JP3023761B2 - ディスク駆動用モータ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ハブにディスクを
載置してクランパーで固定したうえで、ディスクを回転
させる構造のディスク駆動用モータに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】ハードディスクドライブ装置などの電子
機器には情報記録媒体を回転するためのディスク駆動用
モータが使用されている。このような装置は、情報が記
録された複数枚のディスクをハブに積み上げて、クラン
パーでそれらのディスクを固定し、ディスク駆動用モー
タによってハブおよびディスクを回転させる一方、ディ
スクの記録面に対向して磁気ヘッドを配設し、この磁気
ヘッドを搭載したキャリッジによってディスクの指定さ
れたトラック上に磁気ヘッドを位置決めして、情報の書
き込みや読み出しを行う構造をしている。

【０００３】このような従来のディスク駆動用モータの
基本構成を図５に示す。図５において、符号１はハード
ディスクドライブ装置に取付けられるフレームで、その
中央には固定軸２が固着されている。固定軸２には各々
内輪５ａ，６ａを嵌着したボールベアリング５，６が適
宜の間隔をおいて配設されている。また、フレーム１に
は放射状に突出した複数の突極を有するステータコア３
が固設され、それらの突極にはコイル４が巻回されてい
る。一方、上記ボールベアリング５，６の外輪５ｂ，６
ｂは円筒状のハブ２０の内孔に嵌合固定されている。し
たがって、ハブ２０はボールベアリング５，６によっ
て、固定軸２に対して回転自在に支持されている。ハブ
２０は、ディスクを載置する鍔部２２を下端側の外周部
に有し、この鍔部２２の下端面には円筒状のヨーク７が
固着されている。ヨーク７の内周面にはリング状の駆動
マグネット８が装着され、この駆動マグネット８が上記
ステータコア３の突極と所定の間隙をおいて対向してい
る。ハブ２０の鍔部２２の上端面には、情報記録媒体と
しての磁気ディスク等のディスクＤがスペーサ１６を介
して複数枚載置され、これらのディスクＤはクランパー
１７によって固定されている。クランパー１７は、ハブ
２０に形成されたネジ穴１９に螺合するネジ１８によっ
て固定されている。

【０００４】一方、周知のように、ボールベアリング
は、その潤滑効果を高めるために、ボールの近傍に潤滑
剤を保持している。ところが、ボールベアリングは内輪
と外輪とが相対回転運動を行うため、その回転運動によ
って潤滑剤が細かな霧状のオイルミストとなって飛散
し、モータ外部に漏出することがある。このオイルミス
トが磁気ディスク表面に付着したり、磁気ディスクと磁
気ヘッドとのギャップに流入すると、磁気ヘッドの浮上
を不安定なものとし、磁気ヘッドと磁気ディスクの接触
を誘発し、情報破壊を起こす原因ともなっている。

【０００５】しかしながら、図５に示すようなディスク
駆動用モータにおいては、オイルミストの飛散を抑える
工夫が成されていないため、少なくとも上側ボールベア
リング５から発生するオイルミストが図示上方に漏出し
てしまい、上記のようにディスクＤに対して好ましくな
い作用をする。

【０００６】このオイルミストの飛散を防ぐため、図６
に示すように、ハブ２０の内孔の開口部２９にキャップ
１１を設けて、固定軸２の上端側の空間１０を密閉する
構成が知られている。図６は、このような構成をしたデ
ィスク駆動用モータの要部拡大断面図で、その平面図を
図７に示し、キャップ１１単体の斜視図を図８に示す。

【０００７】図６において、ボールベアリング５の外輪
５ｂがハブ２０の内孔の内周面に嵌合固定されていて、
そのハブ２０の一方の開口部２９を覆うようにキャップ
１１がハブ２０に対して固定されている。キャップ１１
は、図８に示すように、耐食性のある金属板をプレス加
工などによりハブ２０の内孔径に合わせて打ち抜いたも
ので、その中央部には回転の中心と同じ中心を持つ真円
状の突出部１２が形成されている。この突出部１２はキ
ャップ１１が固定軸２の先端やボールベアリング５の内
輪５ａと緩衝しないように形成されている。また、キャ
ップ１１の縁部は、ハブ２０の内孔に嵌め込まれて、ボ
ールベアリング５の外輪５ｂの上端面に当接した状態で
接着剤などの接合剤１４によって固着されている。した
がって、空間１０はキャップ１１により完全な密閉空間
となりオイルミストの飛散が防がれる。これによって、
ボールベアリング５，６の内部から発生するオイルミス
トなどディスクＤに有害な物質は阻止されて上部に飛散
するのが効果的に防がれ、ディスク駆動用モータは高い
信頼性を得ることができる。

【０００８】ところで、このようなディスク駆動用モー
タのハブ２０には、図５で示した構造と同様に、磁気デ
ィスク等のディスクＤがディスク間に介装させるスペー
サ１６とともに鍔部から逐次積み上げられて取りつけら
れる。そして、それらのディスクＤを固定するために、
ハブ２０の上端面２３のネジ穴１９にネジ１８を螺合し
て、クランパ１７をもってディスクＤを付勢して固定し
ている。このようにして、ディスクＤはハブ２０に確実
に固定されてモータの回転と共にはずれることなく回転
する。

【０００９】ところが、上記ディスク駆動用モータのハ
ブ２０の鍔部２２にディスクＤを載置し、クランパ１７
をもってディスクＤを固定する際、ハブ２０はボールベ
アリング５，６によって回転自在に支持されているた
め、クランパ１７をネジ１８で締め付けようとすると、
ハブ２０が回転してしまい、作業が非常にやりずらいと
いう問題がある。

【００１０】そこで、このハブ２０の回転を防ぐため、
図７に示すように、ネジ穴１９とは別にハブ２０の上端
面２３に治具係合穴３０を形成し、この治具係合穴３０
に図示しない固定治具を係合させてハブ２０の回転を防
ぎ、この状態でクランパ１７をねじ止めしている。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】この方式では、少なく
ともハブ２０の上端面２３に固定治具を係合するための
治具係合穴３０を設けなければならず、この穴は切削に
よって加工されるため、相当の加工時間を要している。
したがって、ハブ２０の部品コストが高騰する要因とも
なっている。また、この加工によって、ハブ２０に切削
ひずみ等が生じ、ハブ２０の内径や外径の精度に影響を
与えている。このため、偏心が生じたり、ディスクＤや
ボールベアリング５，６の組み付けがスムーズにいかな
い等の問題が発生している。

【００１２】そこで本発明は、ハブ２０に上記のような
治具係合穴３０を設けることなく、安価にハブ２０を作
製し、しかも、ハブ２０にディスクＤを固定する際に、
容易にハブ２０の回転を防いでクランパー１７の固定作
業を行うことのできるディスク駆動用モータを提供する
ことを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するため手段】かかる目的を達成するた
め、請求項１記載の発明では、固定軸と、該固定軸に嵌
着されたボールベアリングと、該ボールベアリングによ
って回転自在に支持されると共にクランパーによってデ
ィスクが固定される円筒状のハブと、該ハブの一方の開
口部を覆うようにハブに固着されたキャップとを備えた
ディスク駆動用モータにおいて、キャップには、回転の
中心と同心の真円以外の突出部もしくは凹陥部を設けて
いる。

【００１４】また、請求項２記載の発明では、請求項１
記載のディスク駆動用モータにおいて、キャップには、
多角形の突出部もしくは凹陥部を設けている。加えて、
請求項３記載の発明では、請求項２記載のディスク駆動
用モータにおいて、キャップには、正多角形の突出部も
しくは凹陥部を設けている。

【００１５】さらに、請求項４記載の発明では、請求項
１記載のディスク駆動用モータにおいて、キャップに
は、複数の突出部もしくは凹陥部を設けている。加え
て、請求項５記載の発明では、請求項１、２、３、又は
４記載のディスク駆動用モータにおいて、キャップを金
属板の塑性加工によって形成している。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、図１から図４を参照しなが
ら本発明にかかるディスク駆動用モータの実施の形態に
ついて説明する。なお、既に説明した従来例を示す図５
から図８と同じ作用をする部材には同じ符号をもって表
示する。

【００１７】図１は、本発明の実施の形態であるディス
ク駆動用モータにディスクＤを取付けた状態の半断面図
であり、図２は、ディスクＤおよびその取付けに関する
部材を取り除いた状態を示す平面図である。図１におい
て、符号１はハードディスクドライブ装置に取付けられ
るフレームで、その中央には固定軸２が固着されてい
る。固定軸２にはボールベアリング５，６の内輪５ａ，
６ａが適宜の間隔をおいて嵌着されている。また、フレ
ーム１には放射状に突出した複数の突極を有するステー
タコア３が固設され、それらの突極にはコイル４が巻回
されている。一方、上記ボールベアリング５，６の外輪
５ｂ，６ｂは円筒状のハブ２０の内孔に嵌合固定されて
いる。したがって、ハブ２０はボールベアリング５，６
によって、固定軸２に対して回転自在に支持されてい
る。ハブ２０は、ディスクＤを載置する鍔部２２を下端
側の外周部に有し、この鍔部２２の下端面には円筒状の
ヨーク７が固着されている。ヨーク７の内周面にはリン
グ状の駆動マグネット８が装着され、この駆動マグネッ
ト８が上記ステータコア３の突極と所定の間隙をおいて
対向している。ハブ２０の鍔部２２の上端面には、情報
記録媒体としての磁気ディスク等のディスクＤがスペー
サ１６を介して複数枚載置され、これらのディスクＤは
クランパー１７によって固定されている。クランパー１
７は、ハブ２０に形成されたネジ穴１９に螺合するネジ
１８によって固定されている。

【００１８】ハブ２０の内孔の一方の開口部２９には、
キャップ２５が固定されていて、ハブ２０と一体に回転
するようになっている。キャップ２５は、耐食性のある
金属板をプレス加工などによりハブ２０の内孔径に合わ
せて打ち抜いたもので、その中央部には後述する突出部
２６が形成されている。この突出部２６は、キャップ２
５が固定軸２の先端やボールベアリング５の内輪５ａと
緩衝しないように形成されている。また、キャップ２５
の縁部は、ハブ２０の内孔に嵌め込まれて、ボールベア
リング５の外輪５ｂの上端面に当接した状態で接着剤な
どの接合剤１４によって固着されている。

【００１９】次に、本発明の特徴的な構成のひとつであ
るキャップ２５についてより詳細に説明する。従来例に
おけるキャップ１１は、その中央部に回転の中心と同じ
中心を持つ真円状の突出部１２が形成されているので、
仮にその突出部１２を治具でつかもうとしても、キャッ
プ１１は回転してしまう。これに対して、本発明にかか
るキャップ２５は、回転の中心と同心の真円以外の突出
部２６もしくは凹陥部２７を有している。このようなキ
ャップ２５がディスク駆動用モータに組み込まれた状態
の平面図を図２に示し、キャップ２５単体の様々な実施
の形態の斜視図を図４に示す。

【００２０】図４（Ａ）のキャップ２５は、図１および
図２に使用されているもので、中央部に正六角形状の突
出部２６が形成されたものである。図４（Ｂ）のキャッ
プ２５は、円形に突出した円形台部２８のほぼ中央に正
六角形状の凹陥部２７が形成されたものである。図４
（Ｃ）のキャップ２５は、円形に突出した円形台部２８
に多角形である十字形状の突出部２６が形成されたもの
である。図４（Ｄ）のキャップ２５は、円形に突出した
円形台部２８に複数の円形の凹陥部２７が形成されたも
のである。これらのキャップ２５はいずれも、回転の中
心と同じ中心をもつ真円以外の突出部２６もしくは凹陥
部２７を有している。なお、上記キャップ２５は、金属
板を塑性加工することによって形成されているので、金
型形状を変更するだけで適宜の形状に変えられ、キャッ
プ２５の製作においては、とくに余分な工程はかからな
い。また、突出部２６もしくは凹陥部２７の形状は、回
転の中心と同心の真円以外ならば、図４に示す各種の実
施の形態のほか、三角形を含む多角形、楕円形、更に、
星型形状など各種の形状をとることができる。

【００２１】これらのキャップ２５を、ハブ２０の内孔
の開口部２９を覆うように、固着した状態で、ハブ２０
にディスクＤを載置して、クランパー１７でディスクＤ
を固定するにあたり、図示しない回転阻止治具をキャッ
プ２５の突出部２６もしくは凹陥部２７に係合させるこ
とにより、ハブ２０の回転を容易に阻止することができ
る。特に、突出部２６もしくは凹陥部２７が正多角形の
場合は、回転阻止治具との係合位置が複数存在するの
で、作業が一層容易となる。

【００２２】図１および図２ではキャップ２５に突出部
２６を設けた場合を示したが、その反対にキャップ２５
に凹陥部２７を設けてもよい。図３はその実施の形態を
示す要部拡大断面図である。ハブの開口部２９に固着さ
れたキャップ２７は、ボールベアリング５の外輪５ｂか
ら一旦真円形状に立ち上げられ、ついでその中心部は固
定軸２方向に向かって突出するように凹陥部２７が形成
されている。この凹陥部２７の内周の形状は、図４
（Ｂ），（Ｄ）に示したような形状、即ち、回転の中心
と同心の真円以外の各種形状であればよい。

【００２３】以上のように、ディスクＤをクランプする
際に、回転阻止治具に係合してハブ２０の回転を止める
役割をする突出部２６または凹陥部２７をキャップ２５
に設けたので、従来のようにハブ２０に治具係合孔を形
成する必要がなく、図２に示すようにハブ２０の上端面
２３にはクランプ用のネジ穴１９のみが形成されること
になる。

【００２４】

【発明の効果】以上に述べたように、請求項１、２およ
び４記載のディスク駆動用モータでは、キャップに回転
の中心と同心の真円以外の形状をした突出部または凹陥
部を設けたり、その形状を多角形としたり、その数を複
数としたので、ディスクをクランプする際に、回転阻止
治具を上記突出部もしくは凹陥部に係合するだけで容易
にハブの回転を抑えることができて、しかも、ハブの上
端面に治具係合穴を設ける必要がないので、それを形成
するのに要する加工経費がかからなく、安価なハブを備
えたディスク駆動用モータとなる。しかも、ハブには、
治具係合穴を設ける際のひずみが加わらないので、従来
より偏心が生じにくいものとなり、ディスクやボールベ
アリングの組み付けもスムーズに行うことができる。

【００２５】また、請求項３記載の発明では、請求項２
記載のディスク駆動用モーターにおいて、突出部もしく
は凹陥部の形状を正多角形にしたので、回転阻止治具と
の係合位置が複数存在することになり、作業が一層容易
となる。また、請求項５記載のディスク駆動用モータで
は、金属板を塑性加工してキャップを形成しているの
で、請求項１、２、３又は４に記載されている突出部や
凹陥部を容易に製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態であるディスク駆動用モー
タにディスクを取付けた状態の半断面図である。

【図２】図１のディスク駆動用モータの平面図である。

【図３】本発明に関わるディスク駆動用モータの他の実
施の形態の要部断面図である。

【図４】本発明に関わるディスク駆動用モータに使用さ
れるキャップの各種の実施の形態を示す斜視図である。

【図５】従来のディスク駆動用モータの基本構成を説明
するための図で、ディスクを取付けた状態の要部断面図
である。

【図６】従来の他のディスク駆動用モータにディスクを
取付けた状態の要部側断面図である。

【図７】図６のディスク駆動用モータの平面図である。

【図８】図６のディスク駆動用モータに用いられるキャ
ップを示す斜視図である。

【符号の説明】

１ フレーム ２ 固定軸 ５，６ ボールベアリング １７ クランパー ２０ ハブ ２５ キャップ ２６ 突出部 ２７ 凹陥部 Ｄ ディスク

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定軸と、該固定軸に嵌着されたボール
   ベアリングと、該ボールベアリングによって回転自在に
   支持されると共にクランパーによってディスクが固定さ
   れる円筒状のハブと、該ハブの一方の開口部を覆うよう
   にハブに固着されたキャップとを備えたディスク駆動用
   モータにおいて、 上記キャップは、回転の中心と同心の真円以外の突出部
   もしくは凹陥部を有していることを特徴とするディスク
   駆動用モータ。
2. 【請求項２】 請求項１記載のディスク駆動用モータに
   おいて、 上記キャップは、多角形の突出部もしくは凹陥部を有し
   ていることを特徴とするディスク駆動用モータ。
3. 【請求項３】 請求項２記載のディスク駆動用モータに
   おいて、 上記キャップは、正多角形の突出部もしくは凹陥部を有
   していることを特徴とするディスク駆動用モータ。
4. 【請求項４】 請求項１記載のディスク駆動用モータに
   おいて、 上記キャップは、複数の突出部もしくは凹陥部を有して
   いることを特徴とするディスク駆動用モータ。
5. 【請求項５】 請求項１、２、３、又は４記載のディス
   ク駆動用モータにおいて、上記キャップは、金属板を塑
   性加工したことによって形成されていることを特徴とす
   るディスク駆動用モータ。