JP3014401B2 - D―デソサミンのレチノイン酸エステル、その製法、ヒトまたは獣医用薬および化粧用組成物 - Google Patents

D―デソサミンのレチノイン酸エステル、その製法、ヒトまたは獣医用薬および化粧用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、新規なD−デソサミンのレチノイン酸エス
テル、それらの合成方法、並びにそれらのヒトおよび獣
医用薬、および化粧用組成物における用途に係るもので
ある。
[用途] これらの新規なD−デソサミンのレチノイン酸エステ
ルは、特に医薬用および化粧用組成物として、主に病原
性または非病原性の細菌増殖を防ぐために有益である。
本発明のD−デソサミンのレチノイン酸エステルは、
角化性障害(分化−増殖)に関連する皮膚病、炎症およ
び/または免疫アレルギーの要素を有し、結合組織変性
病変のある皮膚疾患などの、局所および全身処置に用い
ても有益である。これらのレチノイン酸エステルは、抗
腫瘍活性をも示す。さらにこれらのエステルは、皮膚性
であれ呼吸性であれ、アトピーの処置、およびリューマ
チ性乾癬の処置に用いることができる。
本発明のエステルは、皮膚の老化を防ぐための処置に
も用いることができる。
これらは、眼科学の分野でも用いられ、主に角膜の疾
病の処置に用いることができる。
[従来の技術] エトレチノイン酸および糖のエステルまたはアミドで
ある、新規のレチノイン類で、新生物、乾癬および瘡
の処理に用いられるものが、すでにフランス特許第8418
617号(2556348)で公けにされている。これらのエステ
ルまたはアミドは、以下の式で表される: [式中、 Rは、エステル結合した糖の残基もしくはアミド結合
したアミノ化糖の残基、またはそのような糖の誘導体で
あり、nは1または2である。] このフランス特許によると、糖残基はグルコース、マ
ルトース、トレハロースもしくはリボースから誘導さ
れ、またはこれらの糖の誘導体であるのが好ましい。
[発明の記載] 鋭意研究の結果、全く驚くべき、予期しないことに、
糖としてエリスロマイシンを含む種々のマクロライドを
構成するD−デソサミンを用い、エトレチノイン酸のほ
か、(全エステル)および(13シス)レチノイン酸でエ
ステルを形成すると、これらの酸の欠点すなわち、毒
性、主に催奇性を克服することができることが見出ださ
れた。
比較研究の結果、さらに、これらの新しい特性は、本
質的にはエステル化に用いた糖、すなわちD−デソサミ
ンの性質に依るものであることが明らかになった。実
際、たとえばグルコースに対応するエステルは、主に全
トランス鎖が関与する無毒化と同じ無毒化を提供するも
のではない。
さらに、これらの新規なD−デソサミンのレチノイン
酸エステルは、予期しないことに、優れた抗菌特性を呈
するが、他の炭水化物たとえばグルコースの同じエステ
ルにはそのような活性が無いということが確認された。
[発明の構成] 本発明は、新規な産業生産物であり、一般式: [式中、 は(全トランス)もしくは(13シス)のどちらかのレチ
ノイル基またはエトレチノイル基であり、および R2は炭素数1−24の直鎖状または分岐鎖状のアルキル
である] で表されるD−デソサミンのレチノイン酸エステル、 並びに式(I)の化合物のαおよびβアノマー、それ
らの混合物および塩に係るものである。
炭素数1−24の直鎖状または分岐鎖状アルキルには、
主に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、t−ブチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシ
ル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデ
シルおよび2−デシル−テトラデシル基がある。
D−デソサミンのレチノイン酸エステルが、エトレチ
ノイン酸から誘導される場合、以下の一般式で表され
る。
[式中、 R2は、上記の式(I)の化合物の定義と同義であ
る。] D−デソサミンのレチノイン酸エステルが、(全トラ
ンス)または(13シス)レチノイン酸から誘導される場
合、以下の一般式で表される: [式中、 R2は、上記の一般式(I)の場合と同義である。] 本発明によるD−デソサミンのレチノイン酸エステル
には、主に以下のものがある: 1. O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−
α,β−D−デソサミン 2. O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
1−α,β−D−デソサミン 3. O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
1−α−D−デソサミン 4. O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−
α−D−デソサミン 5. O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチ
ル−1−α,β−D−デソサミン 6. O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチ
ル−1−α−D−デソサミン 7. O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチ
ル−1−β−D−デソサミン 8. O−レチノイル(13シス)−2−O−メチル−1−
α,β−D−デソサミン 9. O−レチノイル(全トランス)−2−O−デシル−
2′−テトラデシル−1−α,β−D−デソサミン 10. O−レチノイル(13シス)−2−O−デシル−
2′−テトラデシル−1−α,β−D−デソサミン 本発明は、上記で定義したD−デソサミンのレチノイ
ン酸エステルの合成方法にも係るものである。
D−デソサミンの2位のエステル化は、種々の方法で
行うことができるが、エステル化は無水有機溶媒、たと
えばテトラヒドロフラン単独またはその他の有機溶剤、
たとえばピリジンまたはN,N−ジメチルホルムアミドと
混合したものの中で、反応液中で、たとえばクロロギ酸
エチルエステルと適当な酸から合成されるエトレチノイ
ン酸または(全トランス)もしくは(13シス)レチノイ
ン酸のいずれかの混合無水物を、過剰にD−デソサミン
の1位のモノエーテルと反応させて行うのが好ましい。
その他の方法でエステル化を行うこともできるが、そ
の場合、適当な酸のイミダゾール化物を無水溶媒中で用
いる方法で行うことができる。たとえばピリジンまたは
N,N−ジメチルホルムアミドを、塩基たとえばカリウム
−t−ブタノレートまたはナトリウムイミダゾリドの存
在下で反応させる。しかし、これらの方法は一般的に収
率が低い。
D−デソサミンの1位のモノエーテルは、D−デソサ
ミンを、適当なアルコール(R2OH)と、無機酸たとえば
硫酸もしくは塩酸、または有機酸たとえばパラトルエン
スルホン酸の存在下で、所望により有機溶媒たとえばN,
N−ジメチルホルムアミド中で、約80℃で反応させる、
通例のグリコシル化法により得られる。
[実施態様] 本発明による化合物は、とりわけ以下の分野で有益で
ある: (1) 分化および増殖に基づく角化症に関与する皮膚
疾病の処置用および尋常性瘡、面皰症、多形症、キス
チック結節瘡、凝塊形成、老人性瘡、および二次性
瘡たとえば日光性瘡、薬剤性瘡および職業性瘡
の処置用。
(2) その他の種類の角化症の処置用、主に魚鱗癬、
魚鱗形成状態、ダリヤー病、掌蹠底角皮症、白斑症およ
び白斑形成状態、苔癬の処置用。
(3) 炎症おもび/または免疫アレルギー性要素を有
する角化症に関与するその他の皮膚疾病の処置用、主
に、皮膚、粘膜または爪の乾癬など、および乾癬性リウ
マチや皮膚性アトピーまでも含める全ての種類の乾癬、
たとえば湿疹または呼吸性アトピーの処置用。これらの
化合物は、角化症を呈さない、ある種の炎症性疾病にも
用いることができる。
(4) 良性でも悪性でも、ウイルスに起因する皮膚ま
たは上皮の全ての増殖、たとえば一般的なイボ、平坦性
イボ、およびイボ状の表皮異形成の処置用。増殖は紫外
線照射により引き起こされ、主に基底細胞上皮腫および
細胞棘の間質におこる。
(5) 他の皮膚疾病、たとえば水疱性皮膚病およびコ
ラーゲン病の処置用。
(6) ある種の眼科疾病、主に角膜疾病の処置用。
(7) 光誘起、またはそれ以外の原因による皮膚の老
化を防ぐため。
(8) 局所または全身性のコルチステロイドによる、
またはその他の形態の上皮および/または皮膚萎縮の瘢
痕の予防または治癒用。
本発明は、上記で定義したように、治療用に用いられ
る組成物の有効成分としての、D−デソサミンのレチノ
イン酸エステルの用途にも係るものである。
主に上述の疾病の処置を目的とした治療用組成物は、
薬学的に許容できる担体または賦形剤に、少なくとも1
種のD−デソサミンのレチノイン酸エステル、または1
種のそれの塩、たとえば一般式(I)により上記で定義
されたものを含む。
これらのD−デソサミンのレチノイン酸エステルは、
一般的に、1日量が体重あたり約0.01mg/kg−50mg/kgで
投与する。
組成物の担体として、通常の担体ならばどれを用いて
もよく、有効成分は担体または賦形剤中に溶解した状態
か、または分散した状態で存在する。
投与は、経口、非経口、局所または眼内に行う。経口
投与する場合、治療用組成物は錠剤、カプセル剤、口内
錠、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤または乳
剤の形態で投与する。非経口投与する場合、組成物は潅
流または注射用の液剤または懸濁剤の形態で与えること
ができる。
局所的に投与する場合、本発明によるD−デソサミン
のレチノイン酸エステルに基づく治療用組成物は、軟
膏、チンキ剤、クリーム、ポマード、粉末、パッチ、浸
透パッド、液剤、ローション、ゲル、スプレーまたは懸
濁剤の形態で与えることができる。
眼内投与する場合、組成物は主に眼洗浄に用いる。
これらの治療用組成物は、上記で定義されたような、
少なくとも1種のD−デソサミンのレチノイン酸エステ
ルを組成物の全重量に対して0.001−5重量%の範囲で
含有するのが好ましい。
一般式(I)のD−デソサミンのレチノイン酸エステ
ルは、化粧用の分野でも有益に用いられ、とりわけ体お
よび髪の衛生のため、主に瘡のできやすい皮膚の処置
用に、脱毛を防ぎ育毛に、皮膚もしくは髪の油症を防ぐ
ために、太陽の有害な効果から保護するために、生理的
乾燥肌の処置用に、またはデオドラント(体臭防止用)
として用いられる。
本発明は、化粧品として許容できる賦形剤または担体
中に、少なくとも1種の一般式(I)で表されるD−デ
ソサミンのレチノイン酸エステルまたその1種のそれの
塩を含有する化粧用組成物に係るものであり、この組成
物は主に、ローション、ゲル、石けん、シャンプー、ス
ティック、スプレーまたはエアロゾールフォームの形態
で与える。
化粧用組成物中の、式(I)で表されるD−デソサミ
ンのレチノイン酸エステルの濃度は、化粧用組成物の全
重量に対して、一般的には0.0001−5重量%、好ましく
は0.001−3重量%である。
本発明による治療用および化粧用組成物は、不活性
な、または薬動力学的もしくは化粧用として活性な添加
物をも含有し得る。主に保湿剤たとえばチアモルホリノ
ンおよびその誘導体または尿素;抗脂漏性または抗瘡
剤たとえばS−カルボキシメチルシステイン、S−ベン
ジル−システアミンおよびその塩並びにその誘導体、チ
オキソロンまたは過酸化ベンゾイル;抗生物質たとえば
エリスロマイシンおよびそのエステル、ネオマイシン、
テトラサイクリンまたは4,5−ポリメチレン−3−イソ
チアゾリノン;育毛促進剤たとえば「ミノキシジル」
(2,4−ジアミノ−6−ピペリジノ−ピリミジン−3−
オキシド)およびその誘導体、ジアゾキシド(7−クロ
ロ−3−メチル−1,2,4−ベンゾチアジアジン−1,1−ジ
オキシド)およびフエニトイン15,5−ジフェニルイミダ
ゾリジン−2,4−ジオン);ステロイド性および非ステ
ロイド性抗炎症剤;カロチノイド主にβ−カロテン;抗
乾癬剤たとえばアンスラリンおよびその誘導体、並びに
5,8,11,14−エイコサテトライノン散および5,8,11−ト
リイノン酸、およびそのエステルおよびそのアミドなど
である。
本発明による組成物は、治療用であれ、化粧品用であ
れ、矯味矯臭改善剤、保存剤、安定化剤、水分調節剤、
pH調節剤、浸透圧改変剤、乳化剤、UV−AおよびUV−B
フィルター、抗酸化剤たとえばα−トコフェロール、ブ
チルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトル
エンを含有できる。
本発明による組成物が、抗菌処置を目的とする場合、
十分量の組成物を1日2−3回、皮膚の処置すべき部位
に適用し、この療法を6−30週、好ましくは12−24週の
期間続ける。
本発明による抗菌組成物は予防薬としても用いること
ができる。すなわち、細菌感染の恐れのある皮膚の部位
に適用する。
治療用および化粧用の分野に関してより具体的に言及
してきたが、本発明によるD−デソサミンのレチノイン
酸エステルは、抗菌剤および防腐剤として他の産業分野
でも用いることができる。たとえば農場、製紙、ペイン
トおよびエナメル、並びに水処理操作においてである。
[発明の効果] D−デソサミンのレチノイン酸エステルの活性の非核実
験 D−デソサミンのレチノイン酸エステルの活性は、希
釈法により最小阻止濃度(MIC)を決定して研究した。
この方法はG.A.デニスら、アンチミクロビアル・エージ
エンツ・アンド・ケモセラピー(Antimicrobial Agents
and Chemotherapy)23巻335−337頁(1983年)および
J.J.ライデンら、ジャーナル・オブ・アメリカン・アカ
デミー・オブ・デルマトロジー(J.Am.Acad.Dermatol)
8巻1号41−5頁(1983年)に、クンリフェおよびホー
ランドにより提供されたプロピオニバクテリウム アク
ネス(propionibacterium acnes)株、937株を用いて行
われたと報告されている。
このP37株は、以下の出版物に記載されている実験の
対象として用いられた: J.グリーマン、K.T.ホーランドおよびW.J.クンリフ
ェ、ジャーナル・オブ・ジェネラル・ミクロバイオロジ
ー(Journal of General Microbiology)129巻1301−13
07頁(1983年) E.イングハム、K.T.ホーランド、G.ゴウランドおよび
W.J.クンリフェ、同上118巻59−65頁(1980年) K.T.ホーランド、J.グリーマンおよびW.J.クンリフ
ェ、ジャーナル・オブ・アプライド・バクテリオロジー
(Journal of Applied Bacteriology)47巻383−384頁
(1979年) 感受性株および抵抗性株の分別および単離 37株は、最小阻止濃度(MIC=0.78μg/ml)から明ら
かなように、エリスロマイシンに感受性がある。
一方、この培地でのこの株の安定性を増強するという
観点から、同じ培地(容量で、RCM19/20、DMSO1/20)
で8継代培養した後、エリスロマイシンに対する抵抗性
が増強されたことが、以下の形で明らかになった: 標準化した接種物(450nmにおけるDO=1.8)をペトリ
皿中のゲロース培地(RCM+フラゾリドン)に塗布した
後、直径9mmのディスクをその中央に置く。エリスロマ
イシン(DMSOに溶解)50μgをディスク上に置く。
嫌気性培地(ガス−パック、B.B.Lシステム)で36℃
6日間放置した後、株の阻止円は、明瞭に肉眼で観察で
き(全直径=42mm)、コロニーの大部分は、阻止円の周
囲に位置する。
一方、阻止円の内部には、明確に現れたコロニーはほ
とんどない。
次いで、2種のコロニーをゲロース培地から取り除い
ておく(滅菌白金耳): (1) 阻止円の内部において株を取り出す。この株
は、エリスロマイシンに対して明らかに抵抗を示すこと
からP37E と称する。
(2) 阻止円の周囲1cm以内の株を取り出し、P37E
と称する。
単離し、培養した後、P37E およびP37E 株は、以下
のMIC値が示すように、実際にエリスロマイシンに対し
て非常に異なった感受性を示す: MIC(μg/ml) P37 0.78 P37E 0.78 P37E 50 *RCM:クロストリジウム強化培地(O×OID) この現象は、IC50(50%阻止濃度)の実験により確認
する。IC50は、一定の培養時間で、株の50%の生存が認
められるエリスロマイシン濃度を表す。
IC50(μg/ml) P37 50 P37E 5 P37E 100 プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacter
ium Acnes)P37、P37E 、およびP37E 並びにスタフイ
ロコッカス エピデルミス(staphilococcus epidermi
s)ATCC12228の株に対して試験した、D−デソサミンの
レチノイン酸エステルの最小阻止濃度(MIC)をμg/ml
で表したものを、以下の表に示す: 上記の結果が示すように、本発明によるD−デソサミ
ンのレチノイン酸エステルは、プロピオニバクテリウム
アクネス(Propionibacterium Acnes)およびスタフ
ィロコッカス エピデルミス(Staphilococcus epiderm
is)に対して優れた活性を呈するが、対照化合物は全く
不活性である。
[実施例] 実施例1:O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−
1−α,β−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性な雰囲気下、レチノイン酸
(13シス)5g(16.6ミリモル)を無水テトラヒドロフラ
ン35ml中に溶解し、反応混合物は0℃まで冷却する。無
水ピリジン3mlおよびクロロギ酸エチルエステル1.6ml
(16.6モル)をそこに加える。溶液は5分間かくはん
し、炭酸水素ナトリウム2.5g(30ミリモル)を加える。
その後、O−ブチル−α,β−D−デソサミン1.5g(6.
5ミリモル)を前もってテトラヒドロフラン150mlに溶解
したものを加える。次いで反応混合物を10時間かくはん
し、一方温度は、室温まで上昇するに任せる(薄層シリ
カゲルのクロマトグラフィー:塩化メチレン/10%メタ
ノール)。溶液は水60mlに注加し、酢酸エチルで抽出す
る。有機相は硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減
圧下で濃縮する。得られた粗成物は、溶出液に酢酸エチ
ル(5)/ヘキサン(5)を用いてシリカゲルカラムの
クロマトグラフィー(H.P.L.C.:高速液体クロマトグラ
フィー)にかける。その結果、O−レチノイル(13シ
ス)−O−ブチル−1−α,β−D−デソサミンのアノ
マーオン混合物2.5g(収率75%)を単離する。
微量分析:C32H51NO4・2H2O;分子量=549.9 C H N 理論値(%) 69.88 10.09 2.54 実測値(%) 70.25 9.65 2.45 赤外線:1735cm-1に吸収帯(エステル) 13C−NMR(CDCl3,内部標準TMS:テトラメチルシラン) 1(−3ppm)および3(−2.8ppm)における陰性γ効
果は、αアノマーの2位にエステルがあることを示し
(C−1:96.5ppm、C−3:57.50ppm);1(−2.5ppm)お
よび3(−2.3ppm)における陰性γ効果も、β−アノマ
ーの2位にエステルがあることを示す(C−1:102.55pp
m、C−3:63.07ppm)。116.8ppmにおけるC′14炭素
は、レチノイン鎖が13シス体であることを示す。
実施例2:O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチ
ル−1−α,β−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下、レチノイン酸(全
トランス)5g(16.6ミリモル)を無水テトラヒドロフラ
ン35ml中に溶解し、反応混合物は0℃まで冷却し、無水
ピリジン3ml(38ミリモル)およびクロロギ酸エチルエ
ステル1.6ml(16.6ミリモル)に注加する。溶液は5分
間かくはんし、炭酸水素ナトリウム2.5g(30ミリモル)
を加える。その後、O−ブチル−α,β−D−デソサミ
ン1.5gを、前もってテトラヒドロフラン150mlに溶解し
たものを加える。次いで反応混合物を10時間かくはん
し、一方温度は室温まで回復するに任せる(薄層シリカ
ゲルのクロマトグラフィー:塩化メチレン/10%メタノ
ール)。溶液は水60mlに注加し、酢酸エチルで抽出す
る。有機相は硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧
下で濃縮する。得られた粗成物は、溶出液に酢酸エチル
(5)/ヘキサン(5)を用い、シリカゲルカラムのク
ロマトグラフィー(H.P.L.C.)にかける。その結果、O
−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1−
α,β−D−デソサミンのα,βアノマー混合物2.7g
(収率81%)が単離される。
微量分析:C32H51NO4・2H2O;分子量=549.9 C H N 理論値(%) 69.88 10.09 2.54 実測値(%) 69.82 9.82 2.44 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S) 全トランス鎖の立体配置は118.7ppmにおけるC′14
素で確認し、13シス鎖は全く認められない。
実施例3:O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチ
ル−1−α−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下で、レチノイン酸
(全トランス)5g(16.6ミリモル)を無水テトラヒドロ
フラン35ml中に溶解し、反応混合物は0℃まで冷却し、
無水ピリジン3g(38ミリモル)およびクロロギ酸エチル
エステル1.6ml(16.6ミリモル)に注加する。溶液を5
分間かくはんし、炭酸水素ナトリウム2.5g(30ミリモ
ル)を加える。その後、O−ブチル−α−D−デソサミ
ン1.5g(6.5ミリモル)を、前もってテトラヒドロフラ
ン150mlに溶解したものを加える。次いで反応混合物を1
0時間かくはんし、一方、温度は室温まで上昇するに任
せる(薄層シリカゲルのクロマトグラフィー:塩化メチ
レン/10%メタノール)。溶液は水60mlに注加し、酢酸
エチルで抽出する。有機相は硫酸マグネシウムで乾燥
し、ろ過し、減圧下で濃縮する。得られた粗成物は、溶
出液に酢酸エチル(5)/ヘキサン(5)を用い、シリ
カゲルカラムのクロマトグラフィー(H.P.L.C)にかけ
る。その結果、純粋なO−レチノイル(全トランス)−
2−O−ブチル−1−α−D−デソサミン2.3g(収率69
%)が単離される。
微量分析:C32H51NO4・1.5H2O;分子量=540.9 C H N 理論値(%) 71.04 10.05 2.58 実測値(%) 70.90 9.59 2.51 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S) 1(−2.9ppm)および3(−2.6ppm)における陰性γ
効果は2位にエステルがあることを示す。C′14(118.
65ppm)の化学的置換は、レチノイン鎖の立体配置が全
トランスであることに一致する。
実施例4:O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−
1−α−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下で、レチノイン酸
(13シス)3g(10ミリモル)を無水テトラヒドロフラン
25ml中に溶解する。反応混合物は0℃まで冷却し、無水
ピリジン2mlおよびクロロギ酸エチルエステル1ml(10ミ
リモル)に注加する。溶液は5分間かくはんし、炭酸水
素ナトリウム2gを加える。その後、O−ブチル−α−D
−デソサミン1g(4.3ミリモル)を、前もってテトラヒ
ドロフラン100mlに溶解したものを加える。反応混合物
は10時間かくはんし、一方、温度は室温まで上昇するに
任せる(薄層シリカゲルのクロマトグラフィー:塩化メ
チレン/10%メタノール)。溶液は水60mlに注加し、酢
酸エチルで抽出する。有機相は硫酸マグネシウムで乾燥
し、ろ過し、減圧下で濃縮する。得られた粗成物は、溶
出液に酢酸エチル(5)/ヘキサン(5)を用いてシリ
カゲルカラムのクロマトグラフィー(H.P.L.C)にかけ
る。その結果、純粋なO−レチノイル(13シス)−2−
O−ブチル−1−α−D−デソサミン1.5g(収率67%)
が単離される。
微量分析:C32H51NO4・1.5H2O;分子量=540.9 C H N 理論値(%) 71.04 10.05 2.58 実測値(%) 71.05 9.47 2.52 赤外線:1723cm-1に吸収帯(エステル) 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S.) 1(−3ppm)および3(−2.8ppm)における陰性γ効
果は、2位にエステルがあることを示している。レチノ
イン鎖のC′14炭素(116.48ppm)は、レチノイン鎖の
立体配置が13シスであることに一致する。
実施例5:O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−
ブチル−1−α,β−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下、エトレチノイン酸
(全トランス)5g(15.3ミリモル)を無水テトラヒドロ
フラン35mlに溶解する。反応混合物は0℃まで冷却し、
無水ピリジン3mlおよびクロロギ酸エチルエステル1.5ml
(15.3ミリモル)に注加する。溶液は5分間かくはん
し、炭酸水素ナトリウム2.5gを加える。その後、O−ブ
チル−α,β−D−デソサミン1.5g(6.5ミリモル)
を、前もってテトラヒドロフラン150mlに溶解したもの
を加える。次いで、反応混合物は10時間かくはんし、一
方温度は室温まで上昇するに任せる(薄層シリカゲルの
クロマトグラフィー:塩化メチレン/10%メタノー
ル)。溶液は水60mlに注加し、酢酸エチルで抽出する。
有機相は硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で
濃縮する。得られた粗成物は、溶出液に酢酸エチル
(5)/ヘキサン(5)を用いてシリカゲルカラムのク
ロマトグラフィー(H.P.L.C)にかける。その結果、O
−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1
−α,β−D−デソサミン2.7g(収率78%)が単離され
る。
微量分析:C33H49NO5・1.5H2O;分子量=566.9 C H N 理論値(%) 69.9 9.24 2.47 実測値(%) 69.55 8.95 2.41 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S) 1(−3.3ppm)および3(−2.6ppm)における陰性γ
効果はγアノマーの2位にエステルがあることを示し、
同様に1(−2.3ppm)および3(−2.3ppm)における陰
性γ効果はβアノマーの2位にエステルがあることを示
す。
C′14(119.15ppm)の化学的置換は、鎖の立体配位
が全トランスであることにほぼ一致するが、13シス鎖が
117.09ppm(C′14)に極わずか検出される。
実施例6:O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−
ブチル−1−α−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下で、エトレチノイン
酸(全トランス)5g(15.3ミリモル)を、無水テトラヒ
ドロフラン35mlに溶解する。反応混合物は0℃まで冷却
し、無水ピリジン3mlおよびクロロギ酸エチルエステル
1.5ml(15.3ミリモル)に注加する。溶液は5分間かく
はんし、炭酸水素ナトリウム2.5gを加える。その後、O
−ブチル−α−D−デソサミン1.5g(6.5ミリモル)
を、テトラヒドロフラン150mlに前もって溶解したもの
を加える。次いで、反応混合物は10時間かくはんし、一
方温度は、室温まで上昇するに任せる(薄層シリカゲル
のクロマトグラフィー:塩化メチレン/10%メタノー
ル)。溶液は水60mlに注加し、酢酸エチルで抽出する。
有機相は、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下
で濃縮する。得られた粗成物は、溶出液に酢酸エチル
(5)/ヘキサン(5)を用いて、シリカゲルカラムの
クロマトグラフィー(H.P.L.C)にかける。その結果、
純粋なO−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブ
チル−1−α−D−デソサミン2.5g(収率72%)が単離
される。
微量分析:C33H49NO5・0.5H2O;分子量=548.8 C H N 理論値(%) 72.22 9.18 2.55 実測値(%) 72.47 9.25 2.16 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S.) 1(−3.1ppm)および3(−2.8ppm)における陰性γ
効果は、2位にエステルがあることを示す。118.75ppm
におけるC′14の化学的置換により、全トランス体であ
ることが、確認される。
実施例7:O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−
ブチル−1−β−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中、不活性雰囲気下で、エトレチノイン
酸(全トランス)5g(15.3ミリモル)を無水テトラヒド
ロフラン35mlに溶解する。反応混合物は0℃まで冷却
し、無水ピリジン3mlおよびクロロギ酸エチルエステル
1.5ml(15.3ミリモル)に注加する。溶液は5分間かく
はんし、炭酸水素ナトリウム2.5gを加える。その後、O
−ブチル−β−D−デソサミン1.5g(6.5ミリモル)
を、前もってテトラヒドロフラン150mlに溶解したもの
を加える。次いで反応混合物は、10時間かくはんし、一
方温度は室温まで上昇するに任せる(薄層シリカゲルの
クロマトグラフィー:塩化メチレン/10%エタノー
ル)。溶液は水60mlに注加し、酢酸エチルで抽出する。
有機相は、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下
で濃縮する。得られた粗成物は、溶出液に酢酸エチル
(5)/ヘキサン(5)を用いて、シリカゲルカラムの
クロマトグラフィー(H.P.L.C)にかける。その結果、
O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
1−β−D−デソサミン2.1g(収率60%)が単離され
る。
微量分析:C33H49NO5・1.5H2O;分子量=566.9 C H N 理論値(%) 69.91 9.24 2.43 実測値(%) 69.96 8.88 2.47 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S) 1(−2.4ppm)および3(−2.4ppm)における陰性γ
効果は、エステルが2位にあることを示す。鎖が全トラ
ンス体であることは、119.06ppmにおけるC′14の化学
的置換により明らかになる。
実施例8:O−レチノイル(13シス)−2−O−デシル−
2′−テトラデシル−1−α−D−デソサミンの合成 丸底フラスコ中に、不活性雰囲気下で、クロロギ酸エ
チルエステル217mg(2ミリモル)およびテトラヒドロ
フラン20mlを加える。
0℃を超えないようにして、レチノイン酸13−シス58
5mg(1.94ミリモル)、トリエチルアミン202mg(2ミリ
モル)およびテトラヒドロフラン20mlを含有する溶液
を、ゆっくり加える。反応混合物は1時間30分、室温で
かくはんする。トリエチルアミンの塩はろ過して取り除
く。
ろ液は室温で、不活性雰囲気下、O−デシル−2′−
テトラデシル−1−α−D−デソサミン250mg(0.48ミ
リモル)および無水ピリジン0.15ml(1.3ミリモル)の
入った丸底フラスコに加える。
次いで反応混合物は、15時間かくはんする。
続いて、溶出液に塩化メチレン(85)/メタノール
(5)を用いて薄層シリカゲルのクロマトグラフィーに
かける。
反応混合物は濃縮し、トルエン中にとり、溶出液に酢
酸エチル(6)/ヘプタン(4)を用いてシリカゲルの
クロマトグラフィー(H.P.L.C)にかけて精製する。そ
の結果、O−レチノイル(13シス)−2−O−デシル−
2′−テトラデシル−1−α−D−デソサミン75mg(収
率18%)が単離されるが、極わずかの全トランス同異体
を伴う。
微量分析: C H N 理論値(%) 78.63 11.55 1.76 実測値(%) 78.12 11.45 1.84 13C−NMR(CDCl3、内部標準T.M.S) スペクトルは、提起した構造に一致する。
医薬用組成物および化粧用組成物 A−瘡の局所処置用ゲル 1.ヒドロキシプロピル−セルロース 1g ブチルヒドロキシトルエン 0.05g O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−
α,β−D−デソサミン 0.1g イソプロパノール 全量で100g 2.ヒドロキシプロピル−セルロース 1.5g ブチルヒドロキシトルエン 0.05g O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1
−α,β−D−デソサミン 0.075g イソプロパノール 全量で100g B−瘡の局所処置用ローション ブチルヒドロキシトルエン 0.05g O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−
α,β−D−デソサミン 0.7g C8−C12脂肪酸のトリグリセリド 全量で100g C−瘡処置用のスティック 白色ワセリン 52.7g ワセリン油 15g ラフィネーティドパラフィン 32g O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1
−α,β−D−デソサミン 0.3g
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 31/04 A61K 31/00 631C A61K 31/7028 31/70 607 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07H 15/04 A61K 31/70 A61K 7/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式: [式中、 は、(全トランス)レチノイル、(13シス)レチノイル
    またはエトレチノイルであり、 R2は、炭素数1−24の直鎖状または分岐鎖状のアルキル
    である。] で表される、D−デソサミンのレチノイン酸エステル、
    並びに式(I)のレチノイン酸エステルのαおよびβア
    ノマー、およびその混合物および塩。
  2. 【請求項2】エトレチノイン酸から誘導されるものであ
    って、式: [式中、 R2は請求項1のものと同義である。] で表される、請求項1記載のレチノイン酸エステル。
  3. 【請求項3】(全トランス)または(13シス)レチノイ
    ン酸から誘導されるものであって、式: [式中、 R2は請求項1のものと同義である。] で表される、請求項1記載のレチノイン酸エステル。
  4. 【請求項4】以下から成る群から選択される、請求項1
    記載のレチノイン酸エステル: O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−α,
    β−D−デソサミン、 O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1−
    α,β−D−デソサミン、 O−レチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−1−
    α−D−デソサミン、 O−レチノイル(13シス)−2−O−ブチル−1−α−
    D−デソサミン、 O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
    1−α,β−D−デソサミン、 O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
    1−α−D−デソサミン、 O−エトレチノイル(全トランス)−2−O−ブチル−
    1−β−D−デソサミン、 O−レチノイル(13シス)−2−O−メチル−1−α,
    β−D−デソサミン、 O−レチノイル(全トランス)−2−O−デシル−2′
    −テトラデシル−1−α,β−D−デソサミン、および O−レチノイル(13シス)−2−O−デシル−2′−テ
    トラデシル−1−α,β−D−デソサミン
  5. 【請求項5】反応液中で合成したエトレチノイン酸また
    は(全トランス)もしくは(13シス)レチノイン酸の混
    合無水物の過剰量をD−デソサミンの1位のモノエーテ
    ルと、有機溶媒中で反応させることを含む、請求項1記
    載のレチノイン酸エステルの製造法。
  6. 【請求項6】薬学的に許容でき、局所投与に適した賦形
    剤中に、少なくとも1種の請求項1のレチノイン酸エス
    テルを含有する、皮膚科用の抗菌用医薬組成物。
  7. 【請求項7】賦形剤が局所投与に適したものであって、
    レチノイン酸エステルが、組成物の全重量に対して、0.
    001−5重量%の範囲で存在する、請求項6記載の医薬
    組成物。
  8. 【請求項8】化粧用として許容できる賦形剤中に、少な
    くとも1種の請求項1記載のレチノイン酸エステルを含
    有する化粧用組成物。
  9. 【請求項9】レチノイン酸エステルが、組成物の全重量
    に対して0.0001−5重量%の範囲で存在する、請求項8
    記載の化粧用組成物。
  10. 【請求項10】レチノイン酸エステルが、組成物の全重
    量に対して0.001−3重量%の範囲で存在する、請求項
    9記載の化粧用組成物。
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