JP3015852B2 - 生分解型機能性糸及び布帛 - Google Patents

生分解型機能性糸及び布帛

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JP3015852B2
JP3015852B2 JP10214465A JP21446598A JP3015852B2 JP 3015852 B2 JP3015852 B2 JP 3015852B2 JP 10214465 A JP10214465 A JP 10214465A JP 21446598 A JP21446598 A JP 21446598A JP 3015852 B2 JP3015852 B2 JP 3015852B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性を有し、
且つ機能性を有するエコロジーなハイパフォーマンス繊
維を用いた生分解型機能性糸及びこの糸を用いた衣料材
料、タオルや絨毯、毛布等の生活関連用品材料として用
いられる生分解型機能性布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、絨毯、毛布等の生活関連繊維製品
や衣料等の繊維製品についても環境に優しい製品が望ま
れるようになり、従来の合成繊維製品に代わって、土中
の微生物の働きで水と炭酸ガスに分解される生分解性を
有する繊維製品の開発が検討されている。
【0003】一方、上記のような繊維製品について、抗
菌性や光消臭性、保温性など製品用途に応じて機能を有
することが消費者からのニーズとしてある。織物編み物
等の二次製品完成後に抗菌剤等の機能性付与剤を塗布等
するなどして、二次製品に機能を付与することが一般に
行われているが、このような製品では、機能性付与剤を
単なる織り目、編み目の間隙に相当する糸条体間隙に保
持されるか、あるいは接着剤等を介して製品表面に付着
しているだけであるため、洗濯堅牢性や擦傷性に劣り、
付与した機能性付与剤の効果(抗菌性や芳香性など)の
持続性に欠けるという問題がある。このため、各種機能
を有する繊維製品材料として、繊維自体に抗菌剤や消臭
剤を付与した機能性繊維の開発が進められている。
【0004】例えば、繊維を構成するポリマー溶液に抗
菌剤や消臭剤等の機能性付与剤を混合してなる紡糸原液
が用いて紡糸した機能性繊維(図6(a))や、図6
(b)に示すように芯−鞘繊維12の芯部分12aに抗
菌剤や消臭剤等の機能性付与剤を充填したものが挙げら
れる。図6中、11は機能性付与剤である。図6(a)
に示すような機能性付与剤11が練り込まれた繊維で
は、洗濯等によって機能性付与剤は脱落せず、優れた効
果持続性を有している。また、芯−鞘繊維の場合、機能
性付与剤11の放出は、両端の開口部分及び使用中に繊
維が折れた場合の切断面からに限られるので、効果持続
性の要求を満たすことが出来る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、機能性付与剤
が練り込まれた機能性繊維では、紡糸原液を調製する段
階で機能性付与剤を混合しておく必要があることから、
化学的組成、繊度、付与しようとする機能のいずれもが
同じ機能性繊維を、少なくとも1ロット分生産する必要
があり、多様な要求に応えるような多品種少量生産に向
かないという問題がある。
【0006】芯−鞘繊維の場合も、芯武12aの紡糸原
液又は紡糸直前に機能性付与剤を充填する必要があるの
で、二次製品や紡糸後に機能性付与剤を付与する場合
程、多品種少量生産に柔軟に対応できない。また、芯−
鞘繊維の場合、機能性付与剤の放出が両端開口部分及び
繊維が折れた場合の切断面からしか機能性付与剤が放出
ざれないため、得られる抗菌性、消臭性などの効果が小
さいという問題がある。
【0007】さらに、これらはいずれも合成樹脂繊維に
属し、廃棄の際に自然に帰ることが出来ず焼却する必要
があるなど、近年のエコロジーの要求を満足することが
できない。エコロジーを満足できる天然繊維(綿、麻
等)を用いて機能性付与製品を作ろうとしても、糸条体
自体に付与できないので二次製品の段階で付与すること
となり、この場合、上述のように効果の持続性という問
題が残ってしまう。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであり、その目的とするところは、糸条体自体に
機能性を付与して効果の持続性を確保すると共に、近年
のエコロジーの要求を満足できる生分解可能な繊維を用
いた生分解型機能性糸、及び該繊維若しくは糸を用いた
生分解型機能性布帛を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の生分
解機能性糸は、横断面がU字型、X字型、Y字型、星型
よりなる群から選択される少なくとも1種であるポリ乳
酸の異型断面繊維の凹部に機能性付与剤が保持されてい
る生分解型機能性繊維を含み、該機能性付与剤は液体で
あって、バインダー機能を有する樹脂で形成されるカプ
セル又はスフィアに含有されてなるマイクロカプセル又
はマイクロスフィアとして、前記異型断面繊維の凹部に
保持されていることを特徴とする。あるいは前記機能性
付与剤はシクロデキストリンに包接された包接化合物と
して、前記異型断面繊維の凹部に保持されていることを
特徴とする。前記機能性付与剤は、ヒノキチオールであ
ることが好ましい。
【0010】本発明の生分解型機能性糸は、生分解型機
能性繊維単独で構成されていてもよいし、前記生分解型
機能性繊維と天然繊維とを組み合わせて糸条体にしたも
のであってもよい。
【0011】本発明の生分解型機能性布帛は、本発明の
生分解型機能性糸を編成又は製織してなるものであって
もよいし、本発明の生分解型機能性糸と天然糸とを組み
合わせて編成又は製織してなるものであってもよい。ま
た、横断面がU字型、X字型、Y字型、星型よりなる群
から選択される少なくとも1種であるポリ乳酸の異型断
面繊維の凹部に機能性付与剤が保持されている生分解型
機能性繊維を含んでなり、該機能性付与剤は液体であっ
て、バインダー機能を有する樹脂で形成されるカプセル
又はスフィアに含有されてなるマイクロカプセル又はマ
イクロスフィアとして、あるいはシクロデキストリンに
包接された包接化合物として、前記異型断面繊維の凹部
に保持されている不織布であってもよい。
【0012】尚、本明細書において、生分解型とは、実
質的に土中の微生物の働きで水と炭酸ガスに分解され得
ることをいい、生分解性ポリマーとして認識されている
合成ポリマーをはじめ、天然物が含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】まず、本発明の生分解型機能性糸
について説明する。本発明の生分解型機能性糸は、表面
の適宜位置に凹部を有する生分解性繊維の凹部に機能性
付与剤が保持されている生分解型機能性繊維を含んだも
のである。
【0014】本発明に用いられる凹部を有する生分解性
繊維(以下、「生分解性凹部繊維」という)は、主とし
て生分解性ポリマーの紡糸原液を、特殊形状の紡糸口金
を用いて溶融紡糸した、いわゆる異形断面繊維が挙げら
れる。具体的には、ポリ乳酸の紡糸原液を用いた繊維が
挙げられる。
【0015】ここで、ポリ乳酸の紡糸原液とは、乳酸の
環状ダイマーを開環重合して得られるもので、一般式は
下式で表される。
【0016】
【化1】
【0017】原料となる乳酸は、ジャガイモやトウモロ
コシ等の穀物のデンプン、具体的にはこれらの穀物の廃
棄余剰素原料を乳酸発酵して得られるので、従来の合成
繊維のように石油系を原料せず、また上記化学式で示さ
れるポリ乳酸は水存在下で加水分解して乳酸となり、好
気性細菌により酸素存在下で炭酸ガスと水に分解され
る。
【0018】生分解性ポリマーの溶融紡糸にあたって
は、物性的に優れた繊維を得るために、紡糸原液の溶融
粘度、紡糸条件、延伸条件の最適化を図る必要がある。
ポリ乳酸については、ポリマー改質で一定の強度を確保
し、分子量を上げて配向と結晶を制御することにより繊
維化が可能となり、さらに紡糸条件、延伸条件の制御に
より、ナイロン繊維やポリエステル繊維とほぼ同程度の
強度を有する繊維を得ることが出来る(例えば、鐘紡株
式会社製のラクトロン(商品名))。
【0019】ラクトロンのようなポリ乳酸繊維は、活性
汚泥中でバクテリアにより分解され、繊維表面へのシワ
や繊維内部への亀裂、空洞が発生し、1〜2ヶ月程でば
らばらになる。このような分解速度は、綿、レーヨン等
のセルロース系繊維よりも遅いが、ウールやシルク等の
動物性蛋白質繊維よりは分解速度が速い。従って、生分
解性を有すると言える。また、活性汚泥処理や土壌埋め
込みによる処理以外に、焼却される場合であっても、発
生する熱量はセルロースと同程度であるため、石油系合
成繊維のように、燃焼ガス中のNOx を増やしたり、焼
却炉を傷めたりすることがない。
【0020】以上のような生分解性繊維で断面凹部を有
する異形断面繊維は、特殊な紡糸口金孔を用いて紡出す
ることにより得ることができる。断面凹部を有する異形
断面繊維としては、具体的には、図1(a)に示すよう
な断面U型、図1(b)に示すような断面Y型、図1
(c)に示すような断面X型、図1(d),(e)に示
すような断面星型などが挙げられ、これらのうち凹部が
深く且つ大きくて機能性付与剤を安定して保持できる断
面U型が好ましい。このようにして得られた異形断面繊
維は、必要に応じて、延伸処理、熱処理を施してもよ
い。
【0021】本発明で用いられる生分解性凹部繊維の繊
度は、次に述べる生分解型糸の製造方法、種類によって
異なるが、紡糸口金の大きさを調整することにより、マ
ルチフィラメント糸又はステープル用の1.5デニール
程度からモノフィラメント糸用の2000デニール程度
に適宜設定することができる。
【0022】生分解性凹部繊維は、そのまま単独でモノ
フィラメント糸として用いてもよいし、複数のフィラメ
ントを混合して形成したマルチフィラメント糸として用
いてもよいし、さらに紡糸により得られたフィラメント
を所定長さに切断してステープルとし、該ステープルを
紡績して紡績糸としてもよい。また、マルチフィラメン
ト糸の場合、必要に応じてかさ高加工や伸縮加工等を施
した加工糸としてもよい。さらに、単糸に限らず、上記
の様にして得られる2本の単糸を撚り合わせた双糸、3
本の単糸を撚り合わせた3子糸としてもよい。ここで、
モノフィラメント糸としては、50〜2000デニール
程度のものが一般的に用いられ、マルチフィラメント糸
としては、用途に応じて適宜各ファイバーの繊度、本数
を組合わせることができ、具体的には、30デニール、
50デニール、75デニール、150デニールの繊維を
24本、36本、48本、72本、96本撚ったものが
挙げられるが、これには限定されない。また、ステープ
ルとしては、1.5〜30デニール程度でカット長30
〜100mm程度のものが一般的に用いられる。
【0023】また、マルチフィラメント糸や紡績糸の場
合において、単一種類の生分解性凹部繊維からなる純糸
に限らず、繊度や断面形状、凹部形状が異なる異種の生
分解性異形断面繊維のステープルを混紡した混紡糸又は
異種のフィラメントを混合した混繊糸であってもよい
し、さらにフィラメント糸からなる芯糸の外側に異種の
フィラメント糸を巻き付けて複合糸としたカバードヤー
ンであってもよい。さらにまた、双糸、3子糸の場合に
は、異種の生分解性糸を用いて撚り合わせた交撚糸であ
ってもよい。
【0024】ここで、混繊糸やカバードヤーンに用いら
れる異種のフィラメント、混紡糸に用いられる異種のス
テープル、或いは交撚糸において組み合わせて用いられ
る異種の糸は、生分解性凹部繊維に限らず、生分解性ポ
リマーを紡糸して得られる凹部を有しない異形断面繊維
又は異形でない断面円形繊維、更には綿、麻等の天然繊
維であってもよい。綿、麻、ウール等の天然繊維は、ポ
リ乳酸繊維をはじめとする生分解型繊維と同様に生分解
性を有しているので、これらと組み合わせてなる混紡糸
や混繊糸も生分解性を保持できるからである。なお、カ
バードヤーンの場合には、芯糸、巻付け糸のいずれを生
分解性凹部繊維としてもよい。
【0025】このように、異なる種類の繊維、又はフィ
ラメントを組み合わせることは、繊維の特性を補う点か
ら好ましい。例えば、一般にポリ乳酸繊維は染色堅牢度
が小さく、染色しにくいという欠点があるので、綿と組
み合わせることにより染色堅牢度を改善することがで
き、また吸水性、吸湿性を付与することができる。ある
いはポリ乳酸繊維にウールを組み合わせることにより形
態安定性、防しわ性が付与される。
【0026】本発明の生分解型機能性糸は、上記のよう
な構成を有する生分解型糸の生分解性凹部繊維に機能性
付与剤を保持させたものである。
【0027】本発明に用いられる機能性付与剤として
は、汚れ成分分解機能や抗菌機能を有する光触媒や、抗
菌機能を有する抗菌剤や、かび抵抗性を有する防かび剤
や、芳香臭を放出する芳香剤、保温効果や温泉効果を期
待できる遠赤外線放射物質などが挙げられる。
【0028】上記光触媒としては、酸化チタン、酸化亜
鉛が挙げられる。これらは、光エネルギーを化学エネル
ギーに変換して、悪臭成分や汚れ成分を分解、無害化す
ることができ、その効果は光が存在する限り、半永久的
に得ることができると期待されている。
【0029】上記抗菌剤、防かび剤としては、特に限定
しないが、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属を無機イオン
交換体や多孔質体に担持した金属置換型抗菌剤、防かび
剤;抗菌性金属、又はキトサンや2−(4−チアゾリ
ル)ベンズイミダゾールのように抗菌性を有する有機化
合物を内包又はカプセル化してなる複合型抗菌剤、防か
び剤などが挙げられる。これらは、抗菌性金属又は抗菌
性を有する有機化合物を放出し、放出された抗菌性金属
又は抗菌性を有する有機化合物がバクテリア内に取り込
まれて、分裂増殖を阻止することにより、抗菌性、防か
び性を発揮できる。
【0030】上記芳香剤としては、ヒノキチオールやゲ
ラニオール等の芳香成分をシクロデキストリン等で安定
化した包接化合物などが用いられる。遠赤外線放射物質
としては、例えば、0.8μm程度にまで細かく砕いた
サマルスキー石等の天然石やセラミックスなどが挙げら
れる。
【0031】以上のような機能性付与剤は、粒子状のも
のであればそのまま用いてもよいが、マイクロカプセル
又はマイクロスフィアとして用いてもよい。特に機能性
付与剤が液体の場合には、マイクロカプセル又はマイク
ロスフィアとすることにより、凹部繊維の該凹部に保持
させることが可能となる。尚、マイクロカプセル又はマ
イクロスフィアの場合には、カプセル又はスフィアの径
は、機能性付与剤を生分解性凹部繊維の凹部に安定に保
持できるように、凹部の開口部の大きさと同程度以下と
することが好ましい。
【0032】このような機能性付与剤の保持は、バイン
ダーを介して生分解性凹部繊維の凹部中に収納又は捕捉
させることにより達成され、具体的には、機能性付与剤
と凹部の大きさとの関係から、図2(a)に示すよう
に、横断面が凹部繊維1の凹部3内に複数の機能性付与
剤2が収納されたり、図2(b)に示すように凹部3の
開口部を閉塞するように保持されたりする。また、機能
性付与剤2が凹部3よりもかなり小さい粉末の場合に
は、図2(c)に示すように、凹部3内に保持されるだ
けでなく、凹部繊維1の凹部3の外周面にもバインダー
により付着することがある。尚、機能性付与剤をマイク
ロカプセル又はマイクロスフィアとして用いる場合、カ
プセル又はスフィアを形成する樹脂としてバインダー機
能を有するもの、例えばアクリル系ポリマー又はコポリ
マーを用いる場合には、別にバインダーを用いなくて
も、アクリル系ポリマー又はコポリマー自体が有する粘
着力により繊維に保持されることができる。
【0033】バインダーを用いる場合の機能性付与剤を
繊維に保持させるための操作は、一般に、機能性付与剤
及びバインダーを含有分散させた溶液に、生分解性糸又
は糸にする前の生分解性凹部繊維を浸漬し乾燥すること
により行われる。糸条体としてから機能性付与剤を保持
させる方法は、糸を染色する染色液中に機能性付与剤を
混合分散しておくことにより、染色とともに機能性付与
剤を保持させることができ、新たな製造工程の追加又は
手間をかけなくても済む。尚、本発明において用いられ
るバインダーは、生分解型繊維、糸、の生分解型を損な
わないように、デンプン系、タンパク質系、セルロース
系などの天然物接着剤が好ましい。
【0034】以上のような構成を有する生分解型機能性
糸において、凹部内に保持された機能性付与剤は、凹部
の開口部分から適宜放出される。従って、中空繊維のよ
うに繊維の両端からしか放出されない場合と比べて、含
有量に見合った抗菌効果を期待できる。また、織糸又は
編糸の状態にしてから機能性付与剤を保持させることが
できるので、機能性付与剤を混合した紡糸原液を紡糸す
る従来の方法と比べて多品種少量生産が可能となり、消
費者の多様なニーズに応えることができる。しかも、本
発明にかかる糸は生分解性を有しているので、上記機能
性を有しているにも拘わらず、天然繊維と同様に環境に
優しいという効果がある。尚、凹部外周面に付着した機
能性付与剤においては、洗濯、摩擦により比較的早期に
糸から脱落してしまうが、凹部内に保持された機能性付
与剤については、凹部開口部分が糸表面、布帛表面に表
出しているとは限らないので、洗濯や摩擦に対しても、
脱落することなく糸に留まり、長期にわたって機能を発
揮し続けることができる。
【0035】次に、本発明の布帛について説明する。本
発明に係る生分解型機能性布帛とは、本発明に係る生分
解型機能性糸(天然繊維と組み合わせた糸を含む)を用
いた織布、編成布、又は生分解型機能性繊維を用いた不
織布が挙げられる。使用する生分解型機能性糸の太さ又
は生分解型機能性糸の繊度等は特に限定せず、製造しよ
うとする布帛の種類に応じて適宜選択できる。
【0036】本発明に係る生分解型機能性織布、編成布
は、本発明に係る生分解型機能性糸のみを編織すること
により作製してもよいし、生分解型機能性糸と綿糸等の
天然繊維からなる糸とをさらに撚りをかけて作った撚り
糸を使った撚糸織物や混編物、或いは縦糸(又は横糸)
に上記機能性糸を用いて横糸(又は縦糸)に天然繊維糸
を使った交織織物であってもよい。生分解型機能性糸の
純糸を用いる場合には、編成、製織の際に、天然糸と交
編、交織等で組み合わせることにより、生分解型機能性
糸の純糸の短所を補うことができるので、生分解性繊維
と天然繊維を、混繊、混紡等する場合と同様の効果を得
ることができる。
【0037】尚、織物の組織については、特に限定せ
ず、平織組織、斜文織組織、朱子織組織という3原組織
の他、変化組織、重ね織り組織、紋織り組織、パイル組
織などが挙げられる。さらにパイル織物については、織
物の表面又は両面にループ状のパイルを織り込んだ組織
(例えば別珍やコール天)であってもよいし、ふさ状の
パイル(ループをカットしたもの)を織り込んだ組織
(タオル組織、ビロード組織)であってもよい。また、
編み物についても、特に限定せず、経編み、横編みのい
ずれであってもよい。
【0038】また、不織布の場合、上記生分解型機能性
繊維単独で形成してもよいし、天然繊維とを混合して不
織布としてもよい。不織布の製造方法としては、従来よ
り公知の製造方法(例えば、メルトブローン法、ニード
ルパンチ法など)を採用することができ、これらのう
ち、使用する繊維の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0039】以上は、予め機能性付与剤が保持された本
発明の生分解型機能性糸を用いて形成される布帛につい
てであったが、本発明の生分解型機能性布帛の場合に
は、機能性付与剤を保持させていない繊維又は糸を用い
て布帛を形成した後、当該布帛に機能性付与剤を保持さ
せてもよい。具体的には、生分解型凹部繊維を用いてな
る織物、編み物、不織布を、バインダー及び機能性付与
剤を混合分散してなる溶液に浸漬等すると、布帛を構成
している生分解型凹部繊維の凹部に機能性付与剤が保持
されることになる。
【0040】以上のように、本発明の生分解型機能性布
帛では、予め機能性付与剤が保持された繊維又は糸を用
いなくても、布帛(二次製品)の状態で機能性付与剤を
保持させることができる。従来、織物又は編み物等に機
能性付与剤を塗布等しても、織り目間や編み目間のよう
に糸間間隙に機能性付与剤が捕獲されるだけで、洗濯堅
牢性がなく効果の持続性は期待できないという問題があ
ったが、本発明の布帛の場合には、織物又は編物に用い
た糸は表面に凹部を有する生分解型繊維を含んでいて、
該生分解型繊維の凹部の一部が織物、編み物等の布帛表
面に露出しているので、かかる凹部に機能性付与剤が保
持される。そして凹部に保持された機能性付与剤は、糸
間間隙に捕獲された機能性付与剤とは異なり、複数回の
洗濯にも脱落することなく、一定期間にわたって効果を
発揮し続けることができる。従って、従来の機能性繊維
を用いた繊維製品では困難であった多品種少量生産が可
能となる。しかも、布帛を染色するための染色液中に機
能性付与剤及びバインダーを分散含有させておけば、布
帛の染色とともに機能性付与剤の保持を行なうことがで
き、機能性付与剤を保持させるための新たな生産工程の
追加や手間をかけずに済む。尚、本発明の生分解型布帛
の染色は、混紡、混繊、交織に用いる相手の繊維、糸の
種類にもよるが、一般に分散染料が好ましく用いられ
る。
【0041】また、本発明の生分解型機能性布帛は、機
能性付与剤に起因する機能性を有するだけでなく、全体
が天然物を主原料として構成されているので、肌触りが
ソフトで、衣服を始めとしてタオルや毛布などの生活関
連の繊維製品材料として最適である。さらに、本発明の
生分解型機能性布帛は、布帛を構成する異形断面繊維の
形状を適宜選択することにより、布帛の風合い、光沢、
手触り等を適宜変えることができることはいうまでもな
い。
【0042】そして、本発明に係る生分解型機能性布帛
は、本発明の生分解型機能糸と同様に、活性汚泥中でバ
クテリアにより分解されるので、不要となった時には土
中埋め込み法等により廃棄しても自然に帰るので問題な
い。尚、生分解性であるからといって、通常の使用状態
で分解してしまうことはなく、家庭洗濯にも充分耐える
ものであることは言うまでもない。また、焼却処理され
る場合であっても、発生する熱量はセルロースと同程度
であるため、石油系合成繊維のように、燃焼ガス中のN
x を増やしたり、焼却炉を傷めたりすることがない。
【0043】
【実施例】〔生分解型機能性糸〕 参照例:ラクトロン(鐘紡株式会社製のポリ乳酸繊維)
の横断面がU字型繊維を38mmにカットしたステープ
ルと原綿を、U字繊維:原綿の重量比率が1:1となる
ように混綿した後、トータルドラフト30倍程度となる
ように練条して、50〜60ゲレンに調整したスライバ
ーを得、これを、撚り18.1 回/inch、スピンド
ル回数9000rpmの条件で精紡を行なって、綿番手
26番の生分解型糸を製造した。
【0044】この生分解型糸を、水9部にバインダー
(新中村化学株式会社製のFH−35)1部を溶解させ
てなるバインダー溶液に10分間浸漬した後、取り出
し、乾燥して、電子顕微鏡で観察したところ、図3のよ
うになった。断面U字繊維と綿繊維とが撚られているの
が認められる。尚、繊維間に認められる糸引きはバイン
ダーである。
【0045】実施例1a:参照例で用いた生分解型糸
を、水9部に、バインダー(新中村化学株式会社製のF
H−35)1部及び機能性付与剤を含有した溶液に10
分間浸漬した後、取り出し、乾燥して、生分解型機能性
糸を得た。ここで、機能性付与剤としては、堺化学工業
株式会社製の酸化亜鉛であるFX−25A(BET値か
ら換算される一次粒子径0.04μm、シリカ、アルミ
ナで表面処理)を用いた。
【0046】得られた生分解型機能性糸を電子顕微鏡で
観察したところ、図4(a)に示すように、U字型凹部
に酸化亜鉛とバインダーの凝塊物が保持されていること
が確認できた。
【0047】実施例1b:参照例で用いた生分解型糸
を、マイクロカプセル型機能性付与剤である有限会社キ
セイテックのHYKA−1(これは、ヒノキチオールを
アクリル系樹脂のカプセル内に包含させた直径1〜10
μmの徐放型マイクロカプセルである)を分散させてな
る液に3〜10分間程度浸漬しながら、押し、捻り等を
加えた。取り出し時に絞り圧力を加えた。
【0048】得られた生分解型機能性糸を電子顕微鏡で
観察したところ、図4(b)に示すようになった。図4
(b)から、断面U字繊維のU字型凹部にマイクロカプ
セル(写真中央の白玉)が保持されていることが確認で
きた。
【0049】実施例2:参照例で製造した生分解型糸
を、バインダーとマイクロカプセルだけを分散混合した
液に浸漬して、生分解型機能性糸を得た。この糸を電子
顕微鏡で観察したところ、図5に示すようになった。実
施例1の場合と同様に、U字型の凹部開口部にマイクロ
カプセルが保持されていることがわかる。
【0050】〔生分解型機能性布帛〕 実施例3:参照例で製造した生分解型機能性糸を用いて
ニット、平織物、パイル織物を作製した。これらの布帛
を、染液[住友化学工業(株)製反応性染料:リアクテ
ィブスミフィックス・スプラの希釈水溶液]に浸漬した
後、実施例1で用いた機能性付与剤及びバインダーを分
散含有させてなる水洗液に10分間浸漬した後、取り出
し、乾燥して、生分解型機能性布帛を得た。得られた各
布帛をカットして試験片を作成し、各試験片について、
洗濯に対する染色堅牢度試験(JIS L0844)、
光に対する染色堅牢度試験(JIS L0888)、摩
擦に対する染色堅牢度試験(JIS L0849)を行
なった。いずれの試験片も4級以上の結果が得られ、布
帛としての染色堅牢度は合格レベルにあることが確認で
きた。
【0051】
【発明の効果】本発明の生分解型機能性糸は、生分解性
繊維だけを用いて構成されているので、環境に優しいエ
コロジー糸である。しかも、抗菌性、芳香性等という糸
に付与したい機能を付与するための機能性付与剤が繊維
の凹部に保持されているので、従来よりも機能性付与剤
の機能が発揮されやすく、しかも耐久性がある。さらに
は、紡糸段階ではなく、糸条体で機能性付与剤を付与す
ることができるので、少量多品種生産に好適である。
【0052】本発明の生分解型機能性布帛は、本発明の
生分解型機能性糸を用いており、布帛としての特性は、
通常の合成繊維等を用いて作製した布帛と同程度である
ので、環境に優しいエコロジー衣料を提供できる。ま
た、布帛の段階で機能性付与剤を保持させることも可能
であるから、多様な消費者の要求に応えて、種々の機能
を付与した多品種少量生産衣料用の布帛にも好適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生分解型機能性糸に用いられる異形断
面繊維の形状の実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明の生分解型機能性糸に係る生分解型機能
性繊維の一実施態様の構成を示す模式図である。
【図3】参照例の生分解型糸の電子顕微鏡写真(100
0倍)である。
【図4】実施例1の生分解型機能性糸の電子顕微鏡写真
であり、(a)は20000倍であり、(b)は500
0倍である。
【図5】実施例2の生分解型機能性糸の電子顕微鏡写真
(1000倍)である。
【図6】従来の機能性繊維の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 断面凹部繊維 2 機能性付与剤 3 凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 101:32

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 横断面がU字型、X字型、Y字型、星型
    よりなる群から選択される少なくとも1種であるポリ乳
    酸の異型断面繊維の凹部に機能性付与剤が保持されてい
    る生分解型機能性繊維を含み、 該機能性付与剤は液体であって、バインダー機能を有す
    る樹脂で形成されるカプセル又はスフィアに含有されて
    なるマイクロカプセル又はマイクロスフィアとして、前
    記異型断面繊維の凹部に保持されている ことを特徴とす
    る生分解型機能性糸。
  2. 【請求項2】 横断面がU字型、X字型、Y字型、星型
    よりなる群から選択される少なくとも1種であるポリ乳
    酸の異型断面繊維の凹部に機能性付与剤が保持されてい
    る生分解型機能性繊維を含み、 該機能性付与剤はシクロデキストリンに包接された包接
    化合物として、前記異型断面繊維の凹部に保持されてい
    ることを特徴とする 生分解型機能性糸。
  3. 【請求項3】 前記機能性付与剤は、ヒノキチオールで
    ある請求項1又は2に記載の生分解型機能性糸。
  4. 【請求項4】 前記生分解型機能性繊維と天然繊維とを
    組み合わせて糸条体にしたものである請求項1〜3のい
    ずれかに記載の生分解型機能性糸。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解
    型機能性糸を編成又は製織してなる生分解型機能性布
    帛。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解
    型機能性糸と天然糸とを組み合わせて編成又は製織して
    なる生分解型機能性布帛。
  7. 【請求項7】 横断面がU字型、X字型、Y字型、星型
    よりなる群から選択される少なくとも1種であるポリ乳
    酸の異型断面繊維の凹部に機能性付与剤が保持されてい
    る生分解型機能性繊維を含んでなり、 該機能性付与剤は液体であって、バインダー機能を有す
    る樹脂で形成されるカプセル又はスフィアに含有されて
    なるマイクロカプセル又はマイクロスフィアとして、あ
    るいはシクロデキストリンに包接された包接化合物とし
    て、前記異型断面繊維の凹部に保持されていることを特
    徴とする 生分解型機能性不織布。
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