JP2987846B2 - 酸化物薄膜のオゾン処理装置 - Google Patents

酸化物薄膜のオゾン処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、酸化物薄膜のオゾン処理装置、すなわち酸
化物薄膜の例えば光学的特性の改善のオゾンを含む雰囲
気中での熱処理(以下オゾン中熱処理という)を行う酸
化物薄膜のオゾン処理装置に係わる。
〔発明の概要〕
本発明は酸化物薄膜のオゾン処理装置に係わり、被熱
処理体が収容配置される熱処理容器と被熱処理体を赤外
線等の電磁波加熱または誘導加熱によって加熱する加熱
手段と、熱処理容器にオゾンを含む雰囲気を供給する供
給手段とを有し、特に熱処理容器にはその壁面の冷却手
段を設けて効果的に被熱処理体に対するオゾン中熱処理
が行われるようにする。
〔従来の技術〕
金属酸化物薄膜は、種々の用途に供されるが、絶縁膜
あるいは光学薄膜例えば光学多層膜、光導波路膜等とし
て用いる場合、その絶縁強度あるいは及び光透過度等の
性能を高める必要がある。一般の酸化物薄膜ではその生
成状態のままでは往々にして酸素が不足していわゆる低
級酸化物が形成され、リーク電流や光吸収が大となるこ
とから、しばしばこれらを酸素中熱処理等によって性能
改善することが行われる。
しかしながら昨今、これら材料特性に対する要求は、
その限界に近いものまでに高度化され、しかも安定に製
造することが要求され、単純な酸素中熱処理では充分に
この要求に応えられなくなって来ている。
例えば光通信システム、光ディスクシステムの急速な
普及進展に伴って光アイソレータ、光サーキュレータ、
光スイッチ等の各種の光デバイスにおいて、磁性ガーネ
ット、特にBi置換磁性ガーネットすなわち希土類の一部
をBiで置換した磁性ガーネットは近赤外域において大き
な磁気光学性能指数を有するために、これを利用した光
デバイスが注目されるに至っている。このようなBi置換
磁性ガーネットは、量産性等の上から液相エピタキシー
(LPE)法で育成することが望まれるが、このLPE法によ
る場合酸素空孔の発生が問題となりFe2+あるいはFe4+
発生しやすく、これが光吸収特性を低下させることか
ら、この問題の改善をはかるために例えばMg2+,Ca2+
の2価イオンをドープする方法などの提案もなされてい
る(特開昭61−150303号公報、特開昭61−265809号公
報、特開昭61−265810号公報及び特開昭62−79608号公
報参照)。また、例えばこのような2価のイオンのドー
ピングに加えて酸素中での熱処理を行う方法も特開昭63
−95812号公報等に開示されているところである。
しかしながら、このようなドーピングによる最適化に
よる場合、その種々の条件の設定が難しい場合があり、
また高度な精度を必要とする。
また、例えばTa2O5膜は、超大集積回路(VLSI)の例
えばD−RAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)
のキャパシタ用高誘電体絶縁膜として実用化が期待され
ている材料であるが、その絶縁強度が小さいという問題
がある。例えば、Ta(OC2H5を原料としたCVD(化学
的気相成長)法で形成したTa2O5膜のリーク電流特性
は、第2図中曲線(21)で示されるように高いリークを
示す。そしてこの場合0.1〜4原子%のTi4+のドーピン
グが、低リーク電流化に有効であることが見い出されて
いる(例えば特開昭62−17177号公報参照)。
しかしながら、この場合においてもそのドーピング濃
度の最適制御が比較的難しく安定に量産的に低リーク電
流特性を有する絶縁強度の高いTa2O5膜を得にくいとい
う問題がある。
このように各種の酸化物薄膜の特性制御は、その個々
の材料に応じてその物性限界を安定に実現するために種
々高度な組成制御を必要とし、量産性等の点で問題があ
る。
このような酸化物薄膜の酸素欠陥に対処するものとし
てオゾン中熱処理が考えられる。例えば本出願人の出願
に係わる平成1年7月11日付け特許願「磁性ガーネット
の製造方法」においては、磁性ガーネット例えばBi置換
磁性ガーネットをオゾンを含む酸素中で熱処理すること
によって限界値に近い光吸収率、導波光伝搬損の低減化
をはかるものの提案がなされた。また、例えば特開昭63
−297203号公報においては超電導材料においてオゾン中
熱処理が行われている。
ところが、このようなオゾン中熱処理を行おうとする
場合、オゾンが200℃程度以上の高温では速やかに分解
するものの速やかに再結合して活性化された酸素を失う
いわゆるオゾンの失活が生じやすくこの失活が被熱処理
体の配置部より離間した位置すなわちオゾン供給流の被
熱処理体配置部より風上側で生じると、オゾン中の熱処
理効果が得られず、単なる酸素中熱処理程度の効果しか
得られないことになって有効なオゾン中熱処理がなされ
ないという状態になる。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、上述したオゾン中熱処理において、そのオ
ゾンの失活の問題を解決し、確実にオゾン中雰囲気での
熱処理効果が得られるようにして被熱処理体例えば酸化
物薄膜における酸素欠陥の消失を効果的に行うことがで
きるようにする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、第1図に略線的に本発明による熱処理装置
の構成を示すように、被熱処理体(1)すなわち酸化物
薄膜が収容配置される熱処理容器(2)と、被熱処理体
(1)を電磁波加熱、例えば赤外線加熱、または誘導加
熱によって加熱する加熱手段(3)と熱処理容器(2)
にオゾンを含む雰囲気を供給する供給手段(4)とを有
してなり熱処理容器(2)にはその壁面を冷却する冷却
手段(5)を設ける。
〔作用〕
上述の本発明装置によれば、熱処理容器(2)内にオ
ゾンを含む雰囲気が供給されるものであるが、この場合
熱処理容器(2)の壁面は冷却手段(5)によって冷却
されていることによってその近傍においては熱分解が発
生しにくく被熱処理体(1)の近傍すなわちこの熱処理
体(1)の表面に接触し得る状態において加熱手段
(3)による電磁波例えば赤外線照射あるいは誘導加熱
によって被熱処理体(1)自体、或いはその配置部での
局部的加熱を行うようにしたので、被熱処理体(1)の
近傍でのみオゾンが熱分解し、これによって活性な酸素
の発生が被熱処理体(1)の近傍で生じるようにしたの
で、被熱処理体(1)は活性酸素雰囲気中に効果的に置
かれることになる。そのため被熱処理体(1)はその酸
素欠陥が効果的に消失されることになり、この被熱処理
体(1)の特性を限界値にまで高めることができる。
〔実施例〕 第1図を参照してさらに本発明による熱処理装置の一
例を詳細に説明する。熱処理容器(2)は例えば石英管
よりなり、その周囲に冷却ジャケット(5a)が配置さ
れ、このジャケット(5a)内に冷却水が循環されて熱処
理容器(2)の壁面が冷却するようになされた冷却手段
(5)が設けられる。
また、その外周には例えば赤外線ランプ或いは誘導加
熱用コイル等加熱手段(3)が配置されて被熱処理体
(1)の加熱が行われる。
(6)は熱処理容器(2)のオゾンを含む雰囲気の供
給口で、(7)はその排出口を示す。オゾンを含む雰囲
気の供給手段(4)は例えば酸素ボンベ等の酸素供給源
(8)を有し、これよりの酸素をオゾン発生装置(9)
によって酸素中に例えば0.001Vol%〜20Vol%を含んだ
オゾンを含む酸素雰囲気として熱処理容器(2)の供給
口(6)に供給する。(10)はその供給調整弁で、(1
1)はオゾン濃度測定装置、(12)はその開閉弁を示
す。また、熱処理容器(2)の排出口(7)から排出さ
れたオゾンを含む雰囲気は、オゾン分解触媒によるオゾ
ン分解部(12)において分解されて排出される。
オゾン発生器(9)は、市販のオゾン発生器を用いる
ことができ、これは例えば15Vol%のオゾンを含む酸素
を1気圧で1/分程度で供給することができる。
実施例1 Ta(OC2H5を原料としてCVD法により600℃でSi基
体上に110ÅのTa2O5膜を生成した。このTa2O5膜を第1
図で説明した本発明装置によって1Vol%のオゾンを含む
酸素雰囲気中で30分間の熱処理を施した。このようにし
て熱処理のなされたTa2O5膜上に電極を被着したMOS型キ
ャパシタについてリーク電流を測定した結果を、第2図
中曲線(22)及び(23)に示す。第2図中曲線(21)は
前述したようにTa2O5をCVD法によって形成したままの場
合のリーク電流を示し、曲線(22)及び(23)は、それ
ぞれオゾンを含む酸素中で300℃及び400℃で熱処理を施
した場合のそれぞれのリーク電流特性を示す。また、同
図において曲線(24)はオゾンを含まない酸素雰囲気中
で400℃の熱処理を施した場合である。これら曲線を比
較して明らかなようにオゾンを含む酸素雰囲気中で本発
明装置をもって熱処理したキャパシタは、そのTa2O5
リーク電流特性が格段に改善されていることがわかり、
その絶縁強度は5MV/cmという高い値を示す。
一方、この実施例1においてオゾン中熱処理を30分行
った場合の各加熱温度とこの加熱温度後におけるリーク
電流の測定結果を第3図中曲線(31)に示す。同図にお
いて▲印はその初期値を示す。また曲線(32)は熱処理
容器(2)の排出口(7)におけるオゾン含有量と加熱
温度との関係を測定したもので●印は供給口(6)側の
オゾン含有量を示す。両曲線(31)及び(32)を対比し
て明らかなように、加熱温度が250℃以上でオゾン分解
が生じ、同時にリーク改善が行われていることがわか
る。
また、この場合オゾン濃度としては0.01Vol%で同様
にリーク電流改善が行われることが確かめられた。
このように本発明装置によるオゾン中熱処理を行うこ
とによってTa2O5膜等の絶縁膜のリーク電流の改善、す
なわち絶縁強度が高められることがわかる。
実施例2 CVD法によって形成したTa2O5−TiO2混合膜について第
1図に示した本発明装置によって500℃30分のオゾン中
熱処理を行った。この場合熱処理前におけるTa2O5−TiO
2の混合膜の生成のままの状態では波長632.8nmの光の伝
搬損失は10dB/cm以上であったものが本実施例における
オゾン中熱処理後には1dB/cmに改善された。
実施例3 Bi1.561.32Gd0.38Fe3.88Ga0.86O12で代表されるBi
置換磁性ガーネットのLPE膜に対して680℃3時間のオゾ
ン中熱処理を施した。このオゾン中熱処理前における光
吸収スペクトルは第4図中破線曲線(41)に示すもので
あり、オゾン中熱処理後においては実線曲線(42)にそ
の光吸収スペクトルを示すように光吸収率の低下が生
じ、このオゾン中熱処理後のBi置換磁性ガーネット膜に
よって光アイソレータを構成した場合、その損入損を約
1.6dBという材料固有の限界値にまで下げられることが
確かめられた。
尚、上述した各例に限らず酸化物膜等の各種被熱処理
体に対するオゾン中熱処理に本発明装置を適用すること
ができる。
このオゾン中熱処理におけるオゾン含有量は、その目
的、被熱処理体(1)によって相違するが、例えばBi置
換磁性ガーネットにおいては、0.001Vol(体積)%以上
で光吸収の低減化効果が生じ、最も効果的、すなわち、
限界値に近い低減化を得るには10Vol%程度以上が好ま
しいが、20Vol%を越えるとオゾン発生装置からの制約
が生じ工業的に不利であるばかりでなく、効果上も差程
の向上が認められなくなってくることから0.001Vol%〜
20Vol%に選ばれる。
〔発明の効果〕
上述したように本発明においては、オゾン中熱処理を
行うものであり、この場合にその熱処理容器(2)の壁
面は冷却手段(5)によって冷却された状態で被熱処理
体(1)の近傍においてのみその加熱を行うようにした
のでオゾンの失活が被熱処理体(1)に到来する以前で
生ずることが効果的に回避されることによって、目的に
応じた所要のオゾン含有量の制御を行うことができ、効
果的に被熱処理体(1)近傍において活性な酸素の雰囲
気を形成することができ、効果的にオゾン中熱処理がな
される。したがって上述したようにリーク電流の低下す
なわち絶縁強度の向上、光吸収率の低下等の各種特性改
善のためのオゾン中熱処理を効果的に行うことができ、
例えば酸化物膜における酸素欠陥の発生を各種金属イオ
ンのドーピングに全くよらず、あるいはこのドーピング
を併行した場合においてもドーピングのみによって行う
場合における不安定性、制御性の困難を解決して確実に
目的とする特性の酸化物膜等の材料膜を再現性よく得る
ことができ、その工業的利益は甚大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による酸化物薄膜のオゾン処理装置の一
例の略線的構成図、第2図は本発明装置による熱処理前
及び熱処理後のTa2O5膜のリーク電流の測定結果を示す
図、第3図はオゾン熱処理温度とTa2O5膜のリーク電流
及び熱処理容器の排出口のオゾン含有量との関係を示す
測定曲線図、第4図は本発明装置によるオゾン中熱処理
前と同熱処理後のBi置換磁性ガーネットの光吸収スペク
トル図である。 (1)は被熱処理体、(2)は熱処理容器、(3)は加
熱手段、(4)はオゾンを含む雰囲気の供給手段、
(5)は冷却手段てある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01J 19/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オゾン処理を行う酸化物薄膜が収容配置さ
    れる熱処理容器と、 上記酸化物薄膜を電磁波加熱または誘導加熱によって加
    熱する加熱手段と、 上記熱処理容器にオゾンを含む雰囲気を供給する供給手
    段と、 上記熱処理容器の、少なくとも上記酸化物薄膜の配置部
    の加熱部近傍の周辺にわたって冷却する冷却手段とを有
    して成ることを特徴とする酸化物薄膜のオゾン処理装
    置。
  2. 【請求項2】上記酸化物薄膜が光学薄膜であることを特
    徴とする請求項1に記載の酸化物薄膜のオゾン処理装
    置。
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