JP3030947B2 - オイルレベルセンサ - Google Patents

オイルレベルセンサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車のエンジンオイル
レベルなどのオイルレベルを検知する感温抵抗体からな
るオイルレベルセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のエンジンオイルなどのオ
イルレベルを検知するためには、目盛りの付いたフレキ
シビリティーのある金属棒(オイルレベルゲージ)をエ
ンジンの底部に差し込んで、金属棒に付着したオイルの
位置を金属棒の目盛りを目視で読んでオイルレベルを検
出していた。
【0003】また、アルミナ基材上に白金薄膜感熱抵抗
素子を形成し、オイル残量に応じた感熱抵抗値変化をブ
リッジ出力電圧として検出するセンサがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなオ
イルレベルゲージでオイルレベルを検出するには、エン
ジンを停止した後、エンジンオイルの流下を待って、エ
ンジン底部からゲージを抜きだして目視で検査する必要
があり、自動車走行中にオイルレベルを検出することは
不可能であった。
【0005】それに対して、アルミナ基板上に白金薄膜
感熱抵抗素子を形成したものは、走行中でも随時オイル
レベルを検出することができるが、強い衝撃が加わった
場合には、アルミナ基板にクラックを生じることがあ
り、信号を検出することが不可能となったり、また、基
板の一部が欠落してエンジンオイルに混入するために、
エンジントラブル発生の原因となることがあった。
【0006】この解決策として、特願平1−26242
8に開示されているように、金属基材上にホーロー製の
電気絶縁層を設け、その上に形成したリード線の端部に
温度変化により抵抗値が変化する抵抗体とオーバーコー
ト層を設けた構成のオイルレベルセンサがある。このオ
イルレベルセンサは、金属に直接ホーロー層が焼き付け
られているため、機械的強度が優れているが、電気絶縁
層がガラス質からなるホーローで構成されているため、
電極や抵抗体層を形成するために加熱すると、ホーロー
層が軟化流動しやすくなる。そのため、ホーロー上に形
成する電極および抵抗体の形成温度には制約があった。
また、エンジンが異常に高温になった場合、センサが熱
的に破壊され、耐熱信頼性に欠けるという問題があっ
た。
【0007】このように従来のオイルレベルセンサは性
能的にまだ不十分で、特性面、信頼性面に課題があっ
た。
【0008】本発明はこのような課題を解決するもの
で、機械的衝撃に強く、耐熱性に優れ、自動車の走行中
でもオイルレベルを計測できるオイルレベルセンサを提
供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明は、金属基材上に設けた一層または多層の電気
絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けた一対の電極と、前
記一対の電極間にまたがって、前記電気絶縁層の表面に
設けた感温抵抗体と、前記感温抵抗体の表面に設けたオ
ーバーコート層とを備えたオイルレベルセンサにあっ
て、前記電気絶縁層の少なくとも一層が焼成によってM
gO系結晶相を生成する結晶化ガラスであり、かつ、前
記結晶化ガラスの組成が重量%でMgO 16〜50
%、BaO0〜50%、CaO 0〜20%、La23
0〜40%、B23 5〜34%、SiO2 7〜3
0%、MO2(MはZr,Ti,Sn,Znの少なくと
も1種)0〜5%、P25 0〜5%を主体として含む
ようにしたものである。
【0010】また、結晶化ガラス粉末を電気泳動電着法
で金属基材上に電着し、電着した前記結晶化ガラス粉末
を焼成して電気絶縁層を形成するようにしたものであ
る。
【0011】
【作用】この構成によれば、金属基材上の電気絶縁層が
結晶化ガラス粉末の塗布層からなり、焼成によってMg
O系結晶相を有する結晶化ガラスを形成することによ
り、耐熱性が向上する。
【0012】その理由は図3に示す熱膨張曲線からわか
るように、上記の組成であっても、ガラス状態(アモル
ファス状態)の(イ)の場合、600〜700℃に屈伏
点を有し、この屈伏点付近の温度では電気絶縁層の破損
が発生する。しかし、これを熱処理(焼成)し、少なく
とも、MgO系の結晶相を析出させると、(ロ)のよう
に屈伏点が900℃以上となり破損が発生しにくくな
り、耐熱性が向上する。その結果、オイルレベルセンサ
の耐衝撃性、耐熱性、信頼性が向上することとなる。
【0013】
【実施例】以下に本発明の一実施例のオイルレベルセン
サを図面を参照しながら説明する。 (1)金属基体 図1に本実施例のオイルレベルセンサの構成を示す。図
に示すように金属基材1はホーロ用鋼板、ステンレス鋼
板、珪素鋼板、ニッケルークロムー鉄、ニッケルー鉄、
コバール、インバーなどの各種合金、クラッド材などが
用いられる。これらの金属基材を用いて、円筒状や平板
状など所望の形状に通常の機械加工、エッチング加工、
レーザ加工などで加工される。
【0014】これら金属基体1は電気絶縁層2の密着性
を向上させるため、表面脱脂した後、ニッケル、コバル
トなどの金属メッキを施したり、熱酸化処理によって酸
化被覆層を形成したりする。 (2)電気絶縁層 図1に示す電気絶縁層2はガラス質層を焼成することに
より、MgO系結晶相を有する結晶化ガラスを生成し、
電気絶縁性、耐熱性を向上させる。そのガラス組成は、
例えば下記のようなものである。
【0015】 SiO2 7〜30重量% B23 5〜34重量% MgO 16〜50重量% CaO 0〜20重量% BaO 0〜50重量% ZrO2 0〜5 重量% P25 0〜5 重量% La23 0〜40重量% 上記の組成範囲のガラス質層が選択される理由は、上記
の電極、抵抗体層などの印刷焼成時の耐熱性あるいは使
用中の信頼性要求に応えるためである。
【0016】また、上記の結晶化ガラス質を金属基体上
に被覆する方法としては、通常のスプレー法、粉末静電
塗装法、印刷法、電気泳動電着法などがある。被膜の緻
密性、電気絶縁性などの観点から、電気泳動電着法が最
も望ましい。
【0017】電気泳動電着法は、ガラスとアルコールお
よび少量の水を混合し、ボールミル中で約20時間粉
砕、混合し、ガラスの平均粒径を1〜5μm程度にす
る。得られたスラリーを電解槽に入れて、液を循環す
る。(1)で準備された金属基体1を、このスラリー中
に浸漬し、100〜400Vで陰分極させることによ
り、金属基体表面にガラス粒子を電着させる。この電着
層を乾燥後、850〜900℃で10分〜1時間焼成し
て、電気絶縁層2が得られる。
【0018】なお、この電気絶縁層は電極体3および抵
抗体層4との膨張率の整合を図るため、MgO系結晶相
を有する第1の層の他に、中間層として第2の層を設け
ることも可能である。 (3)電極体、抵抗体層 結晶化ガラスで形成された電気絶縁層2上に、図1に示
すように電極体3を形成する。抵抗体4の材質は、ルテ
ニウム、ロジウム、白金などの白金族元素もしくはその
酸化物材料が選択される。さらに、抵抗体4を保護する
ために、ガラス質のオーバーコート層5が形成される。
【0019】これらのパターン形成法はメッキ法、溶射
法、スクリーン印刷法などが考えられるが、結晶化ガラ
ス質の電気絶縁層2と電極体3、抵抗体層4の密着性の
観点から、スクリーン印刷法が望ましい。スクリーン印
刷法は、所望のパターン形状のメッシュスクリーンによ
りインクを印刷し、焼成することにより電極体3、感温
抵抗体層4が形成される。電極体3、抵抗体層4は通常
500〜850℃の温度で焼成されるので、電気絶縁層
2は耐熱性が要求される。また、回路パターンは時とし
て、微細パターンが要求されるので、電気絶縁層表面の
平滑性が重要であり、表面状態が印刷歩留まりに影響を
与える。
【0020】以下に具体的な実施例を説明する。 (実施例1) (表1)〜(表5)に示す組成の結晶化ガラスを合成
し、SUS430からなる金属基材(100mm×100
mm×0.5mm)1の表面に、厚さ100μmの結晶化ガ
ラス質層を電気泳動電着法で電着し、880℃で10分
間焼成する。このサンプルの表面粗度、うねり性、耐熱
性などの諸特性を測定した。結果を(表1〜表5)に示
す。
【0021】なお、表面粗度はタリサーフ表面粗さ計で
測定し、表面中心線平均粗さRaで示した。うねり性は
タリサーフ表面粗さ計で得られた山と谷の差Rmax で表
わした。耐熱性は、サンプルを850℃の電気炉中に1
0分間入れ、炉から取り出して30分間自然放冷するサ
イクルを繰り返す、スポーリングテストを行ってサンプ
ルのクラックや剥離の状態を調べた。なお、クラック検
査は赤インク中に浸漬した後、表面を拭き取って、目視
観察によってクラックの有無を調べた。表中の○、△、
×は、○が10サイクル以上行っても、異常が認められ
ないもの、△は5〜9サイクルでクラックが発生したも
の、×は4サイクル以下で発生したものを示す。
【0022】密着性は、金属基材1の曲げ試験を行い、
電気絶縁層が剥離して金属部が露出したものを×、金属
部が一部だけ露出したものを△、金属部が露出していな
いものを○とした。
【0023】以上の評価にもとずき総合評価を行い、そ
の結果を○、△、×で示した。No1〜8は他の成分を
一定として、SiO2とB23を変化させたもの、No
9〜15は、SiO2/B23をほぼ一定にし、MgO
量を変化させたもの、No16〜19は同じく、CaO
量を変化させたもの。No20〜24は、同じく、Ba
O量を変化させたもの。No25〜29は、同じく、L
23量を変化させたもの。No30〜42はそれぞ
れ、ZrO2、TiO2、SnO2、P25、ZnOの影
響を示すものである。
【0024】表から明らかなように、SiO2を増加し
ていけば、耐熱性は向上するが、表面性、および密着性
が悪くなる。逆に、B23量を増加していけば、表面
性、密着性は向上するが耐熱性は低下する。したがっ
て、本実施例では、SiO2 7〜30重量%、B23
5〜34重量%の範囲内が望ましい。
【0025】MgO量は結晶性と相関があり、16重量
%以下では結晶析出が不十分で、耐熱性に劣る。また、
50重量%以上では、結晶が析出しやすく、ガラス溶融
時に簡単に結晶化し、均質なガラスを得ることが難し
く、また、表面粗度が大きくなる。
【0026】CaO量は、20重量%以上では、表面性
が悪くなり好ましくない。BaO量は、50重量%以上
では、耐熱性、および密着性が劣化し好ましくない。
【0027】La23量は、40重量%以上では、耐熱
性が劣化し好ましくない。その他の添加可能な成分とし
てZrO2、TiO2、SnO2、P25、ZnOなどが
挙げられるが、5重量%以下までなら添加可能である。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】(実施例2)図2に本発明の一実施例のオ
イルレベルセンサの構成を示す。図に示すように厚さ
0.5mm、外径φ3、内径φ2、長さ200mmのス
テンレスパイプ基材11を脱脂、水洗、酸洗、水洗、ニ
ッケルメッキ、水洗して前処理を行った後、平均粒径が
2.5μmの(表1)のNo7ガラス粒子からなるスラ
リー中に浸漬して、対極と金属パイプ間に直流電圧を1
00V/cm印加してガラス粒子をパイプ基材の外周面に1
00μm電着した。その後、60℃で乾燥し、850℃
で10分間焼成してMgO系結晶相を有する結晶化ガラ
ス電気絶縁層12を形成した。さらに、その上に銀の電
極体13、白金の抵抗体層14を印刷法で試作した。さ
らにその上にガラス質のオーバーコート層15を形成し
た。それぞれの焼成温度は、800℃、800℃、78
0℃でそれぞれ約30分間行なった。これを本実施例の
オイルレベルセンササンプルとした。
【0034】(比較例1)実施例2と同様な形状のパイ
プ状アルミナ基板上に印刷法で実施例2と同様の電極
体、抵抗体、オーバーコート層を形成し、オイルレベル
センサを作成した。
【0035】(比較例2)実施例2と同様な形状のステ
ンレスパイプに、日本フェロー社製ステンレスホーロ釉
薬をスプレー法で約100μm形成し、乾燥後、830
℃で10分間焼成し、さらにその上に銀の電極体、白金
の抵抗体を印刷法で試作した。さらにその上にガラス質
のオーバーコート層を形成した。それぞれの焼成温度
は、500℃、500℃、480℃でそれぞれ約30分
間行なった。
【0036】以上の実施例2、比較例1、2について、
熱衝撃試験を行った。試験方法としては、500℃で試
験体を10分間保持した後、水中に浸漬し、乾燥させ、
抵抗値を測定した。この試験を100サイクル繰り返し
た。その結果を(表6)に示す。
【0037】
【表6】
【0038】(表6)から解るように、本実施例のオイ
ルレベルセンサは従来のオイルレベルセンサより耐熱性
がよく、熱サイクル性も優れている。
【0039】
【発明の効果】以上の実施例の説明からも明らかなよう
に本発明によるオイルレベルセンサーは、金属基材を用
いたことにより機械的強度に優れるとともに、電気絶縁
層をMgO結晶相を有する結晶化ガラスで構成すること
により、耐熱性と信頼性に優れたオイルレベルセンサー
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のオイルレベルセンサーの断
面図
【図2】同別の実施例のオイルレベルセンサーの斜視図
【図3】同結晶化ガラスの熱膨張率の温度特性を示す図
【符号の説明】
1,11 金属基材 2,12 電気絶縁層 3,13 電極体 4,14 抵抗体層 5,15 オーバーコート層
フロントページの続き (72)発明者 吉田 昭彦 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 23/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基材上に設けた一層または多層の電
    気絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けた一対の電極と、
    前記一対の電極間にまたがって、前記電気絶縁層の表面
    に設けた感温抵抗体層と、前記感温抵抗体層の表面に設
    けたオーバーコート層とを備えたオイルレベルセンサに
    あって、前記電気絶縁層の少なくとも一層が焼成によっ
    てMgO系結晶相を生成する結晶化ガラスであり、か
    つ、前記結晶化ガラスの組成が重量%でMgO 16〜
    50%、BaO 0〜50%、CaO 0〜20%、L
    23 0〜40%、B23 5〜34%、SiO2
    7〜30%、MO2(MはZr,Ti,Sn,Znの少
    なくとも1種)0〜5%、P250〜5%を主体として
    なるオイルレベルセンサ。
  2. 【請求項2】 結晶化ガラス粉末を電気泳動電着法で金
    属基材上に電着し、電着した前記結晶化ガラス粉末を焼
    成して電気絶縁層を形成した請求項1記載のオイルレベ
    ルセンサ。
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