JP2981734B2 - 王冠のガスケット素材及びその製造方法 - Google Patents

王冠のガスケット素材及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス壜口を封止
する王冠のガスケット素材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリ塩化ビニルの衛生性に問題が
生じたことを契機として、ポリ塩化ビニル発泡ライニン
グに代わって、低密度ポリエチレン(本明細書では、特
にことわらない限り、LDPEとLLDPEの両方を含
むものとして使用する)やエチレン−酢酸ビニル共重合
体のような軟質ポリオレフィンが王冠のガスケット素材
として使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この軟
質ポリオレフィンは、発泡化が容易ではなく、かつ、そ
の発泡体としての性質も王冠のガスケットとしては好適
ではないので、ソリッド状態でガスケット素材として使
用されている。そして、このソリッド状態の軟質ポリオ
レフィンのガスケット素材は、発泡体と比較して硬く、
可撓性に欠け、ガラス壜口との接合性が低く滑り易いと
いう欠点がある。
【0004】このソリッド状態の軟質ポリオレフィンの
ガスケット素材は、ガラス壜口との接合部分の形状(以
下プロファイルという)を工夫するなどして、ガラス壜
口との接合性の改善が図られているが、なお打栓の困難
性と耐衝撃性の不足という面に問題を残している。この
うち、打栓の困難性は打栓機の改善や打栓技術の向上な
どにより克服されてきつつあるが、耐衝撃性の不足は未
だ改善の余地を残している。
【0005】衝撃による王冠の漏れは、ガスケットとガ
ラス壜口の接合面が衝撃により移動し、接合が破壊され
ることにより生じる。王冠の耐衝撃性はガスケットによ
る衝撃の吸収と、ガラス壜口上での横滑り防止によって
達成される。そして、衝撃の吸収は、ガスケットのプロ
ファイルと素材の特性が影響し、ガラス壜口上での横滑
り防止は、ガスケットのプロファイルと素材の特性に加
えてシェルの影響が加わる。
【0006】一般にガスケット素材として要求される条
件としては、第1に、壜口に打栓されて壜口と接合する
ことにより内容物を封止することができ、かつ、封止状
態を長時間にわたって維持できること、第2に、内容物
に許容される以上の影響、例えば味、臭い、色、衛生上
等の影響を与えないこと、第3に、安価であること、第
4に、衝撃吸収性に優れること、第5に、ガラス壜口と
の接合性が良好で、横滑りを防止するために柔軟性を有
すること、が挙げられる。
【0007】ところが、軟質ポリオレフィンにさらなる
柔軟性を付与しようとすると、耐熱性が低下するととも
に、極端にクリープし易くなって、短時間で応力緩和を
起こし、封止状態の維持ができなくなる。また、柔軟性
の程度に応じて引張強度が低下し、打栓の衝撃や応力
で、破断する場合もある。このように、従来の軟質ポリ
オレフィンは耐衝撃性の要求に対して応えることができ
なかった。
【0008】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、実験を重ねた結果、軟質ポリオレフィンとの相
溶性が高い均一構造ポリオレフィンを混合することで軟
質ポリオレフィンの耐衝撃性を改善し得るとの知見を得
たことによりなされた、ガスケット素材として実績のあ
る軟質ポリオレフィンを用いた王冠のガスケット素材及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する
ために本発明の請求項1の王冠のガスケット素材は、軟
質ポリオレフィンたる、密度0.91〜0.92、MF
R4〜15の低密度ポリエチレンの40〜60重量部
と、均一構造ポリオレフィンたる、シングルサイト触媒
を使用して合成したブテン含有量20〜25重量%、密
度0.85〜0.89、MFR5〜10のエチレン・ブ
テン共重合体の60〜40重量部からなる混合物に、前
記エチレン・ブテン共重合体が5〜20重量%となるよ
う軟質ポリオレフィンたる、密度0.91〜0.92、
MFR4〜15の低密度ポリエチレンおよび/または酢
酸ビニル含有率が10%未満のエチレン−酢酸ビニル共
重合体を混合したことを特徴とする。
【0010】また、上述した目的を達成するために本発
明の請求項2の王冠のガスケット素材の製造方法は、軟
質ポリオレフィンたる、密度0.91〜0.92、MF
R4〜15の低密度ポリエチレンの40〜60重量部
と、均一構造ポリオレフィンたる、シングルサイト触媒
を使用して合成したブテン含有量20〜25重量%、密
度0.85〜0.89、MFR5〜10のエチレン・ブ
テン共重合体の60〜40重量部を均一に混合してなる
混合物に、軟質ポリオレフィンたる、密度0.91〜
0.92、MFR4〜15の低密度ポリエチレンおよび
/または酢酸ビニル含有率が10%未満のエチレン−酢
酸ビニル共重合体を加えて混合して、前記エチレン・ブ
テン共重合体が5〜20重量%のガスケット素材とする
ことを特徴とする。
【0011】さらに、上述した目的を達成するために本
発明の請求項3の王冠のガスケット素材の製造方法は、
軟質ポリオレフィンたる、密度0.91〜0.92、M
FR4〜15の低密度ポリエチレンの40〜60重量部
と、均一構造ポリオレフィンたる、シングルサイト触媒
を使用して合成したブテン含有量20〜25重量%、密
度0.85〜0.89、MFR5〜10のエチレン・ブ
テン共重合体の60〜40重量部を2軸押出機を通過さ
せて均一に混合してなる混合物に、軟質ポリオレフィン
たる、密度0.91〜0.92、MFR4〜15の低密
度ポリエチレンおよび/または酢酸ビニル含有率が10
%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体を加えて単軸押
出機を通過させて混合して、前記エチレン・ブテン共重
合体が5〜20重量%のガスケット素材とすることを特
徴とする。
【0012】本発明におけるMFRの測定条件は、温度
190℃、荷重2.16kgf であり、JISK6760
の条件4による。
【0013】均一構造ポリオレフィンを用いたのは、熱
可塑性エストラマーに比較して、耐熱性は劣るが、価格
が安く、相対的に加工性が良いからであり、特に、エチ
レン・ブテン共重合体が好適だからである。また、シン
グルサイト触媒を使用したのは、メタロセン触媒などの
シングルサイト触媒はαーオレフィンのイオン重合にお
いて、π結合を活性化するための活性種が単一で、分岐
と分子量分布の揃った重合体を得られるので、より柔軟
な低密度のポリエチレンを重合するためにαーオレフィ
ンの含有量を多くしても、ベトつきや溶剤抽出など品質
上の不都合を生じないからである。
【0014】本発明のガスケット素材においてエチレン
・ブテン共重合体が5〜20重量%としたのは、5%以
下では耐衝撃性の改善効果が見られない一方、25%以
上では軟質ポリオレフィンである低密度ポリエチレンお
よび/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体との加工物
性の差が大きくなって、王冠製造設備の大きな変更が必
要になるとともに、単軸押出機による混練加工性が悪く
なることによる。
【0015】低密度ポリエチレンの40〜60重量部と
エチレン・ブテン共重合体の60〜40重量部を均一に
混合して混合物とした後、低密度ポリエチレンおよび/
またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を加えるのは、混
練コストの安い単軸押出機では、エチレン・ブテン共重
合体と低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン−酢
酸ビニル共重合体とを均一に分散し合うまで十分に混練
することができないからである。また、エチレンー酢酸
ビニル共重合体は分解し易く、低密度ポリエチレンの4
0〜60重量部とエチレン・ブテン共重合体の60〜4
0重量部を均一に混合する練り工程は強引で、この加工
中に分解する虞があるからである。
【0016】さらに、単軸押出機は、軟質ポリオレフィ
ンを王冠のガスケットに成形する設備にはガスケット素
材の供給手段として装備されているのが一般的であり、
この単軸押出機を利用して、低密度ポリエチレンの40
〜60重量部とエチレン・ブテン共重合体の60〜40
重量部を均一に混合した混合物と、軟質ポリオレフィン
たる低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン−酢酸
ビニル共重合体の十分な混練ができれば、王冠ガスケッ
トの成形工程内で所望のガスケット素材を得ることがで
きて、加工コスト的にも作業効率的にも極めて有利であ
る。
【0017】本発明の請求項3のように、加工コストの
高い2軸押出機を用いて、低密度ポリエチレンの40〜
60重量部とエチレン・ブテン共重合体の60〜40重
量部を均一に混合して少量の混合物を得た後、加工コス
トの安い単軸押出機を用いて、軟質ポリオレフィンたる
大量の低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン−酢
酸ビニル共重合体を加えて混合すると、全体のコストを
最小にすることができる。
【0018】
【発明の実施形態】以下、本発明の好適な実施形態を添
付図面に基づき詳細に説明する。ここにおいて、図1は
ガスケット素材であるペレット混合物の配合率を示す図
表、図2はガスケット素材の成分比率を示す図表、図3
は試験結果を示す図表である。
【0019】密度0.917、MFR7.0の低密度ポ
リエチレン(LDPE)の50重量部と、シングルサイ
ト触媒を使用して合成したブテン含有量22重量%、密
度0.87、MFR7.0のエチレン・ブテン共重合体
の50重量部とを、直径30mmの3条スクリュー2本を
装着した2軸押出機に供給して混練し、押し出して、ペ
レットを作成した(以下ペレットAという)。
【0020】次に、このペレットAに対して図1に示す
割合でペレット状の密度0.917、MFR7.0の低
密度ポリエチレン(LDPE)または酢酸ビニル含有率
が10%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体(図1で
は酢酸ビニル含有率が5%のものを5%EVA、酢酸ビ
ニル含有率が10%のものを10%EVAと表記)を混
合し、このペレット混合物(B01〜B54C)を樹脂
供給用単軸押出機を備えた王冠製造機に供給し、該単軸
押出機内で加熱溶融、混練し、ノズルから押し出してカ
ッターで切断し、一定重量の溶融ペレットとして、ガス
ケット素材を作成した。
【0021】この溶融ペレット状のガスケット素材を、
別途供給された王冠シェル内に投入し、該王冠シェル内
で金型で押圧してガスケットに成形し、図2に示すサン
プル王冠(B01C〜B54C)を作成した。
【0022】これらサンプル王冠(B01C〜B54
C)を用いて、図3に示す、a.瞬間耐圧試験、b.持
続耐圧試験、c.クリープ試験、d.落下衝撃試験の各
試験を実施した。
【0023】瞬間耐圧試験は、500mlビール壜に重曹
と反応して3Vol の炭酸ガス水に相当する炭酸ガスを発
生するように調製した希硫酸500mlと、適量の重曹カ
プセルとを入れ(以下この充填法を、希硫酸重曹法によ
り3Vol 充填、と表記する)、サンプル王冠を打栓した
後、65℃で1時間熱処理し、さらに20℃で24時間
保存した後、壜内圧を215psi(約15kgf/cm2)にして
1分間保持し、この間のガス漏れを測定したものであ
る。
【0024】持続耐圧試験は、500mlビール壜に希硫
酸重曹法により3Vol 充填し、サンプル王冠を打栓した
後、65℃で1時間熱処理し、さらに20℃で24時間
保存した後、20℃で壜内圧を測定したもので、ガスロ
ス10%以上をガス漏れと判定したものである。
【0025】クリープ試験は、500mlビール壜に希硫
酸重曹法により3Vol 充填し、サンプル王冠を打栓した
後、65℃で1時間熱処理し、さらに20℃で24時間
保存した後、50℃で200kgf/cm2 の圧力を1時間加
え、20℃で壜内圧を測定したもので、ガスロス10%
以上をガス漏れと判定したものである。
【0026】落下衝撃試験は、500mlビール壜に希硫
酸重曹法により3Vol 充填し、サンプル王冠を打栓した
後、65℃で1時間(dー1)、または40℃で15分
間(dー2)熱処理し、さらに20℃で24時間保存し
た後、衝撃面角を10°に設定した500gの硬質ポリ
塩化ビニル塊を落程1mで自由落下させて、壜口の王冠
に衝撃を与え、24時間後に20℃で壜内圧を測定した
もので、ガスロス10%以上をガス漏れと判定したもの
である。
【0027】この結果、図3で明らかなように、瞬間耐
圧試験と持続耐圧試験については、全てのサンプル王冠
が問題なかった。一方、クリープ試験については、B5
1C〜B54Cのサンプルで割れが生じて、ガス漏れを
起こすものがあった。すなわち、ブテン含有量22重量
%、密度0.87、MFR7.0のエチレン・ブテン共
重合体を25重量%含有しているものに、ガス漏れを起
こすものがあった。この理由は、前記エチレン・ブテン
共重合体を25重量%含有すると、加工性が低下して、
成分の相溶性が悪かったものと考えられる。
【0028】また、酢酸ビニル含有率が10%のエチレ
ンー酢酸ビニル共重合体では、耐衝撃性に関して改善効
果が見られなかった。したがって、酢酸ビニルの含有率
を10%未満にすることが必要であることが判明した。
【0029】そして、上述の試験例に限らず、密度0.
91〜0.92、MFR4〜15の低密度ポリエチレン
の40〜60重量部と、シングルサイト触媒を使用して
合成したブテン含有量20〜25重量%、密度0.85
〜0.89、MFR5〜10のエチレン・ブテン共重合
体の60〜40重量部からなる混合物に、前記エチレン
・ブテン共重合体が5〜20重量%となるよう密度0.
91〜0.92、MFR4〜15の低密度ポリエチレン
および/または酢酸ビニル含有率が10%未満のエチレ
ン−酢酸ビニル共重合体を混合したものは、良好である
ことが判明した。
【0030】
【発明の効果】以上説明したところで明らかなように、
本発明によれば、耐衝撃性に優れた王冠のガスケット素
材を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガスケット素材であるペレット混合物の配合率
を示す図表。
【図2】ガスケット素材の成分比率を示す図表。
【図3】試験結果を示す図表。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B65D 39/00 - 55/16 B32B 27/32 102 C08L 23/26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密度0.91〜0.92、MFR4〜1
    5の低密度ポリエチレンの40〜60重量部と、シング
    ルサイト触媒を使用して合成したブテン含有量20〜2
    5重量%、密度0.85〜0.89、MFR5〜10の
    エチレン・ブテン共重合体の60〜40重量部からなる
    混合物に、前記エチレン・ブテン共重合体が5〜20重
    量%となるよう密度0.91〜0.92、MFR4〜1
    5の低密度ポリエチレンおよび/または酢酸ビニル含有
    率が10%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体を混合
    したことを特徴とする王冠のガスケット素材。
  2. 【請求項2】 密度0.91〜0.92、MFR4〜1
    5の低密度ポリエチレンの40〜60重量部と、シング
    ルサイト触媒を使用して合成したブテン含有量20〜2
    5重量%、密度0.85〜0.89、MFR5〜10の
    エチレン・ブテン共重合体の60〜40重量部を均一に
    混合してなる混合物に、密度0.91〜0.92、MF
    R4〜15の低密度ポリエチレンおよび/または酢酸ビ
    ニル含有率が10%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合
    体を加えて混練して、前記エチレン・ブテン共重合体が
    5〜20重量%のガスケット素材とすることを特徴とす
    る王冠のガスケット素材の製造方法。
  3. 【請求項3】 密度0.91〜0.92、MFR4〜1
    5の低密度ポリエチレンの40〜60重量部と、シング
    ルサイト触媒を使用して合成したブテン含有量20〜2
    5重量%、密度0.85〜0.89、MFR5〜10の
    エチレン・ブテン共重合体の60〜40重量部を2軸押
    出機を通過させて均一に混合してなる混合物に、密度
    0.91〜0.92、MFR4〜15の低密度ポリエチ
    レンおよび/または酢酸ビニル含有率が10%未満のエ
    チレン−酢酸ビニル共重合体を加えて単軸押出機を通過
    させて混合して、前記エチレン・ブテン共重合体が5〜
    20重量%のガスケット素材とすることを特徴とする王
    冠のガスケット素材の製造方法。
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