JP3027101B2 - 多孔質シリコンの形成方法 - Google Patents

多孔質シリコンの形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多孔質シリコンの形成方
法に関し、より詳細には発光ダイオード、レーザなどの
発光素子、ニューラルネットワーク、シリコンチップ中
の光配線、3次元集積化など光接続を用いた集積化技術
に用い得る多孔質シリコンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】シリコ
ン半導体は資源が豊富な上、結晶作製技術、デバイス設
計・作製技術が高いため、大電力の制御から電気信号の
高速処理に至るまで電子素子として幅広く利用されてい
る。しかしながら単結晶シリコンはエネルギーギャップ
が1.1eVの間接遷移型半導体であるため、可視光領
域では光らず、光素子としての活躍はこれまで化合物半
導体に譲ってきた。
【0003】ところが1990年、シリコン基板をフッ
酸溶液中で陽極化成した際に表面に形成される多孔質シ
リコン薄膜が、光励起や電子注入により室温で可視発光
することが観測された(Applied Physic
s Letters 57,1990,p1046)。
これは結晶サイズがシリコン中の電子のドブロイ波束の
拡がりよりも小さくなったため、エネルギー準位が量子
化されてエネルギーギャップが増加することと伝導帯が
変化することに起因するものである。これを応用すれば
シリコンという単一電子材料を用いて電子素子と光素子
との融合が可能となり、高集積化の促進が期待され、工
業的価値はきわめて高い。
【0004】しかし現時点では、オプトエレクトロニク
ス要素材料として実用に供するためには、自然酸化や光
照射による発光強度の経時変化、すなわち信頼性に大き
な問題がある上、発光強度も十分とは言えない。これ
は、シリコンの微細構造自体の不安定性に起因するもの
である。従って、微細孔表面にパッシベーションを施
し、表面のシリコン原子を他の原子と結合させることに
よりダングリングボンドをターミネートする必要があ
る。
【0005】通常、一部のダングリングボンドは、陽極
化成時に電界溶液中の水素により自然にターミネートさ
れるが、その後水素抜けが生じ輝度の低下をもたらす。
そこでよりターミネートされるが、その後水素抜けが生
じ輝度の低下をもたらす。そこでより初期発光輝度が高
く、しかも輝度の経時変化が少ない多孔質シリコンを得
るためには、水素よりも電気陰性度の高い原子で積極的
にターミネートする方法が有効である。電気陰性度の高
い元素はフッ素、酸素、塩素、窒素、臭素などである
が、この中で酸素は電気陰性度が全原子中2番目に大き
い上、資源が豊富で取り扱いも簡単である。そこで多孔
質シリコンの微細孔表面のパッシベーションには酸化処
理が有力と考えられる。
【0006】具体的な酸化法としては、気相中で行う方
法と液相中で行う方法とに大別される。このうち前者、
すなわち陽極化成後に酸素雰囲気中で加熱処理を施す方
法は、高温プロセスであるために発光層自体が熱による
構造変化を起こす恐れがある上(Phys.Rev.B
39,1989,11028)、将来のハイブリッド化
を考えた場合もあまり得策とは言えない。
【0007】一方、酸化溶液による液相中酸化処理法
は、既に過酸化水素水あるいは硝酸を用いた場合の硬化
が指摘されているが(特開平6−21509)、発光輝
度の増加は各々1.2倍および9倍といずれも10倍以
下に止まっている。本発明は上記課題に鑑みなされたも
のであり、多孔質シリコンの発光特性の改善、すなわち
多孔質シリコンの微細表面のパッシベーションの改善を
実現することができる多孔質シリコンの製造方法を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、陽極化
成法により結晶質シリコンの表面を多孔質化した後、塩
酸と過酸化水素水とを含む混合溶液により酸化処理を施
す多孔質シリコンの形成方法が提供される。また、陽極
化成法により結晶質シリコンの表面を多孔質化した後、
アンモニア水と過酸化水素水とを含む混合溶液により酸
化処理を施す多孔質シリコンの形成方法が提供される。
【0009】出願人は、複数の酸化溶液を組み合わせる
ことにより、更に効果的な酸素パッシベーションを実現
する可能性について検討した。その結果、塩酸と過酸化
水素の混合溶液あるいはアンモニア水と過酸化水素水の
混合溶液が、発光特性の向上に有効であることを見いだ
した。すなわち、陽極化成法により結晶質シリコン表面
を多孔質化した後、塩酸と過酸化水素水とを含む混合溶
液あるいはアンモニア水と過酸化水素水とを含む混合溶
液中で酸化処理を施すことにより、高品質多孔質シリコ
ン薄膜が形成される。
【0010】本発明で用いる結晶質シリコンとしては、
P型又はN型のいずれかのシリコンを用いることが好ま
しい。P型の結晶質シリコンは、予めホウ素等を1×1
15〜1×1018cm-3程度となるようなドープ量でド
ーピングすることにより得ることができる。また、N型
の結晶質シリコンは、予めリン、砒素、アンチモン等を
1×1015〜1×1018cm-3程度となるようなドープ
量でドーピングすることにより得ることができる。
【0011】本発明における陽極化成法としては、公知
の方法で行うことができる。例えば、まず、陽極側に上
記結晶質シリコンを接続し、陰極として白金、タングス
テン等を用い、電解溶液中に両電極を浸す。この際の電
解溶液としては、フッ酸、フッ酸とメチルアルコール、
フッ酸とエチルアルコール等を使用することができる
が、なかでもフッ酸を使用することが好ましい。上記の
電解溶液を構成する物質のうち、例えばフッ酸を用いる
場合、その濃度は2〜70%程度が好ましく、40〜6
0%程度がより好ましい。また、メチルアルコールを用
いる場合には、その濃度は90〜100%程度が好まし
く、95〜100%程度がより好ましい。さらに、エチ
ルアルコールを用いる場合には、その濃度は90〜10
0%程度が好ましく、95〜100%程度がより好まし
い。電解溶液としてフッ酸を用いる場合には、HF:H
2 O=1:0.5〜1.5(容量比)、好ましくはH
F:H 2 O=1:1(容量比)であり、フッ酸とメチル
アルコールを用いる場合にはHF:CH3 OH=1:1
〜3(容量比)、フッ酸とエチルアルコールを用いる場
合にはHF:C2 5 OH=1:1〜3(容量比)が好
ましい。
【0012】陽極と陰極との間に流す電流は、得ようと
する多孔質化されたシリコンの層厚又は孔径によって適
宜選択することができるが、例えば、電流密度2〜20
0mA・cm2 で1〜100分間電流を流すことが好ま
しい。この反応は正孔が反応を制御しているので、電圧
をかけさえすればいくらでも膜厚を厚くすることができ
るが、微細な孔を制御よく均一に形成するためには、膜
厚1〜50μm程度、孔径1〜50nm程度であること
が好ましい。
【0013】多孔質化されたシリコンに酸化処理を施す
方法は、塩酸と過酸化水素水とを含む混合溶液又はアン
モニア水と過酸化水素水とを含む混合溶液により行うこ
とができる。具体的には、多孔質化されたシリコンを上
記混合溶液に浸漬することにより酸化処理を行うことが
できる。塩酸と過酸化水素水とを含む混合溶液を用いる
場合には、塩酸は、10〜70%程度、より好ましくは
20〜50%程度の濃度で用いることが好ましく、過酸
化水素水は10〜70%程度、より好ましくは20〜5
0%程度の濃度で用いることが好ましい。また、これら
の混合比は、HCl:H2 2 =1:0.1〜2(容量
比)、より好ましくは1:0.2〜1(容量比)であ
る。アンモニア水と過酸化水素水とを含む混合溶液を用
いる場合には、アンモニア水は、10〜70%程度、よ
り好ましくは20〜50%程度の濃度で用いることが好
ましく、過酸化水素水は10〜70%程度、より好まし
くは20〜50%程度の濃度で用いることが好ましい。
これらの混合比は、NH4 OH:H2 2 =1:0.2
〜5(容量比)、より好ましくはNH4 OH:H2 2
=1:1/3〜3(容量比)である。この際の上記混合
溶液は5〜30℃程度の温度範囲で用いることが好まし
く、浸漬時間は1〜100分間程度が好ましい。
【0014】
【作用】本発明の多孔質シリコンの形成方法によれば、
陽極化成法により結晶質シリコンの表面を多孔質化した
後、塩酸と過酸化水素水又はアンモニア水と過酸化水素
水とを含む混合溶液により酸化処理を施すので、発光に
寄与する微結晶構造を損なうことなく、かつシリコンと
の結合が水素よりも強固である酸素により微細孔表面の
ダングリングボンドが十分にターミネートされることと
なる。従って、光照射による発光強度が十分改善された
多孔質シリコンが得られる。
【0015】
【実施例】以下に、本発明である多孔質シリコンの製造
方法の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本実施
例においては、特に示さないかぎり%は重量%である。 実施例1 まず、ホウ素をドーピングしたp型シリコン基板の表面
層を陽極化成法を用いて多孔質シリコン層に変成した。
【0016】この陽極化成法は図1に示した方法で行っ
た。反応セル1中に、多孔質化しようとする部分以外を
プラスチックコート7で被覆したp型シリコン2からな
る陽極と、白金電極3からなる陰極を、HF:H2 O=
1:1(容積比)のフッ酸溶液4中に浸した。そして、
陽極と陰極の間に450mAの電流を5分間通電するこ
とにより電気化学反応が生じ、p型シリコン2の表面に
厚さ約30μmの多孔質シリコンを形成した。
【0017】次に得られた多孔質シリコンを、HC1
(35%):H2 2 (31%)=3:1(容積比)の
溶液中に10分間浸漬した。図2は塩酸−過酸化水素混
合溶液で処理する前後の多孔質シリコンの赤外透過スペ
クトルである。塩酸−過酸化水素混合溶液で浸漬処理す
ることにより、Si−H結合が減少し、代わりにSi−
O結合が増加している。すなわち、酸素パッシベーショ
ンが実現していることが分かる。
【0018】また、100mWのArイオンレーザ(波
長4880Å)で照射したときに観測されるフォトルミ
ネッセンススペクトルを図3に示す。酸化溶液処理を施
すことにより、約18倍の輝度上昇が図られていること
が分かる。すなわち、先行技術(特開平6−2150
9)と比較してより効果的であることが分かった。 実施例2 実施例1と同様の方法で多孔質シリコン層を形成した
後、NH4 OH(30%):H2 2 (31%)=1:
1(容積比)の溶液中に10分間浸漬した。これを10
0mWのArイオンレーザ(波長4880Å)で照射し
たときに観測されるフォトルミネッセンススペクトルを
図4に示す。酸化溶液処理を施すことにより、約18倍
の輝度上昇が図られており、やはり先行技術(特開平6
−21509)と比較してより効果的であることが分か
る。 比較例1 塩酸以外の他の酸性溶液と過酸化水素水との混合溶液に
より、多孔質シリコン薄膜を処理した場合の結果を図5
に示す。用いた処理溶液は硫酸と過酸化水素水(H2
4 (97%):H2 2 (31%)=3:1(容積
比))の混合溶液および硝酸と過酸化水素水(HNO3
(60%):H2 2 (31%)=3:1(容積比))
の混合溶液である。いずれも未処理のものと比較して2
倍程度の輝度上昇しか得られていない。 比較例2 塩酸、過酸化水素水、硫酸、フッ酸の溶液により、多孔
質シリコン薄膜を処理した場合の結果を図6に示す。用
いた処理溶液は、塩酸(35%)、過酸化水素水(31
%)、硫酸(97%)、フッ酸(50%)である。いず
れも未処理のものと比較して4倍程度以下の輝度上昇し
か得られていない。
【0019】上記の実施例及び比較例から、酸性溶液、
酸性溶液と過酸化水素水又はアルカリ性溶液と過酸化水
素水との任意の組み合わせが、多孔質シリコン薄膜の発
光輝度向上に有効なのではなく、本発明の塩酸と過酸化
水素水の混合溶液又はアンモニアスイと過酸化水素水の
混合溶液でのみ顕著な効果が得られることが分かる。
【0020】
【発明の効果】本発明の多孔質シリコンの形成方法によ
れば、陽極化成法により結晶質シリコンの表面を多孔質
化した後、塩酸と過酸化水素水又はアンモニア水と過酸
化水素水とを含む混合溶液により酸化処理を施すので、
発光に寄与する微結晶構造を損なうことなく、微細孔表
面のダングリングボンドが酸素により十分にターミネー
トすることができる。従って、多孔質シリコンの発光特
性の向上が図られ、今後オプトエレクトロニクス要素材
料として光素子への幅広い応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔質シリコンの形成方法の実施例に
用いた陽極化成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の多孔質シリコンの形成方法の実施例1
で得られた多孔質シリコンを酸化処理する前後の赤外透
過スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の多孔質シリコンの形成方法の実施例1
で得られた多孔質シリコンのフォトルミネッセンスを示
す図である。
【図4】本発明の多孔質シリコンの形成方法の実施例2
で得られた多孔質シリコンのフォトルミネッセンスを示
す図である。
【図5】本発明に対する比較例として酸性処理溶液にお
ける混合種を変えた場合の多孔質シリコンのフォトルミ
ネッセンスを示す図である。
【図6】本発明に対する比較例として酸性処理溶液種を
変えた場合の多孔質シリコンのフォトルミネッセンスを
示す図である。
【符号の説明】
1 陽極化成反応セル 2 p型シリコン 3 白金電極 4 フッ酸溶液 5 直流電源 7 プラスチックコート
フロントページの続き (72)発明者 宇城 共子 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (72)発明者 大野 公隆 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (72)発明者 赤木 与志郎 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−77528(JP,A) 特開 平6−275866(JP,A) 特開 平6−268255(JP,A) 電子情報通信学会技術研究報告 Vo l.93,No.369,pp.15−20 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 33/00 H01L 21/306 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極化成法により結晶質シリコンの表面
    を多孔質化した後、塩酸と過酸化水素水とを含む混合溶
    液により酸化処理を施すことを特徴とする多孔質シリコ
    ンの形成方法。
  2. 【請求項2】 陽極化成法により結晶質シリコンの表面
    を多孔質化した後、アンモニア水と過酸化水素水とを含
    む混合溶液により酸化処理を施すことを特徴とする多孔
    質シリコンの形成方法。
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