JP2998470B2 - 負イオン注入装置 - Google Patents

負イオン注入装置

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JP2998470B2
JP2998470B2 JP4344483A JP34448392A JP2998470B2 JP 2998470 B2 JP2998470 B2 JP 2998470B2 JP 4344483 A JP4344483 A JP 4344483A JP 34448392 A JP34448392 A JP 34448392A JP 2998470 B2 JP2998470 B2 JP 2998470B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イオン照射対象物に負
イオンを注入する負イオン注入装置に関し、詳しくは、
負イオン注入によるイオン照射対象物のチャージアップ
を低減できる負イオン注入装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】イオン注入装置は、拡散したい不純物を
イオン化し、この不純物イオンを磁界を用いた質量分析
法により選択的に取り出してイオンビームとし、電界に
より加速してイオン照射対象物に照射することで、イオ
ン照射対象物内に不純物を注入するものであり、半導体
プロセスにおいてデバイスの特性を決定する不純物を任
意の量および深さに制御性良く注入できることから、現
在の集積回路の製造に重要な装置になっている。
【0003】上記イオン注入装置には、負イオンビーム
を生成してイオン照射対象物内に負イオンを注入する負
イオン注入装置がある。この負イオン注入装置におい
て、電位が飽和している絶縁基板(イオン照射対象物)
に対して負イオン注入処理を行うと、絶縁基板の負イオ
ン照射部位では、基板に注入される負イオンにより負電
荷が蓄積されると同時に、イオン照射面から2次電子が
放出されることになる。
【0004】即ち、絶縁基板上の電位は、負イオン注入
により基板から放出された2次電子の平均的なエネルギ
ーで略飽和状態が保持される。このように、負イオン注
入装置を用いたイオン注入処理は、絶縁基板上に電荷が
蓄積され難いため、正イオンを注入する正イオン注入装
置を用いたイオン注入処理に比べてチャージアップ現象
が生じ難く、デバイスを作成する上で有効であるといえ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記負
イオン注入装置を用いた負イオン注入処理中に、イオン
照射面から絶縁基板の前方空間に放出された2次電子
が、再び絶縁基板に入射した場合、2次電子の入射位置
が負に帯電することになる。この絶縁基板から放出され
た2次電子が再び絶縁基板に入射する量が多くなれば、
絶縁基板上に負電荷を過剰に蓄積させることになり、や
がては絶縁基板の絶縁破壊に到り(チャージアップ現
象)、デバイスを破壊するという問題を有している。
【0006】本発明は、上記に鑑みなされたものであ
り、その目的は、正イオン注入装置よりもチャージアッ
プ現象が生じ難くデバイスの作成に有効な負イオン注入
装置において、よりチャージアップによるデバイス破壊
を低減することができる負イオン注入装置を提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1および請求項2
の発明に係る負イオン注入装置は、上記課題を解決する
ために、負イオンをウエハ等のイオン照射対象物に照射
してイオン照射対象物内に負イオンを注入する負イオン
注入装置において、以下の手段を講じたことを特徴とし
ている。
【0008】即ち、請求項1の発明に係る負イオン注入
装置は、上記イオン照射対象物よりもイオン進行方向上
流側にイオン通過経路を囲むようにして設けられた荷電
粒子コレクタと、上記荷電粒子コレクタにより囲まれる
空間に、負イオンの進行方向と略平行な磁場を形成する
磁場形成手段とを備え、上記磁場形成手段の形成する磁
場の強度は、磁場中で螺旋運動を行う2次電子のラーモ
ア半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離の1/
2倍よりも大きくなるように設定されていることを特徴
としている。
【0009】また、請求項2の発明に係る負イオン注入
装置は、上記イオン照射対象物よりもイオン進行方向上
流側にイオン通過経路を囲むようにして設けられた荷電
粒子コレクタと、上記荷電粒子コレクタにより囲まれる
空間に、負イオンの進行方向と略垂直な磁場を形成する
磁場形成手段とを備え、上記磁場形成手段の形成する磁
場の強度は、磁場中で円運動を行う2次電子のラーモア
半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離の1/2
倍よりも大きくなるように設定されていることを特徴と
している。
【0010】
【作用】上記請求項1の構成によれば、イオン照射対象
物の前方(イオン進行方向上流)に配設された荷電粒子
コレクタの内部空間には、磁場形成手段によって負イオ
ンビームの進行方向と略平行な磁場が形成されている。
このため、負イオン注入中に、イオン照射対象物のイオ
ン照射面から放出された2次電子は、上記荷電粒子コレ
クタ内の磁場中で、ビーム進行方向上流側に向かって螺
旋運動を行うことになる。
【0011】この磁場中で行われる2次電子の円運動
(螺旋運動から磁場と平行な成分を除いた運動)の半
径、即ち、ラーモア半径は、磁場の強度(磁束密度の大
きさ)に依存する。そして、上記磁場形成手段の形成す
る磁場の強度は、磁場中で螺旋運動を行う2次電子のラ
ーモア半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離の
1/2倍(荷電粒子コレクタが円筒形状であれば、その
半径)よりも大きくなるように設定されている。
【0012】このため、負イオン注入処理中にイオン照
射対象物の前方空間に放出された2次電子は、ビーム進
行方向上流側に向かって螺旋運動を行い、荷電粒子コレ
クタの内壁に入射して吸収され、イオン照射対象物に殆
ど戻ることはない。
【0013】したがって、イオン照射対象物上の電位
は、負イオン注入によりイオン照射対象物から放出され
た2次電子の平均的なエネルギーで略飽和状態が保持さ
れるので、チャージアップによるデバイス破壊が殆ど生
じることはない。
【0014】上記請求項2の構成によれば、イオン照射
対象物の前方(イオン進行方向上流)に配設された荷電
粒子コレクタの内部空間には、磁場形成手段によって負
イオンビームの進行方向と略垂直な磁場が形成されてい
る。このため、負イオン注入中に、イオン照射対象物の
イオン照射面から放出された2次電子は、上記荷電粒子
コレクタ内の磁場中において、磁場と垂直な平面内で円
運動を行うことになる
【0015】この磁場中で行われる2次電子の円運動の
半径、即ち、ラーモア半径は、磁場の強度(磁束密度の
大きさ)に依存する。そして、上記磁場形成手段の形成
する磁場の強度は、磁場中で螺旋運動を行う2次電子の
ラーモア半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離
の1/2倍(荷電粒子コレクタが円筒形状であれば、そ
の半径)よりも大きくなるように設定されている。
【0016】このため、負イオン注入処理中にイオン照
射対象物の前方空間に放出された2次電子は、荷電粒子
コレクタ内に形成された磁場と垂直な平面内で円運動を
行い、荷電粒子コレクタの内壁に入射して吸収され、イ
オン照射対象物に殆ど戻ることはない。
【0017】したがって、イオン照射対象物上の電位
は、負イオン注入によりイオン照射対象物から放出され
た2次電子の平均的なエネルギーで略飽和状態が保持さ
れるので、チャージアップによるデバイス破壊が殆ど生
じることはない。
【0018】
【実施例】〔負イオン注入装置の基本構成例〕 後述する〔実施例1〕および〔実施例2〕の負イオン注
入装置の基本構成例について 図1に基づいて説明すれば
以下の通りである。
【0019】基本構成例としての負イオン注入装置は、
基本的には、プラズマチャンバ内で負イオンを生成し、
電界によりチャンバ内から真空中に負イオンを引き出し
て負イオンビームを形成する負イオン源部、所定の注入
イオンのみを選別して取り出す質量分析部、ビームを輸
送する中で必要によりイオンを加速し、また、ビームを
整形・偏向するビームライン部、および注入処理を行う
エンドステーション部とから構成され、これら各部にお
ける負イオンビームの通過経路は真空となっている。
【0020】負イオン注入装置の上記エンドステーショ
ン部には、図1に示すように、ウエハ等のイオン照射対
象物1を保持する保持部材2が設けられている。この保
持部材2は、熱伝導性に優れたアルミニウム合金等の金
属材料により形成されている。また、上記保持部材2に
保持されたイオン照射対象物1の前方(イオン進行方向
上流側)には、負イオンビームの通過経路を囲むように
して形成された円筒状の金属製ファラデーカップ(荷電
粒子コレクタ)3が設けられている。
【0021】基本構成例としての負イオン注入装置は、
上記保持部材2とファラデーカップ3との間に電圧を印
加する直流電源4を備えており、上記直流電源4のプラ
ス極端子にはファラデーカップ3が、そして、直流電源
4のマイナス極端子には保持部材2が接続されている。
上記直流電源4の印加電圧は、ファラデーカップ3の内
壁の電位が2次電子放出エネルギー(およそ数10V以
下)よりも高くなるように設定されている。
【0022】上記の構成において、負イオン注入装置の
動作を以下に説明する。
【0023】先ず、図示しない負イオン源から引き出さ
れた負イオンビームが、質量分析器によって質量分析さ
れることによって、特定の負イオンからなるイオンビー
ムとされることになる。そして、この負イオンビーム
は、必要により加速、整形、偏向等の処理が行われた
後、保持部材2に保持されたイオン照射対象物1に照射
されることになる。
【0024】上記イオン照射対象物1がウエハ等の絶縁
基板の場合、イオン照射対象物1上の負イオン照射部位
では、注入される負イオンにより負電荷が蓄積されると
同時に、イオン照射面からイオン照射対象物1の前方空
間に2次電子が放出されることになる。このため、イオ
ン照射対象物1から放出された2次電子が再びイオン照
射対象物1へ戻らなければ、イオン照射対象物1上の電
位は略飽和状態が保持されることになる。
【0025】ところで、イオン照射対象物1を保持する
保持部材2とファラデーカップ3との間には、直流電源
4により2次電子放出エネルギーよりも高い電圧が印加
されているので、イオン照射対象物1の前方空間には印
加電圧に応じた強度の電場が生じている。したがって、
イオン照射対象物1の前方空間に放出された2次電子
は、上記電場中でイオン照射対象物1よりも高電位のフ
ァラデーカップ3方向の力を受け、ファラデーカップ3
に入射してその内壁に吸収されることになる。
【0026】上記のように、基本構成例としての負イオ
ン注入装置は、イオン照射対象物1の前方にイオン通過
経路を囲むようにして設けられ、イオン照射対象物1よ
りも高電位のファラデーカップ3を備えているので、負
イオン注入処理中にイオン照射面から放出された2次電
子は、ファラデーカップ3に入射して吸収され、イオン
照射対象物1に殆ど戻ることはない。したがって、本負
イオン注入装置では、イオン照射対象物1上の電位は略
飽和状態が保持され、チャージアップによるデバイス破
壊が殆ど生じることはない。
【0027】尚、直流電源4の印加電圧は、イオン照射
対象物1にコンデンサの原理で拘束されている電荷が、
イオン照射対象物1の前方空間に生じた電場によって該
空間に飛び出さないような高さでなくてはならない。但
し、電荷がイオン照射対象物1に拘束された状態を保持
できる電場の強さの最大はMV/cmのオーダーであ
り、これよりもイオン照射対象物1の前方空間の電場が
強くなることは殆どない。したがって、直流電源4の印
加電圧の上限は、イオン照射対象物1の前方空間に生じ
た電場によりビームラインが影響を受けない程度であ
る。
【0028】〔実施例1〕 本発明の負イオン注入装置 の一実施例を図2および図5
に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0029】本実施例に係る負イオン注入装置は、上記
基本構成例としての負イオン注入装置と同様、基本的に
は、負イオン源部、質量分析部、ビームライン部、およ
びエンドステーション部とから構成され、これら各部に
おける負イオンビームの通過経路は真空となっている。
【0030】本実施例の負イオン注入装置のエンドステ
ーション部には、図2に示すように、ウエハ等のイオン
照射対象物11を保持する保持部材12が設けられてい
る。この保持部材12は、熱伝導性に優れたアルミニウ
ム合金等の金属材料により形成されている。また、上記
保持部材12に保持されたイオン照射対象物11の前方
(イオン進行方向上流側)には、負イオンビームの通過
経路を囲むようにして形成された円筒状の金属製ファラ
デーカップ(荷電粒子コレクタ)13が設けられてい
る。
【0031】尚、本実施例では、上記円筒状のファラデ
ーカップ13の半径(ファラデーカップ13の内壁間の
距離の1/2倍)は数10cmである。また、本実施例
では、円筒状のファラデーカップ13が荷電粒子コレク
タとして用いられているが、荷電粒子コレクタの形状は
これに限定されるものではない。
【0032】上記ファラデーカップ13の周囲には、ソ
レノイドコイルを備えたマグネット(磁場形成手段)1
4が配設されており、このマグネット14は、上記ファ
ラデーカップ13内に負イオンビームの進行方向と略平
行な磁場を形成するようになっている。上記マグネット
14のソレノイドコイルには、図示しないマグネット電
源が接続されており、このマグネット電源より所定の電
流が供給されるようになっている。
【0033】上記の構成において、負イオン注入装置の
動作を以下に説明する。
【0034】先ず、図示しない負イオン源から引き出さ
れた負イオンビームが、質量分析器によって質量分析さ
れることによって、特定の負イオンからなるイオンビー
ムとされることになる。そして、この負イオンビーム
は、必要により加速、整形、偏向等の処理が行われた
後、保持部材12に保持されたイオン照射対象物11に
照射されることになる。このとき、上記イオン照射対象
物11のイオン照射面からは、イオン照射対象物11の
前方空間、即ち、ファラデーカップ13の内部空間に2
次電子が放出される。
【0035】ところで、上記ファラデーカップ13の内
部空間には、負イオンビームの進行方向と略平行な磁場
(磁束密度B)が形成されている。この磁場中に放出さ
れた2次電子は、磁束密度Bと平行な成分(速度)を持
つため、ビーム進行方向上流側に向かって螺旋運動を行
うことになる。
【0036】この磁場中で行われる2次電子の円運動
(螺旋運動から磁束密度Bと平行な成分を除いた運動)
の半径、即ち、ラーモア半径は、放出された2次電子の
磁束密度Bと垂直な方向の成分(速度)“vp ”と磁束
密度Bの大きさ“B”とにより記述される。ここで、上
記2次電子のエネルギーを10eVとし、ファラデーカ
ップ13内の磁場(磁束密度B)を変化させたときの、
磁場中の2次電子のラーモア半径を図5に示す。
【0037】尚、イオン照射対象物11のイオン照射面
からは、2次電子に比べると放出量は僅かであるが、2
次電子と共に2次イオンも放出される。例えば、イオン
照射対象物11としてウエハが用いられている場合、2
次イオンとしてSiイオンが放出されることになる。そ
こで、同図には、Siイオンのエネルギーを10eVと
し、ファラデーカップ13内の磁場(磁束密度B)を変
化させたときの、磁場中のSiイオンのラーモア半径
も、2次電子のラーモア半径と共に示している。
【0038】ところで、上記円筒状のファラデーカップ
13の半径は数10cmであるが、ファラデーカップ1
3の内部空間で螺旋運動を行う2次電子のラーモア半径
が、上記ファラデーカップ13の半径に比べて十分大き
ければ、2次電子はファラデーカップ13の内壁に入射
することになる。
【0039】上記図5からわかるように、磁束密度Bが
0.1mT(=1ガウス)のとき、磁場中の2次電子のラ
ーモア半径は略10cmとなるので、本実施例の場合、
上記マグネット14により形成される磁場の磁束密度B
が0.1mTよりも小さくなるように、マグネット14の
ソレノイドコイルに供給される電流が設定されている。
【0040】したがって、負イオン注入処理中にイオン
照射対象物11の前方空間に放出された2次電子は、ビ
ーム進行方向上流側に向かって螺旋運動を行い、ファラ
デーカップ13の内壁に入射して吸収される。
【0041】尚、上記図5からわかるように、同一磁場
中では、2次電子のラーモア半径よりもSiイオンのラ
ーモア半径の方が大きいので、2次電子のラーモア半径
がファラデーカップ13の半径に比べて十分大きくなる
磁場条件では、Siイオンもファラデーカップ13の内
壁に入射して吸収される。
【0042】上記のように、本実施例の負イオン注入装
置は、イオン照射対象物11の前方にイオン通過経路を
囲むようにして設けられたファラデーカップ13の内部
空間に、負イオンビームの進行方向と略平行な磁場を形
成するマグネット14を備えており、このマグネット1
4の形成する磁場の強度(磁束密度B)は、磁場中で螺
旋運動を行う2次電子のラーモア半径の方が、上記ファ
ラデーカップ13の半径(ファラデーカップ13の内壁
間の距離の1/2倍)よりも大きくなるように設定され
ている構成である。
【0043】これにより、負イオン注入処理中にイオン
照射面から放出された2次電子および2次イオンは、フ
ァラデーカップ3に入射して吸収され、イオン照射対象
物1に殆ど戻ることはないので、イオン照射対象物1上
の電位は略飽和状態が保持され、チャージアップによる
デバイス破壊が殆ど生じることはない。
【0044】〔実施例2〕 本発明の負イオン注入装置の他の実施例 を図3ないし図
5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0045】本実施例に係る負イオン注入装置は、上記
基本構成例および実施例1の負イオン注入装置と同様、
基本的には、負イオン源部、質量分析部、ビームライン
部、およびエンドステーション部とから構成され、これ
ら各部における負イオンビームの通過経路は真空となっ
ている。
【0046】本実施例の負イオン注入装置のエンドステ
ーション部には、図3に示すように、ウエハ等のイオン
照射対象物21を保持する保持部材22が設けられてい
る。この保持部材22は、熱伝導性に優れたアルミニウ
ム合金等の金属材料により形成されている。また、上記
保持部材22に保持されたイオン照射対象物21の前方
(イオン進行方向上流側)には、負イオンビームの通過
経路を囲むようにして形成された円筒状の金属製ファラ
デーカップ(荷電粒子コレクタ)23が設けられてい
る。
【0047】尚、本実施例では、上記円筒状のファラデ
ーカップ23の半径(ファラデーカップ23の内壁間の
距離の1/2倍)は数10cmである。また、本実施例
では、円筒状のファラデーカップ23が荷電粒子コレク
タとして用いられているが、荷電粒子コレクタの形状は
これに限定されるものではない。
【0048】上記ファラデーカップ23の外側には、こ
のファラデーカップ23を挟んでN極とS極とが対向配
置された一対のマグネット24a・24bが設けられて
おり、上記一対のマグネット24a・24bは、ファラ
デーカップ23内に負イオンビームの進行方向と略垂直
な磁場を形成するようになっている。
【0049】上記の構成において、負イオン注入装置の
動作を以下に説明する。
【0050】先ず、図示しない負イオン源から引き出さ
れた負イオンビームが、質量分析器によって質量分析さ
れることによって、特定の負イオンからなるイオンビー
ムとされることになる。そして、この負イオンビーム
は、必要により加速、整形、偏向等の処理が行われた
後、保持部材22に保持されたイオン照射対象物21に
照射されることになる。このとき、上記イオン照射対象
物21のイオン照射面からは、イオン照射対象物21の
前方空間、即ち、ファラデーカップ23の内部空間に2
次電子が放出される。また、イオン照射面からは、2次
電子に比べると放出量は僅かであるが、2次電子と共に
2次イオンも放出される。
【0051】ところで、図4に示すように、上記ファラ
デーカップ23の内部空間には、負イオンビームの進行
方向と略垂直な磁場(磁束密度B)が形成されており、
この磁場中に放出された2次電子および2次イオンは、
磁束密度Bと垂直な平面内で円運動を行うことになる。
【0052】この磁場中で行われる2次電子(または2
次イオン)の円運動の半径、即ち、ラーモア半径は、放
出された2次電子(または2次イオン)の磁束密度Bと
平行な方向の成分(速度)“vv ”と磁束密度Bの大き
さ“B”とにより記述される。2次電子および2次イオ
ンとしてのSiイオンのエネルギーを10eVとし、フ
ァラデーカップ23内の磁場(磁束密度B)を変化させ
たときの、磁場中の2次電子およびSiイオンのラーモ
ア半径は、上記の図5に示した通りである。
【0053】ところで、上記円筒状のファラデーカップ
23の半径は数10cmであるが、ファラデーカップ2
3の内部空間における磁束密度Bと垂直な平面内で円運
動を行う2次電子および2次イオンのラーモア半径が、
上記ファラデーカップ23の半径に比べて十分大きけれ
ば、2次電子はファラデーカップ23の内壁に入射する
ことになる。
【0054】上記図5より、磁束密度Bが0.1mT(=
1ガウス)のとき、磁場中の2次電子のラーモア半径は
略10cmとなり、Siイオンのラーモア半径は2次電
子のラーモア半径よりも更に大きくなる。そこで、本実
施例の場合、上記一対のマグネット24a・24bの形
成する磁場の磁束密度Bが0.1mTよりも小さくなるよ
うに設定されている。
【0055】したがって、負イオン注入処理中にイオン
照射対象物21の前方空間に放出された2次電子および
2次イオンは、磁束密度Bと垂直な平面内で円運動を行
い、ファラデーカップ23の内壁に入射して吸収され
る。
【0056】上記のように、本実施例の負イオン注入装
置は、イオン照射対象物21の前方にイオン通過経路を
囲むようにして設けられたファラデーカップ23の内部
空間に、負イオンビームの進行方向と略垂直な磁場を形
成する一対のマグネット24a・24bを備えており、
上記一対のマグネット24a・24bの形成する磁場の
強度(磁束密度B)は、磁場中で円運動を行う2次電子
のラーモア半径の方が、上記ファラデーカップ23の半
径(ファラデーカップ23の内壁間の距離の1/2倍)
よりも大きくなるように設定されている構成である。
【0057】これにより、負イオン注入処理中にイオン
照射面から放出された2次電子および2次イオンは、フ
ァラデーカップ23に入射して吸収され、イオン照射対
象物21に殆ど戻ることはないので、イオン照射対象物
21上の電位は略飽和状態が保持され、チャージアップ
によるデバイス破壊が殆ど生じることはない。
【0058】
【発明の効果】請求項1の発明に係る負イオン注入装置
は、以上のように、イオン照射対象物よりもイオン進行
方向上流側にイオン通過経路を囲むようにして設けられ
た荷電粒子コレクタと、上記荷電粒子コレクタにより囲
まれる空間に、負イオンの進行方向と略平行な磁場を形
成する磁場形成手段とを備え、上記磁場形成手段の形成
する磁場の強度は、磁場中で螺旋運動を行う2次電子の
ラーモア半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離
の1/2倍よりも大きくなるように設定されてい る構成
である。
【0059】それゆえ、負イオン注入処理中にイオン照
射対象物の前方空間に放出された2次電子は、ビーム進
行方向上流側に向かって螺旋運動を行い、荷電粒子コレ
クタの内壁に入射して吸収される。このため、負イオン
注入中にイオン照射対象物から放出された2次電子は、
イオン照射対象物に殆ど戻ることはなく、イオン照射対
象物上の電位は、放出された2次電子の平均的なエネル
ギーで略飽和状態が保持される。したがって、上記負イ
オン注入装置は、チャージアップによるデバイス破壊を
従来よりも低減することができるという効果を奏する。
【0060】請求項2の発明に係る負イオン注入装置
は、以上のように、イオン照射対象物よりもイオン進行
方向上流側にイオン通過経路を囲むようにして設けられ
た荷電粒子コレクタと、上記荷電粒子コレクタにより囲
まれる空間に、負イオンの進行方向と略垂直な磁場を形
成する磁場形成手段とを備え、上記磁場形成手段の形成
する磁場の強度は、磁場中で円運動を行う2次電子のラ
ーモア半径が、上記荷電粒子コレクタの内壁間の距離の
1/2倍よりも大きくなるように設定されている構成で
ある。
【0061】それゆえ、負イオン注入処理中にイオン照
射対象物の前方空間に放出された2次電子は、荷電粒子
コレクタ内に形成された磁場と垂直な平面内で円運動を
行い、荷電粒子コレクタの内壁に入射して吸収される。
このため、負イオン注入中にイオン照射対象物から放出
された2次電子は、イオン照射対象物に殆ど戻ることは
なく、イオン照射対象物上の電位は、放出された2次電
子の平均的なエネルギーで略飽和状態が保持される。し
たがって、上記負イオン注入装置は、チャージアップに
よるデバイス破壊を従来よりも低減することができると
いう効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負イオン注入装置の基本構成例を示す
ものであり、負イオン注入装置におけるエンドステーシ
ョン部の要部、および2次電子の進行方向を示す説明図
である。
【図2】本発明の負イオン注入装置の一実施例を示すも
のであり、負イオン注入装置におけるエンドステーショ
ン部の要部、および2次電子の進行方向を示す説明図で
ある。
【図3】本発明の負イオン注入装置の他の実施例を示す
ものであり、負イオン注入装置におけるエンドステーシ
ョン部の要部を示す説明図である。
【図4】上記負イオン注入装置のエンドステーション部
の要部、および2次電子の進行方向を示す説明図であ
る。
【図5】電子およびSiイオンのエネルギーを10eV
としたときの、磁束密度と電子およびSiイオンのラー
モア半径との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1・11・21 イオン照射対象物 2・12・22 保持部材 3・13・23 ファラデーカップ(荷電粒子コレク
タ) 4 直流電源 14 マグネット(磁場形成手段) 24a・24b マグネット(磁場形成手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 37/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】負イオンをイオン照射対象物に照射してイ
    オン照射対象物内に負イオンを注入する負イオン注入装
    置において、 上記イオン照射対象物よりもイオン進行方向上流側にイ
    オン通過経路を囲むようにして設けられた荷電粒子コレ
    クタと、 上記荷電粒子コレクタにより囲まれる空間に、負イオン
    の進行方向と略平行な磁場を形成する磁場形成手段とを
    備え、 上記磁場形成手段の形成する磁場の強度は、磁場中で螺
    旋運動を行う2次電子のラーモア半径が、上記荷電粒子
    コレクタの内壁間の距離の1/2倍よりも大きくなるよ
    うに設定されていることを特徴とする負イオン注入装
    置。
  2. 【請求項2】負イオンをイオン照射対象物に照射してイ
    オン照射対象物内に負イオンを注入する負イオン注入装
    置において、 上記イオン照射対象物よりもイオン進行方向上流側にイ
    オン通過経路を囲むようにして設けられた荷電粒子コレ
    クタと、 上記荷電粒子コレクタにより囲まれる空間に、負イオン
    の進行方向と略垂直な磁場を形成する磁場形成手段とを
    備え、 上記磁場形成手段の形成する磁場の強度は、磁場中で円
    運動を行う2次電子のラーモア半径が、上記荷電粒子コ
    レクタの内壁間の距離の1/2倍よりも大きくなるよう
    に設定されていることを特徴とする負イオン注入装置。
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