JP3017145B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

樹脂組成物

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淳 小川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抵抗率の印加電圧依
存性が少ない導電性もしくは半導電性を有する樹脂組成
物に関する。
【0002】
【従来の技術】導電性樹脂材料は、各種の電子部品用材
料や構造材料として用いられている。これらのうち電極
用材料や抵抗素子材料、電子複写機等の転写ロール、ベ
ルト等に用いられる導電性もしくは半導電性材料として
は、導電率が均一且つ安定していることが要求されてい
る。これまでに、印加電圧が一定な場合に抵抗率を安定
に保ち得る導電性樹脂材料については知られているが
(例えば特開平5−286056号公報等)、印加電圧
の変化に拘わらず抵抗率を概ね安定に保ち得るような導
電性樹脂材料は知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、外部
環境の変化、とりわけ印加電圧の変化に対して安定な抵
抗率を有する導電性もしくは半導電性樹脂組成物を提供
することにある。更に本発明の課題は、機械的強度に優
れ、寸法安定性及び耐摩耗性に優れた導電性もしくは半
導電性樹脂組成物を提供することにある。
【0004】本発明は樹脂(但し環状オレフィン系樹脂
を除く)100部に対して、導電性充填材(但し金属繊
維を除く)1〜50部及び20℃、10MHzにおける
比誘電率が30以上の誘電体充填材1〜30重量部が配
合されてなることを特徴とする樹脂組成物に係る。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の導電性もしくは半導電性
を有する樹脂組成物とは、比抵抗が概ね1012程度未満
の樹脂組成物をいう。本発明の樹脂組成物のマトリック
スとして用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目
的とする材料の用途に応じて適宜選定し得る。樹脂の具
体例としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、
ネオプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、
ニトリルゴム等の各種エラストマー、フェノール樹脂、
エポキシ樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、
シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱
硬化性もしくは反応硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリ塩化ビニル等の汎用熱可塑性樹脂、ポリ
アミド、熱可塑性ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリ
アセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフ
ォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケト
ン等のエンジニアリングプラスチックス等を挙げられ
る。
【0006】本発明に用いられる導電性充填材として
は、粒状、繊維状、鱗片状等の各種の形状のものが用い
られ、比抵抗0〜107Ω・cm、好ましくは10-3〜1
4Ω・cmのものが用いられる。具体例としては、金、
銅、銀、亜鉛、アルミニウム、鉄、酸化錫等の導電性金
属又は導電性金属酸化物の径0.1〜100μmの粒状粉
末もしくは径0.1〜30μm、長さ3〜2000μmの
繊維状粉末、シリカ、カオリン、タルク、マイカ等の粒
状もしくは鱗片状無機粉末やナイロン糸、ポリエステル
糸等の合成樹脂繊維の表面に、アンチモンやインジウム
等がドープされていてもよい酸化錫やカーボン等の導電
層を被覆してなる粉末状もしくは繊維状導電性粉体、ケ
ッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボン繊維
(カーボンウィスカを含む)、黒鉛粒等の炭素類、チタ
ン酸カリウム、チタン酸アルミン酸カリウム、ホウ酸マ
グネシウム、ホウ酸アルミニウム、チタニア、ワラスト
ナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素等の酸化物系もしく
は非酸化物系セラミックスの繊維状物(単結晶繊維、ア
モルファス繊維、多結晶繊維のいずれでもよく、ウィス
カを含む)の表面に、アンチモンやインジウム等がドー
プされていてもよい酸化錫やカーボン等の導電層を被覆
するか、酸化物系セラミックスを還元焼成することによ
り導電性の付与された繊維状セラミックス粉体(以下、
導電性セラミックス繊維と総称する)が例示できる。
【0007】酸化物系もしくは非酸化物系セラミックス
の表面にアンチモンやインジウム等がドープされていて
もよい酸化錫を被覆する方法としては、化学蒸着法、無
電解メッキ法、浸漬法、スプレーコート法等を用いるこ
とができ、例えば特開昭59−102820号、特開平
2−149424号等に記載の方法に準じて製造するこ
とができる。また、カーボン導電層を被覆する方法とし
ては、被覆されるセラミックスとアルカンガス、オレフ
ィンガス、トルエン、キシレン等の炭素化合物との混合
物を還元又は不活性雰囲気下に昇温し500〜1300
℃で加熱焼成する方法を例示できる。中でも、抵抗率の
均一性及び樹脂組成物の機械的強度、寸法精度の向上の
観点からは、カーボン繊維、導電性セラミックス繊維が
好ましく、更に平均径0.01〜3μm、平均長さ1〜5
00μm、平均アスペクト比5〜500の範囲のものが
特に好ましい。ここで平均径とは、前記繊維状物質の断
面が円形でない場合には相当直径を意味する。
【0008】本発明に用いられる誘電体充填材とは、2
0℃、10MHzにおける比誘電率が30以上、好まし
くは100以上の充填材であり、その具体例としては、
一般式MO・TiO2(式中、MはBa、Sr、Ca、Mg、
Co、Pb、Zn、Be、Cdより選ばれる一種又は二種以
上)で表わされるチタン酸金属塩化合物、ニオブ酸アル
カリ金属塩、ニオブ酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ジル
コン酸鉛、錫酸鉛、タンタル酸アルカリ金属塩、タンタ
ル酸鉛、タンタル酸ルビジウム、酸化モリブデン、酸化
タングステン等が例示できる。中でもチタン酸バリウ
ム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタ
ン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウ
ム、チタン酸バリウムカルシウム等のチタン酸アルカリ
土類金属塩は安定で高い誘電率を示し入手が容易なため
好ましく用いられる。
【0009】これらの誘電体充填材の形状としては、特
に制限はないが、通常、粒状又は繊維状のものが用いら
れる。これらは単結晶体、多結晶体、アモルファス状も
しくはこれらの混合物のいずれであってもよい。粒状の
ものを用いる場合、平均径0.1〜100μm程度のもの
が、又、繊維状のものを用いる場合は、平均径0.1〜
5μm、平均長5〜500μmの範囲のものが好ましく用
いられる。これらの誘電体充填材は一種を単独で用いて
もよく、又は二種以上を併用してもよい。尚、これらの
誘電体充填材の表面を、アンチモンやインジウム等がド
ープされていてもよい酸化錫やカーボン等の導電層で被
覆する等して導電性を付与して用いる場合、これらは誘
電体充填材であるとともに導電性充填材としても作用す
るので、斯かる充填材のみを配合した樹脂組成物も本発
明の樹脂組成物の範疇に含まれる。
【0010】本発明の樹脂組成物の各成分の配合割合
は、選択された成分や目的材料に要求される物性により
適宜設定し得るが、樹脂100重量部に対して導電性充
填材を、好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは5
〜30重量部、誘電体充填材を、好ましくは1〜30重
量部、更に好ましくは5〜20重量部配合するのがよ
い。導電性充填材の配合量が少なすぎると、所望の導電
性もしくは半導電性が得られないため好ましくない。ま
た導電性充填材の配合量が多すぎると成形が困難とな
り、また物性を低下させるため好ましくない。誘電体充
填材の配合量が少なすぎると抵抗率安定効果が発現され
ないため好ましくなく、多すぎると経済的に不利とな
り、また成形が困難となったり、物性が低下する虞があ
るため好ましくない。
【0011】本発明の樹脂組成物の製造に当たっては、
慣用の方法を適宜採用し得るが、例えば、熱可塑性樹脂
を用いる場合には充填材成分と樹脂ペレットを予め乾式
混合した後、二軸押出機を用いて溶融混練押出し、ペレ
ット化する方法を例示できる。尚、本発明の樹脂組成物
は、一旦ペレット化して、保管・流通・使用できるが、
溶融状態から直接各種の成形品に成形してもよい。熱又
は反応硬化性樹脂を用いる場合には、液状樹脂と充填材
成分を撹拌混合することにより製造できる。得られた樹
脂組成物は任意の成形方法で成形することができる。本
発明の樹脂組成物を用いて成形品を製造する際には、押
出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、射
出成形等の各種成形法を採用できる。また硬化性樹脂を
用いる場合は本発明の樹脂組成物をシートモールディン
グコンパウンドもしくはバルクモールディングコンパウ
ンド用材料として用いることも可能である。
【0012】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説
明する。尚、以下において部とあるのは重量部を意味す
る。
【0013】実施例1 シリコーンゴム 100部に対し、導電性チタン酸カリ
ウム(デントールBK300、大塚化学株式会社製、チ
タン酸カリウム繊維の表面に酸化アンチモン及び酸化錫
を被覆したもの、繊維径0.4〜0.7μm、繊維長10
〜20μm、比抵抗率4.3Ω・cm)20部及び繊維状チ
タン酸バリウム[BTW、大塚化学株式会社製、繊維径
0.1〜0.5μm、繊維長1〜5μm、比誘電率240
(10MHz)]10部、酸化亜鉛 20部、シリコーン
変性オイル 5部、発泡剤 5部、少量の加硫剤を混練機
を用いて添加混合して本発明のエラストマー樹脂組成物
を得た。得られたエラストマーにつき、室温で印加電圧
を1〜3kVの範囲で変化させ印加電圧の変化に対する
エラストマーの抵抗率の変化を測定した。得られた抵抗
率を常用対数に換算した最大値と最小値との差は0.3
であった。
【0014】実施例2 繊維状チタン酸バリウムの配合量を20部とした他は実
施例1と同様にしてエラストマーを製造した。得られた
エラストマーの印加電圧の変化に対する抵抗率の変化を
実施例1と同様に測定した結果、最大値と最小値の差は
0.2であった。
【0015】実施例3 実施例1の繊維状チタン酸バリウムに代えて繊維状チタ
ン酸バリウムストロンチウム[BSTW、大塚化学株式
会社製、繊維径0.1〜0.5、繊維長5〜10、誘電率
380(10MHz)]を20部用いた他は実施例1と
同様にしてエラストマーを製造した。得られたエラスト
マーの印加電圧の変化に対する抵抗率の変化を実施例1
と同様に測定した結果、最大値と最小値の差は0.3で
あった。
【0016】実施例4 熱可塑性ポリエステルエラストマー 100部に対し導
電性チタン酸カリウム30部(実施例1で用いたも
の)、繊維状チタン酸バリウム 20部(実施例1で用
いたもの)を混練機を用いて混合し、樹脂組成物を製造
した。得られたエラストマーの印加電圧の変化に対する
抵抗率の変化を実施例1と同様に測定した結果、最大値
と最小値の差は0.4であった。
【0017】
【表1】 (測定方法:直流抵抗計を用い厚さ2mmのシートの厚み
方向の抵抗率を測定した。例えば6E9とは 6×109
の意である。)
【0018】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物は、外部環境の変
化、とりわけ印加電圧の変化に対して安定な抵抗率(例
えば印加電圧を1〜3KVの範囲で変化させた際の抵抗
率の変化が常用対数に換算した最大値と最小値の差で
0.5以下)を示すので、電極用材料や抵抗素子用材
料、電子写真複写機、レーザープリンター等の転写ロー
ル、ベルトの成形材料等に好適に用いられる。また、本
発明の樹脂組成物のうち、導電性充填材として径0.0
1〜3μm、長さが1〜500μm、アスペクト比5〜5
00の導電性セラミックス繊維又はカーボン繊維を用い
るものは、前記の電気特性に加えて優れた機械的強度と
表面平滑性、耐摩耗性、寸法安定性を具備する材料とな
るので一層好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪部 元重 大阪府高槻市東上牧1丁目1番3号 タ イガースポリマー株式会社 大阪工場内 (56)参考文献 特開 平1−207356(JP,A) 特開 昭63−289077(JP,A) 特開 平7−188455(JP,A) 特開 平7−133395(JP,A) 特開 昭63−90564(JP,A) 特開 昭61−155456(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/14 C08K 3/00 - 13/08

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂(但し環状オレフィン系樹脂を除
    く)100部に対して導電性充填材(但し金属繊維を除
    く)1〜50部、及び20℃、10MHzにおける比誘
    電率が30以上の誘電体充填材1〜30重量部が配合さ
    れてなることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 導電性充填材の比抵抗が10−3〜10
    Ω・cmである請求項1の樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 導電性充填材は径0.01〜3μm、長
    さが1〜500μm、アスペクト比5〜500の導電性
    セラミックス繊維又はカーボン繊維である請求項1又は
    に記載の樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 誘電体充填材は、20℃、10MHzに
    おける比誘電率が100以上のものである請求項1〜
    のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 誘電体充填材は、繊維状チタン酸アルカ
    リ土類金属塩である請求項1〜のいずれかに記載の樹
    脂組成物。
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