JP3011295B2 - 微生物及びビフェニルカルボン酸化合物の製造法 - Google Patents

微生物及びビフェニルカルボン酸化合物の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微生物及び、この微生
物によりアルキルビフェニル化合物を酸化してビフェニ
ルカルボン酸化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ビフェ
ニルカルボン酸化合物は、樹脂原料あるいは合成中間体
等として有用な化合物であり、とりわけ4,4′−ジカ
ルボキシビフェニルは液晶等の高機能性樹脂原料とし
て、ビフェニル−4−酢酸は鎮痛,消炎剤原料として、
近年、需要が増加している。現在、カルボキシビフェニ
ル化合物は、メチルビフェニル化合物を化学的に酸化し
て製造する方法が研究されており、その中で4,4′−
ジカルボキシビフェニルについては、4,4′−ジメチ
ルビフェニルを化学的に酸化して製造する研究が多く進
められている(大辻et.al.1989年,酸化反応
討論会講演要旨集)。しかし、化学的に酸化させる場
合、激烈な酸化条件を必要とするため、副生産物の生成
が多く、特にビフェニル結合が切断されることが問題と
なっている。加えて、激烈な酸化条件は、爆発の危険性
を伴うばかりでなく、大量のエネルギーを消費する等の
問題もある。また、ビフェニル−4−酢酸については、
4−エチルビフェニルを化学酸化させた場合は、エチル
基のα炭素が酸化されてしまい、ビフェニル−4−酢酸
を得ることはできない。
【0003】これらの問題を解決する方法として、微生
物を用いたいわゆる微生物酸化法により、上記の4,
4′−ジカルボキシビフェニルあるいはビフェニル酢酸
を製造する方法が考えられる。微生物酸化法は、常温常
圧で反応を生起させることができるため、ビフェニル結
合が切断されることがなく副生産物が少ないばかりでな
く、危険性がなく、エネルギーの消費量も少ないという
優れた特長を有している。しかし、これまで、微生物に
より4,4′−ジメチルビフェニルを酸化して4,4′
−ジカルボキシビフェニルを生成する報告はなされてい
ない。
【0004】本発明は、以上の実状下において、研究を
重ねた結果、既に、4,4′−ジメチルビフェニル、4
−エチルビフェニルに限らず、アルキルビフェニル化合
物,メチルジフェニルメタン化合物,メチルジフェニル
エーテル化合物(以下、これらを纏めてアルキルビフェ
ニル化合物等という)のアルキル基の全てあるいは一部
を酸化することのできる微生物を見出し、この微生物
と、この微生物によりアルキルビフェニル化合物等を酸
化して副生産物の少ないビフェニルカルボン酸化合物,
カルボキシジフェニルメタン化合物,カルボキシジフェ
ニルエーテル化合物(以下、これらを纏めてビフェニル
カルボン酸化合物等という)を製造する方法とを、別途
提案している(特願平2−271360号,同3−13
3469号,及び本発明と同日出願で、かつこれらの出
願を先の出願とする特許法第42条の2第1項の規定に
よる「微生物及びビフェニルカルボン酸化合物等の製造
方法」参照)(以下、これらの提案を“第1の提案”と
いう)。
【0005】ところが、更に研究を進めているうちに、
やはり別途提案しているものの明細書(特願平2−27
1359号,同3−133468号,及び本発明と同日
出願で、かつこれらの出願を先の出願とする特許法第4
2条の2第1項の規定による「微生物及びナフタレンカ
ルボン酸化合物の製造方法」参照)(以下、これらの提
案を“第2の提案”という)に記載の方法でスクリーニ
ングし、工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄
第11753号(FERM P−11753)として寄
託された微生物が、アルキルナフタレン類のアルキル基
に対して強い酸化力を有するのみならず、第1の提案に
係る微生物〔工業技術院微生物工業技術研究所に寄託さ
れた微工研菌寄第11754号(FERM P−117
54)〕とほぼ同様の性質、すなわちアルキルビフェニ
ル化合物と共に培養すると、ビフェニル結合を切断する
ことなく、アルキル基のみを選択的に酸化したビフェニ
ルカルボン酸化合物を生産する性質を有することを見出
した。
【0006】本発明は、この知見に基づき、第1の提案
とは異なる微生物(具体的には、第2の提案に係る微生
物)であって、第1の提案に係る微生物と同様の性質を
示す点、及びこの微生物により、アルキルビフェニル化
合物を酸化して副生物の少ないビフェニルカルボン酸化
合物を製造する方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)脂肪族
炭化水素,有機酸,その塩,アルコール類,ケトン類,
糖類のうちの少なくとも1つを炭素源として生育可能
で、アルキルビフェニル化合物に対し強い酸化力を示
し、工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第1
1753号(FERM P−11753)として寄託さ
れたことを特徴とする微生物(以下、本発明菌とい
う)、(2)本発明菌をアルキルビフェニル化合物を含
む培地で培養することを特徴とするビフェニルカルボン
酸化合物の製造方法(以下、本発明第1方法という)、
(3)本発明菌の休止菌体又は菌体成分をアルキルビフ
ェニル化合物と接触させることを特徴とするビフェニル
カルボン酸化合物の製造方法(以下、本発明第2方法と
いう)を要旨とする。
【0008】以下、本発明菌及び本発明第1,第2方法
の詳細を説明する。先ず、本発明菌の詳細を説明する。
本発明菌は、4,4′−ジメチルビフェニル,3,3′
−ジメチルビフェニル,4−フェニルトルエン等のメチ
ルビフェニル化合物、4−エチルビフェニル等のエチル
ビフェニル化合物のアルキル基の全てあるいは一部をカ
ルボキシル基まで酸化してビフェニルカルボン酸化合物
を生産する強い酸化酵素を持ち、かつビフェニル結合の
切断等の不要な反応を生起しない、言い換えれば、ビフ
ェニル結合の切断反応等に必要な酵素を持たない微生物
であって、上記した脂肪族炭化水素等を炭素源として生
育可能であり、工業技術院微生物工業技術研究所に微工
研菌寄第11753号(FERM P−11753)と
して寄託された微生物である。
【0009】本発明菌のスクリーニングは、前述の第2
提案の明細書に記載の方法に従って行われる。すなわ
ち、一般的な微生物の生育に必要な栄養源を含む培地で
微生物を培養し、その中にアルキルナフタレン類を添加
しておき、培養液中にナフタレンカルボン酸類が生産さ
れているか否かを確認することによって行われる。この
場合、アルキルナフタレン類のアルキル基に対して強い
酸化力を有する微生物を効率的に得るために、アルキル
基をもつ化合物の一例としてn−パラフィンを炭素源と
して加えておき、その資化性の強さをアルキル基に対す
る酸化力の指標とすることができる。また、得られた微
生物の中から効率的にアルキルナフタレン類をナフタレ
ンカルボン酸類に酸化できる微生物、すなわちアルキル
ナフタレン類のアルキル基を酸化する能力は有するが、
アルキルナフタレン類を資化(消費)する能力は有しな
い微生物をスクリーニングすることが好ましい。
【0010】このスクリーニングの一例を以下に説明す
る。微生物の増殖に必要な培地成分に炭素源としてn−
パラフィンを添加して調製した培地を試験管に分注し、
滅菌した後、採取土壌を添加し、振盪培養する。この培
養液を、上記の培地を上記と同様に分注し滅菌した別の
試験管に加えて、上記と同様に振盪培養する。この後、
培養液を希釈又は無希釈で寒天培地等に撒き、培養す
る。出現したコロニーを拾い、上記の培地に移し、上記
のアルキルナフタレン類を加えて、更に振盪培養する。
この培養液の上清を、例えば高速液体クロマトグラフィ
(HPLC)で分析し、アルキルナフタレン類をナフタ
レンカルボン酸類に変換する強い酸化力を持つ菌株を選
別する。また、得られた菌株の中から炭素源としてアル
キルナフタレン類だけを含有する培地では生育しない菌
株を選別することにより、アルキルナフタレン類のアル
キル基を酸化するが、資化する能力は有しない微生物を
得ることができる。この菌株は、アルキルナフタレン類
のみでも、またナフタレンカルボン酸類のみでも生育せ
ず、これらの物質より微生物が容易に資化できる他の炭
素源で生育可能で,かつアルキルナフタレン類をナフタ
レンカルボン酸類に酸化する能力を有する。
【0011】このようなスクリーニング操作に用いる上
記の培地には、生育炭素源としてのn−パラフィンの外
に、一般的な培地成分が添加される。このn−パラフィ
ンとしては、少なくとも炭素数8〜20のものを1種又
は2種以上混合して使用される。炭素数が8未満である
と、その溶媒効果により阻害が強く生育が悪くなり、ま
た気化による損失も多く、20を越えると微生物の生育
時に固体であり培地に充分に混合せず、生育速度が低下
する等の問題がある。なお、炭素数が20を越えたもの
でも、微生物の生育は可能であるため、炭素数20〜3
0程度のものを併用してもよい。また、一般的な培地成
分としては、窒素源として、例えばアンモニア,塩化ア
ンモニウム,燐酸アンモニウム,硫酸アンモニウム,炭
酸アンモニウム,酢酸アンモニウム,硝酸アンモニウ
ム,硝酸ナトリウム,尿素等の無機窒素化合物や、酵母
エキス,乾燥酵母,ペプトン,肉エキス,コーンスティ
ープリカー,カザミノ酸等の有機窒素源を用いることが
できる。また無機塩類として、例えばカリウム,ナトリ
ウム,鉄,マグネシウム,マンガン,銅,カルシウム,
コバルト等の各塩類等を用いることができる。更に、培
養条件としては、培地のpH約3〜9,好ましくは約5
〜7,温度約5〜40℃,好ましくは約20〜36℃,
時間約3〜14日間,好気的条件下とすることが望まし
い。
【0012】上記のスクリーニングによって得られた本
発明菌は、第2提案の明細書に記載の通り、以下のよう
な菌学的性質を有する。 (A)核染色 本菌株を核染色したが、核膜の存在は認められなかっ
た。本菌株は原核生物である。 (B)コロニーの観察 ISP2寒天培地でのコロニー群にポック形成が見られ
た。 (C)形態 ISP2寒天培地:太さ2〜3μmの糸状菌 無機寒天培地 :太さ1〜2μmの糸状菌 (*実施例1の表2に示す組成の無機寒天培地) (D)グラム染色 陽性 (E)イソプレノイドキノンの分析 メナキノンタイプ(MK)のイソプレノイドキノンが存
在する。
【0013】以上の菌学的性質により、本菌株は放線菌
であると判断される。更に、本菌株を同定するために、
菌学的性質を調べた。本発明菌は、以下のような菌学的
性質を有している。
【0014】(a)形態 胞子形成菌糸の分枝法及び形態 ・分枝法:単純分枝 ・形態:直状 胞子の数:4〜5胞子程度の連鎖 胞子の表面構造及び大きさ ・表面構造:楕円形 ・大きさ:0.5〜1.0μm×1.5〜2.0μm 鞭毛胞子の有無:観察されない 胞子嚢の有無:観察されない
【0015】(b)各培地における生育状態 シュクロース・硝酸塩寒天培地 ・生育状態:中程度の生育、黄色、平面状 ・コロニー裏面の色:淡褐色 ・気菌糸の形成:僅かに形成、クリーム色 ・拡散性色素:生産しない グルコース・アスパラギン寒天培地 ・生育状態:中程度の生育、クリーム色、 盛り上がった生育 ・コロニー裏面の色:淡褐色 ・気菌糸の形成:不良 ・拡散性色素:生産しない グリセリン・アスパラギン寒天培地 ・生育状態:弱い生育、白色、平面状 ・コロニー裏面の色:白色 ・気菌糸の形成:僅かに形成、白色 ・拡散性色素:生産しない スターチ寒天培地 ・生育状態:弱い生育、クリーム色、へそ状 ・コロニー裏面の色:淡褐色 ・気菌糸の形成:不良 ・拡散性色素:生産しない チロシン寒天培地 ・生育状態:中程度の生育、白色、平面状 ・コロニー裏面の色:白色 ・気菌糸の形成:良好、白色 ・拡散性色素:生産しない 栄養寒天培地 ・生育状態:良好な生育、クリーム色、 盛り上がった生育 ・コロニー裏面の色:白色 ・気菌糸の形成:僅かに形成、白色 ・拡散性色素:生産しない イースト・麦芽寒天培地 ・生育状態:中程度の生育、クリーム色、 平面状 ・コロニー裏面の色:淡褐色 ・気菌糸の形成:不良 ・拡散性色素:生産しない オートミール寒天培地 ・生育状態:中程度の成育 ・コロニー裏面の色:白色 ・気菌糸の形成:不良 ・拡散性色素:生産しない
【0016】(c)生理学的性質 生育温度範囲:15〜36℃ ゼラチンの液化(グルコース・ペプトンゼラチン培地
上):液化する スターチの加水分解(スターチ寒天培地上):陽性 脱脂牛乳の凝固、ペプトン化:凝固しない、ペプトン
化する メラニン様色素の生成(チロシン寒天培地及びペプト
ン・イースト鉄寒天培地上):生成しない
【0017】(d)各炭素源の同化性(プリドハム・ゴ
ドリーブ寒天培地上) L−アラビノース:利用するが、生育弱い D−キシロース :同上 D−グルコース :同上 D−フラクトース:同上 シュクロース :同上 イノシトール :同上 L−ラムノース :同上 ラフィノース :同上 D−マンニット :同上
【0018】(e)糖の分析 グルコース :存在する マンノース :存在する リボース :存在しない ラムノース :存在しない ガラクトース:存在する アラビノース:存在する キシロース :存在しない マジュロース:存在しない
【0019】(f)ジアミノピメリン酸(DAP)の分
析 LL−DAP :存在しない meso−DAP:存在する (g)ミコール酸の分析 ミコール酸:存在しない (h)GC(グアニン・シトシン)コンテント GCコンテント:60%
【0020】以上の菌学的性質からバージェイズ マニ
ュアル オブ システマティックバクテリオロジー(B
ergey’s manual of Systema
tic Bacteriology)に基づき検索を行
ったところ、本菌株に類似の属としてノカルディア(
ocardia)とアクチノシネマ(Actinosy
nnema)が見出された。これらの性質を表1に比較
して示す。なお、表1中、本菌株の一例をH−503と
して示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1より判るように、本菌株は、類似の属
であるノカルディア及びアクチノシネマとは明らかに異
なる属である。また、形態的にも、ISP2寒天培地上
で2〜3μmの太さの糸状菌は、今まで報告されていな
い。
【0023】以上の菌学的性質から、本発明菌は、第2
提案のうちの特願平2−271359号で初めて提案さ
れた菌であり、この提案以前に知られていたどの菌にも
属さないと判断され、工業技術院微生物工業技術研究所
に微工研菌寄第11753号(FERM P−1175
3)として寄託されている。しかも、本発明菌は、アル
キルナフタレン類のアルキル基に対し強い酸化力を示す
酵素は有するが、芳香環の開裂等の不要な反応を示す酵
素は有していないことに加え、上記の特願平2−271
359号提案後に進められていた研究により、アルキル
ビフェニル化合物のアルキル基の全てあるいは一部をカ
ルボキシル基まで酸化してビフェニルカルボン酸化合物
を生産する強い酸化酵素をも持っており、かつビフェニ
ル結合の切断等の不要な反応を示す酵素は有しておら
ず、第1の提案に係る微工研菌寄第11754号(FE
RM P−11754)に類似の性質をも有しているこ
とが明らかとなった。
【0024】次に、本発明第1,第2方法の詳細を説明
する。本発明第1方法では、上記の生育炭素源と、アル
キルビフェニル化合物、好ましくは炭素数1〜10の低
級アルキル基、より好ましくはメチル基,エチル基,プ
ロピル基を少なくとも1つもつビフェニル化合物とを含
む培養液に、本発明菌を接種するか、あるいは上記の生
育炭素源を含む培養液に本発明菌を接種後、所定の期間
経過後(菌体増殖の対数期以降)に上記のアルキルビフ
ェニル化合物を添加する。アルキルビフェニル化合物の
添加量は、余り多過ぎると本発明菌の増殖が低下するた
め、本発明第1方法では、培地に対し0.01〜10重
量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内で添加する
ことが望ましい。また、ビフェニルカルボン酸化合物の
生成に伴い培地中のpHが低下して来るため、水酸化ナ
トリウム,アンモニア,水酸化カリウム等のアルカリ溶
液でpHを調整することが望ましい。更に、本発明第1
方法は、バッチ式やバイオリアクタ等を用いる連続式で
行うことができる。このときの培地としては、上記した
有機酸(例えば、酢酸,安息香酸,フタル酸,サリチル
酸等)、該有機酸のナトリウム塩,カルシウム塩等、ア
ルコール類(例えば、エチルアルコール等)、ケトン類
(例えば、メチルエチルケトン等)、糖類(例えば、グ
ルコース,フラクトース,デンプン加水分解物等)を生
育炭素源とし、これに前述のスクリーニングで使用した
ものと同様の一般的な培地成分を添加したものが使用さ
れる。また、このときの培養条件は、上記した本発明菌
の培養条件と同様とすればよい。
【0025】本発明第2方法では、本発明菌の休止菌体
又は菌体由来の酵素や他の菌体成分を、アルキルビフェ
ニル化合物、好ましくは炭素数1〜10の低級アルキル
基、より好ましくはメチル基,エチル基,プロピル基を
少なくとも1つもつビフェニル化合物と接触させる。上
記の休止菌体は、本発明第1方法と同様の培地を使用
し、同様の培養条件で培養したものをそのまま用いる
か、あるいは遠心分離等で固液分離して用いる。なお、
固液分離した菌体は、更に、燐酸緩衝液等の溶液で洗浄
し、該溶液に懸濁させて使用することもできる。また、
菌体由来の酵素や他の菌体成分は、常法により精製した
ものを使用することが望ましい。例えば、本発明菌体の
懸濁液を、超音波破砕機,フレンチプレス,高圧ホモジ
ナイザ等により破砕処理して得られた菌体破砕物を、遠
心分離等により固液分離した後、カラム精製,電気泳動
等の一般的精製手段により精製酵素としたものを使用す
る。更に、これらの休止菌体や菌体成分は、固定化した
ものを使用することもでき、固定化したものを使用する
ことによって、効率良く反応を行うことができる。この
固定化は、アルギン酸カルシウム法,ポリアクリルアミ
ドゲル法,ポリウレタン樹脂法,光架橋樹脂法等の常法
により行うことができる。
【0026】これらの休止菌体や菌体成分に、上記のア
ルキルビフェニル化合物を、燐酸緩衝液中で、接触させ
ると、酸化反応が生じてビフェニルカルボン酸化合物が
製造される。このときの反応条件は、本発明第1方法の
場合の条件と同様とすればよい。また、休止菌体又は菌
体成分の添加量は、いずれも少な過ぎると上記の酸化反
応が生じず、逆に多過ぎると不経済となるため、いずれ
も培地に対し0.01〜20重量%とすることが好まし
い。この反応において、エネルギ源として、メタノー
ル,エタノール,水素,ニコチン酸アミドアデニンジヌ
クレオチド(NAD),ホルムアルデヒド,蟻酸等の電
子供与体を適宜添加するのが好ましい。
【0027】以上のようにして得られる本発明第1方法
の培養液あるいは本発明第2方法の反応液中のビフェニ
ルカルボン酸化合物は、常法により精製することができ
る。例えば、培養液又は反応液を濾過,遠心分離等によ
り固液分離し、得られた溶液に塩酸,硫酸等の酸溶液を
加えて酸性とすることにより、ビフェニルカルボン酸化
合物を回収することができる。また、溶剤抽出等の方法
によっても回収することができ、この場合は、カラムク
ロマトグラフィ等の公知の精製方法を適宜併用すること
ができる。
【0028】
【作用】本発明菌は、アルキルビフェニル化合物のアル
キル基の全てあるいは一部をカルボキシル基まで酸化す
る強い酸化酵素を持ち、かつビフェニル結合の切断反応
等に必要な酵素を持たない微生物である。このため、本
発明菌は、従来の化学酸化法や微生物酸化法に比して、
高効率でアルキルビフェニル化合物を酸化する作用を有
し、微生物酸化法に広く応用される。
【0029】また、本発明第1方法では、上記した本発
明菌が、脂肪族炭化水素,有機酸,有機酸の塩,アルコ
ール,ケトン,糖のうちの少なくとも1つを生育炭素源
として増殖する際に、本発明菌が生成する酵素や他の菌
体成分の作用により、アルキルビフェニル化合物のアル
キル基の全てあるいは一部を酸化して、ビフェニルカル
ボン酸化合物を製造する。このとき、本発明菌は、アル
キルビフェニル化合物を資化することがないため、アル
キルビフェニル化合物を酸化して製造したビフェニルカ
ルボン酸化合物を、これ以上酸化したり、分解したりす
ることはない。よって、本発明第1方法によれば、高収
率でビフェニルカルボン酸化合物を製造することができ
る。また、本発明第2方法では、本発明菌の休止菌体又
は菌体成分を、アルキルビフェニル化合物に接触させ
る。すると、酸化反応が生じて、ビフェニルカルボン酸
化合物が生成される。このとき、アルキルビフェニル化
合物が資化されたり、生成されたビフェニルカルボン酸
化合物がこれ以上酸化されたり、分解される等の不要な
反応は生じない。よって、本発明第2方法によっても、
高収率でビフェニルカルボン酸化合物を製造することが
できる。
【0030】
【実施例】
実施例1 表2に示す培地成分を、蒸留水1リットルに溶かして培
地1を調製した。この培地1のpHは7.0であった。
【0031】
【表2】
【0032】上記のpH7.0の培地1を、内径21m
mの試験管に10ml入れ、121℃で15分間滅菌し
た後、室温に冷却した。これに、石油精製施設にて採集
した1000種類の土壌を夫々0.5gと、炭素源とし
てn−ヘキサデカンを0.1ml加え、試験管振盪培養
装置により、30℃,250rpmにて7日間往復振盪
培養した。この培養液の夫々を、上記と同様に培地1を
分注、滅菌した別の試験管に、3白金耳植え継ぎ、上記
と同様に7日間振盪培養した。この培養液の夫々を滅菌
水により10〜10倍の範囲で希釈した後、培地1
に更に寒天を1リットル当たり15g加えて調製した寒
天平面培地2に塗布し、n−ヘキサデカンを0.1ml
加え、30℃で7日間培養した。出現したコロニーを白
金耳で拾い、上記の培地1に移し、n−ヘキサデカン
0.1mlとアルキルナフタレン類として2,6−ジメ
チルナフタレン5mgを加え、30℃,250rpmに
て7日間振盪培養した。この培養液の上清を、HPLC
にて分析し、2,6−ジメチルナフタレンを6−メチル
−2−ナフトエ酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸に
酸化する強い酸化力を持つ菌株を選別した。更に、選別
した菌株は、上記の培地1に白金耳で植え継ぎ、炭素源
として2,6−ジメチルナフタレンを5mg加え、上記
と同様に7日間培養した。その結果、炭素源として2,
6−ジメチルナフタレンのみを加えた場合には生育しな
い菌の中で最も2,6−ナフタレンジカルボン酸の生成
量の高いものとして、微生物FERM P−11753
を得た。
【0033】実施例2 実施例1の培地1を内径21mmの試験管に10ml入
れ、微生物FERMP−11753を接種し、同時にア
ルキルビフェニル化合物として4−エチルビフェニル5
mgと、炭素源としてn−ヘキサデカン0.1mlとを
添加し、試験管振盪培養装置により、30℃,250r
pmにて7日間培養した。この培養液の上清を、HPL
Cにて分析したところ、14mg/lのビフェニル−4
−酢酸が生成されていた。
【0034】実施例3 アルキルビフェニル化合物として4−エチルビフェニル
の代わりに、4,4′−ジメチルビフェニルを5mg添
加する以外は、実施例2と同様にして培養したところ、
培地中に18mg/lの4,4′−ジカルボキシビフェ
ニルが生成されていた。
【0035】実施例4 アルキルビフェニル化合物として4−エチルビフェニル
の代わりに、4−フェニルトルエンを5mg添加する以
外は、実施例2と同様にして培養したところ、培地中に
91mg/lの4−フェニル安息香酸が生成されてい
た。
【0036】比較例1 芳香族化合物の側鎖に対し強い酸化力を持つ微生物とし
てロドコッカス属に属する微生物であるロドコッカス・
エスピー(Rhodococcus sp.)ATCC
19070株を用いる以外は、実施例2と同様にして培
養し、ビフェニル−4−酢酸の生産を試みたが、ビフェ
ニル−4−酢酸の生成は認められなかった。
【0037】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明菌は、アル
キルビフェニル化合物のアルキル基に対して強い酸化力
を有するため、従来の化学的酸化法や微生物学的酸化法
に代えて、アルキルビフェニル化合物のアルキル基のみ
を微生物学的に酸化する技術において広く適用すること
ができる。また、本発明第1,第2方法は、上記の本発
明菌により、ビフェニル結合の切断反応が生起したり、
微生物によってアルキルビフェニル化合物が資化される
ことがなく、従って原料の損失のない高効率でのアルキ
ルビフェニル化合物からのビフェニルカルボン酸化合物
等の製造方法を実現することができる。
フロントページの続き (72)発明者 堀田 康司 埼玉県大宮市櫛引町2丁目598番1号 (56)参考文献 特開 昭63−219385(JP,A) 特開 昭63−291575(JP,A) 特開 平3−247292(JP,A) 特開 平5−103659(JP,A) 特開 平5−15365(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/20 C12P 7/40 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脂肪族炭化水素,有機酸,その塩,アル
    コール類,ケトン類,糖類のうちの少なくとも1つを炭
    素源として生育可能で、アルキルビフェニル化合物に対
    し強い酸化力を示し、工業技術院微生物工業技術研究所
    に微工研菌寄第11753号(FERM P−1175
    3)として寄託されたことを特徴とする微生物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の微生物を、アルキルビフ
    ェニル化合物を含む培地で培養して、ビフェニルカルボ
    ン酸化合物を製造することを特徴とするビフェニルカル
    ボン酸化合物の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の微生物の休止菌体又は菌
    体成分を、アルキルビフェニル化合物と接触させて、ビ
    フェニルカルボン酸化合物を製造することを特徴とする
    ビフェニルカルボン酸化合物の製造法。
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