研究や、特開平5
−178659のようにフォルステライト磁器の比較的
大きな熱膨張率を生かした用途開発であって、フォルス
テライト磁器に透光感を求めたり明るい色調を持たせる
研究や試作例は無い。
【0017】本発明者はアイボリー(象牙色)系の色調
で、透光感に優れた磁器焼結体を得るべく、フォルステ
ライト磁器の透光度を向上させ明るく好ましい色調を得
ようと研究を重ね、組成がほぼフォルステライト(2M
gO・SiO2 )となるように調合した原料粉末あるい
は予め合成したフォルステライト粉末を主原料にし、こ
れに長石と複数の成分を混合した焼結助剤を配合した磁
器原料組成物を成型し、酸化雰囲気もしくは大気中での
焼成によって焼結させることで、アイボリー(象牙色)
の色調が美麗で、かつ透光度に優れた磁器になることを
見いだし、本発明を完成するに到ったものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、主原料
としての合成フォルステライト粉末と、焼結助剤として
の長石と焼成によって酸化カルシウム、酸化バリウム、
酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ランタンとなる化
合物のうちの少なくとも一種を4〜35重量%含有して
なる磁器原料を焼成した磁器焼結体であって、主構成相
がフォルステライト(2MgO・SiO2 )結晶で、残
部が主として長石を含む焼結助剤由来のガラスから成
り、厚さ1mmにおける可視光線の透過率が36%以上
の磁器焼結体が提供される。
【0019】
【作用】鉱物としてのフォルステライトは融点が高く高
耐火性の材料であるので、これを焼結させるには高温で
焼成するか、焼結を促進する物質を添加して焼成温度を
下げて磁器にする。本発明では後者の方法によったが、
この場合には得られた磁器はフォルステライト結晶を主
構成相とし、他の多くはガラス相からなる。この様な磁
器に透光感を持たせるには磁器の内部を通過する光線の
乱反射を少なくしなくてはならない。理論上は、ガラス
相の屈折率をフォルステライト結晶に近以させる焼結助
剤の組成、可能な限りフォルステライトとは異なる屈折
率を持つ結晶を析出させない焼結助剤の組成と焼成条
件、磁器内部に気孔を残さない適切な焼成条件等を見い
だして磁器の透光度を向上させなくてはならない。
【0020】フォルステライト鉱物(2MgO・SiO
2 )の屈折率はα=1.635、β=1.651、γ=
1.670とされている。通常の陶磁器では焼結を促進
する材料に長石が使われるが、長石を用いたガラス(釉
薬など)の屈折率は1.490付近であるとされていて
フォルステライト鉱物とは屈折率に差が有る。
【0021】しかし、ガラスには色々な屈折率のものが
有る。例えば一般に用いられているソーダ石灰ガラスの
屈折率は1.469付近であるが、カメラのレンズなど
に用いる光学ガラスは組成が多岐にわたり、その屈折率
は1.467〜1.670と広範である。
【0022】フォルステライト磁器のガラス相は焼結助
剤が形成する。そこで焼結助剤の組成を模索してガラス
相の屈折率を主構成相であるフォルステライト結晶の屈
折率1.635〜1.670に近似させることが出来れ
ば、フォルステライト磁器焼結体の透光度を向上させる
ことが可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明による透光度と色調に優れ
たフォルステライト磁器の組成は多くの実験結果から選
択されて決定されたものである。
【0024】本発明は、例えば以下のようにして作成さ
れる。先ず、マグネシア(MgO) あるいは水酸化マグ
ネシウム(Mg(OH)2) もしくはマグネサイト(Mg
CO3 )など、焼成によって酸化物になるマグネシウム
化合物粉末に、滑石(3MgO・4SiO2 ・H2 O)
粉末あるいは石英(SiO2 )粉末を、焼成によって組
成がほぼ2MgO・SiO2 となるように配合した粉末
を主原料に用いる。あるいは市販の合成したフォルステ
ライト粉末を主原料に用いることも出来る。いずれの場
合も焼成して焼結させたときに、磁器の主構成相はフォ
ルステライト(2MgO・SiO2 )となる。
【0025】これ等の主原料を焼結させる助剤として、
長石と焼成によって酸化カルシウム(CaO)、酸化バ
リウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸
化亜鉛(ZnO)、酸化ランタン(La2 3 )となる
化合物の中から少なくとも一種類を混合した焼結助剤を
4〜35重量%、好ましくは10〜20重量%配合して
磁器原料にする。このような焼結助剤は、炭酸カルシウ
ム(CaCO3 )、炭酸バリウム(BaCO3 )、炭酸
ストロンチウム(SrCO3 )、酸化亜鉛(ZnO)、
酸化ランタン(La2 3)などとして添加される。焼
結助剤は前述の混合物を予め焼成もしくは溶融して粉砕
したものを用いても良い。
【0026】このように調合した磁器原料を成型後、酸
化雰囲気もしくは大気中で1240〜1440℃で焼成
して焼結体にする。
【0027】こうして、主構成相がフォルステライト結
晶で、残りが長石を含む焼結助剤等に起因するガラス相
と、希に、これ等が反応して析出した微量のその他結晶
よりなる、アイボリー(象牙色)ないしは黄色〜クリー
ム系の色調を持つた透光度に優れた磁器焼結体を得るこ
とが出来る。
【0028】本発明に言う透光度に優れた磁器とは、前
述したように市販の磁器の中で透光感に優れた物品につ
いて透光度を調べた結果から勘案して、厚さ1mmにお
ける可視光線の透過率である透光度δが36%以上のも
のとした。
【0029】本発明の組成物および焼成条件における限
定理由は以下のとおりである。
【0030】先ず、組成について述べると、主原料とし
ては市販の合成フォルステライト粉末を用いるか、天然
の原料や試薬を用いて焼成後の組成がほぼ2MgO・S
iO2 となるように調合した合成フォルステライト粉末
を用いる。この場合は焼成によって磁器化するまでにフ
ォルステライト鉱物が合成され磁器の主構成相になる。
【0031】焼結助剤の作用は、長石は焼成温度が11
00℃を超えると溶融してガラス化する。これによって
主原料粉末を結合していくのであるが、長石はガラス化
した時の粘度が高く、したがって長石を含む原料は成形
した形状を保ちながら収縮していき焼結し、磁器化させ
る作用をする。
【0032】長石と共に含まれる酸化カルシウム(Ca
O)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム
(SrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ランタン(La
2 3)は、長石ガラスが磁器化させる作用を更に好ま
しく整えるもので、例えば焼結をより低温で促進させた
り、焼結時に発生しがちな磁器の発泡(=ぶく=膨れ)
を抑制して焼成温度条件を広範なものにする。又、長石
とともに融けてガラス成分の一部となりガラス相の屈折
率を高めて主構成相であるフォルステライト結晶の屈折
率に近似させて、磁器としての透光度を増すなどの作用
もなす。
【0033】次に、焼成条件について述べると、ガスや
灯油などを燃料にした炉や電気炉を用いて酸化雰囲気中
あるいは大気中で焼成することは、美しいアイボリーな
いしは黄色〜クリーム系の色調を得るために必須の条件
である。例えば本発明の磁器をガス炉等によってわずか
にでも還元雰囲気にした中で焼成した場合、その磁器の
素地は通常市販されている磁器に近似した灰白色を呈
し、特色の無いものとなる。
【0034】焼成温度は1240℃未満では焼結しなか
ったりアイボリーの色調が暗く、透光度も劣る。又、本
発明の磁器の主構成相は高耐火性のフォルステライト結
晶であるが焼結助剤に由来するガラス相を含んでいるの
で、1440℃を超える高温で焼成すると台板の耐火材
に付着したり軟化変形(へたり)を起こす。このような
高い焼成温度はファインセラミックのメーカのような高
温炉を持たぬ限り実現出来ず、通常の陶磁器製作では実
際的ではない。
【0035】
【実施例】実験にあたっては、多くは主原料に市販の合
成フォルステライト(純度96%)を用いたが、ほかに
マグネシア(MgO)や焼成によって酸化してマグネシ
アになる炭酸マグネシウム(MgCO3 )や滑石(3M
gO・4SiO2 ・H2 O)あるいは石英(SiO2
を組成がほぼ2MgO・SiO2 となるように配合した
ものも主原料に用いた。これ等の主原料に焼結助剤を配
合して成型し焼成して磁器化した。
【0036】焼結助剤は、必須成分として金丸長石を用
い、これに添加する炭酸カルシウム(CaCO3 )、炭
酸バリウム(BaCO3 )、炭酸ストロンチウム(Sr
CO3 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ランタン(La2
3)については試薬を用いた。
【0037】実験は具体的には、前述の主原料と焼結助
剤を調合した原料粉末100部を、分散剤2部、バイン
ダー1部に純水48部を加えて自動乳鉢を用いて1時間
混合して良く分散させ濃厚な原料スラリーを作った。
【0038】これを石膏鋳型に流し入れて成形し、約3
時間後に離型して板状の成形体を得た。これを2日間自
然乾燥後、素焼きをし、次いで本焼成を行なって磁器に
した。
【0039】素焼きは電気炉を用いて10時間かけて9
60℃まで昇温し0.5時間保持後、通電を止め自然冷
却をした。本焼成は電気炉を用いて15時間かけて所定
の焼成温度にまで上昇させ1時間保持した後に3時間で
温度を300℃下げてから通電を止め自然冷却をし、磁
器板を得た。
【0040】磁器板は焼成時に台板に接していた面をダ
イヤモンド砥石で研削して厚みを3mmに揃え、測定に
用いるテストピースを作った。このテストピースについ
て、照度計で光の透過率Dを測定し、透光度δを算出し
て評価をした。
【0041】厚み1mmにおける光の透過率すなわち透
光度δの算出は次の式によった。
【0042】Logδ=LogD/d d:
素地の厚みmm 実験に用いた主な原料の分析値を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】−実験例1− 合成フォルステライト粉末のみを用いた焼結助剤を含ま
ない原料スラリーを作り成形し乾燥後電気炉で素焼きを
してから1400℃で本焼成した。焼結はしたが、くす
んだアイボリー磁器で美しい素地ではない。厚さ3mm
の板を作って照度計で光の透過率を測定し、これより透
光度を算出したところ透光度は14.6%であった。
【0045】−実験例2− 通常の磁器は粘土鉱物(カオリン等)と珪砂を主原料に
して焼結を促進させる物質として長石類が加えられてい
る。そこでこの実験では合成フォルステライト粉末に金
丸長石を種々の割合で配合したスラリーを作り成形し乾
燥後素焼きをし、本焼成して磁器を得た。
【0046】長石を加えたことで実験例1に比して磁器
の色調は格段に明るく美しくなった。長石の添加が少な
いか或いは焼成温度が低い場合は僅かに黄緑を帯びたア
イボリーになり、長石の添加が多いか焼成温度が高くな
ると色調は明るくなりクリーム色になる。
【0047】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】この実験で最も良い透光度を示したのは1
440℃焼成においては合成フォルステライト84%+
金丸長石16%のもので透光度が32.2%であった。
1400℃焼成においてはフォルステライト83%+金
丸長石17%のもので透光度が31.3%であった。ま
た1360℃焼成においては、フォルステライト79%
+金丸長石21%のもので透光度が27.6%であっ
た。
【0050】この実験では、どの組成に於ても透光度が
36%を超える磁器は得られなかったが、焼結助剤とし
ての金丸長石がアイボリー磁器の色調を好ましいものに
することがわかった。しかし、金丸長石を21%以上含
む組成は1360℃焼成では耐火材で作った台板に敷い
たアルミナの敷き粉が付着し、さらに高温の1400℃
と1440℃焼成では付着とともに磁器が軟化して変形
を生じていた。
【0051】−実験例3− この実験では合成フォルステライトを主原料に用い、焼
結助剤としては金丸長石に炭酸カルシウムを加えて磁器
原料にした。
【0052】実験例2の焼結助剤に金丸長石のみを用い
た実験で、比較的透光度が有るのは原料中の焼結助剤の
量が1440℃焼成では16%、1400℃焼成では1
7%、1360℃焼成では21%の時であった。しかし
焼結助剤を21%以上含む原料は焼成時に付着や軟化変
形を生じて実用に問題が有りそうである。そこでこの実
験からは原料中の焼結助剤の量を5%、10%、15%
に固定しその中で焼結助剤の組成を変え、焼成温度を変
えて磁器化し、その透光度を求めた。
【0053】この実験では焼結助剤として炭酸カルシウ
ムのみを添加した磁器は濃いアイボリーを呈したが、金
丸長石と炭酸カルシウムとの混合焼結助剤を用いた磁器
は明るいアイボリーとなり、焼結助剤が多くなるか、あ
るいは焼成温度が高くなるに従ってクリーム色になっ
た。
【0054】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】実験で最も良い透光度を示したのは合成フ
ォルステライト85%+炭酸カルシウム9%+金丸長石
6%の組成で1440℃焼成においては少し軟化変形し
たが透光度55%であった。同じ組成で1400℃焼成
では軽い付着が有り、透光度は48.9%であった。同
じく1360℃焼成では付着も少なく透光度は44.9
%であった。
【0057】合成フォルステライト90%+焼結助剤1
0%の組成と合成フォルステライト95%+焼結助剤5
%の組成では1440℃焼成で付着も軟化変形も認めら
れなかった。
【0058】この様に、焼結助剤に金丸長石と炭酸カル
シウムを併用した場合は各々を単味で焼結助剤として用
いるよりも格投に透光度が優れており、併用による相乗
効果が認められる。
【0059】−実験例4− この実験では合成フォルステライトを主原料に用い、焼
結助剤としては金丸長石に炭酸バリウムを加えて磁器原
料にした。
【0060】この実験では焼結助剤として炭酸バリウム
のみを添加した磁器は黄土色を呈したが、金丸長石と炭
酸バリウムとの混合焼結助剤を用いた磁器はアイボリー
となり、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成温度が高
くなるに従ってクリーム色になった。
【0061】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】実験で、最も良い透光度を示したのは合成
フォルステライト85%+炭酸バリウム9%+金丸長石
6%の組成で1440℃焼成においては軽い付着が有っ
たが透光度は44.5%であった。同じ組成で1400
℃焼成では付着も少なく、透光度は45.5%、同じく
1360℃焼成では付着はなく透光度は36.9%であ
った。
【0064】合成フォルステライト90%+焼結助剤1
0%の組成と合成フォルステライト95%+焼結助剤5
%の焼成では1440℃焼成で付着も軟化変形も認めら
れなかった。
【0065】この様に、焼結助剤に金丸長石と炭酸バリ
ウムを併用した場合は各々を単味で焼結助剤として用い
るよりも透光度が優れており、併用による相乗効果が認
められる。
【0066】−実験例5一 この実験では合成フォルステライトを主原料に焼結助剤
として金丸長石に炭酸ストロンチウムを加えて磁器原料
にした。
【0067】この実験では焼結助剤として炭酸ストロン
チウムのみを添加した磁器は黄土色を呈したが、金丸長
石と炭酸バリウムを混合した焼結助剤を用いた磁器はア
イボリーとなり、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成
温度が高くなるに従って明るいクリーム色になった。
【0068】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
について光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。結
果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】実験で最も良い透光度を示したのは合成フ
ォルステライト85%十炭酸ストロンチウム9%+金丸
長石6%の組成で1440℃焼成においては付着が有っ
たが透光度50.0%であった。同じ組成で1400℃
焼成では僅かに付着が有り、透光度は44.1%であっ
た。1360℃焼成では合成フォルステライト90%+
炭酸ストロンチウム6%+金丸長石4%の組成で付着も
無く透光度は36.4%であった。
【0071】合成フォルステライト90%+焼結助剤1
0%の組成と合成フォルステライト95%+焼結助剤5
%の組成では1440℃焼成で付着も軟化変形も認めら
れなかった。
【0072】この様に、焼結助剤に金丸長石と炭酸スト
ロンチウムを併用した場合は各々を単味で焼結助剤とし
て用いるよりも透光度が優れており、併用による相乗効
果が認められる。
【0073】−実験例6− この実験では合成フォルステライトを主原料に用い焼結
助剤として金丸長石に酸化亜鉛を加えて磁器原料にし
た。
【0074】この実験では焼結助剤として酸化亜鉛のみ
を添加した磁器は薄暗い黄土色を呈したが、金丸長石と
酸化亜鉛の混合焼結助剤を用いた磁器は明るい色調にな
り、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成温度が高くな
るに従って明るいアイボリーになった。
【0075】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】実験で最も良い透光度を示したのは合成フ
ォルステライト85%+酸化亜鉛9%+金丸長石6%の
組成で1440℃焼成において付着も変形も無く透光度
45.2%であった。又、合成フォルステライト90%
+酸化亜鉛6%+金丸長石4%の組成でも1440℃焼
成において付着も変形も無く透光度41.7%であっ
た。
【0078】この様に、焼結助剤に金丸長石と酸化亜鉛
を併用した場合は各々を単味で焼結助剤として用いるよ
りも透光度が優れ、併用による相乗効果が認められた
が、1400℃焼成と1360℃焼成においては透光度
が36%を超えるものが無く、併用の効果はさほど大き
なものではない。
【0079】−実験例7− この実験では合成フォルステライトを主原料に焼結助剤
として金丸長石に酸化ランタンを加えて磁器原料にし
た。
【0080】金丸長石と酸化ランタンの混合焼結助剤を
用いた磁器は明るい色調になり、焼結助剤が多くなる
か、あるいは焼成温度が高くなるに従って明るいアイボ
リーになった。
【0081】この実験では磁器原料を成型し乾燥後96
0℃で素焼きをして室内に保管しておいたところ、原料
に酸化ランタンを6%以上を含む素焼き素地は10時間
程経過してひび割れを生じた。酸化ランタンを8%以上
を含んだ素地はひび割れと共に全体が膨み、24時間後
には触れると簡単に崩壊し粉末になった。これをX線回
折したところフォルステライト(Mg2 SiO2 )の他
に水酸化ランタン(La(OH)3 )が検出された。
【0082】素焼き素地が崩壊した原因は、素地が大気
中の湿気を吸い、この水分が素地中に過剰に存在する酸
化ランタンと反応して水酸化ランタンになりこれによる
体積膨張が素地を破壊したと思われる。
【0083】6%以下の酸化ランタンを含む素焼き素地
については水中に1時間浸してから室内に10日間放置
して自然乾燥させたが異状は見られなかった。
【0084】異状が見られなかった各組成について焼成
温度毎に、厚さ3mmの板について光透過率を測定し磁
器の透光度を算出した。結果を表7に示す。
【0085】
【表7】
【0086】この実験で、最も良い透光度を示したのは
合成フォルステライト95%+酸化ランタン2〜4%で
残りが金丸長石という組成で1440℃焼成において付
着も変形も無く透光度42.9〜43.2%であった。
【0087】この様に、焼結助剤に金丸長石と酸化ラン
タンを併用する場合は、各々を単味で焼結助剤として用
いるよりも透光度が優れており、併用による相乗効果が
認められる。
【0088】−実験例8− この実験では磁器原料の主原料に合成フォルステライト
を90%或いは85%用いて、今までで最も透光度の優
れた磁器が得られた金丸長石に炭酸カルシウム加えた焼
結助剤の炭酸カルシウムの一部を酸化ランタンに置換し
てその効果を調べた。
【0089】この実験では焼結助剤に金丸長石と炭酸カ
ルシウムを加えた磁器も炭酸カルシウムの一部を酸化ラ
ンタンに置換した磁器も色調に差は無く、アイボリーを
呈し、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成温度が高く
なるに従って明るいクリーム色になった。
【0090】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表8に示す。
【0091】
【表8】
【0092】実験で最も良い透光度を示したのは合成フ
ォルステライト90%+炭酸カルシウム4%+酸化ラン
タン2%+金丸長石4%の組成で、1440℃焼成にお
いては僅かに付着が有り透光度は48.9%であった。
同じ組成で1400℃焼成では付着もなく透光度は4
4.8%であった。
【0093】この様に、焼結助剤中の炭酸カルシウムの
一部を酸化ランタンに置換させた場合は、磁器の透光度
を向上させる効果は大きくないが焼成時の台板への付着
を軽減する作用があることがわかった。
【0094】−実験例9− この実験では磁器原料の主原料に合成フォルステライト
を90%或いは85%用いて今までで最も透光度の優れ
た磁器が得られた金丸長石に炭酸カルシウムを加えた焼
結助剤の炭酸カルシウムの一部を酸化亜鉛に置換してそ
の効果を調べた。
【0095】この実験では焼結助剤に金丸長石と炭酸カ
ルシウム加えた磁器も炭酸カルシウムの一部を酸化亜鉛
に置換した磁器も色調に差は無く、アイボリーを呈し、
焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成温度が高くなるに
従って明るいクリーム色になった。
【0096】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
について光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。結
果を表9に示す。
【0097】
【表9】
【0098】実験で良い透光度を示したのは合成フォル
ステライト85%+炭酸カルシウム6%+酸化亜鉛3%
+金丸長石6%の組成で、1440℃焼成においては僅
かに付着が有り透光度は48.2%であった。同じ組成
で1400℃焼成では付着もなく透光度は47.6%、
1360℃焼成での透光度は44.9%であった。
【0099】この様に焼結助剤中の炭酸カルシウムの一
部を酸化亜鉛に置換させた場合は、磁器の透光度を向上
させる効果は大きくはないが焼成時の台板への付着を軽
減する作用があることがわかった。
【0100】一実験例10一 この実験では磁器原料の主原料に合成フォルステライト
を90%用いて、焼結助剤として金丸長石4%に残部を
炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムの
うち2〜3種を混合したものについてその効果を調べ
た。
【0101】この実験ではこれらの磁器はいずれもアイ
ボリーを呈し、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼成温
度が高くなるに従って薄黄色〜明るいクリーム色になっ
た。各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板について
の光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。結果を表
10に示す。
【0102】
【表10】
【0103】実験ではどの組成においても1440℃焼
成では僅かに焼成台板上のアルミナ敷き粉への付着が有
ったが良い透光度を示した。1400℃焼成では付着も
なく良い透光度を示した。
【0104】これらの中で最良の組成は、合成フォルス
テライト90%+炭酸カルシウム2%+炭酸バリウム2
%+炭酸ストロンチウム2%+金丸長石4%で、144
0℃焼成においては僅かに焼成台板上の敷き粉への付着
が有ったが透光度は52.0%であり、1400℃焼成
では敷き粉の付着も無く透光度は50.3%であった。
【0105】−実験例11− この実験では磁器原料の主原料に合成フォルステライト
を85%用いて、焼結助剤として金丸長石6%に残部を
炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムの
うち2〜3種を混合したものについてその効果を調べ
た。これらの磁器はいずれもアイボリーを呈し、焼結助
剤が多くなるか、あるいは焼成温度が高くなるに従って
薄肌〜クリーム色になった。
【0106】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
について光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。結
果を表11に示す。
【0107】
【表11】
【0108】実験ではどの組成においても1440℃焼
成での透光度は良いが、焼成台板上のアルミナ敷き粉へ
の付着がひどくへたりも有った。1400℃焼成では付
着は有るもののへたりは少なく良い透光度を示した。1
360℃焼成では付着もへたりも無く、実験中この温度
で最良の透光度を示した組成は、合成フォルステライト
85%+炭酸カルシウム6%+炭酸バリウム3%+金丸
長石6%、1360℃焼成での透光度は50.3%であ
った。これよりもさらに低温の1320℃焼成で最良の
透光度を示した組成は、合成フォルステライト85%+
炭酸カルシウム4.5%+炭酸バリウム4.5%+金丸
長石6%で透光度が42.3%であった。
【0109】一実験例12一 この実験では合成フォルステライトを主原料にして、こ
の焼結助剤として金丸長石4:炭酸カルシウム4:炭酸
バリウム1:炭酸ストロンチウム1の比率で混合したも
のを、量を変えながら添加混合して磁器原料を作り、焼
成温度毎に透光度と付着の程度を調べて、透光度に優れ
付着が無い実用性の有る磁器組成と焼成温度の範囲を明
らかにした。
【0110】実験ではこれらの磁器はいずれも薄肌色〜
アイボリーを呈し、焼結助剤が多くなるか、あるいは焼
成温度が高くなるに従って薄黄色〜クリーム色になっ
た。
【0111】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表12Aに示す。
【0112】
【表12】
【0113】焼結助剤の添加量が多いと低温度で焼成し
ても透光度の良い磁器が得られるが焼成時の付着や変形
が生じやすい。
【0114】表12から明らかように、1440℃焼成
のときは焼結助剤は4〜15%添加することが望まし
く、1400℃焼成のときは焼結助剤は6〜20%添加
することが望ましく、1360℃焼成のときは焼結助剤
は10〜30%添加することが望ましく、1320℃焼
成のときは焼結助剤は15〜35%添加することが望ま
しい。また、焼結助剤を4〜15重量%添加した場合は
磁器は薄肌色〜アイボリーの色調になり、焼結助剤を1
5〜35%重量%添加した場合は薄黄色〜クリーム色に
なる。
【0115】一実験例13一 実験例12において、焼結助剤の添加量を多くすると焼
成時の付着や変形が生じやすいが焼成温度を低くしても
透光度の良い磁器が得られることが明らかになった。
【0116】そこでこの実験では、実験例11におい
て、1360℃焼成で付着が無く透光度50.3%を示
し、1320℃焼成においても透光度42.1%と良い
値を示した合成フォルステライト85%+炭酸カルシウ
ム6%+炭酸バリウム3%+金丸長石6%の組成を、さ
らに焼結助剤(焼結助剤の組成は炭酸カルシウム4:炭
酸バリウム2:金丸長石4)の添加割合を多くして透光
度の良い磁器を低い焼成温度で作ることを試みた。
【0117】実験ではこれらの磁器は低い温度で焼成し
たときは黄色味を帯びたアイボリーを呈し、焼成温度が
高くなるに従って明るいアイボリーになった。
【0118】各組成と各焼成温度毎に、厚さ3mmの板
についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出した。
結果を表13に示す。
【0119】
【表13】
【0120】原料中の焼結助剤が25〜35%の時12
60℃焼成で透光度に優れた磁器が得られた。焼結助剤
が35%の時は1260℃焼成で磁器に異常なく128
0℃焼成で敷き粉への付着を生じ、1280℃焼成で磁
器は敷き粉と共に台板に熔着した。焼結助剤が35%と
もなると最適焼成温度幅は極めて狭く、焼結助剤をこれ
以上増やすのは実用的ではない。
【0121】−実験例14− この実験では磁器原料の主原料に焼成によって組成がほ
ぼ2MgO・SiO2となるように調合した混合物を用
いた。滑石(3MgO・SiO2 ・H2 O)粉末39部
と炭酸マグネシウム粉末61部を秤量して混合して用い
た。用いるに先立ち、この原料を焼成して酸化物にした
ときに重量が65%にまで減少することを確認した。
【0122】実験例12での結果と比較ができるように
焼結助剤として、金丸長石4:炭酸カルシウム4:炭酸
バリウム1:炭酸ストロンチウム1の比率で秤量した混
合物をアルミナ製の容器に入れ、電気炉を用いて960
℃で焼成し、重量が77%に減少した塊をスタンプミル
で砕き、アルミナ乳鉢で微粉砕して用いた。
【0123】実験例12の主原料と焼結助剤の比率が9
0:10、80:20、70:30であったのでこれに
見合う磁器組成にするために、滑石と炭酸マグネシウム
を混合した主原料と前述の仮焼した焼結助剤を138:
7.7、123:15.4、108:23.1の比率に
配合した磁器原料スラリーを作り、成形乾燥後電気炉で
素焼きをし、本焼成して磁器を得た。
【0124】これらの磁器はいずれも収縮が目立って大
きかったが、薄肌色〜アイボリーを呈し、焼結助剤が多
くなるか、あるいは焼成温度が高くなるに従って薄黄色
〜クリーム色になるなど実験例12と大差の無いもので
あった。
【0125】これら各組成と各焼成温度毎に、厚さ3m
mの板についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出
した。結果を表14に示す。
【0126】
【表14】
【0127】透光度や付着や変形の程度においても実験
例12と類似したもので有った。
【0128】−実験例15− この実験では磁器原料の主原料に組成がほぼ2MgO・
SiO2 となるように調合した混合物として、高純度微
粉珪石(SiO2 )45部と海水マグネシア(MgO)
55部を秤量し混合して用いた。
【0129】実験例12の結果ならびに実験例14の結
果と比較ができるように焼結助剤には、実験例14で用
いた金丸長石4:炭酸カルシウム4:炭酸バリウム1:
炭酸ストロンチウム1の混合物を仮焼して微粉砕した物
を用いた。
【0130】実験例12の主原料と焼結助剤の比率が9
0:10、80:20、70:30、であったのでこれ
に見合う磁器組成にするために、高純度微粉珪石と海水
マグネシアを混合した主原料と前述の仮焼焼結助剤を9
0:7.7、80:15.4、70:23.1の比率に
配合した磁器原料スラリーを作り、成形乾燥後電気炉で
素焼きをし、本焼成して磁器を得た。
【0131】これらの磁器は薄肌色〜アイボリーを呈
し、焼結助剤が多くなるか焼成温度が高くなるに従って
薄黄色〜クリーム色になったが、実験例12に比べて全
体に明るい色調であった。
【0132】これら各組成と各焼成温度毎に、厚さ3m
mの板についての光透過率を測定し磁器の透光度を算出
した。結果を表15に示す。
【0133】
【表15】
【0134】実験例12に比し、透光度は優れていたが
焼成時の付着の程度は類似していた。
【0135】−実施例一 実験で透光度が優れ色合いも良い磁器が得られた、合成
フォルステライト85重量%+CaCO3 6重量%+B
aCO3 3重量%+金丸長石6重量%の磁器原料組成に
よって、具体的な器物としてのぐいのみを試作した。
【0136】調合は、先ず合成フォルステライト340
0g、炭酸カルシウム240g、炭酸バリウム120
g、仮焼した金丸長石240g、計4000gを秤量
し、これを純水2000ミリリットル、分散剤(ディス
ペックA405)160ミリリットル、アクリルエマル
ジョン系のバインダー(WA−320)200gと、ア
ルミナボール(径15mm)5kgを共にナイロン樹脂
製のポットミル(約10リットル)に投入し、16時間
回転させて湿式混合を行ないスラリー化した。これをポ
リビーカーに取り、消泡剤(P−502)20gを加え
てゆっくりと1時間攪拌して脱泡を行ない、約3400
ミリリットルの磁器スラリーを得た。
【0137】石膏鋳型には容積190ミリリットルのぐ
いのみ形状のものを用い、これにスラリーを注入し所定
時間保持した後に排泥し成型した。石膏鋳型への着肉
は、注入から排泥まで10分間で厚み2.7mm、15
分で3mm程度で厚みのコントロールは容易であった。
排泥後3時間置いて反転して離型させ成型体を得た。成
形体は自然乾燥を3日間行ない、カッターナイフやサン
ドペーパーを用いてバリを取り表面の仕上げをした。
【0138】素焼きは電気炉を用い、室温から10時間
かけて960℃で0.5時間保持後電源を切って自然冷
却をしたが、取り出したところ素焼き品の半数が割れて
いた。これは炉のヒーターの輻射熱が直に品物を熱して
急熱や加熱むらが生じていると判断し、残りの成型体に
ついてはアルミナの匣鉢で覆って炉に入れて焼成し、全
品異常なく素焼き品を得ることができた。
【0139】先ず、素焼き品の一部を本焼成した。本焼
成は電気炉を用い、室温から15時間かけて1360℃
に昇温し、1時間保持後3時間かけて1100℃まで下
げ、電源を切って自然冷却をした。
【0140】焼成品は台板との接触部分にアルミナ粉末
が付着していたがサンドペーパーで擦って容易に取り去
ることが出来、変形も少なく磁器の素地がクリーム色で
手触りが滑らかな、口径58mmの磁器製ぐいのみを得
た。
【0141】このぐいのみの厚み2.7mmの箇所で光
透過率(δ)を測定し透光度を算出したところ47%で
あった。
【0142】このぐいのみの破片をアルミナ乳鉢で粉末
にしてX線回折したところ主構成相はフォルステライト
(Mg2 SiO2 )で、他にはガラス相と極めて微量の
モンセチライト(CaMgSiO4 )と思われる結晶が
存在していた。
【0143】次いで、残った素焼き品の一部を条件を変
えて本焼成した。本焼成には電気炉を用い、室温から1
5時間かけて1320℃に昇温し、1時間保持後そのま
ま電源を切って自然冷却をした。アルミナ粉末の付着も
変形もなく磁器の素地が黄身を帯びたアイボリーで手触
りが滑らかなぐいのみを得た。
【0144】このぐいのみの厚み2.5mmの箇所で光
透過率を測定し透光度(δ)を算出したところ37%で
あった。
【0145】このぐいのみの破片を粉末にしてX線回折
したところ主構成相はフォルステライト(Mg2 SiO
2 )で他はガラス相であった。
【0146】次いで、残りの素焼き品の一部をガス炉を
用いて酸化焼成した。室温から16時間かけて1340
℃に昇温し、30分保持してからガスの供給を止めて送
風に切り替えて冷却をした。なんら付着も変形もなく素
地がアイボリーで手触りが滑らかなぐいのみを得た。
【0147】このぐいのみの厚み2.8mmの箇所で光
透過率を測定し透光度(δ)を算出したところ39.7
%であった。
【0148】ぐいのみの破片を粉末にしてX線回折した
ところ主構成相はフォルステライト(Mg2 SiO2
で他はガラス相であった。
【0149】最後に、残りの素焼き品をガス炉を用いて
還元焼成した。室温から14時間かけて1000℃に昇
温し、ガス流量を増して還元焼成に切り替え3時間後に
1340℃まで昇温し、還元雰囲気を保ったまま100
0℃まで降温してガスの供給を止め送風に切り替え冷却
をした。付着も変形もなく素地が灰白色のぐいのみを得
た。
【0150】このぐいのみの厚み2.9mmの箇所で光
透過率を測定し透光度を算出したところδ=35.1%
と酸化焼成をした物よりも劣ることが分かった。
【0151】ぐいのみの破片を粉末にしてX繰回折した
ところ主構成相はフォルステライト(Mg2 SiO2
で、他にはガラス相と組成が特定できない微量の結晶相
が検出された。
【0152】
【発明の効果】以上のように本発明は、主原料としての
合成フォルステライト粉末と、焼結助剤としての長石、
及び焼成によってCaO、BaO、SrO、ZnO、L
2 3 となる化合物のうちの少なくとも一種を4〜3
5重量%含有してなる磁器原料を焼成した磁器焼結体で
あって、主構成相がフォルステライト(2MgO・Si
2 )結晶で、残部が主として長石を含む焼結助剤由来
のガラスから成り、厚さ1mmにおける可視光線の透過
率が36%以上の磁器焼結体から成ることから、明るい
アイボリーないしは黄色〜クリーム系の色調を呈するよ
うになり、食卓用の器物や工芸品のみならず装飾品や照
明具や表示装置などの部材として最適である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主原料としての合成フォルステライト粉
    末と、焼結助剤としての長石と焼成によって酸化カルシ
    ウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、
    酸化ランタンとなる化合物のうちの少なくとも一種を4
    〜35重量%含有してなる磁器原料を焼成した磁器焼結
    体であって、主構成相がフォルステライト(2MgO・
    SiO2 )結晶で、残部が主として長石を含む焼結助剤
    由来のガラスから成り、厚さ1mmにおける可視光線の
    透過率が36%以上の磁器焼結体。
  2. 【請求項2】 焼結助剤として長石と炭酸カルシウムを
    5〜15重量%含有する磁器原料を焼成して成る請求項
    1に記載の磁器焼結体。
  3. 【請求項3】 焼結助剤として長石と炭酸バリウムを5
    〜15重量%含有する磁器原料を焼成して成る請求項1
    に記載の磁器焼結体。
  4. 【請求項4】 焼結助剤として長石と炭酸ストロンチウ
    ムを5〜15重量%含有する磁器原料を焼成して成る請
    求項1に記載の磁器焼結体。
  5. 【請求項5】 焼結助剤として長石と酸化亜鉛を10〜
    15重量%含有する磁器原料を焼成して成る請求項1に
    記載の磁器焼結体。
  6. 【請求項6】 焼結助剤として長石と6重量%以下の酸
    化ランタンを10〜15重量%含有する磁器原料を焼成
    して成る請求項1に記載の磁器焼結体。
  7. 【請求項7】 焼結助剤として長石、炭酸カルシウム及
    び酸化ランタンを10〜15重量%含有する磁器原料を
    焼成して成る請求項1に記載の磁器焼結体。
  8. 【請求項8】 焼結助剤として長石、炭酸カルシウム、
    及び酸化亜鉛を10〜15重量%含有する磁器原料を焼
    成して成る請求項1に記載の磁器焼結体。
  9. 【請求項9】 焼結助剤として長石、炭酸カルシウム、
    炭酸バリウム、及び炭酸ストロンチウムのうち2〜3種
    を混合した焼結助剤を10〜15重量%含有する磁器原
    料を焼成して成る請求項1に記載の磁器焼結体。
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JP2006089357A (ja) * 2004-09-27 2006-04-06 Nippon Carbide Ind Co Inc セラミック基板の製造方法
CN105503841A (zh) * 2015-12-08 2016-04-20 苏州科技学院 一种氨基咔唑缩糠醛衍生物及其应用
JP2023140481A (ja) * 2022-03-23 2023-10-05 Toto株式会社 衛生陶器

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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