JP2995944B2 - ピストン往復動型圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両空調用に供して好
適なピストン往復動型圧縮機の改良に関する。

【０００２】

【従来技術】従来より、例えば斜板式圧縮機のように、
シリンダブロックに駆動軸と平行に形成されたボア内で
ピストンが往復動することにより冷媒の圧縮を行うよう
にした圧縮機が知られている。この種の圧縮機では、シ
リンダブロックの端面に弁板を介してハウジングが接合
され、このハウジングにはボア内に冷媒を供給する吸入
室と、ボア内でピストンによって圧縮された冷媒が吐出
される吐出室とが形成されている。そして、吸入室から
ボア内への冷媒の吸入は、前記弁板に形成された吸入ポ
ートと、該吸入ポートのボア側に設けられてボア内の圧
力に応じて吸入ポートを開放する吸入弁とを介して行わ
れ、また、ボア内から吐出室への冷媒の吐出は、弁板に
形成された吐出ポートと、該吐出ポートの吐出室側に設
けられてボア内の圧力に応じて吐出ポートを開放する吐
出弁とを介して行われるようになっている。これら吸入
弁及び吐出弁には、いわゆるフラッパバルブが用いられ
ている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、吸入弁及び
吐出弁として用いられるフラッパバルブは、閉弁状態を
維持する方向に働くそれ自身の弾性力に打ち勝って開弁
するように構成されているため、圧力損失が大きく、体
積効率が悪いという問題がある。また、高負荷運転時や
高速運転時などにおいては、圧力損失がさらに大きくな
るとともに、閉弁時にフラッパバルブが弁板と衝突する
ことにより大きな騒音が発生したり、フラッパバルブが
破損するといった問題もある。

【０００４】本発明は上記問題に鑑み案出されたもので
あり、圧力損失が小さく、騒音や破損の発生が少ない弁
構造を備えたピストン往復動型圧縮機を提供することを
解決すべき課題とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題解決の
ため、軸心と平行な複数のボアを有するシリンダブロッ
クと、該シリンダブロックの中心軸孔内に嵌挿支承され
た駆動軸と、該駆動軸と共動する斜板に連係されて前記
ボア内を直動するピストンと、前記中心軸孔と連通する
吸入室及び該吸入室の外方域に形成された吐出室を有し
て前記シリンダブロックの端面を閉塞するハウジング
と、前記駆動軸に同期回転可能に中心軸孔へ装着された
少なくとも吸入室と連通する吸入通路が形成された回転
弁とを備え、前記ボアから前記中心軸孔とを放射状に導
通する導通路と、前記導通路と前記回転弁の吸入通路と
の連通時期がボア頂部に残留する冷媒ガスの再膨張期間
以降に繰下げて連通するように回転弁の吸入通路が形成
されているという新規な構成を採用している。

【０００６】

【作用】本発明の弁構造を備えた圧縮機では、駆動軸と
同期して回転弁が回転すると、吸入行程にある各ボアの
導通路と吸入室とが回転弁の吸入通路を介して所定時間
連通されることにより、吸入室の冷媒ガスが順次各ボア
内に吸入される。このように回転弁の回転により、各ボ
アでは冷媒ガスの吸入作用が円滑かつ安定して継続され
るので、圧力損失がきわめて小さく、弁振動に基づく騒
音の発生や弁破損の懸念も一挙に解消される。

【０００７】とくに本発明は、回転弁の外周面上に形成
された吸入通路と導通路との連通時期が、吸入行程初期
にボア頂部に残留する冷媒ガスの再膨張期間だけ繰下げ
られているため、該吸入通路と回転弁の同一周面上に形
成される吐出通路との間隔が確保されて、導通路を介し
た圧縮冷媒ガスの逆流の心配がなく、しかも、このよう
な開弁時期の繰下げ（吸入遅れ）によって弁に起因する
圧損は補償される。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明す
る。図１及び図２において、１は軸方向に貫通する中心
軸孔１ａ及び５個のボア１ｂを有するシリンダブロック
であって、このシリンダブロック１の一端面にはフロン
トハウジング２が接合され、他端面には隔壁板３を介し
てリアハウジング４が接合されている。フロントハウジ
ング２内のクランク室５には、駆動軸６がフロントハウ
ジング２及びシリンダブロック１の中心軸孔１ａに嵌挿
され回転可能に支承されている。この駆動軸６上にはロ
ータ７が固着され、該ロータ７の後面側に延出した支持
アーム８の先端部には長孔８ａが貫設されている。そし
て、該長孔８ａにはピン８ｂがスライド可能に嵌入され
ており、同ピン８ｂには斜板９が傾動可能に連結されて
いる。

【０００９】ロータ７の後端に隣接して駆動軸６上には
スリーブ１０が遊嵌され、コイルばね１１により常にロ
ータ７側へ付勢されるとともに、スリーブ１０の左右両
側に突設された枢軸１０ａ（一方のみ図示）が斜板９の
図示しない係合孔に嵌入されて、該斜板９は枢軸１０ａ
の周りを揺動しうるように支持されている。斜板９の後
面側には揺動板１２が相対回転可能に支持され、かつ外
縁部に設けた案内部１２ａが通しボルト１６と係合する
ことにより自転が拘束されるとともに、シリンダブロッ
ク１に貫設されたボア１ｂ内のピストン１５と該揺動板
１２とはコンロッド１４により連節されている。したが
って、駆動軸４の回転運動がロータ７及び斜板９の介入
により揺動板１２の前後揺動に変換されて、ピストン１
５がボア１ｂ内を往復動するとともに、クランク室５内
の圧力と吸入圧力との差圧に応じてピストン１５のスト
ローク及び揺動板１２の傾角が変化するように構成され
ている。なお、クランク室５内の圧力はリアハウジング
４に内装された図示しない電磁制御弁機構により冷房負
荷に基づいて制御される。

【００１０】リアハウジング４のほぼ中央には、リア側
端面に開口するとともに、隔壁板３の中央孔３ａを介し
てシリンダブロック１の中心軸孔１ａと連通する吸入室
１７が設けられており、また、隔壁板３には、図３に示
すように、中央孔３ａから放射状に延在し各ボア１ｂの
頂部と導通する導通路２１が放射状に設けられている。
そして、中心軸孔１ａ内に延出した駆動軸６の先端に
は、中心軸孔１ａ及び中央孔３ａと滑合する円柱状の回
転弁２２がキー２３により装着されており、回転弁２２
のリア側は、吸入室１７の内壁に形成された段部により
支持されている。この回転弁２２には、図４及び図５に
示すように、吸入室１７側の軸心中央から径方向に屈曲
貫通する円孔２５ａと、該円孔２５ａに連なって外周面
の約半周部分にわたって延在する溝部２５ｂとによって
吸入通路２５が形成されており、この溝部２５ｂが吸入
行程にある各ボア１ｂの導通路２１と対向する間、吸入
通路２５を介して吸入室１７と当該ボア１ｂとが連通す
るようになされている。

【００１１】また回転弁２２の外周面には、周方向に延
在する吸入通路２５の溝部２５ｂと所定距離離間した位
置で軸方向に延在する溝状の吐出通路２７が形成されて
いる。この吐出通路２７は、回転弁２２のリア側端面近
傍から隔壁板３に形成された導通路２１と対向する位置
まで延在されており、一方、リアハウジング４には、該
吐出通路２７と対向する管状溝４１及びこの管状溝４１
と吸入室１７の外方域を占める吐出室１８とを結ぶ適数
個の吐出孔４２が形成されている。これにより、吐出通
路２７が吐出行程にある各ボア１ｂの導通路２１と対向
したとき、吐出通路２７を介して吐出室１８と導通路２
１とが連通するようになされている。

【００１２】とくに本発明においては、前記吸入通路２
５のうち、外周面上の溝部２５ｂによる導通路２１との
連通時期が、ボア１ｂ頂部に残留する冷媒ガスの再膨張
期間だけ繰下げて形成されている点に特徴を有し、具体
的には図５において、ピストン１５が上死点位置を占め
るボア１ｂへの開弁（吸入）時期が回転角θだけ遅延す
るように構成され、同様にピストン１５が下死点位置を
占めるボア１ｂへの閉弁（吸入）時期も回転角θ′だけ
遅延するよう構成されている。つまりかかる構成によっ
て、前記吐出通路２７と吸入通路２５の溝部２５ｂ間に
周方向の余裕間隔が設定され、導通路２１に対する吐出
通路２７及び吸入通路２５の同時連通は確実に回避され
ている。

【００１３】以上のように構成された圧縮機は、車両空
調用冷凍装置としてその回路中に配設され、使用に供さ
れる。この圧縮機が運転されて駆動軸６が回転すると、
斜板８は駆動軸６とともに回転しつつ揺動し、揺動板１
３は斜板８に対して回転を規制された状態で揺動運動の
みを行い、これによりピストン１５がボア１ｂ内を往復
動する。そして、ボア１ｂ内でピストン１５が上死点か
ら下死点に向かって移動を開始する吸入行程に入ると、
駆動軸６と同期回転する回転弁２２の吸入通路２５、具
体的には溝部２５ｂの前端がそのボア１ｂの導通路２１
と対向し、吸入通路２５及び導通路２１を介して吸入室
１７とボア１ｂとが連通される。これにより、吸入室１
７から当該ボア１ｂに冷媒ガスが吸入される。その後、
ボア１ｂ内のピストン１５が下死点に到達すると、回転
弁２２の回転に伴って該溝部２５ｂの後端が導通路２１
を通過し、吸入室１７と導通路２１との連通が遮断され
る。引続きピストン１５が上死点に向かう圧縮行程に移
ると、該ボア１ｂ内の冷媒ガスは圧縮されて高圧とな
り、吐出通路２７が導通路２１と対向した時点でボア１
ｂは吐出室１８と連通されて冷媒ガスが吐出される。

【００１４】このように、ピストン１５の往復動と同調
回転する回転弁２２を介して、各ボア１ｂは順次吸入室
１７及び吐出室１８と連通され、吸入、圧縮及び吐出と
いう一連の動作が繰返される。この場合、図５及び図６
に示すように、前記溝部２５ｂの前端が導通路２１と連
通する吸入開弁時期が、ボア１ｂ頂部（トップクリアラ
ンス）に残留する冷媒ガスの再膨張期間（回転角θ）だ
け遅延するように構成されて、導通路２１に対する吐出
通路２７と吸入通路２５との同時連通が生じないよう、
両通路２７、２５間に周方向に余裕間隔が設定されてい
る。したがって、ボア内圧力に吸入遅れに基づく幾分の
圧損をみることになるが、これはボア１ｂに対する吸入
通路２５の連通時期の繰下げ、つまりピストン１５が下
死点位置に達してから回転角θ′だけ吸入閉弁時期が遅
延することによって補償される。

【００１５】なお、上述の実施例は、一方側にピストン
ヘッドをもつ単頭型ピストンを用いて構成された揺動斜
板式圧縮機を例にとって説明したが、シリンダブロック
の中央部に斜板室をもち、その両側に対設されたボア内
を両頭型のピストンが往復動するように構成された斜板
式圧縮機に対しても、本発明を適用しうることは勿論で
ある。

【００１６】

【発明の効果】以上、詳述したように本発明は、吸入、
吐出双方の弁機能を有して各ピストンの往復動に同調す
る回転弁を備え、かつ、該回転弁の同一外周面上に刻設
される吸入、吐出通路間に導通路を介した冷媒ガスの吹
き抜けが生じないよう、導通路に対する吸入通路の連通
時期をボア頂部に残留する冷媒ガスの再膨張期間だけ繰
下げて構成したものであるから、安定した弁機能の発揮
に加えて騒音の発生や弁の損傷が一挙に解消するととも
に、吸入遅れによる圧力損失が合理的に補償されて体積
効率の低下を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る揺動斜板式圧縮機の断
面図

【図２】同圧縮機の要部を示す変則断面図

【図３】同圧縮機の隔壁板を示す側面図

【図４】同圧縮機の回転弁を示す斜視図

【図５】同圧縮機の回転弁を示す断面図

【図６】ピストンストロークとボア内圧力との関係を示
すグラフ

【符号の説明】

１はシリンダブロック、１ａは中心軸孔、１ｂはボア、
３は隔壁板、４はリヤハウジング、６は駆動軸、１５は
ピストン、１７は吸入室、１８は吐出室、２１は導通
路、２２は回転弁、２５は吸入通路、２７は吐出通路

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸心と平行な複数のボアを有するシリ
   ンダブロックと、該シリンダブロックの中心軸孔内に嵌
   挿支承された駆動軸と、該駆動軸と共動する斜板に連係
   されて前記ボア内を直動するピストンと、前記中心軸孔
   と連通する吸入室及び該吸入室の外方域に形成された吐
   出室を有して前記シリンダブロックの端面を閉塞するハ
   ウジングと、前記駆動軸に同期回転可能に中心軸孔へ装
   着された少なくとも吸入室と連通する吸入通路が形成さ
   れた回転弁とを備え、前記ボアから前記中心軸孔とを放
   射状に導通する導通路と、前記導通路と前記回転弁の吸
   入通路との連通時期がボア頂部に残留する冷媒ガスの再
   膨張期間以降に繰下げて連通するように回転弁の吸入通
   路が形成されていることを特徴とするピストン往復動型
   圧縮機。