JP3013831U - 基材の被覆構造 - Google Patents
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 従来の金属溶射における各種問題点を改善又
は解決することを目的とするものであり、ブラスト処理
等の前処理を全く施すことなく金属低温溶射被膜を作製
するとともに、得られた前処理被膜及び低温溶射被膜の
劣化を防ぎ、長期間安定な状態に保つ金属の低温溶射被
膜を有する金属及び非金属体を提供するものである。 【構成】 ブラスト処理等を施さない基材1と、該基材
1上に塗布され、平均粒子径が10〜150μmの粒子
を樹脂に対して25〜300容量%含有し、表面粗さ
(Rz)30〜200μmの組成物被膜2と、この上に
溶射された特定の金属又は合金の低温溶射被膜3aと、
この上に一層塗布された合成樹脂塗料被膜4とより成る
ことを特徴とする。
は解決することを目的とするものであり、ブラスト処理
等の前処理を全く施すことなく金属低温溶射被膜を作製
するとともに、得られた前処理被膜及び低温溶射被膜の
劣化を防ぎ、長期間安定な状態に保つ金属の低温溶射被
膜を有する金属及び非金属体を提供するものである。 【構成】 ブラスト処理等を施さない基材1と、該基材
1上に塗布され、平均粒子径が10〜150μmの粒子
を樹脂に対して25〜300容量%含有し、表面粗さ
(Rz)30〜200μmの組成物被膜2と、この上に
溶射された特定の金属又は合金の低温溶射被膜3aと、
この上に一層塗布された合成樹脂塗料被膜4とより成る
ことを特徴とする。
Description
【0001】
本考案は、ブラスト処理等の物理的前処理、あるいは表面処理等の化学的前処 理が施されていない金属又は非金属の基材と、この上に塗布され特定の樹脂組成 物と、この上に溶射された金属低温溶射被膜とを有する金属体及び非金属体に関 するものである。
【0002】
例えば被塗物基材として鋼材を例にとると、亜鉛又は亜鉛−アルミニウム合金 等の鉄より卑なる金属が、電気メッキ、溶融メッキあるいは溶射等により被覆さ れたものがあった。このようなものは、鉄基材より卑なる被覆金属の犠牲防食作 用により鉄を保護することが出来、その特徴のため、建築用鋼材、自動車車体な どの薄板鋼板、各種電装ケースなど、各種の産業用機材のために使用されていた 。
【0003】 ところで、前記電気メッキや溶融メッキ等は、特定の工場以外では普通簡単に 実施出来ない。何となれば、メッキ槽の大きさ等により被塗物の大きさに制限が あることは、特に溶融メッキは450〜600℃もの高温の溶融金属中に被塗物 を浸漬するため熱歪の問題等が起り、したがって薄板鋼板には適用出来ないなど の各種制限があったからである。
【0004】 一方、金属溶射は、素材はほとんど加熱しなくてようため寸法上の狂いが殆ん ど生じないこと、溶射被膜を所望の厚さで得られること、大型基材であっても現 場施工が可能であること、溶射被膜上には有機質の塗料が密着し易いこと等の各 種特徴を有するため橋梁や鋼機造物などのために使用されており、かつ今後もそ の利用範囲は拡大するものと予想されていた。 しかしながら、金属を溶射により、表面が平滑な鋼材あるいはプラスチック等 の表面に直接被覆する場合、基材と金属溶射被膜との間には親和性や化学的結合 が期待出来ないため、基材への金属溶射被膜の密着性は極めて小さいものである ことがさけられなかった。
【0005】 かかる欠点を改良するため、従来は平滑な基材に対しサンザブラストやグリッ トブラストなどのブラスト処理を施し、基材と金属溶射被膜間にアンカー効果を 持たせていた(例えば特開昭50−65335号公報等)。 しかしながら、このような前前処理としてのブラスト処理作業は、非常に熟練 度を要求され、かつ、作業時間が長くかかり、更にブラストにより多量に発生す る粉塵は作業の安全、衛生上は勿論のこと環境汚染の問題となり、従って何等か の予防処理を施さねばならず、そのため加工コストの面でも好ましいものではな かった。 加えて、板厚が約1mm以下の薄板鋼板やプラスチックなどにブラスト処理を 施すと、一般に研掃材の衝撃力により大きな歪が生じたり、極端な場合基材が破 損することが度々あった。そのため例えば、板厚が0.5〜0.8mm程度の自 動車車体用薄板などにブラスト処理を施す場合、特別に衝撃力を弱めた処理法を 特に採用しなければならず、従って研掃力低下に基づく作業効率の低下が問題と なっていた。
【0006】 又、無秩序に飛行する、跳ね返った研掃材や、処理により飛散する粉塵が各種 の機械部品等の間に入り込み、それにより好ましくない各種問題を引きおこして いた。 更に、鋼材の溶接部に防食上金属溶射を行なう場合には、前もってブラスト処 理が必要であるが、溶接部の硬さのためその処理は非常に困難であった。 そこで、前記の如きブラスト処理を施さずに金属溶射を行なうことも提案され ていた。 例えば、特定金属をメッキした薄板鋼板上に金属溶射すること(特開昭60− 50156号公報)、金属表面を腐食液で凸凹状にすること(特開昭60−50 157号公報)、鋼板を加熱して特定膜厚の酸化被膜を形成すること(特開昭6 1−26763号公報)などが知られている。しかしながら、これらは、いずれ も基材を特殊な環境下に置かなければならないため、適用される基材の範囲が非 常に限定され実用的ではなかった。
【0007】 更に、非常に特殊な分野においては、特殊なアンカー効果を持たせることも提 案されている。 例えば、非常に高温で溶射しなければならないセラミックの溶射において、あ らかじめリン酸亜鉛処理あるいはサンドブラスト処理を施した基材上に、無機フ ィラーを含有するアンダーコートを塗布することが提案されている。(例えば特 開昭61−104060号公報、及び特開昭61−104061号公報)、これ は一応十分なアンカー効果が得られるかもしれないが、前述のブラスト処理の欠 点として示したことは何一つ解決されないものであった。
【0008】
しかしながら、従来の公知の金属溶射においては、基材の適用範囲を極めて制 限しており、従って、当業界においてはブラスト処理を施さずに金属溶射された 基材の開発又は確立が強く望まれていた。 更に、溶射の前処理に関する問題の他に、溶射金属被膜自体の安定性に関して も問題があった。 例えば、基材が鉄である場合には、通常鉄より卑なる金属の溶射被膜を設ける ことにより、溶射被膜の犠牲防食効果が発揮され、基材の防食がおこなわれる。 しかしながら、溶射被膜の腐食が進行するにつれ、例えば亜鉛被膜の場合白さび が発生し、亜鉛−アルミニウム合金被膜の場合表面が黒変する等溶射金属層の劣 化が進行する。
【0009】 従って、より高度な防食効果を得るためや、表面の美観を保持するために溶射 被膜表面の保護が要求されるのである。 一方、基材がコンクリート、スレート板等の無機材料あるいはプラスチック等 の場合には、溶射被膜による犠牲防食作用はないが、溶射被膜の劣化は進行する ため、該被膜を長時間安定な状態に保つには、表面の保護が必要となる。 従って、先に表面処理被膜を塗布した後、溶射被膜を形成することが考えられ るが、これにおいては、溶射被膜の密着性をより長期間良好に保つため表面処理 被膜の劣化を防止することが必須の条件である。しかして、前記の如く先に表面 処理被膜を塗布した後、溶射被膜を形成すれば多孔質な溶射被膜を通して腐食性 物質が透過し易く、そのような環境下におかれた場合には、溶射被膜の浮き等の 欠陥が生じ易くなることがわかった。 従って、溶射被膜の密着性をより長時間良好に保つためには、被塗物と溶射被 膜との間に存在する表面処理被膜を保護することがより重要であることが判明し た。 また、従来のガスフレーム溶射、電気アーク溶射を用いた場合、基材がプラス チック、金属の薄板等の場合基材が熱歪により変形するおそれがあった。
【0010】 本考案は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、前述の如き従来の金属 溶射における各種問題点を改善又は解決することを目的とするものであり、勿論 ブラスト処理等の前処理を全く施すことなく金属溶射被膜を作製するとともに、 得られた前処理被膜及び溶射被膜の劣化を防ぎ、長期間安定な状態に保つ金属低 温溶射被膜を提供しようとするものである。
【0011】
本考案の金属低温溶射被膜を有する金属体及び非金属体は、ブラスト処理等の 前処理を施さない基材と、該基材表面に塗布され、粒子径が10〜150μmの 粒子を樹脂に対して25〜300容量%含有し、表面粗さ(Rz)30〜200 μmの組成物被膜と、この上に溶射された亜鉛、アルミニウム、銅もしくはそれ らの合金から選ばれた金属又は合金の低温溶射被膜と、この上に一層以上塗布さ れた合成樹脂塗料被膜とよりなることを特徴とする。
【0012】 また、前記基材が鋼材であり、低温溶射被膜が鋼材より卑なる金属であること を特徴とする。
【0013】 また、粒子径が10〜150μmの粒子が、酸化珪素、アルミナ、炭化珪素か らなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】 また、低温溶射被膜の表面は研磨されていることを特徴とする。
【0015】
本考案は、基材の表面に粒子を含有した樹脂組成被膜を有するので、ブラスト 処理等の前処理をしないでも金属低温溶射被膜と基材との付着力が大きい。
【0016】 また、低温溶射被膜上の合成樹脂塗料被膜は、低温溶射被膜の腐食を防止する 。
【0017】
以下添付図に基づいて本考案の実施例を詳細に説明する。 図1,2において、1は基材でブリキ板、ダル鋼板、みがき鋼板、黒皮鋼板、 ケレンした錆鋼板、溶接鋼板等の鉄素材;アルミニウム、亜鉛等の非鉄金属;A BS,PPO,塩化ビニル等のプラスチックス;スレート板,硅酸カルシウム板 ,セメント等の無機材料;其の他ガラス,木材,合板,有機樹脂フィルム(塗膜 )等、各種のものが挙げられる。 図において、2は組成物被膜で、金属低温溶射の前に塗布され、平均粒子径1 0〜150μmの粒子を含有する。該粒子としては、例えば銅,ニッケル,アル ミニウム,亜鉛,鉄,珪素などの金属、あるいは合金もしくは酸化物,窒化物、 炭水化物等が挙げられる。 具体的には、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、炭化珪素、窒化珪 素等が挙げられる。 又、組成物の溶媒組成によっては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹 脂、ポリエチレン等の粉末を使用してもよい。 これらの粒子は1種もしくは2種以上の混合物として使用可能である。 使用される樹脂に対する化学的安定性や溶射材と腐食電池を形成せず、硬く、 かつ組成物中で沈殿しなくいことなどを考慮すると、珪砂、アルミナ、炭化珪素 等の使用が、特に好ましい。
【0018】 前記粒子の粒子径は、10〜150μmの範囲、好ましくは30〜100μm である。前記範囲に於て、粒子径が150μmをこえると、樹脂組成物に粒子が 沈殿し易くなると共に、スプレー塗布する場合ノズル詰りをおこし易くなる傾向 がある。また、たとえ塗布できても表面粗さが粗くなり過ぎ、金属溶射膜の表面 が粗くなり、そのため外観が非常に悪くなる。一方、粒子径が10μmより小さ いと、樹脂組成物を基材表面に塗布しても目的とする表面粗さが得られず、従っ て密着性の優れた金属低温溶射被膜が得られ難くなる。
【0019】 前記粒子は、後述する樹脂に対して25〜300容量%〔顔料容積濃度(PV C)にして20〜75%〕、好ましくは65〜150容量%〔顔料容積濃度(P VC)にして40〜60%〕の範囲で使用する。前記範囲に於て樹脂に対する添 加量が25容量%に満たない場合、樹脂分が多くなり、そのため表面粗さが小さ くなり、その結果、金属低温溶射被膜の密着性が低下する。又、基材への樹脂付 着量が多くなり、絶縁被膜が形成されるため、特に低温溶射被膜を犠牲防食用と して用いる場合には不具合となり易い。 一方、樹脂に対する粒子の添加量が300容量%をこえると、樹脂分が極端に 少なくなり粒子間の結合力が弱くなり、その結果金属低温溶射被膜の密着力も低 下するので好ましくない。
【0020】 次に、組成物被膜2に使用される「樹脂」とは、ある程度の乾燥性、硬度、密 着性、耐水性及び耐久性があれば特に限定はない。 具体例としては、一液常温乾燥型樹脂である熱可塑性アクリル樹脂、ビニル樹 脂、塩化ゴム、アルキド樹脂、二液硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、 アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化 性樹脂であるメラミン−アルキド樹脂、メラミン−アクリル樹脂、メラミン−ポ リエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等が挙げられる。 これらは1種もしくは2種以上の混合物としても使用可能である。
【0021】 特に好ましくは、金属低温溶射時に熱可塑性で、溶射金属粒子が被膜に入り込 み、溶射後に硬化するようなエポキシ樹脂(ポリアミド樹脂、アミンアダクト等 の硬化剤併用)、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル樹脂等である。 本考案の組成物被膜2には前記樹脂以外の成分として、該樹脂を溶解又は分散 せしめるための有機溶剤、水等を必要により加える。 更に、塗料、顔料や分散剤、発泡防止剤、ダレ防止剤(チキントロピック性付 与剤)等の添加剤等も併用出来る。 前記組成物被膜2の形態は、溶剤系、水溶性系、水分散系、溶剤分散系等のい ずれの形態でもよい。しかしながら、耐溶剤性のないプラスチックスに塗布する ような場合には、水系の組成物が好ましい。又水系樹脂組成物を鉄基材に使用す る場合には発錆を防ぐ対策をとる必要がある。 組成物被膜2は、前記樹脂及び粒子と、必要により溶媒もしくは分散媒や各種 添加剤等を加えて、通常の分散、混合方法により混合して作られたものを一般の 塗料組成物と同じような方法により基材1上に塗布されて形成される。特に塗布 量のコントロールの容易さ等から、エアースプレー法の採用が好ましい。しかし 、通常の塗料と同様に組成や、粘土等を適宜調整することにより、刷毛塗りやロ ール塗装も可能であることは云うまでもない。
【0022】 組成物被膜2の塗布量は、10〜400g/m2 の割合にすることが必要であ る。特に好ましくは約20〜150g/m2 の範囲である。前記塗布量の範囲に おいて、10g/m2 より少ない場合には、表面粗さが小さくなり、金属の溶射 効率が低くなるとともに溶射被膜の密着性も低下するので好ましくない。 一方、塗布量が400g/m2 をこえると、表面粗さが粗くなり過ぎたり、あ るいは組成物の組成・性状によっては被膜が平滑になり過ぎたりするため、金属 低温溶射被膜の密着性が低下するようになるので好ましくない。特に、金属溶射 被膜の犠牲防食作用を期待する、基材1の防食方法においては、塗布量が約40 0g/m2をこえると、基材1と金属低温溶射被膜3との間に絶縁被膜が形成さ れるため、犠牲防食作用硬化が得難くなるので好ましくない。
【0023】 本考案に於て、組成物被膜2の表面粗さ(Rz)は、30〜200μm、好ま しくは60〜120μmの範囲にあることが必要である。〔尚、本考案において 表面粗さ(Rz)とは、JISB−0601(1982)「表面粗さの定義と表 示」の十点平均粗さを示し、表面粗さ(Rz)の測定は、東京精密(株)製表面 粗さ形状測定機サーフコム554Aで行ったものである。〕 前記表面粗さの範囲において、30μmにみたない場合には、溶射効率が低く 、金属低温溶射被膜3の密着性が極端に低下するようになる。一方、表面粗さが 200μmをこえると、低温溶射被膜面が粗く、外観が著しく悪化し、低温溶射 被膜3をこすると下地の樹脂組成物の被膜が露出することもあり、好ましくない 。 本考案においては、組成物から得られた被膜の表面粗さが非常に重要である。 この表面粗さは組成物中に含有される粒子の粒子径とその含有量、及び基材への 塗布量によって決定される。
【0024】 例えば、前記の後時特定組成物をエアースプレー法により、ややドライスプレ ー気味に前記塗布量範囲内で塗布すると、目的とする表面粗さが得られる。又、 例えば前記特定組成物に必要に応じてチキントロピック性を付与して、刷毛等で 塗布しても目的とする表面粗さを得ることが出来よう。 本考案に於ては、このようにして得られた特定表面粗さを有する組成物被膜2 上に、金属を溶射して、低温溶射被膜3a(図1)を形成する。 尚、金属を溶射する前の被膜は必ずしも完全乾燥(硬化)状態でなくともよい 。即ち、半乾燥(硬化)であってもよい。最も好ましいのは、被膜を半乾燥状態 にした上に金属溶射し、しかる後に完全硬化せしめるものである。
【0025】 又、低温溶射被膜3に使用される金属は、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アル ミニウム、及びアルミニウム合金から選ばれた金属又は合金である。 前記において銅、亜鉛、アルミニウムは金属そのものであり、又、銅合金とは 銅を主成分とし、少量のNi,Sn,Al,Fe,Mn,Pb,Co,Si,P 等の一種もしくは二種以上の成分を混入せしめて得られる合金であり、亜鉛合金 とは亜鉛を主成分とし、少量のAl,Cu,Mg,Pb,Fe,Cd,Sn等の 一種もしくは二種以上の成分を混入せしめて得られる合金であり、アルミニウム 合金とは、アルミニウムを主成分としZn,Mg,Cr,Si,Mn,Ni,P b,Bi,Cu等の一種もしくは二種以上の成分を少量混合して得られる合金で ある。 本考案においては、金属低温溶射被膜3aは樹脂組成物から得られた被膜の表 面粗さにより強固な密着性が得られ、しかも前記樹脂組成物から得られる被膜は 、被膜中の各粒子が樹脂(有機物)の結合力により基材に付着しているものであ る。従って、樹脂組成物から得られた被膜中の樹脂成分が、溶射された金属粒子 の温度により完全に焼失してしまうような条件はさけなければならない。
【0026】 従って本考案における金属溶射は、樹脂組成物から得られた被膜中の樹脂成分 が完全に焼失しないような比較的低い温度で行なうことが望ましいので減圧内ア ーク溶射機による低温溶射が採用されている。 前記低温溶射とは、円筒状に噴射される低温の空気流を利用して、中心部を0 .5Kg/cm3以下に減圧させた環境下で、連続的に金属溶射を電気的にアー ク溶射させ、同時に前方の噴射気流中に吸引し、粉砕させ、常温近くまで急冷却 させ、液状の過冷却状態で溶融金属粒子を基材上に付着せしめるものである。従 って、該方法の場合には、単位時間の溶射量を比較的多くし、溶射膜厚を厚くす ることが可能である。一方、ガスフレーム溶射や電気アーク溶射方法の場合には 、溶射金属線材径を小さくしたり、搬線速度を遅くしたり、溶射量を比較的小さ くしたり、あるいは溶射膜厚を薄くする等の手段をとることにより、本考案の方 法に適用することが可能である。 ついで、本考案においては溶射被膜上に更に合成樹脂塗料を少なくとも一層塗 布して合成樹脂塗料被膜4を形成する。金属低温溶射被膜3aは、通常表面粗さ がRzで100μm前後の凹凸を有し、又多くの気孔が存在(気孔は下地面に達 するものも少なくない)する。
【0027】 従って、本考案においては前処理層及び溶射金属層を保護するために、合成樹 脂塗料被膜4により凹部や気孔部を塞ぐ必要があり、かくすることにより溶射被 膜の保護効果が著しく改良される。又、使用条件によっては更に表面塗装を行な うことも可能である。 本考案における合成樹脂塗料被膜4とは、低温溶射被膜3aを全面的に覆うこ とは勿論のこと、低温溶射被膜3aの凹部や気孔部のみを充填、塗布(封孔処理 )することも含むものである。 後者においては、非常に少量の塗料により、溶射被膜の過度の露出を防ぐこと が出来、しかも表面処理の劣化を防ぐことが出来るので非常に好ましい。 本考案においては、溶射被膜表面にそのまま塗装することが出来るが、気孔内 部迄塗装出来ない場合には、塗膜中の気泡が発生し易くなり、塗膜の保護効果を 低下させる原因となるため、一度で厚く塗装する際には特に注意が必要である。 この様な場合には微細な気孔内部まで浸透することが出来る低粘度の塗料(ミス トコート)を塗装し、更に必要に応じて上塗り塗装を行なうことが実際的である 。 更に、溶射被膜の凹凸を出来るだけ少なくするために、塗装前に低温溶射被膜 を研磨して平滑な低温溶射被膜3b(図2)を形成することも好ましい。
【0028】 かくすることにより、溶射被膜表面の凸部がなくなり、表面塗装後、溶射金属 が表面に露出することがなくなり、より薄い塗膜で表面を完全に保護出来、又塗 装後の外観、光沢等も大巾に向上せしめることができる。 研磨には、研磨紙、研磨布、ワイヤーブラシ、ベルトサンダー、サンドグライ ンダー等通常金蔵表面の研磨に用いられる手段が適用される。 本考案において使用される合成樹脂塗料被膜4の材料としては、一般に市販さ れている公知の合成樹脂塗料がいずれも使用出来る。例えば、ビスフェノール型 エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキ シ樹脂、エステル型エポキシ樹脂等を展色剤としたもの、あるいはこれらを歴青 質変性もしくはウレタン変性したものに、アミンアダクト、ポリアミン、ポリア ミド樹脂等のアミノ系硬化剤又はポリイソシアネート硬化剤を配合したエポキシ 樹脂塗料;塩化ゴムあるいはこれとロジン、クマロン−インデン樹脂、フェノー ル樹脂、石油樹脂、可塑剤等を混合した塩化ゴム塗料;塩化ビニルのホモポリマ ー又は、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン等との共重合体を展色剤とし た塩化ビニル樹脂塗料;アクリル酸又はメタクリル酸、これらのアルキルエステ ル、スチレン、ビニルトルエン等のモノマーから選ばれた二種以上の共重合体を 展色剤とするアクリル樹脂塗料;フタル酸等の多塩基酸、グリセリン等の多価ア ルコール及び脂肪酸を縮合反応して得られる反応生成物を展色剤とするアルキド 樹脂塗料;多塩基酸と多価アルコールの縮合反応により得られる生成物を展色剤 とするポリエステル樹脂塗料;ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等 のポリオール成分を主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とするポリウレタン 樹脂塗料(歴青質変性を含む);水酸基含有フッ素共重合体を主成分とし、ポリ イソシアネートあるいはメラミン樹脂を硬化剤とする常温硬化もしくは加熱硬化 型フッ素樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等を展色剤とするフッ 素樹脂塗料;其の他シリコーン樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、シリコーン 変性アクリル樹脂等を展色剤とするシリコーン樹脂塗料;其の他フェノール樹脂 、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0029】 前記合成樹脂塗料には、必要により着色顔料、体質顔料、塗料、其の他レベリ ング剤、紫外線吸収剤、分散安定剤等の各種添加剤などを添加混合し得る。又、 本考案に使用される合成樹脂塗料は溶剤系、水溶性系、水分散系、無溶剤系のい ずれであってもよい。更に、前記合成樹脂塗料は常温乾燥型もしくは強制乾燥( 加熱を含む)型のいずれであってもよい。
【0030】 以下、本考案の被膜が形成される詳細を例を掲げて説明する。 以下の例での溶射膜厚、研磨膜厚、塗装膜厚は、溶射重量、研磨重量、塗布重 量と比重から算出した値である。 [本考案例1] メタクリル酸メチル400g、アクリル酸プチル500g、2ヒドロキシエチ ルメタクリレート80g、メタクリル酸20gのモノマー組成で、ドデシルベン ゼンスルフォン酸ナトリウム10gを乳化剤として、過硫酸アンモニウム3gを 開始剤として乳化重合した加熱残分40重量%のエマルションを得た。これに中 和アミン、成膜助剤、消泡剤、増粘剤を添加し加熱残分36重量%のアクリルエ マルジョン樹脂Aを306g(樹脂固形分容量100cm3)と、平均粒子径1 00μmの珪砂(珪砂OS8号 奥村窒素原料比重2.4)を240g(粒子容 量100cm3、PCV50%)を充分に撹拌し組成物Aを作製した。 0.8×100×200mmのダル鋼板の基材1に、この樹脂組成物Aをエア ースプレーにて50g/m2塗布して組成物被膜2を形成すると、表面粗さ(R z)100μmとなった。1時間乾燥した後、亜鉛を50μmになるよう低温溶 射した。
【0031】 低温溶射の条件は減圧内アーク溶射機PA100(パンアートクラフト社製) にて、線材直径1.1mmの亜鉛線材を使用し、搬線速度5m/分、電圧14V で行った。 この金属低温溶射被膜3a上にエポキシ樹脂塗料〔大日本塗料(株)製商品名 エポニックス#30下塗さび色;主剤/硬化剤=85/15(重量比)〕をエア ースプレーで乾燥膜厚が30μmになるように塗装し、1日乾燥後、更に常乾フ ッ素樹脂塗料〔大日本塗料(株)製商品名Vフロン#100上塗CD−ROM; 主剤/硬化剤=90/10(重量比)〕を乾燥膜厚が90μmになるように塗装 し、合成樹脂被膜4を形成して試験板を作製した。 この塗膜の垂直引張強度は50Kg/cm2と良好であり、塩水噴霧試験を1 000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれも、溶射被膜の変 色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好であった。
【0032】 [本考案例2] エポキシ樹脂〔エピクロン4051:大日本インキ化学工業(株)製商品名: エポキシ当量950〕100gに、キシレン80g、メチルエチルケトン60g 、ブタノール25gを加えて溶解しポリアミド樹脂(エピキューアー892:セ ラニーズ製:活性水素当量133)10gを添加した加熱残分40%のエポキシ ーポリアミド樹脂Bを275g(樹脂固形分容量100cm3)と、平均粒子径 48μmの炭化珪素〔緑色炭化珪素CG320:名古屋研磨機材工業(株)製商 品名:比重3.16〕221g(粒子容量70cm3、PVC41%)を充分に 撹拌し樹脂組成物Bを作製した。 2×100×200mmのSS41鋼板の基材1に、この樹脂組成物Bをエア ースプレーで30g/m2塗布して組成物被膜2を形成すると、その表面粗さ( Rz)は60μmとなり、2時間乾燥した後、アルジン(13%アルミニウムの 亜鉛−アルミニウム合金)を75μmの溶射膜厚になるように溶射した後、得ら れた被膜を電動ワイヤーブラシで約2μm研磨して低温溶射被膜3bを形成した 。 低温溶射条件は減圧内アーク溶射機PA600のアルジン線材を搬線速度7. 6m/分、電圧14Vで行った。
【0033】 前記低温溶射被膜3bの表面に、下記のウレタン樹脂塗料を溶射で低粘度化し た塗料組成物を約10μm塗装(ミストコート)した。ついで、15分後、ウレ タン樹脂塗料〔大日本塗料(株)製商品名Vトップ白:主剤/硬化剤=80/2 0(重量比)〕を乾燥膜厚が80μmになるように塗装し合成樹脂塗料被膜4を 形成した。 この被膜の垂直引張強度は5.5Kg/cm2と良好であり、塩水噴霧試験を 1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれも、溶射被膜の 変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好であった。
【0034】 [本考案例3] アクリルポリオール樹脂(水酸基価 100、加熱残分50重量%)170g にイソシアネート樹脂(スミジュールN75:住友バイエルウレタン製商品名: 加熱残分75重量%)33gを添加した加熱残分54重量%の溶剤型ウレタン− アクリル樹脂203g(容量100cm3)に、平均粒子径20μmの酸化アル ミニウム〔白色溶融アルミナWA800:名古屋研磨機材工業(株)製商品名: 比重3.96〕119g(粒子容量30cm3、PVC23%)を充分に撹拌し 樹脂組成物Cを作製した。 この樹脂組成物Cをシンナーにて希釈し、3×200×200mmのFRP板 の基材1にエアースプレーで15g/m2 塗布し、組成物被膜2を形成するとそ の表面粗さ(Rz)は40μmとなった。 2時間乾燥した後、亜鉛−アルミニウム疑似合金)を40μmになるように溶 射し低温溶射被膜3aを形成した。
【0035】 低温溶射の条件は減圧内アーク溶射機PA100にて線材直径1.1mmの亜 鉛線材とアルミニウム線材を使用し、搬線速度4m/分、電圧15Vで行った。 得られた低温溶射被膜3a上にフッ素樹脂クリヤー塗料〔大日本塗料(株)製 商品名Vフロン#200上塗クリヤー:主剤/硬化剤=90/10(重量比)〕 をエアースプレーで乾燥膜厚が40μmになるように塗装して、合成樹脂塗料被 膜4を形成し、乾燥後試験片とした。 この塗膜の垂直引張強度は50Kg/cm2 と良好であり、電磁波シールド特 性も500Hzで60dBと非常に良好であった。 塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いず れも、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好であった。
【0036】 [本考案例4] 3×300×300mmのスレート板の基材1に本考案例2で作製した樹脂組 成物Bをエアースプレーで40g/m2塗布して組成物被膜2を形成すると、そ の表面粗さ(Rz)は70μmとなった。24時間乾燥した後、5%丹銅を12 0μmになるように低温溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内のアーク溶射機PA600にて線材直径1.1mm の5%亜鉛含有の丹銅線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧19Vで行っ た。 得られた低温溶射被膜を#240のサンドペーパーで約3μm研磨して低温溶 射被膜3bを形成した後、下記のウレタン樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成 物を約10μm塗装(ミストコート)し、約15分後にウレタン樹脂クリヤー塗 料〔大日本塗料(株)製商品名Vトップクリヤー:主剤/硬化座鵜=80/20 (重量比)〕を乾燥膜厚が60μmになるように塗装して合成樹脂塗料被膜4を 形成した。 この塗膜は金属光沢を有し、垂直引張強度は55Kg/cm2 と良好であり、 塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれ も、溶射被膜の変色や浮き、緑さびの発生、フクレもなく良好であった。
【0037】 [本考案例5] 5×300×300mmのガラス板の基材に本考案例1で作製した樹脂組成物 Aをエアースプレーで50g/m2塗布して組成物被膜2を形成すると、その表 面粗さ(Rz)は100μmとなった。1時間乾燥した後、アルミニウムを60 μmになるように溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1.1mmの アルミニウム線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧18Vで行った。 得られた被膜を#400のサンドペーパーで約2μm研磨して低温溶射被膜3 bを形成した後、下記のエポキシ樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成物を約1 0μm塗装(ミストコート)し、約15分後にエポキシ樹脂クリヤー塗料〔大日 本塗料(株)製商品名エポニックス#10クリヤー:主剤/硬化剤=50/50 (重量比)〕を乾燥膜厚が50μmになるように塗装して合成樹脂塗料被膜4を 形成した。 この合成樹脂塗料被膜4は金属光沢を有し、垂直引張強度は48Kg/cm2 と良好であり、塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行 ったが、いずれも、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好で あった。
【0038】 [本考案例6] 10×100×100mmのモルタル板の基材1上にエポキシ樹脂クリヤー塗 料〔大日本塗料(株)製商品名エポニックス#10クリヤー:主剤/硬化剤=5 0/50(重量比)〕をエアースプレーで乾燥膜厚が50μmになるように塗装 してレイタンス層を強化し一日乾燥後、更に本考案例2で作成した樹脂組成物B をエアースプレーで100g/m2 塗布し、組成物被膜2を形成すると、その表 面粗さ(Rz)は200μmとなった。12時間乾燥した後、アルミニウムを1 00μmになるように溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1.1mmの アルミニウム線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧18Vで行った。
【0039】 得られた低温溶射被膜を#120のサンドペーパーで約4μm研磨して低温溶 射被膜3bを形成し、下記の塩化ゴム系塗料の低粘度化した組成物を約10μm 塗装(ミストコート)し、約15分後に塩化ゴム系塗料〔大日本塗料(株)製商 品名ラバータイト#100上塗白〕を乾燥膜厚が80μmになるように塗装して 合成樹脂塗料被膜4を形成した。 この塗膜の垂直引張強度は15Kg/cm2 でモルタル層が疑集破壊し、界面 破壊はせず良好であった。塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を 10日間行ったが、いずれも、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレも なく良好であった。
【0040】 [本考案例7] 3×300×300mmのポリ塩化ビニル板の基板1に本考案例1で作製した 樹脂組成物Aをエアースプレーで20g/m2塗布して組成物被膜2を形成する と、その表面粗さ(Rz)は80μmとなった。1時間乾燥した後、亜鉛−アル ミニウムの疑似合金を40μmになるように低温溶射して低温溶射被膜を形成し た。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA100にて線材直径1.1mmの 亜鉛線材とアルミニウム線材を使用し、搬線速度4m/分、電圧19Vで行った 。 得られた低温溶射被膜を#400のサンドペーパーで約2μm研磨して低温溶 射被膜3bを形成し、下記のフッ素樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成物を約 10μm塗装(ミストコート)し、約15分後にフッ素樹脂クリヤー塗料〔大日 本塗料(株)製、商品名Vフロン#200上塗クリヤー:主剤/硬化剤=90/ 10(重量比)〕を乾燥膜厚が30μmになるように塗装し合成樹脂塗料被膜4 を形成した。 この塗膜は金属光沢を有し、垂直引張強度は55Kg/cm2 と良好であり、 塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれ も、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好であった。
【0041】 [本考案例8] 5×100×300mmのFRP板の基材1に、本考案例3で作製した樹脂組 成物Bをエアースプレーで60g/m2塗布し、組成物被膜2を形成すると、そ の表面粗さ(Rz)は70μmとなった。24時間乾燥した後、キュプロニッケ ル(銅:ニッケル=90:10の合金)を110μmになるように低温溶射して 、低温溶射被膜3aを形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1,1mmの キュプロニッケル線材を使用し、搬線速度5m/分、電圧20Vで行った。 得られた溶射被膜をエポキシ樹脂塗料〔本考案例6と同一〕を溶剤で希釈した 組成物を薄く塗布すると、塗料組成物は、溶剤被膜の凹部を充填するように流展 し、合成樹脂塗料被膜4を形成した。被膜の垂直引張強度は55Kg/cm2 と 良好であり、50℃温水浸漬試験等も前記同様良好であった。
【0042】 [従来例1] 0.8×100×200mmのダル鋼板の基材に、本考案例1で作製した樹脂 組成物Aをエアースプレーにて50g/m2塗布し、組成物被膜を形成すると、 表面粗さ(Rz)100μmとなった。1時間乾燥した後、亜鉛200μmにな るよう本考案例と同一条件にて低温溶射して、低温溶射被膜を形成した。 この低温溶射被膜は無塗装で塩水噴霧試験を1000時間行った結果、搬性防 食の働きで赤さびは発生しないが、全面白さびが発生した外観が低下した。また 、50℃温水浸漬試験を10日間行った結果、溶射膜が素材より浮き上がり、密 着性が不良となった。
【0043】 [従来例2] 従来例1の亜鉛溶射膜厚200μmを本考案例1と同じ50μmにして低温溶 射して、低温溶射被膜を形成した。 この50μm低温溶射被膜を無塗装で塩水噴霧試験を500時間行った時点で は全面白さびが発生していたが、1000時間では溶射被膜不足のために赤さび が発生し、赤さびが全体の30%を占めるようになった。
【0044】 [従来例3] 2×100×200mmのSS41鋼板の基材にグリットプラスト処理を施し 、表面粗さ(Rz)を60μmにした。 このプラスト処理鋼板に亜鉛を膜厚60μmとなるようにガスフレーム溶射を 行った。 この60μm溶射被膜を無塗装で塩水噴霧試験を500時間行った時点では全 面白さびが発生していたが、1000時間では溶射膜厚不足のために赤さびが発 生し、赤さびが全体の30%占めるようになった。
【0045】 [従来例4] 本考案例2と同様に2×100×200mmのSS41に樹脂組成物Bを塗布 し、アルジンを75μmの基材溶射した低温溶射被膜を無塗装で塩水噴霧試験1 000時間行った結果、赤さびは発生しなかったが、溶射被膜は黒く変色して浮 き上がり、密着性が不良となった。
【0046】 [従来例5] 本考案例2で使用したウレタン樹脂塗装を2×100×200mmのSS41 鋼板の基材に乾燥膜厚が90μmになるように塗装して合成樹脂被膜を形成した 。 この塗装被膜を塩水噴霧試験を1000時間行ったが、塗装被膜は浮き上がり 、全面に赤錆が発生した。また、50℃温水浸漬試験を10日間行った結果、全 面プリスターが発生した。
【0047】
本考案によれば、従来の如くプラスト処理を行わなくても平滑な基材に対して 適度の表面粗さを付与することができるので、板厚の薄いものあるいは形状が複 雑なためプラスト処理が出来ない基材にも金属溶射が可能となる。また、従来金 属溶射が不可能と考えられていた素材も利用することができる。しかも、得られ た溶射被膜の密着性は極めて優れている。
【0048】 また、溶射された液状の金属粒子の可塑性を利用し、樹脂組成物から得られた 被膜中の粒子の間に溶射金属粒子を充填せしめることによるアンカー効果により 高付着力を発揮させることが出来る。 例えば、従来のプラスト処理面での亜鉛溶射被膜の垂直引張強度は60Kg/ cm2 前後であるが、本考案方法により得られた亜鉛溶射被膜の垂直引張強度も 50〜80Kg/cm2 であり、従来のものに比して優るとも劣らない密着性を 示す。
【0049】 更に、金属低温溶射被膜による犠牲防食作用により基材(鋼材)の保護が可能 である。これは、金属低温溶射被膜と基材(鋼材)の接触により起る作用である が、仮に基材表面に薄い樹脂のみによる被膜が形成されていても、溶射金属粒子 の衝突力等により被膜の凝集破壊等が生じ、溶射粒子は基材表面に到達するよう になるため、犠牲防食作用効果は充分発揮出来るのである。
【0050】 加えて、本考案においては、従来のプラスト処理における処理作業時間を1/ 10〜1/20以上削減出来、従って加工コストの著しい低下が期待出来る。
【0051】 また、プラスト処理時に発生する粉塵による各種の問題点、所謂公害も、一挙 に解決出来る。
【0052】 更に、金属低温溶射被膜の保護及び外観向上が計れることは勿論のこと、多孔 質な溶射被膜を通して水、酸素、其の他腐食性物質などが透過して前処理層が劣 化することを防ぎ、かくして長時間安定で、密着性の優れた被膜層を得ることが 出来るのである。 従って、今後の金属低温溶射技術の利用拡大に大きく寄与出来るものであり、 工業的な実用価値ははかり知れないものがある。
【提出日】平成7年1月17日
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、ブラスト処理等の物理的前処理、あるいは表面
処理等の化学的前処理が施されていない金属又は非金属の基材と、この上に塗布
され特定の樹脂組成物と、この上に溶射された金属低温溶射被膜とを有する金属
及び非金属体の基材の被覆構造に関するものである。
処理等の化学的前処理が施されていない金属又は非金属の基材と、この上に塗布
され特定の樹脂組成物と、この上に溶射された金属低温溶射被膜とを有する金属
及び非金属体の基材の被覆構造に関するものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【0010】本考案は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、前述の如き
従来の金属溶射における各種問題点を改善又は解決することを目的とするもので
あり、勿論ブラスト処理等の前処理を全く施すことなく金属溶射被膜を作製する
とともに、得られた前処理被膜及び溶射被膜の劣化を防ぎ、長期間安定な状態に
保つ金属低温溶射被膜付きの基材の被覆構造を提供しようとするものである。
従来の金属溶射における各種問題点を改善又は解決することを目的とするもので
あり、勿論ブラスト処理等の前処理を全く施すことなく金属溶射被膜を作製する
とともに、得られた前処理被膜及び溶射被膜の劣化を防ぎ、長期間安定な状態に
保つ金属低温溶射被膜付きの基材の被覆構造を提供しようとするものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【0011】
本考案は、ブラスト処理等の前処理を施さない基材と、該基材表面に塗布されて形成した 、粒子径が10〜150μmの粒子を含有した樹脂組成物被膜と、こ の樹脂組成物被膜の上に溶射された亜鉛、アルミニウム、銅もしくはそれらの合 金から選ばれた金属又は合金の低温溶射被膜と、この低温溶射被膜の上に塗布さ れた合成樹脂塗料被膜とよりなることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【0013】 また、本考案は、前記基材が非金属体であることを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【0017】
以下添付図に基づいて本考案の実施例を詳細に説明する。 図1,2において、1は基材でブリキ板、ダル鋼板、みがき鋼板、黒皮鋼板、 ケレンした錆鋼板、溶接鋼板等の鉄素材;アルミニウム、亜鉛等の非鉄金属;A BS,PPO,塩化ビニル等のプラスチックス;スレート板,硅酸カルシウム板 ,セメント等の無機材料;其の他ガラス,木材,合板,有機樹脂フィルム(塗膜 )等、各種のものが挙げられる。 図において、2は樹脂組成物被膜で、金属低温溶射の前に塗布され、平均粒子 径10〜150μmの粒子を含有する。該粒子としては、例えば銅,ニッケル, アルミニウム,亜鉛,鉄,珪素などの金属、あるいは合金もしくは酸化物,窒化 物、炭水化物等が挙げられる。 具体的には、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、炭化珪素、窒化珪 素等が挙げられる。 又、樹脂組成物の溶媒組成によっては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキ シ樹脂、ポリエチレン等の粉末を使用してもよい。 これらの粒子は1種もしくは2種以上の混合物として使用可能である。 使用される樹脂に対する化学的安定性や溶射材と腐食電池を形成せず、硬く、 かつ樹脂組成物中で沈殿しにくいことなどを考慮すると、珪砂、アルミナ、炭化 珪素等の使用が、特に好ましい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【0020】 次に、樹脂組成物被膜2に使用される「樹脂」とは、ある程度の乾燥性、硬度 、密着性、耐水性及び耐久性があれば特に限定はない。 具体例としては、一液常温乾燥型樹脂である熱可塑性アクリル樹脂、ビニル樹 脂、塩化ゴム、アルキド樹脂、二液硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、 アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化 性樹脂であるメラミン−アルキド樹脂、メラミン−アクリル樹脂、メラミン−ポ リエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等が挙げられる。 これらは1種もしくは2種以上の混合物としても使用可能である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【0021】 特に好ましくは、金属低温溶射時に熱可塑性で、溶射金属粒子が被膜に入り込 み、溶射後に硬化するようなエポキシ樹脂(ポリアミド樹脂、アミンアダクト等 の硬化剤併用)、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル樹脂等である。 本考案の樹脂組成物被膜2には前記樹脂以外の成分として、該樹脂を溶解又は 分散せしめるための有機溶剤、水等を必要により加える。 更に、塗料、顔料や分散剤、発泡防止剤、ダレ防止剤(チキントロピック性付 与剤)等の添加剤等も併用出来る。 前記樹脂組成物被膜2の形態は、溶剤系、水溶性系、水分散系、溶剤分散系等 のいずれの形態でもよい。しかしながら、耐溶剤性のないプラスチックスに塗布 するような場合には、水系の組成物が好ましい。又水系樹脂組成物を鉄基材に使 用する場合には発錆を防ぐ対策をとる必要がある。 樹脂組成物被膜2は、前記樹脂及び粒子と、必要により溶媒もしくは分散媒や 各種添加剤等を加えて、通常の分散、混合方法により混合して作られたものを一 般の塗料組成物と同じような方法により基材1上に塗布されて形成される。特に 塗布量のコントロールの容易さ等から、エアースプレー法の採用が好ましい。し かし、通常の塗料と同様に組成や、粘土等を適宜調整することにより、刷毛塗り やロール塗装も可能であることは云うまでもない。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【0022】 樹脂組成物被膜2の塗布量は、10〜400g/m2の割合にすることが必要 である。特に好ましくは約20〜150g/m2の範囲である。前記塗布量の範 囲において、10g/m2より少ない場合には、表面粗さが小さくなり、金属の 溶射効率が低くなるとともに溶射被膜の密着性も低下するので好ましくない。 一方、塗布量が400g/m2をこえると、表面粗さが粗くなり過ぎたり、あ るいは樹脂組成物の組成・性状によっては被膜が平滑になり過ぎたりするため、 金属低温溶射被膜の密着性が低下するようになるので好ましくない。特に、金属 溶射被膜の犠牲防食作用を期待する、基材1の防食方法においては、塗布量が約 400g/m2をこえると、基材1と金属低温溶射被膜3との間に絶縁被膜が形 成されるため、犠牲防食作用硬化が得難くなるので好ましくない。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【0023】 本考案に於て、樹脂組成物被膜2の表面粗さ(Rz)は、30〜200μm、 好ましくは60〜120μmの範囲にあるとよい。〔尚、本考案において表面粗 さ(Rz)とは、JISB−0601(1982)「表面粗さの定義と表示」の 十点平均粗さを示し、表面粗さ(Rz)の測定は、東京精密(株)製表面粗さ形 状測定機サーフコム554Aで行ったものである。〕 前記表面粗さの範囲において、30μmにみたない場合には、溶射効率が低く 、金属低温溶射被膜3の密着性が極端に低下するようになる。一方、表面粗さが 200μmをこえると、低温溶射被膜面が粗く、外観が著しく悪化し、低温溶射 被膜3をこすると下地の樹脂組成物の被膜が露出することもあり、好ましくない 。 本考案においては、樹脂組成物から得られた被膜の表面粗さが非常に重要であ る。この表面粗さは樹脂組成物中に含有される粒子の粒子径とその含有量、及び 基材への塗布量によって決定される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【0024】 例えば、前記のごとき特定組成物をエアースプレー法により、ややドライスプ レー気味に前記塗布量範囲内で塗布すると、目的とする表面粗さが得られる。又 、例えば前記特定組成物に必要に応じてチキントロピック性を付与して、刷毛等 で塗布しても目的とする表面粗さを得ることが出来よう。 本考案に於ては、このようにして得られた特定表面粗さを有する樹脂組成物被 膜2上に、金属を溶射して、低温溶射被膜3a(図1)を形成する。 尚、金属を溶射する前の被膜は必ずしも完全乾燥(硬化)状態でなくともよい 。即ち、半乾燥(硬化)であってもよい。最も好ましいのは、被膜を半乾燥状態 にした上に金属溶射し、しかる後に完全硬化せしめるものである。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【0032】 [本考案例2] エポキシ樹脂〔エピクロン4051:大日本インキ化学工業(株)製商品名: エポキシ当量950〕100gに、キシレン80g、メチルエチルケトン60g 、ブタノール25gを加えて溶解しポリアミド樹脂(エピキューアー892:セ ラニーズ製:活性水素当量133)10gを添加した加熱残分40%のエポキシ ーポリアミド樹脂Bを275g(樹脂固形分容量100cm3)と、平均粒子径 48μmの炭化珪素〔緑色炭化珪素CG320:名古屋研磨機材工業(株)製商 品名:比重3.16〕221g(粒子容量70cm3、PVC41%)を充分に 撹拌し樹脂組成物Bを作製した。 2×100×200mmのSS41鋼板の基材1に、この樹脂組成物Bをエア ースプレーで30g/m2塗布して樹脂組成物被膜2を形成すると、その表面粗 さ(Rz)は60μmとなり、2時間乾燥した後、アルジン(13%アルミニウ ムの亜鉛−アルミニウム合金)を75μmの溶射膜厚になるように溶射した後、 得られた被膜を電動ワイヤープラシで約2μm研磨して低温溶射被膜3bを形成 した。。 低温溶射条件は減圧内アーク溶射機PA600のアルジン線材を搬線速度7. 6m/分、電圧14Vで行った。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【0034】 [本考案例3] アクリルポリオール樹脂(水酸基価 100、加熱残分50重量%)170g にイソシアネート樹脂(スミジュールN75:住友バイエルウレタン製商品名: 加熱残分75重量%)33gを添加した加熱残分54重量%の溶剤型ウレタン− アクリル樹脂203g(容量100cm3)に、平均粒子径20μmの酸化アル ミニウム〔白色溶融アルミナWA800:名古屋研磨機材工業(株)製商品名: 比重3.96〕119g(粒子容量30cm3、PVC23%)を充分に撹拌し 樹脂組成物Cを作製した。 この樹脂組成物Cをシンナーにて希釈し、3×200×200mmのFRP板 の基材1にエアースプレーで15g/m2塗布し、樹脂組成物被膜2を形成する とその表面粗さ(Rz)は40μmとなった。 2時間乾燥した後、亜鉛−アルミニウム疑似合金を40μmになるように溶射 し低温溶射被膜3aを形成した。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【0036】 [本考案例4] 3×300×300mmのスレート板の基材1に本考案例2で作製した樹脂組 成物Bをエアースプレーで40g/m2塗布して樹脂組成物被膜2を形成すると 、その表面粗さ(Rz)は70μmとなった。24時間乾燥した後、5%丹銅を 120μmになるように低温溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内のアーク溶射機PA600にて線材直径1.1mm の5%亜鉛含有の丹銅線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧19Vで行っ た。 得られた低温溶射被膜を#240のサンドペーパーで約3μm研磨して低温溶 射被膜3bを形成した後、下記のウレタン樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成 物を約10μm塗装(ミストコート)し、約15分後にウレタン樹脂クリヤー塗 料〔大日本塗料(株)製商品名Vトップクリヤー:主剤/硬化剤=80/20( 重量比)〕を乾燥膜厚が60μmになるように塗装して合成樹脂塗料被膜4を形 成した。 この塗膜は金属光沢を有し、垂直引張強度は55Kg/cm2と良好であり、 塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれ も、溶射被膜の変色や浮き、緑さびの発生、フクレもなく良好であった。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【0037】 [本考案例5] 5×300×300mmのガラス板の基材に本考案例1で作製した樹脂組成物 Aをエアースプレーで50g/m2塗布して樹脂組成物被膜2を形成すると、そ の表面粗さ(Rz)は100μmとなった。1時間乾燥した後、アルミニウムを 60μmになるように溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1.1mmの アルミニウム線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧18Vで行った。 得られた被膜を#400のサンドペーパーで約2μm研磨して低温溶射被膜3 bを形成した後、下記のエポキシ樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成物を約1 0μm塗装(ミストコート)し、約15分後にエポキシ樹脂クリヤー塗料〔大日 本塗料(株)製商品名エポニックス#10クリヤー:主剤/硬化剤=50/50 (重量比)〕を乾燥膜厚が50μmになるように塗装して合成樹脂塗料被膜4を 形成した。 この合成樹脂塗料被膜4は金属光沢を有し、垂直引張強度は48Kg/cm2 と良好であり、塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行 ったが、いずれも、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好で あった。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【0038】 [本考案例6】 10×100×100mmのモルタル板の基材1上にエポキシ樹脂クリヤー塗 料〔大日本塗料(株)製商品名エポニックス#10クリヤー:主剤/硬化剤=5 0/50(重量比)〕をエアースプレーで乾燥膜厚が50μmになるように塗装 してレイタンス層を強化し一日乾燥後、更に本考案例2で作成した樹脂組成物B をエアースプレーで100g/m2塗布し、樹脂組成物被膜2を形成すると、そ の表面粗さ(Rz)は200μmとなった。12時間乾燥した後、アルミニウム を100μmになるように溶射して低温溶射被膜を形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1.1mmの アルミニウム線材を使用し、搬線速度7.6m/分、電圧18Vで行った。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【0040】 [本考案例7] 3×300×300mmのポリ塩化ビニル板の基板1に本考案例1で作製した 樹脂組成物Aをエアースプレーで20g/m2塗布して樹脂組成物被膜2を形成 すると、その表面粗さ(Rz)は80μmとなった。1時間乾燥した後、亜鉛− アルミニウムの疑似合金を40μmになるように低温溶射して低温溶射被膜を形 成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA100にて線材直径1.1mmの 亜鉛線材とアルミニウム線材を使用し、搬線速度4m/分、電圧19Vで行った 。 得られた低温溶射被膜を#400のサンドペーパーで約2μm研磨して低温溶 射被膜3bを形成し、下記のフッ素樹脂クリヤー塗料を低粘度化した組成物を約 10μm塗装(ミストコート)し、約15分後にフッ素樹脂クリヤー塗料〔大日 本塗料(株)製、商品名Vフロン#200上塗クリヤー:主剤/硬化剤=90/ 10(重量比)〕を乾燥膜厚が30μmになるように塗装し合成樹脂塗料被膜4 を形成した。 この塗膜は金属光沢を有し、垂直引張強度は55Kg/cm2と良好であり、 塩水噴霧試験を1000時間、50℃温水浸漬試験を10日間行ったが、いずれ も、溶射被膜の変色や浮き、白さびの発生、フクレもなく良好であった。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【0041】 [本考案例8] 5×100×300mmのFRP板の基材1に、本考案例3で作製した樹脂組 成物Bをエアースプレーで60g/m2塗布し、て樹脂組成物被膜2を形成する と、その表面粗さ(Rz)は70μmとなった。24時間乾燥した後、キュプロ ニッケル(銅:ニッケル=90:10の合金)を110μmになるように低温溶 射して、低温溶射被膜3aを形成した。 低温溶射の条件は、減圧内アーク溶射機PA600にて線材直径1.1mmの キュプロニッケル線材を使用し、搬線速度5m/分、電圧20Vで行った。 得られた溶射被膜をエポキシ樹脂塗料〔本考案例6と同一〕を溶剤で希釈した 組成物を薄く塗布すると、塗料組成物は、溶剤被膜の凹部を充填するように流展 し、合成樹脂塗料被膜4を形成した。被膜の垂直引張強度は55Kg/cm2と 良好であり、50℃温水浸漬試験等も前記同様良好であった。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【0042】 [従来例1] 0.8×100×200mmのダル鋼板の基材に、本考案例1で作製した樹脂 組成物Aをエアースプレーにて50g/m2塗布し、樹脂組成物被膜を形成する と、表面粗さ(Rz)100μmとなった。1時間乾燥した後、亜鉛200μm になるよう本考案例と同一条件にて低温溶射して、低温溶射被膜を形成した。 この低温溶射被膜は無塗装で塩水噴霧試験を1000時間行った結果、犠牲防 食の働きで赤さびは発生しないが、全面白さびが発生した外観が低下した。また 、50℃温水浸浸試験を10日間行った結果、溶射膜が素材より浮き上がり、密 着性が不良となった。
【図1】本考案の請求項1の一実施例を示す断面図であ
る。
る。
【図2】本考案の請求項4の一実施例を示す断面図であ
る。
る。
1 基材 2 組成物被膜 3a,3b 低温溶射被膜 4 合成樹脂塗料被膜
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年1月17日
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】考案の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【考案の名称】 基材の被覆構造
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】実用新案登録請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項3】 前記基材が非金属体であることを特徴と
する請求項1記載の基材の被覆構造。
する請求項1記載の基材の被覆構造。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】符号の説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【符号の説明】 1 基材 2 樹脂組成物被膜 3a,3b 低温溶射被膜 4 合成樹脂塗料被膜
Claims (8)
- 【請求項1】 ブラスト処理等の前処理を施さない基材
と、該基材表面に塗布され、粒子径が10〜150μm
の粒子を樹脂に対して25〜300容量%含有し、表面
粗さ(Rz)30〜200μmの組成物被膜と、この上
に溶射された亜鉛、アルミニウム、銅もしくはそれらの
合金から選ばれた金属又は合金の低温溶射被膜と、この
上に一層以上塗布された合成樹脂塗料被膜とよりなるこ
とを特徴とする金属低温溶射被膜を有する金属体。 - 【請求項2】 前記基材が鋼材であり、低温溶射被膜が
鋼材より卑なる金属であることを特徴とする請求項1記
載の金属低温溶射被膜を有する金属体。 - 【請求項3】 粒子径が10〜150μmの粒子が、酸
化珪素、アルミナ、炭化珪素からなる群から選ばれた少
なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の金
属低温溶射被膜を有する金属体。 - 【請求項4】 低温溶射被膜の表面は研磨されているこ
とを特徴とする請求項1記載の金属低温溶射被膜を有す
る金属体。 - 【請求項5】 ブラスト処理等の前処理を施さない基材
と、該基材表面に塗布され、粒子径が10〜150μm
の粒子を樹脂に対して25〜300容量%含有し、表面
粗さ(Rz)30〜200μmの組成物被膜と、この上
に溶射された亜鉛、アルミニウム、銅もしくはそれらの
合金から選ばれた金属又は合金の低温溶射被膜と、この
上に一層以上塗布された合成樹脂塗料被膜とよりなるこ
とを特徴とする金属低温溶射被膜を有する非金属体。 - 【請求項6】 前記基材が鋼材であり、低温溶射被膜が
鋼材より卑なる金属であることを特徴とする請求項5記
載の金属低温溶射被膜を有する非金属体。 - 【請求項7】 粒子径が10〜150μmの粒子が、酸
化珪素、アルミナ、炭化珪素からなる群から選ばれた少
なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の金
属低温溶射被膜を有する非金属体。 - 【請求項8】 低温溶射被膜の表面は研磨されているこ
とを特徴とする請求項5記載の金属低温溶射被膜を有す
る非金属体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1994010256U JP3013831U (ja) | 1994-07-27 | 1994-07-27 | 基材の被覆構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1994010256U JP3013831U (ja) | 1994-07-27 | 1994-07-27 | 基材の被覆構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP3013831U true JP3013831U (ja) | 1995-07-25 |
Family
ID=43149468
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1994010256U Expired - Lifetime JP3013831U (ja) | 1994-07-27 | 1994-07-27 | 基材の被覆構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3013831U (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010106842A (ja) * | 2008-10-31 | 2010-05-13 | Mahle Internatl Gmbh | 高温のガスに曝される弁体のガス封止部の構造 |
-
1994
- 1994-07-27 JP JP1994010256U patent/JP3013831U/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010106842A (ja) * | 2008-10-31 | 2010-05-13 | Mahle Internatl Gmbh | 高温のガスに曝される弁体のガス封止部の構造 |
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