JP3014501B2 - 電力ケーブル接続用筒状絶縁ブロックの製造方法 - Google Patents

電力ケーブル接続用筒状絶縁ブロックの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、架橋ポリエチレン絶縁
電力ケーブルの接続に用いられる筒状絶縁ブロックの製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの超
高圧線路への適用が進むにつれ、接続作業の時間短縮
が、線路建設を合理化する上での大きな課題となってき
ている。すなわち 154KV以上の電圧階級の架橋ポリエチ
レン絶縁電力ケーブルを接続する場合には従来、モール
ドジョイント工法が用いられ、安定した高い性能が得ら
れているが、この工法は接続作業に要する時間がきわめ
て長いという欠点がある。このため、工場で予め製作し
た絶縁部品をケーブル布設現場で組み立てる、いわゆる
プレハブジョイントに対するニーズが高まり、すでに 2
75KV級までのプレハブジョイントが開発され、実用化さ
れようとしている。
【0003】しかしプレハブジョイントは接続部絶縁体
に架橋ポリエチレンほど高い電気的ストレスで使用する
ことのできないエポキシ樹脂やゴムを使用しているた
め、接続部寸法を小さくするのに限界があり、 275KV級
や500KV級の線路ではスペース上の制約から使用が制限
される。
【0004】一方、接続部絶縁体を架橋ポリエチレンで
構成するモールドジョイント工法についても改良研究が
行われつつあり、一つの案として、接続部絶縁体を一体
または二つ割の筒状絶縁ブロックとして予め工場で製作
しておいて、接続現場ではそれをケーブル接続部に取り
付け、加熱して一体化するだけというブロック絶縁の概
念が提案されている。この方法は、モールドジョイント
の高い絶縁性能と、プレハブジョイントの簡便性をある
程度兼ね備えた接続方法であり、特に従来の押出モール
ドジョイント工法に比較して接続時間の短縮にかなりの
効果があると期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来の電力ケー
ブル接続用筒状絶縁ブロックは、金型によるモールド成
形で製造されているため、内部半導電層および外部半導
電層のついた筒状絶縁ブロックとするためには、多くの
工程を必要とし、それぞれの工程における品質管理もき
わめて煩雑である。また製造された筒状絶縁ブロックの
電気絶縁性能を確認することが困難である。さらに従来
の筒状絶縁ブロックは、金型で1個毎に成形し、その上
1個毎に電気絶縁性能を確認しなければならないので、
生産性が低く、コスト高になるという問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
課題を解決した電力ケーブル接続用筒状絶縁ブロックの
製造方法を提供するもので、その方法は、中心導体の外
周に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を順次
有し、少なくとも絶縁層が未分解の架橋剤を含んでいて
未架橋または不完全架橋の状態にある電力ケーブル状長
尺体を製造し、この電力ケーブル状長尺体を電気試験し
て欠陥のないことを確認した後、所要の長さに切断する
と共に中心導体を引き抜いて筒状体を得、この筒状体の
両端部を電力ケーブル接続部に適する形に加工すること
を特徴とする。
【0007】ここで用いる中心導体は、断面円形の長尺
導体であればよく、撚線導体はもちろん金属製のパイプ
などを用いることも可能である。絶縁層や内外半導電層
を不完全架橋の状態にする場合には、押出後の架橋工程
で、架橋剤の分解量を95%以下にすること (5%以上の
架橋剤を未反応で残存させること)が望ましい。
【0008】
【作用】本発明の製造方法によると、筒状絶縁ブロック
の内部半導電層、絶縁層および外部半導電層は、電力ケ
ーブル状長尺体を製造する段階で、通常の電力ケーブル
を製造する場合と同様に、3層一体のものとして押出成
形されるため、各層の界面に異物などによる欠陥が生じ
るおそれがなく、かつ各層界面の密着性も高く安定した
ものとなる。このため高い絶縁性能が得られる。
【0009】また電気試験は電力ケーブル状長尺体の状
態で行われるため、通常の電力ケーブルと同様に中心導
体に課電することにより簡単に行うことができ、かつ個
々の筒状絶縁ブロックについて電気試験を行う必要がな
くなる。また筒状絶縁ブロックは、電力ケーブル状長尺
体を所要の長さに切断して、中心導体を引き抜き、両端
部を加工するという工程で製造されるため、1個毎に金
型でモールド成形する場合に比べ、きわめて高い生産性
が得られる。
【0010】さらに、製造される筒状絶縁ブロックは、
少なくとも絶縁層が未分解の架橋剤を含んでいて未架橋
または不完全架橋の状態にあるため、これを電力ケーブ
ル接続部にセットして架橋すると、そのときの熱と圧力
で筒状絶縁ブロックが一旦軟化してケーブル絶縁体に密
着し、さらに架橋の進行によりケーブル絶縁体と強固に
接着するようになる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。 実施例1 この実施例では275KV 1400mm2 の架橋ポリエチレン絶縁
電力ケーブル (外部半導電層外径105 mm、絶縁層外径10
3 mm) を接続するための筒状絶縁ブロックを製造した。
【0012】まず接続すべき電力ケーブルと同等の寸法
を有する図1に示すような電力ケーブル状長尺体11を製
造した。この電力ケーブル状長尺体11は、銅撚線よりな
る中心導体13の外周に、内部半導電層15、絶縁層17およ
び外部半導電層19を順次有しており、これらの層15、1
7、19は、通常の架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを
製造する場合と同様に、3層同時に押出成形されたもの
である。この3層15、17、19はポリエチレンに架橋剤を
混入したもの (半導電層15、19にはさらに導電性付与材
を混入) であるが、架橋剤は分解させずに未反応で残存
させてある。すなわちこの電力ケーブル状長尺体11は、
通常の電力ケーブルと同様に3層同時に押出成形した
後、架橋管内を単に加圧しただけで通過させ、架橋する
ことなく冷却したものである。
【0013】このあと外部半導電層の上に保護テープ
(図示せず)や仮遮蔽層21を設け、この状態で通常の電
力ケーブルと同様に電圧をかけてスクリーニングテスト
を行う。このテストは内部半導電層15、絶縁層17および
外部半導電層19の電気絶縁性能に異常のないことを確認
するために行うものである。中心導体13はこの電気試験
を行うために必要なものであるから、必ずしも銅撚線で
ある必要はなく、金属パイプなどを用いることもでき
る。また中心導体13の表面には後工程での引き抜き作業
を容易にするため四フッ化エチレン樹脂テープなどの離
型性に富む材料を被覆しておくのも一つの方法である。
【0014】次に、電気試験後の電力ケーブル状長尺体
11を筒状絶縁ブロックとして必要な長さに切断し、中心
導体13を引き抜くと共に、仮遮蔽層21などを除去して、
図2のような筒状体23を得た。この筒状体23を、クリー
ンルーム内で専用NC旋盤を用いて図3のような形状に
加工し、さらに表面を必要な精度に仕上げ、表面の異物
を拭き取って、図3に示す電力ケーブル接続用筒状絶縁
ブロック25を得た。
【0015】この筒状絶縁ブロック25は、接続部絶縁体
となる未架橋の絶縁層17の内外周面に内部半導電層15お
よび外部半導電層19が密着しており、絶縁層17の両端部
内面にテーパー面27が形成されているものである。内部
半導電層15の内径は、ケーブル導体接続部に若干の締め
つけ力を加えて接触する程度に設計される。またテーパ
ー面27の形状はケーブル絶縁体のテーパー面の形状を考
慮して定められる。
【0016】後述するようにケーブル導体は内部半導電
層15内で差込み接続方式により接続されるので、筒状絶
縁ブロック25のテーパー面27とケーブル絶縁体のテーパ
ー面の間には若干の隙間があることが望ましいが、この
隙間が大きすぎると両テーパー面の接着が不十分となる
ので、筒状絶縁ブロック25のテーパー面27はこの点を考
慮して決定される。
【0017】製造された筒状絶縁ブロック25は、表面の
異物を確実に除去するため超音波洗浄を実施することが
望ましい。また表面を清浄にした筒状絶縁ブロックは、
後工程で外傷を受けたり、異物が付着したりしないよう
に、薄いポリエチレン二軸延伸シート等によって真空パ
ックしておくことが望ましい。
【0018】次に、以上のようにして製造された筒状絶
縁ブロック25を用いて、架橋ポリエチレン絶縁電力ケー
ブルを接続する方法を図4を参照して説明する。まず、
接続する電力ケーブル29A、29Bの導体31A、31Bを所
定長露出させ、外部半導電層37A、37Bを所定の寸法は
ぎ取り、絶縁体35A、35Bおよび内部半導電層33A、33
Bを成形加工する。
【0019】次に、外部半導電層接続用の半導電性熱収
縮チューブ、接続部保護用銅管、その他架橋用のガスバ
リアー層や加圧管パッキングなどの必要部品 (いずれも
図示せず)を電力ケーブル29Aまたは29Bの外側に挿通
する。
【0020】次にケーブル導体31A、31Bの端部に接触
子39A、39Bを圧縮接続する。その後、一方の電力ケー
ブル31Aの端部を筒状絶縁ブロック25に挿入し、さらに
反対側から他方の電力ケーブル31Bの端部を挿入して、
筒状絶縁ブロック25内で接触子39A、39Bを差込み接続
する。接触子39A、39Bは、差込み接続により所定の接
触圧と導電性が得られ、接続後はピン41によって接続状
態がロックされる構造のものである。これで導体接続が
完了である。
【0021】このあと、予め挿通しておいた半導電性熱
収縮チューブ43を、筒状絶縁ブロック25の外部半導電層
19とケーブルの外部半導電層37A、37Bとに跨がるよう
に配置し、それを加熱して熱収縮させる。図4はこの熱
収縮が終えたときの状態を示す。
【0022】次に、接続部全体に架橋用のガスバリアー
層を熱収縮させて被覆し、加熱ヒーターを取り付け、さ
らに架橋用加圧容器を被せて、同容器内を窒素ガスなど
で加圧すると共にヒーターで加熱する。これによって未
架橋状態の筒状絶縁ブロック25を架橋するわけである
が、このときの熱と圧力によって筒状絶縁ブロック25は
一旦軟化して流動し、内部の隙間を埋めるため、ケーブ
ル絶縁体35A、33Bや内部半導電層33A、33Bによく密
着し、さらに架橋の進行によりケーブル絶縁体35A、33
Bや内部半導電層33A、33Bと強固に接着する。このた
めボイドのない良好な接着界面を得ることができる。
【0023】筒状絶縁ブロック25の架橋を終了した後
は、冷却し、架橋に使用した加圧容器などを解体して取
り外した後、接続部に遮蔽層を被せ、保護用銅管を被せ
る。これで接続作業が完了となる。
【0024】実施例2 実施例1で製造した電力ケーブル状長尺体と同じ寸法
で、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層の架橋剤の分
解率を約60%とした電力ケーブル状長尺体を製造した。
この電力ケーブル状長尺体は、架橋剤を含む内部半導電
層、絶縁層、外部半導電層を同時に押出成形した後、架
橋剤の分解率を約60%に抑制する架橋条件で架橋管を通
過させることにより製造した。
【0025】その後、実施例1と同様に電気試験を実施
して欠陥のないことを確認した後、定尺切断、中心導体
の引き抜き、成形加工を行って、筒状絶縁ブロックを製
造した。次にこの筒状絶縁ブロックを用いて実施例1と
同様にして架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを接続し
た。
【0026】以上の実施例1および実施例2により得ら
れた電力ケーブル接続部と従来の押出モールドジョイン
ト工法により得られた電力ケーブル接続部について、交
流破壊試験を行った。電圧印加ステップは、AC 610KV
×12hr印加後、50KV/1hrのステップアップである。その
結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】このように本発明により製造された筒状絶
縁ブロックを用いると、従来の押出モールドジョイント
に比較しても何ら遜色のない高品質の接続部が得られ、
しかも接続に要する時間は押出モールドを必要としない
ため短時間ですむ。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ま
ず内部半導電層、絶縁層、外部半導電層を有する電力ケ
ーブル状長尺体をつくり、その状態で電気試験をしてか
ら、所要の長さに切断して電力ケーブル接続用筒状絶縁
ブロックを製造するので、金型で1個毎にモールド成形
し、さらに1個毎に電気試験を行う場合に比べ、1個あ
たりの成形時間、試験時間が大幅に短縮され、きわめて
高い生産性が得られる。
【0030】また内部半導電層、絶縁層、外部半導電層
は通常の電力ケーブルの製造と同様にして3層一括で押
出成形できるので、それらの界面に異物などが入るおそ
れがなく、信頼性の高い筒状絶縁ブロックを製造でき
る。
【0031】さらに製造される筒状絶縁ブロックは少な
くとも絶縁層が未分解の架橋剤を含む未架橋または不完
全架橋の状態にあるため、電力ケーブルの接続を行う際
に筒状絶縁ブロックの架橋処理を行うことにより、筒状
絶縁ブロックがケーブル絶縁体と隙間なく強固に接着す
るようになり、信頼性の高い電力ケーブル接続部を構成
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例により筒状絶縁ブロックを
製造する過程で製造される電力ケーブル状長尺体を示す
縦断面図。
【図2】 図1の電力ケーブル状長尺体を切断して得た
筒状体を示す縦断面図。
【図3】 本発明の一実施例により製造された筒状絶縁
ブロックの縦断面図。
【図4】 図3の筒状絶縁ブロックを用いて電力ケーブ
ルを接続する過程を示す縦断面図。
【符号の説明】
11:電力ケーブル状長尺体 13:中心導体 15:内
部半導電層 17:絶縁層 19:外部半導電層 21:仮遮蔽層
23:筒状体 25:筒状絶縁ブロック 27:テーパー面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 品川 展行 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (72)発明者 野田 一 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (72)発明者 中野 孝男 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02G 1/14 H02G 15/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中心導体の外周に、内部半導電層、絶縁
    層および外部半導電層を順次有し、少なくとも絶縁層が
    未分解の架橋剤を含んでいて未架橋または不完全架橋の
    状態にある電力ケーブル状長尺体を製造し、この電力ケ
    ーブル状長尺体を電気試験して欠陥のないことを確認し
    た後、所要の長さに切断すると共に中心導体を引き抜い
    て筒状体を得、この筒状体の両端部を電力ケーブル接続
    部に適する形に加工することを特徴とする電力ケーブル
    接続用筒状絶縁ブロックの製造方法。
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